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児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1) : 小学校第4学年単元「つかまえよう空気・水」を例に

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(1)Title. 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1) : 小学校第4学年単 元「つかまえよう空気・水」を例に. Author(s). 土居, 慎也; 三崎, 隆. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第37号: 53-59. Issue Date. 2005-10. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/1361. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集一北海道教育大学釧路校研究紀要一第37号(平成17年) KushiroRonshu,−JournalofHokkaidoUniversityofEducationat Kushiro−No.37(2005):53−59.. 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1) 一小学校第4学年単元「つかまえよう空気・水」を例に− 土 居 慎 也1・三 崎. 隆2. 1北海道教育大学附属釧路小学校 2北海道教育大学釧路校理科教育研究室. A case study of schooIchildrens’1earningin science classes(1): The unit on’air and water’in the elementary school ShinyaDoIland TakashiMISAKI2 1Kushiro Elementary Schoolattached to Hokkaido University ofEducation 2Department ofScience education,Kushiro Campus,Hokkaido UniversityofEducation atKushiro. 要 旨. 本研究では、小学校第4学年単元「つかまえよう空気・水」において児童の探究過程で生じた疑問を生か した授業実践を試み、児童の学習記録及び活動中の会話を調査した。 その結果、次の点が示唆された。 ・児童の探究過程で生じた疑問を生かして発展的に学ぶことのできる指導を試みることによって、自分の抱 いた疑問を解決するための実験方法を独自に工夫し、探究する児童ないしはグループが現れる可能性がある。 ・観察・実験の結果に至った児童の思考を可視化させ、改善点を児童に考えさせながら共通に行う観察・実 験を導き出すことによって、意欲的に学ぼうとしたり自然事象を科学的に見たり考えたりする児童を出現さ せる可能性がある。 したがって、探究過程で生じる疑問や児童の考えを可視化させる指導を試みることによって、主体的な探 究活動を期待できる可能性が示唆される。. 〔キーワード〕学び、思考の流れ、空気の質量、児童、共感的理解 もいうべきスキーマ(schema)を活性化させてやらなけれ. 1.研究の背景. ば、学習者に対して学習内容を適切に理解させることはで. 近年の理科教育研究では、子どもの学びに着目した研究 が報告されるようになってきている(松森、1997;森本、. きないと言われている(堀、1994;村井、2002)。したがっ て、理科学習時においては、児童の有する思考を活性化さ. せる探究を促したり、児童の多様な思考を生かした探究を 促したりする指導を試みることが大切であると考える。 森本(1999:84−87)は、児童に自分自身の問いを追究さ. 1999;西川、2000)。. その背景には認知科学の研究成果がある。それによると、 多くの児童は理科学習に白紙の状態で臨んでいるのではな. く、何らかの自分なりの思考を携えて取り組んでいること が明らかにされている(松森、2002)。そのような児童の固 有な論理の世界をよmis−COnCeption(誤概念)、pre−COnCeption (先行概念)、alternativeframework(代替的枠組み)と 呼ばれ、日本では素朴概念(naive conception)という用 語が当てはめられる場合がある(桧森、2002)。学習時にお いては、学習者がもっているそれらの既有知識の枠組みと. せる上で大切なこととして、個々の考え方を提示させ、そ. れと関連する他の考え方を提示させることを挙げている。 それを提示させることで、初めの考え方の視点を拡大させ つつ、思考状況の焦点化を少しずつ図ることができると指 摘している。 山本(2002)は、小学校5年「魚や人の誕生」において、 子どもの既有の考え方や経験を分析し、授業においてそれ. ー53−.

(3) 土居 慎也・三崎 隆 らを一貫して読み取るとともに、児童の思考の進捗状況に. 玉の飛び方と筒の中の様子の違いを関係づけて見よう. とする。. 応じて児童の考えを引き出し、授業プランを修正しながら 授業実践を行っている。その結果、児童は自らの気付きを. 第5時 空気や水が漏れないようにし、簡の中の様子の変. 基に考えを発展させながら探究活動を継続的にできるよう. 化をとらえる。. になったと報告されている。. 空気と水が漏れないようにする方法を考え、実験し、. 河輪(2002)は、小学校5年「ものの溶け方」において、. 結果を得る。体感に基づく事実を記述する。. 第6時 空気や水はどのような性質だったのか確認する。. 日常生活とのつながりを考えながら児童の多様な考えを引 き出し、それを話し合い活動を通じてより明確化させてい. カを加えたときの現象を空気や水の性質として説明す. く中で観察・実験に取り組ませ、自分自身の見方や考え方. で学習者の思考状況を生かす学習が、科学的な見方や考え. る。見つけた事実がものの性質であることを確認する。 第7・8時 空気に重さがあるのかを予想し、その追究方 法を考える。 空気の重さについて興味・関心を持ち、それを確かめ る方法を考える。これまでの追究過程で生まれた疑問(重 さ)の調べ方に見通しが持てるよう促す。. 方の育成と自然事象に対するより深い理解に貢献すること. 第9時 空気に重さがあるのかどうかを調べる。. を検証していく授業を展開している。その結果、児童は自 分の考えを明確にもつようになり、食塩水中の食塩の存在 を根拠をもって指摘できるようになったと報告されている。 このように、学習者の固有の考えを表現させ、探究過程. ができるものと考える。今後、児童の思考の流れを生かし. 空気を詰め込む前後で重さが変化していることを空気. 関心が喚起され、意欲的に探究しようとする意欲や態度を. の重さと関連付けて考える。当該授業の具体的な指導に ついては、土居(2004)に依る。空気の質量を測定する ために、電子天秤8台、500m但炭酸用ペットボトル及び簡. 育成する授業実践への改善に資することが期待される。. 易気体圧縮機を各グループ1個ずつが用意された(三崎・. た指導が行われることによって、自然事象に対する科学的 な見方や考え方が促され、身近な自然事象に対する興味・. 土居、2005)。各児童ないしはグループが自らの疑問を解 決するための方法として必要な用具で準備できるものは. 2.研究目的. 各自によって準備された。 第10・11時 空気や水の性質を利用したものを作り、試す。 空気と水を比べたり、それぞれの性質を利用したりし て、見通しをもってものづくりを行う。. 本研究では、小学校の理科授業における児童の思考の流 れを生かした学びを促す指導を試み、その有効性について 明らかにすることを目的とする。. (5)単元構想. 3.研究方法. 本研究では、空気や水の追究過程で生まれた児童の素朴 な疑問「重さ」について取り上げ、簡易気体圧縮機と電子. (1)実践研究期間. 天秤を使用して空気に重さが存在する事実を探究する授業. を企画した。本研究の対象クラスにおいて、「空気には重さ がある」と認識している児童が15名に対して、「空気には重. 2004年6月∼7月 (2)対象. 本学附属釧路小学校第4学年1クラス(男子23名、女子 17名、合計40名). さはない」と認識している児童が25名存在している実態(三. 崎・土居、2005)から、特に空気に重さがないと認識して いる児童が、空気に重さが存在するという事実を発見する ことによって、空気や水の性質に関する視点がさらに広が り、新たな見方や考え方が再構成されるとともに、物質の. (3)単元. 小学校第4学年単元「つかまえよう空気・水」(全11時間) (4)指導計画. 第1時 空気でっぼうで遊ぶ。 空気鉄砲に興味・関心を示し、自ら進んで玉を飛ばす 活動をいろいろ工夫することによって、空気鉄砲の特徴 を生かして遊ぼうとする。 第2時 水鉄砲で遊ぶ。 水鉄砲を使って、水鉄砲で玉を飛ばす活動をいろいろ 工夫しながら、水鉄砲で遊ぼうとする。 第3時 玉の飛び方に違いがあるわけを考える。 空気鉄砲と水鉄砲との違いを比べ、シリンダの中に何 が入っているのかを考え、空気と水にはどこに違いがあ るのかを推察する。 第4時 透明な簡を入れて空気・水でっぼうで玉を飛ばす。. 性質に関する理解がより一層深まることが期待されると考. えられるからである。したがって、本研究では、児童が課 題解決に向けて探究活動を行う過程で抱いた疑問を大切に. し、その疑問に基づいて児童の思考を連続的に発展させる ことができるような授業を企画したのである。. 生活科では「ゲスト慣れ」という反省が浮上し、本来オ プションであるべきものが華やかなために日常的な授業が. 軽んじられていないかという指摘がある(大辻、2004)。学 校はイベント開催地ではなく、静かに人間が成熟するとこ ろである(大辻、2004)ことを考えたとき、日常の理科の 授業においては、イベント的あるいは単発的な授業を繰り 返すのではなく、探究の過程で児童が抱いた疑問を単元を. 一54−.

(4) 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1). 見通して継続的に発展させることのできる児童の思考の流. 在を調べようとする方法を採用しているグループの実験の. れに沿った授業のデザインが、. 味・関心をより喚起し、進んで探究しようとする意欲や態. 様子である。図2の児童は、支持棒の両端に同質量の紙コッ プを1個ずつつり下げ、右側の紙コップ脇に写っている空. 度を育て、自然事象に対する児童のより深い理解あるいは. 気を封入したビニール袋を画像右側の紙コップに乗せて質. 科学概念の形成を促す上で、大切であると考える。. 量変化を探究しようとする実験方法を採用した。図3の児 童たちのグループでは、ビニール製のボール2個に空気入. 児童の自然事象に対する興. れでそれぞれ異なった体積の空気を封入し、支持棒の両端 につり下げて、空気の質量の違いに依存して生じる力のモー メントによる探究方法を採用している。図4の児童は、薄 手の軽いビニール袋を2袋用意して、支持棒の一端に空気 の封入されていないものをつり下げ、他端に空気の封入さ れているものをつり下げて、空気が封入された分の質量に. 4.分析方法 平成16年7月2日に平成16年度本学附属学校園共同教育 研究会の研究授業として公開された本単元第9時「空気に 重さがあるのかどうかを調べる」の授業を、筆者らの一人 がデジタル・ビデオ・レコーダーですべて録画した。そし. て、そのトランスクリプトを基に、児童の学習行動並びに. よって生じる力のモーメントによって空気の質量の存在を. 授業者と児童の発話内容を質的に分析した。. 探究しようとする方法を採用している。. 5.結果と考察 (1)児童の学習活動. 第9時の空気の質量の存在を探究する観察・実験場面で. は、児童の多様な思考による実験方法が見られた。図1∼ 図7は第9時において、児童ないしはグループが考案した 観察・実験方法によって空気を入れる前後で質量の変化が. あるのかどうかを探究している様子を示している。. 図3 異なった体積の空気を封入して比較する探究方法. 図1 電子天秤上に水槽をかぶせて測定したグループ 図4 一端にのみ空気を封入して測定する探究方法. 図2 紙コップを使った質量差による探究方法 国5 ビニール製の風船に空気を封入する探究方法 図1は、実験台の上に置いた電子天秤に丸形水槽をかぶ せて、丸形水槽内に閉じこめられた空気の質量を直接的に. 図5∼図6は、空気を封入して測定可能な物体の、空気. 測定しようとする方法で実験を行っている4人の男子児童. を封入する前の質量と封入後の質量との差を計測し、その. のグループの様子である。. 質量増加量から空気の質量の存在を議論しようとする方法. 図2∼図4は、支持棒の両端に空気を入れた物体をつり. を採用しているグループの実験の様子である。図5は、封 入できる空気の体積が一定量のビニール製の風船を使用し. 下げて、左右の空気封入物体の質量差から空気の質量の存. ー55−.

(5) 土居 慎也・三崎 隆 ているグループの実験方法である。この他に、薄手のポリ. はグループの探究活動に基づいた観察・実験を保証しない. エチレンの袋を使用して同様の実験方法を採用しているグ. 授業展開においては、前述のような多様な実験方法は現れ なかった可能性が考えられる。その意味においては、本研. ループが見られた。図6は、封入できる空気の体積を可変 可能なゴム風船を使用しているグループの実験方法である。. 究で試みた児童の思考の流れの中から生じた疑問を大切に. して、それを継続的、発展的に取り扱うことのできる授業 展開の位置付け、並びに児童の思考に基づいた実験方法に よる観察・実験を保証する試みが効果的に機能した可能性. が考えられる。 また、空気でっぼうを使用して空気を押し締めて玉を飛 び出させる実験を行いながら探究を促したことは、図7の 児童にとって、簡の中の空気の存在への着目が促された可 能性が考えられる。その着目過程で、筒の中に空気が存在 するとすれば、玉を押し出す行為と同様に空気を押し出し て取り除くことが可能になれば、全体の重さを減少させる. 図6 ゴム風船に空気を封入する探究方法. ことができる可能性があるのではないかという図7の児童. の仮説が生まれた可能性があると考えられる。その結果、 図7の児童は、試験管内に割り箸を挿入し、試験管内の空 気を追い出す実験を考案したものと考えられる. (2)児童の発話内容. 図8は、児童ないしはグループで行った個別実験後のク ラス全体でのデータ分析場面での会話を示している。Sは 児童、Tは授業者を表している。()内の表記は、筆者ら 図7 試験管中の空気を割り箸で押し出す探究方法. が児童の空気の重さ測定実験中の活動の様子を解説した内. 容を表している。 図7は、空気の入った試験管の質量と、割り箸を入れる. T:○さん、ちょっとさ、教えてほしいことがあるの。. ことによって試験管内の空気を追い出した状態の試験管の. さっき、風船パーンって割れたよね。何で、何、いっ. 重さを計測し、両者の重さの差から空気の重さの存在を議. ばい入れようと思ったの?. 論しようとする実験方法を採用した児童の実験の様子を示. S:いっぱい入れたら、なんか、その、測る前より空気. している。当該児童はまず、試験管と試験管に入れる割り 箸の重さを測定した。その後、試験管に割り箸を入れ、そ の重さを測定する方法を採用した。 このように、第9時では空気の重さを議論できる結果を 得るために、児童やグループによって多様な実験方法が採. の量が多くなって、分かりやすい。. T:空気の量を多くしようって考えたのね。 S:(うなずく). T:そして一生懸命こうやって、やっていって途中で割 れてしまったんだ。. 用された。直接的に計測する方法や異なる体積の物体の質 量差を比較して計測する方法、あるいは封入空気の質量増. S:(うなずく). T:なるほど。みんなもそれぞれ空気の量をいっぱい多 くしてくれたよね。袋でやった人もいたよね。袋の. 加を利用して計測する方法等の多様な実験方法によって児. 人?変わったよって人どこ?. 童が空気の重さの存在を探究しようとした活動は、空気と. (6名ほど挙手). 水の探究過程から生じた児童の疑問を大切にして授業を展. T:変わらなかったよって人?. 開したことによる効果である可能性があると考える。また、. (5名ほど挙手). 生じた疑問を解決するためにはどのような実験方法を実施. T:ありやあ、半々だな。. したらよいのかについてそれまでの探究を踏まえて児童の. (中略). 疑問を大切にして思考させる場を設定したことによる効果. T:今、○さんが2回もバーン、バーンって、しまった. でもある可能性が考えられる。特に、支持棒の左右に異な る重さの物体をつり下げ、両者の質量差から空気の重さを 議論する方法でも、3種類の実験方法が現れた。それぞれ. S:うん。. の児童ないしはグループがそこに至るまでの探究過程での. T:たくさん、入れられればいいんでしょ。− たくさん入. けども、でも、○さんの言ってることって、なるほ どなって思うよね。. 自らの思考過程から導き出した結果である可能性が考えら. れればいいんだよ。だから、袋にさ、袋にさっき、. れる。本研究では条件統制した対象集団との比較を行って いないため、厳密には結論付けられないが、各児童ないし. 懸命こうやってた人いたよね。(空気注入ポンプでビ. これ(空気注入ポンプ)を使ってさ、一生懸命、一生. −56−.

(6) 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1). S:だから、どこまでも入る。 ニール袋に入れるパフォーマンスをする)たくさん入. T:これだったらどうだ?. れようと思ったんでしょ。やっぱりね。. S:できる。. S:でも、変わんなかった。. T:できそうだな。これでちょっとやってみようか。れ. T:これでもだめだった?そっかあ。それができれば?. さ、こうやって最初もってって。(電子天秤で計測す. ○さんのやつみたいに、割れることはないよね。そ. るパフォーマンス). れができれば。. S:3.5。. S:また?. S:そんなにあるの?. S:まただ。. T:こっち(キャップ)も測らないとね。な。(キャップも. S:きた。. 一緒に計測するパフォーマンス). S:まただ。. S:52.8。. S:またきた。. T:52.8。どう?やってみたい?. S:きた。. S:やってみたい!. (ペットボトルを示す). 図8 データ分析場面での会話. S:あ? T:この中はさ。. 授業者は、「T:○さん、ちょっとさ、教えてほしいこと. S:割れない。. S:割れない。. があるの。さっき、風船パーンって割れたよね。何で、何、. T:この中に一生懸命空気入れればいいんじやない?. いっぱい入れようと思ったの?」で、図6と同様の実験を. S:割れないんだ。. して空気の重さの存在を探究し、風船を割ってしまった児. S:入れたよ。. 童に対して発話している。この場面では、風船が割れた結. T:入れた?だめだった?. 果から、なぜ割れるまで空気を入れようとしたのか、そこ. S:方法でやった。. に至るまでの当該児童の思考を可視化させることを意図し. T:だめ?空気入れるでしょ。ふうふうって。. ている可能性のある発話を発していると考えられる。風船. S:空気ポンプでやった。. が割れるまで空気を封入した当該児童の思考の流れを発展. T:空気ポンプでもだめ?どうしてどうして?. させて、次の全員で共通に観察・実験する簡易気体圧縮機. S:抜けるんだ。. を活用した空気の重さ測定実験につなげていくことができ. T:抜けるんだよね。抜けなければいいんだよ。空気ポ. る展開が可能になると考えられるからである。各児童の結. ンプで抜けないようにすればいいんだよね。ここにふた. 果を発表させた後に、ただ短絡的に全員に共通に課す観察・. くっつければよろしい。 S:ふたにきりで穴を開けて入れれば。. 実験に移るのではなく、発表された結果、あるいは机間指. T:先生、いいふた見つけたんだ。ペットボトルのキャッ. 導をする過程で着目した特定の結果を全員に共有化させる. プになるハロー. ことで、当該児童の観察・実験時の探究過程の思考の流れ. キティフルーツミックス味。. を切断させずに発展させるだけでなく、他の児童に対して、. S:あーつ。 S:知ってる。. 自分の観察・実験をモニタリングさせながら比較するよう. T:キャップだよ。(キャップを炭酸用500m魁ペットボト. な思考を促し、発展させることが可能となると考えられる。. ルに取り付ける)これだったらどう?. 本稿では、学習者が授業実践場面で、授業者や他の学習. S:先生、どっちでもいいと思います。ハローキティの. 者に対して、自分の探究活動や観察・実験方法に対する構. でも普通のでも。. 想や意欲、結果への予想を表現したり、探究結果に対する. T:入れて、開けないでどんどん入れられるでしょ。. 自分の考え、自分の探究過程のモニタリングによる思考・. S:あっ、そのまま入れられるやつだ。. 認知過程を表現したりする等、学習者の内部で行われる思. S:キャップで空気を入れられるやつだ。. 考・認知過程を授業者や他の学習者あるいは観察者等が観. S:あーつ、空気入れと同じ仕組みだ。. 察可能なように外界に表す意味において、「可視化」の用語. T:そうそう、空気入れと同じ。これで、どんどん空気. を用いることとする。. を入れると、さっきのこうらさんの割れてしまうっ. それに対して児童は、「S:いっぱい入れたら、なんか、. ていう・・・。(実際に空気を入れるパフォーマンス. その、測る前より空気の量が多くなって、分かりやすい。」. をする。). と発話している。より多くの空気の方が、封入前後での容. S:割れないよ。. 器全体の質量変化を調べやすいのではないかという当該児. T:割れないかな?. 童の探究過程での思考を引き出す結果となっている。授業. S:固いから。. 者の発話が当該児童のモニタリングを促し、観察・実験を. T:だよな。. 行う過程からの思考を促す効果をもたらしている可能性が. −57−.

(7) 土居 慎也・三崎 隆. 考えられる。ゴム風船では多量の空気を封入させると割れ てしまうが、多量の空気を封入しても割れない容器を使用 することができれば、封入前後の空気の重さの存在を容易 に検知することができるのではないかというように、当該. う次の観察・実験方法を考え及ばせる工夫が施されている。. 最後には、「S:できる。」、「S:やってみたい!」と発話. する児童が現れ、その後の全員が共通で行う観察・実験へ の意欲が高揚している学習状況の変容を読み取ることがで. きる。その意味においては、児童の観察・実験結果を適切 に把握して、そこに至る過程の児童の考えを可視化させ、. 児童の思考を発展させるとともに他の児童への思考を促す. きっかけとできる可能性を含んでいる発話であると考える。 また、当該場面の児童は、空気の封入体積を変化させる. 実験方法の改善点を児童に考えさせながら全員で共通に行. う観察・実験を促す指導が、児童の意欲的な探究を生み出 す可能性があると考えられる。 ところで、前述の、観察・実験の際に風船を割ってしまっ た児童と、ペットボトルに空気を入れたが抜けてしまった 児童は、いずれも当該児童が期待していなかった結果が得 られた事例である。児童が期待しなかった結果に至ってし まった事例を授業の流れの中で意図的に可視化させる点も、 児童の思考の流れを生かした学びを促す指導を試みる上で、 また、児童の科学的な見方や考え方を培う上で、貴重な視 点であると考える。日常の理科授業の場合、学習者や授業. ことのできるゴム風船を使用して空気の重さの存在を確認. しようとして、ゴム風船を割ってしまった児童である。授 業者は、風船が割れた結果を叱責するよりも、なぜ割れる まで観察・実験を継続しようとしたのか、その理由を可視 化させ、そこから次に発展させようとする授業展開を試み ている。つまり、児童の観察・実験結果だけでなく、その 結果に至る過程を大切にし、科学的に見たり考えたりして いる児童の思考を授業の中で可視化させながら、全員で共 有化させようと試みた場面の一つであると言える。したがっ て、児童の思考の流れを生かした学びを促すためには、観 察・実験結果とともに、なぜそのような結果に至るまで観. 者が期待する結果の得られた典型的な事例を意図的に可視. に一生懸命空気入れればいいんじやない?」と発話し、割. 化させ、それを全員で共有化して一般化を図ることが多い (三崎、2003)。そのような場合、期待していない結果の得 られた学習者の思考は促されず、当該事象に対するより深 い理解はもちろん、科学的な見方や考え方を育成すること は難しい可能性がある。また、観察・実験結果だけが重要 視され、観察・実験結果を暗記するようになったり、結果. れない容器を用意したから空気の重さは計測できるのでは. に至る過程を十分に吟味しようとしなくなったりすること. ないかと、児童の思考を一層促した。この段階では、簡易 気体圧縮機は提示していない。ともすると、児童に個別の. が多くなる可能性が高い。期待していなかった結果に至っ た事例を意図的に可視化させることによって、なぜそのよ. 観察・実験をさせ、それぞれの結果を共有化した後には、. うな結果に至ったかを当該児童だけでなく全体で共有化し. 授業者が共通の児童用の観察・実験の方法を示して一斉に. て考えさせ、条件設定を再吟味させたり観察・実験方法の 改善を図らせたりすることができるからである。その過程 を通して、児童の科学的な見方や考え方をより一層深めさ せることができる可能性があると考えられj5。その意味に おいては、授業の流れの中で、児童の観察・実験結果のう ち、期待されていなかった結果を意図的に可視化させ、そ. 察・実験を行ったのかを可視化させる場面を意図的に設定. することが重要である可能性があると考える。そのことが 一人一人の児童の自然事象の探究並びにより深い理解を促. す上で有効に機能する可能性があると考える。 一方、授業者は、ペットボトルを示した後、「T:この中. 観察・実験を行わせる授業の展開になる場合が多いが、本 研究ではあくまでも児童の思考の流れを大切にする手法が. 生かされている。その結果、「S:入れたよ。」→「T れた?だめだった?」→「S:方法でやった。」→ め?空気入れるでしょ。ふうふうって。」→「S:空気ボン プでやった。」→「T:空気ポンプでもだめ?どうしてどう. の原因を考えさせて条件設定を吟味させたり探究方法を改. して?」→「S:抜けるんだ。」と会話された。授業者はペッ. 善させたりする指導を行う本研究での試みは、児童の思考 を促す上で、有効に機能する可能性があると考えられる。. トボトルを使って観察・実験を行った児童に対して、空気 が抜けてしまうことを可視化させ、他の児童に共有化を図っ たのである。当該児童に自分の観察・実験をモニタリング させて、思考の流れを可視化させるとともに、他の児童に. S:先生!0.1g上がった。 S:0.3g上がった。 S:1g上がった。. 対して「たくさんの空気を入れることで質量変化を分かり. S:すげえ。(あちこちから同様の発話あり). やすくする」→「しかし、ゴム風船では割れてしまう」→ 「割れてしまわない容器として、ペットボトルを使えそう だ」→「しかし、空気ポンプで空気を入れても抜けてしま う」→「抜けないようにするには、何を使ったらいいのか」 という思考の流れを促している可能性があると考えられる。 決して、観察・実験方法を一方的に提示するのではなく、. S:先生、でも、空気の入れ具合によって、重さ変わる 旦∑. 図9 500m彪ペットボトルで計測している時の会話 (三崎・土居(2005)から一部引用). 児童とともに結果に至るまでの過程をモニタリングして当. 図9は、全員が共通に500m但ペットボトルと簡易気体圧縮. 該観察・実験方法の改善点を探りながら、全員が共通で行. 機を使って観察・実験を行ったときの会話の内容の一部を. −58−.

(8) 児童の思考の流れを生かす学びに関する事例研究(1). ただ、本研究での教育実践は、特定の学年、単元、集団. 示している。Sは児童を表している。()内の表記は、筆. に限定されている。本研究での成果を一般化するに当たっ ては、他の条件設定下における授業実践を継続的に企画、 実践し、当該授業記録を比較、分析することによって議論 していくことが大切であると考える。 以上を今後の課題としたい。. 者らが児童の空気の重さ測定実験中の活動の様子を解説し. た内容を表している。 各児童ないしはグループごとの個別の観察・実験の結果. 分析後の探究活動において、「S:先生!0.1g上がった。」. のように、自分の観察・実験結果を授業者に示そうとする 発話(共有の発話;西川、2003)を行う児童が現れた。自 らの観察・実験によって得られた結果を授業者にいち早く. 文 献. 知らせて成果の共有化を図ろうとする当該児童の行動は、 空気の重さの存在を発見した驚きと充実感を表しているも. 堀 哲夫:理科教育学とは何か,30,東洋館出版社,1994.. のであろうと考えられる。その意味においては、データ分. 河輪達也:子どもの考えの明確化と発展を願った「観察・. 実験」の工夫一小学校5年「ものの溶け方」−,. 析後の探究活動が当該児童に対して情意面の高まりを促し. た可能性があると考えられる。また、「S:先生、でも、空 気の入れ具合によって、重さ変わるよ。」と発話し、空気の. 森本信也編著「論理を構築する子どもと理科授業」. 所収,131−139,東洋館出版社,2002. 松森靖夫:子どもの多様な考えを活かして創る理科授業, 全201,東洋館出版社,1997. 松森靖夫:子どもは自然をどう捉え、教師はそれをどう受 け止めればいいのか?,理科教育研究会編「変わ る理科教育の基礎と展望」所収,52−63,東洋館出 版社,2002.. 重さが封入する体積によって変化することに気付く児童も. 現れた(三崎・土居、2005)。後者の児童は、その後自分で 実験を6回繰り返し行って、封入前後の空気の重さの変化 について探究した(三崎・土居、2005)。この行動は、当該 児童の思考が空気の体積と重さとの関係に及んでいること. を示しており、空気の体積と重さとの関係に高い関心を示 し、積極的に探究しようとする意欲と態度の現れた行動の. 三崎 隆:小学校における理科授業の現状と課題一新潟県. 一つであると解釈できる可能性が高いと考えられる。これ. 下越地域における小学校への計画訪問を例に−,. らのことから、共通に行った観察・実験では意欲的な探究. 釧路論集35,37−50,2003. 三崎 隆・土居慎也:簡易気体圧縮機の空気の質量測定実. 活動が促された可能性並びに封入する空気の体積と重さと. 験への応用,理科の教育,54(6),64−65,2005.. の関係を科学的に考え及ぼうとする児童を出現させる可能. 性があると考えられる。その意味においては、個別実験の. 森本信也:子どもの学びにそくした理科授業のデザイン,. 結果を基に観察・実験の方法の改善点を児童に考えさせな. 全177,東洋館出版社,1999. 村井護妻:物理分野の授業構成とその特色,理科教育研究 会編「変わる理科教育の基礎と展望」所収,104− 116,東洋館出版社,2002. 西川 純:学び合う教室,全133,東洋館出版社,2000. 西川 純:「静かに!」を言わない授業,43,東洋館出版社,. がら、全員が共通に行う観察・実験を実施することによっ て、意欲的に学ぼうとしたり科学的に見たり考えたりする 児童を出現させる可能性があると言える。. 6.まとめと今後の課題. 2003.. 本研究では、小学校第4学年単元「つかまえよう空気・. 大辻 永:「アウトソーシングする理科教育」がねじれない ように,理科の教育,53(6),4−7,2004,東洋館出. 水」において児童の探究過程で生じた疑問を生かした授業. を実践し、児童の学習記録及び活動中の会話を調査した。 その結果、次の点が示唆された。. 版社. 土居慎也:理科学習指導案,平成16年度北海道教育大学附 属学校園共同教育研究会大会要項,33−41,2004.. ・児童の探究過程で生じた疑問を生かして発展的に学ぶこ. とのできる指導を試みることによって、自分の抱いた疑問 を解決するための実験方法を独自に工夫し、探究する児童. 山本朝彦:子どもに生命概念を構築させる単元の構想と展. 開一小学校5年「魚や人の誕生」−,森本信也編 著「論理を構築する子どもと理科授業」所収,42− 51,東洋館出版社,2002.. ないしはグループが現れる可能性がある。. ・観察・実験の結果に至った児童の思考を可視化させ、改 善点を児童に考えさせながら共通に行う観察・実験を導き. 〔問い合わせ先〕. 出すことによって、意欲的に学ぼうとしたり自然事象を科 学的に見たり考えたりする児童を出現させる可能性がある。 したがって、探究過程で生じる疑問や児童の考えを生か した授業を展開することによって、児童に対して科学的に. 〒850−8580 釧路市城山1−15−55 北海道教育大学釧路校 三崎 隆. misaki@kus.hokkyodai.ac.jp. 思考しようとしながら学ぶ場を提供することを期待できる. 可能性が示唆される。. ー59−.

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