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アジ研ワールド・トレンド No.195 (2011. 12)
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ি
●人に話を聞くこと
誰かに直接会って話を聞く
。
通常
、これをインタビューと呼
ぶ
。
途
上
国
研
究
で
行
わ
れ
る
フィールドワークの主な作業も
インタビューである
。そのため
インタビューはフィールドワー
クのひとつの手法であることは
承知ではあるものの
、何かが違
うような気がする
。そこで
、あ
えてインタビューとフィールド
ワークの違いを考えてみたい。
金融分野をテーマとする関係
で
、私が行うのはもっぱらイン
タビューであったと思う
。中央
銀行や商業銀行
、大蔵省などの
官庁
、もしくは国際機関に行っ
て話を聞く
。一方
、フィールド
ワークというと
、農村家庭や地
場の零細企業のおじさんおばさ
ん相手に、
現地語で話しを聞く。
おおまかに言えばそんな違いだ
ろうか
。では
、この違いは話を
聞く相手の違いで終わってしま
うのか
、というとそうともいえ
ない。
●五感を使う
インタビューとフィールド
ワークの違いは
、五感の使い方
の違いではないだろうか。
フィールドワークは
、目の前
にいる相手が含まれる空間を
、
持っている感覚すべてを使って
把握することだと思う
。インタ
ビューは
、質問する内容に集中
する
、もしくは集中することが
できる
。インタビューのために
準備した質問と
、その質問の背
景となる予備知識
、たとえば事
業会社へのインタビューであれ
ば
、その産業に関する知識など
を頭の中でスタンバイさせなが
ら
、聞きたいことを比較的スト
レートに聞いていくことができ
る
。また
、一方的に質問するば
かりではなく
、質問に関連して
相手と議論し
、それが次の質問
に発展することも多い。
一方
、フィールドワークでの
情報獲得は
、相手に何かを聞く
という作業だけではない。
視覚
・
聴覚
・臭覚を駆使して全身で情
報を得る必要があると思う
。た
とえば農村での家計調査の場
合
、家に入って確認するのは
、
その家が何でできていて
、古そ
うか新しそうか
、調度品と呼べ
るものがあるかないか
、など
。
そして
、匂い
。日本から用意し
てきた質問票にある数値化でき
る項目を聞くだけでは十分とは
言えない
。あるいは
、数値だけ
を見たときに
、その背景に思い
をおよばせることができる直感
を養うためにも
、現場で五感を
精いっぱい使う。
もちろん
、五感を使うのは別
に家計調査に限った話ではな
い
。
銀行や事業会社に行く時も
必要である
。たとえば
、これま
でいったどの銀行よりも内装が
派手な銀行が
、マイクロファイ
ナンスで有名な銀行であったり
すると
、それもまた
、なんらか
の情報になるには違いない
。し
かし
、この種の観察による情報
は
、フィールドワークの時ほど
には利用する機会が少ないのも
事実である。
フィールドワークでは
、子供
のざわめきや牛の気配を背後
に
、昼ごはんの油のにおいを感
じながら
、暑い湿気を帯びた空
気にじっと我慢して
、神経を研
ぎ澄ませる
。そうしていると事
前に用意してきた質問が
、不意
に陳腐なものであることに気が
つく瞬間がある
。まさに机上で
考えた質問であることに聞く前
から気がつくのである
。でも
せっかく用意してきたのだから
と
、シミッタレた考えで
、その
質問を投げかけてみると
、だい
たい不発に終わることが多い
。
不発
、すなわち
、聞かれた方は
何を聞かれているのかわからな
い。
●病みつきになる危険な瞬間
初めて訪れる地方の町で
、
日
用雑貨を扱っている店に入る
。
﹁あの⋮
。﹂外国人がひとり
、た
どたどしい言葉で
﹁スミマセン、
チョット
、オタズネシマスガ﹂
と始まって
﹁お店は何年やって
いるか﹂
﹁開業資金はどうした
のか﹂
﹁自分で工面したのか﹂
﹁ど
こかから借りたのか﹂
﹁
銀行と
はどのように付き合い始めたの
か﹂などと
、現代の日本ではあ
りえない質問を
、どのように始
人に
話
を
聞
く
こ
と
︱イ
ン
タ
ビ
ュ
ー
と
フ
ィ
ー
ル
ド
ワ
ー
ク
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アジ研ワールド・トレンド No.195 (2011. 12)
めればいいのだろうか?
頼るは度胸しかないのだが
、
それにしてもどうしてこの店に
入ったのだろうか
、と後悔する
時も多い。
この時もそうだった、
眉間にしわを寄せたおばさん
に
、オズオズと
、しかしとんで
もない
﹁お金﹂の話を聞き始め
た
。おばさんは
、とまどいなが
らも
、ボツボツとぶっきらぼう
に答えてくれていた
。そこに
、
同じように眉間にしわを寄せた
おじさんが不機嫌そうに奥から
でてきた
。そのおじさんが何か
を言った途端
、話をしていたお
ばさんが
、ぷいと奥に入ってし
まった。
﹁怒らせてしまった⋮。
﹂
どうしたものか
、と進退方法
を悩んでいる私に、
おばさんが、
﹁これ﹂といって
、小さな手帳
数冊を手渡してくれた
。預金通
帳!
細かく書かれた文字を追
いながら
、いくら借りてここで
いくら返してと説明してくれ
る
。そして
﹁今
、これだけ貯金
が
貯
ま
っ
て
い
る
ん
だ
よ
。﹂
と
、
うれしそうにいった
。こんなに
貯金した自分に満足しているよ
うにも見えた
。怒られるかと
思ったのに
、逆に預金通帳まで
みせてもらってしまった
。この
ギャップの埋まる時が
、フィー
ルドワークにはまる瞬間かもし
れない。
結局は
、人間対人間の会話が
どれだけスムーズに進むか
、と
いうことに尽きる。
そのために、
臆病であってはいけない
、しか
しそれ以上に無神経であっては
ならない。
●インタビュー公害
たとえば
、田舎のつつましや
かな佇まいの家庭の応接間で過
去一週間の支出を聞く
。調査す
る側は、
日本人を含め総勢六名。
いろんな項目を聞いていき
、ソ
フトドリンクなどの嗜好品の項
目では
﹁ない﹂という答え
。た
だ
、私たちの目の前には
、スト
ローのささったコーラが供され
ている
。﹁でもこれは
?
買っ
たんですよね
?
﹂そう質問する
私たちに
﹁今日は
、お客さんだ
から
。特別に⋮
。﹂と恥ずかし
そうに
、小さな声で答える奥さ
ん
。このつつましやかな家より
さらに無駄を省いた簡素な家の
土間で
、比較的値の張る果物が
さしだされたこともある
。ここ
でも、
果物の項目は
﹁買わない﹂
。
そして
、やはり
﹁今日は遠方か
らお客さんが来たから﹂という
はにかんだ返事。
こんな光景は
、途上国の農村
で家計調査をしている人には日
常茶飯事なのかもしれない
。こ
れをどうとらえるか
。それは人
それぞれだろう
。仕方ないと思
う人もいるだろう
。迷惑をかけ
たけど
、この調査結果が何らか
の形で政策に還元できれば
、と
思う人もいるだろう。
そもそも、
質問される人にとってそれがど
れほど非日常の特別なことで
、
そのためどれほど家計に負担を
かけているのか
、気がつかない
人もいるかもしれない。
インタビューにしろ
、フィー
ルドワークにしろ
、人に迷惑を
かけずにはできないものであ
る
。だからといって
、人の親切
にあぐらをかいていいわけでも
ない。
真摯に対応する。
しかし、
これが難しい
。自分なりの真摯
なやり方を独自模索しなければ
いけない。
●満足すると失敗する
フィールドワークにはまり
、
聞き取り調査がうまく行ったと
する
。しかし
、ここにも落とし
穴があるような気がする
。うま
く話が進んで
、話が盛り上がる
と
、何かとてもうまく聞き取り
調査ができてしまった気がす
る
。しかし
、これは聞きたいこ
とが聞けたというより
、自分の
知らないことを聞く耳を持た
ず
、聞くべき
、自分の気がつか
ないことを聞き逃した
、という
可能性もあるかもしれない
。だ
からうまく聞き取り調査ができ
た
、と思った時はあえて
﹁本当
か﹂と自問する。
だから
、うまくいったとして
もいかなかったとしても
、どち
らにしてもフィールドワークは
どっと疲れるのである。
はまだ みき/アジア経済研究所 金融・財政研究グループ
専門:開発金融、コーポレート・ファイナンス、インドネシア経済。
眉間の皺が消えた
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