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英語におけるゼロ派生 利用統計を見る

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(1)

英語におけるゼロ派生

著者

山中 桂一

著者別名

Keiichi  Yamanaka

雑誌名

dialogos

3

ページ

57-104

発行年

2003-03

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005027/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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英語におけるゼロ派生

山 中 桂 一

The telephone shri〃ed and shrilled in the upstairs hall. It was as if a pipe had burst, filling the dark with a shocking fountain.(Updike,ルlarry Me) §1 品詞の転用  この引用文からは、一読して凝った文章だという印象をうける。その印象は 突きつめていえばshril1の用法とas if以下の比喩、それもけたたましいベルの 響きを噴出する水に喩えるという力業にあるといえる。比喩の効力はべつの稿 で検討するとして、ここではいわゆる品詞の転用(conversion)を言語特性お よび表現効果という二つの角度から考えてみる。  英語のshrillは、活用の仕方や通常の用法から見てほんらいは形容詞である が、うえの文章では〈けたたましく鳴る〉という意味で動詞として使用されて いる。このように、ある品詞がきわめて自由に別の品詞に転用できるところは 英語の大きな特徴のひとつと言ってよく、こうしてたとえば、open、あるい はhollowという語は、それぞれ動詞、形容詞として異なる起点をもつにもかか わらず、ほとんどそのままの形で、いくつもの違った統語環境に立つことがで きる(ゴシックがもとの品詞)。 (vt.)to open the store;to holtow the cheeks (vi.)the store opened;the plain hollowed beyond (a.)the store is open;the ground was hollow (n.)in the open;in the hollow

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通常の派生だと、たとえばdark(∋→dark−en, dark−en−ed(v.)のような経過 をたどり、したがって派生のプロセスと品詞の違いが同時に明示されるが、 hollow(∋→hollow一φ,hollow一φ一ed(v.)の場合には活用(=動詞範疇)の 標識があるだけで派生標識が欠けており、あらためて言うまでもなく、このこ とが「転用」という特別の名称を用いる理由をなしている。  この種の転用は、それぞれの品詞が固有の語尾を要求される言語ではかなり 窮屈で、たとえば日本語の場合、形容詞「けたたまし・い」 「うつろ・な」を 動詞に変える方途は直接にも間接にもないにれらの語がもともと用言として 述語づけ能力をもっていることも無関係ではないが)。openに対応する「あ く」 (ak−)のほうはもうすこし展開が自由で、「あき」 「あける」 「あい て・いる」などの派生系列があるが、しかしそれも、接辞によって区別される 義務的な語形(=−i,−e−,一(k)i+te−, etc.)のもとでのみ可能である。  したがってより厳密にいえば、ここで扱おうとするのは接辞ぬきの、いわゆ る「ゼロ派生」(zero derivation)という現象である。接辞ぬきの派生と接辞 を用いた派生は、言語間の差違としては何の不思議でもないが、両者がひとつ の言語のなかで共存するときには単なる混質性として片付けられない問題を生 じる。そうした問題を意味と文体の角度から点検するのが本章の目的である。  「ゼロ派生」という用語は、要するに理論的な整合性をめざした名称であ る。いわゆる品詞の転用を《接辞ゼロの派生》と見なせば音の交替や接辞をも ちいた通常の「派生」と同列にあつかうことができ、そのぶんこの現象をより 一般的な角度からながめることが可能になる。英語の場合、語形の改変を伴な う通常の派生は、つぎのように品詞を変えることも変えないこともある。 (a)dangerη.→en−danger v., king n.→king−ly a. (b)kind a.→kind−∼yα., wave v.→wav−er v. このさい、語形を変えることなしに品詞が転用される場合を派生タイプ(a)の

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特殊ケースと見なせば、定義上、この「ゼロ派生」にはかならず品詞の転換が 伴なうことになるので、統一的な視点と同時に、誤解の恐れのない、一意の名 指しを手にいれることができるのである。  しかしこの現象が派生、転用という「過程」だと考えた場合、二つ問題が生 じる。ひとつは、もとの品詞と転用された用法との見分けが、必ずしも明確で あるとは限らないという点である。たとえばwhistleのように語の歴史が古く、 派生の方向を確認することが難しい場合も少なくない。 「オクスフォード英語 辞典』(OED)は、 whistle OE. n.〈葦〉→v.〈葦笛を吹く〉という転用が16 世紀に起こり、whistle OE. v.〈笛を吹く〉→n.〈笛〉という転用が15世紀に 起こったむねを記しているが、古英語で動詞と名詞のどちらが先であったかに ついては文献的に確認できていない。同じ難しさはopenについても言える。 補足しておくと、文法範疇の境界はもともとぼやけていて、たとえば名詞らし さ、形容詞らしさは緩やかな傾斜(gradience)をなしていているとする考え 方がある(cf. Bolinger 1972)。事実、あとで具体的に取り上げるように、そ のようなケースも特に品詞内部の下位範晴間、あるいは少数の特殊語彙につい てしばしば見られるが、いまは、語の機能的な所属(=品詞)は文脈によって 一意に決まるという前提で話をすすめる。  さらに重要な問題は、品詞転用が特定の認識の仕方を反映した、したがって 特定の機能を帯びた語法だという点である。これがとくに顕著になるのは文学 言語の場合で、英文学の世界では、とりわけシェイクスピアがこの技法を余す ところなく活用した作家として賞賛されてきた。かれが並はずれて大胆な転用 を試みたことは事実であるが、つぎの引用に見るように、そこにはもうひとつ 別の要素が大きく絡んでいる。  エリザベス朝英語のあらゆる文法の綾のなかでいわゆるanthimeria、すな わちある品詞から他の品詞への転用ほど興趣をそそるものはない。凝縮され た意味、生気、そして情感をゆさぶる力によって、この技法はほかのいかな

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る文法の綾にもまして、シェイクスピアの言語に生気と力強さを与えてい る。 […]最も驚嘆すべきは動詞である。A.ハートが指摘しているように、 「シェイクスピア晩年の諸作には、わずかに名詞や形容詞を動詞に変えたに すぎない大胆で鮮やかな隠喩がふんだんにある。これによって詞章は活力に 充ち、生彩と想像力ゆたかなものとなっているのである。」 (Miriam Jo− seph 1966:62f.文中の引用はAlfred・Hart i 934, Shakespeare and the Homi− lies, p.250から。)  すなわちゼロ派生は単なる語法の拡張というだけでなく、活力と生彩に充ち た「文法の綾」(a figure of grammar)であり、しかも隠喩の契機をなしてい ると考えられてきたのである。うえの文章は明らかに、隠喩をもって彩りの女 王、天賦の才のしるしと見なす伝統詩学の立場から書かれている。(ただし修 辞学の用語では、綾[=ことばの綾および文法の綾]と喩法[=隠喩、換喩、 その他]は定義上べつの範疇に属しているので、文法の綾が隠喩をなすかのよ うなうえの観察を鵜呑みにすることはむろん出来ない。品詞の転用が何かの 「表現の彩り」であるならば、それは綾か喩法かのどちらかでなければなら ず、当のプロセスによって意味に転移が生じるということが喩法を兇分ける基 準である。)  しかしいずれにせよ、ゼロ派生(二品詞の転用)という現象は、ひとつには 英語の一大特質として、またひとつには表現の有効な彩りとして、二つの違っ た角度から検討されるべき問題である。

§2転用のタイプ

 シェイクスピアは大胆で鮮やかな品詞転用をおこなったとされ、事実そのた めにlook daggers at, is perfect gallowsその他、定型句と化した表現も少なく ない。つぎにいくつかの目立つ使用例を挙げてみる(Miriam Joseph, ibid.)

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(1)A→D:Report that I am sudden sick. Quick and reωrn!(Aη疏oηy(fi  Cleopatra,1.3.4) (2)P→A:1 have in this rough work shaped out a man Whom this beneath  world doth embrace and hug.(Timon ofAthens.1.L43) (3)A→N:All cruels else subscrib’d−but I shall see The winged vengeance  overtake such children.(King Lear 3.7.65) (4)N→A:Methinks he hath no drowning−mark upon him, his complexion  is perfec「gal∼ow∫. (The Tempest,1.1.32) (5)N→V:and here My bluest veins to kiss−a hand that kings Have∼ipped,  and trembled kissing.(Aη’加ηy(隻Cleopatra,25.27) むろんこれですべてのタイプを尽くしているわけではなく、ほかにも、たとえ ば形容詞が副詞として使われたり、前置詞が形容詞として使われたりするケー スなどがあり、さらに一般的にも、英語では不可算名詞→可算名詞、自動詞→ 他動詞、その他、品詞の下位範疇間での転用がしばしば起こる。  品詞の転用にかかわる問題点の整理を兼ねて、ひとまずうえの例をすこし詳 しく点検することから始める。まず、(1)は形容詞由来の副詞の例として挙げ られているが、それをいえばQuick and return!のquickもまともな使い方では ない。ふつうandによって結ばれるのは同じ品詞であるという文法上の通則か ら見て、quick a.→quick v.という転用が生じていると見なすことも可能であ る。しかし一般的な命令文Be quick!、あるいはretumとの対応から考えて、 これはbeの省略形であり、まえのreportに掛かっていると見るほうが妥当であ ろう。(4)のgallowsは名詞から形容詞への転用の例として挙げられているけ れど、ここに転用があるとは考えられない。隠喩的に解釈されることは確かで あるが、しかしそれは名詞2項(=his complexion, gallows)が等式化された ために起こる通常の隠喩(‘A isB’)であって、形容詞としての文法的要件 は充たしていない。隠喩的意味についていえば、その発生理由は品詞の転用と

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は別のところにある。  用例(5)はまさしく名詞から動詞への転用であるけれど、しかし隠喩的な 特徴は観察されない。つまり、「名詞を形容詞や動詞に変えた」だけで隠喩の 成立条件が整うわけではなく、転用によって生じる新しい「意味」と隠喩とは 別物であると結論できる。  ゼロ派生と隠喩とが同時に観察される例として適切なのは、むしろ次の一節 である(Miriam Joseph 1966:63)。 (6)If it[ニthe wind]hath ruffianed so upon the sea,  What ribs of oak, when mountains melt on them,  Can hold the mortise?(Othello,2.L7) ここでは、もともと名詞であるru笛an〈暴れ者〉が‘to play the ruffian’〈暴 れ者ぶりを発揮する〉という意味の動詞として使われている。これが風に対し て述語づけされることで概念の抵触(1ひと}≠掴Dによる隠喩が生じ、 〈暴れまくる〉に相当する意昧を獲得しているのである。あるいは風の擬人化 といってもよい。  この用法に対して、辞書類は単に〈荒れ狂う〉あるいは‘to rage’という訳 語を与えている。しかし見落としてならない点は、動詞に転用されてももとの 名詞形がそのまま生きており、したがって〈「暴れん坊」ぶりを発揮する〉の ように名詞的意味を引き継いでいるはずだということである。そのことは、単 なる意味情報に加えて、有形の自然物にふつう随伴する視覚情報が強制的に前 景化されるということ、記号論の用語に翻訳していえば、恣意的な象徴が類像 (icon)として有縁化されるということを意昧する。したがって、「鮮やかな 隠喩」が成立するうえで決定的なのは、「動詞へ」ではなく「ある種の名詞か ら」という特徴であることになる。文法範疇からの逸脱を指して一種のことば の綾と見なし、それ自体ある種の表現効果を生むと考えることには別に問題が

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ないとしても、これをそのまま意味の転移を巻き込んだ喩法の一種と考えてよ いかどうかは疑わしい。  それならばしかし、品詞の転用によって生じる意味や効果とはどのようなも ので、それは隠喩的意味とはどう違うのであろうか。こうしたいくつかの点を 確かめるために、さまざまの転用タイプをもうすこし詳しく点検してみよう。 ただし、要点をしぼるために名詞(N)、形容詞(A)、動詞(V)という主要 品詞だけに限定して議論をすすめる。またこれらの主要品詞についても、下位 範疇間で起こる転用(たとえば不可算名詞→可算名詞、自動詞→他動詞、その 他)を主題的にあつかうことはいまは控える。ことに動詞の機能的転用と構文 的意味との相関性、いわゆる表現の重層(cf. Goldberg I 995;国廣1982:193) などはここに関係してくる重要な問題であるが、いまは扱わないことにする。  名詞、形容詞、動詞という主要3品詞に関していうと、転用のタイプとして は、つぎの6つのタイプがありうる。参考までに接尾辞の付加による通常の派 生を併記してみる。 形容詞化:  V→A defiant, defendable, get−at−able, dismissive, talkative, etc.  N→A beautiful, queenly, stony, boyish, atomic, suburban, papal, etc.

名詞化

 A→N readiness, seniority, honesty, freedom, dismissal, heat, truth, etc. V→Nrecognition, disturbance, decipherment, speech, stealth, etc.

動詞化

 A→V darken, embitter, embolden, smooth, disquiet, etc.  N→V de−center, unbutton, house[−z,−sll, offense, winterize, electrify, etc.  これは普通にいう派生であるが、そのなかですこし特殊なのは動詞由来の形 容詞で、同じ性格がゼロ派生にも共通していると思われるのでここで簡単に触

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れておく。  英語には形容詞から動詞を作るための派生語尾がごく少ないだけでなく、う えに挙げた一able、−ant(−ent)、−ive、−ativeについてもそれぞれ紛らわしい事 惜が伴なう。すなわち一antはもともと古フランス語の現在分詞形であり、そ こからいえば派生ではなくて活用と見なすのが正しい。OEDは、 acting/active, attracting/attractive, coherenticohesive, consequenticonsecutiveなどの対に触れ つつ一ive形容詞は、−ing,−ant,−entなどの形容分詞とは違って、恒久的ない し習慣的性質もしくは傾向を意味すると記述しているが、これは一ent,−antが 形態論上の問題としてだけでなく、意味のうえでも現在分詞形と類似すること を指摘したものと受けとることができる。残る一able,−ive,−ativeについても、 (i)動詞かまたは名詞に付く(e.g. debatable, sateable, knowledgeable, authori− tative, qualitative)、もしくは(ii)派生形がかならず形容詞になるとは限らず 名詞になる場合もある(e.g. representative, incentive, derivative)、など、と もに文法過程としていくぶん不安定な面が見られる。  派生語尾の少なさという点についていえば、そのひとつの理由は、分詞形現 在一ingおよび過去一enという汎用手段によってこの派生が統語的に確保され ており、能動と被動とに特化された、より精密な転用形式が可能であるからだ と考えられる。つまり、転用がないために語彙レベルでの生起例が見られない のではなくて、不可欠であるために形態レベルで文法化されていると受けとる のが正しかろう。  しかしもっと特殊な点は、ゼロ派生による動詞由来の形容詞(vA)と見な しうるケースがほとんど皆無に近いという事実である。このタイプでゼロ派生 を思わせる用法としては、①selecS works of Thomas Hardy, a go decisionな どごく少数の例、②draw bridge, push button, turn table, swim suitその他の 複合名詞の第一要素など、いくつかの候補がないわけではない。辞書によって はto stay put in one job〈ひとつの仕事をずっと続ける〉、 be・dead・beat<くた くたに疲れる〉などの用法を形容詞としているものもあるけれど、他方、こ

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れらを品詞の転用でなく過去分詞の一用法と見る立場もありうる。従来の研究 書はおおむねこのタイプ自体を認定していない(cf. Miriam Joseph l966; Marchand l969;Adams l 973)。  ともあれ、このタイプに判定の難しさが伴なうことは否定できない。たとえ ばdraw bridge. runway, turn tableのような複合は造語においてかなり生産的 なパタンであるが、第一要素drawが動詞からの直接の転用であるか、それと も名詞化を経由した用法であるかについても見分けがつけにくい。  似たような判定の難しさは、名詞由来の形容詞(nA)にも伴なう。純正の 形容詞は、①補語として叙述を行なう(=beA)、②主として名詞の前位置 にあって当の名詞を限定・修飾する(=A+N)、③比較変化形をもつ(=A− er, A−est)、④副詞によって修飾される(=very A; more A, most A)という 統語特徴を備えているが、うえの用法について言いうるのは、それらが限定的 な機能を果たしているということだけである。しかし限定的な用法は、名詞自 体が統語的に付与された機能であるにすぎず、形容詞として用いられてはいな いと考えることもできる。たとえば (7)heroic acts〈英雄的な行為〉一’hero acts〈英雄の行なう行為〉、  rocky garden〈大石の多い庭〉−rock garden〈石庭〉、  metaphoric interpretation〈比喩的解釈〉∼metaphor interpretation〈比  喩の解釈〉 などの対に見るように、純然たる形容詞と名詞語基の場合では修飾の仕方が微 妙に異なる。その違いは、前者が形容語の付加による修飾(=(A)十N)で、 たいてい陳述と対応している(=NisA)のに対して、後者は合成であると 言い換えることが出来よう。とくに最後の例などは明らかに異種の文法関係を 含んでいる(<to interpret[V】a metaphor[O])。ただし複合より緩やかで修 飾にひとしい用法もときおり見られ、その場合は、語義いかんによって形容詞

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的な扱いも可能である。つぎの例では副詞による修飾や比較変化が起きてい る。 (8)Certain absolutely左εy aspects of the relative distribution of psychologi−  cal and social identity and value as between private and public, un−  voiced and declared, religious and secular, have been more or less dras−  tically modified.(Steiner l 978,‘‘The Distribution of Discourse.”) (9)Apreschooler’s tacit knowledge of grammar is more sophisticated than  the thickest style manual or the most state−of−the−art computer language  system.(Pinker, The Language Instinct.19) 運用上このように傾斜(=勾配)は認められるが、名詞の並列はれっきとした 統語パタンなので、devil−fish、やhermit・crabなどの複合語の創成、あるいは 下の例などのように、比喩構造を孕んだ表現として使われることも多い。これ は2項の併置というもっとも原初的な記号過程によって生み出される隠喩であ る3。 (10)The air in the room had aβowεr−shoρcoolness.(Updike, The Same   Z)oor,97) (ll)It is always a tremendous task−amammoth task.(O’Henry,‘‘The   Gift of the Mag輌”) (12)Her dyed hair[was]hanging loose in Medusa ringlets.(Updike, The   Witch(ゾEast∼ake,209) もうひとつ紛らわしい用法としては、名詞が無冠詞で補語になり、したがって 機能のうえで形容詞的にふるまうケースがある(e.g. John is captain of the team;He turned traitor, etc.)。しかし、冠詞の非在は、これを転用の標識と

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見なすほど強い理由にはならない。このように幾種類かの境界的な使用例はあ るにせよ、おそらく名詞から形容詞への転用もさほど一般的な現象ではないと 結論することができる。  動詞由来の形容詞があまり見当たらないのに対して、形容詞が動詞扱いを受 けることはかなり頻繁に起こる。下の例にみられるように、自動詞として転用 されることも他動詞として転用されることもありうる。 (14)He slowly ventured into the pond. The bottom was deep, soft clay, he   sank in、 and the water clasped dead cold round his legs. As he stirred   he could sme▲Hhe cold, rotten clay thatプ’ouled up into the water.   (Lawrence,“The Horse Dealer’s Daughter”) (15)He tended to mope when bested in games、 (16)As he was looking through the book, it occurred to him that it would   make a useful and interesting textbook if the sensationalism were toned   down and the content serioused up.(Knudsen, Histoi:y’on Triaの たとえばbald, dim, idle, mellow, tense, yellowなどは自動詞として、 bare, better, dry, further, readyその他は他動詞としてよく使用される形容詞で、た いてい‘make’、‘become’を補って理解できるような、〈転成〉の意味をとも なった用法と見ることができる。  しかし、用例として挙げたshrilled, fouled up,あるいはshy(away)〈避ける〉, brave〈立ち向かう〉, slow(down)〈速度を落とす〉などはより行為性の強い 動詞として使われ4、多くの場合‘behave∼1y’のような形で言い換えられる (Adams, op. cit.)。この型の形容詞由来動詞は自・他双方の用法をもつ。形 容詞がなべて性質や状態を表わす点では変わりがないけれども、その性質や状 態を何かの人的・外的なはたらきの結果と見なして他動詞化しうるかどうかに ついては事実面での制限があるあるということに他ならない。

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 ここでもうひとつ注意すべき点は、一般に副詞辞はアスベクトを左右し概し て行為性・完了性を明示化するが(たとえばsat[状態動詞]:sat down[動 作動詞])、同じ傾向が形容詞由来動詞をもつよく支配しているらしいことであ る。そのことは、副詞辞ぬきだと文の許容度が著しく落ちるか、あるいは純然 たる状況描写にとどまることからも推測できる。もっと正確にいえば、なべて 副詞辞の付加は《範疇的に》アスペクトを変化させるが、個々の副詞辞の語義 は結合先の動詞におうじて個別的に発現すると考えられ、たとえばfouled up では池底の泥が巻き上げられる、〈上昇〉の意昧がつよく出ているが、 serioused upの場合には漠然と〈程度の向上〉が感知されるに過ぎない。つぎ のような例から知られることは、ここには句動詞の構造的意味(たとえば “V+up, V+away”その他の)も強く関与してくるという事実である。 (17)The rotten clay fouled the water. (18)?The content was serioused.  それでは、派生接辞(あるいは活用形一ing,−enも含めて)が個々独立に表 わすことのできる自義的意味と、ゼロ派生によって「創成される」意味とは互 いにどのような関係にあるのであろうか。その臨界的なケースは正当な派生 語、あるいは意味のほぼ同じ別語が併存する場合である5。 (19)He hotted it[=the cocoa】up accordingly in the little saucepan.   (Sayers,“Suspicion”) (20)The ambassador’s party went down to the d皿geons」n one, a shrine   seemed operative;bones, scraps of glass, and fresh ash dirtied a slab   of rock.(Updike, Beck is Back) ここで転用動詞をそれと意味の似通った本来動詞に較べてみると、hotted∼

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heated(ノwamled), dirtied∼smearedという二系列のあいだにさほど大きなニュ アンスの違いがあるとは感じられず、インフォーマントの反応も、前者が「非 文法的である」「informa1な印象を与える」「破格なところが文体的に有意味 である」、などの応答が代表的なもので、二者の意味差というより、「転用」 からくる目新しさ、技巧性に対する反応が表立っている。語義(知解)の相違 はそれほど強く感知されていないと結論してよいだろう。直感的には、たとえ ばHe hotted up the cocoaの場合その背後に本来の形をもつ命題The cocoa is hotが含意として意識される、つまりアスペクトのうえで〈結果の状態〉に限 定され、これが〈過程〉動詞heatとのわずかなニュアンスの違いや適用性の 差に作用しているように感じられる。要するに起点となる品詞の範疇的意昧を 受け継ぐと言いうるが、この点についてはもっと精密で包括的な検討が必要で ある。

§3名詞化

これに引き替え、動詞ないし形容詞から名詞へ、そしておそらく動詞から形容 詞への変換は接辞のあるなしにかかわらず、言語の一般特性であると言ってよ い。歴史的に見て、いわゆる抽象名詞はほとんどすべてこの種の派生語である とする見方もあり、一般論としては肯定できる(lpsen,『ドイツ意昧論の源 流』)。したがって有形の、正規の派生については概略つぎのように全方向的 な図式が成り立つ。すでに述べたように動詞の形容詞化は、活用として、ある いは形態論のレベルでは保証されているけれども、ゼロ派生という過程として は存在していないと考えて良いのではないかと思われる。 (21)

N

1/

A

2

V

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 アスペクトや強勢規則から見て、これら3つの品詞は名詞を中核としてN: (A:V)という系列をなしていると考えられ、そのかぎりでは上昇派生、下 降派生という言い方をすることが許されよう。もし上昇派生が言語にとって普 通の現象であるとすれば、必然の随伴として、動詞由来の名詞、know, pull, say, start, stop、あるいはdark, deep, green(s)、 valuables, white, wrongなどの 形容詞由来の名詞はさほど意味的な抵抗を与えないということになる。これら の語は独自の効果というより、統語的な自由を目指した表現であると考えて 良いと思われる。 動詞由来のゼロ派生名詞(vN)に付帯する意味についてはつぎのような分 類の試みがある(Adams op.cit.)。まだ厳密さには欠けているが、これは単 なる列挙でなく英語の基本的な構文において名詞句の帯びる各種の意味役割 (semantic roles)を参照枠とした分類になっており、この問題に関する有力 な視点を提供している。個々の例については疑問の余地が残るものもあるが、 そのまま掲げてみる。 (22)a.行為者(Agent):hunt, cheat. help, spy, chimney−sweep   b.行為対象(Object):command, puzzle, drink, eats, read   c.被動者(Patient):catch, find, handout, spread, kill   d.行為結果(Effect):cough, smile, limp, sigh, whisper, hairdo   e.道具(lnstrument):catch, cure, polish, cover, refill,1ift   f,場所(Place):dump, haunt, hide−out, retreat, lounge, stop, pass  行為者その他の用語はもちろん、文の主要構成要素が帯びる意味役割を規定

したものである。注目すべきことに、catchは被動者(〈裕福な結婚相

手〉)、道具(〈留め金〉)双方の項目に現われるが、これは分類が恣意的な わけではなくて、むしろ意味付与の一般原理そのものを示唆している。動詞か らゼロ派生によって作られた名詞は、たとえ同じ辞項(たとえばcatch)で

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あっても文脈次第で複数個の意昧を帯びうるのである。ただそのさい、行為の 対象と被動者については有生条件が作用しないと見なされているようである が、この点についてはもっと包括的な視点から再検討する必要がある。  ここでいちど整理しておく。つまり動詞が名詞に転化されるということは、 そこで文法的に「実体化」が行なわれ、実体的なものとして命題のどこかに配 置されることを含意しており、したがって、文における名詞一般の意味役割を 写像範囲にすると想定することができる。それゆえ、 ・動詞由来のゼロ派生名詞の意昧は、名詞句が一般に文中ではたす意昧役割  を参照枠として解釈される。  べつの角度からいうと、有形の名詞派生語尾(−ion、 −er,−ant,−ee,−al, etc.) はそれぞれ独自の意昧に特化されていて名詞をさらに細かく差異化することが できるのに較べ、ゼロ語尾(一φ)には本来そのような固有の意昧がなく、た だ名詞化の統語的・文脈的な形跡をそなえ、名詞としての文法特性(=定性、 数)が付与されるだけなので、随時、文脈に照らして《範疇的》に解釈されざ るを得ないのである。これが、「名詞一般の意昧役割を写像範囲にする」とい うことの内実である。それゆえここには、「意昧タイプは、ある辞項の生起す る各種の文脈の記述である」という一般則が当てはまる(Eco l984:35)。つぎ の例に見るように、形式動詞をもちいた名詞表現や同族目的語、あるいは受け 継ぎなどにも同じ原則が原型的な現れ方をすると考えられる。 (23)She sighed deeply−−She gave a deep sigh.[行為結果]. (24)If you pay for something you tend to feel you control it; a belief borne   out by people’s eagerness to buy British Telecom shares.[行為対象] ゼロ語尾はこのようにほんらい曖昧であり、文脈にもとついて具体的な意味

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が画定されるので、この種の動詞由来名詞はつねに潜在的な多義語として記述 される。たとえばうえで「道具」という部類のもとに置かれたcatchも、辞書 では〈n.捕らえること、捕手、獲物[裕福な結婚相手]、留め金〉など複数 個の語義を与えられており、同じ事情は、walk n.〈歩行[散歩]、、歩行距 離、歩行時間、歩き方、歩道〉その他、原則的にすべての事例に当てはまる。 このことは、意味役割への写像が一語について幾通りも可能であるという基本 的性格と同時に、他方では、うえの6タイプに加えて、〈歩き方〉〈歩行時 間〉〈歩道〉などの意味を説明するために、 (22)のリストに対してさらに、 g.様態(Manner):〈歩き方> h.時間(Time) 〈歩行時間> i.経路(Path):〈歩道〉 など、英語において範疇をなす意味役割をさらにいくつか加えねばならないこ とを示唆している。しかしこのリスト(a−i)は意昧役割を意識したものではな いので、厳密にいえばより一般的な方式に従って規定し直される必要がある6。  ともあれ動詞由来名詞(vN)の意味解釈のプロセスそのものは単純で、起 点となる動詞のもつ構文情報だけがその決定要素となると結論することができ る。うえでcatchに見られた〈獲物、裕福な結婚相手〉という両義性は、総称 名詞に関して一般的に観察される[±人間]という意味素性から来ており、こ の派生名詞に固有の語義ではないと推測される。  こうした上昇転用の「綾」としての効果という点については、シェイクスピ ァからの例がテスト・ケースになりうる。 (25)All cruels else subscrib’d−but I shall see The winged vengeance   overtake such children.(=3) (26)What you shall know mean time Of stirs abroad, I shall beseech you,

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sir, To let me be partaker.(Anthony(隻Cleopatra,1.4.81)  Cruelsにはふつうの言い方、 cruelties, cruel deedsに較べて、文法規則を踏 みにじった、感情むきだしの表現のような印象があり、したがって、非情な仕 打ちをなじるこの文脈に応わしいことは否定できない(ただし韻律上の理由か ら二音節を費やすことができないという制約がかかっているのも事実であ る)。しかしこれこそ形容詞を一足跳びに可算名詞化するという転用の効果 で、その限りにおいてはgreens, news, shorts, readsその他と同列である7。名 詞の範疇的意味を〈実体性〉であると考えるなら、実体化は概念形成の基本図 式なのである。あとのstirsについては、極端に短縮された言い方が見下した気 分を表わしているように想像されるほか目立つ点はない。  これでもなお、すべての品詞転用を表現上の綾とする見方を否定する理由に はならないが、すくなくとも「名詞へ」の転用に関するかぎり、その綾として の効果は破格語法として目を惹く、という点にとどまり、何か特別な意味上の 曲折を伴なうということはないと予想される(後述)。

§4下降派生

 行為や属性の実体化(=名詞化)が言語の慣性であるならば、逆に、名詞を 動詞や形容詞として使用することにはどのような表現効果がともなうだろう か。名詞由来の形容詞についてはすでに略述したので、こんどは名詞由来の動 詞を取り上げて両者の共通性、あるいは相違を考えてみる。  名詞由来動詞の第一の特性はやはりその即興性、場面依存性という点であ る。そのため許容度はおおむね頻度に比例し、たとえばLeech(1974:214)は つぎの(29)について、「有り得なくはないが普通の用法の範囲を明らかに 超えている」と判定している。 (27)He pocketed the change.(‘put the change into his pockeピ)

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(28)He netted the balL(‘put the ball into the net’) (29) ?She basketed the shoPPing. Cput the shopPing into her baskeピ) (30)*They carred alHheir belongings.(‘put all their belongings into the   car’) しかし、いかに普通の用法の範囲を超えていても解釈は可能で、根底にある意 味機構は立派に作動しており、許容度の低さと理解可能性との齪酷が受け手に 与える抵抗感こそそのじついわゆる表現の綾の実体である。つぎの例などはか なり極端な用法であると思われるが、それはあくまで革新性にかかわる問題で あり、文法的には、統語的要件さえ充たされていればゼロ派生はつねに成立し うる。逆にいえば、うえの(30)も語法として充分成立しうるという判断に なる。   (31)One dirty child adenoided something glotta1 at Harry.8(Burgess、 Doctor     is Sick)   (32)‘‘Let us cease to bargain−counter the Bible!”the speaker implored us.     [Thurber, quoted in Clark&Clark】   (33)Keats is spoilt by cockneyfying and suburbing(Quoted in Bowra,“P㏄ts     and Scholars”) ところでLeechの挙げた例(27−30)では、すべて‘to put x into y’と言い換えら れるよう意図的に用法が斉一化されている。しかし言うまでもなくこのような 状況はむしろ異例で、ふつうは(31−32)のように、文脈に応じて意味がきま るのがこの語法の特色である。したがって、意味の帰一性・変異性がどんな理 由で生じるかを突き止めることが第一の要件である。  いまの例でも、意味用法の同一性に関する判断を言いかえ表現に置いたが、 いくつかの先行研究に共通して言えることは、転用によって生じる《新しい意 昧》を「パラフレイズ」にもとついて記述・類別化するという方法である。一

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例として、つぎのような文をとってみる。 (34)a.Jane powdered her face.   b.Jane powdered the aspirin. これらの文がたとえば、 ‘Jane did something to cause it to come abou“hat powder was on her face.’ ‘Jane did something to cause i“o come about that the aspirin was powder.’ のようにパラフレイズされるとすると9、そこにはとうぜん主語(=Jane)、 他動詞の範疇的意味(==‘did something to cause it to come about’)、もとの 目的語に相当する要素(=her face, the aspirin)、推論される意味(=‘pow− der・was・on. the aspirin was[turned into] powder’)という各部分が含まれるこ とになる。概括していえば、従来行なわれてきたことは、①この文脈にふさわ しい動詞、たとえば‘put’,‘break’を推定し、これによって新しく生じる意味 の記述と類別化を行なうか、または、②推論される意味と目的語との関係に よって分類するかであった(たとえばうえの場合だと、一方では前置詞on、 他方では名詞補語が出現している)。前者は大方の辞書やAdams(1973)の採 用する方法であり、Clark&Clark(1979)が採用したのはあとの立場である。  意味の記述があるていど言語内翻訳たるパラフレイズによることは避けられ ないとしても、これに客観的な基準となりうるだけの形式性を持たせることは きわめて難しく、Adams(1973)による記述は大まかな、訳語別の列挙に終 わっている。Clark&Clark(1979)がこの手法の厳密化に意識的に挑んだこと は評価できるけれども、現実には動体、場所、持続時間という3範疇が前置詞 (±on,±in, at, to;around, along, over;through, with)との対応において析 出可能であるのと、結果および用具がほぼ確定的に同定できる点を除いて充分

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に信頼性のある結果を導くことは出来ていない。しかもこれは、英語において 周縁格が主として前置詞句で表わされ、中心的な文法格である主格と対格がゼ ロ表示であることから見てあらかじめ予想される結果であり、名詞由来動詞に かかわる問題圏を包括的に示したことを除けば、達成はさほど大きくなかった と言えよう。  しかし名詞由来動詞の意昧範疇に関して示唆に富むと思われるのは、むしろ まとめとして示された意味表記である。交差分類が混じるとしながらも、そこ では起点名詞の主要な意味特性(predominant features)がつぎの8タイプに 分類されている。ただし、たとえば最初のblanketはto blanket the bedという 用法をもとに動体(Locatums)として分類されているが、もしto blanket the invalidという用例に基づいていれば場所(Locations)に入ったはずで、言う までもなく、主要な意昧特性という視点から起点名詞の類別化を行なうことは 文脈依存性をあるていど捨象した事例のもとでしか成り立たない。 a.Locatums b.Locations c.Time intervals d. Agents e.Receivers f.Results 9. Antecedents h.Instruments Loc(e, x) Loc(x, e) During(x, e) Do(e, x) Happen−to(x, e) Become(x, e) Become(e, x) With(Do(x, y), e) blanket, spice ke朋el,●ench summer, weekend butcheちusher witne∬, boycott group, powder 戸ece together 加〃dcuff autoclave  ここで、たとえばLoc(e, x)は〈動体eが、 xと何かの位置関係にある〉こ と、Became(x, e)は〈事物xがべつの事物eを生じた〉ことを表記しており、 さきの例でいえばそれぞれ(29)、(30)に相当する用法を定式化したものであ る。しかし、この意味表記と、それに併記された「動体」、「場所」その他

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の、いっけん意味役割(ないし抽象格)を思わせる用語がどんな関係にあるか を確かめることがこの問題への糸口を与えてくれると思われる。ただし上のリ ストではpiece together一例を以て一範疇が立てられている。ほかにgroup、 teamなども同じタイプに属すると考えられるが、しかし副詞辞付きの旬動詞 (piece together, etc.)にまで枠を拡げると条件の設定そのものが変わること になるので、この段階ではむしろ除外して考えるべきであると思われる。  ここでひとつ確認しておくべきことは、うえでblanketについて指摘したよ うに、名詞由来のゼロ派生動詞が文脈に応じてさまざまに異なった解釈を受け るという点である。同じ現象は、多義性という形で動詞由来名詞にも見られた が、名詞由来動詞はこれに較べてはるかに場面依存性が強く、ときに言語知識 を越えた意味を帯びることがある。そこから言えば、これは複合名詞や所有表 現、省略語法などとともに典型的な「場面依存表現」 (contextuals)の一種を なしている(Clark&Clark l 979)lo。言うまでもなく意昧の場面依存は言語 の常態としてあらゆる辞項に起こりうるので、ここではその場面依存性が、 「意味を解釈するための統語的条件が過少であることから生じる」という限定 を加えておくべきであろう。場面に依存したさまざまな意味付与がどこから行 使の領分に属し、どこまで言語体系によって基礎づけされているかを見分ける ことは難しく、たとえば辞書に見られる記述は具体的な解釈のランダムな列挙 であって、ありうべき推論のパタンを類別化したものではない。  名詞由来動詞が場面依存表現のひとつをなしており、その意味解釈に構文情 報の関与する確かな証拠はいくつかあるが、しかし事物に関する知識も明らか に意昧の決定に関与している。この点についてClark&Clark(1979)は、「第 一に、革新的動詞の解釈は、その統語環境によって強く制限される。しかし第       くう 二に、これらの制限は空のなかで働くわけではなくて、to siren middayとto siren the Porsche to a stopとの解釈を区別するには、工場のサイレンと警察 のサイレンとの違いだけでなく、それぞれが何のために使われるかも知らなく てはならない」と述べている。それはたしかに事実であるが、そうした用途の

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違いが意味解釈に関係しているかどうかはかならずしも自明ではない。つぎの 2文を例にとってみる。 (35)The police sirened the Porsche to a stop. [Clark&Clark] (36)The factory sirened the noon. この場合、サイレンの使われ方まで意昧解釈に関係していると考えるのは、 (35)〈サイレンを鳴らして停止を命じる〉、(36)〈サイレンを鳴らして時報を 告げる〉という意味上の対照を考慮してのことであるが、名詞由来動詞として のto・sirenが伝えるのは〈サイレンで合図する〉という一般的な意味だけで、 それ以上の情報は文の内容に依存しているという考えもなりたつ。言語的意味 を越えて概念(ある対象に関する一般的な知識の総体)が関与してくるのでは なく、辞項の転用によって生じる一般的意味と構文的意味とが持ち合いになっ ているだけだと考えられないこともない。極端にいえば、サイレンが「何のた めに使われるか」を知らなくても(35,36)の意昧を正しく受けとることは出来 るということになる。  ともあれClark&Clark(1976)によれば、場面依存表現としての名詞由来 動詞は、「(a)その起点名詞(N)がある場面におけるひとつの役割をさし、当 の動詞(nV)の支配するその他の表層項がその場面におけるほかの役割をさ すことが、(b)話し手・聴き手相互の知識をもとに、(c)一義的に、(d)そ の場でたやすく算定可能だと(e)信じるべき充分な理由があるような(f)状 況を意味する」として、会話における協力の原理をもとに8項に亘って定義さ れている。定義項(a)にいう意味役割の再布置がどのような条件のもとで起 こり、どのように記述されうるかを検証することがつぎの問題である。 §5 名詞由来動詞における意味の類型  これまでの検討を踏まえて、もういちど先行研究の検討にもどる。Clark&

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Clark(1979)が基本的には文脈的意味にもとつく分類を試みたのに対して Dirven(1999)は、事象構造(event schema)と意味役割との対応関係をもと に名詞から動詞への転用を記述しようとしている、かれは、両者のあいだにつ ぎのような対応関係を認め、転用の可能な役割はごく少数に限定され、ここに 上げられた16の意味役割のうち、斜体で示した9つだけが動詞として転用さ れうるとしている(Dirven l 999)。 事象構造と意味役割との対応  a.行為のスキーマ:Agent. Patient, Instrument, Manner  b.経験のスキーマ:Experiencer, Stimulus  f,所有のスキーマ:Possessor, Possession d.授与のスキーマ:Recipient, Beneficiary e.場所・運動のスキーマ:Place, Source, Path, Goat  f,存在のスキーマ:Class Membership, Attribute これによれば、名詞から動詞への転用の基底をなすのは行為、運動、および 存在という三つのスキーマに限られることになる。それぞれつぎのように説明 されている。 (a)行為:動作主が被動者に、たいてい道具をもちいて何かの仕方で働き   かける(to fish)、 (e)場所・動作:動作主が局所化された結果をめざして動作をする(to   bottle) 、

(f)存在:ある事物に所属ないしは属性の位置づけが行われる(to

  author) 。 この一般化にもとついて、著者は、典型的に人間にかかわるような役割は転

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換(conversion)を起こさないという興味ある指摘を行なっており、この点では 行為者(Agents)という項目を立て、 butcher, usherなどをその例として挙げ たClark&Clark(1976)とまっこうから対立している。 「転換過程は主とし て非一人間の関与者に適用される[_】。なるほど存在表現の場合、部類所属を 表わす語はto author, to nurse, to volunteerなどの人間名詞だけであるが、こ れらはみな被動者[sic]の役割を占める」 (Dirven I999)。他方、様態(Manner) あるいは属性(Attribute)がどのような言語事実に対応するのか明確に示され ておらず、意味役割としての時(Time)もここには掲げられていない。  この論文は立場が明確で、しかもいくつかの明確な帰結を導き出している。 Clark&Clark(1976)と比較してみると、前者が言語事実の観察にもとついて Locations, Time Intervals, Instrumentsその他、ほぼ意味役割に相当する範鴫 を個別的に析出したのに対して、Dirvenのほうは、これを事象構造という角度 から捉えて転用の基底をなす意昧役割と事象構造との相関性を割り出してお り、明らかに議論の進展が見られる。ただしそれにもかかわらず、かれの立論 は証例に乏しく、検証することが容易でない。  また、たとえば次の(37,38)の用法がすべて「行為のスキーマ」に帰属し、 したがってfishが被動者(Patient)として解釈されるとすると一あるいは (37d,38d)は運動のスキーマに属するという説明になるかも知れない一この 記述はまだ望まれる精度に達していない懸念がある。さらにいうと、例文 (37e,38e)は明らかに隠喩表現をなしているが、これまでに触れた2研究は、 いずれも、隠喩の生じる根拠、隠喩的用法と隠喩をなさない他の意味タイプと の関連性、および抽象名詞の転用という3点を除外して議論を展開しており、 これらの問題を取り込んだ、包括的な究明がなされる余地をのこしている。  あらためて名詞由来動詞の用例を観察してみる。 (37)a.John fished alone on the beach.   b.When summer came, they fished for salmon and hunted the lordly

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   caribou.   c.Johnガぷhed salmon.   d.He had been dreaming very happily of fishing an English river.    (Christie, Passeng〈!rτo Frankfurt 3).   e.John∫ished a knife out of his pocket. (38)a.David tente∂neaHhe r▲veL[Clark&Clark 1976]   b.David’ente∂the b[anket.   c、David’ente∂the baby before the storm hiL IClark&Clark l976】   d.The marines ten’e∂the hillside.[Clark&Clark l 976]   e.He tented his fat fingers and looked closely at her.[OED] これらの使用例を見ると、名詞由来動詞の意味が単に自他の別などといった文 法範疇よりもっと精細な、意味構造のレベルで成立していることは明らかであ る。その意味構造はしかし、Dirvenの扱ったような意味役割よりもう一段具体 化されている形跡があり、その点ではClark&Clarkによる記述が言語事実を 的確に捉えているように見える。したがってここでは、後者のいう主要8タイ プが充分に包括的であるかどうかを検証し、そこに隠喩的な用法がいかに関 わってくるかを考察の対象とする。たとえばつぎのような、複合動詞について も同じ原則が当てはまると考えられるので、取り立ててこのタイプを別扱いす ることはしない。 (39)a.Let us cease toわαrgα輌η一counter the Bible.(=32)   b.You were s由l birds−〃es’i〃8 and playing truant in the woods.    (Tolkien,77ie Lord 6ゾ功θRiηg∫,737)   c.John wem刀yW∫Mη8 along the river. 名詞由来動詞の意味がいかに解釈されるかを、実例についてあらためて検討

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してみる。たとえば(37a,38a)を取ってみると、そこでは、起点名詞の推定 されうる意味役割fish = Patient、 tentニObjectが動詞に写像されるという過 程だけでなく、動詞の実質(=x)を担うべき要素が推論によって補完されな くてはならない。そのさいSb x−ed the tent(Object)、 Sb x−ed fish(Patient)と いう構文枠を充足しうる動詞は範疇的に予測されるだけなので、種々の選択肢 のなかからそれぞれabide in,、pitch, put upあるいはcatch、 getという解釈項の 選択・特定を可能にする情報は統語的なものだけでなく概念的知識が関与して くると考えなくてはならない11。これが解釈の一般的なプロセスで、たとえば 辞書の与えるfishニ‘try to CATCH fish’、 tent=‘to LIVE・in a・tent, to PITCH a tent’などの訳語はこの段階までを語義として特定したものと考えることができ る。しかし、fishの他動詞的用法(37c, d)には明らかにもうひとつ別の、 いっけん不可解な現象が関与してくる。つぎの用例と照らし合わせてみよう。 (40)a.She started to dust the cake.   b.She started to dus’the chimney piece.   c.No snow dusts the earth below, rooftops or fields and roads where    cars are nosing along.(Updike, Rαわ力輌’is Rich,400) 見るとおり、最初の例(40a)ではdustが粉砂糖を〈まぶす〉という意味に、 つぎの例(40b)では埃を〈除去する、払う〉という意味に理解され、構文情 報に違いがあるわけではないのにまったく正反対の二義が生じている。Clark &Clark(1979)はあとのような剥奪の意味が否定的前置詞not−onおよびnot−in によって特徴づけられるとして、動体(locatUm)および場所(location)につ いてそれぞれつぎのような例を挙げている12。下に動体(b)として分類された fi・sh the streamがさきのfish an English river(ニ37d)に相当する。 Locatum Verbs

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 (a)Not−oη. COVERINGS:skin the rabbit, feather the goose, shelhhe pea−   nuts, shuck the com, scale the fish, peel the apple. rind the lemon, dust   the shelf, bark the tree. fleece the sheep、 etc. INDIVIDUAL OBJECTS:   stem the grapes, top the tree, fin the fish, g川the fi sh, bur the wool,   pants the boy, flea the do9, etc.  (b)∼Vot−in. Pit the cherries, pip the grapes, stone the dates, core the apPle、   bone the fish, gut the fish. weed the garden, fish the strearn, milk the   cow, loonhe town. pillage the city, etc, Location Verbs  (a)∧Jot−on. Tee off the(golf)bal1  (b)Not−in. Mine the gold, quaπy the marble, pod the peas, shell the peas.  これらの例に関して特徴的なことはto carpet the floor, to〃man the boat, to pepper the foodその他と違って、〈除去・剥奪〉を表わす否定的な意味がふ つう基本的な、いわゆる無標の用法をなす一いいかえれば、表示項がゼロであ るにもかかわらず、to de−frost the freezer, to de−gnome the garden(Rowling, Harry Potter)の前綴りde一に当たる意味が与えられ|3、それとは逆の解釈が 明示的に指定されているときに限って〈付与〉的に理解されるという点であ る。この意味特性を構文や意昧役割(=Patient)から直に導くことはできず、 明らかにそこを越えた、別種の情報が意味理解につよく関係している。つま り、to feather the goose, to/fin the fish, to weed the gardenその他に関して、 逆の、〈付与〉の意味を持たせるような状況はふつう起こらないという前提の もとでこの解釈は成立しているのである。この常識的な前提を記述用語のなか に取り込むという角度から見れば、Clark&Clark(1979)がしたように、否定 的前置詞を仮定するだけで、とりたてて特別な意味役割を立てない処理方法に は妥当性がある|4。  しかし、たとえば既出のto dust(40a,b)あるいはto milk the babyくミルク

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を与える〉ノto〃milk・the・cow〈ミルクを搾る〉に典型的に見られるように、与・ 奪両様の使い方が一般に可能な場合があるだけでなく、状況しだいではto fish a river, to∫fin the fishに〈魚・を放流する〉〈魚にひれ・をくっつける〉とい う特殊な意味を持たせて使う状況もあり得なくはなく、修飾的用法においては むしろそちらが適例である(the/finned tribe)。それゆえ、授与と剥奪との二分 (= on, in/not−on, not−in)はあくまでも交差的で、いちぶ重なると考えなく てはならない。この観察は、由来動詞の解釈に言語知識と社会・文化的な知識 との双方が要求されるという事実を示唆しているが、両者がどのように具体的 な意味解釈に与っているかはまだ明らかでない。  しかし、この段階で明確に言いうることは、構文上の差異ではなく、起点名 詞(dust, kennel, muzzle)、あるいはそれの関係項(cake, chimneypiece, dog)の性格に根拠をもつような意味解釈が存在しうるということである。す でに見たように、ある種の名詞は与奪の対象(e.g. to muzzle the dog=‘The dog is with a muzzle.’)、およびそれの起こる場所(e.g. to kennet the dogs= ‘The dog is in a kennel’)として動詞化されることがあるけれども、しかし その際にも、与・奪両義の発生と同様、構文あるいは役割配置の違いから解釈 上の差異が生じるわけではない。  これに加えて、従来のデータから欠け落ちていた用法も幾種類か認められ る。たとえばシェイクスピアからの例(ニ5)でlipは〈口づける〉という意昧 で使われていたが、この語の動詞的用法にはほかにも次のような諸例がある。 いずれもOEDの挙げている用例である。 (41)a.‘having a lip/tips’〈一な唇をした〉→〈唇状の>    1577 Let every young man be not liquorish tipped, nor dainty     toothed.〈子どもを辛党にも甘党にも育ててはいけない>    1861 Another lipped flower is the hemp−nettle.   b.‘apply lips’<くちづける〉→〈ひたひた洗う〉

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 1622 0,‘tis the spite of he11, the fiend’sarch−m㏄k. To lip a wanton   in a secure couch, And to supPose her chaste、(Shakespeare、 Othello   4」.72)  1842 The dying ebb faintly∼ipp ’d the flat granite(Tennyson). c.‘form words’〈ささやく、つぶやく>  1818 Salt tears were coming when I heard my name most fondly   liPP ’d(Keats).  1887 ‘‘Ah, I thought my memory didn’t deceive me!”, he lipped   silently. d. ‘turn into a lip shape’〈めくれて唇状になる>  1821 That broth pot ladle[was], sorely lipped, and riven. e.‘move along the lip of’〈縁をなめる>  1899 At the fourteenth Mr. B again tipped the hole and lost [the   golf−match]。 £‘to produce∼’〈ふちどる>  1845 He has built stone dikes of more than nine miles in length   lipped and pointed with lime. 同一の1ipという辞項が、文脈に応じて明らかにいくつかの意味タイプに分か れているが、解釈の第一段階としては、それぞれに対しておそらくつぎのよう な意味機能を割り出すことができる(ただし、[a]は[d】の形容詞的用法だと 思われるので除外して考える。)例文(e)の意味表記は表層的なもので、実 際にはむしろThe ball lipped the holeという文の換喩的転移として成立して おり、ほんらいは℃AUSE(to lip(the ball)’のような意昧構造をもつと考え られる。そうしてみると、(41b)は従来の記述で用具的解釈とされたもの に等しいが、あとの(41a, d, e, f)4例はそれとは別の、これまで取り上げ られて来なかったタイプをなしていることになる。

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(a)受益 (b)用具 (d)形状 (e)用具 (f)形状 ‘HAVE(1iquorish)1ips’    加〃quor輌sh lipped ‘xWITH lips’ @      fO/ip a ”・anton; i切ped s〃εη吟 ℃AUSE(HAVE a lip shape)”舵ladle was sore/y lipped ℃AUSE(to lip(Obj, the bal1))[’heわa∼/]∼ipped the加/e ℃AUSE(HAVE a lip shape)”he dike is lipped w’ith∼ime  一般に〈所有〉の意昧に解される(a)はいわゆる動体動詞の受益用法 (receptive)であると考えられ、したがってその役割的基底としては所有物で はなくて被動者を立てなくてはならない。この語法の特徴的な点は、ふつうの 動詞では受動形が〈受動〉かまたは〈状態〉を意味するのに対して、名詞由来 動詞においては〈受動〉かまたは〈状態ないし所有〉という別の意味を帯びる ことである。とりわけ、形容詞を伴なった名詞が過去分詞形において所有を表 わす語法は詩的言語では慣用化している(e.g. cool−rooted・flowers, sofl−conched ear, etc.)。この用法を被動者に関連づけることから来るもうひとつの帰結と して、与奪両様に用いられる動詞に関しては、たとえばa〃milked・cow, dusted windowsills;The・cow is〃milked, The windowsills are・dustedにも同じ両義性が 引き継がれるという予測がなりたつ。直感的にはこの予測は正しいと思われる が、いうまでもなく剥奪の意昧が可能な動詞と受益の意味が可能な動詞との間 にはいちじるしい不均衡があり、後者のかずはほとんど無限であると考えられ る。たとえばevery dogged householdに較べto dog every householdの許容性 が低いのも、おそらく同じ理由によっている。この用法が結果動詞の受動形 (たとえばasteeled heart, penciled letters, etc.)と機能的に分化しているこ とは付け加えるまでもない。  用例(e)には用具的な用法が根底にあるが、〈ボールが十口づけする〉とい う範疇の転移が生じており、用具的な用法を基底にした隠喩である。 これらの用法はいずれも先行研究では対象から除外されてきたものである

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が、より重要な点は(d,f)に見るように形状を表わす用法の存在である。こ の用法は、辞書では〈一のような形をした〉という語義説明のかたちで頻出す るが、形状は事物の性質のひとつであって言語的な特徴ではない。この点から いえば、機能、性質なども名詞ではなく当の名詞のさす事物に帰属しており、 したがって次のような用法が名詞由来動詞の包括的な扱いにとっては決定的に 重要である(用例はすべてOEDから)。 (42)a.Thc caftan tented her knees.(c£He tenred his fingers and regarded    her closely.)   b.They uttered noises that wintered the blood.   c.The organization cannot effectively police every individual item of    behavior.   d.The carr)et hadn’t begun to pocket yet.  まずはっきりしていることは、たとえばtentやbottle, capなどの語を期間や 動作主の範疇で動詞化することは不可能であり、また逆にsummer, winter, week endその他、〈一定期間を過ごす〉という意味で転用可能な名詞が、動 体や場所、用具その他としては使用できないという語彙的制限があることであ る。言いかえれば、名詞は、それぞれの指す事物の特性により、帯びうる意昧 役割がさまざまの程度まであらかじめ予定されており、どのような統語的な改 変でも可能だとは限らないということになる。  しかし、その具体的な検討にはいるまえに、名詞の指す対象の記号論的、な いし存在論的な位置について触れておく必要がある。たとえばClark&Clark (1979)は起点名詞が「自然物」を指すケースだけに対象を限定し、なおか つ比喩的用法を除外して論を組み立てたがIS、名詞由来動詞は品詞の成立基盤 に直にかかわるだけに、この第一の前提は記号と対象という角度から見てきわ めて重要であり、第二の前提も言語の体系と行使という二面に密接に関係して

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くる。 Lyons(1977:442ff.)は、対象につぎの三つの異なる様態があるとしてい る。すなわち、 一次的対象 個人、動物、事物など、個別的に時空間を占めるような単体 二次的対象:出来ごと、過程、事態など時間的に規定されることがら 三次的対象:時空間の外にあるような命題や抽象概念。 ここで一次的対象(first order object)とされたものが、従来、「自然物」あ るいは「基本的個物」(natural kind objects, basic particulars)と呼ばれてき たものに相当する。一次的対象はふつう動詞「ある」によって、二次的対象は 「起こる」によって述語づけされ、これをいちおう識別の目安とすることがで きるが(Lyons l 977:443)、冒頭で触れた表現上の彩りという点からいうと、 一次的対象は直示によって定義可能な、したがって「容易に視覚記号で表わす ことのできる対象」、と規定することも可能である。  これに対して、二次的対象(second order object)である「出来ごと」は安 定な外形を持たず、視覚的にそれを象ることが難しい。たまたま名詞として、 実体的にコード化されているという点を除けば、概念的仮構であるという点 で、動詞や形容詞と同じ平面にあると考えられる。べつの角度からいうと、一 次的対象を表わす名詞を動詞化すれば、存在論的には一次性から二次性への質 的変換がともなうが、二次性、三次性を表わす名詞はそのような変換を含意し ないということになる。二次性名詞と三次性名詞を厳密に区別することは容易 でないが、ひとまず出来ごと名詞(たとえばrevolution, accidentなど)と抽象 名詞(たとえばfunction, ubiquityなど)という区分を目安にすることができよ う。  こうして、average, condition, evidence, function, promise, tasteその他の三 次的名詞は、たとえ動詞化されたとしても形象性がきわめて希薄で、文法的に

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はともかく、表現論的にこれを特別視する理由はあまりない。まえに取り上げ た形容詞由来動詞に、それほど大きな意味上の特質が認められなかったことも おそらくここに関係している。 (43)a.Adolescents attempt to distanee themselves from the world of the    child.(Barker, Cultural Studies,321)   b.But the idea was instantly negatived.(Christie, Complete Short Sto−    ries,407)   c.He might have silenced the girl if only he had acted quickly enough.    (Orwell, Ninpteen Eightiy Four,106)

すなわち一次的対象にはそれぞれ機能、形状、特徴、由来などの特質

(qualia)があり、たとえば辞書の定義はふつう当該の語の直接的な帰属範疇 (proprium)と、付帯するいくつかの特質と’の組み合わせによって行なわれる (cf. pustejovsky l 995:85f.; Nebauer&Pet6fi l 981:367)。次性や特質のうえ で大きく異なると思われる名詞をいくつか挙げてみる。 dogニaquadruped of the genus Canis, etc. bo“1e=narrow−necked ve∬θノusually of glass with cork or stopper siren=hootingゴnstru〃zent for sound signal tentニportable woolen shelter for encampment distancニinterva/of space or time negativeニostatement implying d斑ial 名詞から動詞への転換にさいしてこの種の情報が引き継がれるとすると、有形 の、一次的対象をさす名詞のばあい、その形状、習性、由来(材料)、機能、 目的その他が焦点化されうるのに対して、本来その種の、物としての多面性を

参照

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