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〈書評〉足立辰雄 編著 『サステナビリティと中小企業』--同友館, 2013年3月

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(1)商経学叢 第60巻第2・3号 2014年3月 . 足立辰雄 編著『サステナビリティと中小企業』 (同友館,20 13年3月) 田. 中. 照. 純. 原稿受理日 2013年9月17日. 1. は じ め に. 今ここに,一冊の興味深い経営学の専門書がある。なぜ興味深いのか,それはこの書が これまで一般に考えられてきた通説を打ち破ろうとしているからだ。もはや間違いなく, 経営学の中で一つの個別分野を形成するに至った CSR(企業の社会的責任)だが,それは主 要に大企業に固有のものであり,中小企業には全く無縁とは言わないまでも,あまり馴染 みのないものとして暗黙のうちに等閑に付されてきた。しかし,それとは違って現実には 中小企業においても多様な CSR が積極的に実践されており,むしろ中小企業こそ CSR の主役として,その活動には刮目すべきものがある。それこそ本書全体の根底を貫いてい る基本的な考え方である。 では, なぜ中小企業の CSR 活動はこれまで軽視されてきたのか。もちろん CSR を実 践するには,企業にとって〈ヒト・モノ・カネ〉という経営資源上の負担が伴う。たとえ ば従業員の賃金や労働時間の改善,雇用の維持・拡大,あるいは地域住民の生活を守るた めの環境経営,また広く消費者との結びつきを強めるボランティア活動などの社会貢献, どの活動を取ってみても,それを実践するには経営資源の面での条件が必要となる。そう した場合,その条件整備が進んだ大企業に有利であることは論を俟たない。だが,それだ からと言って, 経営に余裕のある大企業のみが CSR に取り組めるのかといえば, 決して そうではない。CSR 活動は大企業だけの専売特許ではない。たとえ中小企業といえども, 工夫しだいで積極的に CSR を行うことができる。中小企業が実践する CSR,それが十分 可能であることを本書は遺憾なく実証してくれている。 さて,本書は我が国における中小企業の CSR について, 全国レベルでの実態を調査し た共同研究の成果である。しかも,単に調査の結果を分析するだけでなく,その分析結果 に基づいて,大企業にはない中小企業の CSR 活動の特徴を浮き彫りにし,さらに,それ 377 ─ 171( ) ─ .

(2) 第60巻 第2・3号. を通して持続可能な社会を実現することを基本的な研究目的に据えている。我が国におけ る持続可能な社会づくりという目的は, ただ大企業による CSR 活動だけでなく, 量的・ 質的に圧倒的な勢力を誇る中小企業のそれなしには達成し得ない。そのためにも,これま であまり注目されなかった中小企業での CSR が,果たしてどのような実態にあるのかを 明らかにしなければならない。そこで,先ず全国規模での精確な調査を行い,その結果を 詳細に分析した上で, 大企業には見られない中小企業に特有の CSR に関する優位性を確 認する。そうした研究成果を基礎にして,我が国において持続可能な社会をつくるために 中小企業の CSR 活動をどのように生かして行くのか,本書はその積極的な政策提起にま で踏み込んだ理論を形成することを目的としている。. 2. 全体の構成と概要. では,本書が一体どのような全体的な構成と内容を持っているのか,それをこれから取 り組む作業の前提として,先ず概略的に確認しておこう。前述のように共同研究の成果で ある本書では,はじめに編著者によって「はしがき」として本書が持つ研究の意義や動機 が語られ,次にそのことが全部で3部15章から成る本論を通して,次第に明らかにされて 行く。そこで,本書が持つ全体的な構成を実際の目次に沿って提示してみよう。. はしがき 第1部 中小企業 CSR 実態調査結果の分析 第1章 中小企業における CSR 研究の視角 第2章 中小企業 CSR 実態調査の目的と結果について 第3章 第1回中小企業 CSR 全国調査の分析 第4章 CSR 優良企業調査の分析 第5章 中小企業の成長と CSR ビジネスモデル 第2部 サステナビリティと中小企業 第6章 ISO26000 と中小企業の経営理念 第7章 中小企業の持続可能な利益 第8章 中小企業のコーポレート・ガバナンス ―どのステイクホルダーが,どのように行うのか―. 第9章 中小企業と環境会計 172( ) 378 ─ ─ .

(3) 足立辰雄 編著『サステナビリティと中小企業』(同友館,2013年3月)(田中). 第10章 中小企業の持続的経営 第3部 ステイクホルダーと中小企業 第11章 中小企業とコミュニケーション 第12章 中小企業と NPO 第13章 中小企業の連携による社会的価値の創出 ―就労困難者の就労支援をケースとして―. 第14章 中小企業と金融機関 第15章 中小企業ネットワークにおける相互学習・人材育成 ―京都試作ネットの事例―. 以上のように,本書は全体が第1部から第3部まで大きく3つの部分から成り,それぞ れがまた5つの個別の章に分けて論じられている。大事なことは,それらの大きな3つの 部分が一方では独自の内容を持つ独立したものでありながら,他方でそれらは決して切り 離された別々のものではなく,相互に密接な関連性を持って順次体系的に展開されている ことである。では,そうして3つの部分から構成された本論の中で,果たしてどのような 問題が取り扱われているのか,順を追って簡単に見てみよう。 先ず第1部は,全体としてそれに続く2つの部分を展開するための共通の基礎部分であ り,そこでは中小企業による CSR の実態調査が持つ狙いや方法について論じられている。 そのために第1から第5までの5つの章が当てられ,その中で実態調査の研究視角は一体 何か,また調査の目的と結果はどのようなものか,さらに調査の結果から中小企業の成長 とそれを齎す CSR ビジネスモデルとは何か, などの諸点が明らかにされている。 そこで 特に注目すべきは, 第1に中小企業 CSR の研究に関して6つの仮説が提示され, それが 実際の調査分析の結果を通して検証されている点である。その仮説のうちでは,例えば中 小企業において CSR 活動が企業成長にどのように関係しているのか, そして CSR 活動 が社会的要請であり,中小企業においても倫理的に避けられない課題になっていること, などが明らかにされている。また第2に注目すべき点として,実態調査の中からいくつか の具体的な現実の事例について論述されていることも見逃せない。単にアンケート調査に よって,マクロ的な傾向という特徴を捉えるだけでなく,いくつかの典型的な実際の事例 に焦点を当て,それを詳細に研究するという言わばミクロ分析を行うことによって,調査 内容の実態がより一層生き生きと理解できるのである。 次に,第2部では同じく5つの章が当てられ,その中でいわゆるサステナビリティと中 379 ─ 173( ) ─ .

(4) 第60巻 第2・3号. 小企業の関係が論じられている。第1部での基礎的な論述を踏まえて,いよいよ議論が本 書の本丸に入って行くことになるが, ここでの主旨は, 中小企業が CSR 活動を実践する ことによって,如何にして持続可能な社会を実現するのかということである。もともとサ ステナビリティ(持続可能性)なる概念は,国連の環境と開発に関する委員会での報告が出 発点となったが,その後急速に広く喧伝されるようになった。人間活動の一つである企業 活動も,自らを取り巻く地球上での自然環境との代謝関係によって成り立っている。人間 社会を維持し発展させるため,企業は自然環境に働きかけ様々な資源を利用して物財の生 産活動を行う。しかし,そうして企業の生産活動に不可欠な自然の恵みである水産資源, 化石燃料,金属資源など,それらはいずれも有限なものばかりである。われわれ人間は, 将来社会のために限りある資源を使い尽くすことなく,その持続可能性に配慮しなければ ならない。また,天然資源の持続可能性に配慮した活動は,何も企業にとって生産過程だ けに求められるわけではない。企業が生産した物財はやがて消費されるが,その過程で発 生する廃棄物の処理も持続可能でなければならない。だが,消費過程から発生する廃棄物 は最終的にゴミとして処理されるが,そのゴミ埋立地は有限であり,やがて将来はそれも 埋まってしまう。まさに企業は,自らの生産活動の入口と出口でサステナビリティに配慮 しなければならない。国民経済の中で主要な役割を演じる中小企業だからこそ,その CSR 活動の実践は重要な意味を持つ。 さらに本書の第3部に入ると,やはり5つの章を通して今度はステイクホルダーと中小 企業の関係が取り扱われる。 言うまでもなく CSR 活動を行う企業, それは紛れもなく社 会的存在である。企業は社会の中においてはじめて存在し活動しうる。企業を取り巻く社 会環境として企業との間で一定の利害関係を持つ人間社会,それを構成するものが様々な ステイクホルダーに他ならない。ここでは,そうしたステイクホルダーと企業との関係が 果たしてどのように形成されるのか,具体的な事例を通して明らかにされている。企業は ステイクホルダーとの間で,互いに信頼し合える良好な関係を構築して行くこと,それが 同時に企業にとって持続可能な社会づくりの条件となる。両者の間に相互信頼の関係を形 成するには, 企業からステイクホルダーに対して CSR を実践することが不可欠である。 本書では実際のステイクホルダーとして,企業内の人材である従業員,企業外では地方の NPO,ある地域の金融機関,さらには中小製造企業の事業共同体などが取り上げられ,そ こでの地域に密着した活動について事例研究がなされている。 このように本書において, 中小企業が力強く CSR を実践している実態が, 全体を通し て明らかにされている。ところで,我が国と同様に中小企業が伝統的に発展して,国民経 380 ─ 174( ) ─ .

(5) 足立辰雄 編著『サステナビリティと中小企業』(同友館,2013年3月)(田中). 済の中で重要な役割を演じている国にドイツがある。いま,奇しくもそのドイツにおける 中小企業が我が国でも注目されている。現に,経済産業省が発表した通商白書2013年版の 中でドイツの中堅・中小企業が大きく取り上げられ,成功を収めている優れた中堅・中小 企業として高く評価されている(経済産業省『平成25年版通商白書』平成25年6月)。特にその 中で興味深いのは,付加価値を大きく伸ばしてドイツ経済を牽引しているのは大企業では なく中小企業であり,またドイツでは中小企業が雇用を伸ばして歴史的に低い失業率に貢 献している,と論じられていることである。まさに中小企業こそが,CSR の一環である労 働者に対する雇用責任を積極的に果たしている。そうして我が国以外でも,中小企業が CSR という視点から注目される活動を展開しているのは心強い限りである。. 3. 本書の基本的特徴. 以上のような論述を踏まえて,ここでは本書が一体どのような基本的特徴を有している のか考えてみよう。それを私は,本書の研究方法と研究視角という二つの点に求めたい。 もちろん両者は無関係ではなく,互いに密接な関連性を持っている。なぜなら,一般にど のような研究方法を採るのか,それはどのような視角から研究するのかに規定されるから である。また逆に,そうして採用した研究方法が適切であること,それが研究視角の正し さを保証するものとなるからである。 では先ず,本書が採った研究方法とは一体どのようなものか。それは言わば「実態調査 と理論化の統一」と表現できるだろう。 本書は中小企業の CSR に関する理論上の研究と いうだけでなく,地道な根気のいる現実の実態調査を前提にし,そうした作業の基礎の上 に築かれた貴重な成果である。しかも,その実態調査は言わば二段階の方式で行われてい る。初めの第1段階は,中小企業家同友会の会員に対する全国レベルでのアンケート調査 であり,その上に第2段階として CSR 優良企業へのインタビュー調査がある。 それは, 全国的な規模でのマクロ分析と個別企業へのミクロ分析との結合といっても良いだろう。 一般的に言って,単なる理論上の研究成果は迫力に乏しく,また導かれた結論も説得力を 欠く場合がある。だが,本書はその弱点を克服した実証的な調査分析を踏まえたものであ り,導き出した結論の根底に企業の実態調査という裏付けを持っている。具体的で多様な 中小企業の実際の姿が,アンケート調査やインタビュー調査によって捉えられ,その結果 を整理した上で一定の結論を得るという,典型的な実証研究のスタイルをとっている。し かも,その過程では事前に幾つかの仮説を立て,調査分析を通してそれらを検証して行く 381 ─ 175( ) ─ .

(6) 第60巻 第2・3号. 手法も興味深い。以上のような研究方法のうちに本書の優れた特徴が現れており,それが 単なる理論化による成果とは違った力強さを持っている所以であろう。 では次に,本書が示している研究視角についてはどうか。私の考えでは,それは本書全 体のタイトルにも現れているように, 我が国の中小企業が CSR 活動の実践を通して, ど のように持続可能(サステイナブル)な社会づくりに貢献しているのか,という点に設定さ れている。この研究視角,実は本書が示しているだけでなく,これもまた奇しくもちょう ど時を同じくして財界の一つの団体である経済同友会が,同様の趣旨のことをメッセージ として表明している。すなわち,経済同友会の内部に社会的責任経営委員会があり,その 委員長は「企業は社会的責任経営を通じ持続可能な社会と企業の相乗発展を目指すべき だ」,という声明を打ち出している(経済同友会『経済同友』2012/ 8)。こうして経営学とい う学問の世界も,また経済界という実業の世界も,いずれにも企業の社会的責任を持続可 能性の概念と結びつけて考える動きが現れたこと,それは当然とはいえ非常に興味深い。 このような学界と財界との共通した方向性を契機にして,両者の間で積極的なコラボレー ションが生まれ,CSR の研究がより一層前進することを期待している。 こうして本書は, 中小企業の CSR 活動を対象にして, それがいかに社会全体の持続可 能性を実現させて行くのか,という研究視角を基本に据えている。そこで先ず,持続可能 性という概念についてより深く検討してみよう。もちろんその概念自体は,決して我が国 の中小企業から自生的に現れたものではなく,言わば地球規模で進んでいる自然環境の破 壊を食い止め,将来の世代のために豊かな資源を持つ地球を持続的に維持し発展させる, という考え方に基づいて国際的に提唱された概念である。その持続可能性を実現するため に,企業を含むすべての組織体の倫理的な活動の国際的な基準として,国際規格(ISO26000) が2010年に発効した。それは大気・土壌汚染の浄化対策や持続可能な資源利用といった環 境問題と,労働者への差別のない公平な雇用・処遇などの社会問題を解決するための社会 的責任に関する原則である。企業活動という資本の運動が持続可能であるためには,これ らの企業を取り巻く自然環境と社会環境への配慮が欠かせない。 では,その持続可能な自然と社会を実現するには,中小企業は一体どうすれば良いのか。 企業は自己の活動を通して,将来の世代のために自然や社会という環境を破壊せず保全し て,それらが抱える問題を解決する CSR を行わなければならない。 しかもその活動は, 同時に企業自身の発展や CSR を持続可能にするための条件を作り出すことになる。なぜ なら,もし自然や社会など企業を取り巻く環境が破壊されてしまうと,企業という組織体 もたちまち存続・発展できなくなるからである。 そうして企業の CSR 活動は, 一方で自 382 ─ 176( ) ─ .

(7) 足立辰雄 編著『サステナビリティと中小企業』(同友館,2013年3月)(田中). 然と社会という環境を持続可能にし,同時に他方では自らの発展を持続可能なものにする。 まさに企業の CSR 活動を媒介にして, 自然・社会と企業との間には相互に依存し合う関 係が存在することになる。そうした互いの依存関係こそが,本書の根底に脈々と流れてい る基本的な考え方であり,それはまた前述の経済同友会のメッセージにおいて「相乗発展」 という言葉で表現されていることでもある。 だが,以上のような相互依存の関係は,あくまで企業が社会総資本の立場に立ってはじ めて言えることである。現実には,すべての企業は社会総資本の一部であると同時に,そ れぞれ個々の利害で動く独立した個別資本でもある。そのような独立した一つの個別資本 という立場においては,間違いなく利潤原理こそが優位性を持つ。あらゆる個別資本は互 いに熾烈な競争関係に置かれ,常に利潤原理に支配されながら活動する。そのため,どう しても一時的あるいは短期的に利潤獲得の欲求を優先し,自然や社会の持続可能性という 考え方を後退させ,その結果,CSR に反する行動と知りつつも実行してしまう。厳しい競 争場裡に置かれた個別資本の立場には,CSR が優先されるという保証はどこにもない。こ こに同じ一つの企業が,社会総資本の一部であると同時に個別資本でもあるという根本的 に矛盾した二重性を持つ存在であることを忘れてはならない。現実の企業は,資本主義経 済の下で活動する限り,そうした客観的に存在する根本矛盾から逃れられないが,それを どうすれば少しでも克服して行けるのか,そこに CSR 活動が持つ基本的な課題がある。 以上のように,これまで述べてきた本書が持つ研究方法と研究視角に見られる特徴,そ れらはいずれも類書に存在しない優れた側面である。そのため,率直に言って私も多くの ものを本書から学ぶことができた。しかし同時に,今後さらに一層この研究を前進させて いくためには,改善すべき側面があることも事実である。何も褒め立てるだけが書評の果 たすべき役割ではない。最後に改善すべき点を合わせて指摘することによって,評者とし て最低限の責任を果たして置きたい。 先ず第1には, 本書の全体を通して感じたことだが, 中小企業による CSR 活動の調査 分析から得られた結果を理論的に整理する際に,一体なぜそのような結果になったのか, その原因や因果関係をより一層深く掘り下げて究明するという課題である。 また第2には, これから中小企業の CSR 活動を持続的に, しかもより一層旺盛に展開 して行くには,果たしてどのような政策や条件が必要となってくるのか,中小企業自身が 自ら開発すべき政策や方法,あるいは国や自治体,さらには様々なステイクホルダーが実 施すべき総合的な方策と行動も含めて明らかにしなければならない。. 383 ─ 177( ) ─ .

(8) 第60巻 第2・3号. 4. お わ り に. この書評を閉じるにあたって,いくつかの点に亘って私見を述べてみたい。書評という 趣旨から少しばかり逸脱するが,それは私が日頃から中小企業の CSR について考えてい ることでもあり,どうかそのような身勝手な試みをお許し願いたい。 先ずはじめに, 中小企業が CSR を実践する場合, 果たしてどのような点に留意して行 えばよいのか,言わば CSR 活動の心得とでも称しうるものである。したがって,それは 中小企業が CSR の根本に据えるべき行動原則でもあるが,それには次のような3つのも のが考えられる。第1に,「工夫をこらした身の丈サイズの CSR」である。大企業に比べ て十分な経営上の余裕がない中小企業が CSR を行うには,決して無理や背伸びをせず, 工夫しながら自らの身の丈に合った活動に徹する必要がある。 第2に,「やれることから 始める CSR 」である。CSR といっても何も特別の活動が求められるわけではない。多く の中小企業にとって,毎日の生産や販売の本業を無事に行うことが大事であり,CSR もで きるだけその本業の中で,あるいはそれと結びついた簡単な活動から始めるべきである。 そして第3に,「連携の強みを生かした CSR」である。もちろん中小企業は日常の本業の 中で連携する必要があるが,CSR においても一企業では出来ない活動を互いに共同して取 り組むことで,その可能性が大きく開けてくる。それこそ,利害対立の激しい大企業より も連携しやすい中小企業の特性を生かした CSR である。 いよいよ最後になるが,本書では直接扱われていない“大企業”に告ぐ。我が国の大企 業は先ず本書の内容に触れ,本書から多くのことを学ぶべし。経済的な条件面で不利な状 況にある中小企業でさえ,これほど優れた CSR 活動を実践している。ならば,圧倒的な 力量を持つ大企業には,どれほど有意義な活動を期待してもし過ぎることはない。だが, 悲しいかな現実は全く逆である。我が国の大企業こそ,CSR に反する様々な企業不祥事を 発生させる温床となっている。たとえば,誰もがその名を知るほど著名な大企業は,労働 者に低賃金と長時間労働を強制し,正規労働者を非正規労働者に置き換えて賃金コストを 抑え,挙げ句の果てにはリストラで彼らを簡単に使い捨てにするようなブラック企業であ る。また取引先の中小企業に対しては,仕入れる部品の単価を極限まで切り下げ買い叩い て苦しめる。さらには,そうして大儲けしながら自ら納めるべき税金をあの手この手で脱 税し,またタックスヘイブンを利用して合法的に課税を逃れ,それが国家財政を逼迫させ る一因となっている。そして,自らは国から特別の免税措置を受けながら,逆に庶民を苦 384 ─ 178( ) ─ .

(9) 足立辰雄 編著『サステナビリティと中小企業』(同友館,2013年3月)(田中). しめる消費税の増税を急げと政府に働きかけた大企業,そこにはステイクホルダーの利益 を大切にする CSR の片鱗すら見出せない。そうして溜め込んだ莫大な内部留保のわずか な額を活用するだけで,どれほど社会の持続的な発展が可能になることか。大企業よ,優 れた中小企業の実践に学び,すぐさま CSR 活動の模範となるべし. 179( ) 385 ─ ─ .

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