虐待を受けた子どもの関係発達論 : 関係発達臨床から
13
0
0
全文
(2) 甲南女子 大学大学 院論集 第 5号. 人間科学研究編 (2007年 3月. ). もの運動行動 の発達 と子 どもの情動世界 との 関係性 を. えが 変 化 して きて い る こ とを次 の よ うに述 べ て い る 。. 解明 しようとす る方 向性 を もっていた。 一 人 ひ と りの. 「子 ど もの 示 す 行 動 は ,子 ど も 自身 の 世 界 の 表 現 と し. 子 どもの全 体性 をそ の子 の パ ー ソナ リテ イー と して捉. て とらえることがで きる とい うことである。子 どもの. え よ う と した。 ところが ,Wa1lonの 関係性 は ,運 動. 内側 の世界が,外 か らも観察 しうる行動 となって,お. 行動 と情動世界 とい う関係性 であ って ,二 者 間 の 人間. となの 目の前 にあ らわれるので あ って,外 的 な行動. の 関係性 で は なか つた 。 Wa1lonの 関係性 も,養 育 し. は,そ の全体 の 中の一部 に過 ぎない。私 どもは,子 ど. て い る者 との 関係性 は評価 には入 ってい なか ったので. もとのふれ合いの なかにあ らわれる具体的 な行動 を通. あ る。. じて,子 どもの世界 を知る……」研究開発者 である津. 化 した方 向性 を持 って い た。Gesdlは ,輻 軽 説 を打 ち. 守 自身の なかにも発達 の概念 には変化が見 られる。 さ らに,「 年齢基準 に照 らして,遅 れてい るか進 んで い. 出 し,遺 伝 的要因 と環境 的要因 の総和 と して の発達 を. るか半J断 はで きるが,そ のことによって行動 自体 の探. 考 えた。輻榛説 とは,発 達 には遺 伝 と環境 の両方 の 要. 求が とまって しまう」 と自 ら指摘 し,「 子 どもの示す. 因が重要 であ り,発 達 とは遺伝 的要 因 と環境 的要因 の. 一つ一つの行動 には,子 どもの世界の どうい う状況 か. 総 和 と して 考 え られ る とい う発 達 の 加 算 モ デ ルで あ. ら生 まれてきた もの なのか等 ,興 味深 い課題 が含 まれ. る。後 に Gesell(1950)は ,平 均 的 な子 どもの 発達像. てい る。基準 に照 らしての判断 は子 どもの発達お よび. に沿 った検査 を発 表 し,こ の「発達診断学」 は,発 達. 大人を含めた生活全体 の中で, どのような意味 を持 っ. 検査 の代 表 的 な もの となった。 この 発達検査 の基盤 に. てい るか とい うことに重点 を置 いてほ しい」 と付 け加. は ,「 あ る行動 の現 れ る時期 や そ の 順序 が個体差 ,文. えてい る。生活全体 の中 とは,言 い換 えれば子 どもを. 化差 を越 えてほぼ一 定 して い る」 とい う理論仮定 があ. 取 り囲む環境 であろう。. る。 この こ とは,子 どもの行動発達 が ,人 類 に固有 の 遺伝 ・成熟要 因 に規定 されて い る こ とを意味 す る。 と. さらに同著書 の 1995年 増補版 では,① 発達指数 に 換算す ることをやめる。② ここの項 目はい まも生 きて. ころが ,虐 待 臨床 にお い て虐待 を受 け た子 どもた ちの. い る。③発達 の相談 にあたつては,子 育 ての意欲 を高. 発達 を論 じる時 ,こ の遺伝 ・成熟要 因 だけでその発達. めるようにする。 とい う 3項 目が加 えられた。臨床経. の実 質 を提 える ことの危険性 が大 きい こ とは明 らかで. 験 を重ねた津守 の「結果 の数字 を出す ことを重視する ことな く,子 どもに寄 り添 うためのひとつの助けにし. Gesell(1925)ら の研 究 は,個 体 能力 の発 生 に焦 点. あ る。 で は,我 が国の発達検査 は乳幼児 の発達 を どの よ う. てほ しい」 とい う現在 の発達観 が 示唆 され る。 1995. に捉 えて い るの か 。 1961年 に完 成 され た乳 幼 児 精 神. 年以来,乳 幼児精神発達診断法 によって発達指数 を出. 発達診断法. )は. ,45年 間 に渡 り乳幼 児 の 精神発達検査. と して使 用 されて い る。本診断法 を研究 開発 した津守. す ことはな くなった。 しか し,わ が国の乳幼児発達検 査 の主流 として本検査 は使 い続け られてい る。. は ,そ の 初 版 本 で 次 の よ う に述 べ て い る 。「 私 ど も. 今 日用 い られてい る発達検査 も,そ の養育者 の関係. は,数 年前 に乳 幼児 の精神発達過程 の研 究 を志 した。. 性 にまで及ぶ検査項 目はない。K式 発達検査 ,新 版. そ の とき抱 い た考 えは,乳 幼児 が成長発達 して い く状. K式 発達検査 も,GeseⅡ. 況 か ら,日 常 生 活 の 中に現 れ る ままの行動 を集め ,そ. 順序 と時期 は,ほ ぼ一定である」 とい う原理 の もとに. れ を整理す るな らば ,乳 幼児 の生 活 の 全面 にわた つて. つ くられたものである。今 日の種 々の発達検査 は,Ge―. の精神発達 の過程 を明 らか にす るこ とがで きるので あ. sellの. の「行動パ ター ンの出現す る. 「発達診断」 と,そ れ を もとに した Benetの. ろ う とい う こ とであ った。乳幼児 を終 日観察 して い る. 「知能測定尺度」 を基盤 に している。 この意味 で ,知. の は母親 である。 それ な らば,母 親 か ら子 どもの 日常. 能検査や発達検査 は,子 ども自身の個体能力発達 を測. 生 活 の状況 を報告 して もらうこ とに よつて,乳 幼児 の. るものであるとい える。. 精神発達 の様子 が明 らか になるであ ろ う。そ して ,そ. Benetら の検査 は,そ の後 ,イ ギ リス, ドイツ,米. に よ り,発 達検査 と同様 の もの を作 成す る こ ともで き. 国な どに広が り,さ まざまに標準化 された。米 国 の Terman(1916)は ,「 ス タンフォー ド・ ビネー知能検. るであ ろ う。 この よ うな考 えの もとに研 究 に着手 し. 査」 を作成 した。わが国で も 1947年 に田中寛 一が. の ような資料 が 得 られ るな らば ,そ れ を整理す る こ と. ,. 5年 の歳 月 のの ちにで きた のが ,本 書 である」. ,. 「田中 ビネー式知能検査」 を発 表 した。 この知能検査. ところが 津守 は,13年 後 の 1974年 ,本 書 第 9版 で. は改定 を加えつつ今 日も使用 されてい る。 これ らの観. 子 どもに直接 ふれ る体験 が増す につ れ発達 に関す る考. 察研究 における関係性 は,母 子 の関係性 を取 り上げて.
(3) 南部真理子 :虐 待 を受けた子 どもの関係発達論. 55. い るが ,子 どもは主 体 と して観察 されて い て も,母 親. 観的 に対象物 として捉 えるのではな く,子 どもを主体. の主 体 性 は観 察 の 対 象 とは な って い なか った 。 つ ま. 的な対象物 として,関 わる者 自身をこどもの客観的対. り,母 親 が どんな主 体 で あ って も,観 察 の記述 には変. 象物 として捉 える視点 に立つ とい う変更である」 と指. 化 が ない 。鯨 岡 (1999)は ,こ の点が関係発達論 (第. 摘 して い る。 さらに,こ の ことを「関係論 的発達視. 3章 )と 最 も異 なる点であ る と指摘 して い る。 これ までの発達検査 の 中に は,人 と人 との 関係性 を. 点」 と位置付 け 「 これ までの発達 を “ 外見 的 な発達 "で “ と 度 測 ろ う する視点が 子育 て評価 “と直結 し. 提 えて い る もの もあ るが ,そ れは関係す る二 者 の 間主. 親 としての 自己評価 をさげ,自 信 のなさにつ ながる」. 観的 な もので はな く,あ くまで も子 ど も側 の主観 だ け. と指摘 してい る。. を考慮 した ものであ った。言 い換 えれば ,親 の 主体性 と子 どもの主 体性 の絡 み 合 い ともい うべ き関係性 は. ,. 発達検査 の 中 には,含 まれて い ないの であ る。. ,. 子育 ては従来 ,子 どもとの 関 わ りの 中に自己 をお き,共 に感 じ行動す る行為 として成 り立つ ものであ っ た。その過程 で親 としての 自己が育 ってい くのだ。そ の親子関係 は,互 いの関係性 に身 をゆだねなが ら揺れ 動 いてい るものであって,そ の過程か ら子 どもが 自ら. (2)関 係発 達論的捉 え方 の方 向性 藤永 (199o)は ,「 これ らの発 達検査 は ,一 人 ひ と. 学 び,育 ってい き,養 育者 も親 として育つのであ る。. りの子 どもに関 して “ 平均像 との差 "を 問題 にす る方. 子 どもも親 も同 じ世界 で関係性 を保 ちなが ら時間 を共. 向性 を与 えて しまったので はないか」 と,疑 間 を投 げ. 有 してい ることを再認識 し,こ の発達 の過程 に焦点 を. かけて い る。 さらに「その 方向性 が能 力発達 を中心 に. あててい くことは,親 と子 ども双方 の主体1生 を考慮す. こど もの発 達 を見 る傾 向 をその歴 史 の 中で 強 めて い っ. ることであろう。. た の で は な い か 」 と ,指 摘 して い る 。 また ,田 中. (2004)は ,特 定 の科学者 の 「知 能 は 固定 的 な もの で あ る」,「 知能 は遺伝 的 な資質 によって全 面 的 に規定 さ. 第二章. 子 ど もの発 達 を ,人 と人 との 関係 性. とい う視点から見 ることの意義 と意味. れ うる」 とい う仮説が ,関 係者 の初期対応 の重要性 と い う思 い を損 なわせ た と示唆 して い る。. 本章 で は,固 体 能力発達 を中心 に こ どもの発達 を見. 21世 紀 にな って ,こ の疑 間 に答 えたのが ,2001年. る傾 向 が 及 ぼ して い る影響 の具体伊Jを 挙 げ ,そ の こ と. の WHO総 会 による国際障害分類 の決定 で ある。WHo. に よ り見逃 されて きた発達 の 問題 につい て考察す る。. は,そ れ までの 国際障害分類 を IcFモ デ ル"に 改訂 し. そ して子 どもの発達 を,人 と人 との 関係性 とい う視点. た。以前 の分類 は,機 能障害 ,能 力障害 ,社 会的障害. か ら見 る ことの意義 と意 味 につい て考察す る。. で あ り,で きない側面 を保 障 し,生 活支援 を保 障す る とい う考 え方 が根底 にあ った。それ に比 べ ,新 しい こ のモデルは,個 々の 日常生活 での健康 を概念 化 し,生. (1)高 機 能 自閉症 児 の場合 2005年 の「小児精神神経学 会」 は ,「 子 ど もの ここ. 活機 能 か ら見 る よ うに視 ″ 点を転換 し,さ らに環境 因子. ろの 臨床 にお け る発達 につい て再考す る」 とい うテ ー. な どの観点 を加 えた人 間 ・環境相互 モ デルであ る。 こ. マ で 開催 された。 従来 の個体能力 中心 の発達観 で は. れ まで個 々 にある社 会的不利 は,環 境 に大 き く左 右 さ. 子 どもの こころの 臨床 に迫 れ ない とい う視点 か らであ. れ るに もかかわ らず ,個 々 にある機 能障害や能力障害. る。発達障害 とは「子 どもの発達途上 で 出現す る障害. のため と捉 え られが ちで あ った 。新 ICFモ デ ル は. であ り,そ の 障害が生涯 にわたってなん らかの形 で持. ,. ,. 個 人 と環境 の支持 の もとで個 人相応 の社 会参加 と社会. 続 し,そ の基盤 には脳 の機能障害 が想 定 され る」 とい. 活動 を行 ってい くもので あ る。環境 に着 眼 し,環 境相. うもので あ る。 で きるだけ早期 に,こ の子 どもた ちに. 互作用 の持 つ力 を評価 して い る。 この こ とは,虐 待 の. 適切 な介入がで きるため に大切 な こ とは,い ったい何. 4つ の分類 に環境 か らの虐待 であ る “DVの 目撃 "が. であ ろ うか。小林 (2005)は ,こ の視点 は,発 達 障害. 加 え られた こ ととも一 致す る。. にお け る「発達」 とは何 か とい う問題 と深 く関係 して. 2001年 施行 の新 しい 「幼稚 園教 育 要領 」 や 「保 育. い る と指摘 して い る。小 林 は ,発 達 障 害 児 の なか に. 所保育方針」 で は ,「 発 達段 階」 や 「発 達課題」 とい. は,診 断概念 に適 合 しない事例 もあ る ことや ,ひ と り. う概念 が 消 え,一 人 ひ と りの子 どもの「発達 の過程」. の子 どもの診断 がその子 どもの発達過程 で 変化 して い. を重視するように変更された。このことをうけて稲垣 (2004)は ,「 子 どもの主体性を重要視 し,子 どもを客. くこ とも当然 であ る と して,発 達 障害児 に対 して ,発 達的観点 の導入 の必 要性 を指摘 して い る。次 に,発 達.
(4) 人間科学研究編 (2007イ 113月. ). 障害児 にお ける人 と人 との 関係性 の視点 の重 要性 を示. の 子 ど もた ち に は ,特 に早 い 時期 か らの 関係 発 達 支援. す意味 合 い か ら,高 機能 自閉症児 に固体能力発達 を中. が必 要 で あ り,「 関係 の なかで の発 達」 が求 め られ る. 心 に発達 を見 る傾 向 が及ぼ して きた影響 につい て考察. ので あ る。言 い換 えれ ば ,「 関係 の なかで の発 達」 か. す る。. ら取 り残 されて きて い た子 どもたちが この高機能 自閉. 中 高機 能 自閉症児 とは ,自 閉症 スペ ク トラ ムの 中 で. 症児 であ り軽度発達 障害 の子 どもた ち とい える。. そ の知能 が 標準 かそれ以上 の児童 であ る。彼 らは,自 閉症児 の顕著 な特徴 であ る知 能検査 での 各項 目に ば ら. (2)特 殊教育 か ら特別支援教育 ヘ. つ き,能 力 の ア ンバ ラ ンスが認 め られ るのであ る。 し. 現在 わが 国 の教育 は,特 殊教育 か ら特別支援教育 ヘ. か し,検 査 の あ る項 目で低得点 で も,他 項 目で高得点. と大 きな変換 を きた して い る。 この特別支援教育 が必. を取 る高機能 自閉症児 たちは,平 均 す れば知 能指数 が. 要 になる子 どもは虐待 ,軽 度発達 障害 ,境 界線知能 を. 75を 上 回 り,数 字 上 は 障害 の 枠 に入 らな い こ とが 多. 含 め ,1∼ 2割 に達 す る と推 測 され る。 この 範疇 には. い。. い る多 くの子 どもた ちの二 次 障害 は,人 と人 との 関係. これ まで行政や教育機 関 が 判断す る子 どもの 能力 で は,そ こに関係発達能力 をほ とん どと言 って よいほ ど. 性 の 障害 であ る。 そ して この子 どもたちに もとめ られ る もの は,「 関係 の なかで の発達」 である。. 考慮 されて い なか った。 さらに問題 を複 雑 に して い る. これ まで精 神遅滞 は,知 能検査 に よって ,軽 度 ,中. こ とに,高 機能 自閉症児 の 場 合 ,3歳 児前 の 愛着 関係. 等 度 ,重 度 に分 類 され て きた。 しか し,境 界 線 知 能. は充分 には成立 して い な い に もかか わ らず ,客 観 的 な. (IQ 70∼. 行動観察 上 ,比 較 的す みやか に成立す るかの よ うに観. き く異 なる こ とを杉 山 (2004)は 指摘 して い る。 まず. 察 (関 与 観 察 で は な い こ とに よるが )さ れ るの で あ. 第 1に ,「 知 能 を構 成 す る 能 力 の 諸 因子 間 の ば らつ. る。そ のため 唯 一 ,母 子 の 関係 を垣 間見 るこ とがで き. き」 の 問題 が あ る。 第 2に ,「 学 習 と知能 の 関係 」 の. る観察場面 で もそ の 関係 障害 が見逃 され るケ ースが あ. 問題 が あ る。 そ して第 3に ,「 環境 と知能 の 関連」 の. り,1歳 半検診 や 3歳 児検 診 で 要観察 にな らな い場 合. 問題 が あ る。杉 山 は ,特 に境 界線 知 能 レベ ル の 問題. が 多 い 。 これ らの理 由 か ら,高 機能 自閉症児 は,発 達. は,知 的 な遅 れの場合 よ りも,育 つ 環境 の影響 を よ り. 検査結果 で は障害 の枠 に入 らない こ とが 多 く,早 期 の. 受 けやす い と示 唆 して い る 。言 い 換 えれ ば ,第 3の. 教育 にお いて必要 な配慮 が されず ,そ の後適応 に困難. 「環境 と知 能 の 関連」 に こそ 「 関係発 達論」 を も って. を きた して きた。 この こ とは,高 機能 自閉症 の子 ども に とっては,環 境 に よるマ ル トリー トメン トに他 な ら な い。 この よ うな高機能 自閉症 の子 どもの中 には思春期 に. 85)の 子 どもたちの場 合 は ,分 類 の事情 は大. 研究す る意 義 があ る。 第 一 章 で述 べ た ように個体能力発達 は,個 体 の遺伝 ・成熟過程 を基礎 に組 み立 て られた もので あ る。子 ど もを取 り囲む人間関係 を考 える とき,子 ども 自身 は. ,. 入 り,過 去 か らその時点 まで の長 いマ ル トリー トメ ン. 家族 や他者 か ら切 り離 された 「子 ども自身Jな ど存在. ト環境 に よ り,関 係性 の 障害 が よ り明 らか にな り,二. しないの に,環 境 の要 因が 二 次 的 な もので よいの だろ. 次 障害 といわ れ る行動 上 の諸問題 が起 こ り,介 入せ ざ. うか。 これ まで の個体能力 の概念 には,す で に環境 が. る をえな くなる子 どもも多 い。特 に関係発達 の 時 間軸. 含 まれて い た に もかかわ らず ,そ の こ とをほ とん ど考. を考 えれば ,早 期 の 介入 が望 まれ る こ とは疑 いの余地. 慮 せず に,個 体能力発達 とみ な して きた。 そ の こ とに. が な い 。 よ うや く 2005年 にな って ,発 達 障害 者 支援 〕 法 が 施行 され ,診 断機 関 にお い て も,広 汎性 発 達 障. よ り「 関係 の 中 での発達」 か ら積 み残 されて きた子 ど. 害 (高 機能 自閉症 を含 む)な どの軽度発達障害児 に早. 虐待 を受 けた子 どもたちであ ろ う。. もた ちの代 表 が ,軽 度発達障害 の子 どもた ちであ り. ,. 期 か ら関係性 の発達 も含 めて捉 え ようとす る方向性 が. これ まで の 子 ど もの 発 達 の 捉 え方 を考 察 して い く. 見 えて きて い る。 そ の発達 の早期 か ら,高 機能 自閉症. と,こ れ まで見 えなか った り捉 え られ なか った りした. 児や アスペ ルガー症候群 を自閉症 スペ ク トラム と して. 発達 上 の 問題が何 で あ るかがみ えて くる。 それは,子. 捉 える事 は,何 よ り子 どもを個体能力発達 で診断す る. どもと親 の 間主観 的 な関係性 の 問題 で あ り,親 と子 ど. ので はな く,関 係 能力発達 の側面 か ら見 て い こ う とす. も双方 の主 体性 を考慮 す る視点 の あ り方 であ る。. る こ とであ る。 この子 どもたちの発達 の歪 み は,周 りの 人た ち と世 界 を共 に しあ う こ との遅 れや難 しさとして現 れ る。 こ. (3)親 と子 ども双方 の主体性 を考慮 する とは で は,親 と子 ども双 方 の 主体性 を考慮す る とは ど う.
(5) 南部真理子 :虐 待 を受けた子 どもの関係発達論. 57. い う こ となの か 。従 来 ,乳 幼 児 の 精神 発 達 の 診 断 に. それ は,完 璧 な子育 て を目指す親. は,検 査場面 を設 け て子 どもの行動 を客観 的 に観察す. の 成長 に しか 求 め られ な い 親 ),言 い か えれ ば母性 神. るこ とに よ り,発 達 を診 断す る こ とが な されて きた。. 話 の忠実 な体現者 であ る。. 我 が 国 で は発 達検査 の ひ とつ と して この 45年 間 ,前. (自. 己実現 を子 ども. ここで虐待 に至 った親子 関係 か ら,育 児不安 を考察. 出 の乳幼児精神発達検査 が行 われて きた。 この乳幼児. す る。稲垣 (2002)は. 精神発達診 断法 は,質 問紙 を使用 し,母 親 (養 育者 ). た能力 が近 年変化 して きて い る こ とを臨床場面 で指摘. に乳 幼児 の発達状況 をたず ね ,そ の結果 を分 析 す る こ. して い る。具体 的 には,子 どもに心 配事 や問題 が起 こ. とに よ り精神発達 を診 断す る ものが 多 い 。 そ の背景 に. つた と きに,自 分 自身 の情動 や思 い を頼 りに子育 て を. は,母 親 は子 どもが 成長 して い く過程 を ともに過 ご し. す るので はな く,育 児書 に頼 る例 をあげて い る。育児. て い て ,そ の状況 を 日々の生 活 か ら観察 し理 解 して い. 相談 に訪 れた母 親 にあ る とされて きた母性本 能 の希薄. る とい う前提 があ る。 そ の上で ,観 察 された行動 を整. 化 ,理 解 能力 の低 下 な どで あ る。 また ,筆 者 は ,「 虐. 理 して分 析 す るな らば ,精 神発達 の診 断 の基準 とす る. 待相談」 に関 わ るなかで ,母 親 か らの相談 を通 して. ことがで きる とい う考 えがあ る。 そ こには,現 代 の母. 母親 に客観 的か つ あ るが ままの子 どもの観察 が 難 しく. 親が本 当 に我 が子 の状況 を客観 的か つ あ るが ままに報 告 で きるか否 か考 える必 要性 がでて くる。特 に,現 代. なって きて い る こ とを感 じて い る。 また,児 童相談所 の発 達相 談統計 °に よれ ば ,母 親 自身 の不安 が 年 々増. の母親 につい て この視 点 でみ つ め る と,現 代 の母親 の. 加 い る ことか らも母 親 に客観 的 な子 どもの観察 が難 し. 抱 えて い る育児不安 につい て考察 が可 能 となる。. くな って きて い る こ とは明 らかであ る。小林 (2005). 育児不安 とは,「 子 ど もの成 長発 達 の状 態 に悩 み を. ,母 親 にか つ ては備 え られて い. ,. は,母 親 が 客観 的 には我 が子 を観察 で きな い こ とを. ,. 持 った り,自 分 自身 の子育 てについ て迷 い を感 じて い. MIUで の ビデ オ記 録 観 察 で 明 らか に して い る。 あ る. た りして ,結 果 的 に子育 て に適切 に関 われ ない ほ どに. 程度客観 的 に観察 がで きる母親 は,自 分 の観察 へ の 自. 強 い不安 を抱 い て い る状 態」 (大 日向 2002)と 定義 さ. 信 の な さと不安 を訴 える。 また,客 観 的 な観察能力 の. れ る。母親 は,わ が 子 との生 活 の 中 で本 当 の意味 での. 高 い母親 は,平 均 的 な発達が よ く理解 で きる。 それゆ. 子 ども理 解 が 深 ま り,子 どもとと もに親 は親 と しての. えに我 が子 の発達 をほかの子 どもと比 べ 不安 に陥 る。. 成長過程 を進 んでい くとい う理解 がで きず ,子 育 て に. 上 記 の理 由か ら,母 親 に子 どもの客観 的 な行動 の状. 適切 に関 われ ない ほ どに強 い不安が マ ル トリー トメ ン. 況観察 は難 しい と考 え られ る。乳幼児発達検査 法 は. ,. トや虐待 につ なが る とい う可能性 が あ る。虐待 問題 を. 乳幼児 の精神発達 の 間接 的診 断法 で あ り,乳 幼児 の発. 考 える ときに,“ 子 ど もに とって ど うで あ るか "と 言. 達 の状態 に気づ くこ とを母親 に促 す検査 で あ る とい う. う視 点が大切 な こ とは言 うまで もな い。 さらに,子 ど. 性格 が 強 い 。児童相談所 な どで ,こ の検査 を発達 に問. も自身 の発達 が ,親 や社 会環境 を踏 まえるのな らば. 題 の あ る乳幼児 に行 う場合 は,母 子 並行面接 を して い. ,. 親 と しての発 達 を考 える必 要性が あ る。 そ して ,親 と しての発達 を困難 に して い る ものの ひ とつ に親 自身 の. る こ とに もこの検査 の性格が でてい る。 子 どもの発達 ,親 と しての発達 ,客 観 的か つ 間主観 的 な親 子 の観察 は,親 や観察者 に よる子 どもの行動 の. 育児不安 が あ る と考 える。 具体 的 に育児相談 の 内容 を列記す れば ,自 分 の子 ど. 客観 的観察 で はな く,親 と子 どもを共 に関与 的観 察". もが抱 い て い た イメ ー ジ とか け離 れて い る,育 児 を一. す る こ と,親 子 双 方 の 主体性 を考慮 す る こ とに よつ. 人で担 う負担感 に押 しつ ぶ されて しま った ,社 会か ら. て ,は じめて可 能 になる と示唆 され る。. 阻害 され る不安 にか られ る,夫 の理解 が な い ,自 分が こん な に短 気 だ った なんて 等 とそ の 訴 え は様 々で あ. 第三章. 子 ど もの 関係 発 達 論. る。 一 言 で表 せ ば「 こん なはず で はなか った」 とい う こ とで あ る。 そ して ,相 談 の裏 にあ る本 当 の訴 えは. ,. 子 どもの発達 とは「誕生 した瞬間か ら,そ の子 ども. 育児 は女性 の生 来的 な適職 だ とい う母性愛神話 の存在. が もって生 まれた能力 をいかに発揮 して環境 にかかわ. も否 定 で きない。 また,子 育 て を して い る母親 は,育. り,関 係性 を持 ち,変 化 してい くか とい う ことで あ. 児 には仕事社 会 で得 が た い手応 え もあ るに もかか わ ら. り,そ れは周 りの環境 との関係性 による質的 な変化 の. ず ,効 率性最優先社会 か らの疎外感 も感 じて い る。 一. 過程 である」 (稲 垣)と 理解する。. 方 ,こ の よ う に気 づ い て い る親 たち とは対照 的 に子 ど. これまでの虐待研究 における関係性 については,愛. もに問題 が起 こる まで育 児不安 に気 づ かぬ 親 もい る。. 着 関係 が論 じられ て きた。愛 着 形 成 の重 要性 に つ い て.
(6) 人間科学研究編 (2007年 3月. ). は,親 と子 どもの行動観察 で愛着形成 の 発達段 階 を論. の 両 過 程 が相 互 に影 響 を 及 ぼ し互 い に相 手 を規 定 し. じ,あ る時点 の愛着 関係 が子 どもについ て い るか ,い. あ うとい う形 で同時進行す る際の一側面 である。. ない か に因われて い る。虐待 を受 け た子 どもの愛着 関. ③誕生後 の一 人の人間の生涯発達過程 は,A)個 体能. 係 を論 じるの に,親 と子 の愛着 関係 だけで虐待 に至 っ た二 者 の 関係性 を理論 づ けるのは充分 で はな い。虐待. 力 の発生的展開の次元 ,B)周 囲他者 との関係 の拡 大 ・深化 ・変容 の次元 ,C)文 化 の影響力 の浸透 の. 臨床 のおいて は,両 者 の愛着 の 関係性 を,関 係す る二. 次元 とい う 3つ の次元が,互 い に影響 を及 ぼ しあい. 者 の思 い と思 いの絡 み 合 い として受 け止 め る必 要 があ る。 そ こ には,両 者 の 主観 的 な もの ,間 主観 的 な もの. なが ら,い くつかの節 目を持 って再体制化 され,そ れがその人の 自己性へ と沈殿 0収 束 してい く過程 で. まで含 むべ きであ る。虐待 を受 け た子 どもの 関係発達. あ る。. 論 を提示す るにあた り,鯨 岡 (1986,1997,1999,2005,. この ことは,「 関係発達論」 の根幹 であ り,こ れ には. 2006)の 「関係発 達論」,小 林 (1999,2001,2005)稲. 個別事例的 アプローチ,現 象学的視点が必然である と. 垣 (2000,2003,2005,2006)「 関係 発 達 臨床論 」 を概. してい る。 さらに鯨岡は,養 育者 の傾倒的関与 によっ. 説す る。. て,そ の二者間 に情動共有 の経験 が繰 り返 し生 まれ. ,. それを基盤 に「愛 される―愛す る」「信頼す る―抱 え. (1)鯨 岡の 「関係発達論」の基本 にある考 え方. てやっていける」 といつた間主観的なつ なが りが成 り. 鯨岡 は 30余 年 にわた り,発 達研究者 ,教 育者 とし. 立つ としてい る。そ して,理 論 と観察,理 論 と実践 の. て乳幼児 の発達 ,障 害児 の発達 に関与 しなが らの観察 を続けてい る。「子 ども一養育者」関係 のまさに「関. 両項 は,本 来,円 環的両方向的関係 の内にあるものだ と して い る。. ,従 来 の行 動 科 学 の 枠 組 み の も と. 係」 を取 り上げる新たな研究の領域 に踏み込み,関 わ る者が どんな思いでその子 に関わ っているか とい う領. で ,子 ども,養 育者 をそれぞれ閉 じた個体 と してみ な. 域 に論点 を向けた。鯨岡 (1986,1989)は ,子 どもを. して きた こと,ま た個 か ら出発 して個 と個 の相 互 作用. 行動科学 の枠組みの下で,個 体能力発達 に焦点化する 限 り「子 どもが発達す る」 とい うことの問題性 を全体 部 として捉 え損ねて しまうことを現象学 の視点 か ら指. とい う観点か ら しかそ の 関係 が議論 されて こ なか った. 鯨 岡 (1999)は. 点 を批判 した。 さらに,従 来 の行動科学 の 客観主義 的 アプ ロー チ を乗 り越 え,子 どもや養育者 の主 観性 の領. 摘 した。そ して,従 来 の個体能力 の発達 か ら関係 とし ての発達へ の視点 の変換 を図 り「関係発達論」 を提唱. 域 に踏み込 む必 要性 を指摘 した。 そ して ,そ の領域 に. している。. ど う して も必 要 になる と し,そ のための基本 的 な研 究. 鯨岡は,そ の著書 「原初的 コ ミュニ ケーシ ョンの諸 相」 (1997)並 びに「両義性 の発達心理学 (1998)」 に. の枠組 みを「現象学的態度 と臨床的態度 とい う二つの 方法的態度 を重ね合わせたところに成 り立つ枠組 みで. お い て観察者 自身 を含 めた関与観察 の領域 に着手 し. ある」 と定めた。現象学的態度 とは,鯨 岡の言葉 で言. た。 これ らの著書 で,人 間理解 の前提 となる考 え方 を 示 し,「 関係発達論」 の根幹 を築 いた。「関係発達論」. え│ゴ 「両義性」 であ り,傾 倒的関与 と鯨岡が称す る臨 床学的態度 とは,サ リバ ンの説 くところの「関与的か. は,「 関係発達論 の構築 :間 主観 的 アプ ロー チ に よ. つ観察的態度」 であると理解 される。. る」 で,間 主観性 ,両 義性 ,関 係発達 とい う概念 を理 論化 しその基礎 を構築 し,「 関係発達論 の展開」 にお いて さらに構築 をすすめ,「 ひとが ひとをわかる とい うこと」 (2006)で 相互主体性 とい う概念 を理論化 し 再構築 した論である。 鯨岡の「関係発達論」 の 3つ のテーゼは. 踏 み込 むため には,間 主観 的 アプ ローチ を取 る こ とが. さらに鯨岡 (2005)は. ,子 どもの思 いのあるが まま. の生動感 をその関与す る者の力動感 (外 界刺激 の動 き の輪郭が 自分 の身体 を揺 さぶ り,引 き起 こされる情動 的な体験 )を 描 き出す のにエ ピソー ド記述"と い う関 係発達論的研究方法 を提唱 してい る。「エ ピソー ド記 述入門」 (2005)に よ り,臨 床現場 で 関係発達 を実践. ① 「関係発達論」 の核心 は,誕 生か ら死 に至る一 人の. し,ま たは実践 しようと志 してい る者 に,「 関係発達. 人間の生涯過程 が,基 本的 には種 の再生産お よび文 化 の世代間リサ イクルの中に位置づ けられる点 にあ. 論」 における方法論的態度 を理論的かつ具体的 に提示 した。 この鯨岡エ ピソー ド記述 は,現 在 ,保 育 のみな. る。. らず,教 育,医 学 ,看 護学 などの分野で実践 を伴 った. ②誕生以後のひとりの人間の生涯過程 は,そ の養育的 他者 (親 )の 生涯過程のある時期 と重なり合い,そ. 理論 として幅広 い活用 が なされて きて い る。 さらに 2006年 は,こ れ までの関係発達 の根幹 を貫 い てい た.
(7) 南部真理子 :虐 待 を受 けた子 どもの 関係発達論. 59. 概念 に加 え,相 互主体性 とい う概念 をもって「ひとが. ったばか りか ,統 一 的多面的 な心理学 的検査 が子 ども. ひとをわかるとい うこと」 を著 した。 これによって理. を客観 的 に捉 える と信 じられて い た。そ の視 点 に問題. 論 ・方法的態度 ・フイール ドの 3層 構造が整った。. が あ るので は と疑 間視 した小林 は「関係発達論」 に出. ここで,注 目したいこ とは,鯨 岡 も自ら指摘するよ. 会 い ,自 閉性 障害 の原 因探 求 に当 た って ,個 体 能力 障. うに「関係発達論」 は,個 々の発達的事象に対 して確. 害 に代 わ って ,関 係発達 を基盤 に臨床研 究 し,関 係 障. 固不動 の説明理論 ではな く,む しろ,発 達課題や問題. 害 とい う視点 に立 つ試 み をス ター トさせ た。. を見 出 し,そ の意味 を考 えるための基本 的な 「枠組. 小林 (2002)は ,自 閉症 に見 られ る対 人関係 障害 を 関係発達論 的視 点 か ら情動 的 コ ミュニ ケ ー シ ヨンに焦. み」 である。言 い換 えれば,そ れは硬直 した理論 にと どまらず ,同 時 に関与 しなが らの観察 とエ ピソー ド記. 点 をあて ,常 に関係性 の変容 に焦点 を当て なが ら介 入. 述 とい う方法的態度 で もあるとい う視点 である。. す る。 そ の 際 「 関係性」 を行動次元 のみで捉 えるので. 虐待 を受けた子 どもの心 に寄 り添 うときに大切 な こ. はな く,親 と子 ども双方 の主 観 の 世界 を も捉 える こ と. とは,「 お互 い に主体 で ある もの 同士が関 わ りあ う関. の必 要性 を重視 して い る。 さらに治 療 の基本原則 と し. 係」「お互 いが相手 を主体 として受 け止 めあ う関係」. て ,治 療 当事者 の主 観 は もとよ り,治 療者 自身 と子 ど. であ ろ う。 この人間関係 の根幹 ともい うべ きものを鯨. もの 関係性 ,母 親 の 関係性 もそ の範疇 に入れて い る。. 岡は「関係発達論」 で提示 した。鯨岡の「現象学 の精. 小 林 は ,「 関係」 とい う言葉 を コ ミュ ニ ケ ー シ ヨン. 神 を生か しなが ら,子 どもの発達 の問題 を考 える」 と. とい う用語 にお き代 え,「 存在 す るお互 いの一 方 が他. い う精神 によって,現 象学的還元 により. 岡 :色 眼. 方 に何 らかの影響 を及 ぼす こ と」 (Richer,1979)と 定. 鏡 をかけずに),「 虐待 を受けたその子 どもに人間 とし. 義 した。 そ の成立が 困難 な状態 にあ る二 者 関係 を対 象. ての響 き合 いのあるセラピス トで臨 む」 とい う本臨床. に して臨床 実践 を行 い ,自 閉症 に見 られ る対 人関係 障. 研究 の基本姿勢が導かれた。. 害 を関係発達論 的視点 か ら話 し言 葉 や 身振 りに よる コ. (鯨. ミュニ ケ ー シ ョンが生 まれる前 の段 階 の情動 的 コ ミュ. (2)小 林 の児童精神医学 を基盤 とした「関係発達障害. ニ ケ ー シ ョンに焦点 をあてて い る。 これ まで ,自 閉症 研 究 にお い て も情動 的 コ ミュニ ケ ー シ ョンを論 じる こ. 言 命」 小林 (2000)は ,広 汎性発達障害 (PDD)に おける. とは,意 識が介在 して い ない こ とを言語化す る過 程 で. 「関係発達臨床論」 を提唱 した。小林は 30余 年 にわた. 困難 であ った。意識 が 介在 しない コ ミュニ ケ ー シ ヨン. り児童精神科医,教 育者 として 自閉症児 (者 ),親. ,. 世界 は これ まで精神分析 学 の領域 で前意識 ,無 意識 と. 支援者 の臨床 に関 わ り続 け てい る。 1994年 か らは. い われて い た。 困難 な理 由 の ひ とつ は,実 際 に情動 が. 関係発達臨床 の場 として MIu(MOther lnfant Unit)。. 動 いた後 で ,本 人あ るいは他者 か らの指摘 に よって気. において 自閉症 の乳幼児 とその母親 の行動観察 を関与. づ くこ とは あ って も,気 づ きが事 後 だ とい う点 で あ. 観察 し乳幼児 の早期治療 を「関係発達臨床論」 として. る。 自分 の情動 に何 か変化 が起 こった とき,そ の情動. 展 開 して い る。小林 は ,2002年 よ り鯨 岡 と共 同 で. の変化 が何 を意 味す るか に,誰 で も同 じように気 づ く. ,. 「 自閉症 の関係発達臨床 セ ミナー」 (現 在 は東海大学発. こ とはで きない 。 そ のため に,身 体 で 実際 に生起 して. 達臨床講座 )を 開催 してい る。小林 は,障 害 と言 う言. い る情動 の変化 と,当 事者 が主観 的 に感 じ取 ってい る. 葉 の概念 を再構築 し,2004年 「関係発達障害論」 か ら「関係発達臨床論」へ とその名称 をも再構築 した。. 感情体験 とは分 け て考 える こ とが 必 要 になる。 心理 臨床場面 での例 を挙 げれ ば ,セ ラ ピス トは,何. (関 与観. 事 に も受容 的 に接 す る こ とを心が け てはい るが ,子 ど. 察者)の 存在抜 きに子 どもの対人関係 を論 じる ことは. もが攻撃 的 な行動 を起 こ した時 に,本 能的 に身構 えて. 不可能である」 とい う視点である。臨床現場 の研究者. しまう ことが あ る。 セ ラ ビス ト自身 は,受 容 的 に接 し. が常 に自分の関与 のあ り方 を問題 にするとい う,こ れ. て い るつ も りで も実際 には身 を硬 くして 自己防衛 を し. までにない方向性 を示 し,関 係発達 を従来 の愛着関係. て い るは ず で あ る 。 そ して ,自 己 防衛 して い る こ と. だけで論 じる ことの危険性 を,MIuで の ビデオ分析. に,自 分 で はその場 で は気 づ きに くい 。 しか し,接 し. とエ ピソー ド記述 により明白に してい る。. て い る子 どもには,セ ラ ピス トの 自己防衛 的 な反応 に. これまでの自閉症臨床 では,母 との関係 ばか りでな く,コ ミュニケー シ ョンの もう一方 の当事者である臨. とて も敏感 に反応 して くる。そ れは,子 どもには,拒 否 され た経験 と して こ ころ に刻 まれ るか も しれ な い. 床家 (観 察者)の 及 ぼす影響 にあまりにも無頓着 であ. し,ダ ブ ルバ イ ン ドH)と して捕 え られ る可 能性 もあ. 彼 の関係発達臨床 の根幹 をなすのは「自分.
(8) 甲南 女子 大学 大学院論 集 第 5号. 人間科学研究編 (2007年 3月. ). い うことについて,具 体的 に赤 ちゃんの「だっこ」 の. る。 自閉症 臨床 では,身 体 で実際 に生起 して い る情動 の. 事例 を挙 げ,親 子双方 の 間主観的関係 を考察 して い. 変化 と,当 事者 が主 観 的 に感 じ取 ってい る感情体験 と. る。「だっこ」 とい う状況 は,“ 母親 と赤 ちゃんが醸 し. は分 け て考 える こ とは,情 動 的 コ ミュ ニ ケ ー シ ョンを. 出 してい る表象 “である。「だっこしてい る」母親 の. 理解す る うえで最 も大切 な ことで あ る。 この “ず れ". うちには「だつこさせてもらってい る」 とい う思 いが. を明確 にす る ことは,自 閉症児 の心 の構造 を明 らか に. ある。一方 ,「 だっこされてい る」赤 ちゃんの思 い に. す る こ とで あ る。. は 「抱 っこされ ようとしてい る」思 いがある。母親 も. このように理解 しに くい情動的 コ ミュニケー ション. 赤 ちゃん もその個人の思 いの内に間主観的なものを も. を理解 しようとしなが ら自閉症児 の主体性 を受け止め. っている。その思 いが共鳴 しあって,間 身体的 に響 き. てい く関係発達論敵臨床 のあ り方 は,虐 待臨床 におい. あ って行 われるのが「だっこ」 である。 しっ くりとだ. て子 どもの関係発達 に寄 り添 いなが ら,子 どもを主体. っこされるとい うことは,単 に抱 き上げ られる ことで. として受け止 めてい くことに重なる。. はな く,母 親 の養育者 に信頼 を寄せ一体感 を感 じ,安 ヽして身 をまかれ られることを意味す るのである。 ま ′ 亡. (3)稲 垣の 「発達行動小児科学」 を基盤 とした関係発. さに「お互 い に主 体 である もの 同士 が関わ りあ う関 係」「お互 いが相手 を主体 として受け止 めあ う関係」. 達臨床論 曖}を 稲垣 は (2003)「 発達行動小児科学」 基盤 とし ,. の展開である。. 特 に子 どもの虐待 における人 と人 との関係性 について. 赤 ちゃんは,生 まれた直後 は,生 命維持 の周囲がか. その「関係発達臨床論」 を展開 してい る。稲垣 は,30. らりと変 わるとい う “とんで もない状況"に 置 かれて. 余年来小児科医,教 育者 として,被 虐待児や発達障害 'に 関 わ り続 け,「 子 ども を含 む小 児臨床 ,子 ども学 日. い る。鯨岡は,母 親 にとつて も出産は育て られるもの. の示す問題行動がその子 どもの表現系であ り対処方策. 表現 している。赤 ちゃんは,子 宮 の なかで,踏 帯 でつ. であると判断で きるときは,治 療者 として響 きあ う関. ながれ,羊 水. 係 が成立する。治療者 と子 どもの人間関係が治療場面. る)に 守 られてい た水 中の世界か ら,「 枠」 の ない空. とい う構造 の中で形成 されるためには,響 きあ う関係. 気中にその生活環境 を移行 させ な くてはならない。赤. 主観的な関係 )が 成立するか どうかにかかつて い ‖ る 」「子 どもの発達段 階 は,そ れぞれの発達が他 の 発達段階 にある人の発達 によって支 えられ,“ 育 つ ―. ちゃんは,あ ま りに も “とんで もない状況 "に 置 か. (間. か ら育てるものへ とい うコペ ルニ クス的転回であると. (自. 然環境 に も近 く,包 み込 まれて い. れ,赤 ちゃんにとっては世界の大転換 である。赤 ちゃ んにとって もコペルニ クス的転回なのである。お腹 の. 育 て られる"と い う関係 の生命サ イクル過程 の 中で展 開される」 と述べ てい る。. 中の状況 を維持するためには水中出産や カンガルーケ. 稲垣 (2004)の 「子 どもがあ らわ している言語的. せ よ生 まれ出る ことは赤ちゃんにとっては,生 存 のた. 非言語的表現が一見同 じであった として も,そ の子 ど もが 自己の中で世界を提 えて表現 しようとしてい る過. めの身体的安全基地か ら「枠」 の ない宇宙へ の旅立ち. 程 を辿 ってい くと,治 療者の気付 かなかった子 どもの. 着行動 によつて獲得 してい くのである。赤 ちゃんは. 想 い にハ ッとさせ られる ことがある」 とい う言葉 に. 約 2週 間で外 の世界 と自分 が 区別 で き (Stem,1985), い 自己の主体性 が認め られる。赤 ちゃんは,情 動調律. ,. は,「 関係発達臨床論」 の根幹がある。. アー等 の さまざまな試みがなされているが,い ずれに. なのである。赤 ちゃんは,あ らたな安産基地 をその愛 ,. ). を行 い なが ら成 長 し,あ る発達段 階 で ,赤 ちゃんは. 虐待 を受けた子 どもに関わるときは,発 達 の軸 と ト ラウマ とい う軸 の双方 を考慮 しな くてはならない。発. 「だっこ」 をせがむようにな り,赤 ちゃん とお母 さん. 達 してい くこと自体が トラウマ を自分の中で再統合 し. の主体 と主体 の絡 み合 いが展開 される。「だっこ」す. てい く場合 もある。発達 自体が トラウマ を呼 び起 こす. る,「 だっこ」 される関係 は,赤 ちゃんにとっては 自. 場合 もある。特 に子 どもが幼ければ幼 いほど,そ の関. 己の安全基地 の確認 であ り,「 枠」 の確認 に他 な らな. 係発達 を考慮 した発達 の軸 に寄 り添 うことが求め られ. い。そ して,「 だつこす る―だっこされる」 とい う二. るのである。. 人の身体的関係 の表象 は赤 ちゃんと母親双方 の愛着行 動 なのである。. 「だっこ」 にみる間主観性 稲 垣 (2003)は. ,親 も子 も互 い の 主 体 性 を認 め る と. 「 だっこ」 を 自 らせが んで抱 かれて い た赤 ち ゃん が,今 度 は,ま るで「だっこ」 力れヽ やでおろ して欲 し.
(9) 南部真理子 :虐 待 を受 け た子 どもの 関係発 達論. い かの よ うにむず か った とす る。 この とき母親が ,赤. これが 絆 へ の 第 一 歩 であ る。. ちゃんの主 体性 に寄 り添 い感 じて ,そ の赤 ちゃんの思. 現在 の育児 は “ 我慢 させ ない もの "で あ る といわれ. い を感 じられ る まで待 って抱 い て い る こ とは,母 子 の. る。逆 か ら考 えれば,親 佃1も “ 我慢 して い ない "の で. 関係 性 成 立 の 必 要 十 分 条 件 で あ る 。 そ の 時 間 は 0。 3. あ る。関係性 自体 に関 わる時 ,そ の 関 わる側 も我慢 し. 秒 ,あ る い は 3秒 で あ るか も しれ な い 。 赤 ち ゃん は. なければな らない。 これが 両方 向 の響 きあ う関係 のは. 「 あれ ,ど う したのか な ?お 母 さんは何 を思 って い る. じま りで あ る。「 だっ こ」 か ら,「 お ろ して」 か ら,い. のか な ?」 と考 えるか も しれ な い 。「お 母 さんは ,ど. や な こ とも学 びあ い ,電 ヽ 地 いい こ とも感 じ合 うので あ. んな気持 ちなんだろ う ?」. と考 えるか もしれ ない 。母. る。 それ は,個 人 と個 人 の尊厳 を学 びあ う こ とに違 い. 親 が 混 乱 して い る 時 は ,実 は赤 ち ゃん も混 乱 して い. ない 。赤 ち ゃんは,母 親 とい う同一 の 愛着対象 に,ポ. る。 この 間 に,お 母 さん と赤 ちゃん の 関係性 が 築 かれ. ジテ イー ブ,ネ ガテ イー ブ両面 の感情 を持 つ こ とに何. る。 これ は,お 母 さん の赤 ちゃんの気 持 ちへ の共感 と. らかの形 で対処 しな くてはな らな いの であ る。Winni―. は違 う し,赤 ち ゃん もお母 さんに共感 して い るので は. cott(1896-1971)は ,こ の ポ ジテ ィー ブ ,ネ ガ テ ィ. ない 。赤 ち ゃんのその時 の こころの “ざわ ざわ"に 寄. ー ブ両面 の感情 を持 つ こ とに何 らかの形 で対処 しな く. り添 うので あ って ,お 母 さんの気持 ちに寄 り添 うので. てはな らない経験 に よ り乳児 は,全 能感 に支配 された. あ る 。 この 寄 り添 う 0.3秒 間 ,3秒 間 に 赤 ち ゃん は. 主 観 的 な対 象関係 を脱す る と して い る。 これ が は じめ. 「 なぜ お母 さんはお ろ さな いの か」 とい う母親 の こ こ ろを感 じる関係性 が生 まれ る。母親 には,主 体 と して. ての 間主観性 であろ う。. の赤 ち ゃんが (客 観 的 にで はな く)限 りな く母親 自身. ,ア タ ッチ メ ン ト (英 語 の意味 す る ア タ ッチ メ ン ト)と は「特定他者 との 間 に築 く情緒 的. に とっての主 体 に近 づ くのだ。. 結 びつ きであ り,安 全基地へ の接近行動 である」 と定. 稲垣 (2006)は. 母親 の この寄 り添 い は,臨 床心理学 で ロ ジャーズ の. 義 してい る。「だっこされる」 ことによって,限 りが. 意味す る共感 とは違 う。 ロ ジ ャーズ の 共感 は,相 手 の 感情 を思 い はかろ う とす る こ ち ら側 の気持 ちであ る。. ある ことを間身体的 に感 じ,こ の人は自分 にとって安 全 だ とい う こ とを感 じ,間 身体 的 に空 間 ・時 間 の. そ の意味 で は,主 体 の こころはす で に 自分 自身か ら離. 「枠」 を知 るのである。 アタッチメ ン トの方向性 を示. れて い て ,客 観 的 に もの ご とを提 え 自己 の解釈 で判 断. す ことは,ま さに赤 ちゃんにとっての内発的意図なの. す る もので あ る。対 象 に して い るの ものが ,対 象物 で. である。言 い換 えれば,ア タッチメン トとは,湧 き上. あ る とい う 20世 紀 の 科学 の 姿勢 で あ る。 この 意味 で. がって くる方向性 であ り,そ れ こそ「枠」 を知るため. この母親 は,赤 ち ゃん に共感 して い るので はな く,ま. の方策 であ り,安 全基地 を確保す るための方策 なので. さに母親 と赤 ちゃんには 間主観 的 な関係 が もたれて い. ある。 もちろん,赤 ちゃんと母親 の関係 は,大 人 と大人の. るのだ。. ,上 記 の赤 ちゃんに芽生 える気持 ち の こ とを ,“ 内発 的感 情 の 自己認 識 "と 表 現 して い. 関係性 と異な り,不 安 になったときに必ず応 えるとい. る。言 い換 えれば ,内 発 的 自己認知感 で あ り,内 発 的. ン トが ,や がて絆 に結 びつ くと考 え られる。 あ るい. 感情 を自 ら感 じるのだ。 これ は,自 己 の 中 に湧 き上が. は,赤 ちゃんは,こ の間主観的関係 を,母 親 との間 に. る情動 で あ り “ざわ ざわ"し た情動 で あ りなが ら, し. 築 く以前 に,生 得的 な感覚で自然界 との間主観的関係. っか り自己認 知 が 介在 して い る 。 そ して ,こ の 情 動. を築 いてい るのか も知れない。現実 の世界 の中 に身 を. は,か かわ る ものであ る親 の思 い が入 り込 んでい って. ゆだねた もの として感 じるものが赤 ちゃんの情動 の始. は じめ て育 つ の だ 。 (感 情 とは,も ともと人 間 が生 ま. まりであろ う。風 の動 きや木 々の ざわめ きの中に,あ. れ なが らに して生 物学 的 に持 ってい る もので あ るの に. るいは,そ の根源 となるものがあるのか もしれない。. 稲垣 (2003)は. う基本的な生理的欲求が基盤 にある。 このアタッチメ. 対 して ,情 動 とは 関係性 に よって育 つ もので あ る と捉 えて い る。)子 どもの行動 ,感 情 にだけ に 目を向 け る. 第 四章. 虐 待 を受 け た 子 ど もの 関係 発 達 論. のでは な く,自 己感 の領域 に も目が向 い て い る。子 ど もが 自己 を創造す る こ とを支援 して い る。 この始 ま り. ・虐待臨床 になぜ 「関係発達論」が必要なのか. の段 階 か ら,鯨 岡 の指摘 す る「両義性」 が 存在 して い る。 この “内発 的感情 の 自己認識 "が ,関 係性 の始 ま. 子 どもの虐待臨床 では,前 述 したように安心で きる 人間関係 の積 み重ねが,い つのまにか子 どもの問題 と. りで あ り,ア タッチ メ ン トの始 ま りで あ り,そ して. されていた行動 を違 う方向 に向かわせ ,気 が付 くと解. ,.
(10) 甲南女子大学大学院論 集第 5号. 人間科学研究編 (2007年 3月. ). 消 して い た とい う場 面 に出会 う。事 例 検 討 会 な どで. 同様 に,臨 床現場 で もセ ラ ビス トの情動 が揺 ら ぐこ. 「何 が よか ったのか」 分析 しに くい事例 ほ ど この 傾 向. とに よ り,子 どもの情動 も動 か され るのであ る。 また. にあ る。 虐待 臨床研 究 にお い ては “この療法 は この よ. 子 どもの情動 が揺 らい だ ときは,そ こに関わ つてい る. うに効 い た "と い う これ まで の 心 理 臨床 研 究 で は な. セ ラ ピス トの 情 動 もお の ず と動 か され て い るの で あ. く,臨 床事例 を関係発達論 的 に追 ってい くことに よつ. る。 そ の意味 で は確 か に,鯨 岡 (1999)の 指摘 す る よ. てその関係性 を明 らか にす る必 要 があ る と考 える。子. うに,子 どもの こころの 中 に宿 った もの は ,そ の子 ど. どもの虐待 問題 は,こ れ まで の研 究 の客観的 な捉 え方. もだけで創 り上 げた もので はな く,周 囲 の 人 との 関係. で は充分 には捉 え られ な い と考 える。. 性 に よつて構築 された もので あ る。そ れゆえ,虐 待 臨. 筆 者 は ,臨 床 心 理 士 と して虐待 臨床 に 関 わ って い. 床 で は ,子 どもとセ ラ ビス トとの関係 を関係発達論 的. る。虐 待 臨床 を 「 関係 発 達論 」 の 視 点 か ら考 え る場. に捉 えて い く臨床研 究が必 要 になる と考 える。 もちろ. 合 ,好 ま しい響 き合 い ,好 ま しくな い響 き合 いのいず. ん,セ ラ ピス トが 子 どもの思 い や情動 を感 じ取 ろ う と. れ に も,そ こにセ ラ ピス トとして居続 ける こ と,あ り. して もそれは容 易 で はない。子 どもは,一 人 ひ と りが. 続 け る こ とが 求 め られ る。居続 ける とは,あ り続 ける. そ の性格 も気 質 も違 う し,ま た虐待環境 も異 なる。 虐. とは,別 の表現 をすれば寄 り添 うであ ろ う。 人が人 に. 待 を受 け た子 ど もの 診 断 や そ の 特 徴 は DSM― Ⅳで つ. 寄 り添 う とは ど うい う こ とか。寄 り添 う ことの根本 に. け られて も,そ の一 人 ひ と り違 う生 き様 に寄 り添 うに. 立 ち返 らなければ ,虐 待 を受 けた子 どものその傍 に居. は,発 達 の 時 間軸 を共 にす る 中 で ,双 方 向 か ら生 まれ. 続 ける こ とは難 しいの で はない か 。寄 り添 う とは,人. たェ ピソー ドが必 要 で はな い か 。 関係性 か ら生 まれた. 間関係 の 「枠」 を関わ る二 人で倉1っ て い くこ とであ ろ. エ ピソー ド記述 か ら子 どもの主 体 1生 が 自然 と描 き出 さ. う。. れ るので はないか 。 つ ま り,そ うい うエ ピソー ドを持. 虐待 す る親 へ のアプ ロー チは,こ の 関係性 の なかで. って生 の子 どもの思 い には寄 り添 えるので はない か と. 客観 的 に見 る よ うな立場 に親 を もってい くこ とが 大切 になる。す なわち,親 子 間 に見 られ るべ き間主観 的 な. 考 える。. 関係性 が築 かれて い な い親 に とつては,治 療者 と親 自. ゃんの存在が あ り,そ の. 身 とのセ ラ ピーの 関係性 を通 して母子 の 関係性 を提 え. 待 を受 け た とい う事実 があ る とい う ことで あ る。決 し. なおす機 会 になる。. て ,虐 待 を受 けた. 臨床現場 で何 よ りも大切 な こ とは ,第 一 義 に. Aち. Aち. Aち. ゃんの 一 側 面 と して 虐. やん像 が まず先 にあ るの で は. また,虐 待 を受 け た子 どもへ の アプ ロー チ は,こ の. ない 。子 ども自身 の あ るが ままを理解 しようと寄 り添. 関係 づ くりの は じめか らもう一度 セ ラ ピス トとの対 人. い ,時 間軸 を ともに過 ごす 中で ,セ ラ ピス トの主 観 を. 関係 でや り直す こ とが 求 め られ る。 なぜ な ら,間 主観. 潜 り抜 ける中で捉 え られ る 間主観 的 に把握 され る もの. 的 な関係性 が人生 の初 めか ら無 か った ,あ るいは別 の. が 確 か に存在す る。そ の確 か な ものが子 どもに伝 わる. 形 で与 え られ た子 どもたちだか らであ る。そ して ,子. こ とに よつて ,子 どもの情動 も動 き出す。 そ して ,子. どもの発達 をど こ まで , どの ように さか のぼるか は. どもはこの間主観的な関係 により,関 係性 の「枠」 を. ,. これ まで述 べ て きた関係発達 の 中 で アセ ス メ ン トす る. 探 りつつ,こ のセラピス トは 自分 にとって安全だとい. こ とになる。 さらには,そ の 間主観 的 な関係性 が 親子. うことを感 じてい く。その関係発達が重ね られてい く. 関係 に一 般化 で きれば ,虐 待 にお ける人 と人 との 関係. 中で,子 どもは湧 き上が って きた ものを自らの情動 と. 性 に変化 が生 まれ る と考 える。 そ して この行 為 そ の も. して間身体的に出せ るようになるのである。あたか も. のが 治療 であ り,カ ウ ンセ リ ングであ り,プ レイセ ラ. 「だっこ」 されてい る赤 ちゃんが ,そ の腕 の 中で安心. ピーで あ る。. してむずかる ことがで きるように。「だつこ」 の場面. 子 どもの こころの発達 は,関 わ る者 が どんな思 い で. での赤 ちゃんの ように,臨 床場面 でアタッチメ ン トの. そ の子 に関 わって い るか に左右 され る。 関 わる者 の こ. 方向性 を示す ことは,ま さに虐待 を受けた子 どもにと. ころの あ り方 に大 き く影響 され るのであ る。具体 的 に. っての内発的意図 なのである。言 い換 えれば,ア タッ. 初期 の 親子 関係 で は ,「 か わ いい」 と,親 の情動 が 動. チメン トとは湧 き上が って くる方向性 であ り,そ れ こ. か され る こ とに よって ,子 ど もの情 動 が育 ち,「 どう. そ「枠」 を知るための方策であ り,安 全基地 を確保す. して ,こ の子 は こん ななの ?」 と親 の情動 が揺 ら ぐと. るための方策なのである。子 どもは,そ れまでの虐待. き,そ の揺 らぎは隠 しようもな く情動 的 な感情 と して. 関係 では感 じる ことが難 しか った湧 き上が って くる情. 子 どもに跳 ね返 るのであ る。. 動 を,セ ラピス トに感 じ受けて もらえる ことか ら,関.
(11) 南部真理子 :虐 待 を受けた子 どもの関係発達論. 係性 の「枠」 をさぐりつつ,安 心安全の場所 を感 じて. ため,「 関係発達論」 はこれまで一部 の学者や臨床家. い くのであろう。. に理解 しに くい もの として捉 えられる こともあ った。. セ ラ ピス トも子 どももその個人の思 いの内に間主観. そ こで筆者 は,本 論文 と平行 して具体的 にそ こに展開. 的なものを もっている。そ して,主 体 としてのセラピ. される関係発達 の諸事実 を明 らかにするために,虐 待. ス トも主体 としての子 どもも共 に自分 の 中に矛盾 を抱 えてい る。 だか らこそ,「 なぜ ?」 と思 い相手 に寄 り. を受けた子 どもの臨床事例 をエ ピソー ド記述 し考察 し )参 た。 (「 虐待 を受 けた子 どもとのプ レイセラピー」口. 添 い,そ の結果 として「待 つこ との出来る関係」 が関. 照)そ こでは,「 関係発達論」 とい う基本的 な「枠組. 係発達臨床 の根幹 にあるのである。そ して,そ の感情. み」 に くわえて,小 林 と稲垣 の「関係発達臨床論」 の. や,思 い を一方的 に押 し付けるのではな く,セ ラビス. 視点 を取 り入れ,個 々の発達的事象に対 して「関係発. トが 「枠」 を一方的 に決 めるのではな く,“ 枠 を双方. 達臨床論」 としての説明可能 な方向性 を示 してい る。. で築 いてい く作業"が 間主観的な関係性 である といえ よう。 (「 子 どもの虐待 における人間の関係性」Ю参照. もと関 わ る者 の 関係 を大切 に記述 し (エ ピ ソー ド記. 虐待 を受けた子 どもは,関 係性 に寄 り添 う方向性. 述 ),ひ とつ ひ とつ の 臨床事例 の メ タ意 味 を掘 り下 げ. ). ,. 今後 の課題 と して ,さ らに多 くの虐待 を受 けた子 ど. 関係 に対す る支援があ って初 めて,こ れまでの虐待的. る必 要 が あ る。 そ の こ とは ,関 与 観 察 の 有 り様 で あ. な人間関係 を離 れ,自 分 を主体 として見つめ始 めるの. り,虐 待 臨床 の本 質 に迫 る こ とだ と考 える。「 それ ぞ. ではないか。そのことを支 えるためには,子 どもの発. れの発 達が他 の発達段 階 にあ る人の発達 に よって支 え. 達 を関係発達 の視点 か ら捉 える必要性があ る。. られ ,"育 つ ―育 て られ る"と い う関係 の生 命 サ イ ク ル過程 の 中 で展 開 され る関係」 こそが ,関 係発達 の根. お. わ. に. 幹 で あ る。 関係 発 達 を文 章 化 す る こ とにお い て は ,"関 与 す. 虐待 とは,関 係性 の診 断名 であ り個 人 の疾患 名 で は ない故 に,虐 待 臨床 で は,子 どもの あ るが ままを関与 す るセ ラ ピス トを も含 め ,関 係す る二 者 の思 い と思 い. る"と い う こと 自体 を研 究 の 中に含 め るこ との難 しさ を常 に感 じて い る。 しか し,"関 与 す る"と い う こ と. の 絡 み 合 い と して受 け止 め る必 要 が あ る 。 自閉症 臨. 自体 を研 究 に含 め るか らこそ ,同 時 に子 どもの生 きる 蟷)を 力 ,レ ジ リア ンス 感 じとる こ とが 可能 になるので. 床 ,特 別 支援 臨床 等 の例 (第 二 章 )で 提 示 した よ う. あ ろ う。. に,虐 待 を受 け た子 どもを関係発達 か ら捉 え,関 わ る 必要性 は明 らかであ ろ う。 これ らの議論 はす で に,保 育臨床現場等 では,さ まざまにな されて きて い る。 本論文 で は,虐 待 臨床 に も関係発 達論 とい う新 しい. 江. 1)間 主観 性 ,間 主観 的. :二 者 ,あ る い は不 特 定 多 数 の. 主観 に,な ん らか の 観 念 や気 分 が 共 有 され て い る事 態 を意 味 し,そ の こ とを,一 方 の 当事 者 自身 の 意 識 に引. 視点 を導入す るこ との必 要性 と意義 につい て論 じた。. き寄せ て 語 る 時 に ,間 主観 的 と表 現 して い る (鯨 岡. そ の根底 には,セ ラ ピス トとして子 どもに関 わってい. 1989;1997)。. る筆者 の 身体 が感 じる もの ,筆 者 の主観 を潜 り抜 け る 中で捉 え られ る間主観 的 に把握 され る ものが ,す で に 先 にセ ラ ピス トの 中に存在 して い た事実 が ある。子 ど もの思 い をよ り感 じ,筆 者 自身 の思 い をメ タ認知す る ため に も,二 者 の思 いの 関係性 をあ るが ままに近 づ け る必 要が あ る と感 じたのであ る。 そ して何 よ り関係発 達論 を虐待 臨床 に導入す る ことに よ り,過 去 と現在 の 虐待 環境 の理解 に とどまらず ,こ れか ら子 どもが発達 して い くとい う事実が子 ども理 解 の 中 に組 み込 まれ る ので あ る。 鯨 岡 の「 関係発 達論」 は ,「 ひ とが ひ とをわか る と い う こ と」 で相互主体性 とい う概念 を加 え再 構築 され た。 しか しなが ら,鯨 岡 自身 も指摘 す る よ うに,関 与 す る者 の 人 間性 や主 体性 とい った もの にまで論 が 及 ぶ. ,. 間 主 観 的 =情 動 的 な 関 係 は ,子 ど もの 側 か らみ れ ば ,ど こ まで も養 育 者 に巻 き込 まれ , どこ まで 固有 の 自分 で あ り得 るか の二 面性 ,養 育 者 の 佃1か らみ れ ば. ,. どこ まで子 ど もを 自分 の 意 図 に巻 き込 み ,ど こ まで子 ど もを全 面 に押 し立 て て ゆ け るか の二 面性 とい う,相 互 の二 面性 (両 義 性 )が 情 動 の 動 きを軸 に複 雑 に絡 み 合 う関係 で もあ る。 そ の 間主 観 的 ,間 情 動 的 な関係 の 取 り結 び 方 が ,そ の 子 ど もの 自己性 の あ りよ うを型 取 る。. 2)「 乳幼児精神発達診 断法」 津守. 真 ・稲毛教子 1961,. 1974 大 日本 図書 増補 「 乳 幼 児 精 神 発 達 診 断法 」 津 守. 真. 稲 毛教 子. 1995,2004 大 日本 図書 乳幼 児 精 神 発 達 検 査 :牛 島義 友 0本 田市 治 ・ 森 脇 要 0入 沢寿 夫 共 著 書房. 愛 育研 究所 児 童 業 書 第. 2巻. 金子. 1949. 3)ICFモ. デ ル :国 際 障害分 類 改 訂 版 ・ICFモ デ ル. Inter―.
関連したドキュメント
教育・保育における合理的配慮
1-1 睡眠習慣データの基礎集計 ……… p.4-p.9 1-2 学習習慣データの基礎集計 ……… p.10-p.12 1-3 デジタル機器の活用習慣データの基礎集計………
子どもが、例えば、あるものを作りたい、という願いを形成し実現しようとする。子どもは、そ
どんな分野の学習もつまずく時期がある。うちの
親権者等の同意に関して COPPA 及び COPPA 規 則が定めるこうした仕組みに対しては、現実的に機
ISSJは、戦後、駐留軍兵士と日本人女性の間に生まれた混血の子ども達の救済のために、国際養子
今回、子ども劇場千葉県センターさんにも組織診断を 受けていただきました。県内の子ども NPO
◯また、家庭で虐待を受けている子どものみならず、貧困家庭の子ども、障害のある子どもや医療的ケアを必