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アルゴンイオンによる銅の腐食模様の研究

岡田勝蔵

河西洸一

(昭和44年9月12日受理)

Studies on Etched Patterns in Copper Crystals by

Bombardment with 5 KeV Argon lons

KatsuzoOKADA KoichiKASAI synOPSIs Etch・d p・tterns p・・duced in(111)・(100)・・pPer si・gle cryst・1・a・d・・pP・・p・lycryst・ls by bombardment with 5 KeV argon ions, were observed by electron microscopy by rep1ica methods.  The results obtained are as follows;  1) In spite of the same crystallographic direction of the incident beams, etched patterns vary depending on the orientation of the surface of the single crystals.  2)When comparing etched patterns produced in polycrystals with those in single crystals, 1t Inay be possible to determine the orientation of each crystal grain in polycrystals.

1.はじめに

 イオソ衝撃法で金属を腐食し,その組織を調べる腐食 方法は化学腐食法,電解腐食法,熱腐食法などとともに 従来多くの研究がなされてきた。そしてイオン衝撃法は 金属や半導体の外に,他の腐食方法とちがいガラス,セ ラミック,異なった相からなる合金などの物質をも腐食 できる利点がある。しかし,それは他の腐食法に比べ て,複雑な装置が必要であること,ならびにその現象が 力学的作用,化学的作用,熱的作用などのからみあいに よるため複雑であること1)などから,その研究が遅れて おり,まだ検討する余地があるように思われる。  本研究は5KeVのアルゴンイオンで今までに報告され ていない銅の(100),(111)単結晶ならびに多結晶を衝撃 し,えられた腐食模様をレプリカ法により電子顕微鏡で 観察した。単結晶では入射イオンの方位と単結晶の表面 方位とが腐食模様におよぼす影響を調べ,また多結晶で は腐食模様から結晶粒の方位決定の可能性を検討し,未 だ明らかにされていない結果について報告する。 2. 実験材料および方法  実験に使用した多結晶試料は純度99,99%の無酸素 銅である。試料はエメリ紙0/6(20μ程度)まで研摩し た後パフ仕上げを行い,加工歪を除くためカーボン粉中 で600°C,2時間焼鈍をおこない,次いで表皮層を20μ 十5kV 高周波] 。→レ 亨 ↓ 1.陽 極 2. 3. 4. ベルジヤ 図一1 讐 素 パイレツクス管 高周波電極

5.陰極

6.試 料 7.試料支持台 4 5 1 2 6 7 3       高周波放電型イオン衝撃装置の概略 程度電解研摩して取り除いた。単結晶は(100),(111) を用い,単結晶作成過程中の機械的研摩,電解研摩は, 多結晶と同様におこなった。銅との化学的作用を少なく するため,アルゴンイオソを用いた。イオソエネルギは

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(2)

アルゴンイオソによる銅の腐食模様の研究 5KeVであり,イオン電流30∼40μA程度で実験をお こなった。使用したイオソ衝撃装置は高周波放電型イオ ソ衝撃装置である(図一1)。試料はイオンビームに対し ビーム方向およびこれと直角な面内での移動,ならびに 傾斜が可能であり,陰極と試料表面との距離ユcrn,ビ ームの試料衝撃面積O. 28 cm2程度である。 3.実験の結果および考察

 3−1単結晶の場合

 結晶に対して同じ入射イオソの方位から衝撃しても単 結晶の表面方位により異なる腐食模様が認められた。図 一2は5KeVのアルゴンイオソで銅の(111)単結晶を 120分間垂直衝撃してえられた腐食模様である。数KeVの アルゴソイオンで(111)単結晶の銅を垂直衝撃したスパ ッタリソグパターン2)からイオソによりたたき出された 銅原子は〔110〕方向が最も多いことより,3個の〔110〕 方向をもつ(111)面が最もあらわれやすい。したがっ て,この腐食模様は(111)を底面とし,側面が3つの (111)に囲まれた正四面体(図一3)であると考えられる。 他方,図一4は(001)単結晶を〔111〕方向(入射イオソの 試料表面への射影方向〔101〕と入射イオンとのなす角度 図一2 (111)単結晶を120分間垂直衝撃してえら    れた腐食模様 35°16t)から120分間衝撃してえられた腐食模様である・ 図一5にこの解析結果を示す。これらの腐食模様は入射 イオンの方位が同じ〔111〕であるから2つの解析結果を 1つのモデルで表わすことができる(図一6)。ここで入 射イオソの方向を〔ill〕,単結晶表面を(111),(001) で表わし,(111)単結晶上にあらわれた正四面体を oabc,(OO1)単結晶上にあらわれた腐食模様をodef で示す。同じ入射方位から結晶を衝撃しても,あらわれ る腐食模様が単結晶の表面方位に依存する原因として, 変位原子の表面からの放出され易さのちがいが考えられ る。すなわち,(111)単結晶上のfacetの稜oaは (001)面内にあるから,(001)単結晶表面を〔IH〕方 向から衝撃した場合,oaより下の結晶内で(001)表面 に近く,かつ原子間距離の小さい方向がfacetsの稜 (この場合od)となるように変位原子は表面から放出さ

れ,同様にobはoeに, ocはofがfacetの稜とな

る模様があらわれると考えられる。G. D. Magnuson など3)は10KeVのアルゴソイオンで銅の(111)単結 晶を垂直衝撃した場合と(100)単結晶を〔111〕方向か ら衝撃した場合とのスパッタ率(イオンユケ当り金属原 子が壊散される割合)を測定した結果,異なることを認 図一4 (001)単結晶を〔111〕方向(入射イオンの試料    表面への射影方向〔101〕と入射イオンとのなす角    度35°16t)から120分間衝撃してえられた腐食模様 (111)一… (a)立体的にあらわれた模様 (b)〔111〕方向からみた模様紙面は(111)     図一3図2の解析結果 ン

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(111) (a)立体的にあらわした  (b)〔OO1〕方向からみた  模様       模様。紙面(001)       図一5図一4の解析結果

(3)

昭和44年12月 山梨大学工学部研究報告 第20号  ト不

e ’」  斜線で示した面(001)。点で示した面(111)。 (111)単結晶にあらわれた腐食模様oabc, oab:(lil), obc:(ll1), oac:(111)。  (100)単結晶上にあらわれた腐食模様odef, ode:(1ii),oef:(111),odf:(131)。 ここでoa:〔ilO〕, ob:〔iOI〕, oc:〔OII〕, od:〔2ii〕,oe:〔011〕,of:〔10i〕  図一6入射イオンの方向〔111〕を共通にして図一3と    図一5を1つのモデルであらわした解析結果 めており,このことは腐食模様が単結品の表面方位に依 存することの裏付けと考えられる。  図一7は(100)単結晶を120分間垂直衝撃してえら れた腐食模様である。数KeVのアルゴンイオンで (100)単結晶銅を垂直衝寧してえられたスパッタリソ グパターンから2),表面にあらわれた腐食模様は(100) を底面とし,側面が4つの(111)に囲まれた四角錐(図 一8)である。他方,図一9は(111)単結r?i.]を〔100〕方 向(入射イオソの試料表面への射影方向〔]12〕と入射 イオンとのなす角度35°16’)から120分間衝撃してえら れた腐食模様である。これは複雑で,反射電子線回折を 並用しなければ解析困難であるが,入射イオソの方位が 〔111〕である前述の場合と同様に,入射イオンの方位 が〔100〕の場合でも腐食模様は単結晶(100),(111) の表面方位により異なることが観察された。  3−2 多結晶の場合  多結晶を垂直衝撃してえられた腐食模様から結晶粒の 方位を決定することは,衝撃により生ずる腐食模様が結 晶配列に依存して変化するため,一般的には困難であ る。しかし,事前に種々の方位をもった単結晶を垂直衝 撃してえられる腐食模様を確認し,これと多結晶内の腐 食模様とを比較すれぽ,結晶粒の方位決定は可能である。 図一7 (100)単結晶を120分間垂直    衝撃してえられた腐食模様 111/) (111〕 (111)        (111)  (a)       tb) (a)立休的にあられた模様 (b)〔100〕方向からみた模様。紙面は(100)     図一8 図7の解析結果 図一9 (111)単結晶を〔100〕方向(入射イ    オンの試料表面への射影方向〔112〕    と入射イオンとなす角度35°16’)か    ら120分間衝撃してえられた腐食模様 図一10は5KeVのアルゴンイオンで銅の多結晶を120 分間衝撃してえられた腐食模様であり,A部の粒内の腐 食模様は(111)単結晶を垂直衝撃してえられた腐食模 様(図一2)に対応している。したがって,この結晶粒の 方位は〔111〕であり,粒内の〔110〕方向は図内に示 された方向であると考えられる。  多結晶を垂直衝撃した場合,しぼしぽ粒界付近に地の 腐食模様とは違った円錐状の腐食模様の集積(図一11の A部)が認められた。これらは単結晶を垂直衝撃した場

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(4)

アルゴソイオンによる銅の腐食模様の研究 図一10 多結晶を120分間衝撃してえられた 腐食模様。A部結晶粒の方位〔111〕 図一11 多結晶を120分間衝撃してえられた    腐食模様。結晶粒界に見られる集積    した円錐状の腐食模様(A部)。 合には観察されなかったもので粒内に近いほど小さい       o このような腐食模様の生ずる原因についてはなお不明で あるが,不純物や欠陥など結晶の不完全性と何らかの関 連をもつものと考えられるので,今後さらに試料を薄膜 化して透過電子顕微鏡による直接観察を行い,これらの 点をも追究したい考えである。

4.結

論  銅の(111),(100)単結晶および多結晶を5KeVの エネルギをもつアルゴソイオンで衝撃し,その表面をレ プリカ法により電子顕微鏡を使用して観察した結果,つ ぎのことがわかった。  (1)結晶に対する入射イオソの方位が同じでも単結晶 の表面方位により異なる腐食模様がえられる。  (2)多結晶をイオン衝撃してえられた腐食模様と単結 晶で衝撃によりえられたそれとを比較することにより, 多結晶内の結晶粒方位が決定できる。  終りに本研究を遂行するに当たり,終始ご助言をいた だきました高橋昇教授,富田宏助教授に感謝の意を表し ます。また,本研究に協力された中林惣市氏(当時本学 学生)の労に対して感謝の意を表する。 参 考 文 献 1) JJ. Trlllat:Le bombardement ionique, theorie  et apPlications. C. N. R. S., no.113, P.13・33,1962. 2)ALSouthern, W.R. Willian and M.T, Robinson l  Sputtering experiment with I−to 5−KeV Ar ions.  J.Appl. Phys,.  vol.34, no.1, p.153−163,1963. 3)G.D. Magnuson and C. E. Carlston:Sputterlng  yields of single crystals bombarded by 1・to 10−KeV  Ar ions. J. ApPl. Phys,, vol.11, P.3267−3273,1963 一一

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参照

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