〈特集: 精神科診療における精神療法・カウンセリングの必要性について〉私の精神療法的対応--その断片的覚書
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(2) 4. 近畿大学臨床心理センター紀要 第 6 巻 2013年. 2 .困った時は、患者さんにお願いしてみる。 ある日の夜、20 歳代の女性患者Bさんが急に暴れだし、収拾がつかないのですぐ来て欲 しいと、主治医ではないが管理者として私に緊急コールが入った。前日入院した方で、さき ほどから粗暴な男性の言動のようになり暴れだしたとのこと。解離性同一性障害で、男の交 代人格が突然出現したとみて病棟に駆けつけた。病棟の喫煙室(当時はあった)の隅にあぐ らをかいている。(初めまして、私は千頭と申しますが、Bさんですか?)「オレはCや。」 (Bさんとはどういう御関係ですか?)「あいつの友達で様子を見にきたんや。」(あなたから 見てBさんはどんな人ですか?)「優柔不断で頼りないな」(治療に役立てたいので、このこ とをBさんにお伝えしていいですか?)等。長時間が流れ、深夜に粗暴な行動をされないよ うにこの場を収拾する頃合とみて、(他の患者さんもお休みになっていますし、もう 11 時で すので、そろそろBさんの所に戻って頂けませんか?)「せっかく 5 年振りに出てきたんや。 もうちょっとおらせろ。」(私もそろそろ帰りたいので、急いでもらえませんか?)「そやな、 あいつのベッドで寝るから、薬をくれや。案内しろ。」詰所で薬をのんだ後、スタッフがB さんのベッドに案内し、静かに眠りについた。翌日はBさんに戻っており、昨夜の顛末を告 げると覚えていないとのことであった。 私としては、主人格のBさんは知らず、いきなり交代人格Cさんと出会うことになった訳 で、Cさんを一人の人格として対応するしかなかった。Bさんなりの現実への適応手段とし て創出した劇的世界へ、一時とはいえ参入しえたのは貴重な体験であった。 3 .躁病患者さんの悔しさ 家族に無理に連れてこられた 50 歳代の躁状態の患者さんに対して、次のような話を切り出 した。 「あなたは、うつ状態で辛い時には、周囲の人達は何も言わなかったのに、自分が元気 になり、自分を取り戻して自由に行動できるようになったら、とたんに周囲の人達は自分のこ とを病人扱いし、無理に病院に連れて来られて悔しい思いをしているのではないですか?」と。 その方は思いがけず流涙し、躁うつ病であることの説明と治療を受け入れてくれた。躁状態で も極期をすぎ、どこかで疲労感を覚えている患者さんには、治療導入に有効であることがある。 4 .最後に 患者さんの訴えや症状について一言。治療者の患者さんに対する心理的反応はもちろん、 患者さんを取り巻く周囲の状況およびそれらに対する患者さん自身の反応の総体が症状であ ることを心に留めておきたいと思う。さらに薬物療法を行う場合には、薬物による生体の反 応も症状を修飾する。それと、孤立した状況は、どのような病であっても大きな回復阻害要 因となり、家族の支え、デイケアや作業療法などの社会的療法の重要性を痛感させられてい る。医師一人の力は微力なものである。.
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