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「前提」に関する発達的研究 : 健聴児と聴覚障害児の比較を通して

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(1)「前提+に関する発達的研究 健聴児と聴覚障害児の比較を通して-* 牧野泰美**. A. developmental. -Comparing. Yasumi. ・林部英雄***. MAEINO**,. hearing. Hideo. study. on. ・小野. 〟. disordered. HAYASHIBE***. and. 1.. ”. presupposition. hearing. and. 博****. children-. Hiroshi. ONO****. はじめに. 哲学や論理学の分野では,古くから含意(implication)や前提(presupposition)など, ある文と他の文との関係に関する概念の分析が盛んに行われてきた.また言語学において ち,近年特に前提を中心に多くの研究が行われている。さらに言語心理学の分野でも最近. 磯能主義的な傾向が療まり,文とそれをとりまく環境との関係の一部として,前提の問題 が取り上げられるようになってきた。その状況は伊藤ら(1985)に詳述がある。. 言語心理学における前提の研究はそのはとんどが発達的由究で,研究者の観点の相違に より「否定の範囲+ 部, 1979,. 1980,. (Hayashibe,. 1978), 「主題一評言+. (Hornby, 1971), 「新一旧情報+. (柿. 1983)等,様々な表題が掲げられているが,その多くは本質的にほ前提. と同一の現象を取り上げたものである。しかし,これらのほとんどが,文と絵カ∵ドの照 合をさせるという方法を用いており,直接的にある文と他の文との関係を問'ぅものではな い.そのような文問関係を直接的に問う方法はむしろ推論能力の研究として多く見られる. が(石田,. 1980;岸・須藤,.1982,1983),これらは前提の問題を扱ったものではない.そ. こで本研究では,前提について文間関係を直接的に問う方法を用いて,検討を進める。 1987; さて,聴覚障害児の言語習得に関しては,様々な研究があり(伊藤ら, et al., 1977a,. Uyeno,. 1977b),健聴児と同様の発達が見られる側面と異なった様相を示す側面が指. 摘されているが,これらはほとんど文の形式的な側面を扱ったものであり,文間関係等に 関する機能的な側面について検討したものは見あたらない。前提のような比較的高次の言 語機能の習得は言語の全般的な使用に密接な関係があると考えられ,そのような側面の習 *この研究は一部,文部省科学研究費補助金第61810003号の補助を受けた Stndent) **大学院教育学研究科障害児教育専攻(Graduate ***特殊教育教室(°ept. of Special Education) lnstitnte ****東京学芸大学教育学部附属特殊教育研究施設(Research Tokyo Gakugei tional Children, Univ.). of. Education. for. Excep・.

(2) 198. 牧野春美・林部英雄・小野. 博. 得がある程度進んでいれば,たとえ形式的な側面の習得が不完全だとしても,比較的コミ ュニケ-ショソに支障をきたさないこ・とも考えられる.、このようなわけで聴覚障害児にお ける言語機能の習得について検討することは,言語発達に関する基礎的な知見を得るとい. う観点のみならず,教育ないし臨床の立場畠ゝらも重奏な課題ということができようo 上述のことにかんがみ,本研究痕健聴児と聴覚障害児の比較を通して,言語壊能の中で も特に前提を取り上げ,その習得の様相を明らかにすることを目的とする.. 2.含意と前提 含意と前提をKeenan. (1971)の定義を少し変更して次のように定義しておく。. a)含意. 命琴PとQがあって,ある人Aが"Pが真であればQも真で参る”と判断するとき (これをA:. "P-Q”と表記する),. AにおいてPはQを含意するという。また,. 一般に全員が同様の判断をすると認められるとき,単にPはQを含意するといい, ■ P-Qと表記する。. b)前提 丁-命題RとSがあって,ある人Aが``R-SでありかつnOtR→Sである,,と判断し Rの否定を表す),. ているとき(但しnotR”は,. AにおいてRはSを前提とする. もしくはSはRの前提であるというoこれも含意と同様,全員が同じ判癖をすると ′. 認められるとき,単紅RほSを前提とするなどという. これは例えば次のような場合である。. ・. 2-1喜平ソを食べたのは花子だ.. という文は 2-2. 誰かがミカンを食べた。. という文を含意して寧り,また, 2-3. ミカンを食べたのは花子ではない。 という2-1の否定も2-2■を含意している。とのとき2-2を2-1の前提と呼ぶ。 ここで,′前提を別の角度からとらえると,前提は,話し手と聞き手の両者が既に知って. いる悟報,ないし早ま,話し手が,聞き手が既に知っていると佐定し七いる情報であり,こ の故vL-前掛ま, 「既知情報+, 「旧情報+などと呼ばれることもあるo. 前提は文あ塑や文紅含まfLる語義によって顕著なものとそうでないものがある.前提が 明らかである文には,例えば,関係節を含む文,ある種の補文,特定の動詞を含む文等が. あるが,詳しく疫「材料文+の項で述べる. 3∴方 !. 実験対象. A)健聴児(者). 法.

(3) 199. 「前提+に関する発達的研究. ・横浜市内の小学校児童(455名) 2年生・122名, 4年生・157名,. 6年生・176名. ・大学生(29名) B)聴覚障害児(者) ・横浜市内の聾学校児童・生徒(81名) 6名 小学部児童・1⊥2年生・. 中学部生徒・. 3-4年生・. 10名. 5-6年生・. 11名. 27名. 高等部生徒・ 27名 Ⅱ. 実験方法 三者択一式のペーパーテストを集団実施の形で行った。. あった。. 実験における教示は次の通りで. (テスト用紙に印刷されており,口頭でも説明された。). ・教示文 上の文から考えて,下の文は, ない。のどれがあてはまるでしょうか。. ①ただしい。 ③まちがっている。 ③どちらともいえ ひとつだけえらんでばんごうを○でかこみま. しょう。 以下に問題例を一題あげるム ・問題例 花子をな(やったのは太郎だ。 誰かが花子をな(.った。. ①. ただしい. ②. まちがっている. ③. どちらともいえない. この例のように,まず,材料文が提示されている。次に,その材料文の前提ないしほ前 提の否定が,. ′正誤判定文として提示されている。被験者は材料文から考えて正誤判定文が. 正しいかどう、かを判断し,選択肢のうち1つ甘こ○を付けるわけであるo. 材料文は「4・材. 料文+の項に掲げた10種の文タイプ忙より療成されている.そして前提は,文が肯定で あっても否定であっても共通に含意されるものであることから,それぞれの文タイプに肯 定,否定の両方の材料文を作成した。 また,正誤判定文ほ, ぐため,. a)全ての正答が①のみ,あるいは②のみになってしまうのを防 ち)正誤判定文の肯定,否定の別による反応率の差をみるため,の理由により材. 料文の前提を述べているものと,その否定を述べているものを作成したQ 故に,. 1つの文タイプにつき4種の問題が作成され,そのうちわ桝ま,材料文と正誤判. 「肯定(Ⅹ) ・否定(notY)+ 定文の肯定・否定の組み合わせにより「肯定(Ⅹ) ・肯定(Y)+ 「否定(notX) 「否定(notX) ・否定(notY)+となった。従って問題数は全 ・肯定(Y)+ 部で40題である。 実験に際しては, 40題の問題を提示する前に2題の練習を行い,被験者に十分理解させ.

(4) 200. 軟野春美・林部英雄・小野. 博. た上で実施するように留意された.なお,テスト用紙において材料文ほランダムに配列さ れており,漢字には全てふりがなが付抄られている.. 4.材 実験に用いられた文タイプは,. 料. 文. 「前提+が顕著に存在する以下の10種であるo. イ)関係節を含む文 RCE文-・-関係節が文の中心に位置する文タイプ. A). 〈例)花子さんは,太郎君が落とした-ソカチをひろった。 (前提)太郎君は-ソカチを落とした。 B) RCL文--・関係節が文頭に位置する文タイプ (例)マラソソ大会に出場した太郎君は,足を痛めた。 (前提)太郎君はマラソソ大会に出場したo C)時文--時の関係節を含む文タイプ (例)花子さんは先生に会った時,お礼を言った.. (前提)花子さんは先生に会った。 T,)補文 D)ノ補文・-・・「-の+で結合される文タイプ 〈例)次郎君は,友人がテレビに出演していたのを見た。. (前提)次郎君の友人はテレビに出演していた。 E)コト補文--「-こと+で結合される文タイプ (例)花子さんは知人が死んだことを悲しんだ。 (前提)花子さんの知人が死んだ。 F)分裂文-・-主語あるいは目的語が主題化されている文タイプ (例).花子をなぐったのは太郎だ. (前提)誰かが花子をなぐった。 -)特定の動詞を含む文 G)開始文・--「-し始めた+という動詞を含む文タイプ (例)太郎は走り始めた。 (前提)それまで太郎は走っていなかった. H)終了文-・-「-し終えた+という動詞を含む文タイプ (例)太郎は走り終えた。 (前提)それまで太郎は走っていた。 Ⅰ)継続文--「-し続けた+という動詞を含む文タイプ ・. (例)太郎は走り続けた。. (前提)それまで太郎は走っていた。 J)復帰文--・「戻った+,. 「帰った+等の復帰の意味を持つ動詞を含む文タイプ (例)太郎は名古屋に帰った..

(5) 201. 「前提+に関する発達的研究. (前提)太郎は名古屋をこいたことがある. 5.結. 果 1に示す.. 健聴児(老)及び聴覚障害児(者)における平均正答率の発達的変化をFig・ 健聴児(老),聴覚障害児(老)共忙,加齢に 。ん. つれて正答率が増加していくことがわかる。. 100. 健聴児(者)では2年生から4年生にかけて, かなり正答率が上昇し,大学生でほぼ完壁に 正答できることを示している。聴覚障害児. チ. (普)は全般的に健聴児者と比較して正答率 が低く,前提の習得が遅れることを示してい. る。また,総合的な見地からすると聴覚障害. 捷*PF書兄(者). 児(者)は高等部段階に至っても健聴児の小 4レベルには達していない。 Fig.. Fig.. 2-1及び. 2-2. 50. は,各学年にお. ける出題パターン別に見た反応率を示してい る。ここでいう出題パターンとは,材料文と. 正誤判定文の肯定・否定の組み合せのこと. 0. ≡ I: :嘉. で,先に述べたように4つのパターンがあ る。. Fig.. 霊 室. 1平均正答率の発達的変化. これらから,健聡児(老),′聴覚障害児(者) 4/4 10. 2年生. 4年生. 6年生. 大学生. ③によ苛ZR筈. ①o. 50. r②tこよも訳苔. 正筈. 0 X YIY Fig.. XIXIX YIY. X Y「Y. XIXIX YIY. A. YIY. XIXIX YIY. X YIY. Xlヌ1X. 1;菅走(zLOり. YIY. 211各学年軒こおける出題パターン別に見た反応率〔健聴児(普)〕.

(6) 202. 牧野春美・林慈英雄・小野 ㌔ 一oo. 小・中. ・ト億. 博. Jト・ 3E. 中等部. 井等都. 50. A. XIXIX. Y「Y. Fig・. Y「Y. 2-2. X. XIXIX. A. X「XIX. Y. 「Y. Y. IY. Y「Y. X. Y「Y. XIXIX. YIY. 3( XIXIX. Y「Y. YIY. YIY. 各学年における出帝J<タ-ソ別に見た反応率〔聴覚障害児(普)〕. 共に材料文が肯定文である問題のほうが,材料文が否定文である問題よりも高い正答率を 示すことがわかる。特に聴覚障害児(者)の高等部段階の生徒に着目すると,材料文が肯 定文である問題の正答率は健聴の小4レベルK達しており,. Fig.1に見られるような小4. レベルからの平均的な遅れは否定文に起因するものであることを示唆している。 また,誤答は加齢につれて減少していくが,誤答の中では「③どちらともいえない+を 選択する率が増加する慣向が見られる.この傾向は健聴児(普)に特に巌著であり,大学 生の場合,誤答の大部分はこれによるものである。 3-1及びFig.. 次に,学年別の各文タイプにおける正答率をFig. 「4.材料文+の項に掲げた10種である.. いう文タイプとは, ㌔ 00. E}-. 3-2に示す。ここで. まず健聴児(者)を見ると,どの文. --□・・-一口・---亡ト・-・q. 一.□. ローー・・{}---一口 ̄. JL.. ヘこ恕・=2:.ミ・匂. タイプにおいても加齢につれて正答率 も高くなっており,また,高い正答率 を示す文タイプと,低い正答率を示す 文タイプは,どの学年を見ても概ね一. El-・-・□大学生 0-I-・0. 致していることがわかる。文タイプを. ¢年生. ムーー「△ 4年生. 50. 米---一光. 正答率の高い順に大まかに分摂する. 2年生. と,. ①関係節構文(RCE文,. 及び補文(ノ補文,コト補文),. … … 重 文. Fig.. 3-I. 文. コ. I. 捕 文. 要. 撃 要 撃 葦婁. 学年BL)の各文タイプ紅おける正答率 〔健聴児(者)〕. RCL文). ②時の. 関係節を含む女(時文), ③特定の動詞 を含む文(開始文,終了文,継続文,. 復帰文), ④分裂文,といった順とな.

(7) 203. 「前提+紅関する発達的研究. っているo 也. 学年を追って見ていくと,小学2年 生段階では,まだ,文において「前提+. の習得が完全にはなされておらず, 年生, 6年生となるに従い,徐々に習 得されていく傾向が見られる。ただ. 4. 淋.  ̄■ー-,B-・・一丸. 、. ・粁・・′. 叫 軒・・-・糸. a:. し,特定の動詞を含む文,分裂文に関 しては,. \、、. 6年生段階においても,まだ. -O. /′′. 「前提+ほあいまいな傾向にあり,こ れらの習得はもう少し先の段階になる. ♯・・-1・半. ことがわかる.それケこ,関係節構文や 補文等は2年生, 4年生, 6年生とほ. 0-・-C小.ホ. ホ等B8. ロ・--・・⊂】中等辞. ムーー・・△. ′ト・中. ”.小・任. ぼ一様な正答率の伸びが見られるが,. 特定の動詞を含む文及び分裂文におい ては,. 2年生から4年生にかけての伸. びが日立つ。さらに,大学生において. 良. R. 量星 Fig.. 3-2. 開始文の正答率が,他の文タイプに比. ノ. コ. 空. 垂. 要. 撃 要撃 聾 隻. 学年別の各文タイプにおける正答率 〔聴覚障害児(者)〕. ベ落ち込んでいることも見受けられる。 一方,聴覚障害児(者)紘,健聴児(者)に比較すると,全体的に正答率が著しく劣っ ているo確率水準(33.3%)を下回る文タイプもあり,小学部段階では「前提+の習得は なされていない。高等部段階においても文タイプによる,:ラつきが見られるoただし,文 タイプを正答率の高いものからならべると,その順序ほ健聴児(者)と-鼓しこの点にお いて同様な傾向が見られる。. さて,次に聴覚障害児(者)の傾向をさらに追究するため,聴覚障害児(者)全体の中 から健聴の小学4年生の平均正答率(83・1%・)以上の成績をあげた者のみを選抜して分析 を試みた。聴覚障害児の言語教育において「9歳レベルの壁+が存在すると言われている からである.この条件に該当する15名(以下,選抜群と記す)の平均正答率は91・7yoで あった。 Tablelは選抜群における出題パターン. Table. l選抜群における出題′{ターン別 の誤答数. 別の誤答数を示したものである。彼らの誤 答は非常に僅かであるが,その中でむま材料. 文が肯定文である問題に誤答が少なく,材. 材. 料. l誤答数. 文l正誤判定文. 肯定(. Ⅹ). 肯定(. Y). 肯定(. Ⅹ). 否定(notY). 8. 料文が否定文である問題に誤答が集中して いることがわかる。つまり,小4レべ/レを. 越える聴覚障害児(者)は「誤答をすると. 否定(notX). 骨定(. すれば否定文である+ということが示され. 否定(notX). 否定(notY). ている。 Fig. 4は各出題パターンにおける誤反応. Y). 15 21. 計1. 50.

(8) 204. 牧野春美・林部英雄・小野. 博. 率を示したもので,健聴の小学2年. oん 50. 坐,小学4年生,小学6年生,大学. 坐,それに聴覚障害の選抜轟を比較し 八... たものである。. ヽ.. ′. \. tTx 札・._. (Ⅹ才壬之・95766) 示している。 (Ⅹ皇王2・3-). -一也4年& /か■、㌧*'_//・D-・-・--つ-. 飯こ-甘,/,/ \・て′. 選抜幹. 選抜群と他の健聴の4群とは,各出 ・. __---1コ・ ̄. A. A. 1X. -8紳生(x壬=o・950679). 題パターンにおける誤答数について,. 「X. いずれも有意差は見られなかったが, 1=菅走(JIOt). Y Fig・ 4. ーン別の誤答数について,選抜群との 4×2分割表によるカイ 2乗の数値を. 2叫Ⅹ壬…7・乃54). /・/. 、・. IY. ( )内は,出題パタ. Y. カイ2乗の値から選抜群の誤答の傾向. IY. は大学生のレベルに非常に近いことが Tablelに見られる わかる。つまり,. 学年別の各出題パターンにおける誤反応率. 「誤答があるとすれば否定文である+という傾向は健聴の大学生レベ. Table. ルに近いということである。. 2. 選抜群における文 Table. 選抜群の誤答の文タイプ別の傾向は. 2. の通りである。小4. レベルを越える聴覚障害児の誤答は特定の動詞を含む文及び分裂文に 集中することを示している。. タイプ別の誤答数 文タイプ. 誤答数. RCE文 ノ. 6.考. 察. 神文. コト補文. 結果より,どの文タイプの前提が習得され易いかがわかったが,こ れを別な角度でとらえれば,前提が習得されていく順序を示している と考えられる_o. つまり,前提は「5・結果+にあげた文タイプの順に. ④との相違は, ①, ②の文タイプは前提が. 文中にそのまま含まれているが,. ③, ④の文タイプには,文中に前提. そのものの記述はなく,動詞,あるいは文全体からの推理が必要とさ. れる点にある。ここに差となって現れたものと考えられる。 における若干の差は,. 終了文 継続文. 習得され,それは,聴覚障害の有無とは関係しない。 習得順位①, ②,と③,. 開始文. 13. 復帰文 分裂文. ll. 計. 1 50. ①, ②間. ①の文タイプの場合は前提が文中にそのまま含まれている,あるい. は名詞的に結合され七いるのに対し,. ②の文タイプは「-時+といった,時間的な前後関. 係の把握を要する副詞的な結合のなされ方をしているという点が要因に■なっていると思わ れる。. 分裂文の前提の習得が最も遅れることに関しては, イ)分裂文の持つ語順の特異性 ロ)分裂文の持つ前提は,. 「誰かが-+,. よってやや難解な文となっている点 の2点の原因によるものと推耕されるo. 「誰も-+のような不定代名詞を含み,それに.

(9) 「前提+に関する発達的研究. 205. また,学年間の正答率の伸びが,関係節構文,補文をこ比べ,特定の動詞を含む文,分裂 文において2年生から4年生の間で大きくなっていることから,深い思考を要する高次の 言語磯能は,小学校4年生あたりでひとつのピークがあると推測できるoその証拠に4年 生から6年生にかけての伸びはわずかなものであることがあげられよう。. 材料文が肯定文であるものの掩うが,材料文が否定文であるものよりも前提の習得度が 高い点に関しては,その理由として次の3点が考えられる。 イ)単語の習得においても,ネガティブなものよりポジティブなもののほうが早期に習. 得される(Clark, 1971)0 ロ)否定文の場合は文中の要素全てが否定されていると考え易い(Eayashibe,. 1978)。. -)本研究の材料文のように,否定文を一文のみで用いた場合は,文全体を不自然に感 じ易い。. 誤答中の「どちらともいえない+の選択率が学年(年齢)とともに上昇する点に関して 紘,通常「前提+部分が正しいと考えても,高年齢になるほど,それを疑う傾向が強くな ることを示しているのではないかと思われる。 大学生において開始文の正答率が他の文タイプに比べて落ち込むことに関しては,開始. 文の持つ性質,即ち前提が否定文になるということによるものと考えられ,高年齢である ほどこの点に悩まされたのではないかと思われる。. 聴覚障害児の構文理解に関しては,健聴児に比較して著しく劣るという報告がある (Uyeno. et. al.,. 1977b)。聴覚障害児は,構文理解能力が劣る故に前提の習得度も劣ると考. えられる。しかし,本研究において注目すべきは,高等部段階の生徒の,材料文が肯定文 である問題の正答率が健聴の小4レベルに達している点である。つまり,肯定文ならば推 論能力において「9歳レベル+を越えることが可能であると考えられる.このことは,聴 覚障害児の言語教育において,言語の持つ「磯能面+に着目した指導が有効であ_ることを 示す1つの材料となるのではないかと思われる。. さらに,小4レベルを越える正答率を示した聴覚障害児(老)の分析結果から,聴覚障 害児の言語機能を高めるための指導のポイントとして, ①肯定文の習得, (参「この文は何 ③関係節の習得,を基礎 について言おうとしているか+を文中から捜し出すことの訓練, としてさらに, ④否定文の習得, ⑤動詞の意味・用法の習得,を目指していくことが考え られよう。. これらの点をふまえた指導ができれば,前提の習得のみならず,文間関係の把握といっ た高次言語能力の獲得が期待できるものと思われる。 7.緒. 論. 文タイプにおける前提の習得過程は,聴覚障害の有無を問わず一定の傾向がある・。その ③時の関係節 RCL文)及び補文(ノ補文,コト補文), 順序は, ①関係節構文(RCE文, を含む文(時文), である。. ③特定の動詞を含む文(開始文,′終了文,継続文,復帰文),. ④分裂文.

(10) 牧野春美・林部英雄・. 206. /J、野 博. 前提は,加齢につれて徐々に習得されていく.. 健聴の小学2年生段階では,関係節構文,補文,時の関係節を含む文の前提はある程度 習得されているが,その他はまだ習得されておらず,. 4年生,. 6年生と徐々に習得されて. いく。特定の動詞を含む文,分裂文の前提が習得されるのは,もう少し後の段階である。 また,否定文よりも肯定文のほうが,その中の前提をとらえ易い。 聴覚障害児においてもこれらの傾向は同じであるが,習得度ほ著しく劣るo. しかし,文. タイプに関わらず肯定文の前提は,高等部段階においてかなり習得され,そのレベルほ健. 聴の9歳レベルに達する。 このことから,聴覚障害児の言語指導としては,たしかに形式面の指導も大切ではある が,それ以上に彼らの得意分野を伸ばす,つまり推論能力紅代表されるような,言語の放 能面に着日した指導が期待されるo ところで文理解に関して,. 「前提+-「主張+の弁別が1つのキーポイントとなることは,. 前にも触れたが,.本研究の結果,聞き手あるいは読み手の文理解をより確実にする方法と して以下の点が示唆された。 ① 「前提+をできるだけストレートに文中に入れ,それを名詞的に「主張+讃扮に結 合させること。. ②. 動詞の意味・用法を教授すること。. ③. 語順ほ一般的な形とし,可能なかぎり肯定文を用いること。. (特に聞き手・読み手が低年齢者の場合). 以上3点を話し手・書き手が留意するならば,非常に理解し易い文となろう。また,特. に,動詞の意味・用法や文構造を児童生徒に指導するならば,推論能力も高まっていくも のと思われる。. 本研究では「前提+の習得の様相を明らかにしたわけであるが,これは言語機能の一部 にすぎない。さらに言語理解の際に「推論+がどう働くのかをとらえることは,言語発達 を促す上で重要な要素となるが,これについては今後の研究に待ちたい。 記. 付. 本研究を行うにあたり,快く実験を引き受けて下さった,横浜市立上郷南小学校,横浜. 市立小菅ヶ谷小学校,横浜市立聾学校の諸先生方,真剣な態度で実験にとりくんでくれた 児童・生徒の皆さんに深く感謝の意を表します. 文. 1). Clark, 10,. 2). E. Ⅴ.. On. the. acquisition. 献 of the meaning. of Before. and. AjTier.I.V.L.V.B.,. 266-275.. Hayashibe, tion. (1971):. I.. (1978):. in Japanese. Some. observations children・ RIEEC. oh. the comprehension of RESEARCH BULLETIN. the scope. of nega・ Gakugei. speaking (Tokyo ロniv.),RRB-9. 3)林部英雄(1979) :文忙おける既知情報と新情報の弁別に関する発達的研究.特殊教育施設報 告(東学大), 22. 4)林部英雄(1980) :文における既知情報と新情報の弁別をこ関する発達的研究I[.特殊教育施設 報告(東学大), 30,ト5..

(11) 「前提+に関する発達的研究 5)林部英雄(1983). 207. 54. :文における新一旧情報の弁別に関する発達的研究.心理学研究,. (2),. 135-138.. 6). flornby, mental. P. A. study.. (1971) : Child. Surface. and 42, 1975-1988.. structure. DeveloPmet,. distinction. topic-comment. :. A. develop・. 28 (2), 73-82. 石田裕久(1980) :条件推理能力の発達に関する研究.教育心理学研究, 伊藤淳子・林慾英雄・小野 博(1987) :指示語を含む文脈の理解に関する発達的研究.横浜 国立大学教育紀要, 27, 235-244. 9) 伊藤武彦・林部英雄・石黒広昭・町田重光(1985) :言語発達研究-の機能主義的アプロ-チ. 心:哩学評論, 29 (2), 280-305, kinds E. L (1971): Two in natural language・ Fillmore・ C・ J・. of presupposion 10) Keenan. D. T. Holt・ Langendoen. (Eds.): Studies in Linguistic Semanics. 学・須藤買明(1982) ll)岸 :児童における論理結合子の理解について.東学大紀要1部門. 7) 8). 33,. 161-169.. 学・須藤貢明(1983) 12)岸 :条件文の理解の発達.東学大紀要1部門 S. i., Hayashibe, H., and Yamada, E. (1977a) : Uyeno, T., Barada, 13) used. in compositions. (Univ. 14). Uyeno,. of Tokyo) T., Harada,. sentences simple Ann. Bull. Rap. by ll,. Japanese. childrenwith. 57-66.. disorders.. Ann.. structures. Bull.. RZLP,. 105-112・. S. Ⅰ.,Hayashibe, and. hearing. 34,. Syntactic. relative. (Univ.. of. clause. Tokyo),. I., and. Yamada,. constructions ll, 113-130・. H.. (1977b):. in children. CoI恐prehension. w・itb bearing. of disorders・.

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