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広告の産業連関分析

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(1)

広告の産業連関分析

著者

桑原 秀史

雑誌名

経済学論究

63

1

ページ

99-118

発行年

2009-06-15

URL

http://hdl.handle.net/10236/2715

(2)

広告の産業連関分析

Input-output Approach to an

Advertising System

桑 原 秀 史  

Economists have long been interested in the studying the effect of advertising on market structure and input-output relations. The strategic effects of advertising are complicated because there may be direct as well as indirect strategic effects. A large empirical study on advertising have revealed a few robust input-output properties. Given an existing advertising technology consumer behavior and output-input structure requirements describe how much larger a discrete improvement created by a rival firm must be in order not to infringe the incumbent’s advertising.

Hidechika KUWAHARA

  JEL:L10, L13, L40

Key words: Input-output Model, Advertising, Technical Innovation, Struc-tural Path Analysis, Industrial Organization

広告活動を国民経済の中で統一的・整合的に解明していくためには、産業組 織論やマーケティング戦略論からの理論・経験法則の摘出とその解釈という方 法に加えて、産業間相互の連結とネットワークにかかわる計量的かつ経済的な 広告機能の解明を、国民経済全般とのかかわりにおいて追跡・研究する方法が 必要である。 本報告は最初に広告に係る産業連関分析の理論研究のエッセンスを概括し、 従来ほとんど研究のなされていなかった広告の産業連関分析の広告活動への適 用とその解釈を提示する。具体的には、第1に広告の産業連関分析のフレーム * 本稿の研究成果の一部は、吉田秀雄記念事業財団の助成を受けている。

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ワークと理論的な前提の諸条件を考察する。第2に、連結産業連関表を用い て、広告活動の産業間にみられる経済的な相互機能の特徴と、広告の生産波及 効果を1990年代について詳しく検討する。その際、産業組織論と企業戦略論 における広告の機能に関する理論的・実証的研究を前提に検討を進める。第3 に、広告の産業連関的経済効果等を、時系列側面から分析し、次いで経済成長 マクロ計量経済モデルから、広告需要の中期的な予測を行う。最後に広告と環 境および産業組織のあり方を議論する。

I 産業連関分析の方法

(1) 国民経済と動学的産業連関 投資によって進められる資本蓄積の持つ効果を取り入れた状況は、オープ ン・モデルに、たとえば加速度原理型の投資関数を導入して、各産業の生産量 および投資量の時間的経路を説明するモデルとなる。資本係数マトリックスを 用いてモデルが展開されるが、投入物として資本サービスが加わるため、連関 表の形式では、供給部門の構成が、中間投入・労働サービス・資本サービスと なる。第i産業生産物1単位の生産に必要な資本サービスを提供する第j産業 生産物(実物機械、資本財)のストック量を資本係数bjiであらわす。資本係 数はbji= Kji/Xi(i, j = 1, 2, · · · , n)として推定される。それぞれi産業 がその産出量を1単位増加させるために必要とする、j部門算出の資本ストッ クの追加必要量を表す。各産業の技術構造は、投入係数行列に資本係数行列を 追加したものになる。この動学方程式は、連立線形型一階差分方程式となる。 企業の投資行動に加速度原理を仮定するならば、⊿Kji= bjiXi(i, j = 1, 2, · · · , n)となる。⊿ はその変数の時間tに関する微係数である。経済 全体が投資財として購入する第j産業生産物の量Ijは、Ij = n P i=1 ∆Kji = n P i=1 ∆bjiXi(j = 1, 2, · · · , n)である。生産物の需給均等方程式はXn= an1X1+ an2X2+· · · + annXn+Cn+ n P i=1 ∆bjiXi+ Gnとなる。行列記号 を用いれば、X = AX + C + BX + G、または、(I− A)X − BX = C + G である。この微分方程式の特解をXi= fi(t)(i = 1, 2, · · · , n)とすれば、一

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般解は、 Xi= c1ki1eλ1t+ c2ki2eλ2t+· · · + +cnkineλnt+ fi(t))(i = 1, 2, · · · , n)で 示される。条件は、各期の外生最終需要の変動経路と、1つの初期値、すなわち 基準時点の産出水準が与えられる。ここで、λiは固有方程式|I − A − λB| = 0 の固有根であり、kijj番目の固有根λjに属する固有ベクトルの第i要素 である。また、ciは初期値によって決まる任意常数である。 (2) 輸出・輸入の取り扱い 輸入の取扱いは、第1に非競争輸入型、第2に競争輸入型、第3に競争・非競 争型に区別される。「競争輸入型」は、輸入される諸財が、これを同種の国産と 同等に扱い、その品目を生産する部門を通じて各産業需要に配分されるとみる。 一方、「非競争輸入型」は、輸入される各財は国産品と別扱いにして、各輸入品 を使用する諸部門の投入として別途直接に計上する。この場合、投入係数は国 産品および輸入品に対して次のように表される。adji= Xjid/Xi(j, I = 1, 2)mji= Mji/Xi(j, I = 1, 2)adjiおよびmjiは、第i産業生産物を1単位生 産するのに必要な第j産業生産物のうち、それぞれ国産品および輸入品の量 である。このmjiを非競争輸入型輸入係数という。ここで、輸入品の定義を、 M1= m11X1+m12X2, M2= m21+m22X2、とし、輸入係数は、産業出荷比率 での加重平均値と考えておこう。オープン・モデルにおける国産品に対する需給 均衡方程式は、X1= ad11X1+ ad12X2+ F1, X2= ad21X1+ ad22X2+ F2である。 ここで、X1= 1/σ{(1 − a22).F1+ ad12F2}X2= 1/σ{ad21F1+ (1− ad11)F2}。 ただし、σ = (1− ad 11)(1− ad22)− ad12ad21である。 輸入品と国産品の競争関係がない場合、mjiは安定的となり、非競争輸入 方式が適切とみなされる。競争輸入型は、すべての中間投入および最終需要に ついて国産品と輸入品の合計のみを表示する方法である。この場合、投入係数 aji= Xji/Xi(j, I = 1, 2)は、第i産業生産物1単位の生産に必要な第j産 業生産物の量(国産品+輸入品)である。第j産業では、国産品と輸入品が同 質で競争的な生産物である場合、このajiが技術的に安定していると考えられ る。競争輸入型は個々の投入量Xjiについて国産品と輸入品の区別を設ける

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必要はなく、各産業について輸入量の総額を示すだけでよいので、産業連関表 の作成を比較的容易に処理できるが、非競争輸入品目が存在する場合の取扱い に難点は避けられない。なお、後述の実証分析で示す通り、広告のスカイライ ン分析を試みると、広告活動のみを対象とするならば、非競争輸入型でおおむ ね効果の予測が可能であると考えられる。 (3) ホースキンス=サイモンの条件の認定 最後に、広告の実証分析において用いる幾つかの数理的条件を吟味しておき たい。いわゆる解の存在条件、いわば逆行列の存在条件は、波及の収束条件と 同値となる。まず生産量決定のオープン・モデル(I− A)X = F が経済学的 に意味をもつためには、最終需要F iとこれに対応する生産量Xiがすべて正 または0でなければならない。任意の非負の最終需要ベクトルF = 0に対し て、(I− A)X = Fが非負の解X= 0をもつための必要十分条件は、(I− A) のすべての主座小行列が正であることである。この条件を満足するとき、Aを 生産的という。 また、投入係数行列A= 0において、P2 j=1 aji < 1、各列の列和が1より小 さいとき、ホースキンス=サイモンの条件が満足される(ソローの条件)。価 値産業連関表では、各列について、中間投入部分の投入係数ajiと付加価値部 分の係数の合計が1に等しいから、この式が成立する。一般に、産業連関分析 は、投入係数の固定性を前提とする。現実に投入係数の不変性が維持されるの は、それが推定された年より1年後程度である。これへの対応としては、2年 分(5年ごとの)の投入係数の補間とその傾向を用いた延長、補間とRAS法 の併用等が用いられる。 (4) 産業連関分析の対象と広告の定義 『2000年産業連関表』(総務省)による広告の国内生産額は、『日本の広告費』 (電通)の広告推計額に比べて49%高く、『特定サービス産業実態調査』(経済 産業省)と比較して17%高い。この違いは次の理由によるものと考える。第1 に「自家広告費等」が推計・加算されているためである。第2に、「産業連関

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表」では、家計外消費支出、対家計民間非営利団体消費支出、一般政府消費支 出等の最終需要項目の広告需要にみられるように、非商業的広告も「広告」の 対象に含まれていることによる。加えて、第3に、「日本の広告」では、広告 主、媒体社、広告会社の広告活動を主に対象にしているが、広告表現を制作す る広告制作会社、その他関連の広告企業の活動も産業連関表には含まれる。た とえば、プロモーション・イベント会社、市場調査事業、広報代理店、メディ ア・レップ、メディアを広告主のために購入するメディア・バイイングの事業 所活動が含まれているからである。したがって広告の国民経済とりわけ生産や 雇用等に与える効果、ひいては広告の社会・経済的意義は、一般に論じられて いるところよりも、きわめて大きいことが推論される。本報告の分析におい て、統合小分類(188部門)コード8511「広告」の規模を基準に使うことの 妥当性は、次の諸点が担保されていると考えることによる。すなわち第1に、 投入構造が類似であるような産業は集計しても差し支えないという「産業活動 の統合基準」。第2に、ある諸産業の各生産物が一定の比率で需要されるよう なときはこれら諸産業を集計しても差し支えないという、産出量の比例性から する「財の統合基準」である。これらの点で、「広告」の集計水準で広告活動 を定義し、その範囲で議論を展開することは、有用であると思われる。

II 産業連関分析による広告の特徴

第1に、2000年産業連関表の逆行列係数に基づくと、広告産業に1単位の 最終需要があると、広告産業自身には最終的に1.0201単位の生産誘発があり、 また、出版・印刷部門には0.2961単位、放送部門に0.2428単位、娯楽サービ ス部門に0.1031単位、その他の対事業所サービス部門に0.0680単位、金融 部門に0.0501単位、電気通信部門に0.0414単位、卸部門に0.0303単位、調 査・情報サービス部門に0.0295単位等々の生産誘発効果が生じ、全体として 列和に相当する、2.2021単位の生産誘発が引き起こされることになる。第2 に、90年代における広告の波及効果の推移を要約すると、波及効果の絶対値 の伸び率は90/2000年比では101.6%で若干増加している。より仔細に逆行列 係数の時系列変化を部門別に検討すると、第1に広告部門は1.0167、1.0202

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で増加。第2に出版・印刷は0.3282、0.2962で減少。第3に放送は0.2452、 0.2428で減少し、波及効果は低下している。第4に娯楽サービスは0.0821、 0.1033で、広告需要の娯楽サービス生産への波及効果は増している(125%)。 以上、広告需要の各産業生産への波及効果が90年と2000年比で大きく増加 している産業部門は、電気通信、その他の対事業所サービス、娯楽サービス、 金融、調査・情報サービス、卸売である。一方、広告需要の出版・印刷部門や 放送部門への生産波及効果は90年代低下した。これらの動きは、オーディエ ンス、広告主、広告会社、媒体会社の連携において、関係性マーケティングが 重視され、加えて統合型マーケティング・コミュニケーションのなかで、広告 活動を明確に位置づけようとする動きと連動している。 第3に、経済・産業部門における広告のポジションを吟味する。当該広告が 属する統合大分類(32部門)のコード29対事業所サービスの影響力指数は、 0.909で平均値よりも低い。しかし統合小分類の広告の影響力指数は1.1216 であり、放送、金融、小売、電力よりも極めて高く、乗用車の1.515、自動車 部品・同付属品の1.315には劣るが、民生用電気機器1.162、産業用ロボット 1.121に匹敵する。これらのことから、産業全体与える生産波及の影響力の点 からみると、広告部門の役割はきわめて大きいことを認識しておく必要があ る。また、波及効果の相対値を表す影響力指数は、90/2000年比で伸び率が 102.7%であり、90年代において広告の経済全体に占める相対的なポジション は上昇していることを示している。 第4に、広告の最終需要別生産誘発依存度と誘発効果について要約する。広 告についての最終需要項目別生産誘発依存度を90年と2000年で比較すると、 広告部門の生産活動において、家計最終消費への依存度は51.5%から53.7%へ と上昇している。もとより広告部門は国内家計消費依存型の性格をもってい るが、90年代においては、その性格を一層強めた。一方、民間投資と家計外 消費支出への依存度は大幅に依存度を低下させている。他方で、政府需要(一 般政府消費支出と公的投資)が11.62%から12.08%へ増加していることから、 90年代において、広告需要は家計消費と政府需要への依存を大きく高め、他 方で、民間投資への依存を低下させた。

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また、広告部門が輸出への依存率を上げていることも留意しておきたい。90 年代においては広告部門の輸出依存度が高まるとともに、その輸出の広告誘発 効果が上昇していることが重要である。また民間投資の広告生産誘発効果も 90/2000比較で上昇している。しかし広告のそれへの依存度は下がっている。 90年代に広告の政府依存度を高めているが、公的投資の誘発効果は平均であ り、まして一般政府消費支出の効果は平均以下の上昇率となっている。このよ うに、輸出と民間投資が広告生産誘発効果を高めたと解釈できる。

III 広告の連関効果

(1) 分析の対象 2006年簡易延長産業連関表の186部門(固定価格評価)に基づいて、投入係 数を計算する。2006年について、広告部門の投入係数の高い順に選ぶと、出版・ 印刷(0.02457)、放送(0.014523)、その他の対事業所サービス(0.014233)、 娯楽サービス(0.014840)、金融(0.04488)、保険(0.02277)、不動産仲介及び 賃貸(0.02022)、電気通信(0.016461)、調査・情報サービス(0.035057)、め ん・パン・菓子類(0.034168)、酒類(0.04032)、その他の紙加工品(0.03410)、 医薬品(0.04785)、石けん・界面活性剤・化粧品(0.1292)などである。 2006年簡易延長産業連関表の186部門に基づいて、逆行列を計算すると、 広告(1.01954)、出版・印刷(0.30238)、卸売(0.02867)、電力(0.02318)、 金融(0.0488)、保険(0.00288)、電気通信(0.03923)、放送(0.2241)、調査・ 情報サービス(0.03329)、娯楽サービス(0.09844)、その他の対事業所サービ ス(0.0670)である。列和が2.1469、影響力指数が1.13272である。広告の 需要が1億円増えると、2億1,469億円の総経済効果をもっている。内訳は、 出版・印刷部門が3,023万円の増加、放送の2,241万円の増加、娯楽サービス 984万円の増加、その他の対事業者サービスの670万円の増加となる。 2006年簡易延長産業連関表の186部門に基づいて、広告の生産誘発係数を計 算すると、輸出が0.01828、家計消費支出が0.01736、国内総固定資本形成(民 間)が0.0148、国内総固定資本形成が0.01010、一般政府消費支出が0.0097、

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家計外消費支出が0.0206である。2006年最終需要項目別の広告生産誘発依存 度は、家計消費支出が51.5%、国内総固定資本形成(民間)が17.0%、輸出が 15.6%、一般政府消費支出が8.0%、国内総固定資本形成(公的)が2.7%、家 計外消費支出が4.3%である。 (2) 広告の価格変動効果 価格は、電波料、広告枠料金、広告制作費、人件費等から構成される。ここ で2点を前提としよう。第1に生産物価格が変化すれば、資本や労働など要 素価格を変化させるが、賃金など本源的生産要素の価格は不変であると想定し ている。第2に生産物1単位当たりの利潤を所与とし、付加価値に影響を与 えないとするので、生産物価格変化の利潤への効果を検討していない。広告価 格の上昇が、投入係数を媒介とするコスト・プッシュ機構を通じて、各産業の 生産品目の価格をどのように変動させるか、その価格の波及効果の分析を試み よう。 名目値による産業連関表では、生産額と投入額とが一致する均衡式が示され る。つまりP = A0P + V = (I− A0)−1V = ((I− A)−1)0V ここで、産出量 体系と価格体系は相対関係にある。広告部門の価格が上昇したとき、全体の産 業部門への価格波及を吟味する。第1部門の価格が上昇したときの、第2、第 3部門への波及効果を見る。 0 @∆P2 ∆P3 1 A = 0 @ 2 41− a22 −a31 −a23 1− a33 3 5 −11 A 2 4a12 a13 3 5 ∆P1= 0 @b12/b11 b13/b11 1 A ∆P1  広告部門の価格が20%上昇するケースを想定しよう。2006年の逆行列計算 によって、めん・パン・菓子類0.89%、酒類0.90%、加工紙0.65%、その他の紙 加工品0.90%、出版・印刷0.72%、医薬品1.17%、石けん・界面活性剤2.9%、 写真感光材料1.67%、タイヤ・チューブ0.51%、事務用機械0.58%、民生用電 気機器0.68%、乗用車0.59%、光学機械0.72%、玩具・運動用品0.67%、電力 0.512%、都市ガス0.51%、小売0.66%、金融1.08%、保険0.61%、不動産仲 介及び賃貸0.516%、航空輸送0.58%、電気通信0.52%、放送0.57%、社会教 育・その他の教育0.55%、調査・情報サービス0.88%、飲食店0.49%、事務用

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品0.57%それぞれ上昇する。2006年において広告価格の上昇のみから大きな 直接の影響を被るのは、石けん・界面活性剤、写真感光材料、医薬品、金融、 調査・情報サービスである。むろん、これらの部門価格の上昇に伴う間接的な 物価上昇は含んでいない。 (3) 広告のスカイライン的特徴 各産業への最終需要に対する国内生産と輸入代替の関係から、経済発展の程 度を考えようという分析に対して、一つの有用な分析図表を提供したのがレオ ンティエフのスカイライン分析である。 まず、第1に産業別に与えられる最終需要のうち、輸出入を除いた国内最終 需要を国内で完全に自給自足するとした場合の直接・間接の総生産額を計算す る。つまり競争輸入型の国産ベースの逆行列表[I− A]−1を利用し、これに国 内最終需要ベクトルを掛ける。第2に現実の輸出需要を完全に国内で生産し た場合の直接・間接の総生産額を、当該逆行列表に輸出ベクトルを掛けて求め る。第3に現実の輸入需要を国内ですべて生産した場合の生産額を、同じよう に逆行列表[I− A]−1の後から輸入ベクトルを掛けることによって求める。 自給自足水準に輸出を上乗せし輸入を控除した残りの縦軸の水準は、現在 の各産業の自給率である。産業部門ごとの自給率と輸出入率を比較する指標 である。最終需要を国内最終需要(Fd)、輸出(Fe)、輸入(Fm)に分ける。 X = (I− A)−1F = (I− A)−1(Fd+ Fe− Fm)。前述の方法を説明すると、 Xd= (I− A)−1FdXe= (I− A)−1FeXm= (I− A)−1Fmとなる。ここで 自給率をs、輸出率をe、輸入率をmとすれば、s = X/Xd, e = Xe/Xd, m = Xm/Xdである。 2006年簡易延長産業連関表(2000年基準)を用いて、186部門取引額表で スカイライン分析を行った。主要な産業部門の自給率、輸出率、輸入率が表1 に示されている。第1に自給率からみると、広告は調査・情報サービス、娯楽 サービス、放送、出版・印刷部門と似た特徴をもち、100を超えていない。つ まり輸入率が輸出率を上回っている。第2に第三次部門は輸出入率ともに小さ いが、広告については比較的高い。第三次産業のなかで、輸入率が高いのは、

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表 1  スカイライン分析による広告の特徴 産 業 部 門 自給率(%) 輸出率(%) 輸入率(%) 広   告(8511) 97.8 18.4 20.6 調査・情報サービス(8512) 99.2 8.7 9.4 その他対事業所サービス 98.8 12.7 13.8 娯楽サービス(8611) 98.5 2.1 3.6 放   送(7321) 98.5 12.4 14.0 電 気 通 信(7312) 100.4 7.3 6.9 金   融(6211) 102.6 19.7 17.1 卸   売(6111) 114.2 25.6 11.4 小   売(6112) 100.1 1.8 1.7 時   計(3712) 58.0 25.6 67.6 乗 用 車(3511) 204.9 115.2 10.2 自動車部品・同附属品(3541) 202.9 118.6 15.7 半導体素子・集積回路(3341) 121.2 158.9 137.7 民生用電子機器(3211) 139.3 73.1 33.8 出版・印刷(1911) 99.5 14.9 15.4 衣   服(1521) 38.1 5.7 67.6 順に、港湾運送(136.8%)、航空輸送(46.3%)、企業内研究開発(37.5%)、機 械修理(26.9)、広告(20.6)である。第3に広告の輸入率は金融や放送に比 べて高い点は、輸入競争圧力を見るうえで大切な点である。 (4) 広告生産変動の要因とその特徴

基本の均衡産出高モデルはX = [I− (I − ˆM )A]−1[(I− ˆM )Y + E]Xは生 産額、Mは輸入額、Eは輸出額、Y は国内最終需要額、Aは投入係数、Iは 単位行列である。ここで逆行列係数[I− (I − ˆM )A]−1を生産技術構造とよび Bで示し、国産品に対する最終需要である[(I− ˆM )Y ] + EF で表すと、 生産誘発額は、生産技術構造Bに国産品に対する最終需要額を乗じることに よって得られる。X = BF 今、基準年を0、比較年をtとすると、生産額の変動は∆X = Xt− X0= (B0+ ∆B)(F0+ ∆F )− B0F0= B0∆F + ∆BF0+ ∆B∆Fである。 第1項は最終需要の変化による変動分、第2項は生産技術構造の変化、す なわち逆行列の変化による変動分、第3項はこれら2つの要因が同時に変化

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したことによる変動分(交絡項)である。 さらに最終需要の変化は∆F = ce0∆φ + c0∆ˆ0+ ∆cˆe0φ0である。 この式の第1項は最終需要の規模の変化による変動分、第2項は最終需要 項目間(列和)の構成の変化による変動分、第3項は最終需要項目別の品目間 (財・サービス)の構成変化による変動分である。また逆行列の変化は∆B = 投入係数変化分+輸入係数変化分となる。この結果、∆X =生産変動=最終 需要の規模の変化+最終需要構成の変化+コンバーター(最終需要項目別の 品目間(剤・サービス)の構成)の変化+投入係数の変化+輸入係数の変化+ 交絡項(以上の要因が2つ以上同時に変化したことによる変動分)、となる。 表2は90–95–2000年の接続産業連関表によって、1990年から2000年(実 質)までの変動要因依存度を計測した主要部門の結果である。 表 2  生産変動要因の依存度 産 業 部 門 自給率(%) 輸出率(%) 輸入率(%) 広   告(8511) 97.8 18.4 20.6 調査・情報サービス(8512) 99.2 8.7 9.4 その他対事業所サービス 98.8 12.7 13.8 娯楽サービス(8611) 98.5 2.1 3.6 放   送(7321) 98.5 12.4 14.0 電 気 通 信(7312) 100.4 7.3 6.9 金   融(6211) 102.6 19.7 17.1 卸   売(6111) 114.2 25.6 11.4 小   売(6112) 100.1 1.8 1.7 時   計(3712) 58.0 25.6 67.6 乗 用 車(3511) 204.9 115.2 10.2 自動車部品・同附属品(3541) 202.9 118.6 15.7 半導体素子・集積回路(3341) 121.2 158.9 137.7 民生用電子機器(3211) 139.3 73.1 33.8 出版・印刷(1911) 99.5 14.9 15.4 衣   服(1521) 38.1 5.7 67.6 第1に広告を含む対事業所サービスの国内生産額の変化を、産業連関表の均 衡産出高モデルをもとにして、国産品の「生産技術構造の変化」「最終需要の規 模の変化」「最終需要の項目間構成の変化」「最終需要の商品構成の変化」に要 因分析してみる。90年から2000年において、国内生産額の増加に寄与したも

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のは、最終需要の規模の変化(40.6%)、最終需要の商品構成の変化(40.2%)、 生産技術構造の変化(36%)、輸入係数の変化(26.1%)である。第2に生産 変動要因の依存度のパターンにおいて、広告を含む対事業所サービスと同じ変 化を示したのは、商業である。需要構成の変化が国内生産額を引き下げる形で 変動した。一方、通信・放送は変動要因すべてが国内生産額を増加させるもの となっている。印刷・出版は国内生産額の変化に総需要の変化が大きく寄与し ている。 (5) 広告プロジェクトの最終需要波及効果 2000年の産業連関表から生産額に占める雇用所得比率を計算し、所得に占 める消費性向から各産業部門の需要増加(減少)が、生産の1次効果、2次効 果を経て、国民経済への最終需要波及効果をシミュレーションしてみよう。ま ず広告(対事業所サービス)の最終需要(民間消費支出)が100億増加(減 少)するケースを第1ケースとする。広告の直接効果(1次生産効果)は114、 2次効果は3、収束段階では4となる。すなわち、広告の民間消費支出が昨年 に比べて、100億減少すると、広告の最終需要は118億円減少する。加えて経 済全体については、広告の総波及効果は215億円で、この相当額、最終需要 を減少させる。広告の最終需要変化により影響を受ける主たる産業は、商業が 11(億円)、金融保険10、不動産9、通信・放送8、印刷・出版6、対個人サー ビス6、自動車6、食料品4の生産増加(減少)が生じる。 第2ケースは公共事業(土木)の公的資本形成(公的)需要が100億円増 加(減少)した場合である。土木の1次効果は100億円、対事業所サービス生 産が16、セメント・同製品が8、商業9、金属製品が6、金融・保険が5、鉄 鋼製品4、陸上運輸4、通信・放送4、石油製品2、非金属2億円の生産増加 (減少)等である。最終的に公共事業の変化、100億円の減少で、大きな波及 効果は、対事業所サービスが21、商業17、不動産10、金融・保険10、セメ ント・同製品8、金属7、陸上輸送6、通信・放送6、対個人サービス6億円 減少する。したがって公共投資(土木)の最終需要100億円の変化による総波 及効果は、246億円である。

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第3のケースは、自動車部門の総固定資本形成(民間)が100億円の需要 増加(減少)する場合である。自動車需要の100億円の需要変化は、自動車生 産の総効果が173である。自動車需要変化に伴い、大きな波及効果を受ける 産業をみると、商業17、対事業所サービス14、教育・研究9、その他製造業 9、鉄鋼製品9、不動産8、金融・保険7、重電機器等6、対個人サービス5億 円等の変化が生じる。自動車部門の総固定資本形成(民間)が100億円の需要 変化による総波及効果は、316億円である。このように広告需要の変化による 各産業部門への生産波及効果の大きさは、土木公共事業の公的投資の生産波及 効果に相当すると考えられる。 (6) マクロ経済モデルと広告の経済効果 経済現象ではいくつかの経済変数がお互いに直接、間接に何らかの因果関 係をもって結びついている。複数個の因果関係に注目しつつ、マクロモデルを 組み立てて、経済データを用いて、複数の変数の動きを同時に説明する連立方 程式モデルを推定する。マクロ経済モデルのデザインと作成手順を前提にして (桑原(2008)を参照されたい。)、ここでは、広告の産業連関分析による経済 効果をシミュレーションする。当該マクロモデルは数36本からなる標準的な 経済モデルであるが、以下では、紙面の関係から、広告の効果にとって有用な 推定式のみを選択し、再推定し、分析する。2006年簡易産業連関表との結合 のためには、最終需要項目別生産誘発係数を利用することが有益である。①民 間消費支出関数、②民間企業設備投資関数、③輸出入関数である。OLS推定、 1980年∼2002年のマクロデータ値を利用する。(民間在庫投資関数、民間住 宅関数、民間法人企業所得関数、雇用関数、市中金利関数、マネーサプライ関 数等をすでに推定しているが、産業連関との関係で、広告効果の大方の方向性 を議論するために説明を省く。) 民間消費支出関数は、CP=民間消費支出関数、NDP=名目可処分所得PC= 物価水準、CP1=1期前の消費支出、DOT(PC)=インフレ率として、

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CP = (0.82)   8970.22 + (2.26)   34.54(CDUM)NDP/PC + (7.85)   0.895(CP1) (−3.45)−867.89(DOT(PC))   Rˆ2 = 0.998, SD = 2453.67, DW = 1.40 民間消費関数、いわゆる家計消費関数の基本形はケインズ型の絶対所得仮説 に基づき、実質可処分所得の関数である。1期前の消費支出は消費の習慣効果 を表し、消費の下方硬直性を示し、ラチェット効果である。また物価変動要因 としてインフレ率を考慮している。 次の民間投資関数は、 PI = (3.67)   89567.13 + (1.89)   8.904(EI− TA)/PC − (−3.56)   677.34(INT−PC) (−5.78)   78659.2(LOG(GDP)/KP) + (2.98)   18865.56(DUM88)   Rˆ2 = 0.945, SD = 5643.28, DW = 1.49 民間企業投資関数(PI)は加速度型の利潤関数に基づき、実質金利要因を加

えている。EI=民間企業法人所得、TA=法人税等、INT=全国銀行貸出平均金

利、GDP=国民総生産、KP=民間資本ストック、である。 輸出関数(EX)は所得効果と価格効果で説明する需要関数である。 EX= (1.22)   17255.67+ (2.78)   1.456(TR)+ (9.01)   0.9867(EPS1) (−2.32)   5631.22(DUM)   Rˆ2= 0.975, SD = 1897.56, DW = 1.67 TR=実質世界貿易額、EPS1=1期前の財貨・サービス輸出、である。 2006年簡易延長産業連関表によって、広告の最終需要項目別の広告生産誘 発依存度を求めると、家計消費支出が51.5%、国内総固定資本形成(民間)が 17.0%、輸出が15.6%である。これら3項目で広告生産依存度の約85%を説 明できる。 内閣府の2008年12月の報告によれば、2008年10月∼12月期の実質国内 総生産(GDP)成長率が前期比年率マイナス12.7%である。手続きは次の通 りである。まず当該第3四半期の実質値を個人消費、設備投資、輸出につい

(16)

て年率換算し、前述のマクロモデルで推定した民間消費支出、民間企業投資関 数、輸出関数で概要値を推定する。輸出関数については構造変化が生じている 可能性が高いが、ダミーに係る数値が公表されていないので従前の推定式を利 用する。 2006年簡易延長産業連関表に基づく技術係数、輸出・輸入係数等の経済構 造が維持されるとした場合の広告生産に与える効果をシミュレーションする。 最初に、マイナスの経済成長ないし最終需要項目別の規模の減少が広告生産に 与える影響を検討する。次いでその広告生産の縮小が各産業部門への需要に影 響を与えることになる。 個人消費は資産減少効果を除いても約15%減少、設備投資は20%の減少、 輸出は45%の減少が推定値から読み取れる。民間消費支出の広告減少効果は 0.69%、民間投資の広告減少効果は0.30%、輸出の広告減少効果は0.82%であ る。この3効果のウエイトは84%であるから、全効果は約9.82%である。 以上、内閣府の2008年第3四半期のマクロ統計値から、この期間の景気動 向が経常的に推移すると仮定し、資産減少効果や政府支出抑制効果、資本ス トック低下効果、雇用減少効果、国際市場でのリセッション等を考慮すること なく、純粋に、最終需要項目の3項目のみの減少効果を取り上げたとしても、 広告活動ないし出荷額は、年率約10%で減少することが予想される。

IV 広告と排出権および産業組織

つぎに排出権(環境権)取引制度を、「政府行動と産業組織」のフレームワー クで、資源配分効率の観点から分析してみよう。最初に、n個の企業が参加す る譲渡可能な許可書の市場を考えよう。各企業には固定の許可書ストック量A の一部が当初に賦与される。当該許可書のストック量は規制機関が設定する環 境目標によって決められる。企業は排出量eiをカバーするために許可書aiを 購入する。企業は不正を行なったり、与えられた許可書のストックを越えて排 出するかもしれない。そのとき、違反vi= ei− aiが生じる。 企業が不正を行なった場合、企業に特定の罰金関数は、監査され違反と認定さ れた確率βi(vi)から構成される。ここでβi> 0βi0≥ 0βi00(0) > 0である。

(17)

罰金額は違反の程度F i(vi)に依存する。ただし、F i0> 0F i00≥ 0である。

vi≤ 0のときFi(vi) = 0である。ここでは、予想限界罰金が一定または逓増の

罰則表のケースを考察しよう。許可書の保有は、産出物の価値に依存する。そこ で、一定の排出量のもとでの企業の最適利潤はBi(ei) = max GiQi−Ci(Qi, ei)

である。ここでGii企業の産出物Qiの価格である。Ciは費用である。便 益(利潤)関数は、排出量に関して厳密に凹と仮定する。Bi0 > 0Bi00< 0 である。 そこで、第1企業を支配的企業とし、第2企業のなかでもI群の企業を環 境基準を遵守しない企業、K = n− I群の企業を同基準を遵守する企業とと想 定しよう。なお、すべての企業は危険中立的である。競争的周辺部の典型的企 業は、完全競争条件のもとで、排出量と許可書保有量の水準を決定する。当該 企業は、均衡許可書価格Pi企業の当初の許可書賦存量ai0のとき、vi≥ 0 のもとでmax Bi(ei)− P · (aI− a0i)− βi(vi)F i(vi)を選択する。

排出量が正であるケースに関心があるので、クーン=タッカー条件は Bi0− βi0F i− βiF i0+ λ = 0 (1) −P + βi0F i + β iF i0− λ ≤ 0 (2) vi≥ 0 (3) である。なお、ai≥ 0ai· ∂ζ/∂aIλ≥ 0λ· ∂ζ/∂λ = 0である。 譲渡可能許可書の市場において、企業が市場支配力を行使するとき、当初の 許可書の保有量の配分は、許可書の均衡価格の変化を通じて、環境基準を遵守 する企業数に影響を与える。 (1) 遵守企業の市場行動 周辺的競争部の企業が、環境基準を遵守することが最適であると認識すると きの十分条件は、vI= 0のとき、(2)式が等号であることから、 −P + βi(0)F i0(0)− λ = 0 (4) である。したがって−P + βi(0)F i0(0)が非負を必要とするので、企業が基準 を遵守する必要条件はP≤ βi(0)F i0(0)であり、一方、遵守しない十分条件は

(18)

P > βi(0)F i0(0)となる。競争的周辺部の企業は、ゼロの違反水準で、許可書 の均衡価格が企業が支払う予想限界罰金を超えるならば、環境基準を遵守しな い。すなわち、競争的周辺部の企業が環境基準を遵守するか否かは、各企業が 固定価格に直面しているので、当初の許可書の配分には関係しない。そこで遵 守の決定に影響を与えるのは、許可書の均衡価格であって、これは支配的企業 の行動に依存する。遵守企業が保有する最終の許可書保有量は、ak∗ = Bk0−1 である。やはり遵守企業にとって、許可書の最適な最終保有量の変化は、初期 保有量には関係しない。それは、支配的企業が操作可能な許可書の価格に依存 することになる。 (2) 非遵守企業の市場行動 非遵守企業の排出量と許可書保有の最適選択の条件は、制約が非拘束的であ るときを考慮して、P = B0(e∗i) = βi0(v∗i)F i(v∗i) + βi(v∗i)F i0(v∗i)である。こ

こで当初の許可書の賦存量を、競争的周辺部の企業から市場支配力をもつ企業 に与えるケースを考察しよう。非遵守企業の場合、当初の許可書の配分が最適 違反数にどのような影響を与えるかは、∂vi∗/∂a 0 i = (∂vi∗/∂P )(∂P/∂a 0 i)の符 号関係による。

(∂e∗i/∂P ) =−(βi00F i + 2βi0F i0+ βiF i00)/(|H|) < 0

および(∂a∗i/∂P ) = (|H1|)/(|H|) < 0

から、∂vi∗/∂P = (∂e∗i/∂P )− (∂a∗i/∂P ) = (−Bi0)/(|H|) > 0

である。ただし、|H| = −Bi00(βi00F i+2βi0F i0+βiF i00) > 0、さらに|H

1| < 0 である。 したがって支配的企業の当初の賦存量の変化は、すべての企業の遵守水準に 影響をおよぼす。影響の方向は(∂P/∂a0 i)の符号に依ることになる。そこで、 市場均衡では、L = a∗i + Σ I i=2a∗i + Σ∗k=I+1が必要である。 ここで∆ = L− a1とすれば、支配的企業が利潤を最大にする許可書の均衡 価格は、p0< 0およびp00≥ 0のとき、P = p(∆∗)である。それゆえ (∂P/∂a0i) =−p0· (∂a∗1/∂a

0 1)

(19)

である。支配的企業の当初の保有量の変化が、許可書の均衡価格に与える効果 は、当初の許可書の配分の変化によって影響される支配的企業の最適な最終的 許可書需要(∂a∗1/∂a01)に依存する。 (3) 支配的企業の市場行動 支配的企業は、次の意味で十分な市場支配力を持っていると想定しよう。す なわち、価格が低下しても、独占的企業である売い手は即座に純買い手にはス イッチしないこと。さらに、µ = a01− a1は正であることが支配的企業が独占 である条件となる。そこで主導的(支配的)企業の行動は、vi≥ 0のもとで maxBi(ei)− P · (∆)µ − βi(vi)F i(vi)である。 すでに述べた競争的周辺部の企業と同様の方法によると、条件式は、 B01− β01F1− β1F 10+ λ = 0 (5) −p0µ− p(∆) + β0 1F1+ β1F10− λ ≤ 0 (6) v1≥ 0 (7) である。なお、a1 ≥ 0a1 · (∂ζ/∂a1); λ ≥ 0λ· (∂ζ/∂λ) = 0である。 市場支配力をもつ企業が、遵守することが最適であると認識する必要条件は −p0µ− p(∆) + β 1(0)F10(0)≥ 0である。仮に支配的企業が独占であるならば、 許可書の売却による限界収入が違反水準ゼロのときの限界予想罰金以下である ことを必要とする。ここで、支配的企業が環境基準の遵守企業であるとすれば、 B10− p0µ− p(∆) = 0より(∂a∗1/∂a01) = p0/(B100+ p00µ + 2p0) > 0である。 したがって、市場支配力を持つ企業が環境基準を遵守するとき、競争的周辺 部から市場支配力をもつ企業へ許可書を再配分することは、市場全体において 違反数の増加を導く。これは、競争的周辺部の非遵守企業が、許可書の均衡価 格の上昇につれて違反数が高まることによるものである。さらに、均衡価格の 上昇は、以前、遵守的であった競争的周辺部の企業でさえも、非遵守企業に変 化させることになる。 つぎに、市場支配力をもつ主導的企業が非遵守の行動をとるとき、当初の許 可書賦存量の違反量への影響をみてみよう。

(20)

∂v1∗ /∂a01= (−B00p0)/(|H|) < 0 ∂e1∗ /∂a01> 0 ∂a1∗ /∂a01> 0 である(当該|H|は、周辺的競争部のケースとは異なることに留意。)。 以上から、支配的企業が非遵守の企業であるとき、当該企業の違反量は当初 の許可書の賦存量につれて減少する。一方、当該企業の排出量および許可書保 有量は賦存量につれて増加する。モデル分析から、経済政策上のインプリケー ションとして、次の3点を示すことができよう。最初に、規制・審査等の政策 当局は、価格設定力のない企業が直面する政策パラメータを操作するよりも、 価格設定力のある企業の政策パラメータを変化させる方が、産業全体の産出量 および遵守行動に影響を与えることができる。第2に、主導的企業と競争的周 辺部から構成される産業組織の場合、政策当局は戦略的に当初の許可書賦存量 を利用することによって、均衡価格を通じて、主導的企業の遵守確率を高める ことができる。すなわち、当初の許可書の配分システムは、暗黙の強制メカニ ズムとして働き得る。第3に、監査の頻度の増加と、主導的企業の当初の許可 書賦存量の減少は、市場全体の排出量を低下させ、損害等のコストを減らすの で、この両者は補完的な政策手段として利用することが有益である。

結び

本稿では、第1に産業連関分析のフレームワークを整理し、広告活動の定 義と範囲を吟味した。第2に投入係数、逆行列係数、影響力係数、生産誘発係 数、雇用マトリックス等の視点から、我が国の90年∼2000年までの広告活動 の産業連関的特徴と変容を抽出した。第3に簡易産業連関表を用いて、広告の 経済全体への生産波及効果を計測した。さらに広告価格の変動に伴う物価への 影響分析、スカイライン分析による広告部門の国際的競争圧力の程度の検討、 広告を含む対事業所サービス部門の生産変動要因分析、広告プロジェクトと公 共投資の最終需要波及分析の比較研究、マクロ経済モデルに基づく広告需要の 予測等を試みた。

(21)

広告の研究は、産業組織論やマーケティング論からの研究に加えて、産業連 関論や経済連関からの分析によって厚みを増す必要があるように思われる。今 後の中長期の経済状態を思慮すれば、広告の経済・社会的意義は、内容・規模 において従来考えられている以上に深く、かつ大きいように考えられる。

参考文献

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Mitchell, B.M. and Vogelsang, I.(1991), Telecommunications Pricing:Theory and Practice, Cambridge Univ.(桑原秀史・直江重彦・山内弘隆『電気通信の 経済学』文真堂)。

Petty, R.E. and Cacioppo, J.T.(1986), Communication and Persuasion, Springer-Verlag. 桑原秀史(1988)『小売市場の経済分析』千倉書房。 桑原秀史(2008)『公共料金の経済学─規制改革と競争政策─』有斐閣。 高嶋克義・桑原秀史(2008)『現代マーケティング論』有斐閣。 斎藤光雄(1973)『一般均衡と価格』創文社。 宮沢健一編(1992)『医療と福祉の産業連関』東洋経済新報社。 田村正紀編(2002)『金融リテール改革』千倉書房。

表 1  スカイライン分析による広告の特徴 産 業 部 門 自給率(%) 輸出率(%) 輸入率(%) 広   告(8511) 97.8 18.4 20.6 調査・情報サービス(8512) 99.2 8.7 9.4 その他対事業所サービス 98.8 12.7 13.8 娯楽サービス(8611) 98.5 2.1 3.6 放   送(7321) 98.5 12.4 14.0 電 気 通 信(7312) 100.4 7.3 6.9 金   融(6211) 102.6 19.7 17.1 卸   売(6111) 1

参照

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