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<論説>債権の原因となった契約の否認に関する若干の問題

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(1)債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 債 権 の原 因 とな った契 約 の否 認 に 関 す る若 干 の問 題 平. 一. .は. じ め. 岡. 建. 樹. に. 破 産 債 権 者 は,通 常 は対 価 を 得 る前 に破 産 者 に物 を 売 った り,仕 事 を し た り,金 銭 を 貸 付 け る等 の 与 信 を 与 え たが 破 産 者 の 破 産 に よ り対 価 の 支 払 いを 受 け られ な か っ た り弁 済 を 受 け る こ とが 出来 な か った 者 で あ るか ら, 破 産 債 権 の 原 因 とな っ た法 律 行 為(以 下,原 因 行 為 と い う)が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ と は あ ま りな いが,無 償 行 為 の 場 合 に この よ うな 事 態 が 生 じる こ とが あ る。 実 際 に判 例 に現 れ た事 例 と して は,破 産 者 が 支 払 の 停 止 等 が あ った 後 ま た は その 前6ケ 月 以 内 に した連 帯 保 証 に基 づ く保 証 債 務 支 払 請 求 権 が 破 産 債 権 と して 届 け 出 られ たの に対 し,破 産 管 財 人 が 連 帯 保 証 契 約 が 無 償 否 認 (160条3項. 一 旧破 産 法72条5項. 。 な お,以 下 で は現 行 破 産 法 の 条 文 は法 律. 名 を 付 けず,旧 破 産 法 の 条 文 は 旧○ ○ 条 と して 引 用 す る)の 対 象 とな る と して 異 議 を述 べ た もの が 多 い が(1),同様 の事 態 は破 産 者 のす る債 務 引 受, 贈 与,す で に時 効 消 滅 した債 務 の 承 認(2)などの 際 に も起 こ り得 る。 (1)こ の よ う な保 証 や 連 帯 保 証 が無 償 否 認 の対 象 とな る か 否 か に つ い て は 議 論 が あ るが,判 例 は原 則 的 に は こ れ を肯 定 して お り(大 判 昭 和11年8月10日 巻1680頁,最. 判 昭 和62年7月3日. 民 集41巻5号1068頁,最. 民 集15. 判 昭 和62年7月10日. 金 法1171号25頁 な ど),本 稿 は この 判 例 の 立 場 を 前 提 と して い る。 (2)破 産 者 が 支 払 の停 止 等 が あ った後 ま た は そ の前6ケ 月 以 内 に した 時 効 中 断 事/. 1.

(2) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. 本 稿 は,自 然 人 の 破 産 事 件 で 債 権 者 が 連 帯 保 証 債 務 履 行 請 求 権 を 破 産 債 権 と して 届 け 出 た と こ ろ,そ の 原 因 た る連 帯 保 証 契 約 が 支 払 い停 止 等 の 後 ま た は その 前6ケ 月 以 内 に締 結 され た もの で 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る場 合 に生 じる若 干 の 問 題 につ いて 検 討 を す る こ とを 目的 とす る もの で あ る。 私 が 調 べ た と こ ろで は,現 行 法 で この よ うな 連 帯 保 証 契 約 の 否 認 が 問 題 とな っ た判 例 は まだ 公 刊 され て いな い よ うで あ るが,無 償 否認(160条3項 一 旧72条5項)に. つ い て は現 行 法 で は特 に改 正 さ れ て い な い の で(3) ,旧 法 に. お け る議 論 は多 くの 場 合 につ いて その ま ま現 行 法 下 で も あて は ま る もの と 思 わ れ る。 な お,本 稿 で 取 り上 げ た問 題 の 一一 部 は会 社 更 生 手 続,民 事 再 生 手 続 で も 生 じ得 るが,本 稿 で は破 産 手 続 にか ぎ って 検 討 す る。. 二.届. 出破 産 債権 の原 因行 為が 否 認権 行 使 の対 象 とな る こ と. と認 否. 届 出 破 産 債 権 に 対 して は,破 条4項,121条1項)届. 産 管 財 人 が そ の 認 否 を し(117条1項,119. 出を した他 の 破 産 債 権 者 も異 議 等 を 述 べ る こ とが で. き る が(118条1項,119条5項,121条2項,122条2項. 一破産者の異議 に. つ い て は 本 稿 の テ ー マ と 関 係 が な い の で 割 愛 す る),実. 際 に は他 の破 産 債. 権 者 が 異 議 を 述 べ る こ と は 稀 で あ る の で,ま 検 討 し,そ. ず 破 産 管 財 人 の 認 否 につ いて. の 後 に 他 の 破 産 債 権 権 者 に よ る 異 議 に つ い て 検 討 し,さ. らに そ. \ 由 と して の 債 務 の承 認 につ い て は,債 権 者 は債 務 者 が債 務 を 承 認 す れ ば そ れ 以 上 の 時 効 中断 手 続 を と らな い の が普 通 で あ る か ら,債 務 の 承 認 後 に 債 務 者 に破 産 手 続 が 開 始 した場 合 に債 務 の承 認 を否 認 す る こ とが で き る とす るの は,債 務 の 承 認 後 債 権 者 に よ る破 産 手 続 参 加 前 に消 滅 時効 期 間 が 経過 した 破 産 債 権 者 に 不 測 の 損 害 を 与 え る こ と にな るの で,妥 当 で はな い と思 う。 (3)伊 藤 眞=松 下 淳 一=山 本 和 彦 編 「新 破 産 法 の基 本 構造 と実 務 』 ジ ュ リス ト増 刊(2007年)390頁(松. 下 淳 一・ 発 言,小 川 秀 樹 発 言)。. 2.

(3) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. の 後 に破 産 管 財 人 の す る認 否 及 び他 の 破 産 債 権 者 が す る異 議 の 内容 につ い て 検 討 す る。. 1.異. 議の必要性. 旧法 下 で は,届 け 出 られ た 破 産 債 権 の 原 因 行 為 に否 認 事 由 が あ る と き は,破 産 管 財 人 は異 議 を 述 べ て お く必 要 が あ り,異 議 を 述 べ な い ま ま破 産 債 権 と して確 定 した 後 は否 認 権 は行 使 で きな くな る とさ れ て い た が(4),こ の 点 は現 行 法 につ いて も 同様 に解 され て い る(5)。. 2.債. 権認否前の否認権行使の要否. と こ ろで,届. 出破 産 債 権 に対 す る破 産 債 権 者 の 異 議 及 び破 産 者 の 異 議 に. は理 由を 付 さな けれ ばな らな い と され て い る一 方(破 産 規 則39条1項,43 条1項),破. 産 管 財 人 が認 め な い場 合 に つ いて は この よ うな 規 定 が な い の. で,管 財 人 は認 めな い理 由を 付 す こ とを 要 しな い と解 され る。 その 理 由 と して 説 か れ る と こ ろ は,破 産 管 財 人 が 職 務 の 執 行 に関 して 善 管 注 意 義 務 を 負 う こ と(85条1項),裁. 判 所 の監 督 に服 して い る こ と(6>,破. 産 管 財 人 に よ る異 議 の 場 合 は 濫 用 の 恐 れ が な い こ と(7)が挙 げ られ て い る が,旧 法 下 で も破 産 管 財 人 の 届 出破 産 債 権 に対 す る異 議 に は理 由を 付 さな. (4)山 木 戸 克 巳 「破 産 法 』(現 代 法 律 学 全 集24)(1974年,青. 林 書 院 新 社)245∼. 246頁,谷 口安 平 『倒 産 処 理 法(第2版)」(1980年,筑 摩 書 房)297頁,中 野貞 一 郎=道 下 徹 編 『基 本 法 コ ンメ ンタ ー ル破 産 法(第2版)』(1997年 ,日 本 評 論 社)123頁(池. 田辰 夫),同274頁(栗. (5)伊 藤 眞 『破 産 法(第4版. 田隆)。. 補 訂 版)」(2006年,有. 斐 閣一 以 下 伊 藤 ・前 掲 と して. 引 用)448頁,中 島弘 雅 『体 系 倒 産 法1破 産 ・特 別 清 算 』(2007年,中 一 以 下 中島 ・前 掲 と して 引 用)169頁 。. 央 経済社. (6)伊 藤 ・前 掲443頁 注(⑨。 (7)竹 下 守 夫 代 表 編 集 『大 コ ン メ ン ター ル 破 産 法 」(2007年,青 大 コ メ と して 引 用)486頁(井. 上 一・ 成)。. 3. 林書院. 以下前掲.

(4) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. くて も よ い と され て い た(8)(9)。 しか し破 産 管 財 人 が 認 めな い理 由を 付 さな くて も よ いか らと い って 理 由 もな く届 出破 産 債 権 を 認 めな い こ と は許 され ず,認. めな い た め に は それ な. りの 理 由が な けれ ばな らな いの は 当然 で あ る。 それ で は この 場 合,破 産 管 財 人 は どの よ うな 理 由 に よ って,原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る届 出破 産 債 権 を 認 めな い とす るの で あ ろ うか 。 イ. 否 認 権 の 性 質 につ いて,否 認 の 要 件 が あれ ば特 別 の 意 思 表 示 が な く. て も 当然 に否 認 の 効 果 が 発 生 す る と解 す れ ば,こ の 問 題 は生 じな い。 しか し現 在 の 通 説 は,否 認 権 を 実 体 法 上 の 形 成 権 と して い るの で あ るか ら⑩,原 因行 為 が否 認 権 行 使 の対 象 とな る場 合 で も,否 認 権 が行 使 され る まで は破 産 債 権 は存 在 して い る こ と にな る。 したが って 通 説 の 立 場 に立 つ か ぎ り,破 産 管 財 人 が 債 権 調 査 の 時 点 で 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して 届 出破 産 債 権 を 認 めな い た め に は,債 権 調 査 の 前 に(ま た は遅 くと も債 権 調 査 と 同時 に一 以 下 一一 括 して 債 権 調 査 前 等 と い う)否 認 権 が 行 使 され て いな けれ ばな らな い はず で あ る。 ロ. で は,債 権 調 査 前 等 に原 因 行 為 につ いて 否 認 権 が 行 使 され て い る と. は どの よ うな 場 合 で あ ろ うか 。 a破. 産 管 財 人 は否 認 権 を裁 判 外 で 行 使 で き る とす る説(ll)からす れ ば,. (8)山 木 戸 ・前 掲245頁,谷 (9)も. 口 ・前 掲295頁 。. っ と も実 務 上 は,破 産 管 財 人 が認 め な い場 合 も,そ の理 由 を 認 否 表 に簡 潔. に記 載 し て い る(大 阪 地 方 裁 判 所 ・大 阪 弁 護 士 会 新 破 産 法 検 討 プ ロ ジ ェ ク ト チー ム編 『新 破 産 法 対 応 破 産 管 財 手 続 の 運 用 と書 式 」(2004年,新 下 「運 用 と書 式 」 と して 引 用)229頁,457頁 (10)旧 法 につ き 山木 戸 ・前 掲176頁,池 407頁,中. 島 ・前 掲362頁,宗. 日本 法 規 一 以. 書 式615。. 田 ・前 掲103頁 。 現 行 法 に つ き 伊 藤 ・前 掲. 田親 彦 『破 産 法 概 説(新. 訂 第4版)』(2008年,慶. 慮 義 塾 大 学 出版 会 一 以 下 宗 田 ・前 掲 概 説 と して 引 用)403頁. 。. (ll)伊 藤 ・前 掲413∼414頁 。 な お 旧 法 につ き霜 島 甲 一 『倒 産 法 体 系 』(1990年,勤 草 書 房)338頁,川. 嶋 四郎 「破 産 法 に お け る否認 の 効 果 」石 川 明. 4. 田 中 康 夫=山/.

(5) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 破 産 管 財 人 は債 権 調 査 前 等 に裁 判 外 で 否 認 権 を 行 使 した 上 で,届. 出破 産 債. 権 を 認 めな けれ ば よ い こ と にな るか ら,特 に問 題 は生 じな い。 しか し旧 法 下 の 多 数 説 ・判 例 は,旧76条(173条1項)の. 文 言 と,否 認. の 要 件 の 存 否 が 裁 判 に よ って 確 定 され な い こ とを 理 由 と して,否 認 権 の 裁 判 外 行 使 を否 定 して お り⑫,現 行 法 で も裁 判 外 行 使 を 否 定 す る見 解 が 有 力 で あ る か ら⑬,こ の 立 場 か ら は こ の方 法 に よ る事 前 の 否 認 権 行 使 は で きな い こ と にな る。 bこ 条)を. の場 合 に,予 め 破 産 管 財 人 が 原 因行 為 につ い て 否 認 の請 求(174 した うえ で,債 権 調 査 手 続 に お いて 届 出破 産 債 権 を 認 めな い こ とが. 考 え られ る。 しか し私 が 調 べ た範 囲 で は,債 権 調 査 前 等 に予 め否 認 の 請 求 を して いた 場 合 だ け届 出破 産 債 権 を 認 めな いで お くこ とが で き る と した 見 解 は見 あた らな か っ た。 しか し,破 産 管 財 人 が 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して 届 出破 産 債 権 を 認 めな い た め に は債 権 調 査 前 等 に原 因 行 為 が 否 認 され て いな けれ ばな らな い とす るの で あれ ば,現 行 法 で は この 方 法 が も っ と も 妥 当な もの で あ ろ う。 \ 内 八 郎 編 『破 産 ・和 議 の実 務 と理 論 」 判 夕 臨 時 増 刊830号(1994)120頁. 。 もっ. と も これ ら の説 が,本 稿 で 問題 に して い る よ うな否 認 権 行使 に つ い て も裁 判 外 で 行 使 で き る との 趣 旨か 否 か は 明 確 で は な い。 ⑰. 大 判 昭 和5年11月5日 1249頁,大. 法 律 新 聞3204号15頁,大. 判 昭 和11年7月31日. 判 昭 和6年12月21日. 民 集15巻1547頁,東. 民 集10巻. 京 地 判 昭和45年9月8日. 時619号73頁 。 中 田淳 一 『破 産 法 ・和 議 法 』(法 律 学 全 集37)(1959年,有 170頁,山. 木 戸 ・前 掲218頁(但. あ る とす る),谷 頁(宗 ⑬. し立 法 論 と して は裁 判 外 の行 使 を 認 め るべ きで. 口 ・前 掲275頁,斎. 法(第3版)(上)」(2000年,青. 藤 秀 夫=麻 上 正 信=林 屋 礼 二 編 「注 解 破 産. 林書 院. 以 下 注 解(上)(下)と. 田親 彦)一 以 下 宗 田 ・前 掲 注 解 と して 引 用,池. 大 コ メ713頁(田. 頭 章 一),柴. して 引用)518. 田 ・前 掲133頁 。. 田祐 之=瀬 戸 英 雄 「 否認権行使 の手続」山本克. 己=山 本 和 彦=瀬 戸 英 雄 編 『新 破 産 法 の 理 論 と実 務 」(2008年,判 社)286頁,宗. 判 斐 閣). 田 ・前 掲 概 説416頁 。. 5. 例 タイムズ.

(6) 近畿大学法学. cな. 第57巻 第4号. お 旧法 で は否 認 の 請 求 の 制 度 はな か っ たか ら,届 出破 産 債 権 に対. す る異 議 を 述 べ る た め に は債 権 調 査 前 等 に否 認 権 を 行 使 して おか な けれ ば な らな い とす るの で あれ ば,破 産 管 財 人 か ら否 認 権 行 使 を 理 由 とす る債 務 不 存 在 確 認 の 訴 え を 提 起 す る しか な く,現 に破 産 管 財 人 か ら提 起 され た債 務 不 存 在 確 認 の 訴 え の 例 は あ っ た⑭。 しか し これ らの 事 例 が,「 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 と な る債 権 が 破 産 債 権 と して 届 け 出 られ た場 合 に,こ れ に対 して 異 議 を 述 べ る た め に は予 め債 務 不 存 在 確 認 の 訴 え を 提 起 して そ こで 否 認 権 を 行 使 して おか な けれ ば な らな い」との見 解 か ら提起 され た もの か 否 か は,判 示 か らは不 明 で あ る。 そ して 私 の 調 べ たか ぎ りで は,旧 法 下 で,原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る債 権 が 届 け 出 られ た場 合 に,破 産 管 財 人 が 異 議 を 述 べ る た め に は予 め破 産 管 財 人 が その 債 権 につ いて 債 務 不 存 在 の 訴 え を 提 起 して 原 因 行 為 に つ いて 否 認 権 を 行 使 して いな けれ ばな らな い とす る見 解 は見 あ た らな か っ た。 dむ. しろ 旧法 下 で は,原 因 行 為 の 否 認 を 理 由 とす る破 産 管 財 人 の 破 産. 債 権 に対 す る異 議 に対 して 提 起 さ れ た 破 産 債 権 確 定 の 訴 え(旧244)で. 否. 認 権 行 使 の 時 期 が 明 らか な 判 例 は,い ず れ も破 産 債 権 確 定 訴 訟 の 第 一一 審の 第 一一 回 口頭 弁 論 に お いて 否 認 権 が 行 使 され て い る⑮。 (14)旧 法 下 で 破 産 管 財 人 か ら原 因行 為 の無 償 否 認 を理 由 の一 つ と して 提 起 され た 破 産 債 権 不 存 在 確 認 訴 訟 の 例 と して 東 京 高 判 昭37年6月4日. 判 夕134号55頁 一. 但 し訴 え 提 起 が 債 権 調 査 前 か後 か,ま た被 告 が この 債権 を破 産 債 権 と して 届 け 出て い た か は不 明,京 都 地 判 昭和56年2月25日. 金 商780号20頁. 被 告 の破 産 債. 権 届 出前 に債 務 不 存 在 確 認 請 求 訴 訟 が 提 起 され た 事 例 。 (15)東 京 高 判 昭 和56年3月18日. 判 夕446号111頁,名. 夕567号177頁 。 な お 東 京 地 判 平 成3年7月26日. 古 屋 高 判 昭 和60年7月18日. 判. 判 タ777号236頁 は破 産者 が 破 産. 宣 告 前 に した不 動 産 の譲 渡 及 び物 上 保 証,連 帯 保 証 に つ い て,破 産 管 財 人 が 提 起 した 否 認 権 行 使 を理 由 とす る不 動 産 譲 渡 及 び物 上 保 証 に つ い て な され た 各 登 記 の 抹 消 登 記 手 続 請 求 訴 訟 に お い て破 産 者 の した連 帯 保 証 に つ い て も否 認 す る 旨の 主 張 を し,そ の 後 の債 権 調 査 期 日に お い て そ の 訴訟 の被 告 で あ る債 権 者 が/. 6.

(7) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. eま. た前 記(二.1.)の,「. 届 け 出 られ た 破 産 債 権 の原 因行 為 に否 認 事. 由 が あ る とき は破 産 管 財 人 は 異 議 を 述 べ て お く必 要 が あ る」 とす る 学 説 も,私 が 調 べ たか ぎ りで は,そ の た め は債 権 調 査 前 に否 認 権 行 使 が され て いな けれ ばな らな い とす る もの はな か っ た。 fこ. の よ う にみ る と,否 認 の 請 求 の 制 度 が な か っ た 旧法 下 で は,破 産. 管 財 人 が 届 出破 産 債 権 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る と して 異 議 を 述 べ る場 合 に,債 権 調 査 前 等 に否 認 権 が 訴 え ま た は抗 弁 に よ り行 使 され て い る こ とは要 件 で は な い と考 え られ て い た と思 わ れ⑯,現 行 法 成 立 の 過 程 で も この 点 を 意 識 して 改 正 が 行 わ れ た形 跡 はな い。 そ うす る と,破 産 管 財 人 は債 権 調 査 前 等 に否 認 権 を 行 使 して 初 めて 届 出 破 産 債 権 に 対 して異 議 を 述 べ(旧 法),ま. た は これ を 認 め な い(現 行 法). こ とが で き る と は,旧 法 で も,ま た現 行 法 で も考 え られ て お らず,ま ず 届 出破 産 債 権 に対 して 異 議 を 述 べ(旧 法),ま. た は これ を認 め ず(現 行 法),. これ に対 して 届 出破 産 債 権 者 の 側 で 破 産 債 権 確 定 の 訴 え の(旧 法)ま た は 破 産 債 権 査 定 の 申立 て(現 行 法 一 な お破 産 債 権 査 定 手 続 にお いて も破 産 管 財 人 が 否 認 権 を 行 使 で き る こ と は後 述)な. い し査 定 に対 す る異 議 の 訴 え が. あれ ば,そ こで 破 産 管 財 人 が 抗 弁 と して 届 出破 産 債 権 の 原 因 行 為 につ いて 否 認 権 を 行 使 す るの が 通 常 の 形 と考 え られ て い た と思 わ れ る。. \ 届 け 出 た破 産 債 権 に対 して破 産 管 財 人 が異 議 を述 べ,そ の債 権 者 か ら破 産 債 権 確 定 反 訴 が 提 起 され た事 案 で あ り,連 帯 保 証 契 約 に つ い て も否 認 す る 旨の 主 張 が 債 権 調 査 期 日 に お け る破 産 管 財 人 の異 議 よ り前 に さ れ て は い るが,抹 消 登 記 手 続 請 求 訴 訟 に お いて,訴 訟 物 に な って い な い連 帯 保 証 債務 の 原 因 行 為 も否 認 す る 旨の 主 張 が され た か らと い っ て,訴 え に よ り否 認 権 が行 使 され た とい え る か は疑 問 で あ る。 ㈹. 破 産 債 権 確 定 訴 訟 に お い て抗 弁 と して否 認 権 が行 使 で き る こ とを 明 言 す る も の と して,谷 (1966年,青. 口 ・前 掲303頁,兼. 子 一=恒. 林 書 院 新 社)136頁,191頁. 田文 次 「 破 産 ・和議(改. 訂 増 補 版)」. が あ る が,こ れ らの 見 解 は破 産 債 権 に対. す る異 議 が 否 認 権 行 使 に先 行 して い る こ とを 前 提 と して い る こ と にな る。. 7.

(8) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. ま た173条1項(旧76条)が. 抗 弁 に よ る否 認 権 行 使 を定 め て い るの も,. この よ うな 形 で の 否 認 権 行 使 を 想 定 した もの と考 え る こ とが で き る。 ロ. 原 因 行 為 が ま だ否 認 され て いな いの に破 産 管 財 人 が 届 出破 産 債 権 を. 認 めな い論 拠 と して は,次 の よ うな もの が 考 え られ る a旧. 法 下 で は,届 出破 産 債 権 が 存 在 して い る に もか か わ らず,破 産 管. 財 人 が 異 議 を述 べ る と い う こ とが あ っ た。 それ は次 の よ うな 場 合 で あ る。 iA振. 出の 約 束 手 形 を 所 持 人Bが 取 引 銀 行cで 割 引 い た後,手 形 の 満. 期 前 にBに つ いて 破 産 宣 告 が あ っ た場 合 に,そ の 手 形 の 満 期 が 破 産 債 権 届 出期 間 よ り後 で あれ ば,Aの. 信 用 状 況 か ら見 て その 手 形 が 満 期 に決 済 され. る可 能 性 が 高 い場 合 で も,CがBの. 破 産 事 件 に お いて 銀 行 取 引 約 定 に基 づ. く手 形 買 戻 請 求 権 を破 産 債 権 と して 届 け 出 る場 合 が あ り,こ の 場 合 に破 産 管 財 人 が 債 権 調 査 の 時 点 で その 届 出破 産 債 権 が 存 在 して い る と して これ を 認 めて しま う と,手 形 が 満 期 にAに よ って 決 済 され た後 にCが 破 産 債 権 の 届 け 出 を取 下 げな けれ ば破 産 管 財 人 か ら請 求 異 議 の 訴 え を 提 起 す る必 要 が あ る こ とか ら,破 産 管 財 人 が と りあえ ず 異 議 を 述 べ て お いて,満 期 にAが 手 形 を決 済 しな い場 合 に は異 議 を 取 下 げ る,と い う と い う こ とが 行 わ れ て い た。 同様 に,相 殺 の 自働 債 権 と な る可 能 性 が あ る 債 権 が 届 け 出 られ た場 合 も,異 議 を述 べ な いで 確 定 させ た後 に債 権 者 が 相 殺 権 を 行 使 しな が ら破 産 債 権 の 届 出 を取 下 げな けれ ば 同様 の 事 態 とな るの で,こ の よ うな 債 権 に対 して 破 産 管 財 人 が 異 議 を 述 べ る こ とが あ っ た。 ii破. 産 手 続 に非 協 力 的 な 債 権 者 の 協 力 を 取 り付 け る た めや,そ の 届 出. 破 産 債 権 者 が その 破 産 事 件 に お け る別 件 で 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る行 為 を した者 で あ る場 合 に,別 件 で の その 債 権 者 との 話 し合 いを 有 利 に進 め る こ と を 目的 と して 異 議 を述 べ,そ の 後 に債 権 者 との 間 で 話 し合 いが で きれ ば 8.

(9) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 異 議 を 撤 回 す る と い う,い わ ゆ る戦 略 的 異 議 と言 わ れ る もの が あ る㈱ 。 b破. 産 債 権 確 定 の 訴 え の 出訴 期 間 に も破 産 管 財 人 の 異 議 の 撤 回 の 時 期. に も制 約 が な か っ た 旧法 下 と違 い,破 産 債 権 査 定 の 申立 期 間 に制 約 が あ り (125条2項),破. 産 管 財 人 の 異 議 撤 回 が い つ まで で き るか につ い て も議 論. が あ る⑲現 行 法 下 で は,旧 法 下 に比 べ て この よ うな 戦 略 的 異 議 が 認 め られ る場 合 は 旧法 下 よ りは少 な くな る と思 わ れ るが ⑳,現 行 法 で も これ を 積 極 的 に認 め る見 解 も あ る⑳。 新 法 下 で も この よ うな 戦 略 的 異 議 が 許 され るの で あれ ば,原 因 行 為 が ま だ 否 認 され て いな い債 権 調 査 の 時 点 で も,将 来 の 破 産 債 権 査 定 また は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え に お いて 破 産 管 財 人 が 否 認 権 を 行 使 す る こ とを 視 野 に 入 れ て,こ の よ うな 届 出破 産 債 権 に対 して 異 議 を 述 べ る こ と も許 され る と. ⑰. 戦 略 的 異 議 を肯 定 す る もの と して注 解(下)509頁(中 産 法(新. 版)」340頁,西. (中)」(2008年,金. 謙 二=大. 島 弘 雅),伊. 藤 眞 「破. 野 祐 輔 編 「破 産 ・民 事 再 生 の 実 務(新. 融 財 政 事 情 研 究 所)156頁(大. 版). 野 祐 輔)。 旧 法 下 で の 戦 略 的 異. 議 否 定 説 と して 司 法 研 修 所 編 『破 産 事 件 の処 理 に 関す る実 務 上 の諸 問題 」(1985 年,法 曹 会)208頁. 。 な お 旧 法 下 で,霜 島 ・前 掲454頁,栗. 田 ・前 掲274頁 は,資. 料 が 不 足 して い る場 合 に資 料 の提 出 を促 す た め に す る場 合 の い わ ゆ る暫 定 的 異 議 の み を 認 め て お り,戦 略 的 異 議 否 定 説 と して 挙 げ て られ て い る。 ㈹. な お,戦 略 的 異 議 の実 情 につ い て は,棚 瀬 孝 雄=伊 藤 眞 『企 業 倒 産 の 法 理 と 運 用 」(1980年,有. ⑲. 斐 閣)79頁. 以 下 に興 味 深 い 記 述 が あ る。. こ こで 立 入 る余 裕 は な い が,前 掲 『新 破 産 法 の基 本 構 造 と実 務 」163∼164頁 に この 点 につ い て の 議 論 が あ り(松 下 淳 一・ 発 言,山 本 和 彦 発 言,田 原 睦 夫 発 言, 花 村 良 一 発 言,伊 藤 眞 発 言),ま た 釜 田佳 孝 「新 破 産 法 下 にお け る破 産 管 財 人 の 異 議 と その 撤 回 につ い て」 今 中利 昭先 生 古 希 記 念 『 最 新 倒産 法 ・会 社 法 を め ぐ る実 務 上 の 諸 問 題 」(2005年,民. ⑳. 事 法 研 究 所)387頁. 以 下 に詳 細 な 検 討 が あ る。. 釜 田 ・前 掲374頁 ∼383頁 。 前 掲 『運 用 と書 式 」227頁 は,暫 定 的 異 議 を 述 べ る と破 産 債 権 査 定 の 申立 てが 頻 発 して そ の答 弁 に要 す る事 務 負 担 が 多 くな る こ と を 理 由 に,現 行 法 下 で は暫 定 的異 議 は原 則 と して行 わ な い と して い るが,戦 略 的 異 議 につ いて も同 様 で あ ろ う。. ⑳. 伊 藤 ・前 掲447頁,中. 島 ・前 掲165頁,園. 裁 判 実 務 大 系28(2006年,青. 尾 隆 司=中 島 肇 編 『新 版 破 産 法 」 新 ・. 林 書 院)426∼427頁(瀬. 9. 戸 英 雄)。.

(10) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. 考 え る こ と もで き る四。 c実. 際 の 運 用 に よ る解 決. も っ と も この 問 題 は,理 論 的 に どの よ う に構 成 す るか は と もか く,実 務 上 は問 題 に はな らな い と思 わ れ る。 な ぜ な ら前 記 の よ うに(二.1.),届. 出 破 産 債 権 に対 して異 議 を述 べ な い. で 確 定 させ て しま う と その 後 に否 認 権 を 行 使 す る こ と はで きな いの で あ る か ら,届 出破 産 債 権 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな るの で その 届 出破 産 債 権 につ いて は他 の 破 産 債 権 者 と平 等 な 配 当を 受 け させ るの は妥 当で は な い と考 え る破 産 管 財 人 と して は,と もか くこれ を 認 めず に確 定 を 阻 止 し よ う とす るで あ ろ う。 そ して 認 め られ な か っ た届 出破 産 債 権 者 が 「まだ 原 因 行 為 が 否 認 され て お らず,し. たが って 現 存 して い る破 産 債 権 を 認 めな いの は不 当で あ る」 と. 主 張 しよ う と して も,破 産 債 権 者 が その 主 張 を す る場 と して は 旧法 下 で は 破 産 債 権 確 定 の 訴 え,現 行 法 で は破 産 債 権 査 定 の 申 立 て(125条)と に対 す る異 議 の 訴 え(126条)し. 査定. か な く,こ れ ら の手 続 に お いて は破 産 管. 財 人 は否 認 権 を行 使 で き るか ら,債 権 調 査 の 段 階 で は まだ 否 認 権 が 行 使 さ れ て いな か っ た と して も,破 産 債 権 確 定 の 訴 え ま た は破 産 債 権 査 定 ま た は 査 定 に対 す る異 議 の 訴 え に お いて 裁 判 所 が 判 断 す る と き に はす で に否 認 権 が 行 使 され て い る こ と にな るの で,事 実 上 問 題 は生 じな い こ と にな る㈱。 この 問 題 が 従 来 あ ま り議 論 され て いな か っ たの は,実 務 上 は この よ う に 問 題 が な か っ たか らで あ る と思 わ れ る。. (22)釜 田 ・前 掲378頁 は この こ とを 明 言 す る。 ⑳. 結 局 これ は,こ の よ う な場 合 に お け る破 産 管 財 人 の異 議 を,戦 略 的 異 議 の 一 つ と して 認 め る こ と にな るで あ ろ う。. 10.

(11) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 3.破. 産 債 権 査 定 手 続 にお け る否 認 権 行 使. な お,破 産 債 権 査 定 手 続 は訴 え で も否 認 の 請 求 で もな いか ら,破 産 債 権 査 定 手 続 に お いて 破 産 管 財 人 が 否 認 権 を 行 使 で き るか が 一 応 は問 題 とな り 得 る。 しか し否 認 の 請 求(174条)に. み られ る よ う に,現 行 法 は 決 定 手 続 にお. け る否 認 権 行 使 を 認 めて い るか ら,破 産 債 権 査 定 手 続 にお いて 破 産 管 財 人 が 否 認 権 を 行 使 した場 合 は,こ こで 否 認 の 請 求 を した と考 え る余 地 が あ る こ と,破 産 債 権 査 定 手 続 で は破 産 管 財 人 の 否 認 権 行 使 を 認 めず に届 出破 産 債 権 の 存 在 を 認 め る査 定 を し,こ の 査 定 に対 す る異 議 の 訴 え にお いて 初 め て 破 産 管 財 人 に否 認 権 を 行 使 させ る と い うの は あ ま りに も迂 遠 で 破 産 手 続 を 遅 延 させ る こ と にな る こ とか ら,破 産 債 権 査 定 手 続 にお いて 破 産 管 財 人 は否 認 権 を 行 使 で き る と解 した い。. 三.破 産 債 権 者 に よ る 否 認 権 行 使 と異 議. 届 出破 産 債 権 に対 して 他 の 届 出破 産 債 権 者 も異 議 を 述 べ る こ とが で き る が(118条1項,119条5項,121条2項,122条2項),届. 出破 産 債 権 の 原. 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して,他 の 届 出破 産 債 権 者 が 異 議 を 述 べ る こ とが で き るか 否 か につ いて 若 干 の 検 討 を して み た い。. 1.従. 来の議論. 旧法 下 で は,一 般 論 と して 否 認 権 を 行 使 で き るの は破 産 管 財 人 にか ぎ ら れ,破 産 債 権 者 は行 使 で きな い と され て お り⑫ の,ま た具 体 的 な 「破 産 債 権. ⑳. 中 田 ・前 掲167頁,山 (全訂 版)」(1981年,酒 (1973年,青. 木 戸 ・前 掲218頁,石 井 書 店)233頁,斎. 林 書 院 新 社)461∼462頁(櫻. 11. 原 辰 次 郎 『破 産 法 和 議 法 実 務 総 掩 藤 秀 夫=伊. 東 乾 編 「演 習 破 産 法 」. 井 孝 一・)一以 下 櫻 井 ・前 掲 演 習 と して/.

(12) 近畿大学法学. 第57巻第4号. 者 は他 の 債 権 者 が 届 け 出 た破 産 債 権 に対 して,そ の 債 権 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して 異 議 を 述 べ る こ とが で き るか 」 と い う 問 題 も 否 定 さ れ て い た ㈱。 そ し て こ の 点 は 現 行 法 に お い て も 同 様 で あ っ て ⑳,私 が 調 べ た と こ ろ で. は,旧 法,現 行 法 を 問 わ ず,破 産 債 権 者 の 否 認 権 行 使 を 肯 定 す る もの はな か っ た ⑳。. \引 用,同378頁(上. 田徹 一 郎),櫻. 講 座10巻(1970年,日 島 ・前 掲336∼337頁,井 (1973年,青. 井孝一 「 否 認 訴 訟 の諸 問題 」 実 務 民 事 訴 訟 法. 本 評 論 社)163頁. 一 以 下 櫻 井 ・前 掲 講 座 と して 引 用,霜. 関 浩 編 ・実 務 法 律 大 系9『 企 業 の整 理 ・再 建 と清 算 」. 林 書 院 新 社)409頁(飯. 原 一 乗)以. 下 飯 原 前掲 大 系 と して 引 用,飯. 原 一 乗 『詐 害 行 為 取 消 権 ・否 認 権 の 研 究 」(2008年,日. 本 評 論 社)257∼258頁. 一. 以 下 飯 原 ・前 掲 研 究 と して 引 用,小 室 直 人=若 林 安 雄 『倒 産 法 」(1984年,青 書 院 新 社)89頁,林. 屋 礼 二=上 田 徹 一郎=福 永 有 利 「破 産 法 」(1993年,青. 院)184∼185頁,谷. 口安 平=山. 年,法 律 文 化 社)154頁(紺 年,青 林 書 院)167頁,宗. 本 克 己=中. 谷 浩 司),白. 林 林書. 西 正 編 『新 現 代 倒 産 法 入 門 」(2002. 川 和 男=飯 塚 重 男 編 『破 産 法 」(1995. 田 ・前 掲 注 解510頁,宗. 田親 彦 「 否 認 権 の 行 使 とそ の. 効 果 」 金 商 別 冊2『 新 版 破 産 法 」249頁 一 以 下 宗 田 ・前 掲 効 果 と して 引 用,本 間 靖 規 「否 認 権 の 行 使 」 別 冊 金 融 商 事 判 例 「 倒 産 処 理 法 制 の 理 論 と実 務 」(2006 年)257頁,大. 村 雅 彦 『基 礎 講 座 破 産 法(増 補 版)』(2002年,青. な ど。 破 産 債 権 者 は,債 権 者 委 員 会(144条3項),債 破 産 裁 判 所 の監 督 権(75条1項)を. 林 書 院)213頁. 権 者 集 会(135条)ま. る よ う促 す こ とが で き るだ け とす る もの が 多 い(伊 藤 ・前 掲407頁,田 712頁,中 ⑳. 島 ・前 掲363頁,宗. 中 田 ・前 掲223頁,宮. 田 ・前 掲 注 解(上)511頁. 頭 ・前 掲. な ど)。. 脇 幸 彦=竹 下 守 夫 編 『新 版 破 産 ・和議 法 の 基 礎 」(1982. 年,青 林 書 院 新 社)319頁(北 補)」(2000年,有. たは. 通 じて破 産 管 財 人 が 適切 に 否 認 権 を 行 使 す. 原 弘 也),青. 斐 閣)198頁(伊. 山善 充 ほ か編 「 破 産 法 概 説(新 版 増. 藤 眞)。 な お会 社 更 生 手 続 に お い て,否 認 権. は更 生 管 財 人 が 行 使 す る もの で あ る と して更 生 債 権 者 の 否認 権 行 使 を 否 定 した 判 例 と して 東 京 地 判 昭 和41年9月30日 ⑳. 伊 藤 ・前 掲407頁,田 法 講 義 」(2006年,成. 金 法462号11頁 。. 頭 ・前 掲712頁,中 文 堂)147頁,本. 島 ・前 掲363頁,三. 間 ・前 掲257頁,加. 版)」(法 律 学 講 義 シ リー ズ)(2009年,弘. 谷 忠 之 『民 事 倒 産. 藤 哲 夫 『破 産 法(第 五. 文 堂)311頁,柴[H=瀬. 頁,永 石 一・ 郎 ほか 編 『倒 産 処 理 実 務 ハ ン ドブ ッ ク」(2007年,中. 戸 ・前 掲284 央 経 済 社)466. 頁(佐 藤 正 八),大 矢 息 生=川 村 延 彦=奈 良 道 博 編 『 破 産 の 法律 相談 」(2004年, 学 陽 書 房)235頁(清 ⑳. 水 知 彦)な. ど。. 破 産 債 権 者 が 破 産 管 財 人 の否 認 権 を代 位 行 使 で き る か とい う点 に つ い て は,/. 12.

(13) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 2.破. 産 債 権 者 に よ る否 認 権 の 行 使 の 可 否. しか し,破 産 債 権 者 は債 権 調 査 手 続 に お いて 否 認 権 を 行 使 で きな い とす る こ とが 妥 当で あ ろ うか 。 イ. まず,一 般 的 に破 産 債 権 者 が 否 認 権 を 行 使 で き るか 否 か を 論 じる こ. と は あ ま り意 味 が な い。 否 認 権 は訴 え,否 認 の 請 求,ま い と こ ろ(173条1項),破. た は抗 弁 に よ って 行 使 しな けれ ばな らな. 産 債 権 者 が これ らの 方 法 で 否 認 権 を 行 使 で き る. 手 続 の 当事 者 にな る こ と は通 常 はな いか らで あ る㈱。 ロ. しか し破 産 債 権 確 定 手 続 に お いて は,届 出を した 破 産 債 権 者 は他 の. 届 出破 産 債 権 に対 して 異 議 を 述 べ る こ とが で き(旧232条,旧240条,118 条1項,119条5項,121条2項,122条2項),異. 議を述べた破産債権者 は. そ の後 の 破 産 債 権 確 定 の 訴 え(旧 法 下)ま 項)及. び査 定 に 対 す る異 議 の 訴 え(126条. た は破 産 債 権 の 査 定(125条1 一 現 行 法 下)の. 当 事 者 とな るか. ら,そ こで 抗 弁 と して 否 認 権 を 行 使 で き るか 否 か と い う問 題 が 生 じ得 る。 な お前 述(二.2.)の. よ う に,破 産 債 権 者 が 異 議 を 述 べ る場 合 に は異 議 の. 理 由を 付 さな けれ ばな らな いが(破 産 規 則39条1項),破. 産債権者の異議 に. 理 由の 記 載 が な くて も異 議 の 効 力 に は影 響 を 及 ぼ さな い と され て い る こ と か らす れ ば働,破 産 債 権 者 が 届 出破 産 債 権 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 \ 破 産 管 財 人 が 機 能 不 全 状 態 で,解 任 もで き な い状 態 に あ る とい う極 め て か ぎ ら れ た 場 合 に これ を 肯 定 す る学 説 はあ るが(池. 田・ 前 掲112頁,霜. 多 数 説 は否 定 して い る(伊 藤 ・前 掲407頁,櫻. 井 ・前 掲 演 習461∼462頁,櫻. 前 掲 講 座172頁,飯 前 掲185頁,加. 原 ・前 掲 大 系409頁,本. 藤 ・前 掲311頁)。. 間 ・前 掲257頁,林. 島 ・前 掲338頁), 屋=上[H=福. 井 ・ 永 ・. しか しも と よ り,こ れ は破 産 債 権 者 自身 の 権 利. と して 否 認 権 の 行 使 が で き る こ と と は別 の 問 題 で あ る。 ⑳. 本 間 ・前 掲157頁 は,破 産 法 は破 産 債 権 者 が 否 認 訴 訟 の 原 告 とな る こ とを 想 定 して い な い とす る。. ⑳. 最 高 裁 判 所 事 務 総 局 民 事 局 監 修 『条 解 破 産 規 則 」(2005年,法 お 同 旨の 規 定 で あ る民 事 再 生 規 則39条1項,会. 曹 会)99頁 。 な. 社 更 生 規 則46条1項. につ い て. も,こ の点 は 同様 に解 さ れ て い る(同 局監 修 『条 解 民 事 再 生 規 則 」 〔2005年,法/. 13.

(14) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. とな る こ とを 理 由 と して 異 議 を 述 べ た場 合 に も,異 議 その もの を 不 適 法 と す る こ と はで きず,破 産 債 権 者 の 異 議 に対 して 異 議 を 述 べ られ た届 出破 産 債 権 者 に よ る破 産 債 権 査 定 の 申立 て へ 進 む こ と にな る と思 わ れ る。 そ して 破 産 債 権 者 間 で 争 わ れ る これ らの 手 続 に お いて,破 産 債 権 者 が 否 認 権 を抗 弁 と して 行 使 で き るか 否 か に よ り,異 議 を 述 べ た破 産 債 権 者(こ れ らの 手 続 の 効 力 は届 出破 産 債 権 者 全 員 に及 ぶ か ら 〔131条〕,実 際 に は全 届 出破 産 債 権 者)が 受 け る配 当額 が 直 接 影 響 を 受 け るか ら,破 産 債 権 者 に と って これ らの 手 続 に お いて 原 因 行 為 につ いて 否 認 権 を 行 使 で き るか 否 か は直 接 の 利 害 関 係 が あ る。 この よ うな 直 接 の 利 害 関 係 が あ る に もか か わ らず,異 議 を 述 べ た破 産 債 権 者 は否 認 権 の 行 使 が で きな い とす る に は相 当の 理 由が な けれ ばな らな い と思 わ れ るが,そ の 理 由 は あ るの で あ ろ うか 。 ハ. 破 産 債 権 者 は否 認 権 を 行 使 で きず,行 使 で き るの は破 産 管 財 人 にか. ぎ る とす る説 の 論 拠 は,旧 法 及 び 現 行 法 を 通 じて 次 の よ う な もの で あ る が,い ず れ も反 論 が 可 能 で あ る と思 わ れ る。 a173条1項. ま た は 旧76条 で 否 認 権 の行 使 者 を破 産 管 財 人 と して い る. こ と を根 拠 とす る もの ⑳。 しか し173条1項(旧76条)の. 文 言 だ け を根 拠 に破 産 管 財 人 以 外 の者 の. 否 認 権 行 使 を 全 面 的 に否 定 す る こ と はで きな い と思 う。 否 認 権 は ほ とん どの 場 合 破 産 管 財 人 の み が 行 使 で き,ま た実 際 に行 使 す る の で あ るか ら173条1項(旧76条)は. こ の よ うな 表 現 に な って い る と考. え る こ と は可 能 で あ り,少 な くと も破 産 法 に は破 産 債 権 者 に よ る否 認 権 行 使 を 全 面 的 に禁 止 す る規 定 が あ るわ けで はな い。 b78条1項(旧7条)か \ 曹 会 〕97頁,同 G①. 林 屋=上. 田. ら,破 産 財 団 の 管 理 ・処 分 権 は破 産 管 財 人 に. 「条 解 会 社 更 生 規 則 』 〔2003年,法 福 永 ・前 掲257頁,加. 曹 会 〕150頁)。. 藤 ・前 掲311頁,中. 14. 島 ・前 掲363頁. 。.

(15) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 専 属 す るか ら,否 認 権 も破 産 管 財 人 に専 属 す る とす る ものGl)。 しか し破 産 債 権 は 破 産 財 団 に属 す る財 産 と は い え な い うえ勧,債 権 調 査 は破 産 管 財 人 の 専 権 で はな いか ら(118条1項,119条5項,121条2項,122 条2項),破. 産 財 団 に属 す る財 産 の管 理 及 び処 分 権 は 破 産 管 財 人 に専 属 す. る こ とか ら,直 接 に破 産 債 権 者 の 否 認 権 行 使 を 否 定 す る こ と はで きな いの で はな いだ ろ うか 。 c債. 権 者 に行 使 させ る と,濫 用 の 恐 れ が あ り,訴 訟 が 遅 延 す る こ とを. 理 由 とす る もの 欝。 しか しあ る意 味 で は権 利 はす べ て 濫 用 の 恐 れ が あ るが,だ か ら と い って その 権 利 を 認 めな い とす る こ と は妥 当で はな く,濫 用 が あれ ばそ の 都 度 個 別 に対 処 す れ ば よ いの で あ って 濫 用 の 恐 れ が あ る と い う理 由だ けで,そ の 権 利 自体 を 否 定 す るの は妥 当で はな い。 d否. 認 権 は破 産 財 団 に属 す る権 利 で あ り,破 産 管 財 人 は破 産 財 団 の 代. 表 機 関 で あ るか ら,否 認 権 は も っぱ ら破 産 管 財 人 に よ って の み 行 使 され る とす る もの 剛。 しか し問 題 は,な ぜ 否 認 権 が 破 産 財 団 に属 す る権 利 で あ るか ら破 産 管 財 人 の み が 行 使 で き るの か と い う こ とで あ るか ら,こ の 見 解 は結 論 を 述 べ て い るだ けで 論 拠 と はな らな い と思 わ れ る。 eま. た これ 以 外 に考 え られ る論 拠 と して は 次 の よ うな もの が あ り得. る。 i否. 認 権 が 行 使 され た場 合,否 認 権 行 使 の 相 手 方 が 反 対 給 付 また はそ. の 価 額 につ いて 一一 定 の 権 利 を 取 得 す る場 合 が あ り(168条),破 ⑳. 石 原 ・前 掲233頁,伊. 働. 山 木 戸 ・前 掲106頁,前 掲125頁. 藤 ・前 掲407頁. 。. 掲 注 解(上)72頁(小. 室 直 人=中. 。. ㈹. 飯 原 ・前 掲 大 系409頁,飯. 鋤. 中 田 ・前 掲167頁. 産管財人 と. 原 ・前 掲 研 究258頁. 。. 15. 。. 殿 政 男),中. 島 ・前.

(16) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. して は否 認 権 行 使 の 要 件 が あ って も これ を 行 使 しな い方 が 破 産 財 団 に と っ て 有 利 で あ る と考 え て 敢 え て 行 使 しな い場 合 も あ り得,こ の 場 合 に破 産 債 権 者 が 否 認 権 を 行 使 で き る とす る と破 産 管 財 人 の 破 産 財 団 に属 す る財 産 に 対 す る処 分 ・管 理 権 を 害 す る こ と にな るか ら,破 産 管 財 人 に しか 否 認 権 行 使 を認 めな い とす る もの 。 しか し債 権 調 査 手 続 に お いて 破 産 債 権 者 に否 認 権 の 行 使 を 認 めて も この よ うな 問 題 は生 じな いか ら,こ の こ とを も って 破 産 債 権 者 に否 認 権 の 行 使 を認 めな い理 由 とす る こ と はで きな い。 iiも. と も と債 権 者 に よ る異 議 は少 な い上,多. くの 場 合,届. 出破 産 債 権. の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る と他 の 破 産 債 権 者 が 考 え る場 合 は, 破 産 管 財 人 も 同様 に考 え て その 届 出破 産 債 権 を 認 めな いで あ ろ うか ら,破 産 管 財 人 と別 個 に破 産 債 権 者 に否 認 権 の 行 使 を 認 め る必 要 性 が あ る場 合 は 少 な いで あ ろ う。 しか し破 産 法 が 破 産 管 財 人 と並 ん で 破 産 債 権 者 に も届 出破 産 債 権 に対 し て 異 議 を 述 べ る こ とを 認 めて い るの は,破 産 管 財 人 と破 産 債 権 者 の 見 解 が 食 い違 う場 合 が あ る こ と を前 提 と して㈹,破 産 債 権 者 も独 自の立 場 か ら届 出破 産 債 権 に異 議 を 述 べ る こ とが で き る と した もの と考 え られ るか ら,破 産 債 権 者 は届 出破 産 債 権 に対 して 異 議 を 述 べ る こ と はで き るが,原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とだ け は異 議 の 理 由 とす る こ とが で きな い と す る合 理 的 な 理 由 はな い と思 わ れ る。. ㈲. 東 京 高 判 平 成4年6月29日 号55頁 の 原 審)は,「. 判 時1429号59頁(最. 判 平 成8年3月22日. 金 法1480. な お念 の た め … …」 とす る傍論 で は あ る が,株 式 会 社 で は. あ って も事 実 上 代 表 者 の個 人 営 業 と同視 し得 る場 合 に は,株 式 会 社 の 債 務 につ いて の 代 表 者 の 連 帯 保 証 は無 償 行 為 に は あ た らな い と して い るが,こ の 見 解 に よ る場 合 は,こ の場 合 に該 当す る か否 か に つ い て破 産管 財人 と破 産 債 権 者 の 間 で 見 解 が 分 か れ る こ と もあ り得 るで あ ろ う。. 16.

(17) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 3.小. 括. この よ う に考 え る と,破 産 者 が 支 払 停 止 後 ま た はそ の 前6ケ 月 以 内 に し た連 帯 保 証 等 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 認 め,か つ 破 産 債 権 者 に届 出破 産 債 権 に対 して 異 議 を 述 べ る こ とを 認 め る以 上,少 な くと も債 権 調 査 手 続 で 破 産 債 権 者 に否 認 権 行 使 を 理 由 とす る異 議 を 否 定 す る理 由 はな いの で はな か ろ うか 。 通 常,破 産 債 権 者 は 自分 の 債 権 の 認 否 の み に関 心 が あ り,他 の 届 出破 産 債 権 に対 して異 議 を 述 べ る こ とは少 な い こ とか ら鮒,破 産 債 権 者 に よ る異 議 につ いて は従 来 あ ま り論 じ られ て こな か っ たが,理 論 的 に は この よ う に 解 す る余 地 が あ る と思 う。. 四.原. 因 行 為 の 否 認 を 理 由 と して 届 出 破 産 債 権 を 認 め な い こ. との 内 容. 1.設. 例. 議 論 を 進 め て い く便 宜 上,最 例,す な わ ちAがBのXに. も よ く起 こ る と考 え られ る次 の よ うな 事. 対 す る債 務 につ いて 連 帯 保 証 した が,そ の 後6. ケ 月 以 内 にAが 支 払 い停 止 等 の 状 態 とな り,Aに れ,Yが. 破 産 管 財 人 に選 任 され,XがAの. つ いて 破 産 手 続 が 開 始 さ. 破 産 事 件 で この 連 帯 保 証 債 務 履. 行 請 求 権 を 破 産 債 権 と して 届 け 出 たが,YがAX間. の連帯保証契約が無償. 否 認 の 対 象 とな る と してXの 債 権 を 認 めな か っ た,と い う事 例 を 対 象 と し て,順 を 追 って 検 討 す る。 な お こ こで は最 も多 い,破 産 管 財 人YがXの. ㈹. 届 出破 産 債 権 を 認 めな い場. 法 務 省 民 事 参 事 官 室 『破 産 法 等 の 見 直 し に 関 す る 中 間 試 案 と解 説 』 別 冊 NBL74号(2002年)71頁,日 説 新 破 産 法 」(2004年,商. 本 弁 護 士 連 合 会 倒 産 法 制 検 討 委 員 会 編 『要 点 解 事 法 務)64頁. 17. 。.

(18) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. 合 に つ い て 述 べ る が,破. 産 債 権 者 が 異 議 を 述 べ る場 合 も問 題 は 同 じで あ. る。 な お 以 下 でX,Y,Aと で のX,Y,Aを. 2.異 イ. い う と き は,特. に こ と わ らな い か ぎ り こ の 事 例. 指す。. 議 の 内 容(旧 法 下) 旧法 下 で 連 帯 保 証 が 無 償 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して. 破 産 管 財 人 が 届 け 出 られ た保 証 債 務 履 行 請 求 権 に対 して 異 議 を 述 べ,届. 出. 破 産 債 権 者 が 破 産 債 権 確 定 の 訴 え を 提 起 した事 例 で,請 求 の 趣 旨及 び請 求 認 容 判 決 の 主 文 が 判 る判 例 は幾 つ か あ るが,こ れ らの 判 例 の 判 決 主 文 及 び 請 求 の 趣 旨 は,多 少 の 表 現 の 違 い は あ って も いず れ も 「原 告 が … … これ こ れ の 破 産 債 権 を 有 す る こ とを 確 定 す る」 とな って い る⑳。 ロ. ま た,破 産 管 財 人 の 側 か ら原 因 行 為 の 否 認 を 理 由 と して 提 起 され た. 保 証 債 務 履 行 請 求 権 の 存 在 を 争 う事 件 で は,訴 え の 形 態 は いず れ も債 務 不 存 在 確 認 の 訴 え とな って い る鮒。 ハ. これ らの 判 例 か らす る と,旧 法 下 で は破 産 管 財 人 が 届 出破 産 債 権 の. 原 因 行 為 の 否 認 を 理 由 と して 届 出破 産 債 権 に対 して 述 べ る異 議 は破 産 債 権 ⑳. 名 古 屋 地 判 年 月 日不 詳 大 審 院民 事 判 例 集15巻1692頁(請 11年8月10日. 民 集15巻1680頁. の第 一 審 判 決),名. 審 院 民 事 判 例 集15巻1702頁(請. 求 の趣 旨一 大 判 昭 和. 古 屋 控 判 昭 和10年9月23日. 求 の趣 旨,判 決 主 文. 大. 大 判 昭 和11年8月10日. 民. 集15巻1680頁 の 控 訴 判 決),東 京 高 判 昭和56年3月18日. 判 夕446号111頁(請. 趣 旨),東 京 地 判 平 成3年7月25日. 訴 請 求 の 趣 旨),東 京 高. 判 平 成4年6月29日. 判 タ777号236頁(反. 判 時1429号59頁(判. 求の. 決 主 文 。 請 求 の趣 旨は 明 示 され て な い. が,請 求 記 棄 却 部 分 が な い 全 部 認 容 判 決 な の で,請 求 の趣 旨 も 同 旨 と思 わ れ る),大 阪 地 判 平 成8年5月31日 ㈱. 東 京 高 判 昭 和37年6月14日. 金 商1480号55頁(請 金 法316号3頁. 求 の 趣 旨,判 決 主 文)。. な お この判例 は判 決理 由中で. 「破 産 管 財 人 の 否 認 権 行 使 に よ り(否 認 権 行 使 の 対 象 と され た 連 帯 保 証 契 約 に基 づ く)連 帯 保 証 債 務 は存 在 しな くな り… …」 と判 示 して い る,京 都 地 判 昭 和56 年2月25日. 民 集41巻5号1097頁(最. 判 昭和62年7月3日. 第 一・ 審 判 決)。. 18. 民 集41巻5号1068頁. の.

(19) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. の 存 在 その もの に対 す る異 議 で あ り,債 務 不 存 在 確 認 訴 訟 で は も と よ り破 産 債 権 確 定 訴 訟 で も債 権 の 存 否 自体 が 争 点 とな って いて,破 産 管 財 人 の 否 認 権 行 使 が 認 め られ た場 合 は,異 議 を 述 べ られ た債 権 は破 産 債 権 と して は 存 在 しな い もの と して 取 り扱 わ れ て い た と解 され る。 二. 現 行 法 で この 点 が 変 わ っ たの か 否 か は,現 行 法 にな って か ら破 産 者. に対 す る保 証 債 務 履 行 請 求 権 が 破 産 債 権 と して 届 け 出 られ,破 産 管 財 人 が 保 証 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る と して 異 議 を 述 べ た こ と に よ る破 産 債 権 査 定 の 申立 て ま た は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え の 事 案 につ いて の 公 刊 され た 判 例 は私 が 調 べ た と こ ろで は現 在 の と こ ろ見 当 らな いか ら判 らな いが,現 行 法 の 改 正 過 程 の 議 論 や 文 献 を 見 て も,こ の 点 を 特 に改 正 した 形 跡 はな い。. 3.債. 権 調 査 手 続 で 認 め られ な か っ た届 出 破 産 債 権 の 取 り扱 い. で は この よ う に,破 産 債 権 査 定 手 続 で 裁 判 所 がYの 否 認 権 行 使 を 認 めて Xの 破 産 債 権 を0円 に提 起 せ ず,あ 合,Xの. と査 定 し,Xが. 査 定 に対 す る異 議 の 訴 え を 法 定 期 間 内. る い は提 起 した が こ の 査 定 を認 可 す る 判 決 が確 定 した 場. この 債 権 は その 後 どの よ う に取 り扱 わ れ るの で あ ろ うか働。. この 問 題 は,二 つ の 場 合 を 分 けて 考 え る必 要 が あ る。 イ a通. 免 責 の な い場 合 常 の 破 産 事 件 で は,破 産 者 は何 とか 破 産 に陥 るの を 避 け よ う と し. て 可 能 な か ぎ り努 力 したが 結 局 ど う に もな らな くな って 自己 破 産(18条1 項)の. 申立 て を す る場 合 が 多 く,届 出 られ た破 産 債 権 の 一 つ や 二 つ を 破 産. 管 財 人 が 認 めな か っ たか らと い って,大 幅 な 債 務 超 過 で 支 払 不 能 の 状 態 は 何 ら変 わ らな いの が 通 常 で あ る。 働Yが. 理 由 を付 けず にXの 届 出破 産 債 権 の存 在 を認 め ず,Xが. 申立 て を しなか っ た場 合 は,YがXの. 破産債権査定の. 債 権 を認 め な か った理 由 が 原 因 行 為 が 否. 認 権 行 使 の 対 象 とな る か らな の か そ れ以 外 の理 由 が あ った の か が 不 明 で あ るか ら,以 下 の 議 論 はそ の ま ま は当 て は ま らな い。. 19.

(20) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. ま た 中小 ・零 細 企 業 の 代 表 者 が 会 社 の 債 務 を 連 帯 保 証 す る場 合 は,や は りで き るだ け頑 張 って ど う し ょう もな くな って か ら自 己破 産 の 申立 て を す るの が 通 常 で あ るか ら,事 情 は 同 じで あ る。 と こ ろが 親 戚 や 友 人 に頼 まれ て いわ ば好 意 で 連 帯 保 証 す る者 の 中 に は, その 連 帯 保 証 債 務 以 外 に は債 務 はな いか,あ. って も 自 らの 資 産 や 収 入 で 十. 分 返 済 す る こ とが で き る範 囲 に と どま る健 全 な 経 済 生 活 を 営 ん で い た の に,連 帯 保 証 と主 債 務 者 の 破 綻 に よ り,自 らの 資 産 や 収 入 に よ って は と う て い弁 済 で きな い多 額 の 連 帯 保 証 債 務 を 背 負 い込 む こ と にな って 一一 気 に支 払 不 能 とな り,や む な く自 己破 産 の 申立 て を す る場 合 が あ る。 この 場 合 は,そ の 連 帯 保 証 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ とを 理 由 と して,保 証 債 務 履 行 請 求 権 に対 して 破 産 管 財 人 が 異 議 を 述 べ,こ れ が 認 め られ て 保 証 債 務 履 行 請 求 権 が 破 産 債 権 で な くな って しま う と,他 に 届 出破 産 債 権 者 が な か っ た り,あ る い は他 に届 出破 産 債 権 が あ って も破 産 財 団 に属 す る資 産 に よ り100%配. 当 が な され て 破 産 手 続 が 終 了 す る場 合 が. あ るが,そ の 場 合 に ど うな るか が 問 題 とな る。 bま. ずXの 保 証 債 務 履 行 請 求 権 が 届 け 出 られ た唯 一一 の 債 権 で あ る場 合. につ いて 検 討 す る。 iこ. の 場 合 に,破 産 管 財 人 がxの 届 出破 産 債 権 の 存 在 を 認 めな い とす. る と,以 下 の よ う に不 合 理 な 結 果 を 生 じる こ と にな る。 ア)YがX-A間. の 連 帯 保 証 契 約 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る と してXの. 届 出破 産 債 権 の 存 在 を 認 めず,Xが. 破 産 債 権 査 定 を 申立 て,査 定 ま た は査. 定 に対 す る異 議 の 訴 え に お いて 破 産 管 財 人 の 否 認 権 行 使 が 認 め られ た場 合 は,Xの. 債 権 が 存 在 しな い こ と にな って 結 局Aの 破 産 事 件 に は届 け 出 られ. た破産 債 権 は存 在 しな い こ とに な って 破 産手 続 は廃 止 され る こ と にな りω, ω. この 場 合 の処 理 につ い て は議 論 が あ る が,い ず れ に して も破 産 手 続 が 廃 止 さ れ る こ と に は変 わ りが な い の で,本 稿 で は立 ち入 らな い 。. 20.

(21) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. か つ こ こで は免 責 許 可 はな い。 イ)私 の 調 べ た範 囲 で は,Xの. 届 出破 産 債 権 が 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の. 対 象 とな る こ とを 理 由 と して 異 議 が 述 べ られ て,破 産 債 権 確 定 の 訴 え にお いてYの 否 認 権 行 使 を 認 めてYの 勝 訴 判 決 が 確 定 した 場 合(旧 法 下),ま た はXの 届 出破 産 債 権 が 認 め られ ず,破 産 債 権 査 定 また は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え(現 行 法 下)に. お いて 否 認 権 行 使 を 認 めてYの 勝 訴 判 決 が 確 定 した. 後 に,届 出破 産 債 権 が な い と い う理 由で 破 産 手 続 が 終 了 した 場 合 に,Xの 債 権 が どの よ う にな るの か につ いて 直 接 述 べ た もの は見 あた らな か った 。 しか し,否 認 の効 果 は 手 続 的 相 対 効 と され て い る こ とか らす れ ば ω,こ の 場 合 のXの 債 権 は消 滅 す るの で はな く,そ の 破 産 手 続 にお いて は破 産 債 権 と して 扱 わ れ な いだ けで あ り,破 産 手 続 が 終 了 し,か つAが 免 責 許 可 を 受 けて いな い場 合 は,XはAに. 対 して この 保 証 債 務 履 行 請 求 権 を 破 産 手 続. 外 で 行 使 で き る こ と にな る と思 わ れ る。 ウ)し か しこれ は以 下 に述 べ る よ う に不 合 理 で あ る。 i)Aと. して は,xに. 対 す る連 帯 保 証 債 務 の 支 払 いが で きな いか ら こそ. 自 己破 産 の 申立 て を した に もか か わ らず,破 産 手 続 が 終 了 し,Xの 務 履 行 請 求 権 は その ま ま残 る と い うの で は,Aが. 保証債. 自己 破 産 の 申立 て を した. 意 味 が 全 くな か っ た こ と にな る。 ii)そ こでxに 対 す る連 帯 保 証 債 務 の 支 払 が で きな いAは,再. 度 自己 破. 産 の 申立 て(第 二 次 破 産)を す る と,第 二 次 破 産 で もAの 連 帯 保 証 は支 払 停 止 等 の 後 ま た は その 前6ケ 月 以 内 にな され て い るの で あ るか らや は り否 認 権 行 使 の対 象 と な る と して 破 産 管 財 人 がXの 届 出 破 産 債 権 を 認 め な い と,結 局 同 じこ との 繰 り返 しで 問 題 は何 時 まで も解 決 しな い こ と にな る。 ql)宗. 田 ・前 掲 注 解522頁,池. 巻5号641号. 田 ・前 掲123頁 以 下 。 最 判 昭 和49年6月27日. 民 集28. も 「 否 認 の効 力 は破 産 財 団 との 関係 に お い て,か つ 破 産 状 態 の 存 続. す るか ぎ りにお いて 生 ず る に と ど ま り,破 産 が取 消 し,廃 止,解 き はそ の 効 力 は 当 然 に消 滅 す る」 と判 示 す る。. 21. 止 とな った と.

(22) 近畿大学法学. iiそ. 第57巻 第4号. こで この よ うな 不 合 理 な 結 果 にな らな い よ う に,x以. 産 債 権 者 が な い場 合 に は,Xの 場 合 で あ って も,YがXの. 外 に届 出破. 債 権 の 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る. 届 出破 産 債 権 を 認 め る と い う処 理 が 考 え られ る. が,こ の 場 合 に,旧 法 下 の もの で あ るが 最 判 昭 和58年11月25日 民 集37巻9 号1430頁 との 関 係 が 問 題 とな り得 る。 この 判 例 は,関 連 部 分 だ けを 簡 略 化 して いえ ば,CがDの DのEに. 支払停止後 に. 対 す る債 権 につ いて 債 権 差 押 え ・転 付 命 令 を 得 て その 債 権 をEか. ら取 立 て,そ の 約10年 後 にDが 破 産 宣 告 を 受 け,破 産 管 財 人 とな っ たFが この 債 権 差 押 え ・転 付 命 令 を 否 認 してCに 対 してCがEか 額 の 返 還 を 求 め た訴 え に お いて,Cの. ら取 り立 て た金. 「否 認 権 行 使 当時 は,破 産 者Dに 対. す る総 債 権 はす べ て 消 滅 時 効 ま た は弁 済 に よ り消 滅 して い たか ら,Cの. 得. た債 権 差 押 え ・転 付 命 令 の 詐 害 性 は 消 滅 して い る」 との 主 張 を,「 破 産 管 財 人 が 破 産 財 団 確 保 の た め に必 要 が あ る と主 張 して 否 認 権 を 行 使 して い る 以 上,否 認 の 相 手 方 が 総 破 産 債 権 の 不 存 在 を 主 張 して 否 認 権 行 使 の 効 果 を 否 定 す る こ と は許 され な い」 と判 示 した もの で あ り,こ の 判 旨か らは,先 の ケ ー スでX以 外 に届 出破 産 債 権 者 が いな い場 合 で も,Yと. して はX-A. 間 の 連 帯 保 証 契 約 を 否 認 で き る こ と にな る。 しか しこの 判 例 は,①C以 り,Cの. 外 に もGが 破 産 債 権 を 届 け 出て い た事 例 で あ. 「Gの 届 出破 産 債 権 に対 してCが 時 効 消 滅 して い る と して 異 議 を. 述 べ,Gが. 破 産 債 権 確 定 の 訴 え を 提 起 して いな いの でGの 破 産 債 権 は不 存. 在 に確 定 した」 との 主 張 を 「破 産 債 権 の 存 否 は債 権 調 査 及 び破 産 債 権 確 定 訴 訟 等 の 破 産 法 所 定 の 手 続 に よ って 確 定 す べ きで あ る」 と して 退 け たの で あ って,C以. 外 に届 出破 産 債 権 が な か っ た事 案 で はな い こ と,② 破 産 管 財. 人 が 破 産 財 団 確 保 の た め に必 要 が あ る と主 張 して 否 認 権 を 行 使 して い る以 上,否 認 の 相 手 方 が 総 破 産 債 権 の 不 存 在 を 主 張 して 否 認 権 行 使 の 効 果 を 否 定 す る こ と は許 され な い と して い るの で あ って,こ の 場 合 破 産 管 財 人 が 否 22.

(23) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. 認 権 を 行 使 しな けれ ばな らな い と判 示 して い るわ けで はな い こ と,③Cの 主 張 を排 斥 す る理 由 の一 つ と して,「 債 権 届 出期 間 内 に 届 け 出 な か った 破 産 債 権 者 も配 当か ら除 斥 され るだ けで 債 権 を 失 うわ けで はな く,債 権 届 出 期 間 後 の 届 け 出 も許 され て い る こ と」 を 挙 げて い る こ とか らす る と,原 則 と して 債 権 届 出期 間 内 に届 出を しな けれ ば以 後 は届 出が で きな くな る現 行 法 に その ま ま妥 当す るか 否 か 疑 問 で あ る こ と,か らす る と,こ の 判 例 は現 行 法 下 でX以 外 に届 出破 産 債 権 者 が いな い場 合 に,YがXの. 届 出破 産 債 権. を 認 め る妨 げ に はな らな い と思 わ れ る。 無 償 否 認 も詐 害 行 為 否 認 の 一 種 で あ る こ とか らす れ ば⑰,他 に 届 出 破 産 債 権 が な けれ ば,Aの. した連 帯 保 証 が 他 の 債 権 者 を 害 す る こ と はな いの で. あ るか ら,破 産 管 財 人 と して は この 場 合 は原 因 行 為 が 否 認 の 対 象 とな る場 合 で も この 届 出破 産 債 権 を 認 めて も よ い と い う こ と にな る。 iiiた だ 現 行 法 で も,債 権 届 け 出期 間 経 過 後 は一切 破 産 債 権 の 届 け 出が で きな くな るの で はな く,一 般 調 査 期 間 の 経 過 後 ま た は一 般 調 査 期 日の 終 了 後 に届 け 出 られ る債 権 も あ り得 るか ら(112条1項),こ. れ らの 債 権 者 は. Xの 債 権 が 認 め られ て 破 産 債 権 と して 確 定 して しま って い るXと 平 等 の 立 場 で 配 当を 受 け る しか な い こ と にな るの で,Yに. 対 して 「原 因 行 為 が 否 認. 権 行 使 の 対 象 とな り,し たが って 認 め るべ きで はな か ったXの 届 出破 産 債 権 を な ぜ 認 め たの か 」 と不 満 を もつ と い う問 題 が 残 る。 cで. は,他 に破 産 債 権 の 届 け 出が あ る場 合 は ど うな るで あ ろ うか 。. iこ. の 場 合 は,xの. 届 出破 産 債 権 が 破 産 債 権 と して 認 め られ るか 否 か. で 他 の 破 産 債 権 者 に対 す る配 当 は大 き く影 響 を 受 け るか ら,Yと. して はX. の 届 出破 産 債 権 を 認 めな い必 要 が あ る⑬。 q2)伊 藤 ・前 掲390頁,前 ⑬. 掲 大 コ メ632頁(山. 本 和 彦)。. 前 記 の よ う に,私 見 で は他 の届 出破 産 債 権 者 も異 議 を述 べ る こ とが で き,特 に この よ う な場 合 に破 産 管 財 人 がXの 債 権 を認 め る場 合 は,破 産 債 権 者 が 異 議 を 述 べ る必 要 性 は大 き い。. 23.

(24) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. そ して 届 出破 産 債 権 が 認 め られ な か っ たXが 破 産 債 権 査 定 の 申立 て を し,あ る い は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え を 提 起 したが 否 認 権 行 使 が 認 め られ てXの 破 産 債 権 が 不 存 在 と確 定 した 場 合 は,他 の債 権 者 に対 す る100%配 当 を経 て 破 産 手 続 が 終 了 し,免 責 許 可 も され な い こ と にな る。 そ して この 場 合 も,や は り否 認 の 効 果 は手 続 的 相 対 効 と され て い る こ と か らす れ ば,前 記bの,他. に届 出破 産 債 権 者 が な か っ た場 合 と 同様 に,X. は破 産 手 続 終 了 後 にAに 対 して この 保 証 債 務 履 行 請 求 権 を 行 使 で き る こ と にな る。 しか しこの 場 合 も,Aと. して はX以 外 の 債 権 者 に対 す る債 務 は 自 らの 資. 産 や 収 入 に よ って 十 分 支 払 う こ とが で き たがXに 対 す る連 帯 保 証 債 務 の 支 払 いが で きな いか らこ そ 自 己破 産 の 申立 て を した に もか か わ らず,破 産 手 続 が 終 了 し,Xの で は,Xが iiそ. 保 証 債 務 履 行 請 求 権 は その ま ま残 る こ と にな る と い うの. 自 己破 産 の 申立 て を した意 味 が 全 くな か っ た こ と にな る。 こでxに 対 す る連 帯 保 証 債 務 の 支 払 が で きな いAは,再. 度 自 己破. 産 の 申立 て(第 二 次 破 産)を す る と,第 二 次 破 産 で もAの 連 帯 保 証 は支 払 停 止 等 の 後 ま た は その 前6ケ 月 以 内 にな され て い るの で あ るか らや は り否 認 権 行 使 の 対 象 とな る こ と にな るが,多. くの 場 合 第 二 次 破 産 で はX以 外 の. 届 出破 産 債 権 者 は いな いで あ ろ うか ら,前 記bの. よ う に この 場 合 は破 産 管. 財 人 はXの 届 出破 産 債 権 を 認 め る こ と に よ りXの 債 権 だ けが 届 出破 産 債 権 と して 確 定 す る こ と にな り,よ うや くXは 破 産 債 権 者 と して 破 産 配 当を 受 け る こ と が で き,配 当 を 受 け られ な か った 部 分 につ い て は免 責 の 対 象 と な って 一一 件 落 着 と い う こ と にな る。 しか し第 一一 次 破 産 手 続 の 開 始 後 第 二 次 破 産 手 続 の 開 始 まで に新 たな 破 産 債 権 が 生 じて いれ ば第 三 次 破 産 へ と進 む こ と にな り,X以. 外 の 届 出破 産 債. 権 者 が いな くな って 破 産 管 財 人 がXの 届 出破 産 債 権 を 認 め る こ とが で き る よ う にな る まで これ を 繰 り返 さな けれ ばな らな い こ と にな る。 24.

(25) 債 権 の 原 因 とな った 契 約 の 否 認 に関 す る若 干 の 問 題. iiiし か しこの よ うな 結 果 は,誰 に と って も不 合 理 で あ る。 ア)ま ずAか. らす れ ば,第 一一 次 破 産 手 続 開 始 後 の 新 得 財 産 も第 二 次 破 産. の 破 産 財 団 に組 み 入 れ られ る こ と にな るか ら,自 己 破 産 に よ って 免 責 を 受 け,債 務 を 清 算 して 再 出発 を す るの が 遅 れ る こ と にな る。 イ)裁 判 所 も,複 数 の 破 産 手 続 を しな けれ ばな らな くな る。 ウ)Xに. と って も,配 当を 受 け られ るの は第 二 次 破 産 以 降 の こ と にな る. か ら配 当を 受 け るの が 遅 くな る うえ,手 続 が 複 数 にな る こ と に よ る経 費 の 増 大(例 え ば,破 産 管 財 人 の 報 酬 は2件 分 とな る)はXに. 対 す る配 当 額 に. 食 い込 ん で くる こ と にな る。 エ)ま. た何 よ りも,Yの. 否 認 権 行 使 を 理 由 と してXの 届 出破 産 債 権 が 認. め られ な か っ た との 理 由で 破 産 手 続 が 二 つ にな らな けれ ばな らな い と い う の は,不 合 理 で あ る。 ivし. たが って,こ の よ うな 不 合 理 な 結 果 が 生 じな い よ う に,何 らか の. 手 当が 必 要 とな る。 ロ. 免 責 許 可 の あ る場 合. 次 にXの 届 出破 産 債 権 が 原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 にな る と して 認 め られ ず,破 産 債 権 査 定 決 定 の 確 定 ま た は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え の 判 決 の 確 定 の 結 果 破 産 債 権 と して 扱 わ れ な くな って もAが 他 の 破 産 債 権 に よ って 債 務 超 過 の 状 態 に あ り,100%配. 当 が さ れず に破 産 手 続 が終 了 し,Aに. つい. て 免 責 許 可 が され て 確 定 した場 合 を 考 え る。 この 場 合,Xの aこ 大前提. 債 権 も免 責 の 対 象 とな るの で あ ろ うか 。. こで 一一 つ の 三 段 論 法 が 考 え られ る。 免 責 の 対 象 とな る の は,破 産 債 権(一 部 の非 免 責 債 権 〔253条 1項 〕 を 除 く一 以 下 で は 同 じ意 味 で 使 う)で あ る。. 小 前 提Xの. 債 権 は,原 因 行 為 が 否 認 権 行 使 の 対 象 とな る との 理 由で 破. 産 債 権 で はな い こ とが,破 産 債 権 査 定 決 定 の 確 定 また は査 定 に 25.

(26) 近畿大学法学. 第57巻 第4号. 対 す る異 議 の 訴 え の 判 決 の 確 定 に よ り確 定 して い る。 結. 論. よ ってXの 債 権 は免 責 の 対 象 とな らな い。. bし. か しこの 結 論 が 不 当で あ る こ と は次 の 理 由か ら自明 と思 わ れ る。. i破. 産 者 は破 産 手 続 の 終 了 の 時 点 で も無 資 産 で あ る こ とが 多 く,実 際. に は免 責 の 対 象 とな らな い債 権 を 破 産 手 続 終 了 後 に破 産 者 か ら取 立 て る こ と は ほ とん どの 場 合 困 難 で あ るが,た. とえ ば医 師 の 破 産 の 場 合 な どで は,. 破 産 手 続 開 始 後 勤 務 医 と して 年 収1,000万 円 を超 え る就 職 を す る こ と も難 しい こ と で は な く,現 に 私 は この よ うな 事 例 を 経 験 して い る。 こ の場 合 は,届 出債 権 が 破 産 債 権 とな り,破 産 配 当を 受 け る こ と はで き るが,配. 当. を受 け る こ とが で きな か っ た残 額 が 免 責 の 対 象 とな る よ り,届 出債 権 が 破 産 債 権 と して 取 り扱 わ れ な い た め破 産 配 当 は受 け られ な くて も,非 免 責 債 権 とな る ほ うが,債 権 者 に と って 有 利 とな る。 しか しこの 場 合 に,他 の 破 産 債 権 と 同等 の 立 場 で 破 産 配 当を 受 け る こ と が で きな い と してYが 認 めな か っ たXの 債 権 が 非 免 責 債 権 とな り,他 の 破 産 債 権 者 よ り結 果 と して 有 利 に扱 わ れ るの は不 合 理 で あ る。 ii仮. に破 産 債 権 査 定 手 続 ま た は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え でYの 否 認 権. 行 使 が 認 め られ な か っ た場 合 は,Xの. 保 証 債 務 履 行 請 求 権 が 破 産 債 権 にな. る こ と は明 らか で あ る。 そ うす る と,前 記 の よ うな 破 産 者 が 破 産 宣 告 後 も高 収 入 を 得 られ る こ と が 見 込 まれ る場 合 は,Xは 勝 訴 して,自. 破 産 債 権 査 定 ま た は査 定 に対 す る異 議 の 訴 え で. らの 債 権 が 破 産 債 権 で あ る こ とが 確 定 して 破 産 配 当を 受 け る. こ とが で き るが 免 責 の 対 象 とな る よ りも,敗 訴 して 自 らの 債 権 が 破 産 債 権 で はな い こ とが 確 定 す る こ と に よ り,破 産 配 当 は受 け られ な いが 免 責 の 対 象 とな らな い方 が 有 利 とな るか ら,Xは. 勝 訴 の 決 定 ま た は判 決 で はな く,. 敗 訴 の 決 定 ま た は判 決 を 求 めて 破 産 債 権 査 定 の 申立 て を し,ま た は査 定 に 対 す る異 議 の 訴 え を 提 起 す る と い う不 合 理 な こ と にな る。 26.

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