Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
一流とは?
Author(s)
森田, 雅義
Journal
歯科学報, 114(3): 3i-3i
URL
http://hdl.handle.net/10130/3356
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一流とは?
森 田 雅 義
新入生学外セミナーなどの折に,しばしば井出吉信学長は,「東京歯科大学は単なる歯科医師を育
てるのではなく,一流(超一流だったか?)の歯科医師を育てることを目指しています。」と言う。極
めて平凡な家庭に生まれ,平凡な人生を送ってきた私としては,「一流とは何だろう?」とその都度
考えてしまう。某テレビ局のある番組では,様々なジャンルでの物や食べ物を,目隠しをして「どち
らが上等か,或は高価なものか。」を見分けられることが一流の証明であるらしい。広辞苑を見る
と,一流とは①第一等の地位。最も優れている段階。(例)「一流選手」 ②一つの流派。(例)「一流を
成す」 ③他とはちがう独特の流儀。(例)「彼一流の書き方」と定義づけている。いずれにせよ,「ふ
つうとは違う」という意味をもつことだけは確かであるらしい。
英語で gentleman という単語がある。日本語では「紳士」という訳語があてられている。この
「紳士」という言葉から,『いつもきちんとした身なりをしていて上品な人』というようなイメージ
を浮かべる人も多いであろう。確かにそういう意味もある。しかし,gentleman という言葉の意味を
英英辞典(今回は,私の好きな COLLINS COBUILD ENGLISH DICTIONARY という英国の辞書)で
調べてみると,次のようにある。⑴a man who comes from a family of high social standing ⑵a man
who is well behaved, educated, and refined in his manners ⑶You can use
gentleman when you
want to refer politely to any man ⑴は家柄が良いこと。⑵は教養があり,品行方正であって,つ
まり人から信頼されなければならない。⑶は man を丁寧に言う時に使われるということである。ま
ず,私にとって⑴はそもそも無理。⑶は言葉としての問題。⑵は努力次第では何とか出来るかもしれ
ないが,簡単なことではない。そんなことをあれこれ考えている時,東京歯科大学広報の262号(水道
橋校舎竣工記念号)の金子 譲前理事長の式辞の中に,次のような一節を見つけた。『明治時代,高山紀齋
先生と血脇守之助先生は,香具師や素浪人による歯抜きのイメージを脱却させ,歯科とは科学あるい
は医学の一部門であるということを国民の皆さんに認識してもらうために戦ってきております。現在
本学の教育指針となっている「歯科医師である前に人間であれ」という言葉は,香具師を対極にして
英国のジェントルマンの気質と素養を歯科医師になる人々に求めた理念であります。』何と高山紀齋
先生と血脇守之助先生が目指していた理想の歯科医師像こそジェントルマンだったのであり,正にこ
れこそが我が東京歯科大学が目指している一流の原点だったのである。
東京歯科大学は歯科大学として,単に歴史と伝統があるだけではない。創設当時から「歯科医療を
通じて,国民に健康で幸福な生活を提供する」ことを理念として掲げ,綿々とその歴史を繋いできた
のである。少々乱暴な言い方をお許しいただけるなら,この時点で他の歯科大学とは一線を画してい
るような気がする。我々教職員は,この創設以来の理念をしっかりと胸に刻んで学生の指導にあた
り,そして学生は勉学に励むことこそが一流になることなのだと思う。そんな使命感とプライドを
もって,今後も東京歯科大学での教育や研究に携わっていきたい。そして,本学を巣立っていく学生
諸君には是非この理念を継承し,“一流”の歯科医師になってもらいたいと思う。
(東京歯科大学英語研究室 教授)
巻 頭 言 ③