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国際文化交流機関の評価に関する研究 : 国際交流基金の「文化芸術交流事業」の評価調査

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Academic year: 2021

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(1)― 13 ―. October 2011. 国際文化交流機関の評価に関する研究. *. ──国際交流基金の「文化芸術交流事業」の評価調査──. 真. 鍋. 一. 史**. せ、それを「評価調査」の実施へと発展させてき. Ⅰ.はじめに. たとまとめられるであろう。このことは、 「評価」 と呼ばれる人間活動の全体的・体系的・客観的な. 本稿は、国際交流基金(Japan Foundation)の. 検討にとって、きわめて重要な点を示唆してい. 事業評価調査のデータ分析を試みるものである。. る。ここでは、以下の 2 点について議論しておき. 国際交流基金は、日本の国際文化交流を担う専. たい。. 門機関として 1972 年に設立されたが、2003 年に は独立行政法人(外務省所管)に移行し、それに. (1)「評価研究」から「評価調査」へ. ともなってその評価の実施が制度的に義務づけら. これまでの「評価研究」においては、さまざま. れることになった。そして、国際交流基金本部内. な「評価手法」が開発されてきている。国際交流. に「企画・評価課」が設置され、さまざまな形で の「評価業務」が遂行されてきた。. 基金では、そのような「評価手法」の 1 つとして. しかし、国際交流基金の「評価活動」は、この. 「評価調査」という方法を取り入れたのである。 ! ! ! 「評価活動」の科学化という意味において、この. ようなルーティンとしての「評価業務」にとどま. ことは重要である。「評価調査」は、「社会調査」. るものではない。2003 年から 2005 年にかけて、. と呼ばれる社会科学の研究領域において、つとに. 桜美林大学総合研究開発機構と「事業評価」に関. 市民権を獲得している──G. Payne と J. Payne、. する共同研究を実施し、その成果を『国際交流基. 髙坂健次ほか訳『ソーシャル. 金国別評価に関する共同研究報告書・提言』 (2005. 社、2008 年、pp.83−88 や、W. Neuman, Social Re-. 年)にまとめている。. search Methods : Qualitative and Quantitative Ap-. リサーチ』新曜. このような「評価研究」を踏まえて、その後、. proaches, Allyn and Bacon, 2003 や、E. Babbie. The. 筆者らが国際交流基金の客員研究員として「海外. Practice of Social Research [Third Edition], Wad-. 事業評価調査」に参加することとなった。こうし. worth Publishing Company, 1983, pp.304−327, など. て、2006 年度は「韓国における事業評価調査」、. を参照されたい──、が、この「社会調査」とい. 2007 年度は「ドイツにおける事業評価調査」が. う方法は、社会科学が文字どおり「科学」として. 企画・設計・実施された。本稿で取りあげる「韓. 成立するための重要な要件の 1 つであった(福武. 国・メキシコにおける文化芸術交流事業の評価調. 直『社会調査』岩波全書、1958 年)のである。. 査」は、このような一連の評価調査の試みの線上 に位置づけられるものである。. (2)「評価調査」の意義. 以上の経緯は、国際交流基金は、評価の実施が. 「評価調査」の意義は、それが「実践的要請」. 制度的に義務づけられるようになって以降、「評. と、「学問的要請」の、いずれにも応えるもので. 価業務」と並行する形で「評価研究」を出発さ. あるという点にある。. ───────────────────────────────────────────────────── * キーワード:国際交流基金、評価調査、仮説的図式、スケール、相関マトリックス、最小空間分析 ** 関西学院大学名誉教授、青山学院大学総合文化政策学部教授.

(2) ― 14 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. まず、前者は、それが国際文化交流機関──こ こでは国際交流基金──の実際の「事業評価」に. 的にいえば、以下の 2 つの「海外巡回展示事業」 である。. おいて役立つという側面である。具体的にいうな らば、それは、一方においては、「評価調査」に. 1 .「マンガ:日本のマンガの新しい表現」(韓国. よる海外における文化交流事業の効果の検証をと. ・ソウル・アートソンジエセンター、2010 年. おして、その説明責任を果たすことを可能にする. 12 月 4 日∼2011 年 2 月 13 日). とともに、他方においては、文化交流事業の現在. 2 .「ウインター・ガーデン:日本現代美術にお. の問題点の発見をとおして、その今後のさらなる. けるマイクロポップ的想像力の展開」(メキシ. 発展の方向を探ることを可能にするということで. コ・メキシコシティ・メキシコ国立自治大学付. ある。. 属チョポ美術館、2010 年 12 月 8 日∼2011 年 3. つぎに、後者は、それが学問──ここでは「社. 月 2 日). 会科学」──という人類の知的営為に寄与すると いう側面である。この側面は、さらに 2 つの側面. このような 2 種類の文化芸術交流事業を対象に. に分けられる。「評価調査」は、一方においては、. 「調査票(質問紙)調査(questionnaire survey)」. 例えば、「事業評価の決定要因」「事業評価と対日. を企画・設計・実施した。ここでは、調査票設計. 『イメージ・オリエンテーション・行動』との関. の手順とそのアイディアについて述べておきた. 係の構造」などの解明といった substantive な側. い。. 面と、他方においては、例えば、「データの全体. まず、調査票設計の手順であるが、それは「評. の構造や連関」を捉えようとする「森を見る」タ. 価学」あるいは「評価研究」の領域でいうところ. イプの「データ分析」の方法の確立といった meth-. の「ロジック・モデル(logic model)」を作成す. odological な側面において貢献するものである。. るところから始めた。一般に、ロジック・モデル. このような「評価調査」についての筆者の基本 的な考え方は、A. N. Whitehead の科学をめぐる つぎのような指摘と軌を一にするものである。 「科学は 2 つの源──実践的な源と理論的な源. は、Inputs→Activities→Outputs→Outcomes という 流れで示される。 Inputs は Activities のために投入される資金・ 人・時間などの資源である。. ──を持つ河である。実践的な源とは予定の目標. Activities は、今回の場合は「海外巡回展示事. を達成する方向にわれわれの行為を導こうとする. 業」であり、具体的にいえば、韓国における「マ. 願望であり、理論的な源とは理解しようとする願. ンガ:日本のマンガの新しい表現」と、メキシコ. 望である。わたしは、どのような意味でも、その. における「ウインター・ガーデン:日本現代美術. 1 つの源が他のそれと比べてより高尚であり、ま. におけるマイクロポップ的想像力の展開」であ. た本来より興味があるとは考えていないことを力. る。. 説しておきたい」(A. N. Whitehead, The Aims of. 一般に、ロジック・モデルの作成に当たって. Education, New American Library, 1951, p.107. な. は、「評価担当者」が、「資料(展示作品カタログ. お、訳文は R. K. Merton,森東吾ほか訳『社会理. ・図録・解説など)」「ステークホルダー(関係. 論と機能分析』青木書店、p.413 によった)。. 者、とくに企画者)へのヒアリング」「観察── 展示事業の実施現場を訪れることで得られるいわ. Ⅱ.調査票設計のアイディア. ゆる現場感覚ともいうべきものが重要であるが、 今回は韓国・メキシコでの直接観察が不可能であ. 国際交流基金は、さまざまな国際文化交流事業. ったので、海外巡回に先立ってなされた『水戸芸. を実施しているが、それらは「文化芸術交流事. 術館現代美術ギャラリー』および『原美術館』で. 業」「日本語教育事業」「日本研究・知的交流事. の参与観察をもってそれに代えた──」などから. 業」の 3 つの分野に分けられる。今回の事業評価. の情報にもとづいて、その原案を作成する。ここ. 調査では、文化芸術交流事業を取りあげる。具体. では、このような情報から、分析に取りあげる 2.

(3) ― 15 ―. October 2011. つの展示事業のねらいともいうべきものを簡単に. げられる。この過程は、一般に、「異なる芸術性. まとめておきたい。いうまでもなく、このような. の理解」、より広くいえば、「異なる文化の理解」. 作業が、ロジック・モデルの Outputs と Outcomes. という言葉で表現される。ここで、文化・芸術の. の輪郭を明らかにしていくことにつながるもので. 交流の領域において重要となってくるのは、この. あるからにほかならない。. 「理解」という用語の解釈である。「科学の時代」. 前者は、「2 次元の視覚表現であるマンガを、. といわれる現代社会にあっては、例えば社会科学. 立体化と異なる意味で空間化し、そのマンガの世. の領域についていえば、人間・社会・文化を「理. 界観を表現する」ことをねらいとして企画された. 解」するための観察・調査・実験といったさまざ. という。それは、これまで、マンガの展示が、多. まな客観的手法が開発されてきている。しかし、. くの場合、その原画の展示や、作家の仕事場の再. 人びとが異なる民族・社会・文化を「理解」しよ. 現などといったものにとどまっており、そのマン. うとする場合、このような客観的手法を超えて、. ガの表象する世界観を空間化という形で表現しよ. それぞれが「感情移入(empathy)」をとおして、. うとする試みがなかったからにほかならない。こ. いわば自己の存在を「他者」のなかに置いて、そ. うして、今回の、展覧会のめざすところは、「マ. の「他者」を根源的に理解するということが求め. ンガを読書体験から鑑賞体験に適するものへと変. られることになってくるのではなかろうか。自己. 換させ、マンガ体験の新しい次元を開く場とす. の存在の根底を、そのためには、いったん打ち破. る」ということになる。. るということも必要となってくるのではなかろう. 後者は、「3 つのカテゴリーの作品展示をとお. か。なぜならば、「他者」とは、一方において、. して、『マイクロポップ』──企画者の美術評論. 自己にとっての外在的な存在であるとともに、他. 家・松井みどり氏の造語で、「断片を組み合わせ. 方において、自己にとっての内在的な存在、つま. て独自の世界観を表現したり、時代遅れのものや. り「自己のまだ知らないもう 1 つの自己」でもあ. 凡庸なものに新たな意味を与える」ポップ・アー. るからである。. トを意味する──という現代日本美術の特色を提. そうだとするならば、では、Outcomes として. 示し、現代日本の若手アーティストがそれぞれど. は、どのようなことを考えておけばよいのであろ. のような表現で現代社会と対峙しているかを伝え. うか。それは、上述のような異なる文化、そして. る」ことをねらいとして企画されたという。そし. その文化を生み出した人びと、さらにそのような. て、その 3 つのカテゴリーとは、①日常のとるに. 人びとの織り成す社会や国家といったものの受容. 足らない細部によって触発される連想の過程を表. が、個人の体験を超えて、いわば社会的な受容へ. 現する作品、②マンガ、アニメ、SF 小説、コン. と広がっていくということである。より一般化、. ピュータゲームなど、現代日本のサブカルチャー. 普遍化、抽象化していえば、それは「他者性(oth-. を独創的に使用して表現する作品、③植物、動. erness)」への寛容と受容の社会的広がりというこ. 物、鉱物などの構造を模倣する作品や、外的現象. とになる。換言するならば、異質なものを異質な. が身体に与える効果を伝えようとする作品、であ. ものとしてそのままで受け入れ、なお自分のアイ. る。. デンティティを大切にしながら、その異質なもの. このような Activities のもたらす結果として、. との出逢いと対話を続けていこうとする姿勢を共. 以下のような Outputs と、そして Outcomes が想. 有する「社会的風土(social climate)」の醸成と. 定されることになる。. いうこともできるであろう。. Outputs としては、マンガ体験の新しい次元の. 国際交流基金は、その国際文化交流事業の目的. 提示、あるいは、日本現代美術に共通する「マイ. を「我が国に対する諸外国の理解を深め、国際相. クロポップ」的表現の展開との出逢いをとおし. 互理解を増進し、文化およびその他の分野におい. て、鑑賞者がそこに新たな「芸術性」を見い出. て世界に貢献する」(独立行政法人国際文化交流. し、感じ取り、受け入れるという、ある意味で鑑. 基金法第 3 条)としているが、ここで筆者らの想. 賞者の「自己変革」の体験ともいうべきものがあ. 定した Outcomes の内容は、まさにこのような考.

(4) ― 16 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. え方と軌を一にするものといえるのである。. 以下においては、この「仮説的図式」の構成の考. 以上が、今回の国際交流基金の韓国・メキシコ. え方について述べておきたい。「仮説的図式」(図. における巡回展示事業の評価調査に先立って、筆. 1)は、4 種類の変数群(質問項目群)から構成. 者らが考えた「ロジック・モデル」である。(国. されている。. 際交流基金の評価担当者はその業務内容に即した. それらは、(1)被調査者の社会的属性に関する. より具体的な「ロジック・モデル」を作成してい. 変数群(Socio-Demographic Variables)、(2)展覧. るが、この点については、ここでは触れない。). 会での鑑賞経験に関する変数群、(3)鑑賞経験の. さて、調査票設計の手順のつぎの段階は、この. もたらす変化に関する変数群、(4)日本に関する. ような「ロジック・モデル」を踏まえた「調査の. 変数群、である。. 仮説的図式」の構成ということである。そこで、 (社会的属性に関する変数). (展覧会に関する変数). D1 性別 D2 年齢 D3 学歴 D4 職業. いうまでもなく、この「仮説的図式」では、以. →. Q1 1 | 14. (鑑賞経験のもたらす変化に関する変数). 展覧会の情報源. Q5A 展覧会の影響を受けたか Q6A 日本のマンガ/現代美術へ の理解が深まったか. Q2A 展覧会に来た理由(1∼3) Q3 読んだことがある作品(1∼9) Q4A 印象に残った作品(1∼9) Q9. マンガ・ポップカルチャー /現代美術に関する展覧会 ・講演会の体験. Q10 1 | 6. 展覧会に対する満足度. ↑ (日本に関する変数) Q7A 日本に対するイメージ(事前) ① | ⑪ Q12A 日本を知っているか Q12B 日本が好きか Q12C 日本は信頼できるか Q13 1 | 9. 日本についての情報源. Q14 1 | 7. 日本関心. Q15 A. 日本体験 日本に関する展覧会・公演 ・講演会 日本に行ったこと 日本人の友人・知人・家族 ・親戚. B C. 図1. 調査の仮説図式. →. Q8 A | G. 展覧会を観た事後の変化. Q7B 日本に対するイメージ(事後) ① | ⑪.

(5) ― 17 ―. October 2011. 上の 4 種類に分類される質問諸項目が関係してい. (2)展覧会での鑑賞経験に関する変数群. るというだけでなく、その関係が図中の→で示し. この変数群は、鑑賞経験を 1 つのプロセスと捉. た方向にある、ということをも仮説的に示してい. えるならば、それはさらに「そのような経験その. るのである。「仮説的図式」は、それにもとづい. ものに至るまでの経緯に関する変数」と「今回の. て具体的な質問諸項目とその選択肢が準備され、. 展覧会の鑑賞経験そのものに関する変数」に分け. それぞれの「ワーディング(wording)」が検討さ. られる。前者には、①今回の展覧会を何によって. れるとともに、そのようにして作成された質問諸. 知ったか、という「展覧会の情報源」ともいうべ. 項目(とその選択肢)を盛り込んだ調査票調査の. きものを尋ねる質問項目(Q 1)──一般に、こ. 結果のデータ分析に際しては、そのための「手引. の種の質問項目では、「マス・メディア」「特殊関. き」「青写真」「ロード・マップ」の役割をも果た. 心的メディア」「パーソナル・メディア」という. すのである。. メディア分類法にもとづいて、その具体的な選択. 以下においては、この「仮説的図式」の構成に. 肢が準備されてきたので、ここでもそのような考. 関する考え方を記しておきたい。なお、すでに述. え方を踏襲する(E. L. Hartley and R. E. Hartley,. べたように、今回の国際交流基金の「文化芸術交. Fundamentals of Social Psychology, 1952, pp.162−. 流事業」の「評価調査」としては、「韓国調査」. 164)──、②なぜこの展覧会に来たのかという. と「メキシコ調査」の 2 種類を企画した。この 2. 「展覧会に来た理由」を聞く質問項目(Q 2 B)──. 種類の「評価調査」の「仮説的図式」は、その基. この場合の選択肢としては、「展覧会のテーマそ. 本的な考え方は、全く同じである。したがって、. のもの(アニメ・マンガ、作家・作品、文化・芸. ここでは質問項目の数が若干多い「韓国調査」を. 術)に対する関心という理由」「日本に対する関. 取りあげて、説明していくことにする。. 心という理由」「招待券をもらったなどの『引き. さらに、「仮説的図式」の説明に際しては、後. 金(trigger)的』な理由」、の 3 種類が考えられ. の「データ分析」との関連で、つぎの点について. る──、③今回の経験とは別に、これまでにアニ. も触れておかなければならない。それは、今回の. メ・マンガ・ポップカルチャーに関する展覧会・. 「評価調査」の調査票の質問諸項目は、closed-ended. 講演会への来場経験がどの程度あるかを捉える質. の諸項目(回答の選択肢が準備された形の質問項. 問項目(Q 9)、④今回、展示されている作品のな. 目)と、open-ended の諸項目(回答を自由に述べ. かで、これまでに読んだことがあるものがあるか. てもらう形の質問項目)に分けることができる. どうかを確かめる質問項目(Q 3)、が含まれる。. が、本稿で取りあげるのは、前者のタイプの質問. 後者には、⑤印象に残った作品をあげてもらう質. 諸項目に限るということである。後者のタイプの. 問項目(Q 4 A)、⑥展覧会に対する満足度を尋ね. 質問諸項目については、「計量テキスト分析」と. る質問項目(Q 10)──ここでの諸項目は、それ. して別の論文で扱うことになる。. らを展覧会の「全般的側面」と「個別的側面」に 分けた上で、後者については、これまでの先行研. (1)被調査者の社会的属性に関する変数群 この変数群(D 1, 2, 3, 4)と、それ以外の変数 群 と の 関 係 の 分 析 は 、「 条 件 分 析 ( conditional. 究を踏まえて、それをさらに「作品」「ガイドブ ック」「料金」「スタッフ」「会場」の 5 つの側面 に分けた──、が含まれる。. analysis)」と呼ばれるものである(安田三郎『社 会調査の計画と解析』東京大学出版会、1970 年、. (3)鑑賞経験のもたらす変化に関する変数群. p.83)。それは、「性」「年齢」「学歴」「職業」な. この変数群は、つぎのもので構成した。それ. どのソシオ・デモグラフィック要因が、「展覧会. は、①展覧会を観て、どの程度影響を受けたかを. に関する変数」「展覧会の影響に関する変数」「日. 尋ねる質問項目(Q 5 A)、②展覧会を観て、どの. 本に関する変数」を規定する条件となるであろう. 程度日本のマンガについて理解を深めたかを聞く. という前提にもとづいているからにほかならない. 質問項目(Q 6 A)、③展覧会を観た後での、日本. (E. Babbie, op. cit. p.81)。. のイメージはどのようなものかを SD 法の形容詞.

(6) ― 18 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. の対で判定してもらう質問項目(Q 7 B)──こ. 人びとは、それぞれの「性」「年齢」「学歴」. こでは展覧会を観る前と後で「日本イメージ」が. 「職業」といった社会的属性によって規定されな. どのように変化するかを捉えるというアイディア. がら、展覧会での鑑賞を経験し、それが契機とな. が採用されているが、そのために使用した 11 個. って、そのような鑑賞経験の影響が発現してく. の形容詞の対は、従来からの「国際イメージ」の. る。具体的にいうならば、展覧会から影響を受け. 調査研究で用いられてきたものである──、④展. たことを自覚し、日本のマンガの理解と関心が深. 覧会を観た後の変化がどのようなものであるかを. まったと考え、この展覧会のことをだれかに伝え. 探る質問項目(Q 8)──このような質問項目と. たいと思うとともに、日本イメージもポジティヴ. しては、「アニメ・マンガ・ポップカルチャーへ. な方向に変化し、日本とのさまざまな形でのかか. の関心の深まり(A, B)」「日本への関心の深まり. わり合いを求めるようになるということである。. (C, D, E)」「コミュニケーション志向性(他の人. さらに、そのような影響のあり方は、一方におい. たちに展覧会のことを知らせようとする意向)の. て、人びとのこれまでの「対日オリエンテーショ. 高まり(F, G)」、の 3 種類のものが考えられる. ン」がどのようなものであるかによって左右され. ──、の 4 種類の質問項目群である。. るとともに、他方において、そのような展覧会で の鑑賞経験そのものが、「質問紙調査」への回答. (4)日本に関する変数群 日本に関する変数群は、つぎのものから構成し. という形での「対日オリエンテーション」の表出 を左右することにもなるであろう。. た。それは、①展覧会の鑑賞に先立って被調査者. 今回の「評価調査」設計のねらいとするところ. がもっていた「日本イメージ」についての質問項. は、このような仮説的ストーリーを「質問紙調. 目(Q 7 A)──この項目は、上述の展覧会の鑑. 査」という方法で捉えられる形に落とし込み、そ. 賞後の「日本イメージ」についての質問項目(Q. の結果の「データ分析」をとおして、その検証. 7 B)と事前−事後の対応関係にあるものである. (verification)を試みるというものである。いう. ──、②日本についてどの程度知っているかとい. までもなく、この試みをとおして、はじめの「仮. う「日本認知度」の質問項目(Q 12 A)、③日本. 説的図式」の修正がなされることもありうるので. は好きか、それとも嫌いかという「日本好感度」. ある。. の質問項目(Q 12 B)、④日本は信頼できるか、 それとも信頼できないかという「日本信頼度」の. Ⅲ.調査の概要. 質問項目(Q 12 C)、⑤日本についての情報や知 識をどこから入手しているかという「日本情報接. 今回の評価調査が対象とした文化芸術事業の 1. 触度」の質問項目(Q 13)、⑥さまざまな日本の. つである海外巡回展示事業のテーマ、実施期間、. 事柄に対してどの程度関心があるかという「日本. 実施場所については、すでに述べた。したがっ. 関心度」の質問項目(Q 14)、⑦「日本に関する. て、ここでは、韓国(ソウル)とメキシコ(メキ. 展覧会・公演・講演会などに行ったことがある. シコシティ)において実施した調査の概要につい. か」「日本に行ったことがあるか」「日本人の友人. て記しておきたい。. ・知人・家族・親戚がいるか」といった「日本体. このような調査の方法は、以下のとおり、韓国. 験度」の質問項目(Q 15 A, B, C)、の 7 種類の質. 調査とメキシコ調査で「共通する部分」──調査. 問項目群である。. を実施した国も展示のテーマや内容も異なるもの であるが、それにもかかわらず、両者の調査結果. 以上において、「評価調査の仮説的図式」を構. の「比較」を視座に入れているので、調査方法の. 成する 4 つの変数群について説明を加えてきた。. 基本的なところはできるだけ共通なものとした. 最後に、もう一度、このような「図式」に描かれ. ──と、「相違する部分」がある。. た「仮説的なストーリーの展開」を確認しておき たい。.

(7) ― 19 ―. October 2011. (1)調査対象者. (3)実査期間. 今回の韓国とメキシコにおける評価調査の対象 者は、いうまでもなく展覧会への来場者である。. 韓国:2011 年 1 月 24 日から 2 月 13 日(ただ し 2 月 2 日∼7 日は旧正月休み). しかし、われわれは、日々の展覧会場において、 このような来場者が、「性」「年齢」「学歴」「職. メキシコ:2011 年 1 月 22 日∼2 月 27 日(ただ し 2 月 12 日以降は週末のみ実施). 業」などの社会的属性の点からして、常に一定の 割合になっているとはいえない──例えば、女性. (4)回収数. (あるいは男性)が多い日もあれば、若者(ある いは年長者)が多い日もある──といういわば 「経験法則」ともいうべきものをもっている。そ こで、今回の調査では「一般来場者」に加えて、. 韓国:一般来場者. 200 名、パネル来場者 200. 名 メキシコ:一般来場者. 200 名、パネル来場者. 140 名. 「パネルモニター」からも調査対象者を選んだ。 前者の場合は、展覧会鑑賞後、出口においてラン. Ⅳ.データ分析. ダムに 200 名の対象者を選んだ。したがって、理 論的には、その 200 名は来場者を統計的に代表す. ここでのデータ分析の基本的な考え方は、比喩. るサンプルとなっている──一般来場者の縮図と. 的にいえば、いきなり「木を見る」のではなく、. なっている──と考えられる。後者の場合は、現. まず「森を見る」ところから始めるというもので. 地調査会社に登録しているパネルモニターに対し. ある。質問紙調査のデータ分析においては、「ま. て、一斉に展覧会事業の評価調査を依頼するメー. ず調査で用いられた諸変数(項目)間の全体的な. ル送信を行ない、回答のあったパネルに対して、. 関連の構造を把握した上で、つぎに特定の変数. 性、年齢を割り当てた 200 名を調査対象者とし. (項目)あるいは変数(項目)間の相互の関係に. た。. 焦点を合わせて分析を深めていく」という行き方 がある。筆者は、この前者の側面を「森を見る」、. (2)実査方法. 後者の側面を「木を見る」と呼んでいる。(筆者. 「一般来場者」の場合は、会場出口において調. は、さまざまな質問紙調査のデータ分析におい. 査員が「個別面接法(interview method)」で調査. て、この考え方を採用してきた。その一例が「宗. を実施した。そして、「パネル来場者」の場合は、. 教性の国際比較分析」の試みであり、そこではさ. 展覧会鑑賞による「日本イメージ」の変化を捉え. まざまな具体的な宗教行動を取りあげて分析する. るために、この質問項目に限った鑑賞前の「自記. 場合においても、いきなり個別の宗教行動に焦点. 式調査」と、鑑賞当日の調査員による鑑賞後の. を合わせるのではなく、さまざまな宗教行動の全. 「面接調査」、を併用する形式を採用した。. 体的な関連の構造の把握をとおして個々の宗教行. さて、今回の「韓国調査」と「メキシコ調査」. 動の意味を確認した上で、そのような個別の宗教. の実査は株式会社インテージに委託して実施した. 行動の分析に進んでいくという方法の有効性を例. が、とくに上述の「調査対象者の抽出」と「自記. 証した。真鍋一史「『宗教意識』の構造──日本. 式および面接による調査」は現地の調査機関──. とドイツにおける国際比較──」『関西学院大学. 韓国は EMBRAIN CO., LTD.、メキシコは MUND. 社会学部紀要』(107 号)、2009 年、pp.49−71。な. Group Survey Sampling International──が担当し. お、飽戸弘『社会調査ハンドブック』日本経済新. た。調査票使用言語は、韓国は韓国語、メキシコ. 聞社、1987 年、p.95 のデータ分析の提案も、筆. はスペイン語とした。なお、国際交流基金側は、. 者の考え方と軌を一にするものといえる。). 韓国では「ソウル日本文化センター」、メキシコ. 以下においては、国際交流基金による韓国とメ. では「メキシコ日本文化センター」がそれぞれ対. キシコにおける海外巡回展示事業の評価調査につ. 応した。. いて、「森を見る」タイプのデータ分析を進めて いく。そのために取りあげる質問項目は、今回の.

(8) ― 20 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. 評価調査の closed-ended question items である。. ても、目的を離れて、手段の是非を議論すること. 換言するならば、それらは、「調査の仮説的図式」. はできないのである。ここでのスケール作成の手. に記載した質問項目である。すでに述べたよう. 順は、以下のとおりである。. に、「調査の仮説的図式」は調査票(質問紙)作 成の手引きの役割を果たすものであるが、当然の. 1.質問項目ごとの「単純集計表(simple tabulation. ことではあるが、それは「データ分析」の出発点. =marginal frequency distribution)」を検討する。. ともなるのである。. 一般に、質問紙調査の結果の分析は、それぞれの. さて、ここで「森を見る」タイプのデータ分析. 質問項目に対する「回答の分布」を検討するとこ. がどのようなものであるかについて、より具体的. ろから始められる。それが、人びとの「態度・意. に説明しておきたい。一言でいえば、それは 1 つ. 見・行動」の集合的な──いわば「算術的総和」. 1 つの質問諸項目を個別に取りあげるのではな. というべきものの──諸相を示したのであるから. く、いくつかの質問項目をひとまとめにして取り. にほかならない。しかし、ここでの検討のねらい. 扱うという分析の仕方である。そして、このよう. は、以下のスケールの作成という目標に照らし. な分析の仕方にも、そのような質問諸項目によっ. て、それぞれの質問項目の回答の度数分布が適切. て、①スケール(scale)を構成するという方法. な形となっているかどうか──例えば、極端に回. と、②パターン(pattern)を構成するという方. 答数の少ない質問項目といったものがないかどう. 法、の 2 つの方法がある。スケールとパターンに. か、それぞれの回答の度数分布に極端な偏りがな. ついては、さまざまな考え方があるが、「多次元. いかどうか、回答の度数分布の山が 1 つでない. のものをパターン、1 次元のものをスケールと呼. (bimodal distribution など)というケースがない. ぶ」(飽戸弘、前掲書、p.98)というのが、一般. かどうか──をチェックするというところにあ. 的な考え方といえる。. る。. この 2 つの方法を、今回の調査票の質問項目を. ここでは、さらに、以上のような質問諸項目の. 例にあげて説明する。例えば、Q 13 では、「あな. 「回答の度数分布の形」に関する検討とともに、. たは日本についての情報や知識をどこから入手し. 「森を見る」タイプのデータ分析による「仮説的. ていますか」と尋ねて、新聞記事、テレビ番組、. ストーリー」の検証という今後の分析の方向を念. インターネットなど 8 つの選択肢をあげている。. 頭に置きながら、質問諸項目の「内容とその意味. スケールの方法は、回答者ごとにそれら選択肢に. 連関」に関する検討も行なった。. つけられた○の数を数えて、それを 0 から 8 まで. まず、前者の検討から、今回の調査結果につい. のスケール上に位置づけていくというやり方であ. ては、その回答の度数分布の形が原因となって、. る。それに対してパターンの方法は、これら選択. その後の advanced analysis が困難となるというよ. 肢を、例えば「印刷メディア」「電波メディア」. うな問題点は、発見されなかった。. 「ニューメディア」「インタパーソナル・コミュニ. つぎに、後者の検討から、①被調査者の社会的. ケーション」「文化機関」などにグループ化し. 属性に関する質問項目──性(D 1)、年齢(D. て、それぞれを「カテゴリィ変数(categorical vari-. 2)、学歴(D 3)、職業(D 4)──、②展覧会の. able)」として分析していくというやり方である。. 情報源に関する質問項目(Q 1)、③展覧会に来た. ここでは、スケールの方法を採用するが、それ. 理由に関する質問項目(Q 2 B)、④読んだことが. は、「森を見る」タイプのデータ分析──「調査. ある作品に関する質問項目(Q 3)、⑤印象に残っ. で用いられた諸変数間の全体的な関連の構造の分. た作品に関する質問項目(Q 4 A)、はここでの分. 析」──にとって、この方法が最も適したものと. 析では取りあげないことにした。これらの質問諸. 考えるからにほかならない。いうまでもなく、デ. 項目については、ここでの「仮説的ストーリー」. ータ分析の「方法」は、どこまでも「手段」であ. のコンテキストから離れた、別の形のデータ分析. って、そのよしあしは、データ分析の「目的」に. を試みることがのぞましいと判断したからにほか. 照らしてはじめて判断される。データ分析におい. ならない。.

(9) ― 21 ―. October 2011. 2.スケール作成の準備作業としては、それぞれ. (1)すでに解説した「調査の仮説的図式」を文. の質問項目の「単純集計表」の検討とともに、そ. 章化した「仮説的ストーリー」に合わせて、以上. れらの「質問文のタイプ」の検討があげられる。. の質問諸項目を、(a)1 つ 1 つ独立した「スケー. (ここでは、上述の 1.の作業をとおして、今回. ル」を構成する項目と、(b)いくつかの項目から. のデータ分析から除いた項目以外のものについて. 「1 つの単純加算スケール」を構成する項目、に. 検討した。)このような検討をとおして、今回の. 分ける。. 「評価調査」で用いられた質問は、いくつかのタ. まず、(a)には、上述の「独立したレンジ質問. イプに分けられる──もちろん、今回の「評価調. 文の形をとっている質問項目」(Q 5 A、Q 6 A、. 査」についていえば、このような質問文のタイプ. Q 12 A、Q 12 B、Q 12 C)が入る。. そのものが、調査票設計の段階で、筆者らによっ. つぎに、(b)には、「バッテリー型の質問項目」. て選択されたものであるので、ここではそれらを. (Q 7 B、Q 8、Q 10、Q 13、Q 14──Q 7 A は、. 以下の「データ分析」に備えて再確認しておくと. 展覧会鑑賞前後の日本イメージの変化を捉えるた. いうことである──。. めの質問項目であり、「パネル来場者」に限って 尋ねた質問項目であるので、ここでの「仮説的ス. (ⅰ)独立した「レンジ質問文(range question)」 の形をとっている質問項目 Q 5 A 展覧会の影響を受けたか Q 6 A 日本のマンガへの理解が深まったか. トーリー」の検証をねらった「データ分析」では 取りあげない──)と、「具体的な数字記入式の 質問項目」(Q 15 A、B、C)が入る。 ただ、(b)の場合は、これらの「バッテリー型. Q 12 A 日本について知っているか. の質問項目」で「単純加算スケール」を作成する. Q 12 B 日本は好きか. ことが適切かどうかを、事前に検討しておかなけ. Q 12 C 日本は信頼できるか. ればならない。では、それは、どのようにすれば いいのであろうか。ここでは、それぞれの「バッ. (ⅱ) 「バッテリー(battery)型」の質問項目. テリー型質問項目」ごとに作成した「相関マトリ. Q 7 A①∼⑪. 展覧会鑑賞前の日本イメージ. ックス(Pearson Correlation Matrix)」を手がかり. Q 7 B①∼⑪. 展覧会鑑賞後の日本イメージ. とした。一般に、「相関マトリックス」の検討は、. Q 8 A∼G. 展覧会鑑賞のもたらした変化. ①個々の相関係数の「正負の符号(sign)」、②. Q 10①∼⑥. 展覧会についての満足度. 個々の相関係数の「数値の大小(size)」、③全体. Q 13①∼⑧ Q 14①∼⑥. 日本についての情報源(情報. 的な相関係数の「パターン(pattern)」──例え. 接触度). ば、個々の相関係数の数値が、縦横に主対角線か. 日本関心度. ら離れるにつれて、小さくなるというパターンが 示されている場合には、それらの諸項目は「1 次. (ⅲ)具体的な数字記入式の質問項目 Q9. 元的スケール(unidimensional scale)」を構成する. マンガ・アニメ・ポップカルチャー. などの法則(law)が発見されている(真鍋一史. ・現代美術に関する展覧会・講演会. ほか『ファセット理論と解析事例』ナカニシヤ出. に行ったことがあるか(回数). 版、2002 年)──、の 3 点についてなされる。. Q 15 A 日本に関する展覧会・公演・講演会 に行ったことがあるか(回数) Q 15 B 日本に行ったことがあるか(回数) Q 15 C 日本人の友人・知人・家族・親戚が いるか(人数). ここでは、③については、しばらく置くとして ──いわゆる社会学的なイマジネーションと洞察 からして、以上のいずれのバッテリー型質問項目 についても、「1 次元性」を想定することはでき ないので──、①と②について検討した。その結 果、すべての相関マトリックスにおいて、①につ. 3.以上の質問諸項目から、どのようにして「ス. いては、その符号はプラスとなっており、②につ. ケール」を作成するか、がつぎの課題である。. いては、その数値は「『非常に』あるいは『かな.

(10) ― 22 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. り』高い相関」を示すものが多く、「低い相関」. recode Q 7 B#5(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. を示すものは少ない、ということがわかった──. =1)(5=2).. 相関係数の数値の大小については、筆者は、0.6. recode Q 7 B#6(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. を超えると「非常に高い相関」、0.3 を超えると. =1)(5=2).. 「かなり高い相関」、それ以下であると「低い相. recode Q 7 B#7(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. 関」とする基準を採用してきた──。このことか. =1)(5=2).. ら、ここでの「バッテリー型質問項目」について. recode Q 7 B#8(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. は、「単純加算スケール」を作成して、「森を見. =1)(5=2).. る」タイプのデータ分析を進めても問題はないと. recode Q 7 B#9(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. いう判断がなされた。. =1)(5=2).. (2)では、つぎに、以上の(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)の. recode Q 7 B#10(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. 質問諸項目について、どのようなスケール作成の. =1)(5=2).. 方法をとるかについて説明していきたい。ここで. recode Q 7 B#11(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. は、その具体的な操作の内容を、SPSS のシンタ. =1)(5=2).. ックスの形で表示する。. Compute scale 3=mean.11(Q 7 B#1 to Q 7 B# 11).. (ⅰ)の質問諸項目の場合 recode Q 5 A(1=2)(2=1)(3=0)(4=−1) (5=−2)into scale 1. VALUE LABELS scale 1 −2 ’全く受けなかった’ −1 ’あまり受けなかった’ 0 ’どちらともいえ. recode Q 8#1(5=−2)(4=−1)(3=0)(2= 1)(1=2)into Q 8_1. recode Q 8#2(5=−2)(4=−1)(3=0)(2= 1)(1=2)into Q 8_2. recode Q 8#3(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. ない’ 1 ’まあ受けた’ 2 ’とても受けた’.. 1)(1=2)into Q 8_3.. recode Q 6 A(1=2)(2=1)(3=−1)(4=−. recode Q 8#4(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. 2)into scale 2.. 1)(1=2)into Q 8_4.. VALUE LABELS scale 2 −2 ’全く深まらなかっ. recode Q 8#5(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. た’ −1 ’あまり深まらなかった’ 1 ’まあ深ま. 1)(1=2)into Q 8_5.. った’2 ’とても深まった’.. recode Q 8#6(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. recode Q 12 A(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 1)(1=2)into Q 8_6.. scale 9.. recode Q 8#7(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. recode Q 12 B(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. 1)(1=2)into Q 8_7.. 1)(1=2)into scale 10.. compute scale 4=Q 8_3+Q 8_4+Q 8_5.. recode Q 12 C(5=−2)(4=−1)(3=0)(2=. compute scale 5=Q 8_1+Q 8_2.. 1)(1=2)into scale 11. compute scale 6=Q 8_6+Q 8_7. recode Q 10#1(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. (ⅱ)の質問諸項目の場合. =1)(1=2)into Q 10_1.. recode Q 7 B#1(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. recode Q 10#2(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. =1)(5=2).. =1)(1=2)into Q 10_2.. recode Q 7 B#2(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. recode Q 10#3(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. =1)(5=2).. =1)(1=2)into Q 10_3.. recode Q 7 B#3(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. recode Q 10#4(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. =1)(5=2).. =1)(1=2)into Q 10_4.. recode Q 7 B#4(1=−2)(2=−1)(3=0)(4. recode Q 10#5(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. =1)(5=2).. =1)(1=2)into Q 10_5..

(11) ― 23 ―. October 2011. recode Q 10#6(5=−2)(4=−1)(3=0)(2. 3)(5 thru Hi=4).. =1)(1=2)into Q 10_6.. VARIABLE LABELS NofQ 9. compute scale 8=Q 10_1+Q 10_2+Q 10_3+Q. のポップカルチャー参加”.. 10_4+Q 10_5+Q 10_6.. VALUE LABELS NofQ 9. MISSING VALUES Q 13#1 to Q 13#8(5).. 0. ”なし”. recode Q 13#1(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 1. ”1 回”. Q 13_1.. 2. ”2 回”. recode Q 13#2(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 3. ”3−4 回”. Q 13_2.. 4. ”5 回以上”.. (2=2) (1=3)into recode Q 13#3(4=0) (3=1). Compute scale 7=NofQ 9.. Q 13_3.. VALUE LABELS scale 7. recode Q 13#4(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 0. ”なし”. Q 13_4.. 1. ”1 回”. recode Q 13#5(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 2. ”2 回”. Q 13_5.. 3. ”3−4 回”. recode Q 13#6(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. 4. ”5 回以上”.. Q 13_6.. compute scale 14 = NofQ 15 _ 1 + NofQ 15 _ 2 +. recode Q 13#7(4=0) (3=1) (2=2) (1=3)into. NofQ 15_3.. ”問 9. これまで. Q 13_7. (3=1) (2=2) (1=3)into recode Q 13#8(4=0). (3)以上のような操作を行なうことによって、. Q 13_8.. Scale 1∼14 の 14 のスケールが作成された。. compute scale 12=Q 13_1+Q 13_2+Q 13_3+. VARIABLE LABELS scale 1 ’展覧会の影響度’.. Q 13_4+Q 13_5+Q 13_6+Q 13_7+Q 13_8.. VARIABLE LABELS scale 3 ’日本イメージ(事. MISSING VALUES Q 14#1 to Q 14#6(5).. 後)’.. RECODE Q 14#1(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 4 ’ 展 覧 会 に よ る 変. 3)into Q 14_1.. . 化:日本への関心変化’. RECODE Q 14#2(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 5 ’ 展 覧 会 に よ る 変. 3)into Q 14_2.. 化:アニメ・ポップ・美術への関心変化’.. RECODE Q 14#3(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 6 ’ 展 覧 会 に よ る 変. 3)into Q 14_3.. 化:コミュニケーション変化’.. RECODE Q 14#4(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 7 ’ポップカルチャー. 3)into Q 14_4.. ・現代美術に関する展覧会や講演会への参加度’.. RECODE Q 14#5(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 8 ’展覧会に対する満. 3)into Q 14_5.. 足度’.. RECODE Q 14#6(4=0)(3=1)(2=2)(1=. VARIABLE LABELS scale 9 ’日本に対する認知. 3)into Q 14_6.. 度’.. compute scale 13=Q 14_1+Q 14_2+Q 14_3+. VARIABLE LABELS scale 10 ’日本に対する好感. Q 14_4+Q 14_5+Q 14_6.. 度’. VARIABLE LABELS scale 11 ’日本に対する信頼. (ⅲ)の質問諸項目の場合. 感’.. Compute NofQ 9=Q 9 B.. VARIABLE LABELS scale 12 ’日本情報接触度’.. If(Q 9 A=1)NofQ 9=0.. VARIABLE LABELS scale 13 ’日本関心度’.. recode NofQ 9(0=0)(1=1)(2=2)(3, 4=. VARIABLE LABELS scale 14 ’日本体験度’..

(12) ― 24 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. (4)これら 14 のスケールごとの頻度分布を「単. れ 14 のスケール間の相互の関係を相関係数によ. 純集計表」の形で表示する。その結果、これらス. って示したものであるが、まず、それらの「符. ケールの半分強のものにおいては、その分布に. 号」はほとんどがプラスとなっていることがわか. 「偏り・歪み」があることがわかる。 そこで、そのようなスケールについては、その. る。つぎに、このマトリックスを縦に上から下へ と見ていくならば、scale 1∼8 が「展覧会に関す. 頻度分布を以下のように recode する。. るスケール」、scale 9∼14 が「日本に関するスケ. recode scale 3(lo thru 0=1)(0 thru 0.46=2). ール」となっている。そこで、これらの「相関マ トリックス」は、①左上部の の部分、②右下部 ⊿. recode scale 4(−6 thru 0=1)(1 thru 3=2) (4 thru 6=3).. ⊿. (0.46 thru 0.99=3) (0.99 thru hi=4).. の. の部分、③左下部の□の部分、に分けて検討. するのが得策である。その結果、いずれの「相関. recode scale 5(−4 thru −1=1)(0=2)(1=. マトリックス」においても、①と②の部分で、相. 3)(2=4)(3, 4=5).. 対的に数値の大きい相関係数が多く見られ、③の. recode scale 6(−4 thru −1=1)(0=2)(1, 2=. 部分で数値の小さい相関係数が多く見られること. 3)(3, 4=4).. がわかった。. recode scale 8(−8 thru 0=1)(1 thru 5=2) (6 thru 12=3). recode scale 12(0 thru 9=1)(10 thru 14=2) (15 thru 24=3). recode scale 13(2 thru 9=1)(10 thru 13=2) (14 thru 18=3). recode scale 14(0=1)(1 thru 3=2)(4 thru 9 =3). こうして、14 のスケール作成の作業が完了した。. このことは、「調査の仮説的図式」に示した質 問諸項目の「群内」の相関については、それが高 いものが多いのに対して、「群間」の相関につい ては、それが低いものが多いということを示して おり、この結果から、そのような質問諸項目の分 類にもとづく「仮説的図式」を構築が妥当なもの であったことが、検証されたといえるのである。 このような全体的な傾向とともに、もう 1 点、 注意しておかなければならないのが、scale 7 のア ニメ・マンガ・ポップカルチャー・現代美術に関. 4.森を見る──「相関マトリックス」から「最. する展覧会・講演会への来場経験の程度を捉える. 小空間分析」へ──. スケールである。それは、このスケールとほかの. 以上が、「スケール作成」の具体的な手続きで. スケールとの相関が全体的に小さなものにとどま. ある。このような分析作業の過程で作成された. っており、またその「符号」がマイナスのものの. 「質問項目群ごとの単純集計表」「質問項目群ごと. 割合がほかの場合にくらべてやや多くなっている. の相関マトリックス」「スケールごとの頻度分布. ということである。. を示す単純集計表」などは、紙面の関係でここに. このことから、このスケールは、ほかのスケー. 掲載することができなかった。しかし、このよう. ルとその意味内容がかなり異質であるということ. な分析作業の成果物ともいうべき「スケール間の. が示唆されるのであり、今回の「森を見る」タイ. 相互の関係を示す相関マトリックス」(表 1、2、. プのデータ分析からは削除するのが適当であるこ. 3、4)は掲載しておかなければならない。これこ. とがわかる。比喩的にいえば、全体とはやや異質. そが、今回の調査データの「森」そのものである. である事柄を取り去ることで、「森」の姿はより. からにほかならない。. 鮮明に描き出されることになるのである。. では、そのような「森」をどのように「見て」 いけばいいのであろうか。ここでは、それを「相. さて、ここで、再度、「森を見る」という筆者. 関マトリックス」の検討から始める。ここに掲載. の用語の吟味に立ち返らなければならない。この. した 4 種類の「相関マトリックス」──「韓国一. 用語の前半の「森」という考え方については、す. 般来場者」「韓国パネル来場者」「メキシコ一般来. でに詳細に解説を加えてきた。そこで、後半の. 場者」「メキシコパネル来場者」──は、それぞ. 「見る」ということについての方法論的な議論を.

(13) ― 25 ―. October 2011. 表1. 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(韓国一般来場者) scale 1 scale 2 scale 3 scale 4 scale 5 scale 6 scale 7 scale 8 scale 9 scale 10 scale 11 scale 12 scale 13 scale 14. scale 1 展覧会の影響度 scale 2 日本のマンガ・現代美 術についての理解度 scale 3 後). 日本のイメージ(事. .451 .144. .177. scale 4 展覧会による変化:日 本への関心変化. .243. .393. .233. scale 5 展覧会による変化:マ ンガ・ポップ・美術への関心変化. .425. .465. .309. .716. scale 6 展覧会による変化:コ ミュニケーション変化. .423. .460. .171. .507. .541. scale 7 ポップカルチャー・現代美術 に関する展覧会や講演会への参加度. .027 −.046. .229. .095. .073 −.023. scale 8 展覧会に対する満足度. .334. .376. .116. .263. .367. .535 −.083. scale 9 日本に対する認知度. .119. .106. .064. .241. .165. .134. .281. .004. scale 10 日本に対する好感度. .215. .169. .136. .326. .243. .268. .005. .117. .253. scale 11 日本に対する信頼感. .125. .088. .165. .160. .096. .179. .097. .085. .131. .479. scale 12 日本情報接触度. .132. .194. .189. .383. .269. .303. .318. .192. .378. .229. .195. scale 13 日本関心度. .127. .072. .165. .388. .274. .207. .317. .120. .395. .373. .244. .450. scale 14 日本体験度. .130. .107. .114. .217. .146. .099. .516 −.023. .415. .282. .163. .360. 表2. .429. 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(韓国パネル来場者) scale 1 scale 2 scale 3 scale 4 scale 5 scale 6 scale 7 scale 8 scale 9 scale 10 scale 11 scale 12 scale 13 scale 14. scale 1 展覧会の影響度 scale 2 日本のマンガ・現代美 術についての理解度 scale 3 後). 日本のイメージ(事. .424 .272. .155. scale 4 展覧会による変化:日 本への関心変化. .377. .379. .266. scale 5 展覧会による変化:マ ンガ・ポップ・美術への関心変化. .442. .432. .263. .759. scale 6 展覧会による変化:コ ミュニケーション変化. .354. .423. .237. .473. .530. scale 7 ポップカルチャー・現代美術 に関する展覧会や講演会への参加度. .040. .058 −.037. .117. .158. .118. scale 8 展覧会に対する満足度. .340. .348. .245. .337. .338. .470. .091. scale 9 日本に対する認知度. .128. .154 −.038. .241. .171. .071. .130. .121. scale 10 日本に対する好感度. .147. .155. .192. .333. .156. .167. .112. .198. .276. scale 11 日本に対する信頼感. .124. .047. .087. .203. .136. .149 −.001. .067. .156. .435. scale 12 日本情報接触度. .106. .254. .100. .312. .274. .302. .176. .262. .238. .189. .100. scale 13 日本関心度. .099. .223. .116. .441. .364. .368. .179. .135. .259. .261. .224. .485. scale 14 日本体験度. −.039. .065 −.177. .094. .003. .031. .371 −.114. .388. .198. .178. .246. .330.

(14) ― 26 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. 表3. 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(メキシコ一般来場者) scale 1 scale 2 scale 3 scale 4 scale 5 scale 6 scale 7 scale 8 scale 9 scale 10 scale 11 scale 12 scale 13 scale 14. scale 1 展覧会の影響度 scale 2 日本のマンガ・現代美 術についての理解度 scale 3 後). 日本のイメージ(事. .562 .233. .164. scale 4 展覧会による変化:日 本への関心変化. .429. .407. .204. scale 5 展覧会による変化:マ ンガ・ポップ・美術への関心変化. .512. .481. .222. .455. scale 6 展覧会による変化:コ ミュニケーション変化. .400. .400. .175. .512. .442. scale 7 ポップカルチャー・現代美術 に関する展覧会や講演会への参加度 −.112 −.043. .096 −.107 −.001 −.108. scale 8 展覧会に対する満足度. .509. .442. .256. .332. .468. .409 −.096. scale 9 日本に対する認知度. .101. .150. .027. .052. .036. .061. .166. .118. scale 10 日本に対する好感度. .093. .185. .003. .265. .149. .053. .127. .053. .255. scale 11 日本に対する信頼感. .017. .073. .121. .060 −.029 −.092. .155 −.016. .085. .301. scale 12 日本情報接触度. .205. .197. .055. .326. .160. .247. .043. .076. .318. .305. .116. scale 13 日本関心度. .269. .211. .151. .374. .261. .244. .076. .109. .273. .384. .321. .353. scale 14 日本体験度. .059. .074 −.022. .101. .026. .001. .322. .017. .244. .251. .078. .365. 表4. .247. 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(メキシコパネル来場者) scale 1 scale 2 scale 3 scale 4 scale 5 scale 6 scale 7 scale 8 scale 9 scale 10 scale 11 scale 12 scale 13 scale 14. scale 1 展覧会の影響度 scale 2 日本のマンガ・現代美 術についての理解度 scale 3 後). 日本のイメージ(事. .468 .280. .454. scale 4 展覧会による変化:日 本への関心変化. .194. .308. .277. scale 5 展覧会による変化:マ ンガ・ポップ・美術への関心変化. .344. .423. .298. .395. scale 6 展覧会による変化:コ ミュニケーション変化. .278. .247. .170. .430. .361. scale 7 ポップカルチャー・現代美術 に関する展覧会や講演会への参加度 −.072 −.039. .069 −.008 −.115. .005. scale 8 展覧会に対する満足度. .378. .331. .307. .243. .368. .292. 0.11. scale 9 日本に対する認知度. .072. .039. .025. .126. .114. .188. .243. .103. scale 10 日本に対する好感度. .124. .304. .176. .341. .347. .159. .102. .278. .201. scale 11 日本に対する信頼感. .090. .111. .142. .207. .109. .048. .137. .177. .154. .287. scale 12 日本情報接触度. .075. .164. .206. .355. .137. .318. .179. .269. .336. .406. .144. −.140. .198. .145. .392. .209. .177. .144. .141. .203. .397. .182. .344. .001 −.016. .112. .082. .118. .215. .332. .222. .337. .208. .228. .410. scale 13 日本関心度 scale 14 日本体験度. .184.

(15) ― 27 ―. October 2011. Space Diagram for Dimensionality 2. Axis 1 versus Axis2 100 . .. 10 scale11 日本に対する信頼感. 9 scale10 日本に対する好感度. 1 scale1 展覧会の影響度. 8 scale9 日本に対する認知度. 6 scale6   展覧会による変化:コミュニケーション変化 2 scale2   日本のマンガについての理解度. 50 . .. 13 scale14 日本体験度 12 scale13 日本関心度. 5 scale5   展覧会による変化:アニメ・ポップへの関心変化 4 scale4 11 scale12 日本情報接触度  展覧会による変化:日本への関心変化. 7 scale8   展覧会に対する満足度. 3 scale3 日本のイメージ(事後). 0.. .. 0. .. 50. 図2. .. 100. 諸スケールの SSA マップ(韓国一般来場者). 展開しておかなければならない。科学論的にいえ. り、再び筆者の用語を用いるならば、相変わらず. ば、一般に、「見る」という知的営為には、「算術. 「森」の姿が「見えてこない」のである。こうし. 的(arithmetic)」な方法と、「幾何学的(geometri-. て、これら個々の独立した傾向を背後で関連づけ. cal) 」な方法がある。じつは、以上においては、. ていると考えられる「基底的な側面」を抽出する. 「相関マトリックス」の個々の相関係数の「符号」. データ分析の技法が要請されることになる。この. と「数値」の比較にもとづいて、そこに見られる. ような要請にこたえる技法の 1 つに L. Guttman. 傾向といったものを読み取る作業を行なったが、. の「 最 小 空 間 分 析( Smallest Space Analysis :. このような作業は「算術的な方法」というもので. SSA)」がある。. ある。しかし、このような分析作業には、つぎの. 最小空間分析は、多次元尺度構成法(multidi-. ような問題が残されている。それは、この分析作. mensional scaling)の系列に属し、「相関マトリッ. 業では、「相関マトリックス」に示された個々の. クス」に示された n 個の項目間の関係を m 次元. 相関係数が 1 対の変数間の関係の測度(measure-. (m<n)の空間における n 個の点の距離の大小に. ment)にとどまるものであるかぎり、それぞれの. よって示す方法である。相関が高くなるほど距離. 傾向の読み取りがどこまでも個々に独立したもの. は小さくなり、逆に相関が低くなるほど距離は大. に終わらざるをえないということである。つま. きくなる。通常は諸項目間の関係を視覚的に描写.

(16) ― 28 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. Space Diagram for Dimensionality 2. Axis 1 versus Axis2 100 . .. 7 scale8 展覧会に対する満足度 11 scale12 日本情報接触度 12 scale13 日本関心度. 5 scale5   展覧会による変化:アニメ・ポップへの関心変化 6 scale6   展覧会による変化:コミュニケーション変化 4 scale4 展覧会による変化:日本への関心変化 2 scale2 日本のマンガについての理解度. 50 . .. 13 scale14 日本体験度 8 scale9 日本に対する認知度. 1 scale1 展覧会の影響度. 9 scale10 日本に対する好感度 3 scale3 日本のイメージ(事後) 10 scale11 日本に対する信頼感. 0.. .. 0. .. 50. 図3. .. 100. 諸スケールの SSA マップ(韓国パネル来場者). するために 2 次元(平面)かあるいは 3 次元(立. は、2 次元の空間に、それぞれのスケールの位置. 体)の空間布置が用いられる。アウトプットの座. を示した数字が印字されたものであり、この SSA. 標軸には固有の意味はなく、この点が「因子分. マップに描かれた 4 つの同心円(concentric cir-. 析」と異なるところである。. cle)は、筆者が Guttman のファセット理論を踏. 以上から、「最小空間分析」はデータの全体的. まえて、これら 13 スケールの空間布置にある意. な構造や関連を視覚的に描き出すのにきわめて適. 味づけ(解釈)を試みた結果である。それがどの. した技法であることがわかる。こうして、この技. ような解釈かというと、これら 13 スケールの空. 法は、すぐれた「幾何学的方法」の 1 つというこ. 間布置は、スケール 8 の「展覧会に対する満足. とができるのである(真鍋一史ほか、前掲書)。. 度」を中心にして、それとの関係──相関関係. さらに、上述の「相関マトリックス」をデータ. ──の大きさに応じて、近くの──つまり相関関. 分析のコンピュータ・ソフトウェアのパッケージ. 係が大きい──同心円内、あるいは遠くの──つ. HUDAP ( Hebrew University Data Analysis Pack-. まり相関係数が小さい──同心円内にそれぞれプ. age)Windows 版にかけることによって 4 種類の. ロットされる形となっているというものである。. 「2 次元の SSA マップ(空間布置)」が得られた. いうまでもなく、ここでの空間分割が、「楕円」. (図 2、3、4、5)。コンピュータのアウトプット. ではなく、「円」によって描かれているのは、後.

(17) ― 29 ―. October 2011. Space Diagram for Dimensionality 2. Axis 1 versus Axis2 100 . .. 3 scale3 日本のイメージ(事後). 10  scale11    日本に対する信頼感. 12 scale13 日本関心度 4 scale4 展覧会による変化:日本への関心変化 7 scale8 展覧会に対する満足度. 50 . .. 9 scale10 日本に対する好感度. 5 scale5 展覧会による変化:現代美術への関心変化 1 scale1 展覧会の影響度 6 2  scale2 日本の現代美術についての理解度 scale6 展覧会による変化:コミュニケーション変化 11 scale12 日本情報接触度. 13 scale14 日本体験度 8 scale9 日本に対する認知度. 0.. .. 0. .. 50. 図4. .. 100. 諸スケールの SSA マップ(メキシコ一般来場者). 者の場合はそれが原点からの等距離を示すもので あるからにほかならない。. 一般に、文化交流機関の事業・活動・サービス についての人びとの評価調査をルーティンとして 実施するという場合、そのような評価調査はそれ. 以下においては、「韓国の一般来場者データの. ぞれの事業・活動・サービスを、その参加者・利. SAS へマップ」を取りあげて、知見の読み取り. 用者がどのように評価しているか、どのくらい満. を試みる。scale 8「展覧会に対する満足度」から. 足しているかを尋ねる質問項目に焦点を合わせて. なる第 1 番目の同心円は、それを中心として、そ. きた。それらが、いわゆる「直接的な評価項目」. れ以外の 12 のスケールとの空間的距離を検討す. であるからにほかならない。しかし、それらの項. るための出発点という位置づけがなされる。換言. 目のみに限定するならば、そのような評価調査は. すれば、それは、「調査の仮説的図式」にもとづ. 視野の狭いものとなってしまう。そこで、今回の. く仮説的ストーリーの出発点でもある。仮説的ス. 評価調査においては、「展覧会に対する満足度」. トーリーは、国際交流基金が企画し、実施した文. を捉える質問項目(スケール)の分析を、広くそ. 化芸術交流事業の一環としての「海外巡回展覧. れ以外の質問諸項目(諸スケール)との関連の分. 会」を、海外の人びとがどう評価したか、といっ. 析──SSA の空間布置という技法を用いた分析. た点を出発点としている。. ──という仕方で進めていくというアイディアを.

(18) ― 30 ―. 社 会 学 部 紀 要 第113号. Space Diagram for Dimensionality 2. Axis 1 versus Axis2 100 . .. 7 scale8 展覧会に対する満足度 12 scale13 日本関心度. 5 scale5   展覧会による変化:現代美術への関心変化 3 scale3   日本のイメージ(事後) 2 scale2   日本の現代美術についての理解度 13 scale14 日本体験度 11 scale12 日本情報接触度 50 . .. 4 scale4 展覧会による変化:日本への関心変化 6 scale6   展覧会による変化:コミュニケーション変化 1 scale1 展覧会の影響度 9 scale10 日本に対する好感度. 8 scale9 日本に対する認知度. 10 scale11 日本に対する信頼感. 0.. .. 0. .. 50. 図5. .. 100. 諸スケールの SSA マップ(メキシコパネル来場者). 採用したのである。. していないという結果になっていることに注意さ. このような視座からするならば、つぎに、第 2. れたい──までの 13 のスケールが、4 つの同心. 番目と第 3 番目の同心円内に含まれる scale 1∼6. 円によって、4 つの種類に「分類」されたのであ. は、「展覧会の鑑賞経験のもたらす変化に関する. る。このような諸スケールの分類は Guttman の. 質問諸項目」によって構成されたスケールである. いう「近接仮説(contiguity hypothesis)」にもと. ことがわかる。. づいている。そもそも質問紙調査というものは、. そして、さらに、第 4 番目の同心円内に含まれ. その質問紙(調査票)で用いられる「言葉」の意. る scale 9∼14 は、「日本に関する質問諸項目」に. 味をめぐる実証的な測定の技法であり、したがっ. よって構成されたスケールである。. てそのデータ分析はまさに調査者と被調査者の両. このようにして、scale 1 から scale 14──scale. 方の側における「意味空間」の探求ということに. 7 の「アニメ・マンガ・ポップカルチャーに関す. なる。そこで、Guttman の考え方からするなら. る展覧会・講演会への来場経験の回数についての. ば、調査で用いられる質問諸項目の意味内容が近. スケール」は、すでに述べたように、今回のスケ. い場合には、それら諸項目の SSA マップにおけ. ール間の相互の関係の分析から削除したために、. る位置(空間的距離)は近いものとなる。じつ. スケールの位置を示す数字と scale の番号が一致. は、ファセット理論は、このような「意味空間」.

(19) ― 31 ―. October 2011. と「意味連関」についての概念装置と実証研究を. うなストーリーの起点となる「展覧会に対する満. 踏まえて構築されてきたものなのである。では、. 足感」と、それぞれの諸スケールとの相関の大き. 以上のように分類──因みに、「量的な次元を数. さの違いというところによる。. 量で表すことを測定という。非量的次元の場合、. こうして、最後に、「展覧会に対する満足度感. 測定に相当するのは分類である」とされている. スケール」から最も遠い同心円──「意味空間」. (安田三郎『社会調査ハンドブック』有斐閣、1960. ──内に「日本に関する諸スケール」が位置して. 年)──された、それぞれの諸スケール群ごとの. いる。これらの諸スケールを「状況変数スケー. 「意味」はどこにあるといえるであろうか。ここ. ル」と呼ぶということについては、すでに述べ. では、それぞれの諸スケールに共通する性格に注. た。つぎに、この点についても、もう少し説明し. 目して 1 番目の同心円内の scale 8 を「原因変数. ておきたい。. スケール」、2 番目と 3 番目の同心円内の scale 1. SSA マップ──4 つの同心円の広がり──から. ∼6 を「結果変数スケール」、4 番目の同心円内の. するならば、「展覧会に対する満足感スケール」. scale 9∼14 を「状況変数スケール」と呼ぶことに. を起点として、つぎに「展覧会の鑑賞経験のもた. する。. らす変化に関する諸スケール」が、そして最後に. scale 8 の「展覧会に対する満足度スケール」に. 「日本に関する諸スケール」がくるという空間布. ついては、すでにかなり詳細に解説した。このス. 置の形が読み取れる。つまり、3 種類のスケール. ケールを起点として、このスケールから「意味空. 群をその空間的距離という点から俯瞰するなら. 間」の近い──したがって「相関係数」の数値の. ば、「展覧会に対する満足感スケール」と「展覧. 大きい──ところに、「結果変数」の諸スケール. 会の鑑賞経験のもたらす変化に関する諸スケー. が位置している。しかし、それら「結果変数」の. ル」、そして「展覧会の鑑賞経験のもたらす変化. 諸スケールも、それらが 2 番目の同心円内に布置. に関する諸スケール」と「日本に関する諸スケー. されるか、それとも 3 番目の同心円内に布置され るか、によって 2 分されるという点も重要であ. ル」の相互の距離が近く──「相関が高く」──、 「展覧会の満足感スケール」と「日本に関する諸. る。このことを「ストーリーの展開」の形で書く. スケール」のそれは遠い──「相関は低い」──、. ならば、つぎのようになる。. ということである。. 海外巡回展示事業の展覧会に対して満足した人. 以上のような SSA マップにおける諸スケール. たちは、展覧会から影響を受けたことを認めてお. の布置のパターンは、展覧会における鑑賞経験の. り、日本のマンガへの理解と関心が深まったと考. 影響が、一方においては人びとのこれまでの「対. えており、この展覧会のことをだれかに伝えたい. 日オリエンテーション」がどのようなものである. と思っている。それらの関係は、「かなり高い相. かによって左右されるとともに、他方においては. 関」のレベルにある。しかし、同じ人たちが、日. そのような鑑賞経験の影響が「対日オリエンテー. 本へのかかわり──日本そのものに関心をもった. ション」に関する質問諸項目への回答をも左右す. り、日本に行ってみたいと思ったり、日本語学習. るということを示唆するものであろう。そうだと. への意欲を示すというような形での日本へのかか. するならば、「日本に関する諸スケール」は、鑑. わり──を求めるようになるかというと、その相. 賞経験の影響を規定する「状況変数」であるばか. 関のレベルは「やや低い」ものとなる。そして、. りでなく、鑑賞経験の影響によって規定される. 同じように、そのような展覧会での満足感がただ. 「状況変数」でもありうるのである。そのような. ちにその人たちの対日イメージにつながるかとい. 規定の方向がどちらであるにしても、ここで「状. うと、その相関も「やや低い」レベルにとどまっ ている。. 況」という用語で性格づけを行なった人びとの 「対日オリエンテーション」のあり方は、国際交. ここで 2 番目の同心円内の諸スケールと、3 番. 流基金が、その事業・活動・サービスの最終の目. 目の同心円内の諸スケールとを、異なる同心円に. 標としてきたものにほかならない。こうして、. 分類するポイントは、いうまでもなく、上述のよ. SSA マップの読み取りにもとづく、今回の文化.

表 1 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(韓国一般来場者)
表 3 諸スケール間の相互の関係を示す相関マトリックス(メキシコ一般来場者)

参照

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