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〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査(1) : 米国におけるJ.N.Ponderの実態調査報告を中心に

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1/3 〈資 料〉

  セグメント別報告の制度化と実態調査(1)

   一米国における∫.N. Ponderの実態調査報告を中心として一 三 木 實

工,はじめに

 最近.国際会計基準第14号「セグメント別財務惰報の報告」の公表により,その加盟各 国では,ゼグメソト別財務報告の制度化を積極的に検討せざるを得なくなっている。特 に,IASCの理事圏でもあるわが国で,その積極的な推進を図り,その制度化への検討が 行われるのも,至極当然のことであろう。  このような観点から,既にオーストラリアにおけるセグメント別財務報告の制度化に関        o するその実態と最近の動向について考察した。本稿では,同じような観点から,米国にお けるセグメント別財務報告の制度化に関する実態調査の結果報告について,これを分析・ 検討してみようと思う。米国における制度化の経緯については,つとに末尾教授による詳        2) 細な研究が行われているが,本稿で取上げる実態調査は,その制度化への貢献を意図して       3) はいるものの,所詮,会計学者の個人的な研究として行われたものである。従って,従来, わが国で考察ないしぱ検討されてきたような組織的・機関的な調査に特有な組織代表的な 立場からは全く離れて,専ら学究的な立場から行われた調査報告であるから,このような 意味において,われわれに多大の示峻を与えてくれるものと信じて,本稿で敢えて取上げ た次第である。  そこで.本稿では,まず米国におけるセグメγト別財務報告の制度化を前提として実施 された実態調査の結果報告を,当時の会計レベルで分析・倹喫することにより,その制度  !)拙稿「一一スhラリアのセグメント別財務報告一その実態と最近の動向一」『彦根論叢』第226  号(昭和59年6月)141−165頁参照。  2) 末尾一一・llk『事業別財務情報会計』森山書店,昭和54年,第2一第7章参照。  3) Jimmy N. Ponder, Full Disclosure in External RePorts by Diversified Business  Segments, (Michigan; XEROX Company. 1972)

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 114 彦根論叢第227号

化の前提となった当時の会計的野況の特徴を明確に把握する。そして,このような研究方 法が,われわれにとってどのような意味をもつものであるかを検討することにより,わが 国におけるセグメント別財務報告の制度化の前提として実施されるべき調査・研究の方法 やその方向性を探ってみることにしたい。 皿.セグメント別情報開示の必要性  1,企業結合運動と経営多角化  経営多角化の会計に対するインパクトの重要性は,SECが関心を示す1966年までは,

       4) 5)

殆んど注目されなかったが,その基礎になる原因は,産業革命にまで遡りうるのである。 産業革命後の経済は,約1世紀にわたって産業資本主義時代に入るが,経済活動の成功に よって多額の資本蓄積を果たし,そして投資家の魅力を強化せんとする経営者の不断の努 力は,やがて急激な成長の達成手段としての企業結合へと転じていったのである。  米国の産業史上で,これまで3大企業結合運動が認められるが,その第1は,!890年か ら1904年までのシャーマン法制定後の数年に,持株会社方式を特微として展開されたもの   6) であり,第2は,第1次大戦末期から1920年代まで続いた.主として寡占状態の維持・確 立を目的とした比較的小規模なものであっk。そして,第3は,第2次大戦後に始まって 近年にまで至る複合企業または多角経営企業を中心として,競争力の強化,新市場への多 角化,激烈な技術革新への対応等を目的とした複合的・多角的企業結合として特徴づけら れる大規模な運動である。  そこで.まず,1895−1969年の鉱工業における企業結合の発生件数について調べてみる と,第1表のようになる。これによれば,(1)過去10年間の総発生件数(14,407件)の約半 分(7,010件)が,1967一一69年の僅か3年間に発生しており.(2)!895年以降の59年間の総 発生件数(17,434件)と!954年以降の発生件数(17,522件)とが概ね同じであり,(3)最近 10年間の発生件数(14,407件)とそれ以前の40年間の総発生件数(15, 645件)とがほぼ匹 敵するほどであった。  次に,近年の企業結合の大規模化も,会計報告上の問題に対するインパクトを増大させ  4) この点の詳細については,拙稿「部門別外部報告会計の発展とその問題点」r彦根論叢』第172  号(昭和50年3月)20−25頁を参照されたい。  5) J. N. Ponder, oP. cit., p, 17.  6) この点の詳細については,拙稿「連結会計導入思考とその発展(1)」r彦根論叢』第211号(昭  和56年11月)62−66頁を参照されたい。

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   〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (工) 115 第1表 鉱工業における1895−1969年の企業結合数

年度

567890123456789999990000000000

QO      Qμ 1         1 件 数  43  26  69 303 1, 208 340 432 379 142  79 226 128  87  50  49

年度

01234567890董234

111111111122222

9 1 件 数

23259工751807918

408837197368016

11   

11 474333

年劇件数

9 1

567890123456789222223333333333

 554 856 870 1, 058 1, 245 799 464 203 120 101 130 126 124 110  87

年度

i9

Q?

2:

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54 [

1件興隆度

0183439436941112310221

/1123344212

 1955

 56

 57

 58

 59

 60

 61

 62

 63

匪数

  {   1 ,,s 1

號!

38朔

 525  537 490 457 719 966 1,117 1, e33 985 64 [ 1,065 65 i 1,125 66 1 1,106 67 1 1,639 68 [ 2,620 69 [ 2,751

筆欝劇論灘簿器取得数縢産額

 Sources: 1895−1918−Palph L. Nelson, Merger Movements in American lndustry  l895一一1918, (Princeton University Press, 1959), p. 37; 1919−1959−Vernon A, Mund,  Government a%d Bus∫ness,4th ed,(Harper a皿d Row, Publishers,1960), p.51;  1960−1969−Bureau of Economics, Federal Trade Commission, Annual RePort of  the Federal Trade Commission−1970, p 38. ている要因と考えられる。そこで,これについて調べてみると,総資産1億ドル以上の会 社を最初に買収したのは1952年にOlin Mathieson Chemical CorporationがE. R. Squibb 社を取得した時であったが,1967年には,このような企業結合が23件にも増加していた。 これは,過去20年間の1億ドル以上の総発  第2表 1948−68年の最大200社による        企業取得   (単位:百万ドル) 含まれていた。第2表は.最大200社の企業 取得規模が1948−52年の間では平均223万 ドルであったものが,1968年には4,524万 ドルに増加していることを示すものである。 そして,FTCは,これらの会社の連結資 産総額を詳細に分析した結果, 「……第2 1953一一57 1958−62 1963−67 1968 合  計 407 861 1,110 1, 186 344 3, 908  909 6, 461 7, 447 19, 797 15, 563 $ 50, 177 平均資産額 $ 2. 23  7. 50  6. 71  16. 70  45. 24 $ 12. 84 Source: Bureau of Economics, Federal Trade Comtnissien, EconoMic PaPers, 1966−69, p. 287. 7) “How the FTC Keeps Up On Mergers”, Bzasiness PVeek, May 25, 1968, pp. 132−3.

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 116 彦根論叢 第227号

次大戦以後,最大200社の保有する産業資  第3表 1948−68年の複合的合併の割合        う に直接帰属させうるものである」と結論し ている。  第3表は,1948一一68年の企業結合におけ る複合的合併の割合を示したものであるが, これによれば,1948−51年の間には,総合 併活動の約38%が複合的結合であるにすぎ ない。ところが,1956−59年目間には,関 薗こおける増力噸の事魁すべてが・合併

w

剛齢齢併二合的合併

1948−51 1952−55 1956−59 1960−63 1964−67 1968 38% 52 53 63 78 89 62露 48 47 37 22 11        Seurce: Gilbert Burck, “The Merger        Movement Rides High”, Fortune, LXXIX        (Febrziary, 1969), p. 81. 連のない市場や製品への多角化を図る複合的結合が53%に上昇し,1968年には.全結合件 数の約90%にも達しているのである。 ・以上のように,近年の企業二合運動は,その件数や規模の上で非常に莫大になってお り.また,従来みられた製品の製造・販売のための垂直的統合化や関連事業の水平的統合 化による企業成長の形態と異なって,殆んど関連のない産業の会社を結合する多角化戦略 がとられていることが明.らかになった。このような経営構造の変化によって,外部利用者 に提示されている財務情報の形態や内容の詳細について,これを再検討する必要性が惹起 されたのである。そこで,1967年9月,APBは,財務情報や開示実務が「……静止して いないし,また,経営環境の変化に応じるべきであることを認める。企業による産業多角       9) 化の増加は,財務報告実務の再検討を必要とする経営環境の変化の一側面である」と現行 実務の再検討の必要性を認めたのである。  2.セグメント別情報開示の必要性  (1) セグメント別情報開示の支持論 多角経営会社による外部的財務報告は,単に総 体としての営業成績や漠然とした断片的な補足的開示を超えなけれぽならないという考え がよく提示されているが.これは多くのセグメントの営業活動をセグメント別に分解した 資料の必要性を意味するものである。例えば,David Norrも,概ね同じような表現をし, 「部門別の売上と純利益に対する部門別の貢献は,大幅に変動することがあるので,部門  8) Bureau of Ecenoinics, Federal Trade Commission, Economic PaPers 1966−69 (Wash−   ington: Government Printing Office, 1970), p. 267.  9) AICPA, Statenzent of the Accounting PrinciPles Board No. 2−Disclosure of  SuPPIemental Financial lnformation by Diversified ComPanies (New York: AICPA   1967), para 2.

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      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1) 117 別利益は非常に重要な要素である。……私の意見では,部門別利益を報告することは,戦        10) 後期における分析技法を前進させる最も重要な手段を意味している」と述べている。M. F.       11) Cohcnは,「経営多角化の影響により.時々.財務情報が不明瞭にされてきた」が,これ は,主として被取得会社の財務諸表が,しばしば中途で消失することから生ずることであ る。つまり,結合後の連結財務諸表では,結合前の個々の実体に関する情報は報告され ず,面しい実体の全体としての事業活動.しか報告されないからである。株主や将来の投資        12) 家は,財務情報を外部報告書に拠っているのであるから,明らかな損失者である。  さらに・第4表に示された合併の失敗率  第4表1955_65年【こおける産業別合併 に関する統計的数値から,セグメント別電      の失敗率 報開示の必要性は,ヨリー層強調されるで あろう。この表によれば,製造企業を含む 合併は,およそ6件に1件の割合で失敗に 帰していることがわかる。この場合,合併 を失敗と判断する基準として,次の3つの 場合,(!)被取得企業が3年以内に利益を計 上しない場合,(2)被取得企業の製品もしく ぱ製造工程が原材料もしくは工学的研究に 話本的に変更されなければならない場合, ③被取得会社が後日,売却ないしは清算さ れる場合が考えられるが,そのいずれか1 つに該当する時に,当該合併を失敗したも          13・) のとして取扱っている。従って,投資家は, 産

剰飴温温釧失敗率

薬子口角品品料品品ス品

燈加轟轟製擁計

料気.㎜計測築動学詳合

肥電食金紙石建自供塗薬

 406

 705

 290

 512

 480

 610

 21e

 41e

 840

 325

!一6Jr21

陣4091

5362784644961487936359

 1          1 8 6 8 16. 0% 16. 0 15. 9 16.2 16. 1 16. 6 16. 2 17. 0 16. 0 16. 0 コ5.9 16. 0 Source: Ecenomic Concentration, Hearings before the Subco皿mittees on Antitrust and Monopoly of the Committee on Judiciary, U. S. Senate, Eighty−Ninth Congress, Sec− ond Session, p, 1944. 被合併会社の財務資料の開示拡大化を大いに必要としていることは明らかである。しか も,異なる事業系列にまたがる複合的結合が増加しているので,益々セグメント別営業活 動に関する資料は,決定的に必要とされている。つまり,投資家は,従来の総体としての lo) David Norr, “What a Financial Analyst Wantsf rom an Annual Report,” Financial  Execzative, XXXVIII (Aug., 1970), pp. 20−3, 11) Manuel F. Cohen, “The SEC and Accountants: Cooperative Efforts to lmprove  Financial Reporting,,,ノb%793αJ o∫Accountancツ, CXXII(Dec.,1966), PP.58−9. 12) Zbid., p. 57, 13) 」. N. Ponder, oP. cit., p. 26.

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9!118 彦根論叢 第227号 営業活動資料では隠されていたような弱点を,これらの資料の開示によって,見出すこと ができるからである。これに対して,Leopold Schachnerは,セグメント別報告は,開示 の境界を拡大するための弁解ではなく,専門単一業種企業から多角経営企業への移動を財 務諸表で反映でぎるようにし,かつ,多角経営企業の報告書と非多角経営企業のそれとを       14) 平等にするために必要な修正にすぎないとする見解をとっている。  FTCは,会社の合併から生ずる経済集中に関するスタヅフ報告で,「会社の報告に対        15) する現行要件は不十分であるから,直ちに改訂を要することは明らかである」と結論し, また,この改正に先立って,複合企業の報告問題に関するヨリー層の調査が必要であるこ とも決定した。Neil Jacobyは,経営情報システムが投資家に正確な指針を与えるために は,複合企業の報告上の欠点を除去しなければならないが,会計専門家がそのシステムの 管理人として,その欠点を改善するしでの主導権をとらなければならないという見解をと    16) っている。  以上のような個人的な意見や主張に加えて,セグメント別資料を外部報告書に含めるよ うに開示要件を拡大する必要性を支持する実証的な証拠も若干ある。例えば,1964年, NAAによって開始された最初の研究では,財務分析士や商業銀行家のグループは,会社 の年次報告書で見出したどのような重要な欠陥でも取上げて,説明するように:求められ た。その結果,分析士の約80%は,主要な製品や市場セグメントに区分された売上および       17) 利益を会社が提示していないことをあげている。また,1967年にFEIの後援で開始され たR.K. Mautzの研究では,質問状に回答した投資家の90%強が,複合会社のセグメン       18) ト別財務資料の必要性を指示していたのである。  (2)セグメント別情報開示の批判とその反論 以上のように,外部報告書にセグメン ト別情報を開示することが好ましいとする個人や組織団体の数は,益々増え続ける中で, 14) Leopold Schachner, “Accountability Under lndustrial Diversifi¢ation,” Accounting  Review, XLIII (April, 1968), p. 311. ls) U. S. Congress, Senate, Committee on the Judieiary, Economic Concentration,  Hearing, 91st Congress, lst Session, Part 8A (Washington: Government Printing  Office, 1969), pp. 140−1. 16) Neil H. Jacoby, “The Conglomerate Corporation,” Center Maga2ine, 11 (Jttly, 1969),  pp. 41−53. 17) Morton Backer and W, B, McFarland, External RePorting for Segments of a  Business (New York: NAA, 1968), pp. 3−7. ls) Robert K. Mautz, Financial RePorting by Diversified ComPanies (New york:  Financial Executives Research Foundation, 1968), p. 301.

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      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1) 119 このような考え方に反対する人々もまだ多数存在していた。しかし,その反対の理由は,       19) 概ね次の3つの主たる主張に集約することがでぎるようである。  (1)このような情報を入手した競争者は,不当な市場利益を獲得するであろう。  (2)セグメント別情報開示の思考に対する承認される統一的な解決方法が存在していな い。  ㈲ 株主や将来の投資家は,このような情報を理解するには余りにも複雑すぎることを 知ったり,あるいは守谷を招くことになろう。  そこで,以下,これらの点について検討してみることにしよう。まず第1に,通常,セ グメント別報告に反対する理由は,競争の恐れである。会社の利益を保護するために,株 主や投資家から,しばしば情報を取り.しげてしまっているが,この主張の妥当性には若干 疑問がある。というのは,一般に競争者は,既に相互に相当程度まで知り合っているから である。事実,多数の財務分析士は,その取り上げられた営業活動に関する資料を入手す        20) るためには,競争者がその格好な情報源であることをよく知っている。従って,セグメン ト別報告が競争上の不利益をもたらすという考え方は,逆説的な幻想であって,むしろ会 社の営む各種の事業セグメンNこ関する情報が与えられていない唯一の集団は,株主や投 資家だけであるということになるのである。  第2の点については後述するので,ここでは割愛することにする。  第3の点については,年次報告書にセグメント別資料を開示することは,理解されない か,あるいは殆んど重要でない項目で,ヨリ重要な資料を不明瞭にする傾向があり,その 結果,誤った結論を導き出すことになると批判されている。これに対して,過少な情報開 示の罰として,理解を欠き.その結果として誤った決定を行わせる可能性をもたらせると いう反論もできる。さらに,若干の会計士やAAAによれば,過剰な情報開示の危険は,        21) 不十分な開示のそれよりも遙かに少いと考えられているのである。 19)」.N. Ponder, oP. cit., p. 28. これに対して,最近では,セグメント別報告に反対する理由   として,(1)投資家は個々のセグメントにではなく,全体としての会社に投資していること,(2)会   社の革新や実験を抑制する傾向になること,(3)十分な信頼性をもって作成しえないこと,(4>解   釈するのが難しく,不当な推断で誤解すること,(5)情報提供のための費用が高すぎること,な   どが挙げられている(Malcom C. Miller and Mark R. Scott, Financial Reporting By   Segments (Melbourne: AARF, 1980), p. 7−9 )0 20) Leopold Schachner, “The Financial Report of the Diversified Enterprise,” Manage−   ment Accounting, XLVIII (July, 1967), p, 31. 21) AAA, “Standards of Disclosure for Published Financial Reports,” Accounting Review   XXX (July, 1955), p. 402.

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 120 彦根論叢 第227号

 そこで,セグメント別情報開示の問題について質問するに先立って,回答者の解釈に混 乱を生じさせないために,この調査で問題として考えるべき会社を次のように定義してい る。つまり,多角経営会社とは,「その営業活動や市場が非常に異質的であるため,同じ        Z2) 会社内で異なる収益率,危険の程度および成長の機会を経験している会社」をいう。そし て,このような会社については,事業セグメント別に分解された営業成績に関する資料を 年次報告書に提示すべきであるかという質問に対してなされた回答結果を示したものが第 5表である。      第5表 セグメント別情報開示の必要性  これによれば,財務諸表の利用 者としての財務分析士の92.3%ま でが,セグメント別情報開示の必 要性を感じており.また,このよ 1賛成数 %1反対数 %i合計 % 財務分析士 会社経営者 96 92.3 81 83.5 8 7.7 16 16.5 104 100.0 97 100.0 うな財務諸表を作成する側のコントローラーも,同じく83.5%までの大多数が,その必要 性を認めていることがわかる。従って,このようなセグメント別情報開示の必要性に関す る両者の意見の一致がみられるということは,取りも直さず,AICPAのような権威ある 会計専門団体が,年次報告書にかかるセグメント別情報の開示を要求すれば,これが支持 されうる余地が十分あることを意味するものである。特に,報告会社の開示方針に大きな 影響力をもっていると思われるコントローラーの大多数が,これを好意的に受入れてく れるであろうということは,その制度化にとっては非常に望ましいことといわねばならな い。 皿.セグメント別情報開示の統一性  APBステイトメント第4号によれば,「……財務会計の最も重要な目的の中に,比較       23) 可能性を掲げる」とされ,一般に財務情報の比較可能性は,類似事象が同一方法で会計処 理されているかどうかにかかっていると結論されている。これは,APBが会計実務や報 告手続の統一化を志向することを意味するものであって,「……比較可能な財務会計情報 は,単一企業の期間相互の,また複数企業の企業相互の相対的な財務的長所や短所および 22) J. N Ponder, oP, cit., p. 183. 23) AICPA, APB Statement No.4−Basic ConcePts and Accounting PrinciPles  Underlying Financial Statement of Bzasiness EnterPrises (New York: AICPA,  1970), p. 41.

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      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1)  121       24) 相対的な成功に関する結論を引出すことに役立つ」のである。  さらに,APBは,単一企業内の期間比較よりも企業相互間における比較可能性の達成 が難しいものであることを認めてはいるが,情況の相異によって正当化しえないような会 計や報告実務における差異の範囲を縮少することに努めることに対して高い優先度を与え       25) ることを指示している。そこで,このような観点から,AICPA, SEC, FERFなどによる セグメント別清報開示に対する貢献について,以下検討してみることにする。

 1.AICPAによるセグメント別情報の開示

 AICPAは,従来,協会によって設置された適当な委員会による公式意見の表明により, 特定の勧告書を公表するという方法を採用してきた。これは.やがて,特定された開示要 件を会計士が採用することを義務づけている会計のあらゆる分野における開示基準を制定 することになる。協会によるこれらの会計や監査に関する諸基準は,開示の拡大化に重要        26) な役割を演じ,また財務報告の統一化にも注目すべき貢献を果たしてきた。  しかし,多角経営会社の清報開示vzcaするこのような勧告書は,1967年9月公表のAPB ステイトメント第2号「多角経営会社による補足的財務情報の開示」だけである。そこで は,「本審議会は,かかる情報が多角経営会社の過去の業績および将来の危険や期待を評        27) 価する際に,投資家に役立ちうることを認める」と述べている。ところが,セグメント別       Z8) 清報開示に関する相当な調査が.なお必要であることから,暫定的な勧告として,「差当 り,本審議会は,多角経営会社に対して,その各産業セグメント別に補足的な財務情報を 自発的に開示するという前向きの姿勢で,慎重かっ客観的に,それ自体の環境を検討する       29) ように勧告する」と述べたにすぎない。従って,産業セグメントの構成内容,要報告情報 の内容および報告の方法などに関する具体的な記述は,提示されなかった。このことが, 結局,セグメント別財務資料を自発的に開示する会社に,開示上の統一性を欠くことを 許す結果となったのである。この点に関しては後で詳述するが,APBとしては,「本審議 会は,自発的な開示努力から引出された経験が,調査活動およびさらに突込んだ研究から 24) fbid., p. 38. 25) fbid., p. 41. 26) Michael N. Chetkovich, “Standards of Disclosure and Their Development,” Journal   of Accoztntavec),, C (Dec., 1955), p. 51. 27) AICPA, APB Statement No.2,0カ, o肱, para 7. なお, APBステイトメント第2号の   詳細については,末尾r前掲書』50−2頁を参照されたいQ 28) fbid,, para. 10. 29) lbid,para 11.

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 122 彦根論叢第227号

引出されるべき結論と相まって,多角経営会社による補足的財務情報の開示の必要性およ び範囲に関して,将来,最終的な意見の表明をなすための健全な基礎を提供するものと考  30) える」と結論し,今後の会社による自発的な開示の実務と,これに基づく調査・研究活動 の成果とを期待したのである。  そこで,このような観点から,全米会計士協会をはじめ,財務管理者協会なども,次の ような調査報告書を発表し,セグメント別報告の必要性を認めている。すなわち,1968年       31) 4月のBackerおよびMcFarlandによる「事業セグメント別外部報告」,同年6月のR・       32) K.Mautzによる「多角経営会社による財務報告」,翌年9月のRapPaportおよびLerner        33) による「多角経営会社による財務報告の枠組み」などである。このような一連の報告書の        34) 公表に伴って,SECも1969年7月,セグメント別財務情報の報告要件を発表したので, 多数の会社が,事業の種類別ないし企業活動の主要部門別に売上および利益を報告すると       35) いう傾向がみられるようになったのである。  さらに,1972年3月,財務分析士連盟の財務会計方針委員会は,「財務分析士の観点か らみた財務会計および報告の目的」と題する態度表明書をAICPAの会計目的スタディ・        36) グループに提出し,セグメント別情報開示の必要性を明確にした。同年5月,Rappaport およびLernerによる「経営者と投資家のためのセグメント報告」で,実態調査の結果         37) 報告が行われている。同年6月,NAAは,管理会計実務委員会のステイトメント第3号 「多角経営会社の財務報告」を公表し,セグメント別報告のガイドラインを提示したので 30) lbid,, para 13. 31) Merton Backer and W. B. McFarland, oP. cit,, pp. 3−7. 32) Robert K. Mautz, oP, cit., p. 301. 33) Alfred Rappaport and E, M. Lerner, A Frameworle for Financial 1?ePorting by  Diversified ComPanies (New York: NAA, 1969) 34) SEC, Seczarities E.rchange Act of 1934, Release No. 8650, “Adoption of Amendments  to Forms S−1, S−7 and IO” (Washin.aton, D, C,, 14 July 1969) 35) この点の詳細については,拙稿「部門別財務情報の公開とその有用性について」r彦根論叢』  第169・70合目号(昭和49年11月)173−8頁を参照されたい。 36) Financial Analysts Federation, Financial Accounting Policy Committee, “Objectives  of Financial Accounting and Reporting from the Viewpoint of the Financial Analyst,”  Statement to the AICPA Accounting Obiectives Study GrouP (New York: FAF.  30 March 1972) 37) A・ Rappaport and E, M, Lerner, Segment RePorting for Managers and investers  (New York: NAA, 1972)

(11)

      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (工) 123  38) ある。また,同時期に,会計士国際会計スタディ・グループも「多角経営会社による報        3D) 告」を公表し,セグメント別情報の開示とその監査の必要性を勧告している。  以上のような状況の中で,先行する諸研究・調査を参考にし,その欠点の改善を図った       40) 上で,Ponderの実態調査は行われたのである。従って,その主たる目的は,(1)外部報告 書で事業セグメント別の営業活動情報の開示が望まれているか,②望まれていると仮定す れば,どのような情報がどのような方法で開示されるべきか,(3)現行実務の差異範囲を縮       ・  ・  .  .  ・  …      41) 少し,外部報告書上の統一化を促進することなどを狙いとしているのである。  2.SECによるセグメント別情報の開示要求  (1)SECのセグメント別情報開示の基本要件 SECの適宜に公表する会計通牒に従 って作成された年次報告書の公表により,会計士や経営者は外部報告におけるヨリ完全 で,かつ,ヨリ統一的な開示を達成するために,現行の開示実務を検討するという刺激        42) が,次々に与えられてきた。SECは,委員会に提出する報告書にセグメント別資料を開示 するように多角経営会社に要求することにより,セグメント別報告の主導権をとった。つ まり,1970年以降,多角経営会3±la届出書様式S−1, S−7および10で,「事業系列」別 に,営業成績に関する資料を開示するように要求し,更に,1971年1月1日発効で,様式 /0−KでSECに提出する会社の年次報告書に対しても,同じ開示要件を適用し始めたの である。  様式S−1,S−7,!0および1(}一Kに関するSECによる「事業の種類に関する情報」 としての基本的な開示要件は,次の通りである。   「登録会社およびその子会社が,二つ以上の事業系列に従事している時は.最:近の5 事業年度か,1966年12月31日以降に終了する事業年度ないし登録会社が事業に従事して いた事業年度か,いずれか短い方の各年度について,各事業系列に帰せられる(1)総売上 と収益,および②所得税および異常項目控除前の利益(または損失)の概算額か百分比 38) NAA, Committee on Management Accounting Practices, Statement on Management  Accounting 1)ractice No. 3, “Financial Reporting by Diversified Companies” (New  York: NAA, June 1972) 39) Accountants lnternatienal Study Group, RePorting by Diversified ComPanies  (Birmingham, England: AISG, 1972) 40) J, N. Ponder, oP. cit., pp, 31−40. 41) lbid., p. 9−10. 42) M. N, Chetkovich, oP, cit., p. 51.

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124 彦根論叢第227号

を示すこと。但し,最近の2事業年度の中,いずれかにおいて,  ㈲ 総売上と利益の10%以上  (B)いずれの事業系列の営業から生ずる損失をも控除せずに,計算された所得税およ   び異常項目控除前の利益の10%以上,あるいは,  (C)上記(B)で規定された利益額の10%に等しいか,またはそれを超える損失 を会計した事業系列について表示すること。  総売上と収益が,最近の2事業年度の中いずれかにおいて,5,000万ドルを超えなか った時は,上記㈲,(B)および(C)で規定された百分比は,10%でなく15%とすること。  いずれの事業系列についても,所得税お.よび異常項目控除前の利益(または損失)に 対する貢献額を示すことが実際上できない時には,かかる利益または損失に対する貢献 額を示すことが実際上できない理由の簡潔な説明を付して,かかる利益に最も近似して        43) いる経営成績に対する貢献額を示すこと。」 さらに,様式S−1,S−7,10および10−Kに関する公式の指示は,上記の規定を次の ように補足している。 「1.情報が要求される事業系列の数が10を超える時は,登録会社は,随意に(at its  option)事業を理解するのに最も重要と思われる10の事業系列についてのみ要求され  る情報を提供することができる。かかる場合には,その影響に関する説明がなされる  べきこと。 2.製品または役務を事業系列として分類するに当っては,営業活動の収益率,危険の  程度,および成長の機会を含むあらゆる関連ある要素に,適切な考慮が払われるべき  こと。かかる製品または役務の分類基準およびかかる分類の年度間での重要な変更  は,簡潔に説明されるべぎこと。 3.製品または役務の相当な額が,ある事業系列から他の事業系列へ振替えられている  ならば,受入れる事業系列と振替える事業系列は,その経営成績を報告するた.めには  単一の事業系列とみなすことができる。 43) SEC, “Adoptien of Revised Form 10K,” Release No, 9000 (Washington: SEC, 1970),  pp.7−8.(Mimeographed)なお,これに関連して, SECは,「製品または役務の種類に関する  情報」についても規定しているが,この点については,末尾教授の前掲書に詳しい紹介がなされ  ているので,これを参照されたい(末尾『前掲書』56−7頁)。

(13)

      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1) 125 4.製品または役務の社内振替価格の決定方法あるいは共通費または:本部費の配賦方法 が,ある事業系列の利益に対する報告貢献aSic相当の影響を与えるならば,かかる方 法ならびにかかる方法の年度間での重要な変更およびその影響が,簡潔に説明される べきこと。 5.連邦,州または市当局によって監督される事業活動の各種の製品または役務から売 上または収益,あるいは利益(または損失)に関する情報は,かかる監督官庁が規定 するどの統一会計制度ででも要求されている製品または役務の分類に限ることができ  44)  る。」  (2)SECの基本的開示要件に対する批判 以上のような多角経営会社の株主宛年次 報告書のセグメント別情報開示のためのガイドラインとしてのSECの開示要件は,数多 くの批判を浴びることになった。その第1は,セグメント別「純利益」が要求されている にも拘らず,これを算定するための共通費の配賦に関するガイドラインが示されていない ことである。第2は,会社がセグメント別純利益の報告を実際上できないと考える場合に は,当該報告会社は,他のセグメント別貢献数値を代替することを認められていることで ある。もし本当に.その要件を満たそうと努力する会社であれば,開示の程度が明らかに 会社経営者の自由裁量に委ねられているのであるから,他社よりもヨリ多くの資料を実際       45) には開示する筈であるという論拠により批判される。  第3の最も致命的な批判は,「事業の種類」の構成内容をもっと明確に定義しなければ ならないことである。これは,新しい規則の強制適用を妨げただけでなく,多角経営企業 の報告上の統一性の欠如を惹起した。例えば,Monsanto Companyは,その株主宛報告 書では.化学.合繊,プラスチックの多角的製造会社であると説明しておきながら,SEC 宛報告書では,繊維とプラスチックが化学に大きく依存しているので,これらを区分すべ きではないと主張した。そして,SECはこれを認めたので,当社はユ億880万ドルの利益       46) をセグメント別に区分表示することを要求されなかったのである。  また,事業の種類の解釈に関するガイドラインの欠如から,SEC宛報告書では各種の 44) lbid., pp. 8−9. 45) ?aul A. Pacter, “Lines−oi−Business Disclosure in Recent SEC Fillings,” four,nal of   Accozantancy, CXXX (Oct, 1970), p. 53. 46) John A, Presto, “A Look at the Books: An SEC Rule on Profit Breakdown Stirs   Debate,” The Wall Street fournal, Nov. 4, 1969, p. 1.

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 126 彦根論叢 第227号

セグメント設定の基準が使用される結果となった。つまり,製品系列,製品グループ,市 場,組織単位,営業活動の領域などによって,事業系列を色々と限定したので,異なる会        47) 社間の比較可能性を全く破壊してしまう結果となった。さらに,公式の指示では,会社が 事業系列の決定にあたって,製品をグループ化する基準を変更することを認めているの で.同一会社内の年度間の比較可能性をも大きく損うことになった。例えば,すべてのセ グメントが利益を安定的に計上しているように見せるために,ある年度に多大の損失を生 じた製品系列を,ある事業系列から他の事業系列へ移動させ得たのである。  第4に,最後の批判は,不十分な資料しか要求されていないことである。ここでは,セ グメント別売上と純利益しか要求されていないが,投資家は,論理的な投資決定を行うた めには,主要な経費項目の要約のようなセグメント別資料をももっと必要としていると考 えられる。しかし,SECは,株主宛年次報告書でセグメント別資料を提示するように会 社に要求しているのではなく,SECの様式10−Kを作成するために,その資料が使用され るに違いないので,若干の会社がこれを自発的に開示するであろうことを期待されていた       48) にすぎないことは,強調すべきことである。  3.FERFによるセグメント別情報の開示要求  既に述べたように,!967年,FERFは, R. K. Mautz教授に複合企業の報告問題に関 する研究を委託し,この研究結果が1968年5月に公表された。本研究は,複合企業による 財務報告の必要性と実行可能性を考慮して情報開示の種類と程度を決定しようとしたもの であったので,その公表結果は,特定の規定というよりも幅広い勧告というべきものであ  49) つた。これらの勧告は,概ね以下のように要約されている。 1.2っ以上の広義の産業で重要な事業活動を営んでいる会社は,各報告構成単位ごとに  開示しなければならない。  a.売上またはその他の総収益,および  b.企業利益の各構成単位ごとの相対的貢献額(利益に対する貢献額は,共通費配賦前   または後のいずれでも算定することができるが.適切に識別されなければならない。)  「重要な事業活動」とは.一般に,ある会社の総収益の15%以上として定義されてい 47) P. A. Pacter, loc. cit. 48) J. N. Ponder, oP. cit., p. 37. 49) Fred Skousen,‘‘Standard for Reporting by Lines of Business,”ノburnal of Account”  ancy, CXXIX (Feb, 1970), p. 40.

(15)

      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (工) 127  る。しかしながら,総収益が相当に不適当であるならば,15%テストは,利益あるいは  使用資産に適用されることになろう。広義の産業を区分するに当っては,収益率の相  違,異なる危険の程度,あるいは異なる成長の機会を考慮しなければならない。 2,経営者はその会社に精通しているので,個々の報告すべき構成単位を識別して説明  し.また.かかる報告単位の構成の事業年度間での重要な変更およびその影響を開示し  なければならない。 3 社内振替価格の決定方法あるいは共通費の配賦方法が,報告構成単位の利益に対する  報告貢献額に相当な影響を与えるのであれば,使用されている方法を一般的な用語で開  示しなければならない。 4.勧告された開示は,経営者の自由裁量により,年次報告書のどこかでその一部として  行うことができる。記述式であろうと一覧式であろうと,それらに,その有用性の限界        50)  を閉白に指示するものでなければならない。 5.本研究の最後の勧告は,その重要性に鑑みて,これを以下に引用しておく。  これらの勧告は,革新的な性格のものであり,また,多角的事業活動を報告すること は,元来複雑なことであるから,当勧告は,すべての関係者の判断と弾力性をもって適用 されなければならない。経営者が,この勧告された開示を行ったとすれば,株主の利益に 非常に不利な影響を与えると心から信じるような場合には,拡大された開示を行わずに,        51) その影響についての説明を行わなければならない。  衣研究の公表は,複合企業の報告問題を理解するのに重要な貢献をなしたが,本質的に は,SECの提案と同じ批判を俗びたのである。つまり,報告目的から,会社をセグメン トに分割するためのガイドラインがなく,純利益の確定のために共通費の配賦方法も特定 していない。両者とも,経営者にセグメントの決定方法の変更を許し,財務報告書のセグ メント別資料の開示の程度と表示の形式に多くの弾力性を認めている。特に最後の勧告 は,ある状況の下では,セグメント別資料を報告書から全く除外することを経営者に許し ているので,統一性の達成という観点からすれば,SEC規制よりも更に有効性の少ない ものとなっている。かくして,これらは,会計実務の差異の領域を縮少し,多角経営会社: による外部報告の統一化を達成するという目標に向って一歩前進したものの,未だ到底そ 50)RK:. Mautz, oP. o鉱, pp.157−8.なお,この勧告の詳細については,末尾『前掲書』42−4  頁を参照されたい。 51) lbid,, p. 158.

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 128 彦根論叢 第227号

の目標には到達していないといえるのではなかろうか。  それでは,財務諸表の利用者は,一体,どの程度セグメント別弘報開示における統一性 を望んでいるのであろうか。そこで,事業セグメント別営業活動資料の開示目的として, (1>ある会社と類似の事業系列に従事している他の会社とを比較するため,②同一会社の各 事業系列の年度聞の比較をするため,とに区分して質問を行ってみた。これに対する回答 結果は,第6表に示された通りであった。これによれば,財務分析士の95%までは,期間 相互の比較可能性を確保するためにセグメント別情報開示の統一性を望んでおり,80.2% は会社間比較をも望んでいることがわかる。これに対して,会社経営者としては,期間比 較を好ましいと考える人は91.2%もあったが,会社間比較まで好ましいと考える人は60% にすぎず,財務分析士の望んでいる80.2%とは若干食い違いを生じていることがわかる。 しかし,この点も,過半数のコントローラーの支持率のあることを考えれば,統計的には それほど大ぎな問題ではないと考えられる。       第6表 セグメント別情報開示の統一当 会社間比較

期間比較

財 務 分 析 士

鰍数劉反騰矧合計%

81 80.2 96 95.e 20 19.8 5 5.0 101 100.0 101 100.0 会 社 経 営 者

賛蝋%1反対数%[合計%

58 63.0 83 9L 2 34 37.e 8 8.8 92 100.0 91 100.0  従って,以上の分析から,多角経営会社の年次報告書には,事業セグメント別に営業活 動に関する資料を開示することが必要であり,ま鵡その清報開示に際しては,同一企業 内の期間比較のみならず,他企業との会社間比較をも可能にするような統一性が要求され ていると推論できる。しかも,このような基本的な重要問題については,セグメント別外 部報告書の作成者と利用者との両者の聞には,統計的には意見の相違が殆んどないものと         52) 考えられるのである。 IV セグメント別情報開示の実態調査  1.セグメント別情報開示会社の実態調査  (1)セグメント別情報開示の程度 APBステイトメント第2号で勧告されている事業 セグメント別の補足的財務情報の自発的な開示が,現実にどの程度年次報告書で行われて 52) J. N. Ponder, oP. cit., p 134.

(17)

      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1)  129 いるかを示したものが第7表である。これ  第7表 セグメント別資料の開示会社 によれば,調査対象会社192社のうち,僅      会社数  % か46.4%の89社がセグメント別情報を開 示しているにすぎないことがわかる。つま り,半数にも満たない会社が自発的な開示 の勧告に従っているにすぎないので,この よのな開示程度では,数的な形式上からで も不充分であるといわざるをえない。  そこで,以下,このセグメント別情報の 開示会社である89社を調査対象として,様 々な角度からこれを分析してみることにす る。第8丁目,セグメント別財務情報の開 示内容について分析した結果を示したもの であるが,これによれば,65.・2%という大 セグメント別資料の開示あり  89  46.4 セグメント別資料の開示なし  103  53.6

 合計192100.0

第8表 セグメント別情報の開示内容 会社数  % 収益ないし売上        58 収益および税引前純利益    16 収益および純利益        7 収益および貢献利益      3 工反身,税引肩訂純利益,条屯利益i    2 純利益       2 税引前利益(ないし営業利益)  1 貢献利益         0   合      計    89 65. 2 18. 0 7. 9 3. 4 2. 2 2. 2

Ll

 o 100. 0 多数の会社は,年次報告書に事業セグメント別の売上しか開示していないことがわかる。 収益および税引前純利益を開示している会社は,僅か18%にすぎず,貢献利益を開示して いる会社は,只の3社にすぎない。従って,後述しているように,財務情報の利用者とし ての財務分析士が望んでいた収益,貢献利益,税引前利益および純利益の4項目をすべて 開示している会社は,皆無であることがわかる。また,貢献利益の開示は,作成者として のコントローラーも70.1%までが好ましいと考えて   第9表 セグメントの数 いるものである。さらに,純利益ないし税引前利益       会社数   % を開示しているにも拘らず,その際に使用した共通 費の配賦方法などを開示している会社も全くなかっ たが,これも,情報利用者が望んでいる情報内容で あることに注意しなければならない。  第9表は,セグメント別情報の報告に使用されて いるセグメントの数を示したものであるが,これに よれば,使用セグメント数は2個から31個までの幅 広い範囲にまたがっていることがわかる。これは, 会社の採用するセグメントの設定方法がまちまちで

 2

 3

 4

 5

 6

 7

 8

 9

 10  11  31

合計

519221613721121一89

 5. 6 21. 3 24. 8 18. 1 14. 6  7. 9  2. 2  Ll  Ll  2. 2  L1 100. 0

(18)

 130 彦根論叢第227号

あることに起因しており,例えば,産業セグメント,営業活動部門,事業部,主要な市 場,主要な製品系列,主要な顧客製品グループ,製品種類,事業系列,世界市場などを       53) 報告単位として使用していた。また,大多数の会社は,セグメントの設定基準を開示して いないし.その説明をも行わないで,非常に漠然とした用語を使用していた。しかし,後 に明らかにしているように,これらの情報開示の必要性は,情報利用者のみならず情報作 成者でも,強く感じられていたものであることに注意しなければならない。  (2)セグメント別情報開示の方法 セグメント別情報の開示に際して,どのような測 定値が使用されているかを示したものが,第10表である。これによれば,測定値として使 用される方法に際立った差異のみられることがわか 第10表 セグメント別開示の測定法 る。つまり,過半数の会社は,セグメント別面報の         会社数  % 開示にはドル金額を使用しているのに対して,全体  金額      46  51・7       割 合’       22   24.8 に対する百分比で開示する会社および金額と百分比       金額と割合     19  21.3 との両方で開示する会社が,それぞれ半分程度とな  金額と1株当り金額  2  2.2 っていることがわかる。後に分析しているように,  1株当り金額    0   0

       合計89100.0

財務分析士と会社経営者の双方が,圧倒的にドル金 額による開示の必要性を麦持しているのに対して,現実には24.8%もの会社が,開示の方 法としてドル金額を使用していない事実に注意しなければならないであろう。つまり,百 分比の算出以前に,その基礎となる金額が利用できなければならないので,このようなド ル金額による開示の要求を満足させるには.現状で 第11表 セグメント別開示の年数 は若干問題があるといわざるをえないであろう。         会社数   %  第11表は,セグメント別情報の開示年度数を表わ したものであるが,これによれば,僅か前年度との 2年度比較が圧倒的多数を占めていることがわか る。後述しているように,財務分析士の望んでいる 5年度比較は,僅か!1.2%であって,1/4にも達し ていない有様である。このような現状では,到底情 報利用者の要求を満足させることはできず,不満を 抱かせることになろう。 53) J. N. Ponder, oP, cit,, p, 125−6.

 1

 2

 3

 4

 5

 6

 7

 8

 9

 10 合 計 10 S1

U710111012 89

11. 2 46. 1  6. 8  7. 9 11.2  1. 1  Ll  1. 1

 0

13. 5 100. e

(19)

      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (工)  131

第12表は・セグ〃捌解をどのような形態で第12表セグメント別情報の

開示しているかを示したものであるが,これによれ     開示形態 ば,計算書ないしは一覧表の形態のものが,過半数 の会社で使用されており,圧倒的に多い実務である ことがわかる。しかし,チャートないしグラフの形 態も,セグメント別資料の開示上,その全体的な明 瞭性の観点から,相当利用されていることがわか 会社数  % 計算書ないし一覧表  46  51.7 チャートないしグラフ 30  33.7 図表とチャート    10  11.2 記述式         3   3.4

 合計89100.0

る。そこで.これらの会社の年次報告書を調i査してみた結果,89社のうち10社は一覧表お よびチャートないしグラフに同じデータを重複して開示していることがわかった。従っ て,これらのチャートないしグラフによる開示は,セグメント別資料の開示.ヒにおける全 体的な明確化を目的として行われたものではなく,むしろ予報の重複や分散化を避けて, 情報の完全な開示によって,年次報告書における開示場所を,もっと有効に利用しえたの ではないかと思われるほどであった。  また,セグメント別資料を分析した要約をチャートないし一覧表の形態で開示せずに, 単に記述的な形態でこれを開示している会社は,僅か3社だけである。この中には,セグ メントの関連資料が他の新報と一緒にされて,16頁にもわたって散在している会社があっ たが,このような状態では,要報告セグメントの部分的開示であるのか,完全な開示であ るのかを決定することさえ困難であった。従って,このような記述が,そのデータに関す る説明を伴っていたならば,恐らく,このデータの分析に大いに役立ったであろうと思わ れるのである。        第13表 セグメント別情報の開示場所  第13表は,セグメント別情報が年次報告        会社数  % 書のどのような場所で開示されているかを       補足表       70     78.7 示したものであるが,これによれば,78.7 主要財務諸表とその脚注   17 1g.1        明確に区別された別個の箇所  2  2.2%という大多数の会社は,(1)社長ないし会

       合 計89100.0.

長の挨拶文,②フィナンシャル・ハイライ      一一t一一…… ト,㈲報告書の本体,(4)その他というように年次報告書のそれぞれ異なる箇所で,その他 の補足的惰報としてセグメント別資料を開示していることがわかる。これに対して,19.1 %の会社は,主要財務諸表やその脚注で.セグメント別資料を開示しているため,その損 益計算書が監査対象となっているので.必然的に監査人の検証に従ったセグメント別情報 を開示していることになる。しかし,この種のセグメント別資料の開示は,僅か2ないし

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3セグメント別の売上ないしは収益を開示しているにすぎないものである。後に分析す るように,情報利用者と作成者の双方が,ともに,その過半数が好ましいと考えている明 確に区分された年次報告書における別個の箇所で,セグメント別情報を開示していた会社       54) は,192社の中で只の2社だけであった。  2.セグメント別情報開示の統一性の必要性  Atlantic Richfield社は,(1>石油と化学製品一合衆国,(2)石油と化学製品一外国, (3)主要な営業活動,(4)原油,(5)天然ガスー北米,(6)天然ガスー外国,(7)その他という        55) 7つの報告単位に区分して,売上総額を開示していた。これに対して,Gulf Oil社は, 60億ドルの売上総額を単一の数値だけで示しているにすぎなかった。しかし,当社は金額 を示してはいなかったが,生産バーレル(産油量および三二量)VCついて,(1)合衆国,(2) カナダ,(3)ラテン・アメリカ,(4凍半球(アジアを除く),(5)アジアというように地域別         56) に報告を行っていた。  これらとは反対に,Celanese社は,(1)繊維,(2)化学,(3)プラスチック,(4)コーティング という4つの製品グループ別に,1株当り純利益額だけを開示していた。しかし,これら の製品グループ別に,売上,貢献利益ないし純利益の絶対額を開示することは行われてい    57) なかった。これに対して,Textron社は,製品グループ別に1株当り利益,売上の総額と        58) その百分比,および税引前利益の総額とその百分比を開示していた。これら2社で使用さ れている報告単位ないし事業セグメントは,セグメントの設定基準を説明するのに同じ用 語を使用しながらも,一方では販売領域に,他方では生産領域に力点がおかれていて,相 当の差異がみられた。また,両者とも利益を報告しながらも,共通費の配賦基準には全く 言及していなかった。  Kaiser Aluminum and Chemical社は,10億ドル弱の売上を計上していたが,これを(1> アルミナ.②ボーキサイトおよびその他の原料,㈲アルミニューム塊および片,(4)組立ア ルミニューム製品,(5)耐火性製品,(6)工業化学品,(7濃業化学品という7つの事業系列別 54) lbid., p. 131. 55) Annzaal RePort of the Atlantic Ricn’ field ComPany for the Year Ended December   31, 1969, pp, 36−7. 56) Annual RePort of Galf Oil CorPoration for Year Ended December 31, 1969, pp.   9−IZ 57) Annual RePort of the Celanese ComPany for Year Ended December 31, 1969, p. 5. 58) Annual RePort of Textron for the Year Ended December 31, 1969, p. 7.

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      〈資料〉セグメント別報告の制度化と実態調査 (1)  133       59) に開示していた。これに対して,.Aluminum Company of Americaは,15億ドル強の売上 を計上しながらも,営業活動に関する資料を事業セグメント別に全く開示していなかっ た。従って,このような状況では,両社の営業活動の各セグメント別の比較は不可能であ  60) つた。  Reliance Electric社は,食品,鉱業,自動:車,化学品,工作機器,織物,ガラス,ゴ ム,海産物,紙業,サーヴィスなど全部で31の事業セグメン1・別に売上関連情報を開示し   61) ていた。これに対して,大規摸な多角経営会社であるGeneral Motors社は,(1)商業一 自動車,(2)商業一自動車以外,(3)防衛および宇宙という僅か3つのセグメント別に売上        62) を開示していたにすぎない。  最後に,Scott Paper社は,歴史的な経営成績を事業セグメント別に開示せずに,将来の 営業活動に関する非常に楽観的な予測を事業セグメント別に開示している典型的な事例で ある。当社の営んでいる主たる事業活動に関する説明は,年次報告書の主要な本体で,営 業活動による7セグメント別に示されていたが,営業活動に関する歴史的なデータについ ての説明は全く行われていなかった。各セグメントの説明には,それぞれの将来の期待さ れる需要に関する暖昧な解説が含まれていた。例えば,典型的な記述は,次の通りである。  レジャー関連の市場は,1969年には830億ドルの消費であったが,1975年までには 2,500億ドルに達するに違いない。他の潜在的な急成長の領域は,事務複写器システム        63) の市場で,10億ドルと見積られているが,年々王5%の成長率であると考えられている。  しかし,当社は,その有利な市場にどのようにして参入し,その市場占有率をどのよう に確保しようと期待しているのかについては,そこではこれを全く開示していなかった のである。 sg) Annenal RePort of Kaiser Aluminzam and Chemical CorPoration for the Year  Ended December 31, 1969, p 2. 60)!lnnual Re加rt oプ!19uminzam ComPany o∫・4ηz召7磁プbπんθ】fear Endedエ)θo卿うer  31, 1969, pp. 1−32. 61) George Hobgood, “lncreab”ed Disclosure in 1969 Annual Reports,” Financial Exec−  utive, XXXVIII (Aug,, 1970), p, 27. 62)Annual R吻rt o∫ General Motors CorPoration伽the}加7 Endedエ)ecember  31, 1969, p. 4. 63)Annual RePort oアScott PaPer Co〃吻n夕掬γ伽Yea7 Endedエ)ecember 3L 1969鬼  pp, 6−16.

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 それでは,以上のような現行の 開示実務について,情報利用者は, 一体どのように感じているのであ ろうか。そこで,年次報告書にセ グメント別損益計算資料を提示し 第14表 現行のセグメント別情報開示の十分性

睡数刎否緻劉合計%

財務分析士 会社経営者 10 10.0 20 22.0 90 90.0 71 78.0 100 100.0 91 100.0 ている多角経営会社の数とこれらの情報開示の実質的な内容について,十分であると考え ているかどうかの質問が行われている。この質問に対する回答結果は,第14表に示された 通りである。これによれば,財務諸表の利用者としての財務分析士は,90%までが不十分 であると考えているのに対して,情報提供者としてのコントローラーは,やはり78%が不 十分であると感じているのであるが,他の22%の人は十分であると考えている点に若干相 違がみられる。しかし,財務分析士の90%よりは低い支持率であるとはいえ,多角経営会 社による開示:方針の決定に大きな影響力をもつと考えられるコントPt・一ラーの78%まで が,現行の開示実務を不十分なものと考えていることは,今後の実務の改善には大ぎく寄 与するものと考えられる。  以上の分析結果を総合すれば,多角経営会社の年次報告書には,セグメント別財務情報 が開示される必要があるにも拘らず,現行の実務では,質・量ともに不十分である。従っ て,かかる現行実務を改善しなければならないが,その将来への方向としては,同一企業 内における期間比較のみならず,他企業との企業相互間における比較可能性をも確保しう るような開示上の統一化が図られなければならないのである。        (以下次号)

参照

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