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保育者養成課程における初年次教育としての幼児観察とエピソード記述の実践

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保育者養成課程における初年次教育としての幼児観

察とエピソード記述の実践

著者

朴 信永

雑誌名

教育学部紀要

7

ページ

225-236

発行年

2014

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001886/

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実践報告(Report)

保育者養成課程における初年次教育としての

幼児観察とエピソード記述の実践

Participatory Fieldwork at Kindergarten and

the Episodic Recording Method as Education of

the Fresh-man in the Training Course of

Kindergarten Teachers, Child Care Workers

朴 信永

* PARK, Shinyoung*

1年次学生を対象に後期の科目「幼児理解の理論と方法」の時間中 5 回を附属幼稚 園で観察を行い,エピソード記述を課した。本取り組みの目的としては,定期的な園 訪問,観察,エピソード記述により,子どもたち・教職員・保護者を観察し,園の様々 な環境に慣れることが挙げられる。また,本授業を通して,学生一人ひとりは学びの 主体者であることを意識し,幼児を学びの対象としてとらえる機会を得ることができ ると思われる。学生たちは幼児観察を通じて,幼児に関する単なる理論的な知識の習 得ではない,主体的に見聞きし,調べ,考える力,ひいては臨機応変に対応していく 力,状況に適応していく力のベースを培うことができた。 キーワード:保育者,幼児観察,エピソード記述

Key words:Kindergarten Teachers, Child Care Workers, Participatory Fieldwork at Kin-dergarten, Episodic Recording

1.研究の背景と目的

保育者養成校における学生の成長とは,一人ひとりの子どもを理解し,その内面を 読みとる力の育ちである(安藤,2000)。保育者養成プログラムの中でこのような効 果が最も期待されている科目として実習が挙げられる。実習は,「習得した教科全体 の知識,技能を基礎とし,これらを総合的に実践する応用能力を養うため(平成 15 年 12 月 9 日厚生労働省均等・児童家庭局長,指定保育士養成施設の指定および運営 の基準について)」のものである。すなわち,他の教科目の学習が十分に行われるこ と,また,それらとの有機的な関連が担保されることがあってはじめて効果をあげる。 しかし,実際には現行において実施されている実習が,認識される重要性に反して, 下記のような問題点により,十分な効果をあげているか疑問を抱かざるを得ない。第 一,近年,保育者養成課程が見直される中,過密なカリキュラム編成が緩和される見 込みは明確ではなく,各実習に関連した教科目について十分な学習が行われる前に,

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実習に出ることが少なくない。第二,環境適応能力の低さや,コミュニケーション能 力,社会性の欠如など,保育者養成大学での学習以前の問題がある。第三,各々の実 習先では,上記の問題点に関する理解が不十分なまま実習生を受け入れている。ある いは,上記の問題点を十分理解されている実習先であっても,実習生の指導のために 時間と労力を使うことはほぼ不可能に近い現状がある。こうした条件にあって,より 実効性のある体験的取り組みを工夫する必要がある。 本学部では,1 年次学生を対象に後期の科目「幼児理解の理論と方法」の時間中 5 回を附属幼稚園で観察を行い,エピソード記述を課した。本取り組みの目的としては, 定期的な園訪問,観察,エピソード記述により,教職員・子どもたち・保護者を観察 し,園の様々な環境に慣れることが挙げられる。保育現場での体験を授業に取り入れ ることは,保育者としての資質を養うために重要であり,学生たちは意欲的に幼児観 察に取り組んだ。保育者養成課程において,入学 1 年次に行う乳幼児観察研究は,乳 幼児理解,保育者理解,環境構成の理解を促進する(沢登ほか,2012)。しかし,中 津ほか(2007)によれば,1 年次後期という時期は保育に関する基礎的な学習を進め ている段階であり,学生が現場で何かを学びとれるだけの十分な力を身につけている とは言いがたい。したがって,本研究では,一人ひとりの学生が本取り組みを通して 何を学んだかを明らかにし,今後の学習につなげるためにはどのような配慮が重要で あるか検討する。本研究の目的は,保育者養成課程における初年次教育としての幼児 観察とエピソード記述の実践を通して学生たちはどのような感想をもち,何を学んで いるかを明らかにすることである。

2.研究方法

⑴ 実践対象 1年次後期開講科目である「幼児理解の理論と方法」は,保育士資格取得に必要な 「選択必修科目(平成 13 年厚生労働省告示第 198 号表第 2)」中‘保育の本質・目的 に関する科目’である。なお,幼稚園教諭一種免許取得に必要な「教職に関する科目 (教育職員免許法および教育職員免許法施行規則等)」中‘生徒指導,教育相談および 進路指導等に関する必修科目’である。本研究の実践対象は,平成 25 年度椙山女学 園大学教育学部子ども発達学科保育・初等教育専修 1 年 84 名である。 ⑵ 授業の概要 ・授業題目:幼児観察および関連理論の検討を通した幼児理解 ・授業の到達目標:幼児を理解するための理論と方法論について思考し,幼児観察を 通して現代社会における幼児に対する総合的な理解を深める。 ・授業内容:幼児を保育・教育するためには,まず一人ひとりの幼児について理解を 深めることが出発点となる。そこから一人ひとりの幼児の発達を促す保育が生み出

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される。本授業では,幼児を理解する観察方法とその視点,そして,それを踏まえ た保育者の役割などについて学ぶ。学びの具体的な内容としては,幼児期の心の発 達課程の理解,幼児を教え,育てるために必要な基礎的知識の習得,保育場面での 個人差への配慮などの獲得を目指したい。本科目は,幼児の姿を定期的かつ継続的 に 5 回非参加観察し,子どもの発達の様子や日常生活そのものから子どもを理解 し,さらに観察した事実を客観的に記述して自分の意見や感想をわかりやすく発表 し,意見交換することにより,その理解を深める。 ・授業計画:幼児を保育・教育するためには,まず一人ひとりの幼児について理解を 深めることが出発点となる。そこから一人ひとりの幼児の発達を促す保育が生み出 される。本授業では,幼児観察および関連理論の検討を通して学生たちの幼児理解 を促す。後期 15 回の授業は下記のように展開される。 1.授業のガイダンス 2.幼児期の発達特徴の理解および観察法について 3.幼児期の遊びの重要性および行動観察の理論と技法 4.幼児期の他者理解の発達および観察の留意点 5.観察記録方法の理解および観察グループ別の事前打ち合わせ 6.観察法による幼児の行動の理解とエピソードの作成⑴ 7.観察法による幼児の行動の理解とエピソードの作成⑵ 8.観察およびエピソード作成の中間点検 9.観察法による幼児の行動の理解とエピソードの作成⑶ 10.観察法による幼児の行動の理解とエピソードの作成⑷ 11.観察法による幼児の行動の理解とエピソードの作成⑸ 12.観察のまとめ(グループワーク) 13.レポートとプレゼンテーションの説明,観察のまとめのためのグループワーク 14.プレゼンテーション⑴グループ別の発表および質疑応答 15.プレゼンテーション⑵グループ別の発表および質疑応答 第 1 回目の授業から第 5 回目の授業までは,授業後,コメント用紙を配付し,授業 に関するコメントや疑問点,質問などを書いてもらう。各コメントに対して,個別に フィードバックするとともに,代表的な質問,コメントなどについては次の授業で紹 介,解説する。第 6 回目の授業から第 12 回目の授業までは附属幼稚園で観察および エピソードの作成を行う。発達心理学の重要理論を学生自らフィールドで見つけ,確 認し,グループ内で意見交換を行う。その後,13 回目の授業では,5 回分の観察内容 を振り返りながらまとめ,14 回目および 15 回目の授業でグループごとにプレゼン テーションを行い,評価および質疑応答を行う。 さらに,本授業では,事前・事後学習として二つの課題を課す。一つ目は,日頃か

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ら身近な乳幼児を注意深く観察するようにすること,二つ目は,子どもの発達や障害, 子育て全般にかかわる新聞記事などに興味・関心をもつことである。本授業を通して 学び,深く吟味したことについては,新聞の読者コーナーに投稿することを課題とす る。 ・予想される効果について:保育の中で発生する様々なことを,ただ感想として受け とめるのではなく,自分の五感を通して捉えた子どもの実態,感動や挫折の体験な どを文章にしておくことになる。観察の対象となる一人の子どもの経験に眼差しを 向け,寄り添い,共感し,捉えることで,子ども一人ひとりの主体的経験に近づき, どのような世界を生きているのかという,その子どもの心もちになることができる と思われる。 本授業では,アクティブラーニング方法を通して,下記のような効果が期待できる。 第一に発達心理学的知識を保育の現場で見つけ出すことにより,学生たち一人ひと りが受動的な学びから能動的な学びへと学習態度を変容することができる。第二に 「フィールドワーク」⇒「エピソード作成」⇒「課題提出」という過程を 5 回繰り返 すことにより,今後,仕事をする上での様々な課題を発見・分析し,適切な計画を立 ててその課題を処理し,解決することができる。第三にグループ内の話し合い,議論 により,多様な他者の考えや立場を理解し,相手の意見を聴いて自分の考えを正確に 伝えることができ,他者と協力・協働することができる。第四に学んだことを新聞社 に投稿する取り組みにより,保育(教育)者としての情報発信力を身につけることが できる。 ⑶ 学習効果の評価 ・アクティブラーニングの効果についての測定方法 第 1 回目の授業では,授業のガイダンスを行った後,コメント用紙を配付し本授業 に対する期待および学生自身の学びたいことについて記述してもらう。15 回目の授 業が終わった後は,学生たちが期待していた点,そして,学びたかった点がどれくら い達成され,反省すべき点は何かについてコメントや感想などを書いてもらう。それ によって,学生たちの授業満足度が明らかになると思われる。 フィールドワークへの学生参加型学習およびグループワークなどによる共同学習の 成果はプレゼンテーションおよびレポートを通してその効果を測定することが可能で ある。本研究では,本学キャリア教育特別委員会および全学 FD 委員会による「社会 人基礎力とアクティブラーニングに関するアンケート調査項目」を利用し評価を行 う。 新聞投稿の主要な目的は,課題について深く吟味し,文章でまとめることだけでな く,学生の学習に対するモチベーションを刺激することも含まれている。新入生の多 くは,学習とは「答え=知識」を「覚える=知る」ことであると思いがちである。し かし,今,保育・教育を目指す学生たちに真に求められていることは,何かを覚え,

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知ることではなく,自らの実践的な経験による類推・推察する能力である(伊藤, 2011)。本授業では,学生自身が知識を使って表現する機会を設け,保育(教育)者 としての情報発信力,コミュニケーションスキルを身につけるように導く。15 回の 授業終了後,投稿文章および採択文章を集めることで,学生たちの学びへの意欲・態 度を測ることが可能である。

3.結果

3―1.第一回目の授業後のコメント 第 1 回目の授業後,学生たちから感想などを書いてもらった。学生たちのコメント を下記に示す。 ・1 年生後期,いよいよ実践的になってきました。椙山の教育の先輩はやっぱり すごいと思いました。私も見習って実習では自分で考え自分で行動したいで す。新聞投稿も頑張ります。後期で一回りも二回りも成長したいと思いました。 よろしくお願いします。 ・挨拶をもっと笑顔でできるように頑張りたい。幼児教育論の授業では,ほぼ毎 日,新聞を読んでいたが,最近読めていないので,読んでもっと社会のことに 関心を持つことと,文章力をつけたい。子どもの観察では,環境ばかりを見る のではなく,その子の行動や心理まで考えて,より細かく分析できるようにし たい。 ・幼稚園の観察をすることで,2 月のプレ実習に備えていきたい。まだまだ子ど もの表情や行動で何が言いたいか,やりたいか読み取れないので,少しでもで きるようにしたい。観察もあってプレ実習もあって,経験を積む機会がたくさ んあるので,少しずつ成長していけるように頑張る! ・附属幼稚園に行くのは緊張するけれど,幼児の様子をしっかりとらえて観察し ていきたいです。プレ実習は怒られても,くじけず何かを得て終えられるよう に頑張りたいです。 ・幼児を教育するには幼児を知ることは必要不可欠だと思います。この授業では 実際に幼児を観察し考えることができるので,限られた時間で幼児についての 知識を吸収したいです。また,保育の職場を見ることはとても貴重なので教師 の動きや,子どもへの働きかけも学びたいです。 ・来年の保育実習の前に 2 月にはプレ実習ができることはとてもありがたいこと だと思いました。私は昔から子どものことをよくわからずに今まで生きてきた ので,この授業で幼児を理解する方法などをしっかりと学んで実習など,今後 に活かしたいと思います。あと新聞の投稿も頑張ろうと思います。挨拶もしっ かりと日頃から心がけます。

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3―2.8分間の保育実践ビデオを見た後のコメント 附属幼稚園における幼児観察およびエピソード記述の練習のため,保育実践ビデオ の一部分(8 分間)を音声あり/無しで視聴した。音声無しでビデオを見ることは, 附属幼稚園の観察場面に近い状況で,どれくらい子どもの様子や表情を読みとれるか 試してみるためであった。ビデオ練習を通して,言葉が聞こえない状況においても子 どもの表情の微妙な変化に気づけるためにはどうすればよいか考えることができるだ ろう。非参加観察のみ許されている附属幼稚園では,なるべく子どもと接することな く観察に徹しようと努力する。しかし,学生たちが子どもたちに近づけば自然と子ど もから声をかけられる。子どもたちとの接触を上手に回避することができない一年生 は,最初子どもたちの声が聞こえないくらい距離をとってしまうことも多い。そのよ うな状況でも子どもの一挙手一投足から目を離さず,子どもの声を拾おうと一生懸命 になれると思われる。授業後,学生たちのコメントは下記の通りである。 ・8 分間のビデオを見ただけなのにとても疲れました。現場に行って観察するの はもっと長く,色々な子どもがいるので集中力をつける練習もしなければいけ ないと思いました。日頃からできることをやりたいです。 ・子どもの何を観察すべきかで,言葉,行動は思いついたが,表情,視線,目の 色などは思いつかなかったので,なるほどなと思った。音無しでのビデオを見 たときは,何を言っているか聞こえないので,子ども同士が何を伝えたいのか わからなくて戸惑った。これからの観察でこのような状況で観察することがあ ると知ったので,日常的に観察していきたい。 ・声を聴かずに子どもを観察するのは,すごく集中力が必要だった。表情から子 どもの心を考えたり,なんでその行動をしたのか考えたり。この集中力が観察 やプレ実習でも続けられたらいいな。記録を人に伝えられるように書くのはす ごく難しくて苦戦した。あと,字があんまりキレイじゃないので,今からキレ イな字を書けるように練習しておきたい!クセ字を直す! ・音声ありと無しの映像を見て,やっぱり音声があった方が状況を把握しやすい と思いました。でも,音声がないときは,子どもの一つひとつの表情から気持 ち,視線を読み取ろうと注目して見ることができました。 ・子どもの視点で見てその子どもが何を考え,次にどのような行動を取るのか考 えて,子どもと関われる保育者にならなくてはいけないと思いました。しかし, 子どもの視点や気持ちは激しく変動するし,一人の子どもではなく多くの子ど もの世界がぶつかり合うのでとても難しいと思いました。 ・観察に行くときに,どういうことに着目して子どもを観察すればいいのか,ポ イントが見えてきました。子どもの表情や行動から子どもの気持ちを理解でき るようにこれからも実習で頑張りたいです。 ・2 月のプレ実習の予定が決まってもっと頑張ろうとやる気がでました。音無し

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でビデオを見ましたが,言葉がわからないので詳しく状況を理解できなくて大 変でした。表情や目つきを見て状況を理解することができるようになりたいで す。また,言葉の大切さがわかりました。 3―3.観察開始直前の授業後のコメント 附属幼稚園での観察が始まる前の週の授業後,学生たちのコメントは下記の通りで ある。 ・幼稚園実習(観察)の事前指導を行って気持ちが高まったと同時にとても焦り 始めました。半年間,私は大学で何をしてきたのかと。でも,やるしかないし ここで(5 回の観察)成長していきたいです。50 分集中して色々なエピソード を見て,良いレポートが書けるようになる。 ・この前の課題では全体の流れを書きながら,その都度表情や行動について書い ていたけど,1 場面 1 エピソードで詳細に分析できるように観察して書こうと 思った。もし何を言っているかわからない時などは推測できるように周りにも 気をつけながら観察していきたい。 ・ビデオでは,保育実践の何日分かをまとめてレポートにしてしまったので,観 察記録では気をつけたい。表情や言動,行動をよく見て,濃い 50 分間を過ご せるように頑張りたい。いっぱい観察して子どもの特徴や名前など覚えられた らいいなぁ。不安はたくさんあるけど,精一杯頑張る‼ ・この前提出した課題で指摘を受けた点に注意したいと思いました。来週はいよ いよ観察実習で,ターゲットを上手く見つけられるか,15∼20 行書けるくら いの観察をすることができるのかいろいろ不安ですが,真剣に頑張っていきた いです。 ・授業を受ける前と後で観察への意識が大きく変わったと思う。エピソードを見 つけたり,記録するポイントをおさえて,疑問だった部分も明確になってよかっ た。だけど自分で上手に観察ができるかとても心配になりました。もう一度プ リントなどを復習してよい観察ができるようにしたいです。 ・子どもの行動や表情を子どもの近くで観察し,子どもの心を理解できるように 5回の観察実習で訓練したいです。レポートの書き方はとても参考になりまし た。回を重ねるごとに成長したレポートを書けるよう努力したいです。自分を 高めることのできるノートにしていきたいと思いました‼ ・今日,先生から詳しく注意点や持ち物などを聞いてさらにやる気がわきまし た。漏れのないように観察をして詳しく分析的に書けるといいなと思いまし た。挨拶を明るく元気にしたいと思います‼貴重な観察の時間なので 5 回を無 駄にしないよう努力します‼

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3―4.エピソード記述を通して学んだこと エピソード記述をする時,まずはどの子どもを観察し,記録すべきか,対象をさだ める。しかし,自然と保育者の動きや関わり方,子どもと保育者のやりとりに注目し 観察を深めることもあり得るとした。特別な行動を記録する必要はなく,特定の時間 帯の対象児の行動を記録するということになる。その際,子どもの視点から書くこと ができるようにすると,より明確になることを伝え,子どもの様子,状況,保育活動 などを他の人と共有できるように書くよう指導した。この点は,後日のグループ活動 でお互いの記録を回して読むことを念頭においたこともあるが,翌年から実施される 本実習の実習日誌の書き方の学習にもつながる。 エピソードを書いてみて学んだことについては,附属幼稚園の同じクラスを観察し た学生同士,そして,違う年齢のクラスを観察した学生で構成されたグループで意見 交換を行った。グループ活動を行って感じたことなどを下記のように書いてもらっ た。 ・大人にとっては小さなことでも,子どもにとっては大きな発見,経験である。 子ども同士の会話や先生との会話は,エピソードを書く上で重要なことなの で,もっと注意して観てみたい。表情に注目するだけでなく,やりとりの過程 も重要だと学んだ。また,子どもは素直に自分の心を表に出すことができない こともあった。 ・日常茶飯事なことでも,子どもにとっては成長につながることがたくさんあ る。先生とのかかわりによって学ぶことが多いので,先生の存在はとても大き いと思った。また,先生に気に入られようと,顔色を伺う子どももいることが わかった。 ・グループ活動では,3 歳児と 5 歳児の特徴について話し合ったのですが,かな り違いがあると感じました。5 歳児になると自分で遊びを展開していったり, ゴッコ遊び,見立て遊びが多かったです。3 歳児は 1 回できなくなると諦めて しまうのですが,5 歳児はできないことが悔しいと思えるようになり,何度も 挑戦して成功するという違いがあると皆で話し合ってわかりました。皆の話し 合いの中で附属幼稚園の先生の話もたくさんでました。先生のアドバイスや励 ましで,できないことができるようになった子どもたちを何度も目撃すること ができました。私は外遊びよりクラス内遊びの方が動けるスペースが少なく て,子どもの近くに行こうとしても子どもの行動の邪魔になりそうだったの で,近づけなくてエピソードを書くのに困ったと言ったら,皆も共感してくれ たので私だけではなかったと安心しました。 ・今回の幼稚園見学を振り返って,子どもの様子は実際に目で見ないと理解でき ないことがわかった。教科書から知識を取り入れるだけでなく,現場に足を運 んで観察することで新しく発見できることや驚くことがたくさんあった。例え

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ば,保育所保育指針によると‘3 歳児は平行遊びが多く,4 歳児は身近な人の気 持ちを察することができると書いてあり,5 歳児はけんかを自分たちで解決し ようとする’とある。しかし,実際に,私が見学したクラスは 3 歳児クラスだ が,4 歳児や 5 歳児に見られるような姿を観察することができた。仲間と同じ 空間にいるが遊んでいる間は自分の世界に浸り,平行遊びをしているかと思え ば,けんかの状況で「どうしたの?」などと相手を気遣う姿があった。また, 何とかして仲直りをさせてあげたいと思い,働きかける子どももいた。指針に 定められているのはあくまで目安であり,○歳児は○○ができると断定できる ものではないことを体感することができた。私が疑問に思ったのは幼稚園児は なぜ気持ちの変化が激しいのかということである。他の子どもにおもちゃを取 られて嫌な気分になったはずなのに気分をコロッと変えて次の遊びに移ったの を観て不思議に思った。 3―5.新聞掲載文章 後期の間,学生たちは学び得たことや考えたことなどをまとめ各新聞社に投稿し た。その一部を下記に示す。 【2013.11.17 中日新聞のヤングアイズ欄】私は,幼稚園教諭になるために大学で 勉強しています。先日,幼稚園に観察実習に行きました。観察実習は,子どもと 一切接することなく,子ども同士どのような会話をしているのか,先生とどのよ うに接しているのかを観察し,記録します。子どもたちは,先生以外の大人が来 ると,とても興味を持ちます。しかし,私は普段の子どもたちを観察しなければ なりません。子どもたちが話しかけてきても,「勉強しているから,お話できな いの」と言うしかありません。さすがに無視するのは心が痛むので,「ごめんね」 と何回も言いました。ところが返事をする私のことを相手になってくれる人と 思ったのか,子どもたちが次々と話しかけてきました。これでは正確な記録が取 れなくなると思い,途中から目線を合わせないようにしました。すると,話しか けてくる子が全くいなくなりました。観察実習とはいえ,この五十分がとてもつ らく,長く感じられました。これからもいろいろな形の実習があるでしょうが, 夢に向かって努力したいです。 【2013.11.22 静岡新聞の 10 代 Re:社会欄】私は今年の春から大学生になり,教 育学部で保育について学んでいます。早いものでもう半年以上がたちました。ピ アノの練習だったり,絵本を朗読する練習だったりと,保育士になるにあたり役 立つことがたくさんでとても充実した日々を過ごしています。そんな中,私の通 う大学では「観察実習」というものがあります。実際に幼稚園に行き,子どもを 観察してその間に起きたエピソードをまとめるのです。しかし,ルールがありま す。それは,子どもとしゃべってはいけない,子どもの活動の妨げとなってはい

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4.考

教育学部に入学し保育者を目指す学生層は,卒業後の進路をしっかり見据えた選択 を行っているかに見える。しかし,幼児の子どもたちと関わった経験がある学生はほ んの僅かで,「子ども」というものに対するイメージを先行させて実態と遊離してい る感覚を持ち,また職業としての感覚とのズレを生じさせている(大田ほか,2008)。 本研究において学生たちの初めての幼稚園観察では,学生自身の関心のあるがままに 幼児に近づき感じた疑問や驚きなどの視点が多かったが,回数が多くなるにつれ,子 どもの内面を深く探ろうとする記述が目立つようになった。幼児理解こそが,保育者 の資質として欠くことのできない重要な専門性と考えられる(猿田,2009)ことから すれば,幼児観察およびエピソード記述による一定の成果が認められるであろう。 本取り組みの大きな特徴の一つは,幼児観察とエピソードを記述すること以外に, 子どもに対する考えをまとめ,新聞社に投稿するという活動であった。それは,授業 目標の一つに幼児観察をとおして集めた情報を踏まえ,自分なりの意見や考えを論理 的にまとめ,発信する力を身につけることが設定されていたからである。新聞を活用 した授業には,記事に関心をもち理解を深める受信型のメディアリテラシー教育だけ ではなく,自らメディアに意見を投稿する発信型の授業展開もある(朝日新聞編集部, 2011)。学生たちは自分自身の書いた投書が採用されることでモチベーションが高ま ることはもちろん,同じ学年の学生たちの投稿が新聞に掲載されることで,新聞を読 むことに興味をもつようになった。また,たとえ採用されなくとも,投書を書く練習 を重ねることで,乳幼児を取り巻く世界について「考える力」,自分の考えを「表現 する力」が確実に身につくようになったと見受けられた。 最後に,本取り組みの教育的意義について下記にまとめる。第一に学生たちは保育 の場で子どもと生活をともにしながら,身体全体を使って,観る,聴く,感じる,発 見する,考えることができた。幼児観察を通じて,幼児に関する単なる理論的な知識 の習得ではない,主体的に見聞きし,調べ,考える力,ひいては臨機応変に対応して いく力,状況に適応していく力のベースを培うことができたと思われる。 第二に実習ではないところで,また日誌などを書くことが義務付けられていない場 で子どもや保育者について体験的に考えてみることで,より熱心に子どもに関する理 解を深めるようになっていると思われる。実際,実習では観察だけに徹する機会があ まり与えられていないことを考えると,翌年実施される保育実習に参加した時に役立 つことも考えられる。 第三に幼児観察とエピソード記述を通して,学生たちは主体性や実行力,課題を発 見する力,発信力などが高まったと自己評価している。すなわち,学生一人ひとりが 学びの主体者であることを意識し,幼児を学びの対象としてとらえる絶好の機会を得 たものと考えられる。 これからは,学生たちが今回の授業で得られたこと以上に幅広い知識と技術が養え

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るよう,2 年次以降の授業を通して系統的な学習が必要であろう。本授業の体験を活 かし,2 年次に行われる保育実習に向けて今後の実習事前指導を充実させるために, 実習担当者と各教科担当者との連携による指導システムの構築について考えていきた い。

学生たちの観察を快く受け入れてくださった椙山女学園大学附属幼稚園の先生方皆 様へ心から御礼を申し上げたく謝辞にかえさせていただきます。 「幼児理解の理論と方法」という科目は,椙山女学園大学キャリア教育特別委員会, 全学 FD 委員会により平成 25 年度アクティブラーニング科目として採択され,経費 補助を受けました。 ■引用文献 朝日新聞 NIE 事務局(2011)新聞授業ガイドブック.朝日新聞. 安藤節子(2000)保育者養成における学生の成長.発達,21(83),ミネルヴァ書房,9―15. 伊藤一統(2011)社会の実態と変化に常に関心をもつために.上野恭裕(編)プロとしての保育者 論 教育情報出版,p.173―176. 大田三枝子・伊藤一統・朴信永(2008)保育学科学生の入学動機とプロフィールに関する研究.宇 部フロンティア大学短期大学部人間生活科学研究,44,11―18. 猿田興子(2009)保育科短大における実習指導について――実習記録から幼児理解につながる気づ きの考察.聖園学園短期大学研究紀要,39,59―70. 沢登芙美子・山田千明・高野牧子・池田政子・堀井啓幸・池田充裕・鳥居美佳子・古屋祥子(2012) 力量ある保育者養成教育の試み―「乳幼児観察研究」の授業を通して―.山梨県立大学人間福祉 学部紀要,7,49―58. 鈴木大介(2006)実践教育導入期における「観察演習プログラム」の有用性―保育士養成教育にお ける取り組み―.保育士養成研究,24,1―10. 中津愛子・神林ノブ子・松田幸恵(2007)保育実習の事前指導における保育所見学観察実習.保育 士養成研究,25,19―25. 2013.11.17.中日新聞 ヤングアイズ 2013.11.17.静岡新聞 10 代 Re:社会 2014.1.14.読売新聞 U-25

参照

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