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不登校児へのメンタル・フレンド活動の試み

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(1)Title. 不登校児へのメンタル・フレンド活動の試み. Author(s). 伊藤, 則博; 野上, 大輔; 板橋, 菊二. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 44(2): 45-55. Issue Date. 1994-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5323. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 平成6年3月. ) 第44巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C. Ma 1 「 ch ,1994. 2 i I 44 i i do Uni ty of]&iucat lofHokkai on(Sect onIC) VO vers lou ほ 『 na . ‐ ,No. 不登校児へ のメ ンタ ル・フ レン ド活動の試み. 伊. 藤. 則. 博・野. 上. 大. 輔・板. 橋. 菊. 1‐ は じ め に. 近年, 我が国では不登校状態を呈する児童生徒が増加の一途をたどり, 一向に歯止めのかかる様. 子が見られないという深刻な状況にある‐ 大きな社会問題のひとつとまで言わ れるこの現象の打開 のために, これまで多く の機関や分野の 人々の手によっ て様々な取り組みが試みられてきた‐ しか し, そのどれも決定 的な効果をあげるまでに到っ ていないというのが実情である‐ 最近にい たっ て, 北の地旭川においてこれまでの取り組みとは異なる活動が開始さ れた‐ 『ふれ あい・心の友訪問事 業-メ ンタ ル・フレン ド活動』 というのがそれである. 従来の各種の取り組み が, 子どもたちの学校復帰を最終目標に してきたのに対し, この活動は子 どもたちを学校に行かせ ることを目的とせず,彼らの人格的発達を社会福祉的な立場 から支援していこう とするものである‐ 平成3年4月より, 北海道では旭川児童相談所がモ デル事業 として, これに最初に取り組ん だ. 筆者らは, 最初の段階からこれに関与することができた。 まだ模索的段階だが初年度の活動経過を 中心にして, 現時点での問題点, 今後改善す べき課題な どにつ いて調査 し, この活動が不 登校児支 援の有効な方法のひとつ になりうる かどうか吟味したので報告する‐. 2. メ ンタル・フ レン ド事業の概要 この事業は, 平成3年4月 から国 (厚生省) が事業化 した 『ひきこもり・不登校児童福祉対策モ )の一環として 北海道旭川児童相談所が同年同月 から取り組み始 めた活動である. こ デル事業』 1 , 1 8歳未 の事業の目的は, 『不安・ 無気力・繊黙・心身症状等を示し, 不登校等の状 態にある児童 ( 満)及びその家族に対 し,学校教育分野 との連携を図りつ , 児童相談所や養護施設を十分活用し ,. 総合的な援助を行い, 児童の自主性・社会性の伸長, 登校意欲の回復, 家庭機能の回復を図る』 と ころにある. 事業全体の概要 を図1に示した. この事業は, 「ふれあい・心の友訪問事業」 ・ 「不登校児 童宿泊等指導事業」 ・ 「養護施設不登校 児童指導事業」・「ひきこもり・不登校児童福祉教育連絡協議会の設置」 という4種の事業から成っ ている. 次に, それぞれの事業の主旨, 内容及び実施方法の概要を述べる‐ ( 1 ) ふれあい・心の友訪問事業 ①. 主旨. 児童相談所 の児童福祉司 (ケースワーカー, 以下 CW と略す) による児 童指導の一環として, 児童の兄又は姉に相当する世代で, 児童福祉に理解 と情熱を有する大学生等 (メ ンタル・フレン ド, 以下 MF と略す) を, CW 等の助言・指示の下に, ひきこもり, 不登校児童の家庭に派 遣 45.

(3) . . 伊藤 則博・野上 大輔・板橋 菊二 〔 児蛍や双族の状態 】. 1 【 ひきこもり・不丑核児童綿社対采平家. (対策の現状). 騒 ぎ灘灘崎. r誓矧ぎ『. 訪問指揮. 鋼嫌濃. 酬園 ドゼ みにくい鬼量. ー り L饗麗 、縦との臨め唯 - - 聾 璽 塁 審露丁 杉忍 宝に感多 ′ 加忙きるが登 絞できない児. ーー -『 =三つた い辱により 蹄 的に派 陀 庇から 奔 絶 しG涜 邸する 必要がある児童. ( 2 )不受検死霊宿泊写擢琴平采 ① 1週間を即位として ‐児童 福乳所の」時係瓶所に宿泊さ せ瓢中的に指導する .併せて 家族に対する指導を行う . の 1週間を激位として 、児童 I 所に適所き 禍隣所の-時係S せ業平的に縄毒する .併せて 家族に対する推尊を行う .. 矧 融 解し し 矧融解. ており 、社会的 、自主 ---捺 襟をさらに習てていく ため中間的な社△- ん の蝿帥 必凝な児強. 「巨壷司斯 醐榔 「 雷電; 「 ;. 岡週がある 処屋 ジ. ・ 【 龍鉢平粟 3 ) 狼籾施設不愛校児蚕 ( 心喋源桂を行う部門を付置し )に入 知房が把走 た摸頭鑓敢( 所鞘霞し .概ね6ヵ月間の処遇 計逼に蛋づき 、指揮する .併せ て児電祖鑓所と嬰甑距遊ば ー当 蟹児量の象廉口境の豊空に努め. 家庭から引き難して 、指導する必宴 ー ; 巴度であって のめろ 、 る兇猛 硬とす し心理的治塚援助を必 る し潮撚鋤 激す. 『. 図1. ひきこもり・不登校児童福祉対策事業の概念図. (厚生省, 1 99 1 ). し, 当該児童とのふれあいを通じて児童の福祉の向上を図る .. ② 事業の内容及び実施方法 ” ) 児童相談所長は, MF となることを希望する者を募集し 審査・研修を実施した上 適当 , , と思われる者を登録する. 回. 不登校児に対する相談援助活動の一環として, MF を不登校児童の家庭に派遣する ‐. ( 2 } 不登校児童宿泊等指導事業 ①. 主旨. 児童相談所の CW による指導の一環として, 夏休み等を利用 して, ひきこもり・不登校児童 を児童相談所に宿泊又は道所させ,集団的に生活指導,心理療法 レクリエーショ ン等を実施し , , 児童の福祉を図る.. ② 事業の内容及び実施方法 ) 宿泊指導-児童相談所等に1週間単位 で宿泊させて レクリエーショ ンや生活指導を実施 ” , し, 併せて家族への指導を行う. 回. 通所指導-1週 間単位で通所させ て, レクリエーショ ンや生活指導を実施し 併せて家族 , への指導を行う. ←う 野外宿泊指導-・野外において, レクリエーショ ンや生活指導を実施する ・10名程度の ‐ 集団で実施する‐ なお, 宿泊指導及び通所指導 については, 補助指導員を委嘱する . ) 3 } 養護施設 ( 不登校児童指導事業2. ① 主旨 養護施設に不登校児童を入所措置し, 家庭生活における葛藤から保護し, 生活指導や心理療 46.

(4) . 不登校児へのメンタル・フレンド活動の試み. 法を行うことにより, 児童の福祉の向上を図る.. ② 事業の内容及び実施方法 ” ) 不登校児 童のうち,家庭の養育環境に問題があり,心理的援助を必要とする児童であっ て, 養護施設へ入所措置することが適当と認 められたものを対象とする. 回 “. 養護施設のうち, 不登校児 童に対し特別な指導を行う施設を知事が指定する‐ 指定された施設は, 不登校児 童に応じた処遇計画 (概ね6カ月) を作成し, 生活指導・心 理療法を行う‐. 鈎. 対象児童の定員は, 許可定員のうち10名程度とする.. ( 4 ) ひきこもり・不登校児童福祉教育連絡協議会の設置 ①. 主旨 関係機関相互の密接な連絡・調整を行い, ひきこもり・不登校児童福祉対策事業の円滑な実. 施を図る. ② 構成 児童相談所, 保健所, 市町村, 教育委員会, 学校, 養護施設等の関係者をもっ て構成する‐ 以上に示 したように, 4種の事業相互には有機的関連 があるが, MF 自身が直接的に関わるのは 「ふ 、れあい心の友訪問事業」 と 「不登校児童宿泊等指 導事業」 の2つであった. 国からの通知 と道からの委嘱を受け, 旭川児童相談所は平成3年4月 から関係機関へ協力を依頼 して連絡協議会 を設置し, 10月 からモデル事業として本格的に取り組ん だ. 北海道教育大学旭川分. 校及び旭川女子短期大学は, MFの募集に対してその主旨を十分理解し, また学生諸君への教育的 効果を確信して, 全面的に協力 した‐ 児童相談所は, MF の派遣までに4回の研修会を実施 し, 受講者の中か ら23名の者を登録 し, 3名, 旭川短大10名) MF として委嘱した (教育大1 .. 3. MF 活動の内容. ( ) 事前研修 1 MF に対して実施した事前研修の内容は, 次のとおりである. ・事業の説明と事例紹介 (7月25日) 講師-旭川児童相談所長ほか5名 ・登校拒否概論 (8月29日) 講師-旭川医大保健セ ンター講師. 酒木. 保氏. 9日) ・登校拒否への関わり方 (9月1. 講師-旭川市立常盤中学校登校拒否学級担任 三浦 務氏 10月17日) ・総括と討論 (. 講師・司会等-旭川児童相談所職員5名 ) 対象児の選定と派遣 ( 2 ① 対象児の決定 担当 CW 等を中心に, MF 派遣の対象児を CW 全員の協議の上選定 し, 家庭訪問や来所面. 接等を通じて児童と保護者の了解を得, 最終的に児童相談所の処遇会議で派遣を決定し, その 後順次 MF の訪問活動を開始した. 47.

(5) . 伊藤・則博・野上 大輔・板橋 菊二. MF 派遣では, 該当児童と保護者双方の了解を取りつ けることが肝要なの で, 児童相談所で は家庭向けのチラシを作成し, 訪問時に手渡してくるなどの工夫をした.. ② 派遣 平成3年10月, 中学2年の女子に対して2名の MF を派遣したのを皮切 りに, 次々 と派遣 者が増え, 12月までには7名の児童 に対 し MF 8名, 翌年3月 時点では1 6名の児童に1 9名の MF 派遣者数となった. この6カ月 間における合計訪問 (派遣) 回数は, 35 2回で, 児童1人に対 し月 平均5~6回 の訪問を実施 したという実績になる. ③. 児童の内訳. . MF が訪問した1 6名の児童の内訳は, 男1 0名・女6名, 幼稚園児1名・小学生5名・中学生 10名であるが, 内中学生男児が7名 で最も多数を数えた‐ 心理判定が実施され ている1 2名の内, 「自我の未発達」 と記された者が1 0名を教え, 対人関 係や競争社会でつまづきやすい特性が予想される.. ④ 世帯の状況 6名の対象児の内, 実父母世帯1 1 2名 ( 75%) 25%) であっ た. 実父母世帯 , 母子世帯4名 (. 中5世帯が両親稼働中で, 実父の出稼ぎや長期出張などで事実上の母子世帯と思われるものが 2世帯あった.. { 3 ) 事例検討会の実施 10月 から毎月 1回, 定例で事例検討会を行い, MF が経過と体験報告をし, それに対して適 宜 CW 外から指導を受けた. 主に助 言された事は, ・友達になること ・一緒に遊ん で関係 づくりに心がける こと ・生活範囲を広げ,社会性の育成を主眼とすること の3点であった , ‐. ( 4 ) 不登校児童宿泊等指導事業の実施. この事業のうち, 通所指導を 「プレー ボール1」 , 宿泊指導を 「プ レーボールn」 とし, 指 導の内容は児童相談 所の一時保護所に入所している児童の生活パターンに沿っ て進められた . ①. 本事業の対象は, MF 派遣中の児童 である. 野外キャ ンプの実施 ・日時:平成3年9月25日~27日 ・場所:朱鞠内湖キャ ンプ場 ・参加者:小4~中3の男子6名, 女子3名の計9名. 引率者5名 (筆者の内 参加).. 野上・板橋が. ・活動内容: テント設営,炊事,魚釣り, 自然散策, キャ ンプファイヤー, リクリエーショ ン, 自由討論会, 笹和紙作り, 手打そば作り‐ ② プレーボール工 (通所指導) ・日時: 平成4年2月1 8日~21日 2月24日 ~29日. ・場所:旭川児童相談所一時保護所 ・参加者:男子7, 女子3計1 0名 (小4, 中6名) MF の7名を補助指導員に委 嘱した. ・内容:オリエンテーショ ン,切り絵紙工作,買物学習, ボーリング, かまく ら作り, ミニルー ジュあそ び, 宝探 し, 粘土工作, そり遊び, 調理実習, 魚釣りゲーム, ビンゴゲーム 輪投 , げ‐ 48.

(6) . 不登校児へのメ ンタル・フレンド活動の試み. なお,平成4年度も「プレーボール皿」 と題 して通所指導が行われたので, ここに紹介しておく‐ プ レー ボ ー ル 皿 (通 所 指 導). ③. !. ・日時:平成4年10月19日~23日 10月26日 ~30日. ・場所:旭川児童相談所一時保護所 ・参加者:男子6, 女子4計9名 (小2, 中7名) ・内容:オリエンテーショ ン,サイクリング,切り絵工作, 科学館見学, フ ッ トベースボール, 調理, 魚釣り, ボーリング, 買物学習, 煩製づくり, ベーコン作り, 宝探 し, 伝言ゲーム, お別れ会‐ ④. プレー ボールn (宿泊指導) ・日時:平成4年3月 9 日 ~13日 ・参加者:男子3, 女子3計6名 (小i, 中5名) MF のうち8名を補助指導員に委嘱した‐ ・内容:オリエンテーショ ン, 買物学習, ビデオ鑑賞, 縄飛び, 釣りゲーム, スキー, 肝 だめ し, 切り絵, 手品一 ボーリング, カラオケ, 調理実習, 反省会‐ なお入所中には, 軽い程度 の生活指導を行っ た.. 4. MF 活動への意見と今後の課題 本節では, MF 諸兄姉と旭川児童相談所職員に対して実施した面接調査から得られた, この活動 に対する意見をまとめて紹介し, MF 活動の今後のあり方を展望する手がかりとしたい. 先ず, MF 諸兄姉が不登校という現象を どう捉えているかにつ いては, 登録者のうち90%の人が 「友達が不登校であっ た」 , 「自分が昔それに近い状況にあっ た」 等, , 「親戚にそういう子がいた」 身近な経験をしてきていることがあげられる‐ そのためか, 研修の前からある程度の知識をもって この活動に臨んだ人が多く, 多くの人が研修を経て抵抗 なく MF 活動に入っ て行 っ た. これは大 変興味深い点である. また, MF には ボランティ アの経験者も多数いたのでその内容を調べてみた‐. ・児童養護施設での学習指導 (麦の芽会) ・自閉的障害児とあそぶ会 (目障研) ・学齢発達障害児のあそびグルー プのボラ ンティ ア ・老人ホームの介護ボラ ンティ ア. ・精神薄弱児施設の行事の手伝い ・障害児早期療育教室 ボラ ンティ ア 次に, 活動に入る前に MF が不登校児にどのようなイメ ージを持 っ ているかについて調べた資 料によると, 以下のような印象が語られていた‐ ・学校に適応できなくなっ た子 ・クラス集団から ドロッ プアウ トした子 ・学校に 「行かない」 のでなく, 「行けない」 子どもたち ・学業不振とか非行 (怠学) などの悪いイメージある ・いじめが原因で起きるもの 49.

(7) . 伊藤 則博・野上 大輔・板橋 菊二. ・教師や学校が原因で起きるもの ・子 どもに弱いところがあり, 起きてくる ・家庭環境に問題がある この時点で MF は, 不登校の状 態像につ いても成因の理解についても, 非常に単純なとらえ方 をしていることは否めない. しかし, 実体験を経ることで理解が急速に深まるよう だ‐ 以下に, この活動に対する MF 自身と児童相談所職員の意見を詳 しく聴 取 したの で, ま とめ て まゞ1年後の時点のものである. 示す. これらの意見は, この活動が開始されてからむ } MF 諸兄姉の意見 ( 1 〈MF 活動の意義について〉 この活動は, 画期的内容だ‐ しかし, 活動方法につ いては訪問個別対応ばかりでなく, 集 団をまとめた対応な ど柔軟であっ てよい. ② ある意味で子どもの駆け込み寺のような機能を果たせているのではないか‐ 学校へ行かせ ①. ようとせず, 学校のことを一切口にしないところがよい‐ ③ これまでの発想を急転換した, よい活動だ. 遊び相手になっ て一緒に遊び, 対話している ④ ⑥. 内に心がうちとげてきている. 意義は認めるが, 難しい活動である‐ 学校への復帰を目的としないということで, どこに 目標を置いてい か分からない. この活動の効果は, 子どもの1 0年後, 20年後までみないと分からない. 子どもに寄り添っ て耳を傾けるのは重要なことだ.. 活動内容に, もっ とボラ ンティ アの自由があっ てい 数に制約があっ たりするのは, おかしい. 〈活動上難しく感じること〉 ⑥. のではないか. お金の問題 で訪問回. ①. 母親な ど家族が介入, 干渉してくるときの対応のしかたが難しい. 対話の折の言葉づかいが難 しい. 子どもの弱い部分にふれる言葉をつかい, 今まで築いて. ②. きた信頼関係が一気に崩れてしまうようなことがあ った. ③ ④. 会話が成立せず苦慮した. 子どもが反応しないとき, どう したらよいか分からなくなる.. ( 2 ) 児童相談所職員の意見 〈MF 活動の意義につ いて〉 意義の大きさは認めるし,将来展望もある‐しかし, 現在のやり方では十分とは言えない‐ CW と MF との綿密な打合せ, 時には CW が MF と共に訪問するな ど取り組みを強化して. ①. いく べ き だ.. MF のような家庭外の, 利害関係のない, 若い人との出会いを子どもたちは求めていた. よい活動であり, 広げていく価値がある. ③ 目に見えた効果はこれからだろうが, これまで家の中で誰とも話さず心を閉ざしていた子. ②. が, 少 しずつ外へ出るようになっ た. 保護者の安心感, 心の安定も無視できない‐ ④ 彼らには友達ができるということが大きい意味をもつ. MF が関与するようになり登校し ⑤. はじめた子が複数出ているが, それが何故なのか理論的に説明する必要がある. 児童相談所の職員の仕事の肩代わりとか下請けのような意味あいが強まると, この活動の 意義がなくなる. MF 諸兄姉の自発性と個性を児童相談所のケース・ワーク業務とどう統合 していくか, これからの大きな課題だ. これは, 我々の課題だが‐. 50.

(8) . 不登校児へのメ ンタル・フレンド活動の試み. 〈MF 活動に期待するもの〉 ①. 子どもにとっ ても,MF 自身にとってもこの出会いは価値があり,一生忘れないであろう‐ MF 諸兄姉には, 今後このよう な子と出会っ たときの得難い経験としてほしい‐. ②. 子どもの社会環境が劣悪化した中で求められた, 1つの救済の道といえる活動かもしれな い. 子どもの悩みを聞い てあげること, 彼らの身内的な存在になっ てほ しい. ③ MF の持っ ている明るさを伝えてくれ ばいい. また彼らと対話するだけで十分である. 気張らずに自然体でつ きあっ てくれ ば, それが最高だ. ④ MF が子 どもの社会化の媒体になっ てくれ ばいい. 世の中には色々な人がいて, 色々な 考えをもっ ているのだということを子どもたちが知るきっ かけになっ てくれ、ばいい‐ 〈MF 活動の今後の課題と展望〉 定期的なケース・カ ンフ ァ ラ ンスが必要 だ‐ それは, CW や MF の活動の点検, 評価で もある‐ 対象児や親のニーズも含めて, 継続的に事例検討を実施していく必要がある. どこ からも, 何の評価もなくこの活動が進んで行くのには疑問がある‐ ② 枠や地域を広 げ, MF を相当数確保し, 恒常的に実施できる体制を考えるべきである. こ ①. ③. ④. のモデル事業が全道域に拡大してほしい. MF は自然体でつ きあう ことを前提に, 親身さとある程度の専門性を身につ けてほしい . 親との対応のしかたなどは, 最低限必要な態度だろう‐ MF は, 2~3年の期 間で契約 してほしい. そして活動内容は, 教育でも医療でもなく福 祉でやっ ているという点が良い‐ 学校に行くのか, 行かないかの問題ではないという現在の. 立場を今後も維持していくことが肝要だ. 以上, MF 自身 ( 15名) と児童相談所職員 ( 2名) のこの活動に対する意見をまとめた‐ ほゞ全 1 ての人が MF 活動の意義を認めてい るが, 現状の問題点や今後留意すべき課題も率直に示され, 有意味な資料となっ た‐. 5. 事 例 研 究 本節では, MF 活動の事例をいく つ か紹介し, この活動の内容と意味につ いての考察を行うが, はじめに MF 諸兄姉が実際どのような活動を対象児と共に行っ ているか触れておく. 面接調査か ら出て来た活動内容を列記する. ・ファミコ ン ・美術館見学 ・本屋の立読み ・お祭り見物 ・公園の散歩 ・日常生活や将 来の夢に関した会話 ・トラ ンプ ・公園の固定遊具あそび ・草遊び ・oxゲーム ・ボー ド ゲーム ル. ・サッカー ・折紙やちぎり紙 ・そり遊び, スキー ・縄跳び o羽球, キャッチボー ・スケー ト ・野球やホッケーの試合見物 訪問は週1~2回の割合 で, バ ス又 は自家用車を利用 している. 対象児は, すべて MF の訪問. を待っ ており, MF と共に行う活動を楽しんでいる印象だと述べられている. 1 ) 事例1. N子:(女子, 中学1年-相談受理当時) (. ① 家族・実母-無職 (生活保護受給, 障害福祉年金) ・実父一本児1歳2カ月 時離婚 (以後行方不明). ② 家庭の状況 離婚による母子世帯 であるが, 母は先天性股関節脱臼で身障手帳 (2種3級) を所持. 日常 51.

(9) . 伊藤 則博・野上 大輔・板橋 菊二. 生活に支障はないよう だが, 市内の病院 (精神科) に通院する以外はほとんど外出せず家に閉 じこ も っ て い る‐. 家の中は汚れて雑然 としており, 床のカー ペッ トにも食物のかすが散らばり, 壁にはカレン 1が 4歳の時に川 ダー1枚かかっ てなく, いかにも殺風景な家庭である. 本児の兄 (3歳上) , で溺死 し, それ以来母親はノイロー ゼ になっ て現在も通院中だという話であっ た. ③. N子の経過 中1の1学期末 から不登校状態に入っ た. 入学直後足を捻挫 したのを契機に休みはじめ, や がて登校できなくなっ た. 母親は, 「治っ た ら行くのよ」 と声をかける程度で, 強制したこと はない. 学級担任も時々訪れ, 友達も手紙などを持っ て来てく れる. その時は喜んで話 をして いるが, 学校には行けない‐ 保育所と小学校には休まずに行っ て おり, 保育所の保母とは今でも文通 をしている. 小6の 時に, 仲良しのS子と2人で 「先生が嫌いだ」 ということで1カ月 ほど休ん だことがあっ たら しい・. 平成3年10月, 不登校を主訴として児童相談所を訪れたものである. この時は, 母親が同伴 した.. MF の活動. ④. 平成4年1月27日, CW と共に初回訪問. その時の MF の印象, 『掃除をしていない乱雑 な 感 じ. これまで CW が訪問しても彼女は自分の部屋に入れなかっ たが, MF が行く というこ とで部屋を掃除したらしく, す ぐ部屋に通してくれた』 . 以下, MF との面接から.. ” ) 家庭の様子 家の中は乱雑だが, 本児は緒魔好きで自室は整頓している. 母親は, 本児がいない と淋しい のかそばにいてほしがる‐ 小学校時代の友人S子が, 時々遊びに来たり電話 しあっ ている‐ N子は明るい子で, よく話す. 一見素直だが, ある一定のライ ンから内には人 を寄せつ けな い‐ 普段はアニメキャラクターやイラス トなどの絵を描いている. ペッ トの小犬とたわむれ, あまり外出しない‐. 嬉 ) 活動の内容と子どもの様子 一緒に外出することに心がけ, 美術館・お祭・本屋・散歩に行くよう働き かけ実行した. 雨 天な どで外へ出ない 日は, 写真を持参して見せたり, 大の話 をしたり, 将来の話などした‐ 外 出時にはよく話し, 動きも活発であっ た. 美術館の絵について, かなり詳しい知識を持っ てい るのに驚かされた‐ ◎. 子どもの変化 抵抗なく外出できるようになり, 外出中人目を気に しなくなっ た. 対話が成立し, 話題が発 展するようになり, MF の意見に耳を傾け始 めた‐. ⑤ 考察 N子は, 特殊な家庭環境で成長 し, 外界との接触が限定さ れた生活を してきた‐ 母親の育児 能力, 家事能力 をはじめとした生活能力が低位で, 心理的に子離れができていない退行した心 情にある‐ このよう な生活状況の経過の中で, N子は生活習慣の形成や自我発達の上で偏りを 来たし, 学校や地域社会との間で不一致が生じ, 家庭へ逃避したもの と考えられる. MF 活動は継続中だが, 外出による母子分離 と社会参加への試みは評価できる. 活動内容も 美術館, 書店, 祭りな ど文化的な環境との接触に心がけており, その体験が MF との会話の 中心になっ てきているこ ともよい. 52.

(10) . 不登校児へのメ ンタル・フレンド活動の試み. N子の MF への信頼感は成立 しているようで, MF の訪問を心待ち しており, 話題や作業 の継続性も出て来ている‐ 学校の話題は, まだ本人の口から出されることがないが時々遊びに 来るS子 (他校へ登校中) が媒体にな っ て, 学校の話題に参加できるようになるかもしれない という感触がある. ( 2 ) 事例2‐ Y男 :(男子, 中学2年-相談受理当時) ① 家族o実父-ダンプ運転手 o実母-専業主婦 o妹-中1 o 妹 - 3歳. 別居中. 0姉‐市内居住, 運送店勤務 o兄-高1 (全寮制高校). ② 家庭の状況 本世帯は, 昭和58年に札幌から旭川市に転居してきたが, 姉と本児の不登校, 妹の不良交遊 等の問題が出て, 市内で転居をくりかえしていた‐ この間, 父の交通事故, ラーメ ン店経営の. 失敗などが絡み, 世帯全体が不安定な状況が続いた. 妹の中学入学を機に, 思い切っ て現住所 へ転居してきた‐ 周囲は畑が広がり, 環境上申し分 ないの で決意したという. 父は, 一見こわおもての風貌 だが, 滅多に怒ることはないらしい‐ しかし, 理屈 っ ぽく干渉的なので, 子どもたちは結構恐い存在 とみている.. 転居直後の本児の不登校の再発で, 焦った両親は学校, 医大等各方面に相談して歩いた. 学 担が若い女教師, 校長も生徒指導担当も新任ということで, 学校を頼りにできないと考えて児 童相談所を訪れたものである‐ ③. 経過. ~. 本児は, 小学校時代いじめの対象にされて断続的に休むことがあったが, クラスに仲の良い 友人ができて登校するようになり, その後順調に中学に進学した. もともと気が弱く神経質な 子であったが, 中3の兄と兄の友人に守られ, また小学時代からの特定の友人にひかれて学校 適応を果た していた らしい‐ 中学1年の終了とともに現住所に転居し,新しい学校に転校 した‐4月 にはすぐ友人もでき, 家にも遊びに来たことがあるという. しかし, これは本児が旭川市内から転校 して来た珍 しい 人物ということで「値踏みに来ていたのではないか」と, 父親は推測 している. 本児が気弱で, 喧嘩も弱い人物だと分かっ た段階でクラスメー トが無視したり, いじめをするようになっ た‐ 本児の話では, 机の上に 「お前なんか学校へ来るな」 と貼り紙されたり, 他クラスの番長格に 「態度が悪い」 と威嚇され, 怖くなっ たという‐ 5月 中旬から全休とな っ ている. ④. MF の活動 平成4年2月 7 日, 担当 CW と共に初回訪問‐ 家は新 しく はないが, 乱雑ではない‐ 父親 は, 一見ヤクザのような風貌だが, 子どものことを真剣に考えようとしている熱意は感じた‐ Y男 は, よく話 し, 人あたりも悪くなく, どう して不登校状態にあるのか不思議に感 じた.. ” ) 家庭の様子 この家庭では, 父親の存在感が強く母親の影が薄い. 印象は, 暗い感じである. Y男は, 自 分の意思を直接父には言えず, 母を介 して伝えているようであっ た. 父は, 理屈 っ ぽく一方的 な性格の人 で,自分の発言で他者を傷つけても気 づかないようなタイ プである‐Y男の萎縮は, この父親との関係から来ているよう だ‐ Y男 は, 兄や兄の友人に依存してきた経過がある‐ 普段家でテレ ビを見ているが, 自転車で 街まで買物にいっ たり, 前の学校の友人が来て一緒に遊 ぶ こともある. 気が弱い反面, プロ レ 53.

(11) . 伊藤 則博・野上 大輔・板橋 菊ニ. スなど格闘技が好きで, 自室で体力 トレーニングをするなど腕力に頼りたがり, 心の中に強い 者への憧れがあるようだ.. 回 活動内容とY男の様子 週1回の訪問では, 会話が中心である. 話題は, 日常生活, プロ レス, 家族, 学校のことな どよく話す. プロ レスの話, 兄と兄の友人の話や喧嘩の話のときは, 目 が生き生きしている‐ 強者崇拝の気持が強い. 訪問から半年後頃から, 登校しようと考えていることを語り始めた‐ をぅ Y男の変化 Y男は, 児童相談所の通所事業とキャ ンプに参加し, 学校の修学旅行にも参加した. 高校へ の進学について考えており, それを MF に相談 しはじめた‐ そのために中学へ登校しようと 思い, 現在心理的に葛藤状態にあることが感じ取れる. 大事な段階に入っ ているようだ‐. ⑤ 考察 本児は, 家の中で支配的で大きすぎる父親の 影響下で萎縮し, 兄姉との関係で依存的傾向を 強め, 自分で物事を解決しようとする態度が みられない. MF との関係 で, 通所やキャ ンプ参加そして修学旅行へと向かい, 進路につ いて考え始めて いるが, 萎縮した自我の建て直しや依存性の改善にはかなりの年月 とエネルギーを要するよう に思う.. 6. 全 体 考 察 ( ) MF 活動 1 この活動の主旨は, 年齢の近い兄姉的な非専門家がふれあいを通して児童の福祉の向上に 資 するというもので, 「学校復帰を目的としていない」 ところが大きな特徴 である.. 事前に実施された研修会は, 不登校児の実態や対処方法について無知な MF に対して, 最 低限必要な知識を与えたこと ,偏っ た先入見を是正する意味で非常に有効であっ たと考える. しかし, 個々のケースにつ いての情報 (子どもの特性, 問題の中心, 家族状況な ど) の伝達 と事前の準備が十分行われたとは言えない. 月 1回定例実施の事例検討会は, 活動上生 じた問題の処理や子どもの変化の評価, さらには これからの対応方法を考える上で非常に重要な場であるが, MF の時間の都合などで集まりが 少なく, 必ずしもみんなに役立つ 場として活用されていなかっ たことが大きな反省点である.. 2 ) 活動の内容 ( 活動の しかたは, 基本的には各 MF にま かされているので多様だが, 全員家庭を訪問し友 達的感覚 でかかわりが維持されている. この活動の主旨は, 「児童が内面的に 成長し, 彼らが 自分から外界・社会へと乗り出していく ための窓口」 と して MF が存在 しているということ である. MF は, 不登校状態にある子を 「よくない子」 とは考えない. 学校にいく, 行かない ことが子 どもの価値の基準ではないし,活動の目標でもない‐子どもは, 彼の成長のために 「今 学校に行かないことを選んでいる」 可能性もあるから, MF は子どもと付き合い, 子どもの心 に寄り添っ て, それを受けとめてみたいと考えているだけである. あくま でもこの基本的態度 を維持するの である‐ 周囲に適応できず,心を閉ざしてしま っている子どもたちに対して,教師や家族や地域の人々 は 「学校に行っ てほしい」 「心を開いてほしい」 と願いながら接する. これに対 して, MF は 54.

(12) . 不 ・登校児へのメ ンタル・フレンド活動の試み. 何も期待しない真白な状態のま、で子 どもの前に立つ‐ 子どもの感性は鋭いので, こちらが何 かさせようとしたり,こうしてほしいと思っ ていると,いち早く察知して自分の殻に閉じこもっ てしまう. 不登校の子 どもたちと関わる上 で, こち ら側の態度がいかにあるべきかを, この MF 活動が例証してくれるかもしれないと我々 は考えている‐ 更に, 教育でも医療でもない福祉機関が実施する活動であることも重要な意味をもつの かも しれない. というのは, 福祉は対象を特定の方向にひっ ぱっ ていくという世界ではないので, 比較的受容的な感覚の中で子どもが自己実現していくことを待ち, それを保障できる可能性が ある. 福祉は, 対象を治したり, 変えたりするのではなく, 対象に 「寄り添い」「共に生きる」 思想をその根本に持っ ているのである‐ 平成3年度の半年間の活動の結果として, 16名中の7名が登校を再開したという事実も重要 である. 学校への復帰を目的としないこの活動が, ひよっ とすると 「目的としない活動である が故の」 成果かもしれないのである‐ 非専門家の 「お兄さん, お姉さん」 のような立場で, 話相手・遊び相手をつ とめているにす ぎないということこそが, 実は不登校状態にある子どもたちが本当に求めていたものである可 能性がある. 子どもたちの変化に伴っ て保護者の精神的負担も軽く なり, 児童の不登校状態さらには児童 自体を受容する態度も生れて来ており, 子と親の連鎖反応がよい方向に現れ, 予想しなかっ た 変化をもたらすに到ったようにも感じられるが, この実施経過と効果についてはもう少 し時間 をかけ, 活動内容と子どもの内面的変化な どの中味にまで踏みこんで検討していかねばならな いと考えている.. 7. お わ り に )を受けて 平成4年4月 から 平成3年度に実施した旭川児童相談所におけるモデル事業の成果3 , 北海道内の8カ所の児童相談所がこの取り組みに入っ ている‐ 本稿で指摘 したいく つ かの課題を克服 しながら, 北海道の全域 で MF 活動が展開されるように なれば, それが現代の不登校問題解決のひとつ の有力な方法として確認できるようになるかもしれ ない‐ 本稿が, その序章となれば幸である‐. 文. 献. 1) 厚生省児童家庭局長通知・児発第35 8号 ( 1991 ):ひきこもり・不登校児童福祉対策モデル事業の実施につ ‐4 ‐11 いて 2) 厚生省児童家庭局長通知:児発第3 57号 ( 1 99 1 ):養護施設における不登校児童の指導の強化について .4 ‐11 3) 平出雅文 ( 1 9 9 3 ):不登校児童に対する取り組みについて-メ ンタル・フレンド派遣事業を中心に-, 北海道児 童精神衛生研究会第17回例会. (伊藤 則博-本学教授・旭川校, 野上 大輔-旭川市立神居東小学校教諭, 板橋 菊二一北海 道旭川児童相談所長) 55.

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参照

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