• 検索結果がありません。

<論説>単独行動主義と多国間主義の相互作用--拡散防止構想(PSI)が国際法秩序に与える影響を中心として

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "<論説>単独行動主義と多国間主義の相互作用--拡散防止構想(PSI)が国際法秩序に与える影響を中心として"

Copied!
45
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)単独行動主義 と多国間主義の相互作用. 単独行動主義 と多 国間主義 の相互作 用 拡 散 防 止 構 想(PSI)が. 国際 法秩 序 に. 与 え る 影 響 を 中心 と して. 西 1は. 谷. 斉. じめ に. IIPSIの. 性 質決定. 1.「 対 テ ロ措 置 」 と して のPSI 2.「 集 団化 さ れ た一 方 的行 為 」 と して のPSI 皿. 海 上 にお け る執 行 措 置 との 関 係 1.領 2.公. IV多. 海 に お け る執 行 活 動 の可 能 性 海 に お け る執 行 活 動 の可 能 性 国 間 主 義 との 関 係. 1.覇. 権 的国 際法 に基 づ く秩 序 化. (1)国 際 社 会 にお け る二 元 論 的 階 層 秩 序 の 登 場 (2)大 国/強 国 と国 際 法 (3)安 保 理 決 議 に よ る正 当 性 の 付 与 2.国. 際 法 の細 分 化(fragmentation)論. 3.単. 独 行 動 主 義 と多 国 間主 義 の相 互 作 用. V結. 1は. との 関 係. び に代 え て. じめ に. 米 国 が 提 唱 す る 拡 散 防 止 構 想(ProliferationSecurityInitiative;以. 「PSI」)(1>は,国 家 並 び に 非 国 家 主 体 へ の 大 量 破 壊 兵 器(WeaponsofMass. (1)PresidentGeorgeW.Bush,RemarkstothePeopleofPoland(May 31,2003),availableat〈http://www.whitehouse.gov/news/releases//. 27. 下,.

(2) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. Destruction;以. 下,「WMD」)及. びそ の 関 連 物 質 の拡 散 を 阻止 す るた めの. 国 際 的 な 協 力 枠 組 み で あ る 。 現 在PSIに. は91力 国 が 参 加 して お り(2),日 本. は15力 国 の コ ア ・グ ル ー プ(3)の 一一 員 と して 多 くの 海 上 阻 止 訓 練 に 参 加 又 は. これ らを主 催 し,さ らに非 参 加 国 に対 す る参 加 の 働 きか け(ア ウ トリー チ 活 動)を. 行 う な ど こ の 構 想 に 対 す る 積 極 的 な コ ミ ッ ト メ ン トを 示 し て き. た(4>。. 世 界 の 約 半 数 の 諸 国 がPSIへ. 参 加 す る に至 った背 景 に は,米 国 が 進 め る. いわ ゆ る 「対 テ ロ戦 争 」の一 環 と して,国 家 及 び非 国家 主 体 へ のWMDの 拡 散 が 国 際 的 な 安 全 保 障 に対 す る脅 威 とな りつ つ あ る こ とが 国 際 社 会 に お いて. 少 な くと も賛 同を 表 明 して い る諸 国 につ いて は. 明 確 に認 識 さ. れ て い る事 実 が 存 在 す る よ う に思 わ れ る。 PSIは 米 国 を 柱 とす る有 志 連 合 的 な活 動(5)であ り,明 確 な法 的 基 盤 を 有 \2003/05/20030531-3.html>.SeealsoU.S.Dep'tofState,ThePro1iferationSecurityInitiative(2004),availableat〈http://usinfo.state。 gov/products/pubs/proliferation/proliferation.pdf>.PSIへ 国 際 的 な 行 動 計 画 と して,2002年6月 て られ た. 「G8グ. とつなが る. の カ ナ ナ ス キ ス ・サ ミ ッ トの 折 に 打 ち 立. ロ ー バ ル ・パ ー トナ ー シ ッ プ 」 が,WMDの. 拡 散 を 防 止 す る た め の 諸 原 則 を 定 あ て い た が,実 並 び に 賛 同 国 が 資 金 を 拠 出 し,旧. ソ 連 諸 国(特. テ ロ リ ス トへ の. 際 の 取 り 組 み と し て はG8. に ロ シ ア)と. 協力事業を行 うこ. と に 主 眼 が 置 か れ て い た よ う で あ る 。TheG8GlobalPartnershipAgainst theSpreadofWeaponsandMaterialsofMassDestruction,June 2002,availableat<http://www.g8.gc.ca/2002Kananaskis/kananaskis/ globpart-en.asp>. (2)2008年5月28日. に ワ シ ン ト ン で 開 催 さ れ たPSI5周. 規 参 加 国 を 含 め て 合 計91力. 年 記 念 会 合 にお い て 新. 国 が参 加 して い る 旨 の報 告 が あ った。 外 務 省 ウ ェ ブ. サ イ ト 〈http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fukaku (3)コ. ア ・ グ ル ー プ は 日 本,米. リア,フ カ ナ ダ,ノ. ラ ン ス,ド. イ ツ,ス. ル ウ ェ ー,ロ. 国,イ. ギ リ ス,イ. ペ イ ン,ポ. _j/psi/〉 タ リ ア,オ. ー ラ ン ド,ポ. ル トガ ル,シ. シ ア の15力 国 で 構 成 さ れ,PSIの. を 果 た し て い た が 当 初 の 目 的 を 果 た し た と し て2005年. 参照。. ラ ン ダ,オ. ー ス トラ. ン ガ ポ ー ル,. 発 展 に中 心 的 な 役 割 に廃 止 され て い る。. (4)こ. の 点 に つ き 詳 し くは 外 務 省 ウ ェ ブ サ イ ト(註(2))参. (5)山. 本 吉 宣 教 授 は 有 志 連 合 を 次 の よ う に 定 義 す る 。 「あ る 特 定 の 具 体 的 な 課 題/. 28. 照 の こ と。.

(3) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 す る国 際 組 織 で はな い。PSIに. 関 して はす で に多 くの 論 稿 の 中で 国 際 法 上. の 問 題 につ いて 考 察 が 加 え られ て き た。 例 え ばMichaelByersは,PSIが 既 存 の 国 際 法 の 枠 内 に収 ま って い る点 を 強 調 し,米 国 を 多 国 間 の 枠 組 み の 中 につ な ぎ とめ て お く意 義 も含 め,そ れ へ の 支 持 を表 明 して い る(6)。 確か に,PSIは. 一 国 の単 独 行 動 に基 づ か な い 集 団 的 な 枠 組 み で あ り,後 に見 る. よ う に その 行 動 原 則 を 示 した文 書 は既 存 の 国 際 法 の 遵 守 を うた って い る。 しか しな が ら,PSIに. よ る国 際 法 体 系,と. りわ け海 洋 法 秩 序 に与 え る影 響. に懸 念 を示 す論 調 も多 い こ と も見 逃 す こ との で き な い事 実 で あ る(7)。 それ は,PSIの. 行 動 原則 及 び 対 象 とな る行 為 や 物 品 の 範 囲 に意 図 的 で あ るか 否. か は 別 と して,一 部 不 明 瞭 な部 分 が 存 在 して い る こ と,有 志 連 合 で あ る PSI自 体 の 位 置 づ けが 国 際 法上 不 明確 で あ る こ と,そ. して そ の 有 志 連 合 は. 国 際 法 上 の 包 括 的 定 義 が 未 だ 確 立 を み て いな い テ ロ リズ ム に対 す る戦 いの 一環 と して 構 築 され て い る こ と,と い っ た諸 点 が 原 因 で あ る よ う に思 わ れ る。PSIと \(タ. 国 際法 の一 般 的 な 関 係 は 依 然 と して 不 明 確 で あ る と いわ ざ るを. ス ク)に. 対 処 す る た め に,そ. 参 加 す る(ア. ドホ ッ ク な)連. れ に 賛 同 し(意. 合 で あ り,課. 格 を も っ た も の で あ る 」。 山 本 吉 宣. 志 を も ち),能. 力 を もつ 国 々が. 題 が 解 決 す れ ば 解 散 す る,と. 『「帝 国 」 の 国 際 政 治 学. ス テ ム と ア メ リ カ 」(東 信 堂,2006年)322-33頁. い う性. 冷戦 後 の 国 際 シ. 。 本 稿 で は 基 本 的 に この 定 義 に. 従 って 有 志 連 合 の 語 を 用 い る こ と にす る。 (6)MichaelByers,PolicingtheHighSeas:TheProliferationSecurity Initiative,98AM.J.INT'LL.526(2004). (7)PSIの. 下 で 予 定 さ れ て い る 行 動 の 範 囲 と 性 質 が 依 然 と し て 不 明 確 で あ り,と. り わ け そ れ が 提 唱 さ れ た 背 景 に 対 テ ロ 戦 争 の 一・環 と し て の (counterproliferation)」. 「拡 散 対 抗. が存 在 して い る と い う問 題 点 を指 摘 して い る論 稿 と. し て 次 の も の を 参 照 。DanielH.Joyner,TheProliferationSecurityInitiative: Nonproliferation,Counterproliferation,andInternationalLaw,30YALEJ. INT'LL.507(2005).な. お,PSIと. 国 際 法 規 範 の 関 係 につ き以 下 の 論 稿 も参. 照 の こ と。 坂 元 茂 樹. 「PSI(拡. 2004年,52-62頁,田. 中 祐 美 子 「テ ロ リズ ム の 国 際 規 制 に お け る 海 洋 の 役 割 と 機. 能9.11事. 散 防 止 構 想)と. 国 際 法 」 「ジ ュ リ ス ト」1279号,. 件 に よ る 対 テ ロ 政 策 の 変 化 と 海 上 規 制 」 栗 林 忠 男,秋. 『海 の 国 際 秩 序 と 海 洋 政 策 』(東 信 堂,2006年)123-54頁. 29. 。. 山 昌廣 編 著.

(4) 近畿大学法学. 第56巻第2号. え な い。. 本 稿 は,あ らた め てPSIの. 制 度 的 背 景 及 び規 定 内容 の 観 点 か ら国 際 法 規. 則 や 国 家 行 動 へ の 波 及 効 果 の 可 能 性 につ いて 検 討 を 加 え る こ と に よ り,そ れ が 大 国 に と って 有 利 な 「覇 権 的 国 際 法 」 の 一 端 を 担 い う る こ とを,い わ ゆ る 国 際 法 の 細 分 化(fragmentation)論. を 交 え つ つ 試 論 的 に考 察 す る も. の で あ る*。. *以. 下 の各 章 で 考 察 を進 め て い く上 で本 稿 の 表題 に もあ る 「国 際 法 秩 序 」 の 概. 念 規 定 を示 す こ とが 肝 要 で あ ろ う。 国 際法 秩 序 とは 何 か?こ た め に は国 際 社 会 の 存 在 論/認 識 論,国. の 間 に答 え る. 際社 会 特 有 の社 会秩 序 と法 秩 序 の 関 係. に関 す る形 而 上 並 び に経 験 科 学 的考 察 が不 可 欠 で あ り,も とよ り筆 者 の 能 力 の 限 界 を 超 え る。 しか しな が ら,本 稿 の 問題 意 識 に お い て この 間 は 重 要 な 地 位 を 占め てい るの も確 か で あ り,従 って ご く簡 潔 に この 点 につ いて触 れて お きた い。 一 般 に,規 則 的 あ る い は類 型 的 な行 動 が所 与 の社 会 に お い て生 成 し,そ れ が 集 積 す る こ と に よ って 次 第 に制 度 や 秩 序(社 会 秩 序)が 形 成 され る とい え る。 そ う して 生 まれ た社 会 秩 序 の一 部 が典 型 的 に は政 治 が 提供 す る推進 力 に よ り,一 定 の 経 路 を 辿 って 法 規 則 と さ れ る。 こ う した個 別具 体 的 な法 規 則 の 全 体 が 一 定 程 度 の 実 効 性 と体 系 性 を 有 す る と き,わ れ わ れ は そ れ を法 秩 序 と呼 ぶ で あ ろ う。 そ れ ゆえ,法 秩 序(お. よ び そ れ を取 り巻 く社 会 秩 序)の. 実 体 と性 質 は そ の. 時 代 の 社 会 原 理 と政 治 的 状 況 を反 映 せ ざ る を え な い。 統 一 的 な 立 法 機 関 が 存 在 しな い国 際 社 会 に お いて は特 に こ の側 面 が顕 著 とな る。 す な わ ち,国 際(法) 秩 序 は所 与 の権 力 構 造 に影 響 を受 け,一 定 程 度 そ れ を反 映 す るの で あ り,ま た そ れ に よ って 当該 秩 序 は実 効 性 を獲 得 し,行 為 者 の 行動 を枠 付 け る。 国 際 法 が 国 際 秩 序 の 主 要 な構 成 要 素 で あ る こ と は疑 い な い が,国 際秩 序 に は そ れ に と ど ま らな い よ り広 範 な 意 味 内 容 が 伴 う の も確 か で あ ろ う。See,e.g.,ALFRED VANSTADEN,BETWEENTHERULEOFPOWERANDTHEPOWER OFRULE:INSEARCHOFANEFFECTIVEWORLDORDER(Martinus Nijhoff2007).従. って 国 際 法 の世 界 で は秩 序 維 持 過 程 の一 部 に無 秩 序 を 不 可. 避 的 に 内包 せ ざ る を得 な い と もい え る。 しか しい ず れ に せ よ,そ の 秩 序 の 根 底 に は何 らか の共 通 利 益 意 識,原 則,価 値 が存 在 し,そ の(法)秩. 序を支えてい. る。 そ う した 中,多 国 間 主 義 は 国家 の単 独 意 思 や二 国 間 の共 同意 思 よ り も高 い 正 当 性 を持 って そ う した共 通 利 益,原 則,価 値 に接 近 す る チ ャ ンネ ル と して 国 家 間 レベ ル で 作 用 す る。 覇 権 国 の単 独 行 動 主 義 的政 策 と多 国 間主 義 の 関 係 の 考 察 は,従. って,国 際 社 会 の(法)秩. 序 維 持 の態 様 に つ い て有 意 義 な 視 点 を 提 供. す る よ う に思 わ れ る。 な お,米 国 の覇 権 が 国 際法 の諸 原 則 に 与 え る影 響 につ い て は 次 の 文 献 を 参 照 の こ と。UNITEDSTATESHEGEMONYANDTHE/. 30.

(5) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用. 皿PSIの. 性質 決定. 1.「 対 テ ロ措 置」 と して のPSI 冷 戦 終 結 以 降,WMD(そ. の 運 搬 手 段,関 連 技 術 等 を含 む)の 拡 散 問 題. が 国 際 社 会 の 重 大 な 懸 念 材 料 と して 登 場 して きた 。 も っ と も,WMDの. 拡. 散 に 関 す る条 約 は 冷 戦 中 か ら も存 在 して お り,例 え ば 核 拡 散 防 止 条 約 (NPT),包. 括 的核 実 験 禁止 条 約(CTBT;未. 発 効),化. 学 兵 器 禁 止 条 約,生. 物 兵 器 禁 止 条 約 と い っ た多 数 国 間 条 約 に よ り軍 縮/軍 備 管 理 の 国 際 法 が 一 定 程 度 の 成 果 を 収 めて き た。 中で もNPTはIAEAに. よ る査 察 制 度 と も相. 侯 って 核 不 拡 散 に つ い て 大 き な役 割 を 果 た して き た と い え る。WMDの 運 搬 手 段 につ いて は化 学 兵 器 禁 止 条 約 や 生 物 兵 器 禁 止 条 約 が そ の 保 有 等 を 禁 止 して い る。 だ が 通 常 兵 器 の 運 搬 手 段 に関 す る条 約 規 定 は存 在 して いな いの が 現 状 で あ る。 その 他,従 来 のWMD拡. 散 の 防止 対 策 と して,例 え ば ミサ イル 技 術 に関. して は 「ミサ イ ル 技 術 管 理 レ ジー ム(MTCR)」. や 「弾 道 弾 ミサ イ ル の 拡. 散 に対 処 す る た め のハ ー グ行 動 規 範(HCOC)」,原 は 「ザ ンガ ー委 員 会(ZAC)」. 子 力 関 連 技 術 に関 して. や 「原 理 力 供 給 グル ー プ(NSG)」,生. 化 学 兵 器 関 連 技 術 に関 して は 「オ ー ス トラ リア ・グル ー プ(AG)」. 物 ・ といっ. た輸 出規 制 ・輸 出 管 理 レジ ー ム が存 在 して い る(8)。しか し,こ れ らは 正 式 \FOUNDATIONSOFINTERNATIONALLAW(MichaelByers&Georg Nolteeds.,CambridgeUniv.Press,2003). 以 上 の 理 解 を 前 提 に,本. 稿 に お い て は と り あ え ず 国 際 法 秩 序 を,「 国 際 秩 序 に. 包 摂 さ れ つ つ も そ れ に 影 響 を 与 え る よ う な,主. に 国 家 間 に適 用 され る一 定 の 実. 効 性 と体 系 性 を 伴 っ た一 群 の規 範 や原 則 と して 国 際 社会 に お い て 認 識 され て い る も の 」 と して 措 定 す る こ と に す る 。 そ の 妥 当 性 に つ い て は 今 後 の 研 究 の 中 で 徐 々 に 検 討 して い く と い う こ と で ひ と ま ず 読 者 及 び 研 究 者 諸 兄 の ご 寛 恕 を 請 い た い。. 31.

(6) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. な 国 際 組 織 で はな く,単 な る協 議 の 場 な い しは拘 束 力 の な い紳 士 協 定 と称 す べ き もの で あ っ た。 2001年 の 米 国 同時 多 発 テ ロ は,米 国 の み な らず 国 際 社 会 全 体 に テ ロ リズ ムの 防 止 と処 罰 につ いて 強 く意 識 させ る き っか け とな っ た。 以 来,米 国 は 一 連 の 国 家 戦 略 に基 づ いて 「対 テ ロ戦 争 」 を 遂 行 して い る。 そ こ に お いて 重 大 な 脅 威 と して 浮 上 して き た の が テ ロ リス トに よ るWMD及. びその関. 連 技 術 の 獲 得 で あ っ た。 米 国 は2002年9月 Strategy:以. に 発 表 し た 国 家 安 全 保 障 戦 略(NationalSecurity. 下,「NSS」)(9)の 中で,テ. ロ に対 す る戦 い とWMDの. へ の取 り組 み を 国 際 社 会 に 宣 言 す る と と も に,テ. ロ リ ス トがWMDを. 得 す る危 険 性 を 指 摘 して い る。 同年12月 に発 表 され た 「WMDと 戦 略 」(以 下,「 対WMD国. 不拡散. 家 戦 略 」)(1① は,NSSの. 獲. 戦 う国 家. 中 に盛 り込 まれ て い た. 「拡 散 対 抗 」,「不 拡 散 」,「攻 撃 を 受 け た 場 合 の処 置」 に つ い て,さ. ら に具. 体 的 な 政 策 や 取 り組 み と して ま と めて い る。 従 来 のWMD関. 連 条 約 及 び拡 散 防 止 レ ジー ム は,前 者 に つ い て は 条 約. の 非 締 約 国 に対 す る規 律 の 問 題,後 者 につ いて は それ が 法 的 拘 束 力 を 有 す る 国 際 合 意 で は な い 点 で 限 界 が あ った 。 さ らに 両 者 に 共 通 す る問 題 と し て,従 来 の 条 約 制 度 及 び輸 出 規 制 ・輸 出管 理 レジ ー ム はWMD又. はその. 運 搬 手 段 等 の 輸 送 過 程 に お け る執 行 を 主 眼 とす る もの で はな か っ た点 が 挙 げ られ る。2002年12月 に発 生 した ソサ ン号 事 件ql)は,こ う した 不 備 及 び テ (8)こ. れ ら の 輸 出 管 理. と 輸 出 管 理. レ ジ ー ム の 概 要 に つ い て は,浅. 制 度 と 実 践 」(有. 信 堂,2004年)に. 田 正 彦 編 詳. 『兵 器 の 拡 散 防 止. し い 。. (9)TheNationalSecurityStrategyoftheUnitedStatesofAmerica, Sep.2002,availableat〈http://www.whitehouse.gov/nsc/nss.html>. (10)NationalStrategytoCombatWeaponsofMassDestruction, availableat〈http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/12/WMD Strategy.pdf>. (ll)2002年12月,イ. エ メ ン 沖(ア. デ ン 湾)を. 32. 航 行 中 の 貨 物 船. ソ サ ン 号(北. 朝 鮮 籍)/.

(7) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 ロ リ ス トへ のWMD拡. 散 問 題 を 米 国 に 強 く認 識 さ せ た 。 つ ま りPSIが. 提. 唱 され た背 景 に は大 量 破 壊 兵 器 の 拡 散 と テ ロの 増 大 と い う二 つ の 脅 威 が 結 び つ く こ と に よ っ て 更 な る 脅 威 が も た ら さ れ る と の 強 固 な 認 識 が 存 在 して い た と い え る ⑫。 こ う して2003年5月,ブ し た 。WMDの. ッ シ ュ 大 統 領 は ポ ー ラ ン ド訪 問 中 にPSIを. 拡 散 に 対 処 す る た め の 手 段 は,条. と し た 「不 拡 散(non-proliferation)」 こ と に よ る 防 護(protection)や (counter-proliferation)」 WMDの. 発表. 約 締 結 や 輸 出管 理 を 中心. に 加 え て,軍. 事 的 な 手 段 を用 い る. 阻 止(interdiction)を. 目指 す. 「拡 散 対 抗. も 含 め る 形 で 徐 々 に 発 展 し て き た(③が,PSIは. 拡 散 と テ ロ リズ ム の 結 合 を 「阻 止 」 す る こ と に 力 点 を 置 い た 取 り. 組 み で あ る と い え る 。 同 年9月. に 開 催 さ れ た 第3回. パ リ会 合 で は,PSIの. 目 的 を 確 認 し拡 散 阻 止 に 向 け た 原 則 を 定 め た 「拡 散 阻 止 原 則 宣 言(StatementofInterdictionPrinciples)」 同 宣 言 に よ る とPSIの. が 発 表 さ れ た ⑭。. 目 的 は 「国 内 法 上 の 権 限,国. 含 む 国 際 的 枠 組 み に 従 っ て,拡. そ の 結 果,船. 連安保理を. 散 懸 念 国 及 び 非 国 家 主 体 か ら の,並. \ が ス ペ イ ン艦 船 に よ る 威 嚇 射 撃 の 後,臨 掲 げ て お ら ず,船. 際 法,国. 検 ・捜 索 を 受 け た(ソ. び にそ. サ ン号 は 国 旗 を. 名 が 塗 りつ ぶ さ れ て い た こ と か ら 無 国 籍 船 舶 と み な さ れ た)。. 内 か ら北 朝 鮮 製 の ス カ ッ ド ・ ミ サ イ ル が 発 見 さ れ た 。 も っ と も,. そ れ ら は北 朝 鮮 と イエ メ ン間 の適 法 な契 約 に基 づ き買 主 で あ るイ エ メ ン政 府 へ 運 搬 さ れ る 途 中 で あ り,そ. の こ と 自体 は 国 際 法 上 の 違 反 行 為 で な か っ た た あ 船. 舶 は 釈 放 さ れ た 。 し か し な が ら こ の 事 件 はWMDの. 運 搬 手 段 の拡 散 が 現 実 に. 生 じ て い る こ と を 国 際 社 会 に 印 象 付 け る結 果 と な っ た 。 坂 元. 「前 掲 論 文 」(註(7)). 52頁 。seealsoThomShanker,ThreatsandResponses:ArmsSmuggling; ScudMissilesFoundonShipofNorthKorea,N.Y.TIMES,Dec.11,2002, atAl. (12)西. 田. 充. (2007年)33頁 ⑬. 「拡 散 に 対 す る 安 全 保 障 構 想(PSI)」. 『外 務 省 調 査 月 報 」 第1号. 。. 「同 上 論 文 」35-36頁. 。. (14)ProliferationSecurityInitiative,StatementofInterdictionPrinciples(September23,2003),availableatくhttp://usinfo.state.gov/products/ pubs/proliferation/#statements.. 33.

(8) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. れ らへ の 大 量 破 壊 兵 器(WMD),そ は輸 送 を 阻 止 す る た め,よ. の 運 搬 手 段 及 び関 連 物 質 の 移 転 若 し く. り組 織 的 か つ 効 果 的 な 基 礎 を 構 築 す る」 こ とで. あ る。 その た め に,同 宣 言 は 「国 際 の 平 和 と安 全 に対 す るか か る脅 威 を 懸 念 す るす べ て の 国 に対 し,同 様 の 阻 止 原 則 を 遵 守 す る」 こ とを 呼 びか けて い る。 同宣 言 は拡 散 懸 念 国 又 は非 国 家 主 体 を 定 義 した上 で,拡 散 阻 止 に向 け た 情 報 交 換,国. 内法 及 び 国 際 法 の強 化 を うた って い る⑮。 執 行 活 動 に つ いて. は,参 加 各 国 は 「国 内法 に お いて 許 容 され る範 囲 で,か つ 国 際 法 及 び国 際 的 枠 組 み の下 で の 国 家 の 義 務 に合 致 す る範 囲 で,WMD,そ. の運 搬 手 段 及. び 関連 物 質 の貨 物 に 対 す る 阻止 行 動 を 支 援 す る た め に 具 体 的 な 行 動 を と る」 と して い る⑯。 そ の 「具 体 的 な行 動 」 と して は,拡 散 懸 念 国又 は 非 国 家 主 体 が 関 わ る輸 送 へ の 関 与 禁 止,自 国 籍 船 舶 へ の 立 入 検 査,他 国 に よ る 自国 籍 船 舶 へ の 立 入 検 査,他 国 籍 船 舶 及 び航 空 機 へ の 立 入 検 査,疑 わ しい 航 空 機 の 自国 領 空 に お け る飛 行 禁 止,な. どが 挙 げ られ て い る。. つ ま り,こ の原 則 宣 言 に よ り描 き 出 され た よ う に,PSIは. 拡散懸念国な. い しは テ ロ リス トを 含 む 非 国 家 主 体 に関 す る情 報 を 共 有/交 換 し,独 自 に 又 は他 国 と共 同でWMD(そ. の運 搬 手 段 や 関連 物 質 も含 む)の 拡 散 を 防 ぐ. た めの 協 力 枠 組 み で あ る。 そ して その 行 動 は上 記 の よ う に参 加 各 国 の 強 化 され た国 内法 及 び既 存 の 国 際 法 の 枠 組 み に従 って 行 わ れ る こ とが 想 定 され て い る。 その 限 りに お いて,PSIに. 基 づ く活 動 が 国 際 法 上 問 題 にな る と は. 考 え に くいだ ろ う。. (15)具 体 的 に どの 国 家 又 は非 政 府 主 体 が 阻止 対 象 とな る か とい う点 に つ い て は同 宣 言 で はPSI参. 加 諸 国 が 決 定 す る とさ れ て い るだ けで 認 定 手 続 は定 め られ て. いな い。PSIの. 柔 軟 性 と機 動 性 を確 保 す る た め に意 図 的 に曖 昧 さを 残 した と. も考 え られ る。 西 田 「前 掲 論 文 」(註 ⑫)41頁. 。. (16)「関 連 物 資 」の 定 義 は 同 宣 言 中 に は見 られ な い 。2004年 の 安 保 理 決 議1540が 定 義 を 示 して い る もの の,関 連 物 資 の 範 囲 が か な り広 くな る恐 れ が あ る。. 34.

(9) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 ただ し,原 則 宣 言 は国 際 的 枠 組 み に従 って 行 動 す る こ とを 原 則 と しつ つ も,「関連 す る 国 際法 及 び 国 際 的枠 組 み を適 切 な方 法 で強 化 」す る こ と も う た って い る。 こ う して,テ. ロ に対 す る戦 い の 文 脈 の 中 に 位 置 づ け られ る. PSI及 び そ の基 本 原 則 と具体 的行 動 を 定 め る原 則 宣 言 は,既 存 の 国 際 法 を 超 え てWMDの. 拡 散 に 関 す る新 た な 法 と制 度 形 成 を指 向 す る性 質 を 内 在. させ て い る点 に留 意 す る必 要 が あ る。PSIは. 既 存 の 国 際 法 の 変 革 も視 野 に. 入 れ て い る と見 るべ きで あ ろ う。. 2.「 集 団化 さ れ た一 方 的行 為 」 と して のPSI PSIの 特 徴 は,そ れ が 国 際 組 織 と して 設 立 さ れ た わ け で は な い 点 で あ る。PSIは,そ. の趣 旨 に賛 同す る諸 国 が集 ま っ てWMDの. 拡散阻止のた め. に協 力 す る多 国 間 の 協 力 体 制 で あ るが,設 立 条 約 を 有 さな い と い う意 味 で は国 際 組 織 と して 位 置 づ け る こ とが で きな い。 した が って,そ れ は一 国 の 政 策 構 想 を 起 点 と して 誕 生 した,法 的 な 基 盤 を 持 た な い 「緩 や か な 国 際 制 度 」 とで も呼 ぶ べ き もの で あ る。 だ が,そ れ は 「緩 や か な 国 際 制 度 」 で あ る と 同時 に 目的 と価 値 を 共 有 す る諸 国 にの み 開 か れ て い る 「有 志 連 合 的 な 集 合 体 」 で あ る。 そ して その 有 志 連 合 が 既 存 の 国 際 法 の 変 革 を 国 際 社 会 全 体 に対 して(暗 黙 の う ち に)働 きか けて い る とす れ ば,そ れ は一 部 の 諸 国 に牽 引 され る 「集 団 化 され た一一 方 的 行 為 」 あ る い は 「一 方 的 な 国 際 措 置 」 と して 位 置 づ け る こ とが 可 能 で あ る よ う に思 わ れ る。 一一 方 的 行 為 ⑰ は ,外 的 環境 及 びそ の 他 の 社 会 的 な 条 件 が 変 化 しつ つ あ る. ⑰. 国 際 法 委 員 会 が 行 っ た一 方 的行 為 の法 的拘 束 力 に 関 す る法 典 化 の 試 み にお い て,基. 本 的 に 考 察 の 対 象 と な る 一 方 的 行 為 は 「一 方 的 宣 言 」 に 特 化 さ れ て い た 。. SeeOfficialRecordsoftheGeneralAssembly,Fifty-eighthSession, SupplementNo.10(A/58/10),Recommendation1(2003).本 行 為 に よ る 法 形 成 に ま つ わ る 諸 問 題 を 検 討 す る た め,一. 稿 は一 方 的 方 的 宣 言 の み な ら ず,. 国 内 法 制 定 や 国 家 当 局 に よ る 執 行 管 轄 権 の 行 使 等 も広 く そ の 範 疇 に 含 め る こ と/. 35.

(10) 近畿大学法学. 第56巻第2号. 法 の 変 動 期 に と られ る こ とが 多 い。 直 線 基 線 や 排 他 的 経 済 水 域 制 度 の 形 成 にみ られ る よ う に,一 方 的 行 為 の い くつ か は反 対 国 の 存 在 に も関 わ らず, 当初 の 例 外 又 は違 法 状 況 が 最 終 的 に国 際 社 会 に お け る一 般 的 妥 当性 を 獲 得 す る こ と に よ って 新 たな 法 の 形 成 へ と結 びつ く可 能 性 を 内包 して い る。 さ らに一 方 的 行 為 は,そ れ が 集 団 化 す る こ と に よ って 一 定 の 国 際 性 を 身 に纏 う場 合 が あ るG8)。国 際 法 上,多 国 間主 義 が正 当 性 付 与 の 重 要 な メ ル クマ ー ル で あ る とす れ ば,一 国 に よ る単 独 行 動 よ りも,何. らか の 国 際 的 な 枠 組 み. \と した い。 一 方 的 行 為 に関 す る一 般 的 な議 論 に つ い て は差 し当 た り以 下 の 文 献 を 参 照 。 山本 草 二 「一 方 的 国 内 措 置 の 国 際 法 形 成 機 能 」『上 智 法 学 論 集 」第33巻 2,3号(1990年)47-86頁,中 価(一)」. 谷 和 弘 「言 葉 に よ る一 方 的 行 為 の 国 際 法 上 の 評. 『国 家 学 会 雑 誌 」 第105巻1・2号(1992年)1-61頁,同. る一 方 的 行 為 の 国 際 法 上 の 評 価(二)」. 同 「言 葉 に よ る一 方 的 行 為 の 国 際 法 上 の 評 価(三 年)1-59頁,村. 「言 葉 に よ. 同106巻3・4号(1993年)243-298頁, ・ 完)」 同111巻1・2号(1998. 瀬 信 也 「国 家 管 轄 権 の 一 方 的 行 使 と対 抗 力 」 『国 家 管 轄 権(山. 本 草 二 先 生 古 希 記 念)」(勤 草 書 房,1998年)61-82頁,村 上 太 郎 「「他 者 規 律 的 」 一 方 的 行 為 の 国 際 法 上 の 対 抗 力 」 『一 橋 論 叢 」 第124巻 第1号(2000年)103-20 頁,竹. 内真 理 「国 際 法 に お け る一 方 的行 為 の法 的評 価 の 再検 討(一)」. 叢 」 第150巻 第6号(2002年)65-84頁,同 評 価 の 再 検 討(二)」. 『法 学 論. 「国 際 法 にお け る一 方 的 行 為 の 法 的. 「法 学 論 叢 」 第151巻 第4号(2002年)95-111頁. 。. (18)地 域 的 な 漁 業 管 理 機 関 又 は取 り決 あ に参 加 して い な い 非締 約 国 の 船 舶 の 当 該 漁 業 水 域 に お け る漁 業 を禁 止 す る 国連 公 海 漁 業 実 施 協定 の 第8条4項 漁 業 自 由 の原 則 やpactatertiis原. 則 か ら逸 脱 して い る 点 で,(海. は,公 海. 洋)国 際 法 の. 新 た な 方 向 性 を 目指 して い る。 かつ て筆 者 は別 稿 に お い て これ を 一 方 的 な 国 際 措 置(集 団 的 措 置)と 位 置 づ け た。 拙 稿 「 海 洋 環 境 及 び 漁業 資 源 保 護 の た め の 一方的行為 カナ ダ に よ る海 洋 管 轄 権 拡 大 行 為 を 素 材 と して 」『近 大 法 学 」第 53巻 第3・4号(2006年)383-412頁. 。 国 連 海 洋 法 条 約 の 新 海 底 制 度(第11部). に不 満 を有 す る先 進 諸 国 が1980年 代 初 頭 に一 方 的 な 国 内 法制 定 を 通 して 誕 生 さ せ た一 連 の 互 恵 的 レ ジ ー ム も こ こ に 含 め る こ と が で き る と思 わ れ る。ROBIN CHURCHILL&VAUGHANLOWE,THELAWOFTHESEA106(3ded. 1999),at232-33.周. 知 の通 り,第11部 は1994年 に採 択 され た 実 施 協 定 に よ り. 実 質 的 な 変 更 が 加 え られ る結 果 と な った。 も っ と も,以 上 の 点 に つ い て は いわ ゆる 「 有 志 連 合 方 式 」の 国 際 法 上 の評 価 の問 題 と も合 わ せ,そ の 「集 団性 」(「国 際 性 」)と 「一 方 的 行 為 性 」(単 独 性)に. 関 して具 体 的事 例 の検 討 に よ る さ らな. る類 型 化 と理 論 化 が 求 め られ る。 今 後 の 課 題 と した い。. 36.

(11) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 に基 づ く集 団 的 な 一一 方 的 措 置 の 方 に よ り多 く正 当性 獲 得 の 契 機 が 存 在 す る と いえ るだ ろ う。 PSIは 設 立 条 約 を 有 さな い 「緩 や か な 国 際 制 度 」 で あ る と同 時 に,積 極 的 な 「阻 止 」を主 眼 と した 有 志 連 合 的 な集 合体 で あ る。 さ らにPSIは の 国 際 法 の 変 革 を 指 向 して お り,ま た,そ の た めの"牙"を. 既存. 隠 し持 って い. る こ とか ら集 団 化 さ れ た 一 方 的 行 為 と して位 置 づ け られ る よ う に思 わ れ る。 仮 にPSIを. 以 上 の よ うな 形 で 性 質 決 定 した 場 合,「 有 志 連 合=集. 団化. され た一一 方 的 行 為 」 と して の 性 格 を 有 す る制 度 形 成 の 試 み と,(i)海 上 にお け る執 行 措 置 に関 す る現 行 国 際 法 との 調 整 問 題,(ii)現代 国 際 法 の 基 底 的 価 値 で あ る主 権 平 等 原 則 と と も に位 置 づ け られ て きた 多 国 間 主 義 との 一 般 的 な 関 係 が それ ぞ れ 問 わ れ る こ と にな ろ う。 以 下,章 を 改 めて これ らの 点 に つ いて 順 に検 討 して い き た い。. 皿. PSIは. 海上 における執行措置との関係. と りわ け海 上 にお け る臨 検 活 動 に主 眼 を 置 いて い る こ とか ら,そ. の 実 施 形 態 いか ん に よ って は国 連 海 洋 法 条 約 の 規 定 と衝 突 す る可 能 性 が あ る。 特 に領 海 に お け る沿 岸 国 管 轄 権 の 行 使 と公 海 にお け る旗 国 主 義 との 関 係 が 問 題 とな る。. 1.領. 海 にお け る執 行 活 動 の 可 能 性. 国 連 海 洋 法 条 約 第17条 は領 海 に お け る無 害 通 航 権 を 規 定 して い る。 同条 約 第19条1項. は無 害 性 の 一般 的 意 味 と して,「 通 航 は,沿 岸 国 の平 和,秩 序. 又 は安 全 を 害 しな い限 り,無 害 と され る。 無 害 通 航 は,こ の 条 約 及 び国 際 法 の 他 の 規 則 に従 って 行 わ な けれ ばな らな い」 と規 定 し,つ づ く第2項. に. お いて 無 害 で はな い と され る12の 行 為 を 列 挙 して い る。 そ して 沿 岸 国 は船 37.

(12) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. 舶 の 通 航 が 無 害 で あ る限 りそれ を 妨 害 して はな らな い と され る(第24条)。 と こ ろ で,第19条2項. が列 挙 す る無 害 で な い 行 為 に はWMDあ. るいは そ. の 運 搬 手 段,関 連 物 質 に関 す る行 為 は含 まれ て い な い。 従 って仮 にPSI参 加 国 が,自 国 領 海 内 に お いて 他 国 の 被 疑 船 舶 に対 し,そ の 旗 国 の 同意 な し に執 行 管 轄 権 を 行 使 す るな らば,そ の 行 為 は無 害 通 航 権 の 侵 害 とな り国 連 海 洋 法 条 約 に違 反 す る こ と にな ろ う。 た だ し解 釈 に よ って は そ う した執 行 活 動 が 許 容 され る余 地 が な いわ けで もな い。 その こ と は①19条2項 19条1項. の 規 定 趣 旨,②19条1項. と2項 の 関 係,③. の 規 定 内容,の 三 つ の観 点 か ら考 察 が 可 能 で あ る よ う に思 わ れ. る。 まず,19条2項. に列 挙 され た行 為 が 「限 定 列 挙 」 で あ るの か,そ れ と. も 「例 示 列 挙 」 で あ るの か と い う点 が 問 題 にな る。 も しそ こで 示 され て い る リス トが 第19条1項. に い う 「平 和,秩 序 又 は安 全 」 を 害 す る行 為 の 例 示. 的 な 類 型 で あ るな らば,例 え ばWMDの. 運 搬 を沿 岸 国 の 「平 和,秩 序 又 は. 安 全 」 を害 す る行 為 と して 臨 検 の 対 象 とす る こ と も可 能 とな る よ う に思 わ れ る。 それ が 網 羅 的 な 限 定 列 挙 で あ るな らば,そ う した沿 岸 国 に よ る執 行 活 動 は条 約 上 認 め られ な い こ と にな る。 この 点,1989年. に米 国 と ソ連(当. 時)が 締 結 した 「無 害 通 航 権 に 関す る 国 際法 規 則 の統 一 解 釈 」⑲ の 第3項 は, 第19条2項. の リス トが 網 羅 的(exhaustive)で. ある. つ ま り限 定 列 挙 で. あると. とみ な して い た。 従 って その 場 合 に は第19条2項. が 列 挙 す る活. 動 に従 事 して い な い 限 り当該 船 舶 に つ い て は 無 害 性 が 推 定 され る の で あ り,沿 岸 国 は無 害 通 航 を 妨 害 して はな らな い こ と にな る。 こ う した米 ソの 解 釈 は その 後 諸 国 に よ って 広 く採 用 され,そ の 結 果 慣 習 国 際 法 にな りつ つ あ る と の主 張 も存 在 す る(20)。 こ の立 場 を と る場 合 に は第19条2項. (19)UniformInterpretationofRulesofInternationalLawGoverning InnocentPassage,Sep.23,1989,reproducedin281.L.M.1444(1989). (20)ROBINCHURCHILL&VAUGHANLOWE,supranote18,at86-87. 38. を例示列.

(13) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 挙 とみ な す こ と に よ る執 行 管 轄 権 行 使 の 道 は閉 ざ され る こ と にな る。 た だ し,そ れ が 限 定 列 挙 で あ る場 合 で も,無 害 性 の 認 定 につ いて の 沿 岸 国 の 規 制 権 能 は広 範 で あ る こ とが 指 摘 され て い る(2t)。 次 に,19条1項. と2項 を 切. り離 して 解 釈 す る こ とが 可 能 とな る場 合 に は,沿 岸 国 に よ る執 行 活 動 の 許 容 範 囲 が 広 が る可 能 性 が あ る。 す な わ ち,た とえ 第19条2項. の リス トが 網. 羅 的 で あ る場 合 で も,同 項 に あ る 「行 為(activities)」 との 文 言 か らそ れ は行 為 態 様 に よ る規 制 に関 す る限 定 列 挙 で あ って,そ の 結 果,19条1項. を. 船 舶 の 行 為 態 様 に捉 わ れ な い一般 的 な 規 定 とみ な す こ とが で き,よ って 船 舶 の 積 荷 に よ る区 別 が 可 能 とな る との 考 え 方 で あ る。 例 え ば,杉 原 教 授 は 第1項. と第2項 の 関 係 につ いて 次 の よ う に述 べ,第1項. が 独 自の 機 能 を 有. す る こ とを 認 め る。 「解 釈 論 と して は,第2項. は船 舶 の 外 形 的 な活 動 ・行 動 に よ る無 害 性 を. 明 らか に した に と ど ま り,第1項. に含 まれ る その 他 の 基 準 内容 に は言 及 し. て いな い とみ るべ きで あ ろ う。 そ う解 す る こ と に よ って 第1項 の 存 在 理 由 が 理 解 され る こ と にな る。 したが って,第2項 な い場 合 で も,第1項. の いず れ の 活 動 に も従 事 し. に よ りな お無 害 性 が 否 定 され る可 能 性 が 残 る こ と に. な る。」四 そ う す る と,例 え ばWMD関. 連 物 質 を 積 載 した 船 舶 の通 航 を 禁 止 す る. 国 内法 上 の 根 拠 が 存 在 す る場 合 に は,い わ ゆ る船 種 別 規 制(通 航 目的 や 積 荷 に よ る規 制 も含 む)へ の 道 が 開 か れ る こ と にな ろ う。 も っ と も,こ う した沿 岸 国 に よ る管 轄 権 の 行 使 に も当 然 限 界 が 設 け られ るべ きで あ る。1958年 の 領 海 条 約 で は,第14条4項. が一般的かつ抽象的な. 規 定 内 容 で あ っ た こ とか ら,船 種 別 規 制 が 行 為 態 様 別 規 制 と並 び認 め ら ⑳. 山 本 草 二. 『国 際 法(新. 版)』(有. 斐 閣,1995年)369頁. 。SeealsoROBIN. CHURCHILL&VAUGHANLOWE,supranote18,at85-86. (22)杉. 原高嶺. は,山. 本. 『国 際 法 学 講 義 」(有 斐 閣,2008年)303-4頁. 『前 掲 書 」370頁. も参 照 。. 39. 。 な お この 点 につ いて.

(14) 近畿大学法学. れ,ま. 第56巻 第2号. た,「 沿 岸 国 の平 和,秩 序 又 は安 全」 につ い て の 認 定 権,つ. ま り無. 害 性 の判 断 が 沿 岸 国 に留 保 さ れ て い た㈱。 国 連 海 洋 法 条 約 第19条1項 領 海 条 約 第14条4項. は,. を その ま ま導 入 した もの で あ るが,そ の 背 後 に は第 三. 次 国 連 海 洋 法 会 議 に お け る先 進 諸 国 と開 発 途 上 諸 国 との 間 に お け る 自 由航 行 の利 益 と沿 岸 国 管 轄 権 の対 立 が存 在 して い た(2N。 新 条 約 に お い て 第19条 2項 が 新 た に設 け られ たの は沿 岸 国 の 裁 量 の 幅 を 狭 め る こ とが 目的 で あ っ た の で あ り㈱,上 記 した 解 釈 は 自 由航 行 の 利 益 に大 き な否 定 的影 響 を 与 え る こ と にな りか ね な い。 無 害 通 航 制 度 が 「公 海 自由 の原 則 の コ ロラ リー」(26) で あ り,沿 岸 国 に よ って 与 え られ る礼 譲 又 は恩 恵 で は な い⑳ こ とを 考 慮 に 入 れ つ つ,通 航 船 舶 と沿 岸 国 利 害 の 微 妙 な バ ラ ン スの 下 で,無 害 で な い通 航 を 防止 す る た め の 「必 要 な 措 置 」(国 連 海 洋 法 条 約 第25条)を が 求 め られ る こ とに な ろ う。 最 後 に,第19条1項. の第2文. とること. は,「 無 害 通 航. は,こ の 条 約 及 び国 際 法 の 他 の 規 則 に従 って 行 わ な けれ ばな らな い」 と規 定 して い る。 「国 際法 の他 の規 則 に従 って」と の表 現 に着 目す る と,第2項 の 存 在 如 何 に関 わ らず,何. らか の 行 為 が 無 害 通 航 の 基 準 を 超 え る と い う国. 際 法 上 の 規 則 が 新 た に誕 生 した場 合 に は,沿 岸 国 に よ る停 船 命 令,立 入 検 査,掌 捕,貨 物 の 押 収 が 可 能 とな る と読 む こ と も 出来 な くはな い。 特 に対 テ ロ措 置 を 定 め る安 保 理 決 議 が 具 体 的 内容 を 伴 って 採 択 され る よ うな 場 合 に は,こ の 規 定 の 解 釈 が 問 題 とな る可 能 性 が 存 在 す る。 国 連 海 洋 法 条 約 に 内在 す る動 態 的 性 格 ㈱ と も合 わ せ る と,WMD又. はそ. の 運 搬 手 段 や 関 連 物 質 を 積 載 す る他 国 籍 船 舶 を 取 り締 ま る国 際 法 上 の 権 利 (23)水 ⑳. 上千之. 『海 洋 法. 『同 上 書 』65-67頁. 展 開 と 現 在 』(有 信 堂,2005年)67頁. 。. 。. ㈲ROBINCHURCHILL&VAUGHANLOWE,supranote18,at85. (26)杉 ⑳. 原. 水上. (28)こ. 『前 掲 書 』(註(Z2))303頁 『前 掲 書 』(註(23))66頁. の 点 に つ い て は,拙. 稿. 。 。. 「北 西 航 路 の 国 際 法 上 の 地 位. 峡 制 度 の 交 錯 」 『近 大 法 学 』 第54巻4号(2007年)229-32頁. 40. 氷結 区 域 と国 際 海 を 参 照 の こ と。.

(15) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 義 務 が,関 連 条 項 の 解 釈 を 通 して 又 は それ を 許 容 す る国 際 法 規 則 の 成 立 を 主 張 す る こ と に よ って,特 定 の 沿 岸 国 に よ り主 張 さ れ る こ と も考 え られ る。 そ の場 合 に は,領 海 を 通 航 中 のWMD又. はその運搬手 段や関連物 質. を 積 載 す る他 国籍 船 舶 が接 合 説(79)に 基 づ き沿 岸 国 に よ る臨検 ・掌 捕 の 対 象 とな る こ とが 予 想 され る。. 2.公. 海 にお け る執 行 活 動 の 可 能 性. 公 海 に お け る管 轄 権 行 使 は原 則 と して 旗 国 主 義 に よ る(EEZに. お け る航. 行 利 用 も公 海 に お け る諸 規 則 が 適 用 され る:国 連 海 洋 法 条 約 第58条1項) もの の,海 賊 行 為,奴 隷 取 引,無 許 可 放 送,無 国 籍 船 舶,国 旗 の 濫 用 等 に つ いて の 合 理 的 な 疑 いが 存 在 す る場 合 に は海 上 警 察 権 の 行 使(臨 検 等)が 一一 定 の 他 国 籍 船 舶 に対 して 認 め られ て い る(同 第110条) 。 こ こ で もWMDの. 運 搬 等 は規 定 され て お らず,従. って国連海洋法条 約. 上,公 海 に お け る執 行 活 動 は旗 国 に よ る それ に依 存 す る こ と にな る。 も っ と も近 年,麻 薬 ⑳,移 民⑳,漁 業 資 源 保 護 勧の 分 野 にお いて 個 別 の 多 数 国 間. (29)接 合 説 は通 航 の無 害 性 の認 定 を沿 岸 国法 令 の遵 守 と結 び つ け る立 場 で あ る。 この 点,無 害 通 航 の 阻 止 につ い て は も っぱ ら国家 の 重要 利益 の 侵 害 の 有 無 を 基 準 と し,沿 岸 国 法 令 遵 守 の 如 何 とは 区 別 す る立 場(分 離 説)も 有 力 で あ る。 (3① 「麻 薬 及 び 向精 神 薬 の不 正 取 引 の 防止 に 関 す る 国 際 連 合 条 約 」(1988年 採 択, 1988年 発 効)。 同条 約 の 第17条 は 海 上 に お け る不 正 取 引 防 止 の た め の締 約 国 間 相 互 の 乗 船 及 び捜 索 につ い て規 定 して い る。 な お,米 国 は相 互 の 乗 船 及 び 捜 索 権 を 定 め る二 国 間 条 約 を 南 米 ・中米 や カ リブ海 諸 国 と別 途 締 結 して い る。 ⑳. 「国 際 的 な 組 織 犯 罪 の 防止 に 関 す る 国 際 連 合 条 約 を補 足 す る 陸路,海 路 及 び 空 路 に よ り移 民 を 密 入 国 させ る こ との 防 止 に関 す る議 定 書 」(国際 組 織 犯 罪 防 止 条 約 密 入 国 議 定 書)(2000年. 採 択,未 発 効)。 同議 定 書 第8条. は 「 海 路 に よ り移. 民 を 密 入 国 させ る こ と を防 止 す る措 置 」 に つ い て,締 約 国 間 相 互 にお け る乗 船 及 び捜 索 に関 して 規 定 して い る。 (32)「分 布 範 囲 が 排 他 的 経 済 水 域 の 内 外 に存 在 す る魚 類 資 源(ス トラ ド リン グ魚 類 資 源)及. び高 度 回遊 性 魚 類 資 源 の保 存 及 び 管理 に 関 す る1982年12月10日. の海洋. 法 に関 す る国 際 連 合 条 約 の 規 定 の 実 施 の た め の 協 定 」(国 連 公 海 漁 業 実 施 協 定)/. 41.

(16) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. 条 約 が 締 結 され,公 海 に お け る執 行 管 轄 権 が 拡 充 され る傾 向 に あ る点 は注 目 して よ いで あ ろ う。 公 海 に お け るWMDの. 輸 送 を,旗 国 主 義 を修 正 す. る形 で 定 め る多 数 国 間 条 約 が 成 立 す れ ば,そ の 当事 国 間 に お いて に よ って は非 締 約 国 も射 程 に入 れ つ つ. 場合. 積極的な海上警察活動が実現す. る可 能 性 も あ る。 この 点,1988年 正 作 業 が,2005年. の海 洋 航 行 不 法 行 為 防止 条 約(以 下,「SUA条 にSUA条. 約 」㈱ の 改. 約 改 正 議 定 書Gのの 採 択 とい う形 で 決 着 した。. この 改 正 作 業 は 同時 多 発 テ ロ直 後 の2001年11月 に国 際 海 事 機 関(IMO)総 会 に お いて 採 択 され た,SUA条 決 議 に端 を発 す る点 でPSIと. 約 を含 むIMO関. 結 果,従. 係 条 約 の 見 直 しを 求 め る. 少 な か らず 接 点 を 有 す る とい え よ う㈹。 そ の. 来 の シ ー ジ ャ ッ ク と い っ た テ ロ行 為 に 加 え,WMD及. \(1995年. 採 択,2001年. 発 効)。. 同 協 定 第8条4項. は,地. び その 関 連. 域 的な漁業管理機関又は. 枠 組 み に 同意 した国 のみ が 当該 公 海 漁 業 資 源 を 利用 で き る と定 め て い る。 同 協 定 成 立 の 背 景 及 び 本 協 定 の 国 際 法 上 の 意 義 に つ い て,拙 401-6頁 (33)海. 稿. 「前 掲 論 文 」(註 ⑱). を参照。. 洋 航 行 の 安 全 に 対 す る 不 法 な 行 為 の 防 止 に 関 す る 条 約(1992年. 日 本 は1998年. 批 准)。 同 条 約 は,パ. で 客 船 を 乗 っ 取 り 乗 客1名. レ ス チ ナ 解 放 戦 線(PLF)の. を 作 害 した1985年. 効 力 発 生,. 構成員が公海上. の ア キ レ ・ラ ウ ロ 号 事 件 を 契 機 に,. 海 上 テ ロ の 防 止 と 処 罰 に 向 け た 国 際 協 力 の た め に 国 際 海 事 機 関(IMO)に て 作 成 さ れ た 。 『国 際 関 係 法 辞 典(第2版)」 号 事 件 」 の 項 参 照(坂. 本 一 也 執 筆))。. 三 省 堂,2005年(「. な お,2000年10月. おい. ア キ レ ・ラ ウ ロ. に は,イ. エ メ ンに 給 油. の た め に 停 泊 中 の 米 国 駆 逐 艦 コ ー ル 号 が 海 上 自 爆 テ ロ に よ っ て 大 き な 人 的 ・物 的 被 害 を 被 っ た コ ー ル 号 事 件 が 発 生 し て い る 。JohnF.Burns&Steven LeeMyers,TheWarshipExplosion:TheOverviewBlastKillsSailorson U.S.ShipinYemen,N.Y.TIMES,Oct.13,2000,atA1. 鋤ProtocolstotheUNConventionfortheSuppressionofUnlawful ActsAgainsttheSafetyofMaritimeNavigation:Commentsonthe ProtectionsAffordedtotheShippingIndustry,availableat<http:// www.state.gov/t/isn/trty/81727.htm>. ㈲. 西 田 「前 掲 論 文 」(註 ⑫)57頁 議1540を. 。 改 正 議 定 書 の 前 文 に 「国 連 安 全 保 障 理 事 会 決. 想 起 し」 と の 文 言 が 見 ら れ る こ と か ら もPSIを. 策 の 強 化 との 関 連 性 が 認 め られ る。. 42. 含 む一 連 の対 テ ロ政.

(17) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 物 質 の 輸 送 も条 約 の 規 制 対 象 に含 まれ る こ と にな った(改 正 議 定 書 第3条 2項)。 そ して,新. た に公 海 上 の 外 国船 舶 に対 す る 臨検 に つ い て の規 定 が. 設 け られ た(改 正 議 定 書 第8条. の2)。. も っ と も,停 船 や 捜 査 の た め に は. 「合 理 的 な 疑 い」 と旗 国 に よ る 「授 権 」 を 要 す る と され て お り(改 正 議 定 書 第8条. の2の5),そ. の 意 味 で は依 然 と して 旗 国主 義 を 前 提 と して い る. と い え る(36)。 しか しな が ら,改 正 議 定 書 に よ る 規 制 対 象 行 為 の 拡 大 は SUA条. 約 お よび そ れ を 生 み 出 したIMOが,PSIと. の 接 点 を 意 識 的 に模 索. して い る こ とを 示 して い る よ う に思 わ れ る。 実 際,SUA条. 約 は公 海 にお. け る他 国 籍 船 舶(た だ し,旗 国 は 同条 約 の 締 約 国 で あ る必 要 が あ る)に よ る行 為 も規 律 の射 程 に含 め て い る点 でPSIを の よ う にSUA条 SUA条. 約 とPSIの. 補 強 す る働 きを 有 す るGの 。こ. 間 に は あ る 種 の 補 完 関 係 が 存 在 す る ㈱。. 約 が 改 正 され た こ と に よ りWMD及. 行 為 へ の加 担 が 犯 罪 化 さ れ た こ と はPSIを. び そ の 関連 物 質 の 輸 送 や 輸 送 含 むWMD不. 拡散体制 に とっ. て 大 き な意 義 を 有 して い る(39)。 対 テ ロ政 策 の 強 化 が 海 洋 に お け る執 行 管 轄 権 に新 たな 転 換 を も た ら しつ つ あ る と いえ よ う。 ま た,米 国 は2004年2月 (36)SUA条. 約 第9条. に は リベ リア とω,同 年5月. は,「 こ の 条 約 の い か な る 規 定 も,自. に は パ ナ マ(41)と 相 国 を 旗 国 と しな い 船 舶. 内 にお いて 捜 査 又 は取 締 りの た め の裁 判 権 を行 使 す る各 国 の 権 限 に関 す る国 際 法 の 規 則 に 影 響 を 及 ぼ す も の で は な い 」 と 定 あ,船 はjurisdiction)に ⑳. 西[H「. 前 掲 論 文 」(註(12))58頁. (38)「 同 上 論 文 」57-60頁 (39)「 同 上 論 文 」57頁. 舶 に 対 す る 裁 判 権(原. つ い て の 旗 国 主 義 を 確 認 して い る 。 。. 。. 。. (40)AgreementBetweentheGovernmentoftheUnitedStatesof AmericaandtheGovernmentoftheRepublicofLiberiaConcerning CooperationToSuppresstheProliferationofWeaponsofMass Destruction,TheirDeliverySystems,andRelatedMaterialsBySea, Feb.11,2004,availableat〈http://www.state.gov/t/isn/trty/32403.htm>. (41)AmendmenttotheSupplementaryArrangementBetweenthe GovernmentoftheUnitedStatesofAmericaandtheGovernment/. 43. 文で.

(18) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. 互 臨 検 を 定 め る二 国 間 条 約 を 締 結 した。 他 に も マ ー シ ャル 諸 島,ク ロ ア チ ア,キ プ ロ ス,ベ. リー ズ と い っ た諸 国 と 同種 の 条 約 を 積 極 的 に締 結 す る こ. と に よ って,相 互 臨 検 の 網 の 目を構 築 しつ つ あ る働。 これ らの条 約 は 公 海 やEEZに. お い て 被 疑 船 舶 の船 籍 が 一一 方 の 当事 国 の もの で あ る場 合 又 は無. 国 籍 船 舶 で あ る場 合 に は,臨 検,掌 捕,乗 員 の 起 訴 等 と い っ た執 行 管 轄 権 を相 互 に認 めて い る。 リベ リア との 条 約 で は,相 手 国 官 憲 か ら国 籍 の 照 会 を受 け た 場 合 に は2時 間 以 内 に 回 答 す る こ と を定 め て お り(第4条3項 (b)),2時. 間以 内 に 回 答 が無 か った場 合 に は,要 請 国 は被 疑 船 舶 に乗 船 し,. 捜 索 す る こ とが 認 め られ る(同 条3項(d))。 米 国 が りベ リア及 びパ ナ マ と 相 互 臨 検 条 約 を 締 結 した こ と は,便 宜 置 籍 船 の 効 果 に よ って 多 くの 船 舶 が 米 国 に よ る海 上 管 轄 権 行 使 の 潜 在 的 な 対 象 にな る こ とを 意 味 す る。 SUA条. 約 改 正 議 定 書 につ い て は,そ の 実 施 及 び履 行 にか か わ る コ ン ト. ロ ール 機 関 が 存 在 して いな い こ と に加 え,対 象 品 目の 特 定 が な され て いな い た め一 方 的 な 海 上 規 制 の 余 地 を 条 約 の 中 に残 して しま い,規 制 が 国 際 社 会 の混 乱 を もた らす こ と に な る可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る㈲。 ま た,強 制 力 の あ る安 保 理 決 議 が 採 択 され た場 合 に は,そ れ に基 づ い てPSI強. 制の ため. の 領 海 へ の 一一 方 的 な 執 行 管 轄 権 の 質 的 拡 大 措 置 が と られ た り,公 海 上 で の 普 遍 的 な 海 上 警 察 権 が 発 動 され た りす る可 能 性 も否 定 で きな いだ ろ う。 PSIへ. の参 加 国 が 増 加 す れ ば,世 界 中 の 海 に お け る監 視 機 能 が 強 化 さ. \oftheRepublicofPanamatotheArrangementBetweenthe GovernmentoftheUnitedStatesofAmericaandtheGovernment ofPanamaforSupportandAssistancefromtheUnitedStates CoastGuardfortheNationalMaritimeServiceoftheMinistryof GovernmentandJustice,May12,2004,availableat〈http://www.state. gov/t/isn/trty/32858.htm>. (42」 山 崎 元 泰. 「大 量 破 壊 兵 器 不 拡 散 体 制 の 間 隙 とPSIの. 層 化 に 向 け て 」 『早 稲 田 政 治 経 済 学 雑 誌 」365号(2006年)52-53頁 ⑬. 田 中. 「前 掲 論 文 」(註(7))148-49頁. 。. 44. 意 義. 阻 止 体 制 の 重 。.

(19) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 れ,緩 や か な 協 力 体 制 が,二 国 間 条 約 の 集 積 及 び上 記 の よ うな 波 及 効 果 と も相 侯 って 新 たな 公 海 秩 序 の 形 成 へ と帰 着 す る こ と も考 え られ る。 こ う し た 「緩 や か な 協 力 体 制 」 が,将 来 的 に多 数 国 間 条 約 を 成 立 させ る可 能 性 を 全 く排 除 して な い と は いえ,安 保 理 決 議,一 一 方 的 な 海 上 警 察 権 の 発 動,国 内法 の 制 定,二 国 間 条 約 の ネ ッ トワ ー クを 通 して 次 第 に浸 透 して い く過 程 は 国 際 法 秩 序 全 体 に い か な る影 響 を 与 え るで あ ろ うか 。 こ う した 観 点 か ら,改 め てPSIが. 拠 って 立 つ 背 景 につ いて 多 国 間 主 義 との 関 係 を 軸 に検 討. して み た い。. IV多. 1.覇. 国 間 主 義 との 関 係. 権 的 国 際 法 に基 づ く秩 序 化. (1)国 際 社 会 に お け る二 元 論 的 階 層 秩 序 の 登 場 米 国 の ブ ッシ ュ大 統 領 は2001年9月20日. の演 説 幽 にお いて 次 の よ うな 表. 現 を 用 い対 テ ロ戦 争 の 開 始 を 国 際 社 会 に宣 言 した。. 「自 由 の 敵(enemiesoffreedom)が. 戦 争 行 為(anactofwar)を. お. こ な っ た 。」. 「あ ら ゆ る 地 域 の あ ら ゆ る 人 民 は 今 や 決 定 を し な け れ ば な ら な い 。 我 々 の 側 に つ くか,テ. ロ リ ス トの 側 に つ くか,で. あ る 。」. これ らの 表 現 は二 つ の 意 味 で 象 徴 的 で あ る よ う に思 わ れ る。 第 一 に,非. 幽AddresstoaJointSessionofCongressandtheAmericanPeople, availableat<http://www.whitehouse.gov/news/releases/2001/09/print/ 20010920-8。html>.. 45.

(20) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. 国 家 主 体 に よ る攻 撃 が 戦 争 行 為 と して 認 識 され う る こ とを 明 らか に した こ と に よ り,自 衛 権 の 発 動 要 件 が,依 然 と して 否 定 的 な 見 解 が 多 い と は いえ 事 項 的 及 び時 間 的 に緩 和 され る き っか けを 築 い た こ とで あ る。 これ は テ ロ リス トを 匿 う国,WMDを. 開 発 して テ ロ リス トに渡 す 恐 れ の あ る国 に対 す. る先 制 的 自衛(preemptiveself-defense)又. は予 防 的 自衛(preventiveself-. defense)の 主 張 へ とつ な が って い くこ と にな る。 そ して 第二 に,国 際 社 会 が 「敵 」 と 「味 方 」 と い う二 元 論 的 秩 序 へ と移 行 し,さ らに そ こ に善 悪 に よ って 規 定 され る階 層 的 秩 序 が も た らされ た こ と に よ り,国 際 的 な 法 の 形 成 と執行 に 関す る多 国 間 主 義 の 修正 を もた ら しつ つ あ る とい う点 で あ る㈲。 この よ うな 善 悪 二 分 論 に よ る国 際 社 会 の 階 層 化 の 具 体 的 内容 は,平 和 と 民 主 主 義 が 確 立 され た 「文 明 国 」 は善 の 世 界 で あ り,秩 序 が 崩 壊 し,独 裁 政 権 が 支 配 し,文 明 国 に敵 対 的 な 「野 蛮 国 」 は悪 の 世 界 で あ る と い う こ と で あ る。 そ して 悪 の 世 界 と して 位 置 づ け られ る諸 国 は テ ロ リズ ムの 温 床 で あ り,こ う した国 に対 して,あ. る い は そ こ に潜 伏 し,そ こを 拠 点 と して 活. 動 す る テ ロ リス ト集 団 に対 してWMDを. 渡 して は な らな い と い う主 張 が. 導 か れ る こ と にな る。 その 脅 威 は切 迫 して お り,従 来 の 条 約 体 制 で は十 分 な 阻 止 を 実 現 す る こ とが で きな い た め,テ ロ リズ ム に対 抗 す る有 志 が 自発 的 に協 力 し,状 況 に応 じて 柔 軟 に対 処 す る必 要 が あ るPSIの ㈹. 発動 はま. メ ア リー ・カル ドー も次 の よ うに述 べ て新 た な二 元論 的秩 序 の 到 来 を 指 摘 し て い る。 「ブ ッ シ ュ政 権 に と って,ニ. ュ ー ヨー クや ワ シ ン トン に対 す る 攻 撃 は. 冷 戦 期 の 黒 白二 分 モ デ ル に回 帰 し,『 内部 』 と 『外 部」 の あ いだ の 境 界 を 引 きな お し,新 た な 『 他 者 」 を 識 別 す る好 機 で あ る よ う に み え た。」 メ ア リー ・カ ル ドー(山 本 武 彦 他 訳)『 グ ロ ーバ ル市 民 社 会 論:戦 争 へ の ひ とつ の 回 答 」(法 政 大 学 出版 局,2007年)214頁. 。 冷 戦 時 代 と対 テ ロ戦 争 時 代 の 二 分 論 の 差 異 は,前. 者 が 主 権 国 家 間 の 同盟 を機 軸 とす る領 域 的 に可 視 化 され た ブ ロ ッ ク間 の 対 立 で あ った の に対 し,後 者 は原 則 と して領 域 を超 越 した 非 国 家主 体 の ネ ッ トワー ク とい う 「非 領 域 的 な 外 部 」と の 「対立 」で あ る点 に存 す る と いえ るだ ろ う。 も っ と も,対 テ ロ戦 争 遂 行 上 はテ ロ リス ト支 援 国 家 の 同 定 を 通 した,「 敵 」の 積 極 的 な 可 視 化 が 行 わ れ る こ と にな る。. 46.

(21) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 さ に こ う した文 脈 の 中 に位 置 づ け られ る と いえ る。 ま た,善 悪 二 分 論 に基 づ く世 界 観 は懲 罰 的 な 武 力 行 使 も導 き 出す 。 一・ 方 的 な 武 力 行 使 の 発 動 要 件 を,「 武 力 攻 撃 の発 生 」 か ら 「テ ロ攻 撃 の脅 威 」, 「テ ロ支援 国家 の存 在 」,「WMDの. 取 得 」と い っ た基 準 も含 め る形 で 緩 和 す. る と,一 一 国 が 他 国 を 攻 撃 す る 口実 が 大 幅 に増 え る こ と にな る㈲。 「文 明 国 」 基 準 を 満 た さ な い 限 り 「ヨ ー ロ ッ パ 公 法(,juspublicum europaeuin)」 の世 界 へ の参 加 を認 め な い 態 度 は,古 典 的 国 際 法 時 代 の 大 国 に対 して 介 入 と支 配 の 格 好 の 口実 を 与 え て い た。 今 日,同. じよ うな 現 象 が. 見 られ る。 つ ま り,世 界 を,個 人 の 権 利 と民 主 主 義 が 繁 栄 す る平 和 な 世 界 と,国 家 秩 序 の 崩 壊,独 裁 政 権 に よ る広 範 な 人 権 侵 害 に よ って 特 徴 付 け ら れ る無 法 地 帯 に 区 分 す る考 え方 で あ る㈲。 この 思 考 様 式 は,国 家 承認 の 追 加 的 条 件 と して 民 主 主 義,法 の 支 配,人 権 の 尊 重 と い った 事 項 が 加 え られ る近 年 の 現 象 と も無 縁 で はな いだ ろ う(48)。. (46)AllenS.Weiner,TheUseofForceandContemporarySecurityThreats: OldMedicineノ. ∂rNewIlls?,59STAN.L.REV.415,495(2006).戦. 後 の平. 和 構 築 の 実 効 性 を高 め る た め に は戦 争 開始 時 に お け る 多 国 間 主 義 に基 づ い た 正 当 性 の 確 保 が 依 然 と し て 極 め て 重 要 で あ る 。 ま た,「 正 義 の 武 力 行 使 」 に お い て は 武 力 紛 争 法 ・国 際 人 道 法 が 軽 視 さ れ る 恐 れ が あ る が,た. と え そ れ が ユ ス ・ア. ド ・ベ ル ム を 満 た し た 「正 当 な 武 力 行 使 」 で あ っ た と し て も,そ て,ユ. の こ とを も っ. ス ・ イ ン ・ベ ロ 上 の 義 務 か ら逃 れ る こ と は で き な い 。 最 上 敏 樹. 憲 主 義 の 時 代 」(岩 波 書 店,2007年)51-52頁. 『国 際 立. 。. ⑳NicoKrisch,InternationalLawZhTimesofHegemony:UnequalPower andtheShapingoftheInternationalLegalOrder,16FiUR,.」.INT'LL. 369,386-87(2005).さ. ら に,文. 明 諸 国 の 内 的 関 係 に お い て は 経 済 ・軍 事 的 覇. 権 と 特 定 の 価 値 ・文 化 促 進 と い う 構 造 に 基 づ く 「イ ン フ ォ ー マ ル な 帝 国 シ ス テ ム」 が 形 成 され る。 山本. 『前 掲 書 』(註(5))145-201頁. 「帝 国 に よ る 国 際 社 会 の 組 織 化 と い う 問 題 は,極 て,わ. れ わ れ の 前 に 現 れ て く る 」 こ と に な ろ う。 篠 田 英 朗. (シ リー ズ 国 際 関 係 論1)」(東 ⑱. 。 そ う で あ る と す れ ば, め て 現 代 的 な 検 討 課 題 とな っ. 京 大 学 出 版 会,2007年)105頁. 旧 ユ ー ゴ ス ラ ビ ア 諸 国 の 国 家 承 認 の 可 否 が1991年. 『国 際 社 会 の 秩 序 。. に 欧州 共 同 体 によ り承 認 の. 条 件 と して 示 され た 指 針 に従 って 判 断 され た 例 が 想 起 され る。. 47.

(22) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. こ う して 現 代 の 「野 蛮 国 」 や 「未 開 国 」 は,文 明 的 世 界 に よ る囲 い込 み に よ る 「文 明 化 」 と 「正 常 化 」 の 対 象 とな る。15世 紀 に開 始 され た一一 連の 植 民 地 化 の過 程 が 西 洋 文 明 の 優 位 に基 づ く 「非 文 明 国 」 の 国 際 社 会 へ の 「強 制 的 編 入 」 で あ った の とは異 な り,現 代 の 「野 蛮 国 」 は 善 悪 二 分 論 に 基 づ く 「反 文 明 国 」 と して 国 際 社 会 か らの 「強 制 的追 放 」(権 利 剥 奪)の 対 象 と され るの で あ る㈹。 高 度 の 共 通 利 益 の 認 識 に基 づ く集 団 化 され た一一 方 的 行 為 は,参 加 不 参 加 は各 国 に まか され る有 志 連 合 で あ るが ゆえ に,な お一層 高 い機 動 性 が 実 現 され る。 だ が,場 合 に よ って それ は強 者 に よ る一一 方 的 な 性 質 決 定 に基 づ く 弱 者 の 囲 い込 み に もな りう る。 従 って 何 が 共 通 利 益 と され,い か な る制 度 上 の枠 組 み に 基 づ い て 当該 行 為 を 行 っ て い る の か と い う,実 質 的 及 び 形 式 ・手 続 的 な 正 当性 確 保 の 状 況 に対 す る視 点 が 不 可 欠 で あ ろ う。. (2)大 国/強 国 と国 際 法 NicoKrischは,大. 国 と 国 際法 の 関 わ りを 考 察 した論 考 の な か で,国 際. 法 は権 力 の 道 具 で あ る と 同時 に権 力 行 使 の 障 害 物 で も あ り,国 際 法 が 持 つ こ う した二 面 性 が 大 国 に と って の ジ レ ンマ を 構 成 す る と述 べ て い る6① 。 一一 方 に お いて,国 際 法 は歴 史 的 な 所 産 で あ り,そ れ ゆえ に正 当性 の 源 泉 とな る。 遵 守 へ の イ ンセ ン テ ィ ブ も そ こか ら生 じる。 ま た それ ゆえ に大 国 は 自 らが 望 む秩 序 を 実 現 す る た め,国 際法 を道 具 主 義 的 に用 い よ う とす る61)。 (49)イ. ラ ク 戦 争 の 際 に 拘 束 さ れ た イ ラ ク 兵 士 の 処 遇 や,グ. け る"敵. 性 戦 闘 員"に. ァ ンタ ナ モ 基 地 内 にお. 対 す る人 権 抑 圧 行 為 もこ う した考 え方 の 反 映 とみ る こ と. が で き る か も 知 れ な い 。 な お 後 者 に 関 し て,米. 連 邦 最 高 裁 は2008年6月12日,. 人 身 保 護 令 状 を 請 求 して 司 法 の 場 で 争 う権 利 を グ ァ ン タ ナ モ 基 地 に 収 容 さ れ て い る敵 性 戦 闘 員 に認 め な い こ と が合 衆 国憲 法 違 反 で あ る とす る判 決 を 下 した 。 Boumedienev.Bush,S.Ct.76U.S.L.W.4391(2008). (50)NicoKrisch,supranote47,at378-79. (51)Id.at377.. 48.

(23) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 しか し他 方 に お いて,「 国 際 法 は過 去 に 焦 点 を 当 て る こ と に よ って前 の 世 代 が 現 在 の 世 代 を 支 配 す る こ とを 認 め る。 この こ と は,強 力 な 行 為 者 が 自 らの理 想 に 従 って 国 際法 秩 序 を 再 構 築 す る こ と を 困難 にす る」。 な ぜ な ら 「国 際 法 の 変 容 は 広 範 な 合 意 を 必 要 と す る た め,通 cremental)だ. 常 緩 慢 か つ 集 積 的(in-. か ら で あ る 」勧。. と りわ け多 数 国 間 条 約 は主 権 平 等 原 則 に基 づ いて 形 成 され るた め,小 国 が そ の形 成 過 程 に お いて 連 帯 す る余 地 を 与 え る(53)。 当然,そ. の結 果 成 立 し. た多 数 国 間 条 約 は大 国 を 含 めす べ て の 当事 国 に対 して 平 等 に適 用 され る こ と にな り,大 国が 国 際法 を道 具 主 義 的 に用 い る余 地 は少 な くな る とい え る。 多 数 国 間 条 約 が 大 国 に よ る権 力 行 使 の 足 枷 とな る場 合 は多 い と考 え られ る融。. (52)Id. (53)第3次. 国 連 海 洋 法 会 議 に お け る 途 上 国 ・内 陸 国 等 の 連 帯 を そ の 一 つ の 例 と し. て 挙 げ る こ とが で き る。 働. 国 際 法 が 手 段 と して 機 能 し な い 場 合,NicoKrischに. よ れ ば 大 国 は 「離 脱 」,. 「再 構 築 」,「国 内 法 の 域 外 適 用 」 と い っ た 方 法 を 用 い て そ れ に 対 抗 し よ う と す る と い う 。NicoKrisch,supranote47,at371.そ. の 場 合,PSIを. 関連国際法. 規 の 「再 構 藻 」 に 向 け た 動 き と し て 捉 え る こ と も で き よ う 。 「離 脱 」 に つ い て は,例. え ば 米 国 は 京 都 議 定 書 か ら の 離 脱 を 宣 言 し,ICC規. 程 の 自国 に対 す る適. 用 を 排 除 す る 二 国 間 条 約 を 多 数 締 結 し て い る 。 「国 内 法 の 域 外 適 用 」 に つ い て も 国 際 経 済 の 分 野 を 中 心 に 多 く の 実 例 が 存 在 す る。 例 え ばGATT及 WTOの. び. 紛 争 解 決 機 関 に お い て 米 国 に よ る 一 方 的 な 貿 易 制 限 措 置 がGATT20. 条 の定 め る例 外 に該 当 す る か 否 か が 争 わ れ た (1991年,1994年),「. 「キ ハ ダ マ グ ロ 輸 入 規 制 事 件 」. エ ビ 輸 入 規 制 事 件 」(1998年)が. AgreementonTariffsandTrade:DisputeSettlementPanelReport onUnitedStatesRestrictionsonImportsofTuna,Aug.16,1991,30 LL.M.1594(1991);May20,1994,33LL.M.839(1994)andWorldTrade Organization:ReportofthePanelonUnitedStatesImport ProhibitionofCertainShrimpandShrimpProducts,May15,1998,37 1.L.M.832(1998);WorldTradeOrganization:UnitedStates‐lmport ProhibitionofCertainShrimpandShrimpProductsOct12,1998,38 1.L.M.118(1999).. 49. 有 名 で あ る 。General.

(24) 近畿大学法学. 第56巻 第2号. この 点,二 国 間 条 約 は大 国 が 影 響 力 を 行 使 す る た めの 道 具 と して は多 数 国 間 条 約 よ りもず っ と扱 いや す い もの で あ ろ う。 しか し,そ れ よ りも扱 い や す い の は お そ ら く条 約 規 定 に基 づ か な い有 志 連 合 方 式 で あ る と思 わ れ る。 つ ま り,多 国 間 条 約 よ りも二 国 間 条 約,そ れ よ りも ソ フ トか つ 階 層 性 の あ る 国 際法 を 大 国 は好 む の で あ る㈲。PSIも. こ う した 観 点 か ら眺 め る こ. とが で き る よ う に思 わ れ る。 PSIの. よ うな 有 志 連 合 と二 国 間 条 約 の 網 の 目の 構 築 に よ り多 数 国 間 条 約. を迂 回 す る方 法 は,実 現 を 目指 す 政 策 目的 いか ん に関 わ らず,小 国 に と っ て は手 続 的 正 義 の問 題 を生 じさせ る よ う に思 わ れ る。 例 え ば,PSIは. 法的. な 制 度 的 枠 組 が 欠 如 して い るの で 改 正 の 問 題 が 生 じな い(状 況 の 変 化 に応 じて 柔 軟 に対 処 す る こ とが で き る)一 一 方,多 数 国 間 条 約 を 作 成 す る際 の 国 際 会 議 に お いて 端 的 に示 され る よ うな 小 国 の 連 帯(団 結 に よ る交 渉)が 妨 げ られ る結 果,必 ず しも国 際 社 会 全 体 の 共 通 の 価 値 が 実 現 され る と は限 ら な い。 ま た,二 国 間 条 約 につ いて も,そ の 締 結 ・改 正 の 場 面 で は,国 家 間 の 力 関 係 が 反 映 され る た め,特 に大 国 に と って は有 利 で あ ろ う56)。 こ う した 法 形 成 な い しは秩 序 形 成 の 態 様 は,国 際 法 が 伝 統 的 に有 す る "強者 の法"の 側 面 を ク ロ ー ズ ア ップ させ て い くこ と にな る. 。 こ う して 米 国. を 中心 に ソ フ トな 法 形 成 が 推 進 され る結 果,国 際 法 の 根 本 原 則 と も言 うべ きpactatertiis原 則 は 依 然 と して 妥 当 す る傍 ら,イ. ンフ ォー マ ル な合 意 が. 第 三 者 を イ ン フ ォ ー マル に拘 束 す る事 態 が 発 生 す る余 地 が あ る。 そ して そ れ は,規 範 的 ・制 度 的 レベ ル に お け る,い わ ゆ る"国 際 法 の 細 分 化"現 象. ㈲NicoKrisch,supranote47,at390.「. イ ン フ ォ ー マ ル で あ る こ と(infor-. mality)は,正. 式 の 法 形 成 過 程 にお い て 主 権 平 等 の 拘 束 を 迂 回 す る こ とを 可 能. に す る の で,階. 層 性 を 設 定 す る 手 段 と して は 遥 か に 適 して い る 。」Id.at399.. (56)も. っ と も,条. 約 法 条 約 が 定 あ る 無 効 原 因 に 抵 触 し な い 限 り,得. 法 的 な 効 力 を 発 揮 す る の で あ っ て,こ. られ た 合 意 は. と さ ら こ の 点 を 強 調 す る必 要 は な い と す. る厳 格 な 法 実 証 主 義 的 立 場 も考 え られ る。. 50.

(25) 単独行動主義 と多国間主義の相互作用 を 推 進 し て い く こ と に も な る よ う に 思 わ れ る 。 ま さ に 現 在,「 絶 え ず 圧 力 を 受 け る こ と に よ っ て,国. 際 法 は よ り ソ フ トに,よ. り階 層 的 に,そ. して お. そ ら く よ り細 分 化 さ れ つ つ あ る 」 と い え よ う ㈱。. (3)安 保 理 決 議 に よ る正 当性 の 付 与 と こ ろで,こ. う した ソ フ トで イ ン フ ォ ー マル な 法 形 成 を 推 進 して い く過. 程 に お いて,国 際 社 会 を 説 得 す る た め に は何 らか の 正 当 性 基 盤 が 必 要 で あ る(58)。 大 国 の観 点 か らす れ ば,そ れ は抽 象 的 な 価 値 や 利 益 を支 え る確 固 た る基 盤 で あ る と 同時 に,条 約 が 有 す る様 々な 硬 直 性 か ら 自 由で あ る よ うな もの が 望 ま しいだ ろ う。 安 全 保 障 理 事 会 が 採 択 す る拘 束 的 な 決 議 は この 点 か ら言 え ば理 想 的 な 基 盤 を 提 供 す る と いえ る。 特 に冷 戦 終 結 後,安 保 理 は平 和 及 び安 全 保 障 に関 す る事 項 にお け る法 形 成 と法 執 行 の 中心 点 と して 立 ち現 れ て き た。 国 連 憲 章 第7章 の 下 で の 権 限 が 「国 際 の 平 和 と安 全 の 維 持 」 に限 られ て い る に も関 わ らず,安 保 理 はそ れ らの 用 語 を 広 く解 釈 して,全 て の 国 家 を 拘 束 し,他 の 法 的 権 利 義 務 よ り も優 越 す る よ うな 規 則 を 定 め る能 力 と意 欲 を 示 しつ つ 行 動 して きた(59)。 米 国 を 含 む 常 任 理 事 国 は,他 の 典 型 的 な 国 際 法 形 成 及 び執 行 過 程 よ りも容 易 (5のNicoKrisch,supranote47,at407. (58)山. 本 教 授 は 帝 国 シ ス テ ム が 依 拠 す る 正 当 性 と し て,現. 経 済 な ど),価. 値 規 範(民. 角 的 制 度 に よ る 合 意)の. 主 主 義,自. 由,人. 権,自. 世 利 益 的 な も の(安. 由 経 済 な ど),合. 全,. 意 手 続(多. 三 つ を 挙 げ て い る 。 山 本 吉 宣 「前 掲 書 」(註(5))218-19. 頁。 (59)ALANBOYLE&CHRISTINECHINKIN,THEMAKINGOFINTERNATIONALLAW(OxfordUniv.Press,2007),at109.そ. れ 以 外 に も安. 保 理 は 補 助 機 関 と して 旧 ユ ー ゴ 国 際 刑 事 裁 判 所(ICTY),ル 判 所(ICTR)と. ワ ン ダ国 際 刑 事 裁. い っ た 司 法 機 関 も決 議 に よ っ て 設 立 し た 。 タ ジ ッ チ 事 件 で は. こ の 点 が 争 点 の 一・ つ と な っ た が,同. 事 件 の 上 訴 裁 判 部 判 決 は 憲 章 第41条. く そ う し た 安 保 理 の 権 限 の 存 在 を 認 め て い る。InternationalCriminal TribunalfortheFormerYugoslavia,AppealsChamber:Prosecutor v.Tadic,351.L.M.32(1999),atpass.10-48.. 51. に基づ.

参照

関連したドキュメント

インタビュー調査は、 2017 年 11 月にクラウドファンディング・サイト「 A-port 」を

治的自由との間の衝突を︑自由主義的・民主主義的基本秩序と国家存立の保持が憲法敵対的勢力および企ての自由

が構築される。信頼が構築された両者間の関係は、相互に機会主義的行動をとる可能性が

その後、反出生主義を研究しているうちに、世界で反出生主義が流行し始め ていることに気づいた。たとえば『 New Yorker 』誌は「 The Case for Not

Trade Liberalization”, in Bhagwati (ed.), supra note 48, pp. Parry (ed.), The Consolidated Treaty

自由主義の使命感による武力干渉発想全体がもはや米国内のみならず,国際社会にも説得力を失った

インドの宗教に関して、合理主義的・人間中心主義的宗教理解がどちらかと言えば中

   立憲主義と国民国家概念が定着しない理由    Japan, as a no “nation” state uncovered by a precipitate of the science council of Japan -Why has the constitutionalism