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キンリョウへン Cymbidium floribundum 唇弁の着色がニホンミツバチ Apis cerana japonica の訪花行動にあたえる影響

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Academic year: 2021

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ミツバチ科学 24(3):115-118 HoneybeeScience(2003)

キンリョウへン

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訪花行動にあたえる影響

菅原 道夫,源 利文,清水 勇,東 克

花の色が花の加齢 とともに変化する現象は, 古 くか ら知 られている. この現象は,花粉媒 介者である昆虫や鳥類に花粉媒介がすでに必要 でな くなったというサインを花が出していると 考えられてきた.Weiss(1991)は,ランタナ

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を用い蝶の訪花行動が黄色の 花 (ランタナは最初黄色の花をつけ,それがオ レンジになり,さらに赤 くなる)に優先される ことを示 した.花が,蜜 という報酬を出し,煤 が黄色の花を訪花するように学習させていると 結論づけるている. シンビジュム属のランの中には,受粉が完了 すると唇弁が着色することが知 られているもの がある (ArdittiandKnauft,1969).蕊柱か ら 出るエチ レンの働きにより唇弁にアン トシアン が合成されるからとされている.キンリョウへ ンも蕊柱の花粉幌を取 り受粉すると (花粉随を 取 り除 くだけでも)唇弁が赤 く着色する.この 現象も,花粉媒介者を忌避する現象のように考 えられるが,証明 した報告はない. 今回,私たちは,受粉による唇弁の着色 とエ スレル (植物に散布するとエチレンを発生する 生理活性物質)の塗布による着色をキンリョウ I- 1 へンの花に施 し,着色 しない花 と同時に蜂に提 示することで,訪花行動に差が現れることを観 察 したので報告 したい. 方法 シンビジュムの栽培法 (向山,2000)に従っ て栽培 したキ ンリョウへ ンの赤茶色花 と黄色 花を実験に用いた.花粉媒介者の訪花を避ける ため,キンリョウへンは室内で開花させ,蜂に 提示する前には室外に出さなかった.二本の花 茎を残 し,他の花茎は切除 した.一本の花茎に 20- 25の花を残 し,一方の花茎の花を着色 し, 他方はそのままにした.蜂に提示する場合,着 色 した花茎 と着色 しない花茎の花の数を同数 と し,花の密集の程度,花の向きを可能な限 り同 等にした. 唇弁の着色は,同じ花の花粉髄を蕊柱につけ ることとエスレル (日産エスレル10,日産化 学工業, 1000倍希釈)塗布によっておこなっ た.いずれの着色も処理3日後には最大に適 し た.受粉による唇弁の着色は,蕊柱の肥大 と花 のお じぎを ともな う (図 1).一方,エスレル による着色では,花は形態的には変化せず,唇

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116 図2 エスレルによる赤茶色花の唇弁の着色 弁だけが着色 した (図2). 蜂蜜の採集を目的に しないで飼育するニホン ミツバチの巣箱か ら20m離れ,着色 した花を 屋外の机の上において峰の訪花を待 った.一度 に5頭以上の蜂が花を訪れたら個々の蜂の行動 を観察できな くなるので,観察時刻を蜂の活動 が少ない午前8時∼ 12時の間 とした.この時 刻は,雄蜂の訪花 もな く働 き蜂の訪花行動だけ を観察することができる.同 じ蜂の再訪花,他 の蜂への連絡がないようにするため,花の中に 体を挿入 した蜂は可能な限 り,ピンセッ トか「は え取 り棒」で捕獲 した. フォ トガイ ドの先端に唇弁を貼 り付け,唇弁 の吸光度をフォ トンカウンター (ユニソク)に よって測定 した.また,カメラの レンズの前に 400nm以上の長波長をカッ トするフィルター を とり付け, ASA1600のフイルムを使い,直 射 日光下で花の撮影を行い,花の紫外線写真を 撮った. (左 :エスレル塗布前,右 :エスレル塗布後) 結果 表 1は,赤茶色花における結果である.受粉 による着色では,二本の花茎を持つ株に近づい た蜂の うち 72%の峰が着色 していない花の唇 弁に触れた.さらに,そのなかの 34%の蜂が 花の中に潜 り込んだ.エス レルで処理を して着 色す ると 63%が着色 していない花の唇弁に触 れ,32%が着色 した花の唇弁 に触れた.いず れの場合 も,着色 した花の方が,着色 していな い花 よ り蜂の唇弁への接触は少ない. しかも, エスレルで着色 した方が,受粉で着色 したもの より蜂の訪花が多い.これは,受粉で着色する と,色が変わるだけでな く,花が うつむき,蕊 柱が肥大するという形態上の変化が花に起るこ とが原因で蜂の訪花が減少するか らと考えられ る. 表2は,黄色花のキンリョウへ ンを使 った場 合を示す.受粉 による着色では,64%が着色 しない花に触れ,エス レルでの着色では, 61 表 1 唇弁の着色の有無によるミツバチの訪花行動の比膜 (赤茶色花) 吉式験区 唇弁に接触 花に潜入 蜜腺 に到達 供試蜂数 受粉区 エスレル区1 エスレル区2 エスレル区 平均 未着色 36(72%) 17(34% 1(2%) 着色 10(20%) 0(0%) 3(6%) 未着色 24(67%) 13(36%) 0(0%) 着色 11(31%) 7(19%) 1(3%) 末着色 26(61%) 21(49%) 0(0%) 着色 14(33%) 4(9%) 3(8%) 末着色 63% 43% 着色 32% 14%

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117 表 2 唇弁の着色の有無 によるミツバチの訪花行動の比較 (黄色花) 言式験区 唇弁 に接触 花に潜入 蜜腺 に到達 供試蜂数 受粉区 1 受粉区 2 受粉区平均 末着色 25(58%) 4(9%) 5(12%) 着色 9(21%) 0(0%) 4(9%) 未着色 16(76%) 2(10%) 0(0%) 着色 5(24%) 0(0%) 0(0%) 末着色 64% 9% 着色 22% 0% エス レル区 1 エス レル区 2 エス レル区平均 末着色 12(60%) 9(45%) 2(10%) 着色 5(25%) 3(15%) 1(5%) 未着色 10(63%) 4(25%) 0(0%) 着色 6(38%) 0(0%) 0(0%) 未着色 61% 36% 着色 31% 8% %の蜂が着色 しない花に触れる.この差は,蘇 茶色花の時と同様,花の形態変化が原因と考え られる. 図3は,着色前の唇弁の吸収スペク トルから 着色 した唇弁の吸収スペ ク トルを差 し引いた, 差スペク トルである.赤茶色花の場合も,黄色 花の場合 も唇弁の着色 が, 500- 600nmに かけての吸光度の大幅な変化であることを示 し ている.着色は,唇弁にアン トシアンが形成さ れることによるので,この吸収は,緑∼黄色の 光が形成されたアン トシアンによって吸収され たことを示す. 図4はキンリヨウへンの赤茶色花の紫外線写 真である.他の花で知 られるような,花粉媒介 する昆虫に目立つ と考えられる紫外線を反射す る特別なマークを,キンリョウへンの花は持っ 戦 果 W u 虫 棚 図3 唇弁着色前後の差スペ ク トル (着色花 フォ トン数一着色前のフォ トン数)

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図4 赤茶色花の紫外線写真 (上 :着色後,下 :末着色) 着色 して も花香 の放 出には変化 がない (菅原, 未発表)ので,蜂の訪花 をキ ン リョウへ ンは花 香で コン トロール してい るのではない.花香に 誘わ れ花 に近づいた蜂は,視覚情報を頼 りに訪 花す る.花 は唇弁の着色 と花の形態変化で蜂が 未 だ受粉 していない花 の訪花 を指示 してい る. その中で も,光受容器 に受容 される光の強度が 花の訪花 におおき く働 くことを今 回の結果は示 した といえる. 謝辞 花 の色の変化,蝶の訪花行動,エス レルの作 用 についてお教 えいただいた,田中肇 (東京都 豊島区 ),蟻川謙太郎 (横浜市大),岡崎芳次 ( 大阪医大 )各氏に感謝 したい. (菅 原 :〒 570- 0008 守 口市 八雲 北町 1-29-5, 源,清水 :〒520- 2113 大津市上 田上平野町字 大塚 509- 3 生態学研究センター,東:〒 569-8585 高槻市大学町 2- 7 大阪医科大学生物学教 室 ) 引用文献 WelSS,M R 1991Nature354・227-229

Ardltti,I andR.L Knauft1969 Am J.Bot

56(6).6201628 向山武彦. 2000 蘭-その魅力のすべて (橋本清 美監修). 同朋舎 Autrum andV Zwehl1964 Zrvergl.Physiol・48 357-384. Sugahara.M 2000ZooIS°i17(suppl.):53.

MICHIOSUcAHARA,TosHIFUMIMINAMOT0,1sAMUSHl

-MIZU,KATSUAzUMA・Thechangesorcolo1-0日abium

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ofApISCeranajaponica.HoneybeeScience(2003)

24(3)I115-118 1)1-29-5,Yakumo-kita,Moriguchi, Osaka.570-0008Japan,2)CenterForEcological Research.KyotoUnlVerSlty,KamitanakamlhlranO. Otsu,Shiga.520-2113Japan,3)OsakaMedicalCol -lege,2-7.Daigaku-Takatsukl,Osaka,569-8585, Japan

CymblSJum Horl'bundLlm ChangesItslabiumcolor

oFflowerafterbeingpollinatedbyhoneybeesaswell asotherorchidsThischangemightFunctiontodeter unneccesarybeesFrom enterlngalreadypollinated f

lowerslnthisexperiment,wecomparedtheattrac -tivenessofthecolor-changedflowerInducedbyho n-eybeepollinationandbyethyleneSmallernumber ofhoneybeesaccessedロowerswithchangedcolor thanintactmowersinbothcasesandmoI・ebeeswere

deteredfrom pollinatedfoiowersprobablybecause oFthemorphologicalchangesafterpollination

図 4 赤茶色花の紫外線写真 ( 上 :着色後,下 :末着色) 着色 して も花香 の放 出には変化 がない ( 菅原, 未発表)ので,蜂の訪花 をキ ン リョウへ ンは花 香で コン トロール してい るのではない.花香に 誘わ れ花 に近づいた蜂は,視覚情報を頼 りに訪 花す る.花 は唇弁の着色 と花の形態変化で蜂が 未 だ受粉 していない花 の訪花 を指示 してい る

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