医療的ケアが必要な子どもの養育者(家族)の療育困難感に関する研究
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(2) Ⅰ.報告概要 在 宅 医 療 研 究 の 助 成 を 受 け て 、医 療 的 ケ ア が 必 要 な 子 ど も の 養 育 者( 家 族 )を 対 象 に 、 療育困難感に関する事例研究を行った。. Ⅱ.医療的ケアが必要な子どもの養育者の療育困難感に関する事例研究 1.目的 本 研 究 は 、医 療 的 ケ ア を 必 要 と す る 子 ど も の 養 育 者 の 、24 時 間 365 日 途 切 れ る こ と の ない医療的ケアと養育の緊張感、育児不安定を明らかにする。それらから、在宅で医療 的ケアを必要とする子どもの養育者の支援のあり方を探る。. 2.方法 1 )対 象 者:現 在 、在 宅 に お い て 医 療 的 ケ ア が 必 要 な 子 ど も を 養 育 し て い る 養 育 者 で 、 本研究の説明を受けることの承諾を取れた養育者を候補者とした。当院通院時に 研 究 者 よ り 候 補 者 に 紙 面 と 口 頭 に て 研 究 協 力 の 趣 旨 を 説 明 し 、同 意 を 得 ら れ た 養 育者を対象とした。 2)研究方法:質的・量的研究 3 ) 研 究 期 間 : 2016 年 4 月 25 日 ~ 2017 年 3 月 末 4)データ収集方法: (1)面接法 面接は医療的ケアが必要な子どもを在宅で養育するにあたって困難に感じる出来 ご と を イ ン タ ビ ュ ー ガ イ ド に そ っ て 個 人 面 接 を 行 う 。面 接 の 場 所 は 、プ ラ イ バ シ ー が 保 持 で き る 場 所 と し た 。 対 象 者 に よ っ て 面 接 場 所 を 同 一 場 所 に 限 定 せ ず 、生 活 リ ズ ム に 沿 っ て 、そ の 都 度 療 育 送 迎 時 の 病 院 内 の 個 室 、病 院 外 来 近 く の 個 室 な ど か ら プ ラ イ バ シ ー 保 持 を 考 慮 し た 。面 接 は 、事 前 に 面 接 日 の 約 束 を 行 い 計 画 的 に行った。 (2)質問紙調査 調査内容は、対象の属性項目、妊娠経過・分娩経過・産褥経過・育児経過の基礎 項 目 現 在 の 医 療 的 ケ ア の 内 容 及 び 利 用 サ ー ビ ス 等 に 関 す る 項 目 、 PSI-SF、 慢 性 蓄 積 疲 労 に 関 す る 既 存 の 尺 度 を 用 い た 調 査 、 HRV 測 定 検 査 か ら 構 成 し た 。 5)分析方法:面接データは逐語録から質的に整理・分析を行い、質問紙調査は統計 解析を行う。いずれも質的・量的の分析には各専門分野の学識経験 者のスーパーバイズを受けながら行う。 6)倫理的配慮:本研究において、事前に独立行政法人国立病院機構三重病院の倫理 審査委員会に申請し、4月に承認を受けた。その後、研究参加候補者 に対し、研究目的・方法に関する説明を文書及び口頭にて行い、同意 が得られた者を協力者とした。倫理的配慮として、研究参加の自由意.
(3) 思が守られていること、面接はプライバシーの保たれた空間又は、個 室にて行う事、データの匿名化、面接内容の録音、筆記についても説 明し、同意を得た。さらにいかなる時点であっても研究参加を途中辞 退できること、及び途中辞退により不利益が生じることはないことを 研究参加者に文書および口頭にて説明を行った。. 3.結果および考察 1)対象者の概要および面接・調査月 対 象 者 の 概 要 は 、 表 1 に 示 す よ う に 母 親 13 名 で あ る 。 年 齢 は 、 29 歳 ~ 46 歳 、 平 均 36.9 歳 で あ っ た 。子 ど も の 医 療 的 な ケ ア は 、在 宅 酸 素 療 法 7 名 、人 工 呼 吸 換 気 6 名 、気 管 切 開 4 名 、経 管 栄 養 3 名 、胃 瘻 10 名 、吸 引 12 名 、導 尿 2 名 で あ っ た。. 表 1 NO. 対象者の概要および面接・調査月 養育者. 疾患. 子 ども. 面接月. 調査月. 5月. 5月. 胃瘻. 5月. 5月. 脳性麻痺. 酸 素 療 法 ・吸 引 ・胃 瘻. 6月. 6月. 先天性脳腫瘍. 呼 吸 器 ・酸 素 療 法 ・気 管 切 開 ・ 6月. 6月. 7月. 7月. 胃 瘻 ・吸 引. 7月. 7月. 喉頭軟化症 1. 母. 29 歳. 医 療 的 ケアの内 容 呼 吸 器 (鼻 マスク)・酸 素 療 法 ・. 4歳 吸 引 ・胃 瘻 結節性硬化症. 2. 母. 47 歳. 5歳 点 頭 てんかん. 3. 母. 39 歳. 7歳. 4. 母. 43 歳. 4歳 吸 引 ・吸 入 ・胃 瘻. 5. 母. 29 歳. ミトコンドリア脳 筋 症. 呼 吸 器 ・酸 素 療 法 ・気 管 切 開 ・. てんかん. 吸 引 ・経 管 栄 養 ・導 尿. 10 歳 化膿性髄膜炎後遺. 6. 母. 33 歳. 5歳 症. 7. 母. 29 歳. 5歳. ファロー四 徴 症. 胃 瘻 ・吸 引. 7月. 7月. 8. 母. 38 歳. 6歳. 脳性麻痺. 呼 吸 器 ・気 管 切 開 ・吸 引 ・胃 瘻. 8月. 8月. 低酸素脳症. 呼 吸 器 ・気 管 切 開 ・吸 引 ・吸. 9. 母. 32 歳. 5歳. 9月. 6月. てんかん. 入 ・胃 瘻 ・導 尿. 10. 母. 46 歳. 6歳. 心室中隔欠損症. 酸 素 療 法 ・吸 引 ・胃 瘻. 9月. 6月. 11. 母. 41 歳. 3歳. 大田原症候群. 吸 引 ・経 管 栄 養. 9月. 5月. 劇症型 A 型連鎖球. 呼 吸 器 (鼻 マスク)・酸 素 療 法 ・. 12. 母. 31 歳. 3歳. 12 月. 3月. 菌感染症. 吸 引 ・吸 入 ・経 管 栄 養. てんかん. 酸 素 療 法 ・吸 引 ・胃 瘻. 1月. 3月. 13. 母. 43 歳. 11 歳.
(4) 2 ) PSI-SF の 結 果 PSI-SF 結 果 ( 表 2 ) で は 、 子 ど も の 側 面 、 親 の 側 面 、 総 点 す べ て で 80 パ ー セ ン タ イ ル を 越 え て い た 。 ス ト レ ス の 原 因 と し て 、「 夜 自 分 が 寝 て い る 間 に 子 ど も に 何 か あ っ た ら ど う し よ う と 思 う と ぐ っ す り 眠 れ な い 」、「 自 分 が 行 き た い と き に 外 出 が で き な い 」、「 子 ど も の こ と で は ス ト レ ス は 感 じ な い が 他 の こ と で い ろいろある」という訴えがきかれた。. 表2. PSI-SF. 13 名 の 平 均 パーセンタイル. スコア. 5. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 90. 95. 子 どもの側 面. 24.2. 13. 14. 16. 18. 19. 20. 21. 22. 24. 26. 27. 親 の側 面. 25.5. 12. 14. 16. 17. 19. 20. 21. 23. 25. 28. 30. 総点. 49.7. 27. 30. 33. 36. 39. 41. 43. 44. 47. 51. 54. 3)慢性蓄積疲労の結果 蓄積疲労の結果(表3、図1)では、8 項目すべてで一般女性の平均値を上回 っ て い た 。特 に 、 「 一 般 的 疲 労 感 」、 「 身 体 不 調 」、 「 不 安 感 」、 「 イ ラ イ ラ の 状 態 」は 平 均 よ り 10 点 以 上 高 か っ た 。 「夜間ぐっすり眠れないことが慢性的な疲労感に繋 が っ て い る 」、「 子 ど も に 何 か あ っ た ら ど う し た ら い い の だ ろ う と い う 漠 然 と し た 不安がある」と訴える養育者もいた。. 表3. 慢 性 蓄 積 疲 労 ( CFSI). 女 性 13 名 の平 均 一般女性の 平均. 13 名 の 平 均. NF1. NF2-1. NF2-2. NF3. NF4. NF5-1. NF5-2. NF6. 気力の. 一般的. 身体不調. イライラの. 労働意欲. 不安感. 抑 うつ. 慢性疲労. 減退. 疲労感. 状態. の低 下. 25.6. 40.8. 29.7. 41.8. 25.6. 35.0. 30.8. 43.3. 20.3. 28.3. 15.4. 19.4. 18.7. 18.8. 23.4. 33.6. 慢性蓄積疲労(CFSI) イライラの 状態 100.00 一般的疲 抑うつ 労感 50.00 慢性疲労 不安感 0.00 徴候 気力の減 退. 身体不調 労働意欲 の低下. 図1. 徴候. 女性13名の平均 一般女性平均. 慢 性 蓄 積 疲 労 ( CFSI). 13 名 の 平 均.
(5) 4)面接(インタビュー)の結果 医療的ケアを必要とする子どもの養育者は、面接調査により以下の5つの困難 を体験していることが明らかとなった。 (1)医療的ケアを必要とする子どもの養育者は、<医療的ケアを必要とするこども とその養育者としての自分を受け入れることの難しさ>を経験しながら、<子ど もの病状や体調の変化に関する不安>や<これから先の子どもの状態の見通し がつかないこと>に対して、<子どもの状態を安定させるためのケアの難しさ> を抱えながら試行錯誤し、休みなく子どもの世話を行っていた。 (2)<現在の養育者自身の身体や精神の不調>を感じるために、<長期的な養育者 自身の身体や精神の不調>を危惧しており、現在だけでなく将来においても<子 どもを預けられる人や場所がないこと>や<社会資源に関する情報を収集する ことや利用すること>に困難を経験するとともに、背景は多様であるが、<経済 的な不安>を感じている者も多かった。 (3)医療的ケアを必要とする子どもの世話に、他者の手を借りなければならないこ とによる<周囲や子ども本人への申し訳なさ>を感じている反面、手を借りるこ とができた場合であっても、<子ども本人の健康状態や医療的ケアに関する気が かり>を感じるといった、相反するような感情を持ち合わせていることも窺えた。 (4)子どもを取り巻く<専門職者の連携がうまくいかないこと>や、就学を控えた 子どもも多かったことから<教育を受けることの難しさ>を訴える養育者もい た。 (5)医療的ケアを必要とする子どもの養育者としての<自分の考えを理解してもら えない>ことや、<きょうだいに対する気がかりや申し訳なさ>といった感情を 抱える者もいた。. 5)結果および考察 医 療 的 な ケ ア が 必 要 な 子 ど も の 養 育 者 の PSI-SF 結 果 で は 、 子 ど も の 側 面 、 親 の 側 面 、 総 点 す べ て で 80 パ ー セ ン タ イ ル を 越 え て お り 、 育 児 ス ト レ ス が 高 い こ と が 明らかになった。また、慢性蓄積疲労の結果では、8項目すべてにおいて一般女性 の 平 均 値 を 上 回 っ て い た 。 特 に 「 一 般 的 疲 労 感 」、「 身 体 不 調 」、「 不 安 感 」、「 イ ラ イ ラ の 状 態 」は 平 均 よ り 10 点 以 上 高 く 、身 体 的 側 面 の 負 荷 に 加 え 、精 神 的 側 面 や 社 会 的側面でも負荷を感じていることが明らかとなった。 インタビューでは、<医療的ケアを必要とするこどもとその養育者としての自分 を受け入れることの難しさ><子どもの病状や体調の変化に関する不安><これ から先の子どもの状態の見通しがつかないこと><子どもの状態を安定させるた めのケアの難しさ><現在の養育者自身の身体や精神の不調><長期的な養育者 自身の身体や精神の不調><子どもを預けられる人や場所がないこと><社会資.
(6) 源に関する情報を収集することや利用すること><経済的な不安><周囲や子ど も本人への申し訳なさ><子ども本人の健康状態や医療的ケアに関する気がかり ><専門職者の連携がうまくいかないこと><教育を受けることの難しさ><自 分の考えを理解してもらえない><きょうだいに対する気がかりや申し訳なさ> といったさまざまな困難感を抱えていることが明らかとなった。 在宅で医療的ケアが必要な子どもを育てる養育者への支援は、子どもの体調管理 に 関 す る 支 援 や 、退 院 後 の 子 ど も の 成 長 や 生 活 状 況 の 変 化 に 応 じ た 支 援 な ど 、家 族・ 社会的背景との関連を含めた状況を把握した長期的・継続的な支援が必要であると 思われる。そのためには、医療・保健・福祉・教育等が連携し、個々の事例を通し て関係機関との情報共有や、課題の共通認識を図っていく必要がある。. 4.まとめ 在宅で医療的ケアが必要な子どもの養育者を対象に、養育困難感の分析を行った。養 育 者 は 、医 療 的 ケ ア や 養 育 に 疲 労 困 憊 し 、精 神 的 に も 先 が 見 え な い 不 安 や 自 分 自 身 の 健 康 面 の 不 安 を 抱 え な が ら 生 活 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。レ ス パ イ ト な ど の 在 宅 サ ービス の充実 だけ でな く、個 々の生 活状 況を 把握し 、長期 的・継 続 的に支 援して いく こ とが必要である。. 5.本研究の限界と今後の課題 本 研 究 で は 13 事 例 と 対 象 者 が 少 な く 、 医 療 的 ケ ア の 内 容 や 医 療 的 ケ ア に 費 や す 一 日 の 時 間 を 限 定 し て い な い な ど 、医 療 的 ケ ア が 必 要 な 養 育 者 の 結 果 と し て 一 般 化 す る に は 限界が ある 。今 後は 、対象者 を増や して 、日 々の医 療的ケ ア以 外に 、通 院箇所 の多 さや リハビリや療育の付き添っている時間制約の関係などからも検討していく必要がある。. 謝辞 本研究にご協力をいただいたお父様、お母様方、施設関係者の皆様に深く感謝申し上げ ます。. 本研究は、公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団の助成によるものである。. 感想(本研究の助成を受けて) 今回の研究「医療的ケアが必要な子どもの養育者(家族)の療育困難感に関する研究 」 で 、養 育 者 へ の イ ン タ ビ ュ ー を 行 う 機 会 を 得 る こ と が 出 来 ま し た 。こ れ に よ り 、私 た ち は 、 在宅で医療的ケアを必要としている子供の生活状況、養育者の生活、悩み、不安、それを 乗り越えてきた道のりなど多方面を知ることが出来ました。内容によっては、今現在必要 とする支援についてもお話しいただいた養育者もいました。.
(7) 研究を通して、地域に係る中で、医療、福祉、行政等々それぞれ別々な働きかけを行っ ていることも改めて知ることが出来ました。私たち医療職も院内だけではなく、地域に足 を運び医療、福祉、行政、教育等々、点のつながりを線でつなげられるよう、養育者の声 を代弁いていく必要を感じました。研究を行うことで、養育者との新たな関係性を築くこ ともでき、今回の研究は終了となりますが、今後この関係性を活かし、養育者が必要とし ている情報収集の場の提供や、幅広くて活きた情報の提供をしていくよう努力していきた いと思います。.
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