⑴ ※総合福祉学部 教授
はじめに
高齢者虐待問題に出会うたび,「養護者はなぜ虐待をしてしまうのか」という問いを考え ずにはいられない。虐待という現象は,自然発生的に起こるものではなく,原因があって虐 待という結果が起こるという因果関係でとらえることができる。つまり,虐待者が虐待行為 をすることによって起こるのであり,虐待者が虐待行為をしなければ起こらない。高齢者に 対する虐待も,養護者が虐待をしてしまうことで発生する。では,なぜ虐待をしてしまうの だろうか。当然の疑問ではあるが,その答えはそう単純に見いだすことはできない。 ソーシャルワークでは,人と環境の相互作用領域に焦点をあて,複眼的視点を持って支援 に当ることが重要であるといわれる。高齢者虐待問題で考えてみると,虐待をしている養護 者自身の状況とその養護者が置かれている環境(社会環境,物理環境,関係性など)との間 で虐待問題が発生し,それらを複眼的,全体的にアセスメントし,支援していくことを意味 する。しかし,養護者自身が抱えている問題は,養護者自身が虐待者であるためにアセスメ ントに必要な情報を直接的に得にくく,間接的に得られる情報だけでは十分にアセスメント を行えず,その結果,真に必要となる支援を行うことが難しい現実がある。 本研究は,養護者による高齢者虐待が発生している事例を通して,家庭内暴力の理解に用 いられる「権力power
」と「支配control
」の視点を糸口に,虐待者と被虐待者の関係性に焦 点をあて,養護者が虐待をしてしまう理由の整理と支援のあり方に関する研究成果を報告す るものである。具体的には,高齢者虐待と判断された事例をもとに,養護者が虐待をしてし まう理由を帰納法的にタイプ分けし,そのタイプに応じた養護者への支援の視点と具体的支 援方法を提示することを試みた。 本研究で使用している「養護者」とは,高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援 等に関する法律(以下「高齢者虐待防止法」という。)第2条第2項にいう「高齢者を現に在宅高齢者虐待の虐待者と被虐待者の関係性に
焦点をあてた介入実践モデルに関する研究
山 口 光 治
※⑵ 養護する者であって養介護施設従事者等(第5項第1号の施設の業務に従事する者及び同項 第2号の事業において業務に従事する者をいう。)以外のもの」であり,かつ,養介護施設 従事者等に該当しない高齢者を現に養護する事業者・居所管理者等は含まないものとした。
Ⅰ.研究の背景と目的
1.研究の背景 (1)全国調査にみる高齢者虐待の発生要因 今日のわが国の高齢者虐待を,厚生労働省「平成27年度 高齢者虐待の防止,高齢者の養 護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」1)でみると,養護 者による虐待と思われる相談・通報件数は26,
688件あり,そのうち,事実確認調査の結果, 市町村が「虐待を受けた又は受けたと思われたと判断した事例」(以下「虐待判断事例」と いう。)は,15,
976件となり,前年度から微増している。また,この調査から「虐待の発生 要因」についてみると,以下の表の通りである。 表1.虐待の発生要因(複数回答) 要 因 件数 割合(%) 虐待者の介護疲れ・ストレス 1,320 25.0 虐待者の障害・疾病 1,217 23.1 被虐待者の認知症の症状 852 16.1 家庭における経済的困窮(経済的問題) 759 14.4 被虐待者と虐待者の虐待発生までの人間関係 666 12.6 虐待者の性格や人格(に基づく言動) 550 10.4 虐待者の知識や情報の不足 511 9.7 虐待者の飲酒の影響 359 6.8 虐待者の精神状態が安定していない 345 6.5 被虐待者の精神障害(疑い含む)、高次脳機能障害、知的障害、認知 機能の低下 210 4.0 被虐待者本人の性格や人格(に基づく言動) 187 3.5 家庭における養護者の他家族(虐待者以外)との関係の悪さほか家族 関係の問題 160 3.0 被虐待者のその他の身体的自立度の低さ 127 2.4 虐待者の介護力の低下や不足 108 2.0 被虐待者側のその他の要因 60 1.1 虐待者の理解力の不足や低下 52 1.0 (虐待者以外の)配偶者や家族・親族の無関心、無理解、非協力 42 0.8 虐待者側のその他の要因 39 0.7⑶ 高齢者虐待の発生要因は,養護者の介護疲れや介護負担,ストレスやアルコール依存,精 神疾患,過去の家族関係史,高齢者の認知症状,経済的理由などが指摘され,それらを構造 的に理解すると,次のように整理できる。 ①高齢者側の要因:性格や人格,認知症による症状,身体的自立度の低さ,排泄の困難さ など。 ②虐待者側の要因:性格や人格,介護疲れ,ストレス,疾病や障がい(身体・知的・精 神),依存(アルコール,ギャンブルなど),介護知識や情報不足,
DV
など。 ③人間関係要因:過去の家族・夫婦関係,関係の拒絶など。 ④社会文化的要因:サービス利用への抵抗感,介護が当然という意識,近隣の無関心など。 ⑤経済的要因:経済的困窮,経済的利害関係など。 全国調査から,さまざまな虐待の発生要因が影響していることが読み取れる。しかし,高 齢者に対して虐待行為という方法(手段)を選び,直接的に用いて,最終的に引き金を引い て虐待行為をしたのは養護者自身である。どのような理由や背景要因があろうとも,支援者 はそれに揺らぐことなく,なぜ養護者は虐待行為を用いたのかに目を向けていく必要がある。 (2)人間の関係性に着目した先行研究 養護者という主として家族による高齢者虐待は,なぜ起こるのかという問いを考える際に 重要な分析視点のひとつに,「人間は関係のなかで生きている」という存在論的事実からの 発想がある。別の言い方をすると,「関係を生きる人間」として被虐待高齢者,虐待をして いる養護者をとらえることができる。被虐待高齢者は,その養護者(家族)との関係のなか 要 因 件数 割合(%) 家庭に関するその他の要因 26 0.5 家庭内の経済的利害関係(財産、相続) 25 0.5 虐待者の孤立・補助介助者の不在等 23 0.4 虐待者のギャンブル依存 20 0.4 虐待者の外部サービス利用への抵抗感 18 0.3 被虐待者への排泄介助の困難さ 17 0.3 ケアサービスの不足・ミスマッチ等のマネジメントの問題 6 0.1 被虐待者が外部サービスの利用に抵抗感がある 4 0.1 その他のケアマネジメントや制度関係の問題 3 0.1 虐待者に対する「介護は家族がすべき」といった周囲の声、世間体に 対するストレスやプレッシャー 1 0.0 (注)回答のあった5,276の事例を集計。 (出典:厚生労働省「平成27年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に 基づく対応状況等に関する調査結果」 http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500-Roukenkyoku- Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/0000155730.pdf 最終アクセス 2017年9月5日)⑷ で生きているし,虐待者も被虐待高齢者との関係を生きている存在であるといえる。そこ で,高齢者虐待が発生している事例を,あらためて虐待者と被虐待者の関係性に焦点をあて て分析し直し,家族機能のなかで虐待者がどのような影響を与え,それによって被虐待者は どのような影響を受け,どんな日常生活を送っているのかを見つめていく必要性を感じる。 養護者の虐待行為を説明する理論の一つとして,家庭内暴力の理解に用いられる「権力
power
」と「支配control
」の視点2)3)の着眼点が参考となる。この理論は,エレン・ペンス &マイケル・ペイマーの「ドゥルース・モデル」と言われ主張されている理論で,「暴力は 他人の行動を支配するために使われる」4)と捉えられるものである。つまり,暴力には意図 があり,その意図を無視し,ストレスや怒りや感情表現がうまくできないなどの結果であ るとするのは誤りであると指摘している5)。暴力は突発的な出来事でもなければ,積もり積 もった怒りやフラストレーションや傷ついた感情の周期的な爆発でもなく,あるパターン化 した行動の一部分なのだとしている6)。そして,身体的暴力や性的暴力は,「権力と支配の 車輪」7)にある行動(例えば,精神的暴力,孤立,子どもを取り上げるという脅迫など)の 効果を高めるためであり,それは恣意的に使われ,結果として,パートナーが自立する能力 を奪う8)としている。それを「平等の車輪」9)にある非暴力な方法による行動へと変わって いけるように,各種のアプローチを用いて暴力を振るう側の変化を促していく。この家庭内 暴力の分析理論と介入方法は,親子間や高齢者夫婦間で発生する高齢者虐待の事例において も,活用可能であると考えられる。これについては,すでに
NCALL
(National Clearinghouse on Abuse in Later Life
)が,ドゥ ルースモデルをもとに,高齢者虐待のWheel
を作成し,夫婦や恋人間だけでなく,親子につ いても共通なものとして組み込んでおり,警察官やソーシャルワーカー,検事や高齢者虐待 に関わるさまざまな専門家の教育のために活用されている10)。 また,その他の養護者の虐待行為を説明する理論として,ジョンソンの提案する4つのD Vのカテゴリー11)が参考となる。そのなかでは,2者間の関係性を次の4つに区分してい る。 ①「親密テロ(intimate terrorism, IT
)」:一人が暴力的で支配的(男性が殆ど),もう一人 は非暴力的。あるいは使ったとしても支配的ではない。 ②「暴力を使った抵抗(violent resistance, VR
)」:一人が暴力を使うが非支配的。自己防衛, 報復など(女性が殆ど)。もう一人は暴力的で支配的。③「状況に応じた暴力(
situational couple violence, SCV
)」:双方が非暴力的,被支配的。使 う暴力もマイナーなものが多く,支配的でない。④「相互暴力支配(
mutual violent control, MVC
)」:双方が暴力的,支配的。稀なパターン。 この区分のなかで参考になると思われるのは,「親密テロ」と「状況に応じた暴力」であ⑸ る。しかし,「親密テロ」は権力と支配の関係で起きる虐待行為に該当するので,もう一つ の「状況に応じた暴力」に着目し,この概念を養護者の虐待行為に当てはめて検討すると, 高齢者虐待の要因として最も多く指摘されている「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」に耐 えられず,気持ちに余裕がなくなり,衝動的に虐待行為をしてしまう場合が該当する。ま た,介護をしている養護者の,先が見えない不安も影響していると考えられる。そして,こ の区分は高齢者と虐待をしている養護者との関係性に関係なく,誰にでも衝動的,突発的に 起こりえる虐待であるともいえる。また,このパターンへの対応方法としては,介護環境を 変える,介護負担やストレスを軽減することで改善が期待できると思われる。 (3)老年期の家族類型と虐待の要因のタイプ12) わが国において参考になる先行研究としては,2002年に髙﨑絹子が「老年期の家族関係─ 家族類型と虐待の要因のタイプ─」と題する論文を公刊している。この論文のなかで髙﨑 は,高齢者虐待の要因を比較的単純に介護負担が重荷になって行為に及ぶ場合と,家族的 に,あるいは精神障害やアルコール依存などの問題がある場合とがあることを挙げ,こうし た要因をタイプ別に検討した結果として,次の5タイプに分類している。 ①介護負担蓄積型 ②力関係逆転型 ③支配関係持続型 ④関係依存密着型 ⑤精神的障害型 介護負担蓄積型は,負担の多い世話を継続することに疲れたり,疲労のストレスを高齢者 に向けてしまうタイプであり,このような事例への援助においては,介護や家事サービス, 心理的な支援などが重要であると指摘している。力関係逆転型は,子どもの頃に厳格な親に 育てられ,あるいは支配的な夫婦関係,嫁姑関係があった場合などで,高齢者の心身の衰え や介護をきっかけに,それまでの力関係が逆転し,虐待行為に至るとし,虐待者のストレス や心のわだかまりを解放させるアプローチが必要であるとしている。支配関係持続型は,長 い間親である高齢者が弱い立場におかれ,被支配的な関係が継続していた場合,高齢者の心 身の衰えがより支配-被支配関係を増強していくタイプで,虐待者の自覚を促し,持続した 力関係を絶つようにすることが必要であるとしている。関係依存密着型は,高齢者も虐待者 もそれぞれのアイデンティティが確立していない,共依存関係が根底にあり,介護負担が生 じたことによって虐待として現れるとし,第3者の支援やサービスの導入を図り,家族それ ぞれの自立,自律を図るアプローチが求められるとしている。精神的障害型は,高齢者か虐 待者のどちらかにアルコール依存や精神障害,人格障害がある場合,虐待の状況がより深刻 になるとし,専門病院などでの治療的アプローチとともに,幅広い支援のネットワークを大
⑹ きくすることが必要であるとしている。 これらの5タイプの分類とアプローチの方向性についての指摘は,筆者らの研究にとっ て非常に参考となるものであり,髙﨑が述べている「タイプの分類をすることが援助のアプ ローチの方法の際に役立つ」13)という視点も重要であり,単にタイプに分けることを目的と しないことに留意しなければならない。 2.研究の目的 本研究の目的は,養護者による高齢者虐待において,養護者が虐待をしてしまう理由を明 らかにし,そこから虐待をしている養護者のタイプを分類し,そのタイプに応じた養護者へ の支援のあり方を提示することを目的としている。そして,それらを通して高齢者虐待防止 の養護者支援実践に寄与することにある。
Ⅱ.研究方法
研究目的を達成するために,次のような手順で研究を進めた。まず,養護者による高齢者 虐待が発生している事例を収集し,高齢者虐待防止実践に関わる社会福祉士や臨床心理士等 とフォーカス・グループ(「高齢者虐待介入モデル検討委員会」)を開催し,虐待が発生する 構造と要因を,帰納法を用いてタイプ分類していく。そして,そのタイプに応じた養護者へ の支援の視点と具体的支援方法を整理し,提示することを試みた。 1.研究組織 本研究は,「実践・現場からの研究」と位置づけ,高齢者虐待防止実践の臨床と協働研究 を進めるために「高齢者虐待介入モデル検討委員会(以下,「検討委員会」という。)を組織 した。そして,首都圏の3地区の自治体に協力いただき,メンバーにその3地区の行政職員 と地域包括支援センター職員(各2名,計6名),高齢者虐待の研究者,虐待防止の学識経 験者,臨床心理士を招聘し,計10名で構成した。検討委員会は研究成果をとりまとめるまで 計15回開催された。 2.研究期間 本研究は2014(平成26)年4月より2017(平成29)年3月の間に実施した。 3.研究方法 (1)高齢者虐待事例の収集と分析 首都圏の3自治体の協力を得て,地域において高齢者虐待として判断された事例を収集⑺ し,虐待者と被虐待者の関係性や関係史に焦点をあて,虐待が発生する構造と要因,その影 響を,検討委員会において議論し,事例の比較・検討を進め養護者のタイプ別に分類・整理 を積み重ねていった。 (2)養護者のタイプ別分類化と支援方法ガイドの策定 収集できた虐待事例の詳細な情報をさらに集めながら,検討委員会のなかで養護者が虐待 をしてしまう理由をタイプ別に分類した。そして,それぞれのタイプに合わせた支援のあり 方について,自治体での養護者支援例を踏まえて整理し,養護者支援ガイド(案)を策定す る。 (3)策定されたタイプ別分類と支援方法の検証 研究に協力していただいた3地区の高齢者虐待防止担当者及び地域包括支援センター相談 員等に養護者支援ガイド(案)を説明し,実践現場での虐待対応における活用可能性につい て検証を行った。検証は,新たな高齢者虐待事例にあてはめ,養護者支援に役立つか意見を 聴取し,タイプの分類の仕方や支援方法等を加筆・修正した。 4.倫理的配慮 本研究事業を遂行するうえでは,淑徳大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。ま た,『一般社団法人日本社会福祉学会研究倫理指針』に則って行動し,倫理的問題等が生じ ないように努めることを前提として,以下の事項についても遵守して実施した。 市区町村への協力要請にあたっては,書面で調査の目的とデータの使用目的などを十分に 説明し,そのうえで協力の同意を得て実施し,調査対象者から得たデータの管理については 十分な秘密保持の配慮と厳重な管理を行った。報告書に調査結果を掲載する場合には,調査 協力者の同意のうえで個人が特定されないように加工を行うなどプライバシーに配慮した。
Ⅲ.研究結果
1.虐待をしている養護者の5タイプ 高齢者虐待が発生している12事例を5回のフォーカスグループにて報告・検討し,見えて きた「養護者が虐待をしてしまった理由」を,収集できた情報のなかで解釈し,試行的に5 つのタイプに分けた。そして,各タイプの「名称」と「説明」,「特徴と具体例」,「キーワー ド」を提示し,加えて各タイプの「支援の視点と方法」を整理し,養護者支援ガイド(案) を策定することができた。 研究開始当初は,家庭内の虐待者と被虐待者の関係性を,先に述べた「権力」と「支配」 の視点からとらえ直していこうと進めてきたが,虐待事例を分析するなかで,必ずしも「権 力」と「支配」の視点だけで虐待者と被虐待者の関係性を捉えることができず,そのほかの⑻ タイプ化を図ることに至った。タイプは,次の5つである。 ①権力と支配型 養護者が高齢者の行動を支配するために,意図的であるかどうかに係らずに暴力や虐待行 為を日常的に用いている虐待をいう。 ②ストレス衝動型 高齢者と養護者の置かれたその時の状況によって,誰にでも衝動的,突発的に起こり得る 虐待をいう。 ③メンタル特性型 養護者自身に知的,発達,精神などの特性があることによって引き起こされる虐待をい う。 ④現状否認型 高齢者が老いていくことや認知症などによって変わっていく現実を養護者が受け入れられ ない,あるいは受け入れよう,理解しようとせずに現状を否認することによって起こる虐待 をいう。 ⑤承認欲求型 高齢者よりも養護者自身が他者から認められ,褒められたいために介護や世話をするなか で起きる虐待をいう。 なお,虐待をしてしまう養護者のタイプを分類するにあたり,虐待の形態(身体的虐待, 心理的虐待,性的虐待,経済的虐待,世話の放棄・放任)には限定していない。なぜなら ば,どの虐待形態も,どの養護者のタイプにも含まれることが考えられるからである。ま た,一つの虐待事例でも,複数のタイプが混在して起きている場合があり,必ずしも一つの タイプに分類されるものではないことを申し添えておきたい。 2.養護者のタイプ分類と支援方法の検証 虐待をしている養護者の5タイプと支援の方法等について整理した内容が,策定時に基に した12の高齢者虐待事例以外にも適用が可能か否かについて検証するために,3地区におい て新たに発生した高齢者虐待事例を対象に分析を行った。対象にした事例は21事例で,その 結果,全ての事例が5タイプに分類することができた。ただし,必ずしもすべての事例がき れいにそれぞれのタイプに収まるものではなく,どのタイプの側面が最も強いか,大きいか の違いがあることがわかった。また,一つの虐待事例でも,複数のタイプが混在して起きて いる場合があり,その場合は,該当する各タイプの特徴と支援方法を参考に,対応していく ことが必要であることも明らかになった。 詳細な検証結果は,紙面の都合で研究成果報告書14)をご覧いただきたい。
⑼
Ⅳ.考 察
1.虐待をしている養護者への支援 3地区の自治体の協力により,高齢者虐待事例を基に虐待をしている養護者のタイプ分類 と支援の方法等について検討し,更に事例を追加して検証し,最終的に養護者支援に資する ツール(養護者支援ガイド)を策定するに至った。このツールは,高齢者虐待の養護者支援 を進めるにあたり,その養護者はどのタイプに近いのかを分析し,どのような視点を持ち, どんなことに留意し,どう支援を進めていくかを検討する際に,参照し,活用可能なものを 目指した。特に,高齢者の安全のために高齢者自身を一時的に分離する場合や分離後に再度 自宅へ戻すような分離解除を行う場合など,養護者への対応を検討し,実行しなければ虐待 が改善せず,再発してしまう場合もある。そのような際にも活用できるように整理した。 このタイプ化とタイプ別支援方法は,「タイプに分ける」ことを目的としているのではな く,「養護者の虐待の原因分析と対応の仕方を検討し易くする」ことを目的としている。ま た,何タイプであるということをラべリングする(レッテルを貼る)ことが目的ではなく, その養護者に合った支援のあり方につなげていくことを目的としている。このツールの高齢 者虐待防止実践現場への普及と活用の促進は,今後の課題と言える。 2.被虐待高齢者支援の優先性と養護者支援 高齢者虐待防止法では,虐待防止について高齢者の権利利益の擁護に資することを目的と してうたい,虐待対応においては,まず,被害を受けている高齢者の安全確保に取り組むこ とを最優先としている。そして,虐待をしている養護者への支援は,その後,必要に応じて 取り組むこととなる。しかし,養護者支援にあたっては,行政や地域包括支援センターなど の関係者が,暴力を振るう養護者に積極的に関わりたくないことや養護者の性格や行動は, どんなに助言をしても変え難いことなどにより,十分に取り組まれない場合もある。 先に述べたように,養護者が虐待をするから問題が起こるのであり,養護者に対して, 「この人は,なぜそういうこと(虐待と思われる行為)をするのだろうか?」「養護者にとっ て,その行為の意味は何か?」という点に目を向けること,つまり,養護者がなぜ虐待行為 をしたのかという理由を考えることは重要である。それを抜きにして,真の虐待解決はでき ないと言える。そのためには虐待をしていると思われる養護者の状態を詳しく把握し,アセ スメントするなかで虐待に至る理由の原因仮説を立てる必要がある。そして,その原因仮説 に対して,どのように対応するかという「方法仮説」を策定していくことが必要であり,そ の際の手引きになるものが本研究の成果と言えよう。⑽
Ⅴ.結 論
本研究において,養護者に対する支援のための,虐待をする理由による養護者のタイプ分 類と支援方法を整理し,最終的に養護者支援ガイドにまとめることができた。ガイドは論文 末に挿入している。 本ガイドが高齢者虐待対応現場の養護者支援に役立つことを期待したい。おわりに:本研究の限界と今後の課題
本研究に取り組むにあたり,関係機関のご協力により,多くの高齢者虐待事例を素材に検 討を進めることができた。しかし,得られた事例情報は,基本的には行政職員や地域包括支 援センター職員が高齢者や養護者と出会い,その場の状況や当事者の語りから得た情報に加 え,担当者の推測や判断,見立てという主観に影響された情報も含まれている。したがっ て,虐待をしている養護者が何を考え行動したか,真の原因は何かなどについては,支援者 のフィルターを通して,得ることができる限られた情報に基づく判断であり,それをもとに 検討せざるを得なかったことが,本研究の限界といえる。 また,タイプ別の支援方法の妥当性に関しては,実際の支援例を参考に作成したものの, その支援方法の整理に時間がかかり多くの実践現場からの意見を取り入れた検証が十分にで きていない。これは今後の課題であるとともに本研究の限界といえる。 さらに,養護者の支援にあたる専門職は,支援の方法論だけでなく養護者との関係によっ て生じるストレスや感情の変化をどう調整していくか,適切な助言やスーパービジョンを受 ける機会が少ないなどの課題を抱えていることも明らかになった。専門職がどのような困難 さを感じているか,また,支援に必要となる知識・技術は何か,専門職が求める支援体制は どうあるべきかなど,養護者支援に取り組む専門職への支援も今後の研究課題として指摘し ておきたい。謝 辞
本研究に快くご協力いただいた自治体,地域包括支援センターの皆様,そして検討委員と してご協力いただいた皆様に,この場を借りて改めて厚く御礼申し上げます。 本研究はJSPS
科研費26380768の助成を受けたものです。 引用文献 1)厚生労働省「平成27年度 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 に基づく対応状況等に関する調査結果」 http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12304500 -Roukenkyoku-Ninchishougyakutaiboushitaisakusuishinshitsu/0000155730.pdf (最終アクセス2017年9 月5日).⑾
2)Ellen Pence, Michael Paymer(1993).Education Groups for Men Who Batter The Duluth Model. エレン・ ペンス,マイケル・ペイマー編著,波田あい子監訳,堀田碧・寺澤恵美子訳(2004)『暴力男性 の教育プログラム ドゥルース・モデル』誠信書房.
3)Lundy Bancroft(2002).Why Dose He Do That? ランディ・バンクロフト著,高橋睦子・中島幸
子・山口のり子監訳(2008)『DV・虐待 加害者の実体を知る─あなた自身の人生を取り戻すた めのガイド』明石書店. 4)前掲書2)1頁. 5)同掲書2頁. 6)同掲書4頁. 7)同掲書3頁. 8)同掲書4頁. 9)同掲書12頁.
10)NCALLホームページ「Abuse in Later Life Power & Control Wheel」http://www.ncall.us//FileStream. aspx?FileID=27(最終アクセス2017年9月5日).
11)Johnson, M. P. (2006).Conflict and control gender symmetry and asymmetry in domestic violence. Vio-lence Against Women, 12(11), pp.1003-1018.
12)髙﨑絹子(2002)「老年期の家族関係─家族類型と虐待の要因のタイプ─」『日本女性心身医学 会雑誌』7(2),198~206頁. 13)同掲書203頁. 14)山口光治(2017)『在宅高齢者虐待の虐待者と被虐待者の関係性に焦点をあてた介入実践モデ ルに関する研究(課題番号26380768) 平成26年度~29年度科学研究費助成事業科学研究費補助 金基盤研究(C)研究成果報告書』 参考文献 尾崎礼子(2015)『改訂新版DV被害者支援ハンドブック』朱鷺書房.
Johnson, M. P., & Cares, A. (2004, November). Effects and noneffects of childhood experiences of family vio-lence on adult partner viovio-lence. Paper presented at the annual meeting of the National Council on Family Rela-tions, Orlando, FL.
Johnson, M. P., & Leone, J. M. (2005). The differential effects of intimate terrorism and situational couple vio-lence: Findings from the National Violence Against Women Survey. Journal of Family Issues, 26(3), 322-349.
⑿ 資料:養護者支援ガイド タ イ プ 1 権 力 と 支 配 型 説 明 権 力 と 支 配 型 と は 、養 護 者 が 高 齢 者 の 行 動 を 支 配 す る た め に 、意 図 的 で あ る か ど う か に 係 ら ず に 暴 力 や 虐 待 行 為 を 日 常 的 に 用 い て い る 虐 待 を い う 。 特 徴 と 具 体 例 【 特 徴 】 突 発 的 な 出 来 事 で は な く 、積 も り 積 も っ た 怒 り や フ ラ ス ト レ ー シ ョ ン の 爆 発 で も な い 、 日 常 的 に パ タ ー ン 化 し た 行 動 の 一 部 分 で あ る 。 【 具 体 例 】 ① 暴 力 を 用 い て 高 齢 者 を 脅 迫 し 、金 銭 を 無 心 す る 。要 求 が 通 る と 優 し く な る の で 、 高 齢 者 は そ の 優 し さ が 欲 し く て 言 う 事 を 聞 い て し ま う 。 ② 虐 待 を 受 け て 育 っ て き た 子 ど も が 、親 と の 力 関 係 が 逆 転 し 、暴 言 を 吐 き 、 暴 力 を 振 る う 。 ③ 夫 が 妻 を 支 配 す る た め に 、他 者 と 会 う こ と な ど を 制 限 し 、社 会 的 に 孤 立 さ せ る 。 支 援 の 視 点 と 方 法 【 支 援 の 視 点 】 権 力 と 支 配 型 は 、養 護 者 と 高 齢 者 が お 互 い に 依 存 関 係 の 中 に 置 か れ て い る こ と を 認 識 し 、支 援 に あ た っ て は 次 の よ う な 共 通 の メ ッ セ ー ジ( 支 援 者 の 姿 勢 や 視 点 ) を 持 っ て 双 方 に 関 わ っ て い く 必 要 が あ る 。 こ の タ イ プ の 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、暴 力 や 虐 待 行 為 は い か な る 理 由 で あ っ て も 許 さ れ な い こ と 、そ れ ら の 行 為 は 振 る わ れ る 側( 被 虐 待 者 )で は な く 振 る う 側( 虐 待 者 )の 問 題 、責 任 で あ る と い う 一 貫 し た 姿 勢 や 視 点 を 堅 持 し て 対 応 に あ た る 。暴 力 で 操 ろ う と す る 方 法 は 、養 護 者 の 人 生 の な か で 身 に 付 け て き た 即 効 性 の あ る 問 題 解 決 方 法 で あ り 、他 に 方 法 が あ り な が ら も そ れ を 選 ん で い る と い う 点 で 、暴 力 を 振 る う 側 の 責 任 が 問 わ れ る こ と を 支 援 者 と し て 認 識 し て お か ね ば な ら な い 。 ま た 、 養 護 者 が か つ て 親 よ り 暴 力 を 振 る わ れ て い た こ と に よ り 、暴 力 を 肯 定 的 に と ら え 、 高 齢 と な っ た 親 に 対 し て 暴 力 を 振 る っ て い る 養 護 者 も い る 。 養 護 者 自 身 が 傷 つ い て い る 存 在 で あ る と い う こ と を 意 識 し て 、関 わ る 視 点 も 必 要 と な る 。例 え ば 、養 護 者 が か つ て 体 験 し て き た 辛 い 体 験 や 思 い を 聴 き 、受 け 止 め た う え で 、養 護 者 の 内 的 な 変 化 を 促 す な ど の 対 応 が 必 要 と な る 。こ の タ イ プ の 養 護 者 は 、暴 力 等 に よ り 他 者 を コ ン ト ロ ー ル す る 傾 向 が あ る が 、そ の 対 象 が 支 援 者 に 向 く 場 合 も あ る 。支 援 者 自 身 が 養 護 者 の コ ン ト ロ ー ル を 受 け な い よ う 、 留 意 す る 視 点 も 必 要 で あ る 。 一 方 、虐 待 や 暴 力 と い う 外 的 抑 圧 を 日 常 的 に 受 け て 生 活 し て い る 高 齢 者 は 、自 分 は 役 に 立 た な い 、自 分 が 悪 い 、こ ん な 子 ど も に 育 て た の は 自 分 の 責 任 だ 、叩 か れ て も 我 慢 し な く て は い け な い な ど 、無 力 感 や あ き ら め 感 が 強 い 内 的 抑 圧 状 態 に 陥 っ て い る 。 支 援 者 は 、こ の よ う な 高 齢 者 が 置 か れ て い る 状 況 を 理 解 し 、パ ワ ー レ - 27 -
⒀ ス 状 態 の 高 齢 者 を 理 解 し 、相 談 や 支 援 に あ た る な か で 、高 齢 者 が 本 来 持 っ て い る さ ま ざ ま な 力( 例 え ば 権 利 意 識 や 発 言 力 、行 動 力 、可 能 性 な ど ) を 発 揮 で き る よ う に 、本 人 と と も に 外 的 抑 圧 を な く し 、内 的 抑 圧 を 低 減 し 、社 会 の 中 で 高 齢 者 の 持 つ 力 を 発 揮 で き る よ う に 、側 面 か ら 支 持 し て い く こ と が 必 要 に な る 。具 体 的 に は 、「 あ な た が 悪 い の で は な い 」「 あ な た は 大 切 な 存 在 で あ る 」と い う メ ッ セ ー ジ を 支 援 者 の 姿 勢 や 態 度 か ら 伝 え て い く 。つ ま り 、虐 待 を 受 け て い る 高 齢 者 の よ き 理 解 者 と し て 改 善 に 向 け て 共 に 歩 も う と す る 姿 勢 、エ ン パ ワ メ ン ト の 視 点 が 支 援 者 に 求 め ら れ る 。 【 支 援 方 法 】 支 援 の 視 点 か ら 、高 齢 者 へ の 対 応 と 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、担 当 者 を 分 け て 関 わ る こ と が 必 要 な 事 例 も あ る 。 1) 養 護 者 へ の 対 応 ・養 護 者 の 意 に 沿 わ な い 分 離 保 護 等 の 介 入 的 支 援 の 結 果 、支 援 者 に 対 す る 暴 言 や 暴 力 が 激 化 す る 可 能 性 が 高 い 。養 護 者 に 対 す る 相 談 、指 導 及 び 助 言( 法 6 条 及 び 1 4 条 )だ け で は 養 護 者 の 支 援 が 難 し い 場 合 は 、適 切 に 警 察 と 連 携 し て 対 応 す る こ と が 必 要 で あ る 。 ・虐 待 を し て い る 養 護 者 が そ れ を 行 わ な い よ う 更 生 に 向 け た 支 援 を 行 う 機 関 や 専 門 職 は 、現 状 で は 置 か れ て い な い 。し か し 、認 知 行 動 理 論 ・ ア プ ロ ー チ に 基 づ き 養 護 者 と 接 し て い く こ と は 可 能 で あ り 、そ の 際 に は 次 の よ う な 対 応 が 考 え ら れ る 。こ こ で は 、ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー が 面 接 の 際 に 意 識 的 に 用 い る こ と を 想 定 し て い る 。 ・養 護 者 へ 対 応 す る 担 当 者 は 、ま ず 、養 護 者 が 虐 待 行 為 を ど の よ う に 認 識 し て い る の か を 把 握 す る 。そ し て 、改 善 し た い 意 識 が あ る 場 合 は 、以 下 を 参 考 に 支 援 を 進 め 、 虐 待 行 為 を 悪 い こ と だ と 認 識 し て い な い 場 合 は 、 そ の 認 識 を 高 め る こ と か ら 養 護 者 と 向 き 合 う 必 要 が あ る 。 ・養 護 者 の 主 体 性 を 尊 重 し 、養 護 者 自 身 が な ぜ 虐 待 を し た の か に つ い て 語 っ て も ら い 、 養 護 者 が ど ん な 場 面 ( 出 来 事 ) で 、 怒 り ( 感 情 ) や 暴 力 ( 行 動 ) を 振 る っ た の か 、 そ し て 、ど ん な 考 え 方( 信 念 )を 持 っ て い る か を 構 造 化 し て と ら え ら れ る よ う に し 、説 明 し て も ら う よ う に 働 き か け る ( 認 知 行 動 理 論 の 活 用 )。 ・養 護 者 が 暴 力 や 虐 待 行 為 を と っ た 場 面 を 基 に 、そ の 場 面 に 出 会 っ た と き に ど の よ う に 考 え る と 怒 り や 暴 力 で は な く 、平 和 的 な 解 決 が で き る か に つ い て 一 緒 に 考 え て い く 協 働 作 業 を 進 め て い く 。 ・必 要 に 応 じ て 、同 様 の 悩 み を 抱 え る 当 事 者 グ ル ー プ へ の 参 加 も 検 討 し 、 支 援 者 に よ る 個 別 の 支 援 だ け で は な く 、自 助 グ ル ー プ に よ る 集 団 の 力 を 活 用 す る 。 ・「 養 護 者 を 変 え る 」 の で は な く 、「 養 護 者 が 変 わ る 」 こ と を 支 援 す る 。 - 28 -
⒁ 人 間 は 関 わ り に よ っ て 変 化 し う る 存 在 で あ る こ と を 基 本 的 な 視 点 と し て 持 つ と と も に 、支 援 者 が ど の よ う に 養 護 者 へ 関 わ っ て い る の か を 見 直 し 、養 護 者 が 主 体 的 に 変 わ っ て い け る よ う な 関 わ り 方 に 変 え て い く 。人 間 は 、考 え 方( 信 念 )が 変 わ る と 感 情 も 変 わ り 、行 動 も 変 わ る 可 能 性 を 秘 め て い る 。 ・日 常 生 活 の 中 で 虐 待 行 為 を 意 識 化 さ せ 、行 動 を 変 容 す る 機 会 を 持 た せ て い く 。 ・ 支 援 者 自 身 が 養 護 者 の コ ン ト ロ ー ル を 受 け な い よ う に す る た め に は 、 虐 待 対 応 全 体 の 基 本 で は あ る が 、個 人 で は 判 断 せ ず 、チ ー ム 対 応 で あ る こ と を 意 識 し 、チ ー ム の 力 を 最 大 限 活 用 し て 対 応 す る こ と に 努 め る 。ま た 、養 護 者 の 反 応 や 怒 り を 心 配 し 、曖 昧 な 態 度 を と り が ち だ が 、毅 然 と し た 態 度 で の 対 応 が 求 め ら れ る 。 2) 高 齢 者 へ の 対 応 ・暴 力 が 恒 常 化 し 、日 常 化 さ れ 、高 齢 者 自 身 も 肯 定 化 し て し ま っ て い る こ と で 、高 齢 者 自 身 が パ ワ ー レ ス 状 態 に 陥 っ て い る た め 、高 齢 者 本 人 か ら の SOS が 出 に く い こ と が 想 定 さ れ る 。 そ の た め 、 生 命 ・ 身 体 に 重 大 な 危 険 が 生 じ る お そ れ が あ り 、支 援 者 側 に よ る 緊 急 対 応 の 必 要 性 の 度 合 い が 高 い 状 況 が あ る 。そ の 場 合 は 、緊 急 保 護 や 一 時 分 離 を 用 い た 対 応 に よ り 、 い っ た ん 、 養 護 者 に 支 配 さ れ な い 環 境 に 移 す こ と が 必 要 と な る 。 ・周 囲 に わ か ら ず に 虐 待 が 進 行 し て い る 場 合 に は 、高 齢 者 が 暴 力 や 虐 待 行 為 を 拒 否 す る こ と を せ ず に パ ワ ー レ ス 状 態 が 悪 化 し て い る こ と が 想 定 さ れ 、分 離 保 護 等 の 対 応 を 取 る 際 、本 人 の 適 切 な 意 向 を 引 き 出 せ な い こ と も あ る 。そ の た め 、虐 待 行 為 に 対 す る 注 意 等( 場 合 に よ っ て は 逮 捕 ) を 警 察 の 協 力 を 得 な が ら 行 う 必 要 性 も 検 討 し て 対 応 す る 。 ・分 離 に よ り 高 齢 者 の 安 心 と 安 全 を 確 保 し た 後 、本 人 の 意 向 を 伺 い な が ら 今 後 の こ と を 検 討 し て い く 。特 に 権 力 と 支 配 型 の 虐 待 者 と 生 活 し て き た 高 齢 者 に 多 い の は 、「 家 に 帰 り た い 」「 ○ ○( 養 護 者 )の こ と が 心 配 だ 」 な ど と 言 い 、再 び 家 に 戻 り 、養 護 者 と 共 に 生 活 す る こ と を 望 む 場 合 で あ る 。本 人 の 意 思 を 尊 重 し な が ら も 家 に 戻 っ た 場 合 に 起 こ り う る 虐 待 等 に つ い て も 現 実 的 に 考 え ら れ る よ う に し 、暴 力 を 振 る わ れ て よ い 人 は い な い 、が ま ん す る こ と は な い と い う メ ッ セ ー ジ を 送 り 続 け 、高 齢 者 の 安 心 と 安 全 に 最 大 限 の 配 慮 を 行 う 。 ・心 身 と も に 自 立 し て い る 高 齢 者 の 場 合 、自 宅 へ 戻 る こ と へ の 意 向 が 非 常 に 強 く 、 一 人 で 戻 っ て し ま う 危 険 性 が 高 い 場 合 は 、 支 援 方 針 と し て 、 戻 っ た 後 の 「 安 全 プ ラ ン 」( 虐 待 の 再 発 の 防 止 及 び 軽 減 等 の 具 体 的 行 動 計 画 )の 作 成 及 び 高 齢 者 自 身 が 実 行 で き る か の 検 討 を 、高 齢 者 と と も に 行 っ て い く 必 要 が あ る 。 キ ー ワ ー ド パ ワ ー バ ラ ン ス の 逆 転 、 ア ダ ル ト ・ チ ャ イ ル ド 、 DV 関 係 - 29 -
⒂ タ イ プ 2 ス ト レ ス 衝 動 型 説 明 ス ト レ ス 衝 動 型 と は 、高 齢 者 と 養 護 者 の 置 か れ た そ の 時 の 状 況 に よ っ て 、 誰 に で も 衝 動 的 、 突 発 的 に 起 こ り 得 る 虐 待 を い う 。 特 徴 と 具 体 例 【 特 徴 】 養 護 者 が 介 護 疲 れ や 介 護 負 担 、不 安 等 の 生 活 上 の 様 々 な ス ト レ ス を 抱 え 、 気 持 ち に 余 裕 が な く な り 、 衝 動 的 に 虐 待 行 為 を し て し ま う 。 ま た 、 介 護 を 他 者 に 任 せ ら れ な い 場 合 も あ る 。 【 具 体 例 】 ① 介 護 が い つ ま で 続 く か わ か ら な い 不 安 に よ っ て 、 イ ラ イ ラ し て 怒 鳴 る 。 ② 排 せ つ が う ま く い か ず に 汚 す の で 怒 り が こ み 上 げ 、カ ア ッ と な っ て 叩 く 。 ③ 高 齢 者 か ら の 過 度 の 要 求 や 期 待 、当 た り 前 だ と 言 わ れ る 等 に 応 え ら れ ず 、 追 い 詰 め ら れ 思 い 余 っ て 叩 く 。 支 援 の 視 点 と 方 法 【 支 援 の 視 点 】 こ の タ イ プ の 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、ま ず は 養 護 者 の 思 い を 受 け 止 め 、ね ぎ ら い な が ら 気 持 ち を 誠 実 に 聴 く こ と か ら 支 援 が 始 ま る 。こ こ で 言 う「 聴 く こ と 」は 、単 に 面 接 ス キ ル の こ と を 指 す の で は な く 、支 援 者 の 姿 勢 や 態 度 を 意 味 し 、 相 手 と 自 分 に 誠 実 で あ る こ と が 求 め ら れ る 。支 援 者 は 、ま ず 、養 護 者 の 気 持 ち を 受 け 止 め よ う と 努 力 し 、す ぐ に 社 会 資 源 を あ て が う の で は な く 、「 あ な た の 言 葉 を 確 か に 受 け と め ま し た 」と い う 応 答 を し て い く こ と が 重 要 で あ る 。そ の う え で 、具 体 的 な サ ー ビ ス 等 の 活 用 を 検 討 し て い く 。 【 支 援 方 法 】 1) 養 護 者 へ の 対 応 ・ま ず は 、高 齢 者・ 養 護 者 が 互 い に 休 め る 時 間 や 空 間 を 用 意 す る 必 要 が あ る こ と を 伝 え 、 対 応 す る 。 ・介 護 疲 れ や 将 来 へ の 悲 観 か ら 、心 中 や 養 護 者 の 自 殺 リ ス ク が 高 い 場 合 が あ り 、 緊 急 性 の 判 断 を 適 切 に 行 う 必 要 も あ る 。 ・ 介 護 負 担 軽 減 の た め に 介 護 サ ー ビ ス の 導 入 を 検 討 す る こ と が あ る が 、 そ れ だ け で は 、具 体 的 な 問 題 解 決 に は な ら な い こ と も あ る 。養 護 者 の 不 安 や 困 り ご と 等 を 具 体 的 に 解 消 し て い く こ と が で き る 方 法 や 見 通 し( 以 下 の 例 示 参 照 ) を 提 案 し て い く こ と が 必 要 で あ る 。 ① 養 護 者 の 精 神 状 態 に 配 慮 し な が ら 、養 護 者 の レ ス パ イ ト ケ ア 、介 護 技 術 や 知 識 の 補 充 、ケ ア プ ラ ン の 見 直 し( ケ ア マ ネ ジ ャ ー や サ ー ビ ス 提 供 者 に よ る ア セ ス メ ン ト 不 足 に 起 因 す る ス ト レ ス 等 も あ る )、 介 護 者 の 集 い へ の 参 加 の 検 討 等 を 行 う 。 ② 経 済 的 課 題 を 併 発 し て い る 場 合 も あ る た め 、経 済 的 支 援( 高 齢 者 が - 30 -
⒃ 無 年 金 の 場 合 も あ る ) も 検 討 し て い く 。 ③ 認 知 症 へ の 対 応 が 困 難 な こ と に 起 因 が あ る 場 合 は 、認 知 症 へ の 正 し い 理 解 を 促 し 、 受 容 で き る よ う な 支 援 を 行 い 、 高 齢 者 の 医 療 受 診 や 、 認 知 症 ケ ア に 関 す る 専 門 的 助 言 の 必 要 性 の 見 極 め 等 を 行 う 。 ④ 高 齢 者 か ら す べ て を 任 さ れ 、 そ の こ と が ス ト レ ス の 要 因 に も な り 、 ま た 責 任 感 や 使 命 感 か ら 、自 ら も 高 齢 者 に 関 わ る 全 て に つ い て 、自 分 で 何 と か し よ う と 思 っ て い る 場 合 、 本 人 の 認 知 機 能 の 状 態 に よ っ て は 、本 人 の 法 的 代 理 人 と し て 第 三 者 に 法 定 後 見 人 等 を 付 け る な ど 、高 齢 者 と の 適 度 な 精 神 的 な 距 離 を 図 れ る よ う 検 討 す る 。 2) 高 齢 者 へ の 対 応 ・高 齢 者 が 投 げ か け る 言 葉 や 態 度 が 介 護 を し て い る 養 護 者 を 疲 弊 さ せ て い る 場 合 は 、高 齢 者 に 対 し て 助 言 を 行 い 、行 動 変 容 へ の 働 き か け も 必 要 と な る 。 キ ー ワ ー ド 将 来 へ の 悲 観 ・ 不 安 、 周 囲 の 無 理 解 ・ 無 関 心 、自 己 否 定 感 、 責 任 感 と 使 命 感 、 認 知 症 介 護 、 介 護 と 仕 事 の 両 立 、 介 護 期 間 の 長 期 化 - 31 -
⒄ タ イ プ 3 メ ン タ ル 特 性 型 説 明 メ ン タ ル 特 性 型 と は 、養 護 者 自 身 に 知 的 、発 達 、精 神 な ど の 特 性 が あ る こ と に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る 虐 待 を い う 。 特 徴 と 具 体 例 【 特 徴 】 生 活 ス キ ル が な い 、他 者 と の 共 感 性 の 乏 し さ が あ る 、こ だ わ り が 強 く 融 通 が 利 か な い 、認 知 の ゆ が み が あ る 、情 緒 的 不 安 定 さ が あ る 等 に よ り 虐 待 行 為 に 至 っ て し ま う 。 【 具 体 例 】 ① 自 分 勝 手 な 思 い 込 み か ら 他 者 の 意 見 を 受 け 入 れ る こ と が で き な い 。す ぐ に 思 い 通 り に な ら な い こ と で 攻 撃 的 に な る 。 ② 感 情 と 欲 求 の コ ン ト ロ ー ル が 効 か な い た め 、興 奮 、混 乱 な ど が 起 こ り 殴 る 。 ③ 知 的 、精 神 的 な 問 題 が あ る た め に 生 活 ス キ ル が な く 、不 衛 生 な 状 態 や 適 切 な ケ ア 等 が 行 え ず 、 結 果 と し て ネ グ レ ク ト の 状 態 に な っ て い る 。 支 援 の 視 点 と 方 法 【 支 援 の 視 点 】 こ の タ イ プ の 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、養 護 者 が ど の よ う な メ ン タ ル 特 性 を 持 っ て い る の か に つ い て 、 日 頃 の 情 報 を 収 集 し な が ら 分 析 し 、そ の 特 性 を 理 解 し た う え で 、特 性 に 合 わ せ た 接 し 方 を と っ て い く こ と が 必 要 と な る 。メ ン タ ル 特 性 に よ る 認 知( 考 え 方 )を 変 え る こ と は 困 難 で あ り 、そ の 結 果 、支 援 を 拒 否 し や す い 等 の 傾 向 も あ る た め 、支 援 者 側 が そ の 特 性 に 合 わ せ た 対 応 方 法 を 検 討 し て い く 必 要 が あ る 。 【 支 援 方 法 】 1) 養 護 者 へ の 対 応 ・ 養 護 者 の 抱 え る 特 性 を 理 解 し 、 関 わ り 方 に つ い て 工 夫 が 必 要 で あ る 。 例 え ば 、自 閉 症 ス ペ ク ト ラ ム の 特 性 の 場 合 、枠 組 み を 示 し な が ら 、一 つ ず つ 対 応 す る こ と が 求 め ら れ る 。常 に 見 通 し を 伝 え て い く こ と 等 が 必 要 で あ る 。 ・ 専 門 機 関 か ら 、 か か わ る う え で の 専 門 的 ア ド バ イ ス を 受 け る こ と や 、 養 護 者 を 必 要 に 応 じ て 適 切 な 専 門 機 関 な ど へ つ な げ て い く こ と が 有 効 で あ る 。 ・ 就 労 困 難 な 場 合 も 多 く 、 経 済 的 に 高 齢 者 に 依 存 し て い る 事 例 も 多 い 。 そ の た め 、養 護 者 へ の 福 祉 的 ・ 専 門 的 支 援 が 必 要 な 事 例 も あ る 。養 護 者 が 困 っ て い る こ と( 介 護 に は 困 っ て い る 認 識 が な い 場 合 が 多 い )に フ ォ ー カ ス を 絞 っ た 関 わ り は 有 効 で あ る 。 ・メ ン タ ル 特 性 等 に よ り 、養 護 者 は 高 齢 者 の 介 護 や 世 話 の な か で 、状 況 に 応 じ た や り 方 の 変 更 や 新 た な 考 え 方 を 取 り 入 れ る こ と が 苦 手 な た め に 、 結 果 と し て 高 齢 者 に と っ て 不 適 切 な ケ ア に 至 っ て い る 場 合 が あ る 。 緊 急 性 の 度 合 い が 低 い 場 合 は 、養 護 者 が 受 入 れ や す い や り 方 を 考 え な が - 32 -
⒅ ら 、適 切 な ケ ア の 方 法 や 知 識 等 を 提 案 し 、養 護 者 の 変 化 を 促 す こ と も 必 要 な 場 合 も あ る 。 2) 高 齢 者 へ の 対 応 ・高 齢 者 自 身 、養 護 者 の メ ン タ ル 特 性( 性 格 と 思 っ て い る 可 能 性 も 強 い ) に 対 し て 、諦 め て い る こ と が 多 く 、支 援 に 対 し て 消 極 的 、拒 否 的 に な る 傾 向 が あ る 。そ の た め 、高 齢 者 自 ら が 養 護 者 の 変 化 を 求 め ず 、ま た 、「 自 分 の 育 て 方 が 悪 か っ た 」等 の 自 分 を 責 め る よ う な 言 動 も 見 ら れ る 。そ の た め 、支 援 が 入 る こ と に よ り 、今 後 高 齢 者 の 生 活 が ど う な る の か 、養 護 者 の 生 活 が ど の よ う に 変 わ る の か 等 の 、具 体 的 イ メ ー ジ が 持 て る よ う な 支 援 の 見 通 し や 、高 齢 者 亡 き 後 の 生 活 な ど 未 来 志 向 的 な と ら え 方 を 伝 え て い く 関 わ り が 必 要 で あ る 。 キ ー ワ ー ド 結 果 的 な 虐 待 ( 自 覚 が な い )、 思 考 の 特 徴 ( 状 況 判 断 、 分 析 、 応 用 が 苦 手 )、感 情 の 特 徴( 混 乱 し や す い 、起 伏 が 激 し い 、易 怒 性 が 高 い 、興 奮 し や す い な ど コ ン ト ロ ー ル が 苦 手 )、関 係 性 の 特 徴( コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 、 関 係 性 づ く り が 苦 手 )、世 帯 の 特 徴( 世 帯 で 複 合 的 課 題 を 抱 え て お り 、適 切 な 決 定 が で き る 世 帯 構 成 員 が い な い )、 支 援 拒 否 ( 他 者 の 受 入 れ が 苦 手 )、 見 通 し が 持 て な い 不 安 、 養 護 し て い る つ も り が な い ・ 養 護 で き な い 、 現 状 を 変 え る こ と ・ 変 わ る こ と へ の 不 安 - 33 -
⒆ タ イ プ 4 現 状 否 認 型 説 明 現 状 否 認 型 と は 、高 齢 者 が 老 い て い く こ と や 認 知 症 な ど に よ っ て 変 わ っ て い く 現 実 を 養 護 者 が 受 け 入 れ ら れ な い 、あ る い は 受 け 入 れ よ う 、理 解 し よ う と せ ず に 現 状 を 否 認 す る こ と に よ っ て 起 こ る 虐 待 を い う 。 特 徴 と 具 体 例 【 特 徴 】 高 齢 者 の 現 実 と し て 出 来 る こ と と 出 来 な い こ と を 見 極 め る こ と が で き ず 、 受 け 入 れ る こ と が で き な い 。 【 具 体 例 】 ① 自 分 が 抱 い て い る 親 の イ メ ー ジ を 失 い た く な い 、認 知 症 で あ る と 認 め た く な い た め 、今 ま で と 同 じ こ と を さ せ て 、出 来 な い と 感 情 的 に な り 怒 鳴 る 。 ② 機 能 回 復 訓 練 を 行 え ば よ く な る と 信 じ 、養 護 者 か ら み た 高 齢 者 の あ る べ き 理 想 の 状 態 に 近 づ け よ う と し て 、実 際 に は 回 復 や 改 善 が 難 し い こ と が 受 け 入 れ ら れ ず 強 要 す る 。 ③「 や れ る の に や ら な い だ け 」と 主 張 し 、実 際 は 高 齢 者1 人 で は 十 分 に 行 え な く な っ て い る 状 況 に 対 し て 、手 助 け を せ ず 不 適 切 な 状 態 の ま ま 放 置 さ れ 、 ネ グ レ ク ト に 至 っ て い る 。 支 援 の 視 点 と 方 法 【 支 援 の 視 点 】 こ の タ イ プ の 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、養 護 者 が 高 齢 者 の 現 実 や 現 状 を ど の よ う に 理 解 し て い る の か 、そ れ が 支 援 者 か ら 見 て 現 実 的 に ギ ャ ッ プ を 生 じ る も の か ど う か を 把 握 す る 必 要 が あ る 。そ し て 、養 護 者 は 高 齢 者 に ど う あ っ て ほ し い と 考 え 、ど こ ま で 出 来 る は ず だ と 思 い 込 ん で い る の か 、そ の 養 護 者 の 持 つ 考 え 方( 信 念 )を 把 握 す る と こ ろ か ら 支 援 が 始 ま る 。そ の う え で 、な ぜ 養 護 者 は そ の よ う に 考 え て い る の か と い う 原 因 を 探 し て い く 。例 え ば 、リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン を 行 え ば も っ と 良 く な る と い う 思 い 込 み は 、ど こ か ら 来 て い る の か 。単 に 強 い 願 望 な の か 、衰 え て い く 現 状 を 受 け 入 れ た く な い 気 持 ち が 強 い の か 、理 解 力 に 問 題 が あ る の か 。 そ の 思 考 の 原 因 に よ っ て 対 応 す る 方 法 が 変 わ る 。 ま た 、養 護 者 自 身 の 介 護 方 法 を 正 当 化 し 、介 護 サ ー ビ ス 従 事 者 に 対 し て 介 護 の 要 求 が エ ス カ レ ー ト し 、 苦 情 と な っ て 寄 せ ら れ る こ と も あ る 。 そ の 結 果 、介 護 サ ー ビ ス 従 事 者 や 介 護 サ ー ビ ス 事 業 者 に 対 す る 不 信 感 が 生 じ る こ と も あ り 、養 護 者 の 考 え を 受 け 止 め た う え で 、そ の 養 護 者 の 思 考 の 原 因 に 合 わ せ た 対 応 を 意 識 し て い く 。 【 支 援 方 法 】 1) 養 護 者 へ の 対 応 ・ 医 療 関 係 者 や 専 門 家 か ら の 病 状 等 の 説 明 を 有 効 に 活 用 す る 。 ・介 護 者 教 室 や 家 族 会 へ 誘 い 、他 の 介 護 者 の や り 方 や 共 感 で き る 体 験 を と お し て 、 考 え や や り 方 を 変 え て い く 。 - 34 -
⒇ ・養 護 者 に と っ て の 介 護 の 目 標 を 変 え て い く こ と へ の 支 援 が 必 要 な 場 合 が あ る 。「 寝 た き り に さ せ な い 」で は な く 、「 少 し で も 一 緒 に 暮 ら し た い 」 と 言 う 目 標 に 変 え て い く こ と で 、現 実 を 受 け 入 れ て い く サ ポ ー ト が 行 え る こ と が あ る 。 2) 高 齢 者 へ の 対 応 ・医 学 的 判 断 に 基 づ か な い リ ハ ビ リ の 強 要 等 、心 身 へ の 負 担 が か か っ て い る 場 合 も あ る た め 、高 齢 者 の 意 思 ・ 意 向 を 確 認 の 上 、一 時 的 な 分 離 を 検 討 す る 。 ・自 分 自 身 の 心 身 の 状 況 等 を 正 し く 理 解 す る こ と が 難 し く 、現 状 や こ れ か ら の こ と へ の 諦 め 、正 し い 情 報 が 入 ら な い 等 に よ り 、セ ル フ ・ ネ グ レ ク ト 状 態 に 陥 っ て い る 場 合 も あ る 。高 齢 者 に 対 し て 、現 状 を 変 え て い く 必 要 が あ る こ と や 、 現 実 と の 向 き 合 い 方 等 を 支 援 し て い く 必 要 が あ る 。 キ ー ワ ー ド し つ け 的 行 為 、 放 っ た ら か し 、 や り す ぎ - 35 -
タ イ プ 5 承 認 欲 求 型 説 明 承 認 欲 求 型 と は 、高 齢 者 よ り も 養 護 者 自 身 が 他 者 か ら 認 め ら れ 、褒 め ら れ た い た め に 介 護 や 世 話 を す る な か で 起 き る 虐 待 を い う 。 特 徴 と 具 体 例 【 特 徴 】 一 見 し っ か り と し た 介 護 や 世 話 を し て い る よ う に 見 え る が 、養 護 者 は 褒 め ら れ た い 思 い が 強 い の で 、高 齢 者 へ の 介 護 や 世 話 を 手 段 と し て 用 い て い る 。 【 具 体 例 】 ① 自 分 を 犠 牲 に し て 親 の 介 護 の た め 退 職 し た が 、親 自 身 や 周 囲 が 認 め て く れ な い の で 攻 撃 的 に な る 。 ② 高 齢 者 本 人 の た め で は な く 、自 分 の 頑 張 り を 評 価 さ れ た い た め に 本 人 が 望 ま な い こ と を 強 要 す る 。 ③ 夫 を 介 護 で き る の は 自 分 だ け と 言 い 、賞 賛 さ れ る こ と は 望 む が 、手 助 け は 求 め な い 。 支 援 の 視 点 と 方 法 【 支 援 の 視 点 】 こ の タ イ プ の 養 護 者 へ の 対 応 に あ た っ て は 、自 分 の 介 護 や 世 話 を す る こ と が 養 護 者 自 身 の 存 在 を 認 め ら れ る こ と に つ な が る と い う こ と を 支 援 者 が 理 解 し て お く 必 要 が あ る 。特 に「 介 護 に 熱 心 な 家 族 」と 映 る こ と が 多 く 、高 齢 者 の 存 在 よ り も「 頑 張 っ て い る 家 族 」に 目 が 向 い て し ま い 、 高 齢 者 の 置 か れ て い る 現 状 が 見 落 と さ れ が ち に な る 危 険 が あ る 。支 援 者 は 、養 護 者 が ど の よ う 思 い で 介 護 や 世 話 に あ た っ て い る の か を 受 け 止 め な が ら 、 一 方 で 高 齢 者 の 意 向 を 尊 重 し 、 客 観 的 事 実 に 目 を 向 け て い く 。 【 支 援 方 法 】 1) 養 護 者 へ の 対 応 ・ 本 人 ・ 関 係 者 が 養 護 者 の が ん ば り を 認 め 、評 価 を し 、そ の 上 で 虐 待 行 為 に 関 し て サ ー ビ ス 調 整 な ど の 支 援 の 必 要 性 を 検 討 す る 。し か し 、事 例 に よ っ て は が ん ば り を 認 め る こ と が 、さ ら に 過 剰 な 介 護 や 世 話 に つ な が る こ と も あ る の で 、 養 護 者 の ア セ ス メ ン ト が 重 要 に な る 。 ・介 護 を し て い な い わ け で は な い の で 、負 担 感 を 軽 減 す る た め の 養 護 者 に 対 す る 支 援 と し て サ ー ビ ス 調 整 に よ る 介 入 が 想 定 し や す い 。 た だ し 、 「( 介 護 が )大 変 」と 言 い な が ら 負 担 軽 減 は 求 め な い こ と や 、自 分 流 の 介 護 へ の 固 執 が 強 い た め 、調 整 を 受 け 入 れ な い 傾 向 が あ る 。ま た 、介 護 は さ れ て い る が 不 適 切 な 方 法 で あ る こ と が 多 い た め 、緊 急 に 医 療 に つ な げ る 必 要 性 が あ る 等 、 緊 急 性 が 見 逃 さ れ て い な い か 留 意 す る 。 ・高 齢 者 や 介 護 に 対 す る 養 護 者 の 有 り 余 る エ ネ ル ギ ー を 、介 護 や 世 話 と は 違 う 方 向 へ 向 け さ せ て い く こ と で 、や り 過 ぎ て し ま う こ と を 防 い で い く 。 ・ か か り つ け 医 な ど 、養 護 者 が 信 頼( 自 分 よ り 上 だ と 思 っ て い る )し て - 36 -
い る 人 か ら の 指 導 が 有 効 な 場 合 も あ る 。 権 威 者 に 弱 い 場 合 が あ る 。 ・ 見 捨 て ら れ 不 安 が 強 い 場 合 、保 護 ・ 分 離 等 を し た 場 合 、養 護 者 の 自 殺 リ ス ク 、保 護 さ れ る こ と が 分 か っ た 場 合 の 心 中 リ ス ク に 対 す る 備 え が 必 要 な 場 合 も あ る 。 2) 高 齢 者 へ の 対 応 ・特 に こ の タ イ プ の 場 合 、高 齢 者 本 人 は 、養 護 者 が 考 え 、求 め て い る「 介 護 」や「 生 活 」、高 齢 者 自 身 に 対 す る 希 望 等 と 同 じ こ と を 望 ん で い る わ け で は な い 。ま た 、養 護 者 は 高 齢 者 と の 生 活 を 希 望 し て も 、高 齢 者 は 自 宅 で 生 活 し た い と は 思 っ て い て も 、養 護 者 と 一 緒 に い た く な い 、住 み た く は な い 、 介 護 サ ー ビ ス を 受 け た い と 思 っ て い る 場 合 も あ る 。 し か し 、認 知 症 等 に よ り 意 思 の 表 出 が 難 し い 場 合 も あ る た め 、緊 急 対 応 と し て の 介 入 的 支 援 の ほ か 、介 護 サ ー ビ ス に よ る ケ ア 経 験 や 実 際 の ケ ア を 通 し た 、高 齢 者 の 心 身 の 状 態 変 化( 適 切 な ケ ア を 受 け る こ と に よ る 、 状 況 の 改 善 や 安 定 等 )を 確 認 す る こ と を 目 的 と し た 介 入 的 支 援 が 必 要 に な る こ と も あ る 。 キ ー ワ ー ド 献 身 的 介 護 、 社 会 的 孤 立 、 存 在 価 値 ( 作 成 : 高 齢 者 虐 待 介 入 モ デ ル 検 討 委 員 会 ) - 37 -