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埋め込み文をともなう形式「~とき」の名詞句性と時間関係を標示する動詞述語形式-teiru/-teitaの交替

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(1)埋め込み文をともな う 形式「∼とき」の 名詞句性と時間関係を 標示する動詞述語形式 -teiru/-teitaの交替. 吉田 [ キーワード ]. 1.. 時間、 事態認識、 テンス、 参照 点 、. 一彦. 「とき」. 本 研究の目的. 本研究は 、 次のような用例間において、. 意味解釈の異なりを 生じさせている. 形式の交替を 調べ、 2 つの形式がそれぞれに 標示する意味,機能的特徴を 明ら かにしょうとするものであ る。 (l). a . 宿題をやっているとき 友達から電話がかかってきた。 一. b. (l a). 宿題をやっていたとき 友達から電話がかかってきた。 一. .. (l b) とは、 「とき」に連なる 埋め込み文の 述語がそれぞれ「. と. る 」で. 終わるか「 た 」で終わるかという 点で異なっている。 この形式上の 相違点は 、 異. なる「時制」「テンス」を 標示し、 非過去と過去を 表し分けるものだとされてき た 。 ところが、 このような体系化に 反し、 形式「∼とき」は. (la) においても. (lb) と同様、 過去の、 すな む ち、 発話 時 ,以前のあ る期間を指示 ビ 、 それ以外 の解釈を許容しない。 それだけでなく、 両者においてまったく 同一の時間を 指 示し得る。 つまり、 両者とも、 2000 年 m2 月 5 日午前 10 持 ちょうどに発せられたと すると、 形式「∼とき」がまったく 同様に、 前日 4 日の午後 9 時 20 分から 55 分 ま. でを指示し得るのであ る。 ( 「とき」とそれを 修飾する なのかに関する 情報を付加する 「∼とき」. ). (つまり、. どんな「とき」. 諸形式とをひとっにした 形式全体を本稿では. と表記する。 ). この同一時間を 指示する可能性に 関し、 先行研究は 、 「とらえている 現実は同. じであ. ろう. ( 工藤. (1995:238)) 」とか、 「テンスの対立はきえて. ( 言語学研究. 会 ・構文論グループ (1989: 127))」とするのみで、 交替する形式が 標示するも のを追求しようとしてこなかった。. また、 日本語教育の 場においても、 一 19 一. 「主文の.

(2) 述語が過去をあ らわすときは、 従属節の述語は『シテイル テイタ』きつかってもよい。. (砂川. コ. をつかっても『シ. (1986:68)) 」という差異を 問題視しない 扱. いが見られた。 しかし、 日本語母語話者にとっては、 差異は確かに 存在するように 思われる, し 、 第 6 節に挙げる形式の 交換が不可能であ ったり交換すると 解釈が異なって くる用例の存在が 示しているとおり、 無視すべきものではない。 。 この差異を明. らかにすることを、 本研究は目 旨している。 ォ. 研究対象とデータ. 2. 第一に対象とする 言語現象は 、 次の. 2. つの条件を両方満足するものであ. る。. 「とき」に連なる 文のうち、 述語成分の末尾が 、 -teiru か 、 または、. (2) a. -teita という形式になるもの b. .. 形式「∼とき」が、 主文の述語の 指示対象であ る事態が生起した 時. 間を限定するもの ここで、 「事態」とは、 状態・行為・ 作用・変化を 合わせ、 その動的であ るか 静. 的であ るかに関わらず、 述語成分の指示対象となり 得ることがら 全般を指して 言. う. 用語であ る。 これは、 言語使用者の 認識世界内に 存在するものであ り、 現. 実世界に対応するものを 持っ場合・持たない 場合の両方があ ることは言さまで もない。 また、 う. 「生起 (する ) 」とは、. 言い表された 事態の実現全般を 指して言. 用語であ る。 これには、 否定文の場合の「 X が起きない」という 事態、 X で 「. はない」という 事態も含まれる。 (本稿では、 以下、 それぞれこの 意味でのみ使用するものとする。. 「事態」「生起. (する ) 」を、. ). 条件 (2b) を明確に理解してもらうため、 例文を示して 解説する。 (3). a . 言語学の基礎を 勉強していたときに. b. .. リサと 知り合いました。. 言語学の基礎を 勉強していたときに 帰りたい。. (3) のように、 「とき」には「に」が 付くことがあ る。 このうち、 (3 a) の ょ う. な用例の「とき」は 、 「に」がない 場合と同様、 主文の述語の 指示対象であ. 一 20. 一. る.

(3) 動作. [知り合う ]. がいっ起きるのかを 指定するものであ るので、 研究対象とな. る,。 一方 (3b) のような用例は 、 「とき」と「帰り. - 」との 格 関係が「に」で. 示. されているものであ る。 これは、 研究対象には 入らない。 第二に 、 次の条件 (2a,). と上述の (2b) の両方を満足するものを 研究対象. とする。. (2 a,) 「とき」に連なる 文のうち、 他の文末形式をともなわず、 動詞述語で 終わるもの この条件を満たす 形式は 、 -(r)u 、 または、 -ta を末尾に持ち、 それ以外の形式 になることはない。 この -(r)u 、 -ta という形式は、 条件 (2 a) の -teiru と -. teita にも見られるものであ る。 このように第二の 研究対象を設定するのは、. 「. と. 」の 前 という環境において 対立するこの 末尾の形式自体が 排他的に標示する。. き. 意味・機能的特徴を 追究するためであ る。 このように、 本研究は「とき」に 連なる文全般を 対象とするものではない ,。 本研究においては、 特定の形式が 特定の環境において 使用されることの 文法 性. (あ. るいは、 非文法性. ). を立証する目的で 用いるデータは、 実例のみに限定. する。 これは、 作例が言語研究に 役立たないと 考えるからではなく、 同じ研究 対象を扱った 先行研究における 作例を用いた 文法性判断のうちの 無視できない 数 のものが、 実際、 日本語母語話者であ る筆者やその 他の研究者の 直観と合致 せず、 論証の手段としては 決め手に欠けるものだという. CD. 一 ROM. 事情,による。 実例は 、. 版 『新潮文庫の 100 冊 』より採取した。。. 先行研究の分析を 紹介する際には、 できるかぎり 用語法が分かる 記述を弓. lく. 25 にし、 先行研究が挙げる 用例も合わせて 紹介するようにする。 これは、 読 者に先行研究の 知見をできるかぎり 直接的に検討してもらいたいという. 配慮か. らであ る。. 3. 形式「∼とき」の 特徴 「とき」についてはこれまで、 言語学研究会・ 構文論グループ. 一. 21. 一. (1989) が「 接.

(4) 続詞 」と呼んだほか、 多くの先行研究が、 名詞句 十 式や「このⅠそのⅠあ き. の」. 「の」. 十. 「とき」. という形. 十 「とき」等の 形式になる場合を 除外し、 文士「. と. 」を「従属節」の 一 形式としてきた。. これに対し、 本研究は形式「∼とき」を 名詞句であ ると分析する。 これは、 金 子 (1995) にあ る次の分析とほぼ 一致する。. (4) 形式名詞連休 支 は、 「今日、 去年」などの 名詞句的な時間指示や「そのと き、 来年の今月今夜」などの 複合名詞句の 時間指示と機能的に 等価であ り. 、 主文の命題が 成立する時間を 指示する。. (金子. (1995:338)). 金子論文は、 このように分析すべき 根拠を特に論じてはいない。 そこで、 を 接続詞ではなく. 「とき」. 名詞であ るとし、 形式「∼とき」を 名詞句であ るとする本研. 究なりの根拠を、 以下に挙げる。 (5). a . 「とき」に連なる 言語形式が、 連体修飾形式一般が 持っ形式的特徴を. 同じく持っている、 つまり、 連体形や、 名詞句 十 「の」のかたちで あ ること b. .. 形容詞、 形容動詞、 連体詞、 指示詞など名詞一般を 修飾する語がまっ. たく同様に「とき」を 修飾すること c . 格助詞・副助詞・「 だ. 」. 等 、 名詞句一般に 後続する形式が「とき」 の. 後にも接続すること d. .. 語順に関して、 他の名詞句と 同様、 かき混ぜ (scrammbling)が可能 であ ること. e . (修辞的な「倒置」であ. る場合を除き、) 主文の述語成分の 後に置か. れることがないこと ただし、 (5 d). と. (5 e) から、 「∼とき」は 、 同じ階層にあ る他の名詞句や 副. 討 と同様、 主文全体ではなく 主文の述語成分のみを 修飾し、 意味解釈において 述語成分が指示する 事態の生起する 時間を指定するものと 考える。 この点、 上 述の金子 説と. ( そして、. 「とき」を接続詞と 分析する立場とももちろん. ). 異なる. 分析であ る。 「∼とき」が 主文全体の解釈に 影響するする 場合があ るのは、 この 形式の特質によるものではなく、. この形式が文頭、 つまり・他のどの 構成要素 一 22. 一.

(5) よりも前に置かれるからであ る。 次の例を検討されたい。 (6). a . 余談になるが、 山本が航空本部技術部長をつとめていた. 時、 昭和六. 年の二月十八日、 元軍令部長の 山下源太郎が 六十八歳で亡くなった。 ( 阿川弘之『山本五十六Ⅲ. b. .. あ る日、 ちょうど 堀 悌吉が青山へ 打合せに来ている 時、 陸軍の参謀. 総長の使いが、 供物を持ってやって 来た。 ( 阿川弘之『山本五十六Ⅲ. c . 鮎 太は何も出来なかった。. まだましなのは 鉄棒だった。 一年生の時. から、 他にすることがないので、. 鮎 太は休憩時間に 他の生徒が競技. なしている時、 いつも一人で 鉄棒にぶら下がっていた。 (井上靖『あ. すなろ物語. 醸. (6 a) は、 接続助詞「が」でそれ 以後の部分全体と 結び付けられている「余談 になるが」という 部分をのぞけば、. 「∼とき」は. 確かに主文全体を 修飾している。. しかし、それは、 他のどの構成要素よりも 前にあ るからそうなのであ って 、. (6b) のように、 主文の一部であ っても「∼とき」に 先行している 構成要素に こでは、. 「あ る日」 ). は修飾しない。 また、 (6 c) の「一年生の 時から」のよ. に 、 命題の一部を 成す文の構成要素. (格助詞が付けられ. 明示されている. ). う. でさ. え、 「∼とき」に 先行する要素は 、 「∼とき」によっては 修飾されない。 結局、 同 一階層にあ. る句. 同士の場合、. あ. る句の意味が 他の句の意味解釈に 影響するかど. うかということは、 「先行する要素が 後続する要素の 解釈に影響する」という、 語用論上の一般的な 原則によって 決まるのだと 思われる。. 4. 動詞の述語形式 4. 第. -. ㈲ u Ⅰ -ta の特徴. 1. 先行研究にみられる 論証上の間 題 点の指摘と作業仮説の 提示 1. 節に述べたよさに、 本研究が第一の 研究対象とする 言語現象は、 それぞ. れ形式 -(r)u が非過去、 形式 -ta が過去という「テンス」「時制」を 表すとする 先行研究多数説の 体系化に反する 事実であ る。 このことを、 ど. 一 23. 一. う. 捉えるべきだ.

(6) ろ. うか 。 本研究は、 この体系化自体を 見直すべきだという 提案をする。 方法論. 自体の中に不備な 点があ ると考えられるのであ る。 まず、 定義の問題があ る。 先行研究において「テンス」「時制」の 概念規定に 関し統一的な 見解が得られておらず、 にれは、 すでに尾上 (1982)、 岩崎 (2000). 等によって指摘されている。. ). また、 用語法自体が 日本語の現象を 説明するのに. 適切に機能しているかどうか 問い直そうという 努力も特に行われてこなかった。 本研究は、 研究対象の分析に 特に便利な用語だというわけでほないことから、. 自. 説を論じるために「テンス」「時制」を 再定義して使用するという 方法は採らな い 。 先行研究の知見に 言及する場合にのみ、. どの研究の用語法によってかを. 明. 記して使用する。 これは、 関連したものとしてしばしば 持ち出される「アスペ クト」に関しても 同様であ る。 次に、 分析対象の設定方法に 問題があ る。 多くの先行研究においては、. 言語. 現象全体が、 主文の述語成分の 場合と、 いわゆる従属節の 述語成分の場合との 2 つに、 大きく分けられている。 そして、 両者の間に、 形式 -(r)u/ な行. う. パ a の交替. 別個の文法体系が 存在するとか、 別の文法規則が 働いているとすること. が 、 暗黙のうちに 当然視されている。 これには賛成できない。 筆者やその他の. 日本語母語話者の 直観に反するのであ る。 内省に ょ れば、 形式 -(r)u ノーta がそ れぞれ意味するものは、 それが主文内であ るか従属節内であ るかに関わらず. 1. つであ り、 それが用いられる 統語的な位置の 異なりによって 結果的に違った. 内. 容を言い表すことはあ っても、 形式を用いる 位置が変わるごとに 複数の体系や 規則を切り替えて 使っているという 感じがまったくしない " 。 一方、 主文内であ. るか「従属節」内であ るかによる体系や 規則の使い分けがあ るとする根拠やそ の 必然性を論じる 研究があ るかというと、 その ょう なものはない。 これでは、 論. 途 上の矛盾を回避するために 怒意 的に設けられた 分類なのではないかという 疑 問も出てきてしまう。 そこで、 本研究では一度日本語母語話者の. 直観に立ち戻り、 次のように作業. 仮説を立て、 論をすすめることにする。. (7) 形式 -(r)u/-ta には、 それぞれに固有であ り、 使用される環境に 関わら 一 24. 一.

(7) ず 同一の意味・ 機能的特徴が 存在する。 (本稿では、. 以下、 これを「固有の 特徴」と略記する。 ). 4. 2. 形式 -(r)u. が発話時を基準とした 時間の区分を 標示すると. Ⅰ -ta. 論じることの 問題点 「テンス」「時制」という 用語の概俳規定や 使われ方は 、 前にも述べたとおり、. 先行諸研究においてさまざまであ. るが、 発話時を基準にして 時間に「過去」「現. 在」「未来」の 3 区分があ り、 それを区別して 表現するのにこの -(r)u Ⅰ -ta の 交替が用いられている、 とする点で共通している。 これは、 「通説」と呼んでも 良いほどに広く 認められている 分析であ るが、 すでに 國 廣 (1967) に指摘があ る. よさに、 簡単に正しいと 認めてしまうことのできないものであ. る。 また、 冒. 頭に指摘したよさに、 本研究が対象とする 言語現象の存在も、 この「通説」へ の反証となるものと 考える。 形式 -(r)u が与えられれば、 その受け手は、 表現された事態を 現在や未来に 生起するものだと 理解することがあ り、 形式 -ta が与えられれば、 過去に生起し たものだと理解することがあ 行う. う. る、 これについては 異論はない。 しかし、 論述を. えでは、 「そういうことがあ る」ということと「常にそうだ」ということ. の 質的相違は 、 常に峻別されて い なければならない。 ここでは、 たとえば主文. の場合の -(r)u/-ta を末尾に持っ 動詞で言い終わる 場合に話を限定して 考え み てもよい。 形式 -(r)u が過去の事態を 指示する用例も、 形式 -ta が現在ないし 未 来の事態を指示する 用例も、 実際に存在する。 これは、 國 廣 (1967)、 尾上 (1982) 等、 先行研究にも 紹介があ り、. よ. く知られたことであ る。 だとすれば、. -(r)u Ⅰ -ta が「テンス」「時制」の 標識であ るということは、 「常にそうだ」で はなく、 「そういうことがあ. る]. の方であ ると言わなければならない。 そして、. 「そういうことがあ る」ことを、 文法の規則や 体系だと主張するからには、. 「そ. ういうことがあ る」のはいかなる 条件下でそうなのかという 標識として有効に 働く条件が明示されていなければならないだろう。. 一 25. 一. -(r)u/-ta を「テンス」「 時.

(8) 制 」の形式だとする 代表的な論者のこの 点に関する考え. 方を、. ここで再検討し. てみたい。. (8) (前略 ) ‥.,完成 相のスルとシタ は,基本的にく未来一過去 ) に 対立し継統 相のシ テイル とシ テ ィタ. は, 槻在. ・未来一過去 ) でテン. (1@@ (1995:37)). ス 的に対立している。. 上記の記述は、 点、. 「単語レベルの 形態論的形式」同士を 対立するものと 捉えている. 本研究で行っている 交替形式の認定法とは. おきたい。. でテンス的. ここで言. う. 「基本的」とは. 異なっていることを、. 何だろうか。. 指摘して. なぜ「テンス」の 対立をこ. の形態論的形式の 対立の「基本」と 考えるのか、 この書には論じられていない. 回書で「基本的」としないものについては、 (9) テンス形式. ( 非過去形と過去形 ). ド との相関性によって. テ イタ ). 次のような記述があ. る。. の多義性は,まずマクロにみて , ム一. 生まれるといえよう。 スル ( シテイル ) とシタ. が,時間指示性の相違として対立するのは ,. ラムードにおいてであ. "。. く. (シ. 確認・叙述 ) とい. る。 ところが,既に指摘されているよ. う. に,「どい. た,どいた」「あ ら,ボタンが取れてたわ」のように ,過去形が,近未来 あ るいは現在のことを 表す場合もあ. 「発見」というムード. 後者を tense. (モ. る。 この用法では ,「差し迫った要式」. 的意味が前面化する。. 前者をくテンポラ か な用法 ),. ー ダル な 用法 ) と呼んでおくことにしょう。. と屯 ㎞ e. 様々な言語で ,. とが,常に対応しているわけではないことが. が ,これは,テンスとムードとの 相関性を示すものであ. 指摘されている. る。. (@H@ (1995:41)) しかし、 上記の説明によ って「基本的」でない 例外的な用法がひととおり. がつくとは到底考えられない。 また、例外的な用法に ドの設定を容認すれば、 う. 説明. 対し個数に制限のな い ムー. 有意義な一般化からはますます. 遠 い ものになってしま. 。 おそらく、 「テンス」の 対立をこの形態論的対立の「基本」と. 考える背後に. は、 次のような考え 方があ るのだろう。. (u0)一般的に,動詞が活用するとすれば ,たとえばtense と moodの観点から, それは いくっ かの文法的なかたちの 体系をなして 一 26. 一. い て,. paradigmのなか.

(9) におさめられる。 アスペクトも 動詞の文法的なかたちであ るとすれば,い くつかのかたちの paradigmatic な体系であ る。 日本語の動詞に suru とい ぅ. かたちだげしか ,あるいは site-iru というかたちだけしか 存在してい. ないとすれば ,アスペクトという形態論的なカテゴリーは ,. かには存在しないということになるだろう。 い. う. 日本語のな. 日本語の動詞にく 人称かと. 形態論的なカテゴリーがかけているのは. ,そういうことである。. この記述では、 何を指して「一般的」 と言っているのか 明らかではない。. ある. 言語において「動詞が 活用する」ということが、 その言語が tense を持つと言え. る十分条件であ る、 としているよ. う. であ るが、 そのように言える 保証はどこに. もない。 動詞に観察される 形態論的な交替が 時間に関係するものであ り、 かつ、 アスペクトでないとしても、 直ちにそれが tense であ ると決めるわけにはいかな い 。 言語理論を構築するときに. 観察対象とした 言語にあ る文法的な特徴が 存在. する、 という事実から、 研究対象の言語にも 同じ文法的な 特徴が存在するだ と 考えてみることは、. る. 作業仮説としては 成り立っ。 しかし、 それが直ちに. 自明のこととして 成立すると決めるのは、 論理的飛躍であ る。 次に、 もう一人の論者の 論考を検討してみよ. フ. 。. (Ⅳたとえば,語形. ⑥ ) 誉 メル一一一巻メタ を 比べてみよう.. 「. 尾を取った語形であ こでは,. 「. タ. 誉 メタ」は, る. (従来,. 」を語尾とし ,. 「. (誉 「. タ. メル ) という動詞が「. 」. という語. 」を助動詞とする 説が多かったが ,. こ. 誉 メル」「 誉 メタ」は, home Ⅱ u,, ,home-ta,. のように語尾の 取り替えとして 扱. う. ). 誉 メタ」 という語形には ,少な. くとも,語幹「誉メ 」に担われている 語彙的意味と ,. タ. 「. [誉. メル ] という動作概念っまり. , ta, に担われている 過去といった 文法的意味とが 含まれ. ている.それに対して,「誉 メル」は , 単に動作概念を 表しているだけで はな. い. ( ここでは,従来のように,助動詞を何ら伴わない動詞だけの. 存. 在 という捉え方をしない ), ,,u,に担われている 非過去といった 文法的意 味 をも帯びた語形であ る. 誉 メルー 誉 メタ」が対立をなしテンス 「. 一 27. 一. とい.

(10) ぅ. 文法力テゴリの 構成員であ る非過去と過去とを 表し分けていることが (仁田. 分かろ. この論考には、 , ta, が「過去といった 文法的意味」を 担. 「非過去といった 文法的意味」を 担. う. う. (1997:27 リ 8)). とすること、 , TM, が. とすることの 根拠が与えられていない。. 明 なこととして 断定できるというわけであ. る。 しかしこれでは・. 自. , ta, が「過去. といった文法的意味」を 担わない用例、 , ru, が「非過去といった 文法的意味」を. 担わない用例も 知りつつこのような 断定を行っているわけで、 悉意 的な断定だ と 言わざるを得ないであ ろう. このように、 交替する形式 -(r)u/. 寸 a が「テンス」「時制」の 形式であ ると. する先行研究の 体系化は 、 広く認知されているものであ. りながら、 実は十分な. 根拠を提示しないままに 行われてきた 分析だという 点で、 再考すべきものなの であ. る"。. 本研究は、 以上の考察から、 形式 -(r)u/. づ a の交替が標示するもの. を特定するには、 一旦は「テンス」「時制」という 概念から現象自体を 切り離し て 観察する必要があ ると考える。. 4. 3. 形式 -(r)u Ⅰ -ta が「アスペクト」を 標示すると論じることの 間. 題月 形式 -(r)u/-ta. を、. 何らかの時間的関係を 排他的に標示する 形式であ. ると. 考. えるにしても「テンス」「時制」の 標識だとは考えない、 ということを 前項に論 じた。 しかしながら、 「テンス」「時制」ではないからといって 直ちに「アス ペ クト」だと考えるのでもない。. 何をもって「アスペクト」とするか、. その概念. 規定については、 「テンス」「時制」以上に 様々なものが 先行研究にはみられる が、 これを再定義し 用いることで 研究対象の解明が 進むものとは 考えない。. こ. こでは、 形式 -(r)u Ⅰ -ta の交替に対し「テンス」と「アスペクト」の. 両方の範. 時を立てて体系化を 行 う 先行研究の問題点だけを 指摘しておきたい。. ( なお、 こ. の 交替に対し「アスペクト」のみを. 立てる 國 廣 (1982) については、 本研究の. 提示する代案と 関連するので、 次項で詳しく 論じる。) 形式 -(r)u/-ta が「アスペクト」を 標示するとする 先行研究に対し、 すでに 一 28. 一.

(11) 他の先行研究が 有意義な批判を 行っている。 用例の分析に 先立って「テンス」 「アスペクト」と 名付けた 諸範濤 をまず設定し 、 あ. ( その設定の仕方はさまざまで. るが、 ) それに日本語に 観察される現象を 当てはめていく、 金田一 (1976 、 初. 出は 1955) 、 尾上 (1982)、 井島 (1991)、 丹羽 (1996) 等の研究が採る 方法には、. 國 廣 (1967) が指摘する次のような 問題があ ると考える。 (⑫本稿では形式から. 出発して意味に 至る方向をとり ,その逆の,まず 先験. 的に意味の範噴を 定め,それがどんな言語形式で表されるかを 求める方 向はとらない。 先 験的に 範 碍を定める場合には 恐らく論理的思考に 基づ くものと考えられるが ,その方法では論理に引きずられて 言語自体の本 質を っ かみそこな. う. 恐れがあ るというのが 理由の 1 っ であ る。 (國 廣. (1967:43)). 日本語母語話者が 事態を認識する 際にあ らかじめ設定した 範鴫 どおりの事態の 分類を行っているという 保証がないまま、 その 範 鴫を言語現象の 方へあ てはめ てみても、 有意義な一般化が 得られるよ. う. には思われない。. また、 使用される統語的な 位置ごとに、 同一の形式が 実際に指示する 内容の 意味的特徴を 基準にして、 「テンス」あ るいは「アスペクト」と 分類する研究も あ. る。・寺村 (1982) の次のような 一般化が、 代表的なものであ る。. ㈹ 主節に現れる. タ. 動作・でき事の 述語の場合. 状態性の述語の 場合. 完了または過去を 表す. 過去を表す 主節と同じ時 (過去 ). 従姉に現れる. 主節が過去. 完了を表す. この場合 ルと 置換可能. またはそれ以前を 表す. タ. 主節が非過去. これは、 4.. 一. 1. 過去を表す. 完了または過去を 表す. に論じた意味で、 母語話者の直観に 合わないものであ る。 また、. は. 「完了」の「アスペクト」、 「過去」の「テンス」といった 理論上の分類を. 研究者. があ らかじめ設定し、 その分類の存在を 大前提として 現象を分析している 点で 、 (12) の指摘がこれにも 当てはまると 言えよ 一 29. 一. ナつ.

(12) 4.. 4. 形式 -(r)u/-ta. の交替が標示するもの. 一代案の提示 一. 4.4. a. 形式に固有のことの 追究 末項では、 これまで論じてきた 先行研究の問題点を 克服するべく 代案を提示 する。 代案は、 (7) で存在するとした「固有の 特徴」を追究したものであ. り、. この形式の交替を 発話時という 概念から切り 離して観察する 点で、 「通説」とは 異なっている。 はじめに、. 同じ観点から 現象を見ようとした 先行研究. (1967,1976,1980,1982)) では、. 「固有の特徴」. (國. 廣. があ るので、 これについて 検討する " 。 これらの研究. (國 廣. た ) の 追究が行われている。. (1967) では「意義素」. という用語が 用いられて ぃ. そして、 -( パ u/-ta 面 形式の多様な 用例を概観。. 面形式が過去・ 現在,未来のどれにも 言及することがあ るとい から、 面形式とも「発話時と 積極的な関係を 持っていない. (國 廣. と. う. (1967)). 」. と. している。 その上で、 「本質的にはアスペクトのみを 指し、 表面的に感取される テンス的意味は 語用論の基本原則によって 生み出される ぅ. (國 廣. (1982)) とい 」. 仮説を立てている。 そこでは、 「アスペクト」という 語の概念規定を 次のよう. に行い、 W のアスペクトは 時間の区別を 超越して、 できごとを全体的にひとまとめに してとらえるか、 できごとの展開のしかたを 詳しくとらえるかという、 心 理的 把握のしかたを 表現する言語的手段を 指す。 前者を「完了アスペク ト」、 後者を「未完了アスペクト」と 呼ぶ。 アスペクトの 中には英語の 進 行 アスペクトのように 外形上はっきり 区別のあ る文法的アスペクトと、 状 態 動詞、 瞬間動詞などを 区別するときに 考えられているような、 語義の 内部に含まれている 語義的アスペクトとがあ る。 (國 廣. (1982:2-3)). 形式 -( 「 u を「未完了アスペクト」の 機能を持つもの、 形式 -ta を「完了アス ペ. クト」の機能を 持っものとする。 そして、 その ょう な機能が事態の 生起する時 間の解釈をどのように 生み出すかを 次のように論じる。. 一 30. 一.

(13) ㏄) ここで語用論の 基本原則によって 生み出される 日本語のテンス 的意味に ついて説明をまとめておきたい。. すでに第三節でも 触れたように、 テン. ス 的な機能を積極的に 持たない言語要素. 現在テンス、 日本語の名詞・ル 形・タ影. (英語の名詞・ 形容詞・動詞の ). が 発話中の中心要素として 用. いられると、 その指す意味内容が 必然的に発話時に 結びつけられる。 未 完了アスペクト 形が発話の主動詞として 用いられると、 発話時において 未完了、 つまり「現在続行中あ るいは未来」を 意味することになる。 現 在 と未来の別は 動詞語幹の語義的アスペクトおよび. 文脈の意味によって. 決まる。 完了アスペクトを 表す タ 形が発話の主動詞として 用いられると、 発話時において 完了、 つまり「過去」を 意味することになる。 もっとも この「過去」の 意味はあ くまでも派生現象として 生じるものであ るから、 場面・文脈の 性質によって「あ したは約束があ った」とか、 遠くに見え てきた電車を 指して「電車がきた」という. 用法とか、 「やっぱり来てよ. かった」などのさまざまの 用法が生じるわけであ. 見える. タ 形は過去を意味しているには. る。. この最後の用法に. 違いないが、 「よかった」という 評. 価は発話時に 属させるべきものであ って、 過去であ るのは「来た」こと なのであ る。 つまり「来たことをよいと 用、う 」のであ る。 したがって 英 語 に直すとすれば , I,mgladI. camehere,,は 一つの可能な 表現 とい え ょ %0 二. (國 廣. (1982: 10)). 「固有の特徴」を「アスペクト」だとするこの 考え方には いくっ かの問題点を 指摘できよう。 しかしそれは、 ここでの議論にとってはさほど 重要ではないの で・この「アスペクト」説を 採れない理由をひとつだけ 指摘するに止める。 國 廣 論文が言. う. 意味で、 形式 -ta の機能を「完了」と 呼ぶことは可能かもしれない。. しかし、 形式 -(r)u の機能を「未完了」だとすると、. 次のような用法がうまく. 説明できなくなる。. ㈹. a.. テレビでよく 見かける女性三人のシンガー・バループがリサイタル をやるのであ る。‥. ( 中略 ) ‥.. 彼らのこのファン 心理も、 もしかすると 彼ら自身のものではないの 一 3. Ⅰ. 一.

(14) ではないか、. と、. 七瀬は思 三 。 いつか七瀬は 、 並ぶ気はなかったの. に切符を買おうとする 彼らの列の中に. 加わってしまっている。. 思い、. の 気晴らしになるかもしれないと. 何か. セ 瀬はそのまま 窓口まで 進. んで入場券を 貫ユ 。 場内はほ ほ 満席であ る。 三人の娘がステージで 歌っている。 空席のひとつに 七瀬は腰掛 旦る 。 空席があ るといって も. 、 体育館は広いので 何千人かの観出であ る。 (筒井康隆『エディプスの. 恋人Ⅱ. b . (前略 ) ‥.、 ケーキを食べている。. それも三 つ 0 皿を並べて、 あ たかもディナ 一のフルコースの. 如く. 、 端. からせっせと 食べて行くのであ る。 「呆れた……」 「. よ. く食べられるわねえ、 三つ ら 並べて」. 「一つ空の皿があ るわ。 きっと四つよ」 (赤川次郎 F 支社長に乾杯. (16a)の「 思、. ぅ. 」「買. う. 」「腰掛ける」等は 物語の中で生起した. 事態を、. !. %. その生. 起した順に述べる 用法であ って 、 前の事態が完了した 後に次の事態が 生起する という関係にあ. ると思われる。 また、 (16b)の「. に眼前で確認されている 状態を言 いのだから「未完了」と. う. 言えても、. 用法の場合、. (皿が ). あ. る」のように、. 話者. 存在する状態が 終結していな. 特に「できごとの 展開のしかたを 詳しくと. らえる」ものだとは 考えられない。 上記の國 廣 説から採用したいのは、. 1). かたを表現する 言語的手段」だとしている. この形式の交替を「心理的把握のし. 点、 そして、 2). 「語用論の基本原則」. がこの形式を 手がかりとした 時間の解釈において 働いているとする 点であ. る。. 以下、 自説を論じる。. 4.4. b. 時間に関して 中立的な形式としての -(r)u. まず、. 交替する諸形式について 論じる場合には 必ず問題にしなければならな. い 次の 2 つの点について、 本研究の見解を 述べたい。 一 32. 一.

(15) ㈲. a b. 交替する形式の 数は いくっか 。 個数を特定できるか .. 標示される意味・. 機能同士の対照. (contrast) は互いに対立的な. (mutually exclusive) ものか、 それとも、 中立的 (neutral) . 非中立 的 (non-neutral) という関係か. (17a) については、 2 つの形式が交替しているのだと. 考える。 これは、 先行 研. 究 にあ る次のような 位置付けに倣うものであ る。 ⑱) 従来の国文法では タ ベル・カクなどは 動詞活用のうちの 終止形とし, タ ベタ・ カイタ などは「連用形 十 助動詞」として ,両者の間には範鴫 的な つががりはなかった。. しかし タ ベルの か は助動詞の サ セル・ラレル. 動 ).( ラ ) レル. にも現れるので 取り出して. ( 可能 ). 1. (受. っ にまとめ得る。 か. っ この か は平行する文法機能を 保ちながら タと 交替することができるか ら ,この2. つは 同一の 範碍 のものとして 扱い得るであ ろう。. (1967:47-48)). (國 廣. (17b) については、 形式 -(r)u を中立的、 形式 -ta を非中立的だと 考える " 。 そ の 根拠は、 先行研究にすでに 挙げられている 次のような用例の 存在であ る。. ㈹) 真理、 習慣、 習性、 一般的性質、 傾向の表現など. ( 尾上. (1982: 19) 、 一. 部の用例のみ 引用 ) : a. . アルコールは 水に溶ける. b. 鳥は森に住む ⑳) テンスからの 解放. ( 国立国語研究所. a , 恋 というものは、. (1985:21)). 人間をわかくする。. b . 芸術はこれとことなる。 c . このま よい のために、 死をはやめるのはばかげている。. (19) (20) とも、 同一タイプの 用例だと言えよう。 尾上 (1982) は (19) の用 側な 「時間性を持たないケース」と 分析する。 一方、 国立国語研究所 は、. (1985). (20) の用例を「完成 相と 継続 相 の非過去形は ,テンスから解放されること. があ る。」と解説する。 しかしながら、 この解説は賛成できないものであ. 旦 特定の形式に 属するとされたプロパティが 一 33. 一. る。 一. 論拠や条件付けもなく 取り外され.

(16) るとするのは 説明として不適切だし、 形式 -(r)u が形式独自のプロパティとし て「非過去」. 4.. 2. というプロパティを 持つと決めることができないことは、. すでに. に論じたとおりであ る。 また、 同書が指摘するこの 用法が「非過去形」に. 限られるということも、 形式 -(r)u が中立的であ ることをかえって 裏 付けるこ とになるのではないかと 思われる。. (17b) について形式 -( )u を中立的だと 論じた場合、 次のような指摘に 対し 「. て回答をする 必要が出てくるであ ろう。 ②) 例えば学校文法では「食べた」を. 、. 「. た 」を助動詞とする 二話とし、 食 「. べる」を一 話 とするが、 これでは「食べる / 食べた」の「非過去Ⅰ過去」 という意味の 対立に関して、 「食べた」のほうの が担. う. からよいとしても、 何もない「食べる」に. (過去 ). の意味は「. ( 非過去 ). た. 」. の意味がど. 問題があ る。 文法力テゴリーという 考え. のように保証されるのかという. 方では、 そのような問題は 起こらない。. (岩崎. これは、 日本語に「文法力テゴリーとしてのテンス」を. (2000:29). 認めることの 意義を論. じる論文からの 引用であ る。 本研究がこうした 考え方に賛成できないことはす でに述べた。 しかし、 本研究が賛成しないこととは は 非論理的な点があ. る。 論述では、. 叩 食べる. 無関係に、 この論述自体に. / 食べた』の『非過去Ⅰ過去』と. いう意味の対立」が 存在することが 大前提とされている。 これは、 形式「食べ る. 」は意味「非過去」に、 形式「食べた」は 意味「過去」に、 それぞれⅠ 対. に対応しているということであ 味は. 『. た 』が担. 去 ) の 意味を『. う. る。 そして、 「『食べた』のほうの. からよいとしても」. たコ. が担. う. とあ るので、. (過去 ). これが真であ る場合、. ならば、 形式『食べた』の 意味は. (過去 ). 1. の意 「. (過. であ る」. 「形式『食べる』は 形式『食べた』ではない」「ゆえに、 形式正食べる 団の意味 は. ( 過去 ). ではない」. とい・9. 三段論法が成立する。. したがって、 「文法力テゴ. リー」の考え 方を採らなくても、. 「. (過去 ). の意味は. として、 形式「食べる」に 対し、. 「. (過去 ). ではない意味」すなむち「. の意味」が「保証」されてしまうのであ ところで、. 「. ( 非過去 ). Fた. 』が担う」を 十分条件 ( 非過去 ). る。. の意味」とは 何だろうか。 これは、 少なくともコミュ 一 34. 一.

(17) ニ ケーション参加者が 伝達する情報そのものではない。. たとえば、 「このピザ、. だれも食べないんなら、 おれが 食ミニよ 。 」という発話により 「今から. ( つまり、. 伝達される情報は 、. 未来に ) 食べる」ということであ って、 「非過去に食べる」と. いうことではない。 したがって、 形式 -(r)u を中立的だと 論じた場合に 問われ るべきことは、 それがど た 形式「食べる」を. う. 「非過去」の 意味を保証するかではなく、 使用され. 手がかりにしてどのように 聞き手が事態の 生起する時間を. 特定するか、 ということの 方であ る。 この問いには、 先に引用した (15) の 國 廣 論文がすでに 回答を行っている。 國 鹿論文は、 形式 -(r)u を「未完了アスペクト」を 標示するものだと 考える点で、 本研究とは異なってくる。. しかし、 ・述語の「指す 意味内容が必然的に 発話時に. 結びつけられる」とする 分析は正しいと 考える。 にれは、 後に述べる「参照 点 という概念と 関わるのものであ る。 次で「参照 点 の点についても. う. 」. とは何かを論じた 後に、. 」. こ. 一度触れる。) また、 形式 -%)u が用いられる 場合に、 それが. 現在の事態を 指示するのか、 それとも未来の 事態を指示するのか、 という問題 は、. 形式 -(r)u が「非過去テンス」を 表すとする立場にとっても、 避けて通れ. ない問題であ る。 國 廣 論文は「現在と 未来の別は動詞語幹の 語義的アスペクト および文脈の 意味によって 決まる。 」としているが、 それによってどう 決まるの かは、 ひとつの大きな 研究課題であ る " 。. 4.4. c. 形式 -ta が排他的に標示するものと「参照 点. 」. 以上の考察から、 形式 -( 「 u ノーta の交替が排他的に 標示するものを 言. う. ため. には、 形式 -ta が自己のプロパティとして 持ち排他的に 標示するものを 示せばよ いということがわかる。 本研究は 、 次の分析を提示する。 (22a) 形式 -taが標示するもの. 事態を、 時間軸上において、 時間の進行とは 逆 方向であ る参照点から 切 り. 離された後方部分に 位置づける、 話し手の操作. 一 35. 一. (operation).

(18) 「参照 点. 」. とは何か、 その概念規定を 次に示す。. (22b) 参照 点 (referencepoint): 事態を時間の 流れとの関係性において 認識するために 目印として時間軸. 上に付けられる 点 別 の言い方をすれば、. 日本語の話者は. 事態を認識するとき、. 時間軸上の特定の. 地点から切り 離されたそれ 以前のあ る時期に生起してすでに 消滅した事態だと. 見るか、 または、. そのような特別な. 見方なしに見るか、. どちらかだということ. であ る。 これは、 これまでに見てきた 形式 -ta の用法を統一的に 説明しょうとす るものであ り、 その妥当性は、 実例をどれだけうまく 説明するかということに よって 、 量られるべきものだと 考える " 。 この分析から、 形式 -ta を Comrie (1985). (relative tense)」の形式だと 呼ぶこともできよう. の言う「相対的テンス. "。. し. かし、 形式 -ta の場合、 体系内で対立的な 関係にあ る要素のひとっだと 考えない. こと、 そして、. 「テンス」と 言. とが多いことから、 参照 点. あ. だけで発話時を 基準とした関係が 想像されるこ. えて「テンス」という 用語は使用しない。. ( 「 eferencepoint). かということは、. う. について、 話し手がどのようにそれを 設定するの. 言語外的な現象なので 研究対象外だとする 立場もあ. ろう。. し. かし、本研究はこれを 論じなければ 問題の解決にはならないと 考える。 reference. point という用語をおそらく 最初に用いたライヘンバッハ. (1947)は、 (前略 ) ‥・. 個々の文においては. ,どの時点が言及の時点として. ではない。 これは、. 発話の文脈によって 決定されることなのであ. 「. 用いられているのか 明らか. る。. ( ライヘン. バッハ (1947、 日本語訳 300))」とするのみで、 参照 点 自体が人間のどのよう な時間認識を 反映したものかについては は、. 追究していない。 また、 Comrie (1985). この参照点が 文脈によって 決定される場合の 関係のことを「相対的テンス」. と呼んでいるわけだが、. 文脈によってどう 決定されるかについては 特に論じて. いない。. 本研究は、 参照点を次のようなものだと 考える。 ただしここで 述べるのは、 本語のみの観察にもとづくものであ. 日. るから、 あ くまで日本語のコミュニケーショ. ンにおける参照点の 性質ということであ 一 36. る。 以下、 一. 性質のひとっひとっを 関連.

(19) する用例とともに 考察する。 (23) 参照点の性質Ⅰ. 話し手が意図的に 設定・移動でき、 聞き手との間で 共有されることによっ て コミュニケーションを 成立させるものであ る. つまり、 一般の情報. ( 「判断を下したり. ( 『 広 辞苑第四版』岩波書店 ) 」のこと ). 行動を起したりするために 必要な知識 と 同様、. コミュニケーションの 当事者間. で交換される 情報であ る。 「話し手」としているが、. 言語的手段により 情報を発. 倍 する者ならだれでも、 自らの意図によりこれを 自由に設定,移動できるもの だと考える。 このよう. 十こィ立. 置付ければ、 時間を表す形式に 関しテクストのタイ. プ により別個に 体系を立てる 分析は冗長だということになる う. "。. ( また、. そのよ. な分析は母語話者の 直観に反するものでもあ る。) たとえば、 工藤 (1995) は 、. 「最も基本的な 言語活動であ る日常会話として 成立するくはなしあ い ) クストのタイプと、 3 人称小説地の 文を代表例とする. ( かたり ). という テ. という百僚 の. テクストのタイプとでは ,テンス形式の意味・機能が ,本質的に異なるもので a 工藤. ある り. ). (1995: 165)). 」. とし、 『こころ』からの 引用とともに、 次の「 ( かた. のテクスト」の 特徴を指摘する。. (銭. 誰か慌ただしく 門前を駆けて 行く足音がした 時, 代 助の頭の中には ,大 きな組下駄が 空から,ぶら 下がっていた。 けれども,その組下駄は ,足 昔の遠退くに 従って ,すうと頭から抜け 出して消えてしまった。 そうし て目が覚めた。 枕元を見ると ,八重の椿が一輪畳の上に 落ちている。 代 助は昨夕 床の 中で横にこの 花の落ちる昔を 聞いた。 ( 中略 ). まず第. 1. 段落では, 3 つの文は,過去形が使用されているが ,読者は,. 物語世界の出来事の 展開,つまりは ,叙事詩的時間のなかに連 込まれた よさに感じるであ ろう。. 『雪国 コ. の場合と同様に ,過去形は,叙事詩的時. 間二作中人物のいまを 提示していると 思われる。 次の第. 2. 段落の第. t. 文 「落ちている」では ,眼が覚めて枕元を見た時 一 37. 一.

(20) 点 における同時的出来事が ,非過去形で提示されている。. (後略 ). ( 工藤. ところが、 このような用法は 、 (あ). くかたり ). (1995:171)). のテクストに 限ったことではない。. 生れて始めて 会った日本人についてどうお 話したらいいでしょう。. る. よ. めくようにして 一人の酔っぱらいが 部屋に入ってきました。 祖襖 をまとっ たこの男の名は キチジ ロ ー と言い年齢は 二十八 か 九歳ぐらいでした。 我々 の問いに漸く 答えたところによりますと、. 夫 だそうで、. あ の島原の内乱の. 長崎にちかい. ヒゼ. ノ 地方の漁 、. 前に海を漂流していた 時、 ポルトガル 船. に助けてもらったのだそうです。. 酔っているくせに 狡 そうな眼をした. 男. でした。 私たちの会話 中 、 時々 、 眼をそらしてしまうのです。 「あ なたは信徒ですか」. 同僚のガル ぺ がそ. う. 訊ねると、 この男は急に 黙り込みました。 (遠藤周作『沈黙Ⅲ. これは、 小説の中に出てくる 書簡の一部であ るが、 テクストのタイプはくはな しあ い ) であ る。 話し手と聞き 手という人間同士の 会話においても、 出来事の 描写を内容的にまとまった 話として一方通行的に 語って聞かせるということは あ る。. この例では、. 「時々 、. 眼をそらす」という 特徴に気づ い た時点に参照点を. 移動しているのであ る。 また、 参照点が移動するものだとみることは、. これまでの一律に「主文の 述. 語において用いられている 形式 -ta は発話 時 以前を示す」としてきた 先行研究の 見解に代わり、 現象をより詳しく 分析することを 可能にする,。 。. ②) その時、 今度は電話のべ ル が鳴った。 「もしもし、 こちら黒谷と 青山でございます」 久男が言った。 「山本太郎ですか ? ちょっとお待ち. あ あ います。. どなたですか ?. 下さい」. 太郎は轟く胸をおさえて、 電話口に出た。 ( 中略 ) ‥.. 一 38. 一. 五月さん ?. は い、.

(21) しと. 。コュ ム刊 ﹁論 い 。. 広己 Ⅲるたき 郎理 こで 発式が. た こ レ つ を 息 溜 な き 大 キ ま け Ⅱ 卜 白 い 太 ら 。 の キ てんも時 畳一 受 成立していることが、 文脈から読み 取れるというだけのことであ. る。 このよう. に、 言語形式がそれ 自体で指示することと、 その形式の使用によって 含意. (㎞-. plicature) として成立する 関係とは、 言語現象の分析においては、 つねに区別 されなければならない " 。. (27) 参照点の性質 2. 話し手が事態を 言い表すときに、 参照点を設定する 場合と、 設定しない 場合とがあ る 参照点の設定は 、 話し手の意図によるものであ. るから、 しない場合もあ る。 こ. れが、 (19) (20) に挙げたタイプの 場合であ る。 このタイプは 広く一般に用い られている用法であ り、 例外的なものではけっしてない。 れば、 「テンスからの 解放 用法. a 工藤. ( 国立国語研究所. このように位置付け. (1985))」「脱 アスペクト・テンス. (1995))」のような複雑な 位置付け方は、 必要ではなくなると 思わ ー 39. 一.

(22) れる。. (28) 参照点の性質 3. ( 仮説 ). 話し手が同時に 設定する参照点の 数はⅠつであ ることも、 複数であ るこ ともあ. る. 「参照 点 」のような、. る場合には、. 現象を説明するためのモデルを 構成する要素の 性質を論じ. 「数はいく. っか 」ということを 明言しなければならないと 考える。. ここでは、 はっきりとした 分析を提示することはできないので、 2. 仮説とするが、. つ以上設定される 場合がないとは 言えない。 可能性としてあ るのは次のよ. う. な場合であ る。 ②) a. .. 彼女は毎日計算をくり 返していた。 将来を手さぐりし、 推測して、 推 測の上に立って 生活の計算をするのだ。 一 一. b. .. 彼は大きなボールを 投げる時の康子の. う. しろ姿を見つめていた。 そ. して彼女の裸の 体を想像していた。 その裸体を彼は、 登美子を基準. にして、 登美子と比較しながら 想像するのだった。 。 """ c . 本当はいま直ぐに 求婚してもらいたい。 彼女はそれを 予定して今夜. の約束をしたのだ。 一 一 d. .. 父は寺坂を徹底的に、 絶対に父を裏 切ることのない 味方にしてしま. うために、 彼を登美子の 婿にしょうと 考えているらしい。 登美子は それを知っていた。 栄子が一度、それらしいことを 洩らしたのだった。 " 。" 。 (石川達三『青春の. このように、 時間を表す形式の 交替が 記のように組み 合わせによって. 4. 2. 蹉 趺月. つの統語的位置で 起こる場合があ り、 上. つの異なる形式が 出てくる。 これらの形式に. ついては、 「ムード」の 形式としては 論じられてきたが、 時間をどのように 指示 するかについては 十分研究が行われてこなかったように. 思われる。. 反復的に生起する 事態を指示する 用法については、 時間軸上に参照点を 複数 設定するものではないし、 特別な場合として 扱 う 必要もないと 考える。 のは、 事態を捉えて 言い表そうとするとき、 それを個別的に 行. (generic)に行. う. 場合の両方が. 常に考えられ、 一 40. 一. う. という. 場合と総称的. 反復的に生起する 事態はその後.

(23) 者の場合だからであ る。 これは、 認識している 事物を言語的に 表現すること 一 般に共通するものであ って、 特別に形式 -Cr)u/-ta の交替に関係しているもの ではない。 次の (30). と. (31) のように、 形式 -(r)u Ⅰ -ta のどちらにもまった. く同様に、 単独で生起する 事態を指示する 用法 (aの用例 ) と、 反復的に生起す る. 事態を指示する 用法 (bの用例 ) の両方があ る。 (㏄). a.. 「あ のね、. よ. 」. 「あ あ 、. b.. 僕、 シャワー浴びたら、 さっぱりしたから、 これから行く. 来るならおいで」. 「あ なた東京へ行くと、. 学校なんか行くの. 「往くよ。 おれが高校にいた 時、. う. ?. 」. ちの高校の運動部、 一番よかった. もんね。 今でも、 おれ、 運動部の OB. としては、 もてるよ」 (曾野綾子『太郎物語Ⅲ. ③ ) a.. 障害をやるという 日、 私は少し緊張して 学校へ行 二互 。. b. 金のない時は、 船橋へもよく 行 コ上。 (五木寛之『風に. 吹かれてⅢ. (32) 参照点の性質 4 話し手・聞き 手が時空間を 共有しているようなコミュニケーションであ て、 かつ、 話し手がコミュニケーション り. 参加者自身に 属する情報. 、 参加者自身が 着目している 事態に関すること. ). っ. ( つま. の表現・表出をする. 場合は、 発話の時点に 設定される ただし、 話し手が特定の 時点への参照点の 設定を行 うか 、 または、. 質 2 」として論じたような ぅ. ). (. 「. 性. 参照点を設定しない 扱いを事態に 対して 行. 場合をのぞく. これは、 (15) として先に引用した 國 廣 (1982) が言 う ところの、 言い表された 事態が「必然的に 発話時に結びつけられる」ということと. 同じ現象に対して 行っ. ている説明であ る。 また、 Comrie (1985) の次の記述で 言われている 聞き手の. 解釈を決定づける 話し手側の動きであ る。 ( ただし、 同書の記述のように 消去法 的に発話の時点に 決定するとは 考えないが。 ) そして、 この記述に読み 取れる 一 41. 一.

(24) relative tense. と reference. point との関係は 、 先に提示した. (22a) の形式 寸 a. が標示する時間関係と 参照点との関係に 等しい。 (33)@Thus , the@ present@ moment@ is,@unless@ barred@ by@ context . always available@ as@ a@ reference@ point@ for@ relative@ tenses . This@ means@ that a@ relative@ tense@ is@ quite@ strictly@ one@ which@ is@ interpreted@ rela-. tive@ to@ a@ reference@ point@ provided@by@ the@ contex. Ⅰ. since@ the@ context. always@ provides@ the@ present@ moment@ (unless@ some@ other@ feature@ of the. context. excludes. interpretation),an. this. interpretation is. always@ possible@ for@ relative@ tenses@ whereby@ they@ are@ apparently interpreted absolutely , but. this. apparent absolute interpretation. (Comrie (1985:58)). is@ illusory. これは、 参照点を発話時に 設定するということであ って、 「発話時を基準とする」. とレ )う. (綴 ). と と はまったく異質なことであ. る。. 何やら大畑は 混乱していた。 頭を打ったのがこたえたのかもしれない。 しかし、 かんな自分の 話を待っているらしい。 大畑はもう一度咳払い して続けた。 「方法としては、 人事の一新以覚にない。 当然そうだ。 要するに幹部が 能 なしだから潰れるんだからが」 聞いていた尾島が 日を丸くした。 大畑は構わず 続けた。 「そこで新しい 人事を発表土 る. 」. 大畑はリストを 眺めた。. (赤川次郎『支社長に. 乾杯. !. %. この用例では、 だれが下線部分を 含む発話の話し 手になるのかが、 先行文脈に おいて決定している。 その話し手が 実際に発話することによって、. 参照点が発. 話 時に設定される。 これは、 行為者が話し 手自身に、 行為の地点が 発話の起こ された地点に 決定することと 共通性を持っ 現象であ る。 以上が、 本研究が形式 -( 「 u Ⅰ -ta の交替全般に 関して提示する 代案であ る。. 次節では、 この交替が形式「∼とき」において 起きる場合の 問題を論じる。. 一 42. 一.

(25) 5. 「とき」に連なる 埋め込み文の 述語で用いられる -(r)Iノ ー iaの交替について. 5. 1. 本研究の分析 前節では、 -(r)u/-ta それぞれの形式が 持っ「固有の 特徴」の具体的内容を 述べた。 この「固有の 特徴」の規則性が「とき」に もそのままのかたちで 実現していると 考える。 な行. う. 連なる埋め込み 文の場合に. ( この適否については. 次節で検証. 。 ) また、 形式「∼ とき」は、 第 3 節で論じたよさに、 「今朝」や「年の. 初め」などと 同様、 主文の述語成分を 修飾し意味解釈において 述語成分が指示 する事態の生起する 時間を指定する 名詞句であ る。 したがって、 使用されるこ とによって次のような 時間指定を行. う. ものだと考える。. (35) 形式「∼とき」の 使用による時間指定 コミュ 二 ケーション参加者にとって. :. 日常の推論によって 埋め込み文の 指. 示する事態の 生起との関連付けが 可能な任意の " 時間を指定する。 また、 この名詞句「∼とき」にも、 時間を個別的に 捉えて言 捉えて言. う. う. 場合と総称的に. 場合の両方があ る。 前者の場合はひとっの 特定の時間を 指示し、 後. 者の場合は反復的に 存在し得るタイプとしての 時間を指示する。 次の a. 前者の用例であ り、 (36). a. b と d が後者の用例であ. とc. のが. る。. 緑の窓口で切符を 買う時、 太郎は 、 初め二枚買い、 それから、 駅を ぐるりと 一 廻りしてから、 文 一枚買ったのであ った。. b . 「計画書 ?. 」. 「だって女の 子が覚出する 時、 親はひどく心配するものなんでしょ。 だから僕、 途中で何度か 連絡できるようなスケジュール 作りますから」 c.. 藤原は何も言わず、 影法師のように 立っていたが、 杉山ドクタ一の 車が、 赤い二つの 尾燈 だけを残して 消えた時、 太郎は藤原が 、 海の 向. うの低いところに 光っている星を 見ているのに 気がついた。. d. しかし、 一週間後に立ちなおった 時、 その人間はマムシに 勝った. と. い 5 経歴をふやしたことになる。 (曾野綾子『太郎物語Ⅱ. 一 43. 一.

(26) 5. 2. 「従属節」における「テンス」の 特殊,性を論じる 研究の問題点、 この項では、. い わゆる「テンス」に. 関して、 主文の述語の 場合に対し、 (木所. 究の研究対象を 含む ) 連休修飾師全般、. あ るいは、 い わゆる「従属節」全般の. 述語の場合を 特殊だと論じる 先行研究多数説の は、. 分析を検討する。. これらの分析. 本研究の分析とは 両立しないものであ り、 本研究は支持をしない。 ただし、. この不支持の 表明はあ くまで本研究の 研究対象に関してであ る、 ということを あ. らかじめ明言しておきたい ,。 この特殊性を 論じる先行諸研究の 分析をしばしば 使用される用語とともにま. とめている記述を 引用する。 (7) 例えば,以下のぺ ア の例の現象について , 絶対的テンスと 相対的テンス を用いて説明がなされる。 (1) 太郎は , 隣に座っていた 女の子に声をかけた。 (2) 太郎は , 隣に座っている 女の子に声をかけた。 このふた っ の例は , 同じ事態を表し 「座っていた」. 「. るが, (1) では従属節のテンスが. というようにテ ィタ 形になっているのに 対し, (2) では. 「座っている」とテイル の. ぅ. ( 女の子が ). 形になっている。 この違いは, (1). では従属節. 隣に座っている」という 事態が,発話時から見て過去と. してテ ィタ 形になっており , (2) では従属節の 事態が「 (太郎が ) 声を かけた」という 主節事態の起こった 時点. ( 主節 時 ). からみて,同時であ. るとしてテイル 形になっている。 (1) のように,従属節のテンスが発話 時を基準にして 従属節事態が 前か 後 かあ るいは同時かを 表し分けるもの は 絶対的テンス. , (2) のように,従属節のテンスが主節時を基準にして. 従属節事態が 前か 後 かあ るいは同時かを 表し分けるものは 相対的テンス であ ると説明される。 用語について 確認をしておく。 ここでい. う. 「絶対的テンス」は、 主文の述語に. おける形式 -(r)u Ⅰ -ta の交替と同じく 発話時を基準とした 規則性を指している。 つまり。 4.. 2. ですでに取り 上げたよさに、 通常単に「テンス」とよばれてい. 一 44. 一.

(27) るものと同一であ る。 これは、 Comrie (1985) など一般言語学の 諸研究で用い られている absoIute. tense と同じものであ る。 一方、 ここでい. う. 「相対的テン. ス 」は、 参照点が文脈によって 決定される場合という 特徴をもつ Comrie (1985) 等の relative tense とはまったく 異なる概念であ る。 そして、 寺村 (1982,1984、. 本稿 (13) の表を参照. ). は、 この規則性を「アスペクト」と. 呼ぶ概念の中で 捉. えている。. この先行研究多数 説 が行った分析にはいくつか 疑問に思われる 点があ る。 第一に、 「主節」「従属節」というように. 統語的な位置が 異なることによって. 本当に違った 文法規則を日本語母語話者が 適用しているのか、 ということであ る. 。 これは、 すでに 4.. 1 に論じた。. 第二に、 「表し分ける」ということが 本当に「主節時を 基準にして」行われる のか、 ということであ る。 「従属節」は、 倒置であ る場合を除けばすべて、. 「主. 節 時 」を確定的に 示す主文の述語よりも 先に言われる。 「主節時を基準に」する ためには、 「主節事態」の 方がまず先にどのようなものであ ならず、 それに続いて「従属節事態」がどのようなものであ う. るか決まらなければ るか決まる、 とい. 順序になる。 これでは、 話し手にとっては 良いとしても、 聞き手にとっては、. 言われたことを 理解するのに 語順と逆行する 情報処理を行わなければならない ことになる。 しかし、 実際の会話では、 聞き手は「主節」を 待たずに、 を 聞いただけで、. ( つまり、. 「従属節」. 「主節事態」がいっなのかを 理解する前に 、 ) 「従属. 節事態」がどの 時間の事態なのかを 特定できているのではないだろうか。 えば、 このことは、 次のような用例の 検討により明らかになるだろう。. たと ここで. の形式「∼とき」は 、 他のどの 文 との間に「主節」・「従属節」の 関係を成立さ せているだろうか。. ③) 静けさが冷たい 満 となって落ちそうな 杉林を抜けて、 スキ イ 場の裾を線 略伝いに行くと、 直ぐに墓場だった。 田の畦の小高い 一角に 、 古びた石. 碑が十ばかりと 地蔵 が立っているだけだった。 貧しげな 裸 だった。 花は なかった。. しかし、 地蔵 の裏 の低い木蔭から、 不意に葉子の 胸が浮 び 上った。 彼 一 45. 一.

(28) 女 もとっさに仮面じみた 例の真剣な顔をして、 刺すように燃える 目でこ ちらを見た。 島村はこくんとお 「葉子さん早いのね。. じ. ぎをするとそのまま 立ち止まった。. 髪結いさんへ 私. 0. 」. と、. 絢子が言いかかった 時だった。 どっと真黒な 突風に吹き飛ばされた. よ. に、 彼女も島村も 身を疎めた。. う. 多数説の説明から 言えば、 「主節」は「 時 だった。」であ るが、 これを「絶対的 テンス」. と呼ぶべきかどうか、 判断に苦しむ。 ところが、 後続する文の 出来事. 時の間に、 多数 説 の言 準 にしてその直前に. う. 「相対的テンス」の 関係、 つまり、. [ 言いかかる ]. だった。」を「∼ 時、. 」. [ 身を疎める. コ. という関係が 見て取れる。 つまり、. と直し後続する 文につなげて 言. う. を基 「∼ 時. 場合と同じ関係が 成立. している。 「絢子が言いかかった 時 」において形式 -ta が選ばれているのは、 他 の 主文に表れている. -ta と同様、 [言いかかる. ]. ことが、 先行文脈からの 続きで. 形式 -ta の繰り返しにより 示されている 一連の事態の 時間軸に沿った 生起の一部 を 成すものだからだと 考えるべきだ る. 二フ. 0. また、 形式「∼とき」の 場合について 言えば、 修飾・ 被 修飾の関係において は、. 被修飾要素. 飾 要素. ( 主文の述語成分 ). ( 形式「∼とき」 ). が指示対象とする 事態を特定するために、 修. が手がかりとなる 付加情報を提供する、 という関係が. 成立しているはずであ る。 ところが、 先行研究の言 明 が正しいとすると、. 修飾要素. するために、 被修飾要素. ( 形式「∼とき」 ). ( 主文の述語成分 ). う. 「主節 時 基準」という. 説. が指示対象とする 時間を特定. を含む形式. がかりとなるという、 逆の関係が成立することになる。. ( 主文 ). が決定的な手. つまり、. 「主節 時 基準」. という説明は、 論理的に言って 矛盾を含んだ 説明だということが 言える。 さらに、 第三として、 「主節事態の 起こった時点」からみていつなのかにより 「従属節」の「テンス」が「表し 分け」られるとするが、 「主節事態の 起こった 時点」が決められない 場合、 つまり、 主文が否定文であ ったり、 疑問文であ っ たり命令文・ 依頼 立 であ ったりした場合には、 何を基準とするのか、 というこ ともあ る " 。. この多数説を 取る先行研究の 中には、 「絶対的テンス」「相対的テンス」の 2 一 46 一.

(29) っ があ ることを指摘して 考察を終えているものがあ. 件下に 2 つの体系のうちから. 1. る。 しかし、 どのような条. っが 選ばれるのかを 言. う. のでなければ、 現象の. 分析とは言えないであ ろう。 そうでないものは、 現象に対して 悉意 的に規則を 立ててみたということにすぎない。 この現象の分析に 必須であ るはずの条件付けを 確かに行っており、 かつ、 本 研究の研究対象を 自らも研究対象とする 先行諸研究の 分析を 、 次に検討する。. 5.. 3. 形式「∼とき」に 対する先行研究の 分析について. 寺村 (1982) は 、 埋め込み文の 従属 度 、 つまり、 文としての独立性が 関わる. とする。 (3の問題は状態用言の 場合、 とくに主文が 過去を表している 場合であ る。 一 般に 、 その 従 節の独立性が 高いほど、 つまり従属 度 が低いほど、 ル 、 タ によるテンスの 表現が必要になり、 独立性が低く、 従属 度 が高いほど、 テ シ スは主文のテンスに 同化する。 つまり、 主文が過去であ ればル形で主. 文 と同じ時の状態を 表す。. 主文への従属 度 が高い埋め込み 文、 たとえば、 南 (1974) の言 「. A 類 」、. 「. (1982:13-14)). ( 寺村 う. 「従属 句. B 類 」のうちの「ナラ」「 / デ 」「 / 二 」以覚のもののように、. 」. の. 形式. -(r)u/-ta の交替を起こし 得ないものについては、 埋め込み文の 指示する事態 に主文の事態との 同時性があ るので、 「主文のテンスに 同化」しているという 説 明が可能だと 考える。 しかし、 (1) のように「状態用言」が「とき」に 連なる 埋め込み文の 述語になる場合、 (37) の中に示された 2 つの例文のように 一般的 な連体修飾の 場合には、 埋め込み文を 主文に結び付けている 形式は同一なので あ. るから・形式 -(r)u の場合も形式 -ta の場合も「従属 度 」は同じであ ろう。 と. すれば、 形式 -(r)u の場合の方が「従属 度 」が高いのだから「主文のテンスに 同化」している、 という説明は 、 成り立っものではないと 考える。. 工藤 (1989a) は「テキスト (discourseり 」のタイプが 関係するとする。 (如 ). 従属文における スル,シタ,シテイル,シテ ィタ の基本的使命は ,その. 一 47. 一.

(30) 機能上主文の 出来事時との 時間関係をしめすことであ る。 したがって,従 属文のテンスニアスペクト 対立の仕方にいくつかのバリエーションがあ. たとしても以上のすべてにおいて. っ. ,発話時ならぬ ,主文の出来事時との. 時間関係を問題とするというく 相対的テンス 化 ノの 原則が働いている。 ( 中略 ) ‥.,. にもかかわらず ,従属文が発話時との関係を直接的に 妻わし. てしまう場合もあ る。 このく絶対的テンス 化 ノの 現象は「シテ ィタ. とき」. の場合を除けば ,基本的にくはなしあ い上にあ らわれ,くかたり自他 の. (@@@ (1989a:@21-22)). 文ノ には現われにくい。. 工藤論文は 、 次の用例を挙げている。 それぞれの a が「相対的テンス」、. b が「. 絶. 対酌テンス」の 例であ る。 紹l) a.. b. 去年,ソビエトに行くときは,新潟からの船を使いました。 .. 去年, ソビエトに行ったときは ,新潟からの船を使いました。. C@@ (践). (1989a:4)). a . 昨日,本を読んでいるときに,おもしろいことに気が付いた。. b. .. 昨日,本を読んでいたときに,おもしろいことに気がっいた。 ( 工藤. (1989a:4)). (40) のく絶対的テンス 化 ノ に関する記述は、 「基本的に」「現われにくい」とい う表現を使っていることから、 文法規則ではなく、 現象に観察される 傾向を述 べたものであ ろう。 したがって 、 く 絶対的テンス 化 ノが 生じる条件が「テキス ト」のタイプ 以外のところに 求められる可能性を 残している。 また、 (40) は 、 く 相対的テンス. 化 ノを. と 位置付けている。. 「原則」. もし、. とし、. く 絶対的テンス. く 絶対的テンス. 化 ノ の方を例外的なもの. 化 ノ の方が「基本的にくはなしあ い ノ. にあ らわれ, くかたり二地の 文 ノ には現われにくい」のだとしたら、 は、. 工藤 (1995) の行. う. この傾向. 「日常言語とは 質的に異なる , 有 標的な下機能方言〒. かたりⅠ」というテクストのタイプに 関する位置付けとは 逆の関係にあ るという ことになるであ ろ %0 ニ. 三原 (1992) は次の「視点の 原理」を提示し、 三原・濱田. (1996) において. 「トキ節では、 視点の原理が 比較的透明な 形で機能していると 言えよう。 一 48 一. ( 三原・.

(31) 濱田 (1996:41)) 色③. 」. と結論付けている。. 主節・従属節時制形式が 同一時制形式の 組み合わせとなる 時、 従属. a.. 節 時制形式は発話 時 視点によって 決定される。. b. 主節・従属節時制形式が 異なる時制形式の 組み合わせとなる 時、 従 属節 時制形式は主節 時 視点によって 決定される。 ( 三原. ここでい. う. (1992:22)). 「視点」はそれぞれの「 節 」が示す事態が 生起する時点、 と読み替え. られる概念であ る。 また、 「時制形式」とは 次のような概念であ る。 (典. 日本語において 述語が過去の 時指示を持っ 場合、 その述語は一律に. タ. で. 終わる形式を 取る。 一方、 非過去の時指示となる 場合、 時制 辞が 付加さ れる語の品詞に 応じて幾つかの 形式を取り得る。 (1) a. 太郎は成田経由で 来た。 一 (動詞 ) b. 花子は若い頃 美しかった。 (イ 形容詞 ) c . このあ たりも昔は静かだった。. ( ナ 形容詞 ). d. 太郎は去年まで 学生だった。 一 (名詞 ) (2) a. 太郎は成田経由で 来る。 一 (動詞 ) b. 花子は昔と同じように 美しい。. (イ. 形容詞 ). c . このあ たりは今でも 静かだ。 ( ナ 形容詞 ). d. 太郎はまだ学生だ。. (名詞 ). 以下、 日本語の時制を 論じる際のこれまでの 慣行に従って、 (1) に見ら れる過去の時指示を 示す時制形式を「タ 影」と呼び、 (2) のような罪過 去の時指示となる 時制形式を総称して「 ル形 」と呼ぶことにしたい。 ( 三原. (1992:22)). 「視点の原理」は「日英語従属節中の 時制形式選択に 関する機構が 明示的に捉え. られる. ( 三原. (1992:3))」ということを 目指すものであ るが、 形式「∼とき」. 全般を説明する 原理ではない。 たとえば、 次の用例のような「主節」にれは、 いわゆる「言い 終わる」形式ではないが、 「従属節」に 対して「主節」という 関 係 に立っものであ る。) が 「時制形式」を 持たない場合については、 説明するこ 一 49 一.

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