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IRUCAA@TDC : 東京歯科大学歯科矯正学講座における卒後研修課程修了者の概要とその働き方

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

東京歯科大学歯科矯正学講座における卒後研修課程修了

者の概要とその働き方

Author(s)

宮崎, 晴代; 茂木, 悦子; 末石, 研二

Journal

歯科学報, 120(2): 181-186

URL

http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.181

Right

Description

(2)

東京歯科大学歯科矯正学講座は,矯正歯科専門教 育1−3) を目的とする3年間の卒後研修課程を1975年 4月に発足し,2017年には40期生が修了した4,5) 。研 修は1期から6期までは旧水道橋病院で行われ,7 期以降は大学の移転とともに千葉病院に移動し現在 は千葉歯科医療センターにて行われている。またこ の研修課程は,日本矯正歯科学会の認定医制度が 1990年に発足してからは,認定医を取得するための 矯正歯科基本研修機関をかねている2,3) 。 本研究の目的は,卒後研修課程40期までの各期人 数や男女数の推移を調査し卒後教育による矯正歯科 医育成の状況を示すことである。さらに,卒後研修 課程修了者を対象としたアンケート調査から,研修 課程修了者の就業状況や働き方,日本矯正歯科学会 認定医および専門医の取得状況を男女別に検討する ことである。 資料および方法 はじめに,東京歯科大学歯科矯正学講座の100周 年資料5)から,卒後研修課程1期から40期までの研 修修了者326名に関するデータを用いて,各期の人 数と男女数を調べた。つぎに,認定医取得のための 年数の条件を満たしている研修課程修了者に向けて 2016年2月に郵送法によりアンケート調査を実施し た。具 体 的 に は,1期 か ら36期 ま で の295名 の う ち,留学生や逝去者などを除く264名を対象とし た。アンケート調査の内容は,研修課程修了直後の 進路,現在の就業状況,兼務する歯科医院の有無, 開業までの年数,診療内容,就業日数,日本矯正歯 科学会認定医および専門医の取得状況などである。 調査票は返信用封筒入りの封書で郵送し,無記名で 調査者に返信されることで匿名化した。

二次出版

東京歯科大学歯科矯正学講座における

卒後研修課程修了者の概要とその働き方

宮崎晴代

茂木悦子

末石研二

東京歯科大学歯科矯正学講座 抄録:東京歯科大学歯科矯正学講座の3年間の卒後研修課程は,矯正歯科専門教育を目的として1975年 に発足した。日本矯正歯科学会認定医の基本研修機関の役割も担い,2017年3月には40期生が終了し修 了者は326名を数えている。本研究の目的は,研修課程による矯正歯科医育成の状況を知ることと,ア ンケート調査より研修課程修了者の就業の状況を示すことである。研修課程の各期の平均人数は8.2 名,10期ごとの男女比では女性の増加が顕著だった。現在の就業状況は矯正専門歯科医院開業37.5%, 一般歯科医院開業14.8%,勤務42.6%であった。主たる就業先以外に勤務先を持つものが46.2%と多 く,主に一般歯科医院であった。就業先では矯正診療のみ行うが82.4%で卒後研修課程が専門性の礎に なっていた。日本矯正歯科学会の認定医取得率は男性81.6%,女性83.3%とどちらも高かったが,専門 医取得率,開業率,大学院進学率は女性の方が低かった。 キーワード:矯正歯科,卒後研修,日本矯正歯科学会認定 医,日本矯正歯科学会専門医,働き方 (2020年3月3日受付,2020年4月1日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.120.181 連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区神田三崎町2−9−18 東京歯科大学歯科矯正学講座 宮崎晴代 181 ― 79 ―

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1.1期から40期までの卒後研修課程修了者につ いて 1)各期の人数と男女数の推移 1期から40期までの卒後研修課程修了者326名の うち,男性は184名(43.6%),女性は142名(56.4%) であった。各期の平均人数は8.2±2.5名で,男性は 4.6±2.2名,女性は3.6±2.3名であった(表1)。 10期ごとに平均人数を求めたところ,1∼10期は 平均5.7名と少なかったが,11∼20期は8.8名,21∼ 30期は9.4名,31∼40期は8.7名と安定して推移して いた(表2)。 男女数の推移を10期ごとにみると,男性の平均は 増加ののち減少に転じていたが,女性は逆に増加を 示していた。10期ごとの男女比の推移については, 女性の比率が22.8%から59.8%に増加し逆に男性は 77.2%から40.2%に減少していた。 2.アンケート調査による卒後研修課程修了者の 就業状況について 調査票回答者数は264名中176名(男性98名,女性 78名)で,回収率は66.7%であった。 1)研修課程修了直後の進路 調査にあたり,一施設に毎週3日以上勤務または それに近似した勤務状況を,主たる勤務先および所 属先があるとして常勤と定義した。研修課程修了直 後の進路は,本学に継続して所属するものとして は,レジデント(準有給職)が29.0%,大学院生が 26.1%,助教(有給職)が7.4%,専門専修科生・専 攻生が2.3%であった。大学を離れるものとしては, 矯正専門歯科医院に常勤で勤務が26.1%,一般歯科 医院または病院に常勤で勤務が5.7%,矯正専門歯 科医院開業が1.1%,一般歯科医院開業が1.1%,主 たる勤務先を持たずに勤務が0.6%,歯科診療を行 わないが0.6%であった(表3)。 表1 卒後研修過程1期から40期までの各期の人数と男 女数の推移 男性 女性 合計 男性 女性 合計 1期 9 2 11 21期 2 7 9 2期 1 0 1 22期 5 2 7 3期 3 1 4 23期 9 2 11 4期 3 0 3 24期 5 6 11 5期 8 0 8 25期 3 8 11 6期 2 4 6 26期 8 4 12 7期 4 2 6 27期 5 7 12 8期 4 1 5 28期 4 2 6 9期 4 1 5 29期 1 6 7 10期 6 2 8 30期 2 6 8 11期 8 1 9 31期 4 3 7 12期 3 4 7 32期 2 6 8 13期 5 4 9 33期 4 6 10 14期 5 2 7 34期 5 3 8 15期 7 4 11 35期 3 7 10 16期 8 3 11 36期 2 7 9 17期 5 2 7 37期 4 3 7 18期 7 2 9 38期 2 6 8 19期 7 1 8 39期 4 6 10 20期 6 4 10 40期 5 5 10 合計 184 142 326 平均 4.6 3.6 8.2 SD 2.2 2.3 2.5 SD:standard deviation 表3 研修課程修了直後の進路 男性 女性 計 人数 % 人数 % 人数 % 本学のレジデント 18 18.4 33 42.3 51 29.0 本学の大学院生 33 33.7 13 16.7 46 26.1 本学の助教(助手) 11 11.2 2 2.6 13 7.4 本学の専門専修科生・専攻生 1 1.0 3 3.8 4 2.3 矯正専門歯科医院に勤務 23 23.5 23 29.5 46 26.1 一般歯科医院(病院)に勤務 7 2.0 3 3.8 10 5.7 矯正専門歯科医院を開業 2 2.0 0 0.0 2 1.1 一般歯科医院を開業 2 2.0 0 0.0 2 1.1 主たる勤務先を持たずに勤務 1 1.0 0 0.0 1 0.6 歯科診療を行わない 0 0.0 1 1.3 1 0.6 計 98 100 78 100 176 100 表2 卒後研修過程10期ごとの男女別平均人数と男女比 男性 女性 合計 男女比(%) 期 平均人数 SD 平均人数 SD 平均人数 SD 男性 女性 1−10 4.4 2.5 1.3 1.3 5.7 2.8 77.2 22.8 11−20 6.1 1.6 2.7 1.3 8.8 1.5 69.3 30.7 21−30 4.4 2.6 5.0 2.3 9.4 2.3 46.8 53.2 31−40 3.5 1.2 5.2 1.6 8.7 1.3 40.2 59.8 1−40 4.6 2.2 3.6 2.3 8.2 2.5 56.4 43.6 SD:standard deviation 宮崎,他:歯科矯正学講座卒後研修課程修了者の調査 182 ― 80 ―

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男女別に見ると,男性は大学院生が33.7%と最も 多く,続いて矯正専門歯科医院に勤務が23.5%,レ ジデントが18.4%の順であった。一方,女性はレジ デントが42.3%と多く,続いて矯正専門歯科医院に 勤務が29.5%,大学院生が16.7%の順であった。 2)現在の就業状況 現在の就業状況は多いものから順に,矯正専門歯 科医院を開業が37.5%,一般歯科医院または病院に 常 勤 で 勤 務 が15.9%,一 般 歯 科 医 院 を 開 業 が 14.8%,矯正専門歯科医院に常勤で勤務が11.9%, 本学の有給職が8.0%,主たる勤務先を持たずに勤 務が6.8%,歯科診療を行わないが1.7%,その他が 3.4%であった(表4)。 男女別に見ると,男性は矯正専門歯科医院を開業 が57.1%と最も多く,続いて一般歯科医院を開業が 17.3%,本学の有給職が10.2%であった。一方,女 性は一般歯科医院に勤務が30.8%と最も多く,続い て矯正専門歯科医院に勤務が19.2%,主たる勤務先 を持たずに勤務が14.1%の順であった。 3)兼務する歯科医院の有無 回答者のほぼ半数が,1か所ではなく,2か所以 上で兼務していた。追加の勤務先のほとんどが一般 歯科医院であった(表5)。 4)研修開始から開業までの年数 開業時期は,研修開始から平均8.8年で,7年目 の開業が18.9%と最多であった(図1)。 5)診療内容 現在の診療内容については,矯正診療のみを行う が82.4%,矯正と一般診療を行うが14.8%であった (図2)。 6)就業日数 1週間あたりの就業日数は平均4.5日で,週に5 日以上の就業が70.5%であった(表6)。男性の就業 日 数 は 平 均5.1日/週 で,週 に5日 以 上 の 就 業 が 92.8%であったが,女性は平均3.7日/週で,週に5 日以上の就業は42.3%であった。 7)認定医取得状況 日本矯正歯科学会の認定医取得率は82.4%で,男 性は81.6%,女性は83.3%であった(表7)。認定医 表4 現在の就業状況 男性 女性 計 人数 % 人数 % 人数 % 本学の有給職 10 10.2 4 5.1 14 8.0 本学その他* 4. 2. 3. 矯正専門歯科医院に勤務 6 6.1 15 19.2 21 11.9 一般歯科医院(病院)に勤務 4 4.1 24 30.8 28 15.9 主たる勤務先を持たずに勤務 1 1.0 11 14.1 12 6.8 矯正専門歯科医院を開業 56 57.1 10 12.8 66 37.5 一般歯科医院を開業 17 17.3 9 11.5 26 14.8 歯科診療を行わない 0 0.0 3 3.8 3 1.7 計 98 100.0 78 100.0 176 100.0 本学その他*:本学のレジデント,大学院生,専門専修科生・専攻生 表5 兼務する歯科医院の有無 兼務している 兼務していない 合計 一般歯科医院 一般・矯正の両方 矯正専門医院 人数 66 12 2 93 173 % 38.2 6.9 1.2 53.8 100.0 図1 研修開始から開業までの年数 図2 現在の診療内容 歯科学報 Vol.120,No.2(2020) 183 ― 81 ―

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取得に要した期間は,研修開始から平均6.7年で, 大半が研修開始から6∼8年の間に取得していた (図3)。 8)専門医取得状況 調査票回答者176名のうち134名が日本矯正歯科学 会の専門医を取得するための年数の条件を満たして いたが,このうち専門医を取得した者は17.9%で, 男性は22.2%,女性は11.3%であった(表8)。取得 者の内訳は,矯正専門歯科医院を開業しているもの と本学有給者で91.7%を占めていた。 1.1期から40期までの卒後研修課程修了者につ いて 日本の31の矯正歯科基本研修機関に関する調査3) によれば,研修医数は2002年から2014年の間に4倍 に増加したと報告されているが,本研修課程の10年 毎の平均研修医数は10名以内に保たれている。患者 数に関しては,千葉病院での年間の矯正開始患者数 は約550名であるので,各研修医は1年目に約50名 の新規患者を配当され,研修修了者から約50名の患 者の引き継ぎを受ける。このように,本研修課程の 研修医一人当たりの患者数が極めて多い2) ことは, 認定医取得のための研修の質の維持に繋がると考え られる。 卒後研修課程に占める女性の比率の増加は,女性 歯科医師の増加6,7)によるものと考えられるが,31∼ 40期の女性比率は59.8%であり,これは同時期の歯 科医師国家試験合格者における女性比率の35.5∼ 41.3%7) よりさらに高くなっている。このことから, 矯正の卒後研修課程は女性に人気が高いものと推察 される。 2.研修課程修了者のアンケート調査について 本研究は他大学の卒後研修機関との比較調査を 行っておらず矯正歯科基本研修機関の一般的な情報 を示しているものではない。また,33.3%からは回 答がなかったことから,調査に協力的な研修課程修 了者の結果である可能性が考えられた。 3.アンケート調査による卒後研修課程修了者の 就業状況について 1)研修課程修了直後の進路 日本矯正歯科学会認定医を申請するには,学会指 定研修機関における矯正歯科基本研修期間を含め5 年以上の矯正歯科臨床研修を修了する必要がある。 本学の場合は3年間の研修課程修了後,大学に継続 表6 現在の就業日数 就業日数/週 男性 女性 合計 人数 % 人数 % 人数 % 6−6.5 16 16.3 6 7 .7 22 12.5 5−5.5 75 76.5 27 34.6 102 58.0 4−4.5 5 5.1 17 21.8 22 12.5 3−3.5 0 0.0 11 14.1 11 6.3 2 2 2.0 5 6.4 7 4.0 1 0 0.0 9 11.5 9 5.1 0 0 0.0 3 3.8 3 1.7 計 98 100.0 78 100.0 176 100.0 表7 認定医取得の有無 男性 女性 合計 人数 % 人数 % 人数 % 取得した 80 81.6 65 83.3 145 82.4 取得しない 18 18.4 13 16.7 31 17.6 98 100.0 78 100.0 176 100.0 表8 専門医取得の有無 男性 女性 合計 人数 % 人数 % 人数 % 取得した 18 22.2 6 11.3 24 17.9 取得しない 63 77.8 47 88.7 110 82.1 合計 81 100.0 53 100.0 134 100.0 図3 研修開始から認定医取得までの期間 宮崎,他:歯科矯正学講座卒後研修課程修了者の調査 184 ― 82 ―

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して所属するかまたは,矯正歯科臨床研修医院の指 定を受けた矯正専門歯科医院に2年間勤務すると認 定医申請の条件を満たす。 今回の調査では,研修課程修了後すぐの進路は, 大学院やレジデントとして大学に継続して残るもの と矯正専門歯科医院に勤務するものが多かった。こ の理由は,研修課程修了者が上記に示す日本矯正歯 科学会の認定医の取得を目指しているためと考えら れる。大学院進学については,男性は全体の33.7% が進学するのに対し女性は16.7%と低かった。 2)研修課程修了者の現在の就業状況 現在の就業状況としては,大学勤務と開業を含め て矯正専門歯科医院(病院)で働くものは研修修了者 の約6割であり,一般歯科医院で働く(開業も含め て)ものが約4割であることがわかった。また,約 半数が歯科医院を開業しており,このうち約7割が 矯正専門で開業していた。 開業率を男女別にみると,男性は74.3%が開業す るのに対し女性は24.3%と男性の約1/3であった。 また矯正専門開業は,男性が57.1%であるのに対し 女性は12.8%と1/4以下であった。これらのこと から,女性は男性と比べて開業する割合も専門開業 する割合も低く,勤務する割合が高いことがわかっ た。歯学部矯正科医局員の調査8) では,希望進路は, 矯 正 専 門 歯 科 医 院 勤 務25%,一 般 歯 科 医 院 勤 務 6%,矯正歯科専門医院開業15%,一般歯科医院開 業で矯正歯科標榜17%,その他9%となっている が,希望進路であるため本調査との比較は難しかっ た。 就業先の兼務について調べたところ,約半数が主 たる勤務先や開業先以外に,主として一般歯科医院 において兼務していることが明らかになった。矯正 歯科を専門に診療する開業医の団体である日本臨床 矯正歯科医会は,2015年に患者自身が信頼できる矯 正歯科を見極めるための受診の目安として ⑴頭部 エックス線規格写真検査をしている ⑵精密検査を 実施し分析・診断した上で治療をしている ⑶治療 計画,治療費用について詳細に説明をしている ⑷ 転医の際の治療費精算まで説明をしている ⑸常勤 の矯正歯科医がいる ⑹専門知識がある歯科衛生 士,スタッフがいるという6つの指針を提言した。 兼務する施設における矯正歯科臨床の状況は詳らか ではないが,設備,治療の質,矯正歯科治療契約書 などの標準化に努める必要があると考える。 診療内容については,矯正診療のみを行っている ものが大半であることから,卒後研修課程での学習 が生涯の専門性を方向づけていることがわかった。 就業日数に関しては,女性の方が男性より診療に 費やす時間が短かった。歯科の労働力の女性化に即 して,良い労働環境とタイムマネージメントのし易 さが将来の労働人口計画に重要であると報告されて いる9) 。女性はタイムマネージメントのし易さから 矯正医を選択しているとも考えられた。 3)認定医および専門医取得について 日本矯正歯科学会は,矯正歯科医療の水準を維持 し向上を図り患者に適切な医療を提供することを目 的に,矯正治療に適切かつ充分な学識と経験を有す るものを「日本矯正歯科学会の認定医・専門医」と し,2018年5月の時 点 で3,202名(男 性2,055名,女 性1,147名)の認定医が登録されている。認定医は ⑴日本の歯科医師免許を有する者 ⑵5年以上の学 会会員である者 ⑶学会指定研修機関における矯正 歯科基本研修修了の後,その期間を含めて5年以上 にわたり矯正歯科臨床研修を修了した者,または, 同等の学識,技術,経験を有する者 ⑷学会の認め た刊行物に矯正歯科臨床に関連する論文を発表した 者 ⑸学会倫理規程を遵守する者,が申請可能であ り,症例の審査を受けて合格しなければならない。 その後,2006年より始まった専門医は,認定医取得 後さらに難易度の高い専門課題症例10症例に合格し た者であり,323名(男性281名,女性42名)が登録さ れている。 他大学の研修機関修了者における認定医取得率は 公表がないが,本研修課程修了者における認定医取 得率は8割を超えており他大学と比較しても高いの ではないかと推測される。また認定医取得率には性 差はなく,むしろ女性の方が僅かに高かった。一 方,専門医取得率は17.9%であるが,女性は男性の 約1/2以下であり,女性は認定医取得には意欲的 だが専門医取得には関心が低いことがうかがわれ た。女性は専門性を高める時期と出産,育児の時期 が重なるためキャリアパスを描きにくいが,専門医 取得のメリットが明確でないためキャリアの目標に ならない現状にも問題があると考える。 歯科学報 Vol.120,No.2(2020) 185 ― 83 ―

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日本矯正歯科学会のデータによれば,認定医にお け る 専 門 医 の 割 合 は10.1%(男 性13.7%,女 性 3.7%)であるが,これに対し本研修課程修了者の認 定医における専門医の割合は16.6%(男性22.5%, 女性9.2%)と高く,本研修課程修了者は矯正歯科の 専門性を高めることに努めていることが推測され た。 歯科矯正学講座卒後研修課程40期までの各期の平 均人数は8.2名で女性の増加が著しく,近年は男女 比が逆転していた。就業は矯正専門開業37.5%,一 般開業14.8%,勤務42.6%であった。主たる就業先 以外に勤務先を持つものが46.2%であった。8割以 上が矯正診療のみを行っており,卒後研修課程を修 了したことが矯正歯科の専門性の礎になったと推察 された。日本矯正歯科学会認定医取得率は82.4%と 高く性差はなかったが,専門医取得率,開業率,大 学院進学率は女性が低かった。本調査により当研修 課程の矯正歯科医育成の状況を明らかにすることが できた。 本論文の要旨は,第75回日本矯正歯科学会大会(西暦 2016年11月7∼9日,徳島)において発表した。 著者の利益相反:開示すべき利益相反はない。 文 献

1)Mitani H, Takahashi I:日本における歯科矯正学卒 後専門教育プログラムについて(A)卒後専門教育プ ログラムの実態について(B)卒後専門教育の改善に 関わる要因について,日矯歯,54:361−368,1995. 2)山口秀晴,鐘ヶ谷晴秀,清水典佳:日本矯正歯科学 会卒後研修機関における矯正歯科専門教育の現状, Orthodontic Waves, 62:393−402,2003. 3)浅野央男,新井一仁,飯田順一郎,他:日本矯正歯 科学会研修機関における矯正歯科卒後教育の現状(第 1報)基本研修機関の平成21・22・23年度実態報告書 から,Orthodontic Waves-Japanese Edition, 73:83 −96,2014. 4)東京歯科大学歯科矯正学講座卒後研修課程30周年記 念誌,東京歯科大学歯科矯正学講座編集,2004. 5)東京歯科大学歯科矯正学講座創立100周年記念誌,東 京歯科大学歯科矯正学講座創立100周年準備委員会, 2014. 6)厚生労働省:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬 剤師統計の概況 http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/33-20c.html [accessed 2019.1.30] 7)資料2 女性歯科医師の現状(2014年)−厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000078002.pdf[accessed 2019. 1.30] 8)京面伺吾,岡崎聡慶,久保田隆朗,他:歯学部矯正 科医局員の就職開業に関する意識調査報告,第69回 日本矯正歯科学会大会プログラム・抄録 集:267, 2010.

9)Haslach SD, Aytepe Z, Kokkari A, et al.:Country and gender differences in the motivation of dental students-An international comparison, Eur J Dent Educ, 22:724−729,2018.

Demographics of postgraduate training course at Tokyo Dental College Department of Orthodontics and alumni working trends

Haruyo MIYAZAKI,Etsuko MOTEGI,Kenji SUEISHI

Department of Orthodontics, Tokyo Dental College

Key words : Orthodontics, Postgraduate training course, Accredited orthodontist, Board-certified orthodontist, Work

style

宮崎,他:歯科矯正学講座卒後研修課程修了者の調査 186

参照

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