幼児の日常的な自然体験尺度の作成:保育士による評定に基づく検討
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(2) 目 次. 問 題. 1. (1)日常的な自然体験の重要性 (2)幼児の日常的な自然体験の内容. (3)幼児の日常的な自然体験を評価する尺度作成の必要性. 研究1. 7. (1)目的 (2)方法 (3)結果. 研究H. 16. (1)目的 (2)方法 (3)結果 (4)考察. 結 語. 37. 引用文献. 40. 謝 辞. 42. 資 料.
(3) 問 題. (1)日常的な自然体験の重要性 近年、少子化や核家族化、情報化、都市化、消費主義、豊かさのなかの格差の拡大など 現代の社会の中で、幼児の生活環境が変わってきている(井上・無慮i・神田,2010)。小杉 (1997)は、幼児期からの心の教育のあり方について、心の成長の糧となる生活体験:や自然. 体験が失われている現状を懸念し、「生命を尊重する心、他者への思いやりや社会性、論理. 観や正義感、美しいものや自然に感動する心等の豊かな人間性の育成を目指し、心の教育 の充実を図っていくことが極めて重要な課題」であるとした。さらに、国立青少年教育振 興機構(2010)の報告では、20代∼60代を対象に子ども期の自然体験を調査したところ、年 代が若くなるにつれて自然体験が少なくなっているとしている。. このように幼児期から自然体験が不足しており、その重要性が説かれている。しかし一 方で、自然体験の定義は必ずしも明確ではない。小林(2000)や山田(1993)は自然と関わる. 中で体験するものについて、火や水、生物などに分類している。生物やその他の自然物、 あるいはそれらにより醸成される自然現象を体験することが自然体験だと言えよう。また 自然の対概念は人工であるが、幼児にとっての自然はまったく人間の手に触れられていな い対象ではない。幼児期においては周りの環境のすべての物に生命、意識、感情等を認め ようとする傾向(アニミズム)があることが知られている(小林・雨森・山田,1992)。このこ. とから考えると、幼児にとっては、周囲の環境すべてが自然だと言えなくはない。ただし ここまで拡大解釈すると自然体験とそうでないものが区別できず、意味のある定義とは呼 べないだろう。少なくとも言えることは、自然体験というものを考えるとき、幼児が環境 をどのように感じたり、理解したりなどしているかが重要だということである。 実際、井上(1996)は、自然にかかわる時の幼児の感性や心に着目した論考が必要だとし ている。また中村・川村(2004)は、「自然体験の場は自然という不確定な要素での体験であ. り、予測することができない問題が多数起こることから、構造化されていない問題(最初 からどこに最終目標があるか不明であり、初期状態と最終状態との間に明確な構造化でき ていない場合)が起こりうる場と捉えている。したがって、自然と関わることは、構造化 されていない問題に直面し、その解決のための過程には試行錯誤や創造することが必要に なる」と述べている。ここでは、自然にかかわる際の問題解決過程の重要性が指摘されて いる。. 1.
(4) 以上を踏まえ本研究における自然体験の定義は、「生物やその他の自然物、あるいはそ れらにより醸成される自然現象を感覚、認識、思考、感情とさまざまな心的過程を伴って 経験すること」とする。. 先述のように、現在幼児を取り巻く環境は変化している。失われた自然体験を保障する 試みは、日常生活の環境とは離れたフィールドでのキャンプなどが想定されよう。実際、 自然体験活動として、子どもに十分な遊びの体験を行うことができる特別な空間と機会を 与える取り組みが行われてきている。先行研究を概観しても、文脈でもこうした「非日常 的な自然体験」を主題にしたものが主流をなしてきた(山本・平野・内田,2005;和田,2006)。. さらに非日常的な自然体験(キャンプなど)の効果については実証的研究もみられるように なり、非日常的な体験を取り扱っているものが多い。(若杉,1997;沖野,2006;松田,2005; 山下・仲直・佐古・木谷,2007;山村,2009)。. しかし、改めて考えてみると、非日常的な自然体験は、幼児の生活にとっては一過性の ものである。その効果についても、必ずしも継続しないという指摘もある(山下・此程・ 佐古・木谷,2007;山村;2009)。むしろ、幼児期における学びや育ちが生活に基盤を置い. ていることを考えると家庭や幼稚園、保育所等で日々身近な自然に触れる体験に着目すべ きではないだろうか。こうした「日常的な自然体験」の中で幼児は様々なことを学んでい るように思われる。実際、幼児教育や保育においては、日常的な自然体験が重視されてき た。例えば幼稚園教育要領(2008)と保育所保育指針(2008)「環境」領域の内容の中で自然 体験に言及した記述に着目してみよう(表1参照)。. 表1から、自然と触れることによる気づき等の認知に関する記述,自然への親しみを持 つことで大切にするやいたわる等の道徳性の芽生えに関する記述などが見られる。教育要 領や保育指針では言うまでもなく目常生活に根ざす保育におけるねらいや内容が挙げら れている。つまり幼児教育や保育の中では、日常的な自然体験が重視されてきたと言える。 しかし、井上ら(2010)は「自然とのかかわりがなぜ必要かという基本理念を示したもの、. それに基づいた自然とのかかわりの具体的なあり方や方法を示したものは数少ない」と指 摘している。日常的な自然体験とは何かという基本概念について、十分な共通理解が得ら れているわけではない。さらに井上は、「一見同じように見える実践に対して、今までと は異なる視点・異なる手法・異なる評価を新たに生み出していく必要性」を説いている。. 日常的な自然体験の重要性は理解できるもののそれをどのような視点から評価すれば よいのかに関する実証的な研究は、ほとんどなされていないのが現状である。 2.
(5) 表1 「環境」領域の内容の記述 幼稚園教育要領 2008 ① 歯軸に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く ③ 季節により自然や人聞の生活の変化のあることに気付く. ④ 自然などの身近な事象に関心をもち、取り入れて遊ぶ ⑤ 身近な動植物に親しみを持って接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする 保育所保育指針 2008 ① 安心できる人的及び物的環境の下で、聞く、見る、触れる、嗅ぐ、味わうなどの、感覚の働きを豊かにする. ③自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く ⑤季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く ⑥ 自然などの身近な事象に関心を持ち、遊びや生活に取り入れようとする ⑦ 身近な動植物に親しみを持ち、いたわったり、大切にしたり、作物を育てたり、味わうなどして、生命の尊 さに気付く。. そこで次に、幼児の日常的な自然体験とはどのようなものを指すのか、その内容につい て検討する。. (2)幼児の日常的な自然体験の内容 先述のように幼児教育、保育の中では、幼児の生活の中での自然体験が重視されてきた。 野田(2001)は、自然体験の意義について、子どもが自然から感じ取る「美しさ」「驚き」「喜. び」「恐れ」などの感性の陶冶や、生命との触れ合うことの大切さを指摘している。しか し改めて、どのような内容の自然体験が幼児にとって日常的なものなのかを考えると不明 確な点が多い。. 自然体験を扱う研究においてはその体験の内容として主に「原体験」が取り上げられて きた。雨森(1990)は「自然体験活動を行う中で、触覚・嗅覚・味覚及び視覚・聴覚の五感. を重視した経験を、原体験という」と述べている。山田(1993)は「生物やそのほかの自 然物、あるいはそれらによって醸成される自然現象を触覚・臭覚・味覚の基本感覚を伴う 視覚・聴覚の五官(感)で知覚したもので、後の事物・事象の認識に影響を及ぼす体験」と し、動物体験、草体験、水体験、木体験、土体験、石体験、火体験、ゼロ(情感)体験の8 つに分類している(表2参照)。同様に小林(2000)は、原体験を「生物やその他の自然物、. あるいはそれらにより醸成される自然現象を触覚・嗅覚・味覚をはじめとする、五官(感) 3.
(6) を用いて知覚したもので、その後の事物・事象の認識に影響を及ぼす体験のこと」として いる。さらに,自然物や自然現象を火体験、石体験、土体験、水体験、木体験、草体験、 動物体験の7つに類型し、豊かな原体験はこれらの組みあわせでなされるものとしている。 また、山田(1996)と小林(2000)は自然と抵抗なく一体とかかわる、幼児期から児童期初期. の問に原体験をもつことが最適であり、大切であると論じている。 幼児期の体験が五感(官)をはじめとする感覚に根差していることは事実である。また、. 幼児は自然物や自然現象にも抵抗なくかかわるかもしれない。しかし、以下のような問題 点があると考える。. 第一に原体験と総称されている体験内容は、果たして幼児の日常的な自然体験だと言え るだろうか。奥田・嶋崎・足立(2006)は、原体験について幼児がどの程度体験したことが. あるかを保護者に調査し、日常的なものと非日常的なものに大きく分類している。山田 (1990)が動物体験として挙げている、「動物の燃えるにおいをかぐ」等も現代の幼児の生. 活の中で日常的なものかは疑問が残る。そこで本研究では、日常的な自然体験の内容を改 めて問い直したい。 表2 原体験の種類と具体的事例 種類. 具体的事例. 火体験. 暑さを感じる・焦げる臭いをかぐ・煙たさ・火をけす・火を保つ・火をおこす. 石体験. 石を投げる・石を積む・きれいな石を探す・石でかく・石器を作る・火打ち石. 土体験. 素足で石にふれる・土のぬくもりと冷たさ・土を掘る・土をこねる・土器作り. 水体験. 雨にぬれる・自然水を飲む・水かけ遊び・浮かべる・海で泳ぐ・川を渡る. 木体験. 木にふれる・木のにおい・木の葉,実を集める・棒を使いこなす・木越南の玩具. 草体験. 草むらを歩く・抜く・ちぎる・臭いをかぐ・食べる・草で遊ぶ. 動物体験. 捕まえる・触る・臭いをかぐ・飼う・見る・声を聞く・食べる. ゼロ体験. 暗闇をあるく・日の出をみる・林を歩く・飢え・渇き. 第二に、原体験は火、土、水など体験の内容となる自然物や自然事象の種類によって分 類されている。しかし、土であれ水であれ、それに触れる体験は幼児の感覚を育むもので あり、それを使って工夫して遊ぶ体験は、幼児の興味関心や思考に関連するものではない だろうか。冒頭で述べたように、特に幼児期の発達特性を踏まえると自然体験を考える際 には、自然物や自然事象をどのように体験しているのかという心的過程に注目する必要が あるように思われる。幼稚園教育要領や保育所保育指針においても、対象は明示せず、自 4.
(7) 然に気づくこと、生命を大切にすることなど、認知や道徳性の芽生えなどの心的な体験内 容が挙げられている。したがって、本研究で日常的な自然体験を問い直す際にもこうした 心的過程に着目した分類を検討していきたい。. (3)幼児の日常的な自然体験を評価する尺度作成の必要性 幼児の自然体験を実証的に評価する尺度にはどのようなものがあるだろうか。先行研究 を概観していく。. 例えば幼児の原体験の数で自然体験を評価し、その効果について検討した研究が見られ る(奏,1994;大澤・落合・二宮・山内,2004)。しかしここで用いられる原体験の内容の. 多くは、山田(1990)が示す原体験の具体例から引用したもので、尺度開発を目的としたも のではない。また、雨森(1990)は、「原体験は自然物を素材とし、触れたり、行ったりす. ることそれ自体をその狙いとしている。このようにみると原体験は認識の基礎にはなりう るが、教育的にはあまり意味のないものと捉えられがちである。確かに原体験は無方向性 で点のような体験であり、それ自体評価の対象にはなっていない」と述べている。したが って、自然体験を評価する尺度として原体験の内容を用いることは本来妥当ではない。 青少年教育活動研究会(1999)「子どもの体験活動に関するアンケート調査(表3参照)」. では、生活体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が身についており、自然体験:が豊富. な子どもほど道徳観・正義感が身についているという結果を示した。また国立青少年教育 振興機構…「子どもの体験活動の実態に関する調査研究(中間報告)(表4参照)」(2010)の. 報告においても、幼児期に自然体験が豊富な大人は、物事への関心・意欲などが高い割合 が多いなどの結果を示した。しかし、それらのアンケートは児童及び青年以上を対象にし たものであり、十分な標準化もなされていない。 表3青少年教育活動研究会「子どもの体験活動に関するアンケート調査」質問項目 チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと. 夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと. 海や川で貝をとったり、魚を釣ったりしたこと. 野鳥を見たり、鳴く声を聞いたこと. 大きな木に登ったこと. 海や川で泳いだこと. ロープウエイやリフトを使わずに高い山に登ったこと. キャンプをしたこと. 太陽が昇るところやしずむところをみたこと. 5.
(8) 表4 国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究(中間報告)」質問項目 自然体験項目. 植物とのかかわり. 海や川で貝をとったり、魚を釣ったりしたこと. 米や野菜などを栽培したこと. 海や川で泳いだこと. 花を育てたこと. 太陽が昇るところやしずむところをみたこと. ペットなどの生き物を世話したこと. 夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと. チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと. 湧き水や川の水を飲んだこと. 野鳥を見たり、鳴く声を聞いたこと. つまり現段階では、幼児の日常的な自然体験を評価する尺度は存在しない。青山(2006). は自然体験の意義を認めつつもそれを適切に評価できる尺度の必要性を指摘している。こ れらを踏まえて、自然体験の効果を解明する前提として自然体験そのものを構造的に把握 し、それを評価する尺度作成が求められていると言えよう。. したがって本研究ではまず、日常的な自然体験とは何かについて、幼稚園教育要領と保 育所保育指針の分析及び、保育士を対象とした質的調査に基づいて構造化することを試み. る(研究1)。次いで研究Hでは、研究1で提示した日常的な自然体験の構造について実証 的に検討することを試みる。具体的には保育士による重要度評定に基づいて因子分析を行 う。さらに抽出された因子の検討を通して幼児の目常的な自然体験を評価する尺度を作成 する。. 6.
(9) 研 究 1. (1)目的. 研究1の目的は、幼児の日常的な自然体験を構造化することである。まず、幼稚園教育 要領と保育所保育指針の記述から、自然体験に関連するものを抽出する。次にそこで生じ ると推測される心的過程に基づいて分類を試みる。さらに、その分類に沿って、現場の保 育士に具体的な自然体験を尋ね収集する。これら一連の作業を通して幼児の日常的な自然 体験の構造化を試みたい。. (2)方法. 1) 日常的な自然体験の心的過程に基づく分類 まず、幼児の日常的な自然体験を網羅していると思われるものとして、幼稚園教育要領 (2008)と保育所保育指針(2008)を中心に半構…造化を試みた。幼稚園教育要領と保育所保育. 指針の中から自然体験に関する項目を抜き出し、想定される過程をフローチャートで示す かたちで整理した。そこで想定される心的過程からまとまりを作っていく。そこで核とな. る心的経験を[コ内に示した・. 2) 日常的な自然体験の具体例の収集 ・調査時期:2010年5.月中旬に実施。. ・調査対象と手続き:日常的に自然体験を重視する4つの私立保育園で勤務する保育士に. 質問紙を配布し、郵送で回収した。熊本県K園6部、K園7部、 S園7部、 K園6部の計 26名から回答を得た。有効回答は25名(96%)であった。 ・質問内容:教示文を「次の①∼⑪は幼児(3∼5歳児)の日常的な自然体験を分類した項目. です。各項目について、日常の保育場面で先生方が見たり聞いたりしたことのある幼児の エピソードを具体的に記述してください。あまり深く考えずに各項目を読んで思い浮かん だエピソードをお書きください(複数回答可)」とし、日常的な自然体験を11分類に沿っ た体験とその他に大切にしている体験について、自由記述で回答してもらった。. 7.
(10) (3)結果. 1) 教育要領と保育指針の分析 幼稚園教育要領と保育所保育指針の中から、自然体験にかかわる記述を抜粋し分析を行 う。主な結果は以下の通りである。. 1)一1 幼稚園教育要領より. ・自然の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、イメージを豊かにする ・いろいろな自然体験を通してイメージや言葉を豊かにする. ・身近な自然物や遊具に興味をもってかかわり、考えたりして工夫して遊ぶ ・身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字に対する感 覚を豊かにする. ・自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、幼児の思考力の基礎 が養われる. ・身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心をもつ ・生活の中で、様々な物に触れ、その性質や仕組みに興味や関心をもつ ・身近な環境に自分からかかわり、発見を楽しんだり、考えたりし、それを生活に取り入 れようとする. ・自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、幼児の好奇心の基礎 が養われる. 好奇心 親しむ 好奇心 性質や仕組みに関心をもつ 一一一一レ →. 関わる 興味・関心 生活に取り入れる. 触れ合う 8.
(11) ・自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く ・季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く. ・生活の中で様々な音、色、形、手触り、動きなどに気付いたり、感じたりするなどして 楽しむ. k亜コ. 隠一ll二 ・自然や身近な動植物に親しむことなどを通して豊かな心情が育つ ・様々なかかわり方を通してそれらに対する親しみや畏敬の念、生命を大切にする気持ち や公共心、探究心などが養われる. 探求心・公共心 探究心 親しむ 公共心. 一. 関わる 豊かな心情 生命を大切にする気持ち. ・自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、幼児の心が安らぎ、 豊かな感情の基礎が養われる. ・身近な事象や動植物に対する感動を伝え合い、共感し合うことなどを通して自分から関 わろうとする意欲を育てる. ・いろいろな自然のものの美しさなどに対する豊かな感性をもつ ・自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、幼児の表現力の基礎 が養われる. 感情・感性 触れる. 豊かな感情 感動する. 伝え会う →. 一. 豊かな感性. 心が安らぐ. 共感し合う. 表現力の基礎 9.
(12) 1)一2 保育所保育指針より. ・生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する思考力の芽ば えを培う. ・身近な事象を見たり、考えたり、扱ったりする中で、物の性質や数量、文字などに対す る感覚を豊かにする. ・身近な物や遊具に興味を持って関わり、考えたり、試したりして工夫して遊ぶ ・身体感覚を伴う多様な経験が積み重なることにより、思考力が養われる. 團 興味・関心 考える. 数量・文字の感覚. 一. 一一一一一一一一一一・. 関わる 扱う. 思考力. 触れる 試す. 工夫する. ・周囲の様々な環境に好奇心や探究心を持って関わり、それを生活に取り入れていこうと する力を養う. ・身近な環境に親しみ、自然と触れ合う中で様々な事象に興味や関心を持つ ・生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情の 芽ばえを培う. ・身体感覚を伴う多様な経験が積み重なることにより、豊かな感性とともに好奇心が養わ れる. 好奇心. 10.
(13) ・自然に触れて生活し、その大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く ・自然との触れ合いにより、子どもの認識力が培われる. [. ・身近な自然に自分から関わり、発見を楽しむ. 関わる 触れる. 知る → 一一一一レ 認識力 発見する. ・自然との触れ合いにより、子どもの豊かな感性が培われる ・自然との触れ合いにより、子どもの表現力が培われる. ・様々な経験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造力の芽生えを培う. 感情・感性. ・安心できる人的及び物的環境の下で、聞く、見る、触れる、嗅ぐ、味わうなどの感覚の 働きを豊かにする. [. ・身体感覚を伴う多様な経験が積み重なることにより、探究心が養われる ・子どもを取り巻く環境に主体的に関わることにより、心身の発達が促される. 感覚の豊かさ 関わる. 一一一一一一一一 j〉. 心身の発達. → 探究心. 1)一3 教育要領、保育指針からみた日常的な自然体験 1)一1、2のような分析を行い、日常的な自然体験のまとまりを作成した。結果は、 表5の通りである。「自然に親しみ大切にする心情を養う」「自然の中で身体を動かす体験」 「季節や自然の変化に気付く体験」「自然に対する興味関心を養う」「自然の中での感動体. 験(大きさ、美しさ、不思議さ)」の5つの内容を見いだした。さらに、それに関連する保 育内容領域を対応させるかたちで併記した。またそこで核となる心的過程を「社会性・道. 11.
(14) 徳性」「身体」「認識」「情動」の4っを仮定した。なおここでの5つの内容は自然体験の最. 中で生じる一次的な心的過程に着目している。自然体験の「結果」得られる高次な心的過 程については別途検討が必要であろう。具体的には思考力、認識力、表現力、創造性など である。 表5 教育要領と保育指針から見る日常的な自然体験の内容 自然体験の内容. 関連する領域. 心的過程. 人間関係. 社会性・道徳性. 自然の中で身体を動かす体験. 健康. 身体. 季節や自然の変化に気付く体験. 環境. 認識. 自然に対する興味関心を養う. 環境. 認識・情動. 自然の中での感動体験(大きさ、美しさ、不思議さ). 表現. 自然に親しみ大切にする心情を養う. 情動. 2) 日常的な自然体験の構造化. 2)一1 日常的な自然体験の分類 表6 日常的な自然体験 11分類 ①自然の中でからだを思いつきり動かして遊ぶ体験 ②自然の中で、五感の働きを豊かにする体験 ③季節の変化に気付く体験. ④自然に直接触れる中で、心が安らぐ体験 ⑤自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験 ⑥自然の中で様々な発見をし、興味や関心をそそられる体験 ⑦身近な自然物を使って、考えたり工夫したりして遊ぶ体験 ⑧身近な自然物や自然事象に関わる中で、数量・文字に対する感覚を培う体験 ⑨自然物の性質や自然事象の仕組みについて疑問をもったり、調べたりする体験 ⑩身近な動植物に関わることを通して、生命を大切にする気持ちを育む体験 ⑪友達と一緒に身近な動植物を大切にすることで、公共心が養われる体験. 1)で見いだされた5っの内容は多様な体験を含んでいる。例えば「自然に親しみ大切 にする心情を養う」の中には、様々な発見をする体験や心が安らぐ体験、小さな生命を大. 切にする体験などが含まれるだろう。そこで、5つの内容を起点として必要十分でかつ重 複のないかたちで自然体験を分類することを試みた。具体的には幼児教育を専攻する大学 12.
(15) 院生及び研究生6名と繰り返し協議を行い、カテゴリーの精選を行った。その結果、表6 に示した11分類を見いだした。. 2)一2 日常的な自然体験の具体例の収集 上記のll分類(表6)に沿って現場の保育士に具体例を尋ね、収集した。各分類に29∼46 の回答があった。その中から具体的で回答者数が多かった記述内容を幼児教育にかかわる. 専門家2名、研究生1名、院生3名で協議した。記載されていた具体例が、地域の特徴に 偏りすぎないように調整を行い、最終的には、11分類に4∼6ずつ標準的な具体例を付し ていった。結果として11分類、53の具体例からなる構造を抽出した(表7参照)。 上記の作業を通して、幼児の日常的な自然体験についてある程度の妥当性を有する構造 化を行えたものと考えられる。. しかしながら、ここで導かれた11分類は、専門家や院生による協議を経たものの、十分 なデータによる裏づけを与えられたものではない。さらに53の具体例の配置についても、 同様のことが言える。我々が重要だと考えたものが、必ずしも現場に置いて重視されてい る自然体験かどうかもわからない。. そこで、研究Hでは、ここで見出された構造について計量的な分析を行い、実証的な検 討を行う。. 表7 日常的な自然体験の分類と具体例. 4← 1 242 1. ①自然の中で、五感の働きを豊かにする体験 虫や鳥の鳴き声を聞く. 季節の草:花を見たり、香りを嗅いだりする. 野菜や木の実などを収穫し、その場で試食し素材そのものの味を味わう. 季節の風を肌で感じる. 3. 38. 水や砂、泥などで遊び、それらの感触を楽しむ 氷の冷たさを感じ、滑ったり、割ったりして遊ぶ. 自然の中でからだを思いつきり動かして遊ぶ体験 53 砂山や草が生えている坂道を体ごと転がったり、すべったりする 46 足場を考えながら木に登ったり、ぶら下がったりする 10 段差や高さのあるところがらジャンプしてとび降りる. 13.
(16) 36 築山や土手をはい上がったり、ふんばったりして登る 1 原っぱや緩やかな斜面などで走り回ったり、追いかけっこしたりする ③自然に直接触れる中で、心が安らぐ体験 23 ウサギやヒヨコなどを抱いたり、なでたりし、愛おしさを感じる. 9 水の心地良さにひたる 45 身近な草花や虫、落ち葉をくり返し集める 35 草原や芝生の上に寝転び太陽の暖かさなどを感じる ④自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験 44 雲や虹、夕焼けや月などをみて、空の美しさに感激する 22 サクラの花が一気に咲いたり、吹雪のように散ったりする様子を見てうっとりする ふ か 12 身近な小動物の角化、脱皮、羽化などを見て感動する. 34 雨、風、雪などで普段見慣れた景色が一変し、驚く ⑤季節の変化に気づく体験 8 サクラやチューリップなどの色とりどりの花が咲く様子を見て春の訪れを知る 25 木枯らしが吹き、冬の寒さを体感する 30 梅雨に入り、アジサイやカタツムリを見つける 33 セミの鳴く声に、「夏が来た!」と感じる. 48 イチョウやモミジが色づくのを見て、秋の深まりに気づく ⑥身近な自然物を使って、考えたり工夫したりして遊ぶ体験 21 摘んだ草花を使い、髪飾りや冠を工夫して作る 13 木の枝や葉っぱ、砂を集めて、料理を作り、おままごと遊びをする. 7 木材を使って、秘密基地や小屋などを作る 32 ドングリごまの軸を刺す位置や回し方を工夫して遊ぶ 43 泥団子や水路などを作ってあそぶ時、どうしたらうまくいくかを試行錯誤する ⑦身近な自然物や自然事象に関わる中で、数量・文字に対する感覚を培う体験 26 クローバーや花びらの枚数を数える 14 花や野菜の種などを決まった数だけ数えて手に取る 20 お花や木の実などを「自分の分」と「友達の分」に分ける. 6 図鑑や絵本を見て、植物や虫の名前にふれる. 14.
(17) 31 葉っぱや花の形の違いに気づく ⑧自然物の性質や自然事象の仕組みについて疑問をもったり、調べたりする体験 49 地面や木の幹に空いた穴を見つけ、木の枝を入れてみたりして、中の様子を知ろうとする 27 様々な草花で色水を作り、出る色や濃さの違いについて知る 37 氷作りにおいて、容器や置く場所を変えるなど、様々な方法を試してみる 39 見たこともない虫や草を発見し、本や図鑑で調べようとする ⑨身近な動植物に関わることを通して、生命を大切にする気持ちを育む体験 15 虫や小動物を飼育する際、えさの種類や飼育環境などを自分達で考える 52 虫などをつかまえて遊んでも、最後にはかえす 42 栽培や飼育などの世話を当番で行い、植物や動物が育つ過程を見て愛情をそそぐ 19 虫と遊んでいて、弱らせたり、死なせたりする経験をする 5 飼育動物の死を経験し、お墓を作るなどして弔い、命の尊さを実感する ⑩友達と一緒に身近な動植物を大切にすることで、公共心が養われる体験 16 地域での芋掘りや栗拾いなどでお世話になった人への感謝の気持ちをもつ 28 飼育や栽培などの当番や約束を決め、みんなで取り組む 40 野菜を育てる中で、おいしい野菜が出来るにはどうしたらよいかをみんなで考える 50 栽培物の成長と収穫の喜びを共有する 17 収穫したものや料理を他のクラスと分け合う ⑪自然の中で様々な発見をし、興味や関心をそそられる体験 47 雨の音や水たまりの波紋に気づき楽しむ 41 川遊びで、水に触れたり、様々な石を集めたり、小魚を見つけたりする 29 草むらに隠れている実などに、何だろうと手を伸ばす 51 アリの行列やエサに群がっている様子に見入る 18 あぶりだしで、絵や文字が浮き出る様子に目を見張る. 15.
(18) 研 究 皿. (1)目的. 研究皿では、研究1で見出された日常的な自然体験の構造について実証的な検討を行う。 具体的には、保育所(園)に在職の保育士に対し、53の具体例を質問項目として重要度を尋. ね、因子分析を行う。それらの結果を踏まえ「幼児の日常的な自然体験」を評価する尺度 を開発することを目的とする。. (2)方法. ・調査時期:2010年9月下旬から10.月上旬. ・調査対象と手続き:11の保育園(東京都1園、山梨県1園、山口県1園、千葉県1園、. 富山県1園、福岡県1園、鹿児島1園、広島県1園、岐阜県1園、熊本県2園)で勤務 する保育士計243名から回答を得た。質問用紙は郵送で配布・回集した。 ・質問内容:教示文は「次の文は、幼児の日常的な自然とのかかわりを示したものです。. あなたは、これらの自然体験が、幼児にとってどの程度重要だと思われますか。最も当て はまる番号を一つ選んで、○をつけて答えてください。」とし、回答形式は「非常に重要 である(5)」∼「重要ではない(1)」の5件法を採用した。. 16.
(19) (3)結果. 各回論者の得点平均を出し、±2SDを基準にはずれ値(4.87以上と2.32以下)に該. 当するものは除外し、残った234名の回答で分析を行う。また保育者の評価に基づく. 重要度が平均3.00未満の低い4項目は重要ではないものとして除外し、49項目で因 子分析を行った。. 因子構造は、最尤法・プロマックス回転に基づく探索的因子分析によって検討した。. 因子数はスクリープロットにより確認した。また、因子の解釈可能性の観点から、8 因子解が最適と判断された。さらに因子負荷量が0.35以下の項目を除き、再度同様iの. 因子分析を行った。この結果、7因子41項目が幼児の日常的な自然体験に関する項目 として抽出された。各下位尺度について、α回数を算出したところ、第1因子から順 に、.927、.928、.892、.809、.856、.878、.803、全体では、.973であり、いずれも高. い値を示した。抽出された因子と含まれる項目を記したものが表8である。. 第1因子には、計10項目が含まれ、その内容は「27様々な草花で色話を作り、出 る色や濃さの違いについて知る」「21摘んだ草花を使い、髪飾りや冠を工夫して作る」. 「29草むらに隠れている実などに、何だろうと手を伸ばす」「23ウサギやヒヨコなど. を抱いたり、なでたりし、愛おしさを感じる」など、幼児の生活の中にあり得る自然. とのかかわりをあらわす項目群であった。したがって、第1因子は『1.典型的体験 活動』と命名した。『1。典型的体験活動』の項目の中には、第H因子との相関におい. て因子負荷量が0.35以上を示す2項目があった。項目内容は「30梅雨に入り、アジ サイやカタツムリを見つける」と「22サクラの花が一気に咲いたり、吹雪のように散 ったりする様子を見てうっとりする」である。いずれも自然対象が季節に関わるもの であることから、負荷量が高値を示したものと考えられる。しかし、これらは幼児の 生活の中にあり得る自然として認識されていることを示している。サクラは一年を通 して変化があり、教育現場や様々な場所にあるため、目につきやすいことからより日. 常的にあるものとして第1因子になったと推測できる。また、梅雨は日本独自の気候 であり、期間も短いことから重要視しているのではないだろうか。. 第H因子には、計8項目が含まれ、その内容は「48イチョウやモミジが色づくのを 見て、秋の深まりに気づく」「33セミの鳴く声に、『夏が来た!』と感じる」「11季節 の風を肌で感じる」「9水の心地良さにひたる」など季節の変化にともない幼児の体験. 内容が変わる項目群であった。これらは自然の状態や現象を通して、気付いたり、心. 17.
(20) 情に訴えかけたりするような体験であることが共通している。したがって、第ll因子 は『il.季節感』と命名した。『il.季節感』の項目の中には、第IV因子との相関にお. いて因子負荷量が0.35以上を示す項目があった。項目内容は、「9水の心地良さにひ たる」である。水を心地よいと感じる季節は夏であるが、水遊び(水泳)と捉えると、 理解することができる。. 第皿因子には、計6項目が含まれ、その内容は「42栽培や飼育などの世話を当番で 行い、植物や動物が育つ過程を見て愛情をそそぐ」「50栽培物の成長と収穫の喜びを 共有する」「40野菜を育てる中で、おいしい野菜が出来るにはどうしたらよいかをみ んなで考える」など、仲間と一つのことに取り組むという項目群であった。したがっ て、第皿因子は『皿。協働心』と命名した。ここでは、動植物が対象になっているが、. 当番という役割やクラスの一員という意識、仲間や先生とコミュニケーションをとり ながら思考するなど、「みんなで」といった社会性の要素が含まれる。. 第IV因子には、計4項目が含まれ、その内容は「10段差や高さのあるところがらジ ャンプしてとび降りる」「53砂山や草が生えている坂道を体ごと転がったり、すべっ たりする」「36築山や土手をはい上がったり、ふんばったりして登る」など、身体を 使った動きに共通した項目群であった。したがって、第W因子は『IV.身体感覚』と 命名した。. 第V因子には、計6項目が含まれ、その内容は「17収穫したものや料理を他のクラ スと分け合う」「15虫や小動物を飼育する際、えさの種類や飼育環境などを自分達で 考える」「12身近な小動物の艀化、脱皮、羽化などを見て感動する」などで、動植物 と関わる体験が色濃く反映されている項目群であった。したがって、第V因子は『V.. 収穫・飼育体験』と命名した。ここでは、実った感動や食べる喜びを感じ、飼育物の 成長を間近で見ることで、様々な命を現実的に感じることができるという内容が含ま れている。これらの体験を通して、命の大切さを感じることができ、それらを守るた めに思考や探求し、生きた学びにつながるのではないだろうか。. 第VI因子には、計4項目が含まれ、その内容は「49地面や木の幹に空いた穴を見つ け、木の枝を入れてみたりして、中の様子を知ろうとする」「51アリの行列やエサに 群がっている様子に見入る」「47雨の音や水たまりの波紋に気づき楽しむ」などであ り、幼児が興味や探求心を表した項目群であった。したがって、『W.好奇心』と命名 した。『VI.好奇心』の項目の中には、第IV因子との相関において因子負荷量が0.35. 18.
(21) 以上を示す項目があった。項目内容は、「46足場を考えながら木に登ったり、ぶら下 がったりする」である。登ったり、ぶら下がったりすることは、身体運動と捉えるこ とができる。しかし、「足場を考えながら木に登る」という箇所に着目すると、地上で. の運動とは区別することができる。足場が不安定だが揺れて楽しい。高い場所に行く ことは、子どもにとって意欲をかき立てられる場所であるのかもしれない。. 第W因子には、計3項目が含まれ、その内容は「4季節の草花を見たり、香りを嗅 いだりする」「2虫や鳥の鳴き声を聞く」「3水や砂、泥などで遊び、それらの感触を楽. しむ」で、感覚器を通した項目群であったことから、『W.五感』と命名した。子ども の日常には様々な刺激がある。香りを嗅ぐことや耳を澄ますこと、皮膚の感覚などは、. 人間にとって情報を受ける第一の窓口である。また幼児期は諸感覚が発達段階にある ため、保育現場では直接体験を重要視していると考えられる。『皿.五感』の項目の中. には、第IV因子との相関において因子負荷量が0.35以上を示す項目があった。項目内 容は、「3水や砂、泥などで遊び、それらの感触を楽しむ」である。水や泥は様々なイ. メージをすることができる。水や泥のイメージを「思いつきり身体を動かす遊び」と 捉える事もできる。水や砂、泥などは、幼児にとって非常に身近な自然物であるため 様々な要素を持ち合わせる。しかしここでは、「感触を楽しむ」事を目的とするため、 『町.五感』に含まれているのであろう。. 以上、探索的因子分析の結果から、幼児の日常的な自然体験:は、『1.典型的体験活動』. に関する10項目、『H.季節感』に関する8項目、『皿.協働心』に関する6項目、『IV.. 身体感覚』に関する4項目、『V,収穫・飼育体験』に関する6項目、『VI.好奇心』 に関する4項目、『vr.五感』に関する3項目から構成されることが明らかになった。. 19.
(22) 表8幼児の日常的な自然体験尺度 皿 I H IV V VI V旺. 1典型的体験活動. 27様々な草花で色水を作り、出る色や濃さの違いについて知る. 0,727. 一〇.008 0.081 −0.050 0.194 −0.078 −0.O13. 32ドングリごまの軸を刺す位置や回し方を工夫して遊ぶ. 0,703. 一〇.0】9 0.075 0.059 0.002 0.003 −0.063. 37氷作りにおいて、容器や置く場所を変えるなど、様々な方法を試してみる. 0,694. 0.085 ⑪.065 0.032 −0.182 0.026 0.057. 31葉っぱや花の形の違いに気づく. 0,607. 0,159 −0.054 0,050 0,118 −0.l14 0.101. 21摘んだ草花を使い、髪飾りや冠を工夫して作る. 0,583. 0.060 0.014 −0.050 0.158 0.069 0,003. 38氷の冷たさを感じ、滑ったり、割ったりして遊ぶ. 0,525. 0,139 −0.018 0,232 −0,169 0.125 0.014. 30梅雨に入り、アジサイやカタツムリを見つける. 0,520. 0.376 0.OI8 −0.035 0.107 −0.062 0,014. 29草むらに隠れている実などに、何だろうと手を伸ばす. 0,479. rO.179 0.017 0.118 0.133 0.167 0.056. 22サクラの花が一・一気に咲いたり、吹雪のように散ったりする様子を見てうっとりする. 0,447. 0.376 −0.096 −0.116 0.149 0.111 −0.08i. 23ウサギやヒヨコなどを抱いたり、なでたりし、愛おしさを感じる. 0,447. 0.028 0.056 0.155 0.211 −0.030 −0.074. 48イチョウやモミジが色づくのを見て、秋の深まりに気づく 0.073. 0,928. 33セミの鳴く声に、 「夏が来た!」と感じる 0.338. 0,850. 皿季節感 皿協働心. 0,684. 0,101 −0.050 0.253 −0.078 0.085. 44雲や虹、夕焼けや月などをみて、空の美しさに感激する 一〇.009. 0,633. 0.164 0.008 0.040 0.124 −0.027. ll季節の風を肌で感じる 0.216. 0,581. 34雨、風、雪などで普段見慣れた景色が一変し、驚く 0.250. 0,531. 0.103 −0.005 −0.104 0.200 −0.074. 25木枯らしが吹き、冬の寒さを体感する 0,094. 0,484. 一〇.105 0。153 0,童12 0.079 0.016. 0,449. 一〇.050 0.436 0,184 −0.108 0.004. 一〇、065 0.155 0.218 0.117 0,104. 42栽培や飼育などの世話を当番で行い、植物や動物が育つ過程を見て愛情をそそぐ 一〇.009 0.103. 0,801. 50栽培物の成長と収穫の喜びを共有する 一〇.166 0.345. 0,776. 28飼育や栽培などの当番や約束を決め、みんなで取り組む 0.318 −0.195. 0,629. 40野菜を育てる中で、おいしい野菜が出来るにはどうしたらよいかをみんなで考える 0.100 −0.096. 0,589. 43泥団子や水路などを作って遊ぶ時、どうしたらうまくいくかを試行錯誤する 0.115 0.054. 0,521. 39見たこともない虫や草を発見し、本や図鑑で調べようとする 0,246 −0,135. 0,506. 0.069 0.009 −0.108 −0.056. 一〇.038 −0.074 0.050 −0.031. 0.015 0,151 −0.148 −0.Oll. 一〇.153 0.225 0.213 −0.072. 0.268 0.001 0.010 −0.088. 一〇.154 0.108 0.134 0.237. m段差や高さのあるところがらジャンプしてとび降りる 0.050 0.049 −0.173. 0,686. 0.244 −0.06旦 一〇.100. 53砂山や草が生えている坂道を体ごと転がったり、すべったりする 0.038 −0.171 0.014. 0,648. 0.057 0.298 −0.007. 36築山や土手をはい上がったり、ふんばったりして登る 0.102 0.137 0.178. 0,567. 一〇.126 0.067 −0.021. 1原っぱや緩やかな斜面などで走り回ったり、追いかけっこしたりする 0.059 0.O16 −0.00i. 0,430. 一〇.003 0.046 0.249. g体感覚. V収穫●飼育体験. 17収穫したものや料理を他のクラスと分け合う 一〇,020 0.041 0,137 0.080. 0,634. 0.006 0.013. 15虫や小動物を飼育する際、えさの種類や飼育環境などを自分達で考える 0.168 −0。143 0,157 0.005. 0,576. 一〇.005 −0.O11. 12身近な小動物の艀化、脱皮、羽化などを見て感動する 0,177 0,075−0.087 0.120. 0,561. 0.011 0.033. 20お花や木の実などを「自分の分」と「友達の分」に分ける 0.243 −0.O17 −0.且23 0.091. 0,529. 0.046 −0.079. 16地域での芋掘りや栗拾いなどでお世話になった人への感謝の気持ちをもつ 一〇.243 0.270 0.319 0.065. 0,477. 一〇.044 −0.006. 6図鑑や絵本を見て、植物や虫の名前にふれる 0.005 0,116 0.179』0.161. 0,394. 一〇.032 0.267. 49地面や木の幹に空いた穴を見つけ、木の枝を入れてみたりして、中の様子を知ろうとする 0.147−0.047 0.OlO O.065−0.059. 0,731. 5】アリの行列やエサに群がっている様子に見入る 一〇.035 0,059 −0.049 0.110 0.111. 0,719. 47雨の音や水たまりの波紋に気づき楽しむ 0.135 0.377 −0.090 0.066 −0.051. 0,512. 0,063. 46足場を考えながら木に登ったり、ぶら下がったりする 一〇.013 −0.038 0.106 0.387 −0,037. 0,495. 一〇,037. D奇心. VI. 一〇.096 −0.089 −0.085 −0,133 0.029. 8サクラやチューリップなどの色とりどりの花が咲く様子を見て春の訪れを知る 一〇.097. 9水の心地良さにひたる 一〇,052. IV. 0.152 −0.019 −0.197 −0.028 −0.O15. 0,027 一〇,02】. 皿五感. 4季節の草花を見たり、香りを嗅いだりする 0.032 0.062 0.042 −0.023 0.029 −0.049. 0,846. 2虫や鳥の鳴き声を聞く 一〇.026 0.154 −0.162 −0.027 0.078 0.198. 0,680. 3水や砂、泥などで遊び、それらの感触を楽しむ 一〇.007 −0.075 0.157 0.479 −0.156 −0.154. 0,544. 20.
(23) (4)考察. 本研究の目的は、日常的な自然体験尺度を作成することであった。幼児が生活する中で 行える自然体験を構造化した上で具体的な項目を例示し、保育者による評定を通して日常 的な自然体験の仕組みを明らかにする。. 研究1では、文献研究に基づき、幼児の日常的な自然体験を構造化した。さらに、自然 体験を具体的に捉えることのできる項目を収集し、精選する作業を行い、尺度項目として 適当と考えられる53項目を作成した(表7参照)。 研究Hでは、因子分析によって『1.典型的体験活動』『H.季節感』『皿.協働心』『IV.. 身体感覚』『V.収穫・飼育体験』『VI.好奇心』『wr.五感』の7因子41項目で構成され る「幼児の日常的な自然体験尺度」を作成した。以上の手続きにおける考察から得られた 「幼児の日常的な自然体験」を以下にまとめる。. また、結果にも示したように、0.35以上の負荷量が2因子にかかる項目が5項目ある。 これらは、現場の保育士が重要であると判断し、実際に行われている内容である。また、 「質問項目には独自因子と複数の共通因子が影響を及ぼす(松尾・中村,2002)」という因子. 分析の特徴を考慮すると、安易に削除することは望ましくないと考える。実際に項目を見 ても、理解しがたい内容ではない。したがって、他因子との相関も視野に入れつつ考察を 行う。. 園の環境内において体験可能で、且つ保育の中で行われる活動として一般的なものが 『1.典型的体験活動』の項目にあがってきている。したがって、体験を通してどのよう な力を養いたいのかということより、どの地域でも行いやすい体験内容を表している。. 上記に述べたように『1.典型的体験活動』は41項目の中でより日常にある体験を総括 したものと捉えることができる。言い換えるならば、幼児自身が行える現代の自然体験と 解釈することもできる。. 幼児教育において様々な体験を行う際、重視されるのは、幼児が「興味・関心」をもっ て体験することである。幼稚園教育要領や保育所保育指針においても、「意欲的に」や「自. 発的に」等、同様の態度の重要性が指摘されている。それを顕著に表しているのが『VI. 好奇心』因子である。「何だろう」「どうなっているのだろう」というように、引き寄せら. れる体験に出会うことは、幼児にとってあらゆる物事を知る第一歩になる。 また、『IV.身体感覚』と『vr.五感』は身体を窓口にした機能としては同じであるが、. これらは別の因子で抽出された。これは、五感を通した体験と身体運動機能についてそれ. 21.
(24) それの保育士の認識があるためだと推測できる。幼稚園教育要領(2008)や保育所保育指針 (2008)においても「体を動かして遊ぶことにより、体の諸機能の発達が促される」や「身. 体感覚を伴う多様な経験が積み重なることにより、豊かな感性とともに好奇心、探究心、 思考力が養われる」のように養われるものに違いがみられることから、違う因子として区 別されたのであろう。. 『皿.協働心』と『V.収穫・飼育体験』は対象にしている自然物が類似している。そ もそも自然の概念として、一般的に対象となるのが動植物や自然におこる現象、事象であ る。それ故に一見同じような項目である印象を受けやすい。しかし、ここでは目的として いる質的内容が違っている。例えば、『m.協働心』はみんなで行うことに重点が置かれて. いる。もう一方は『V.収穫・飼育体験』は自然物を媒介とし、他の気持ちを認識する内 容である。. これこそが本研究における心的過程をともなう自然体験であり、保育者が再考して保育 を展開できる指標になるのではないだろうか。以下因子毎に考察を行いたい。. 1) 『1.典型的体験活動』について. 『1.典型的体験活動』因子にあがったのは、10項目である。日常的に行っている自然 体験を表していることは上記で述べたとおり、幼児や保育者にとって行いやすい体験内容 が集まっている。主な対象物が植物であることから、大事につながる事故が起こる危険性 は低い。また、意図的に除去しない限り草は生える。子どもにとって砂や水と違い、形や 色など種類が様々で遊びに取り込みやすいのであろう。自然は、「人工のものと異なる複雑 さを持つ」と井上ら(2010)は述べている。また、日常空間の中にそれらが必ずあるので、. 遊びが継続的に行いやすい。直接的且つ継続的に関わることで、幼児は自ずと物質として の特徴をとらえていく。「科学的に正確な理解を求めるのではなく、存在としての実感を得 ることが何より大切(井上ら,2010)」なのである。. しかしながら、他の因子の項目と比較すると目的が不明確に感じられる。保育者にとっ. て「よく行う遊び」という印象を受ける。研究1で自然体験を構造化した際には、分析後 独立した因子として算出されることを想定していなかったものである。このズレの原因は おそらく保育士にとって、慣れ親しんでいる遊びという要因によるものであろう。. 22.
(25) 2) 『ll.季節感』について. 四季のうつりかわりは非常に緩やかで、幼児にとって変化に富んだ、わかりやすいもの ではないだろう。だが井上ら(2010)は、自然の捉え方の一つに「循環性」をあげている。. 例えば、紅葉や舞い散る様子などの現象は子どもにとって、わかりやすいものである事を 述べているが、このような現象を目の当たりにすることで子どもは一年ごとに循環する時 間を実感し、季節の変化を感じ取っていくのであろう。こうした季節感は、自然の「その 大きさ、美しさ、不思議さなどに気付く(幼稚園教育要領,2008)」ために、必須であると思 われているのである。. また、季節を感じる事は、幼児の生活の基盤をつくる衣食住にかかわる大切な感覚であ る。「季節により自然や人間の生活に変化のあることに気付く(幼稚園教育要領,2008)」こ. とは、四季の変化によって培われられてきた日本文化を形成する要素ともいえるのではな いだろうか。. さらに自然の変化や現象は、人間の力を遙かに超える大きさ、美しさ、不思議さを通し、. 人間が生態系の一部であることを教えてくれる。そのような中で「気付く感性、自然の存 在の美しさを感じる心、自然の営みにいとおしさを感じる心(井上ら,2010)」など様々な感 情が養われる。. このように季節などの自然の変化を幼児自らの体験を通して、感じていく重要性がある と示唆される。. 本研究においても、四季折々の現象に関する項目として季節因子が抽出された。『H。. 季節感』に集まった項目群をみると、著者が研究1でカテゴリー分けした項目とほぼ一致 した。具体的には、〈④自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験〉〈⑤季節の. 変化に気づく体験〉に位置つく内容であった(表9参照)。そもそも研究1の段階で〈④自 然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験〉については、感動体験に関する独立 した因子と想定していたが、季節に関するものと同じ『皿.季節感』因子として抽出され た。. 『ll.季節感』因子の中には四季を特徴付ける風景や事象が具体例として項目の中に示 されている。したがって、情動に起因するものとして、季節などの事象が表されたため、 感動するというような情動的体験も含まれたのであろう。. この他に〈④自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験〉〈⑤季節の変化に. 気づく体験〉のどちらにも属していなかった2項目は「11季節の風を肌で感じる」と「9 23.
(26) 水の心地良さにひたる」であった。r11季節の風を肌で感じる」はく①自然の中で、五感の 働きを豊かにする体験〉に属するものと想定していたが、『ll.季節感』因子に入りこんだ。. これは、項目中の「季節の風に」という言葉のイメージが季節に関するという印象を与え たためであると考えられる。 表9 研究1の構造と『il.季節感』因子の関連 ④自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに感動する体験. 44 雲や虹、夕焼けや月などをみて、空の美しさに感激する 34 雨、風、雪などで普段見慣れた景色が一変し、驚く ⑤季節の変化に気づく体験. 8 サクラやチューリップなどの色とりどりの花が咲く様子を見て春の訪れを知る 25 木枯らしが吹き、冬の寒さを体感する 33 セミの鳴く声に、「夏が来た!」と感じる. 48 イチョウやモミジが色づくのを見て、秋の深まりに気づく ①自然の中で、五感の働きを豊かにする体験. 11 季節の風を肌で感じる ③自然に直接触れる中で、心が安らぐ体験. 9 水の心地良さにひたる. もう一つは「9水の心地良さにひたる」の項目で、研究1ではく③自然に直接触れる中 で、心が安らぐ体験〉のように情動に関わる因子に含まれると想定していたが、今回の因 子分析では情動に関する因子は抽出されず、『H.季節感』因子に加わった。そもそも水は 年中子どもの生活環境にある。水に顔をつけられない子どもはいても、さわれない子ども はいないであろう。また「水」と一言で言っても、色水になったり、氷になったり、川で は絶えず流れてくるように、保育者にとって水は様々な見方が出来るものであると考えら れる。しかし 「ひたる」という言葉から夏の水遊び光景をイメージさせたためであると考. えられる。いずれにしても、一般的に季節感を連想させる言葉が影響した可能性が高いと 思われる。. 3) 『皿.協働心』について 『HI.協働心』では、みんなで取り組むことや共有することの項目がまとめられている。. 『HI.協働心』に集まった項目群は研究1では、主にく⑩友達と一緒に身近な動植物を大 24.
(27) 切にすることで、公共心が養われる体験〉に位置していた(表10参照)。これは、研究1に おいて社会性や道徳心等の要素を含まれる因子であろうと仮定していたが、項目を見ると、. みんなで何かを行うことが集められた項目群となった。こうした協働心は保育の現場で、 日常的に目指される目標であろう。 表10 研究1の構造と『皿.協働心』因子の関連 ⑩友達と一緒に身近な動植物を大切にすることで、公共心が養われる体験 28 飼育や栽培などの当番や約束を決め、みんなで取り組む 40 野菜を育てる中で、おいしい野菜が出来るにはどうしたらよいかをみんなで考える 50 栽培物の成長と収穫の喜びを共有する ⑨身近な動植物に関わることを通して、生命を大切にする気持ちを育む体験 42 栽培や飼育などの世話を当番で行い、植物や動物が育つ過程を見て愛情をそそぐ ⑥身近な自然物を使って、考えたり工夫したりして遊ぶ体験 43 泥団子や水路などを作って遊ぶ時、どうしたらうまくいくかを試行錯誤する ⑧自然物の性質や自然事象の仕組みについて疑問をもったり、調べたりする体験 39 見たこともない虫や草を発見し、本や図鑑で調べようとする. これらの他に「42栽培や飼育などの世話を当番で行い、植物や動物が育つ過程を見て愛 情をそそぐ」「43泥団子や水路などを作って遊ぶ時、どうしたらうまくいくかを試行錯誤. する」「39見たこともない虫や草を発見し、本や図鑑で調べようとする」の3つが加わっ た。. 「43泥団子や水路などを作って遊ぶ時、どうしたらうまくいくかを試行錯誤する」はく⑥. 身近な自然物を使って、考えたり工夫したりして遊ぶ体験〉として位置づけていた。しか し後述するように「43泥団子や水路などを作って遊ぶ時、どうしたらうまくいくかを試行 錯誤する」は研究1の段階で、〈⑥身近な自然物を使って、考えたり工夫したりして遊ぶ体 験〉に関する項目としていた。『皿.協働心』に入ったのは、遊び内容がみんなで行う遊び であるという保育者の認識によるものである事が推測される。. また、保育現場において、「どうだろうね、みんなで考えてみようか… 」などはよ く使う言葉であろう。したがって試行錯誤することに関しても、保育士との掛け合いや友 達同士の相談によって展開されることも少なくないことから、『皿.協働心』の項目として. 位置づけられたと考える。ただし泥団子や水路などを作る遊び自体は必ずしも全てが協働 心を育む活動というわけではなく、個人的な体験としても成立することは、強調しておく 25.
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