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フッ酸エッチングとX線マイクロアナライザーによるアルカリ長石のマイクロポア観察 : チリ共和国・パタゴニアアンデス・バルマセーダ産閃長岩中アルカリ長石

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No.55, pp. 1 - 13, 2005 はじめに  現在、鉱物の微細組織は、地球史上の多くの できごとの解明のために、地球科学の広い分野 で解析され続けている。アルカリ長石に限ら ず、近年の鉱物の微細組織研究の進展において は、電子顕微鏡や X 線マイクロアナライザー をはじめとして多くの解析機器が用いられて いることが、その特徴となっている。なかで も、透過型電子顕微鏡によるいわゆるナノメー ターサイズの微細組織の観察は、長石類につい ても多くの画期的な事実を明らかにしてきて いる (Willaime et al., 1976; Brown et al., 1983; Smith and Brown, 1988; Parsons, 1994; Deer et al., 2002; etc.)。しかし、透過型電子顕微鏡 観察の難点は、その直接の観察対象領域がきわ めて限られていることである。  古くから、鉱物の食像を観察するため酸エッ チング法が用いられてきた(たとえば、秋月 (1993) の第5章参照)。長石類をはじめとする 鉱物の微細組織解析が盛んになると、そのため のエッチング法も工夫されてきた (Wegner et al., 1978; Wegner and Christie, 1985; etc.)。初 期の透過型電子顕微鏡の観察には、エッチング をしてできた各種の凹凸パターンを観察するい わゆるレプリカ法が必須であった。最近では、 透過電子顕微鏡観察のためにイオンシニング法 による薄膜作製法が普及しているが、この方法 には、時間と技術がいるという難点もある。そ のため、これらの透過型電子顕微鏡観察の弱点 を補完する意味で、新しいフッ酸エッチング法

中 野 聰 志

Observations of alkali feldspar micropores

using a HF-etching method and an X-ray microanalyser

- Syenite alkali feldspar from Mt. Balmaceda, Chile -

Satoshi NAKANO

フッ酸エッチングと X 線マイクロアナライザーによる

アルカリ長石のマイクロポア観察

チリ共和国・パタゴニアアンデス・バルマセーダ産閃長岩中アルカリ長石-

Abstract

Both natural and polished cleavage surfaces of alkali feldspar grains in a syenite from Mt. Balmaceda, the Patagonian Andes, Chile, were etched by the vapor of concentrated hydrofluoric acid solution. They were used for secondary electron and back-scattered electron image analyses with an X-ray microanalyser. Obtained electron images and distribution patterns of selected elements show that etched micropores are generally polygonal, and that they are abundant in microscopically turbid, microperthitic regions and are rare in microscopically clear, featureless regions. The data should provide more data to clarify concretely the unknown processes of plutonic perthite coarsening.

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による走査電子顕微鏡観察がより広い領域での より簡便な微細パーサイト組織観察に有効であ ることが示された (Waldron et al., 1994)。  アルカリ長石の微細組織のうち、パーサイ ト組織は最も古くから観察が重ねられてきた (Gehard, 1861; Andersen, 1932; Alling, 1932, 1938)。現在では、かつては直接観察が不可能 であったクリプトパーサイトが透過電子顕微鏡 によって観察されるまでに至っている。筆者は、 1993 年に本学部に設置された X 線マイクロア ナライザーを用いて、顕微鏡サイズのパーサイ ト組織の組織と組成情報を得ることに努めてき た。その脈絡の中で、今回、筆者がこれまで解 析を続けてきたチリ共和国・パタゴニアアンデ ス・バルマセーダ山産閃長岩中アルカリ長石を 対象に、上記のフッ酸エッチングを行い、X 線 マイクロアナライザーにより元素マッピングを 含むマッピング法も採用して、パーサイト組織 の観察を行った。本論では、その観察結果を記 載する。  なお、これまでの通常の二次電子・反射電子 による像観察では、モニター画面で観察できる 試料領域が限られるため、提示される画像は作 業上の限界から狭い領域のものに限られてい た。今回の観察で得られた画像は、これまで提 示された観察試料領域をはるかに越える大領域 について、単一のものとして得られているのが 特徴である。 地質概略  既に本紀要においても2度にわたり紹介(中 野、2003:中野、2004)し、また、別途論文 でも紹介(Nakano et al., 2002: Nakano et al., 2005)してあるので、ここでは以下に簡潔に 述べる。  本アルカリ長石を採取したバルマセーダ山 は、チリ共和国の最南部パタゴニアアンデスの 一角に位置する (Escobar, 1982)。パタゴニア アンデスの西側には、中生代から新生代にかけ て活動した深成岩体が南北方向に続いている。 その東側には、白亜紀を中心とした堆積岩が 分布しているが、その分布域に中新世の花崗岩 質岩体が南北方向に点在して連なっている。お よそ9km ×3km の細長いバルマセーダ岩体 は、研究の進んだパイネ岩体(Michael, 1985, 1993)のさらに南のほぼ最南部に位置する岩 体 で あ る。Michael (1985, 1993) に よ る と、 バルマセーダ山を構成するのはアルカリ質の深 成岩体であると言及されているだけで、詳細は 不明であった。筆者がこれまで確認した領域で は、山麓には各種閃長岩に加えて優黒質岩及び 斑状岩(岩脈類かあるいは火山岩)が存在して いる(中野、2003, 2004)。閃長岩には粒子サ イズの変化による変化が認められるが、普遍的 にミアロリティックなキャビティが伴ってい る。 アルカリ長石の肉眼的特徴と微細組織  閃長岩アルカリ長石は、基本的に a 軸方向 に伸長した柱状結晶である。細粒相から粗粒 相までの粒度変化があり、長径数 cm を越える ペグマティティックな巨晶も存在する(中野, 2003, 2004)。ほとんどの結晶において、肉眼 的に灰色半透明の長石と白色〜薄いピンク色不 透明長石が混在している。典型的なものでは、 内部の灰色半透明(〜黒色透明)の長石を薄ピ ンク色不透明の長石が包み、一部では内部に侵 入している(第1図)。このような肉眼でわか るカラーマントルゾーニングを示すアルカリ長 石は、これまで世界的にみても報告例が少ない 第1図 バルマセーダ閃長岩中アルカリ長石 結晶の接写写真.写真のほぼ水平方向が,a 軸 ((010) 断面)に対応する.長径(a 軸方向)約 1.5cm の中央の結晶の周囲に白く見える(実際 は薄いピンク色不透明)が発達し、黒い(半透 明)内部に脈状に侵入しているのが特徴である. スケールは、1cm.

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ものである。  顕微鏡及び X 線マイクロアナライザーによ る顕微鏡オーダーの微細組織は、内部の灰色 部分も外側の薄いピンク色の部分も、ともに マイクロパーサイト部分と顕微鏡的に均質な 部分 (=cryptoperthite) から成っている(第2 図)。顕微鏡的に均質な部分には、ドメイン構 造(Vance(1965) の patchy zoning に 対 応 す る:Nakano et al., 2005)が存在する。内部の ( 黒〜 ) 灰色半透明のアルカリ長石には、鏡下 ではほぼ均質なマイクロパーサイトのない清澄 な部分(ただし、ドメイン構造と後述の蝶組織 = butterfly texture =バタフライ組織は存在す る)が大きく残存している。そこに、汚濁パッ チ状マイクロパーサイト部分が外側から侵入し ている。一方、外側の薄いピンク色の部分に は、汚濁マイクロパーサイト組織が発達してい るが、場所によりマイクロパーサイトのない清 澄な部分が残されている。電子顕微鏡観察では、 鏡下で均質に見える部分にはラメラ状メソ・パ クリプトパーサイトが存在し、マイクロポアは ほとんど存在しない。一方、マイクロパーサイ ト部分には長径1μ m 以下のマイクロポアが 非常に多い(第3図)。  以上のアルカリ長石の組織とそれらの成因 については、既に基本的な記載と議論が進め られてきている(Nakano et al., 2002:中野、 2004:Nakano et al., 2005)。すなわち、高温 熱水期においてドメイン構造 (Fe-Ca の対照的 な分布パターンが対応 ) が形成され、その後の 離溶によるクリプトパーサイト(現在鏡下で清 澄な部分に残存)の形成を経て、低温熱水期に おいてパッチマイクロパーサイトが形成され、 最終熱水期に曹長石化作用とカリ長石化作用が 起っている.蝶組織=バタフライ組織は、高 温熱水期に形成された蛍石を核に Ab-rich 相と Or-rich 相が成長したものであり、低温熱水期 におけるクリプトパーサイトがマイクロパーサ イトへ粗大化する過程の初期的段階を記録して いるものである. フッ酸エッチング法  今回採用したフッ酸エッチング法は、既に言 及した Waldron et al. (1994) の長石微細組織 観察用の方法である。この方法は、プラスティッ ク容器中の濃フッ酸溶液面上約2cm の距離に おいた観察対象面を、フッ酸蒸気で50秒間 エッチングし、その後超音波洗浄を行うもので ある。このエッチングにより、Or-rich 相に比 べて Ab-rich 相がより強く腐食されるためクリ 第3図 マイクロパーサイト部分を拡大した透過電子顕微鏡写真.

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第4図 (010)研磨腐食 面大領域における元素マッ プ(Na・K)と二次電子線像 (SL)・反射電子線像 (CP).汚 濁マイクロパーサイト部分 (= MP 部分)とそれ以外の 清澄部分(まとまったマイ クロパーサイトは存在しな いが、バタフライ組織とドメ イン組織が存在する)(= CP = cryptoperthite 部分)に分 かれている.

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プトパーサイトを含む微細なパーサイト組織が 強調されるとともに、格子欠陥や不純物を含む 各種欠陥がより腐食されマイクロポアとして明 瞭になる (Waldron et al., 1994)。  フッ酸エッチングを行った長石試料面は、2 種類である。一つは、Waldron et al. (1994) が 用いた研磨していない自然の劈開面試料であ る(劈開面腐食試料)。他の一つは、橋本ほか (2005a, b) が採用した研磨した劈開面試料であ る(研磨面腐食試料)。後者を併用した理由は、 今回の閃長岩中アルカリ長石に対し、この作業 を行った時点での採取試料の量的制約上、大き い平滑な劈開面を利用できる結晶破片が取り出 せなかったためである。なお、Waldron et al. (1994) により提示された面のマップ領域は長 径約 80 μであり、橋本ほか (2005a, b) が花崗 岩に同じ方法を適用したマップ領域は最大で長 径約 270 μ m であった。今回の取得マップは、 SEI(SEM)・BEI(CP) 像観察に留まらず、X 線マ イクロアナライザーによるマッピング法も行っ たため、その領域が格段に大きくなった。ただ 第5図 (001)劈開腐食面大領域における元素マップ(Na・K)と二次電子線像 (SL)・ 反射電子線像 (CP).

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し、最大約 3.5mm 四方のマッピングの場合は、 逆に拡大しすぎて微細組織が不明瞭となる。 微細組織観察方法  今回観察に用いた X 線マイクロアナライザー は、これまでの解析と同じく本学部に設置され ている日本電子(株)製 JXA8800M タイプの ものである。観察条件もこれまでと同じく、加 速電圧:15 kv、ビーム電流:0.02 μ A で、ビー ム径を絞り (0.5 μ m 以下 )、二次電子線像 (SEI) と反射電子線像 (BEI) 観察を行った。その上 で、さらに二次電子及び反射電子と構成元素に ついてのマッピングも行った。マッピングの ピクセル数は 400 × 400 であり、各ピクセル 当たりの計数時間は50μ sec、ビーム電流は 0.05 μ A である。なお、先に言及した電子顕 微鏡観察については、新潟大学理学部地質科学 教室設置の日本電子製 JEM CX200(160kV で 使用)によるものである。 観察結果 大領域マップ  劈開面腐食試料と研磨面腐食試料の双方につ いて、スケールを変えて得られた、いくつかの マップセットを以下に示す(第4図〜第9図)。 いずれも、Na,K、Ca、Fe のうちのいずれか の元素分布と SL 像(SEI 像)及び CP 像(BEI) 像がセットになっているものである。  第4図は、今回提示するマップの中で約 2.4mm 四方と最も領域が大きいものである。 (010) 研磨腐食面のマッピング結果である。K と Na の分布マップでは、Or-rich 相と Ab-rich 相から成るパッチマイクロパーサイト部分(顕 微鏡下では汚濁している)とそれ以外の部分 (若干の組成変化を伴う大きなドメインが存在 し、蛍石を核とするバタフライ組織が存在する が、顕微鏡下では清澄である)が混在している のが、明瞭である。また、不規則な (001) 劈開 と既に述べたマイクロパーサイト部分とそれ以 外の部分の違いが、特に SL 像 =SEI 像 = 二次電 子線像において明瞭である。現れている。これ は、マイクロパーサイト部分では、もともと多 く存在するマイクロポアが拡大され、またいく つかの欠陥部分が腐食されてマイクロポアがで きているためである。即ち、ポアの周囲がエッ ジ効果のため白くけばだって見えるので、マイ クロパーサイト部分が全体として小さい白い斑 点の集合体の部分となっている。ただし、CP 像 =BEI 像 = 反射電子線像では、不純物を含め た組成変化の影響が強く出ているため、両者の 違いが不明瞭になっている。  第5図は、1.2mm 四方の領域の (001) 劈開 腐食面についてのマップである。基本的な特徴 は上述の第図と同じであるが、NW-SE 方向の (010) 劈開腐食面断面が連続しないで多数現れ ているので、顕微鏡下で清澄な部分がマイクロ パーサイト部分とやや見分けがつかなくなって いる。しかし、各マップ左上の顕微鏡的に均質・ 清澄な部分は明瞭に残されている。CP マップ 中央やや下の二つの白い部分は、輝石粒子であ るが、その面はマイクロポアがなくきわめて平 坦であることが注目される。 中領域マップ  第6図は、(010) 研磨腐食面の Na-Ca-Fe 元 素マップと劈開マップである。本図は、上記の 二つの図に比べるとかなり小さい領域のマッピ ングマップである。この図を含めて以下に示す 電子線像は、通常の SEI 像・BEI 像写真で記録 できる大きさの領域のものであるが、ここでは 元素マップとセットにするためにマッピング法 による画像が示されている。(001) 劈開腐食面 断面は NNW-SSE 方向にあるが、マップではそ の方向に萌芽的な微小なバタフライ組織が並ん でいることが Ca と Na の線状の配列でわかる。 ただし、右側の太い線状の部分に Fe が濃集し て斑点状に並んでいるのが見られる、このマッ プ領域においては、全体として顕微鏡下で全く の均質な部分が卓越している。マップの各サイ ドにマイクロパーサイトの小領域が見られるの みであり、上述の線状配列がそれらと交錯して いる。本図では、マイクロパーサイト部分にお いて、マイクロポアが非常に多いことがわかる とともに、このスケールにおいてようやくマイ クロポアが多角形であることが判別できる。一 方、均質領域においても、より微小であり数も 少ないが、マイクロポアがラメラ方向に配列し ているのがわかる。これらは、やや粗大化した クリプトパーサイトラメラの界面における欠陥

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が、エッチングにより拡大されたものであろう と推測される。  第7図は、(001) 劈開腐食面について、これ まで示したマップよりさらに領域を狭めて各画 像を拡大したものである。本領域において、マ イクロパーサイト部分は、わずかにマップ上方 の一部にしか存在しない。残りの均質部分に は、マイクロパーサイト形成の初期的な段階を 示すと考えられるバタフライ組織が、(010) 断 面(a 軸)方向に雁行状に配列している。以上 の組織が、Na と Ca の元素マップからわかる。 熱水変質反応で粗大化したと考えられるマイク ロパーサイト部分には、配列が乱された蛍石 (Ca マップ)と二次的に生じた鉄酸化物(Fe マッ プ)が混在している。エッチング効果を見るた めの SL 像では劈開腐食面の重なりが明瞭であ り、各劈開腐食面においては均質部分に配列し ていたバタフライ組織の中心にある蛍石の場所 がマイクロポアとなっている。均質部分におい ては、それ以外のマイクロポアはほとんど認め られない。一方、マイクロパーサイト部分にお いては、既に示した図と同じようにマイクロポ 第6図 (010)研磨腐食面における元素マップ(Na・Ca・Fe)と二次電子線像 (SL).

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アが密集しているのが明瞭である。 小領域マップ  第8図は、均質部分の NW-SE 方向に配列す る3つのバタフライ組織を中心にした (001) 研 磨腐食面のマップである。Na と K の分布マッ プから3つの蝶の場所がわかる。蝶の核には Ca の濃集が残存しているので、蛍石の存在を 示している。エッチング後の SL 像においては、 この蛍石の部分は既にマイクロポアとなってい る。マイクロパーサイト部分の多角形のマイク ロポアと異なり、レンズ状の形状を示している のが特徴である。レンズ状のマイクロポアの 周りの蝶の羽の部位に当たる Ab-rich 相の部分 は、エッチングの効果でその形状が見事に現れ ている。ただし、Ab-rich 相の方が、腐食に耐 えて残っているように見える。  第9図は、マイクロパーサイト部分のみの (001) 研磨腐食面のマップである。(001) 面に おけるパッチパーサイトの実際の形状は多角形 的であり、モザイクパターンと呼べるものであ る。このパターンに対応するかのように、直交 する a 軸方向と b 軸方向に伸びた細長いポア 第7図 (001)劈開腐食面における元素マップ(Na・Ca・Fe)と二次電子線像 (SL).

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やそれらの方向に沿ったポアの配列が特徴的に 現れている。第図と比較すると、このマイクロ パーサイト部分において、エッチングされた多 数のマイクロポアが存在していることが明らか である。 まとめ  第4図から第9図で示したように、今回の フッ酸エッチング試料の X 線マイクロアナラ イザーによるチリ最南部バルマセーダ山麓閃長 岩中アルカリ長石の観察によって次のようなこ とが要約される。  閃長岩に限らず深成岩中のアルカリ長石 は、 マ グ マ か ら の 晶 出 後 の 冷 却 過 程 の う ち、特に熱水反応によってその組織が大きく 変 化 し (Parsons, 1978; Lalonde and Martin, 1983; Parsons and Brown, 1984; Waldron et al., 1992; Brown and Parsons, 1994; Lee et al., 1997; 橋 本 ほ か,2005a, b; etc.)、 少 な く とも一部で組成変化が起きる (Nakano, 1997; Nakano et al., 1997; Nakano, 1998; Lee and Parsons, 1997)。パーサイト組織の粗大化(ク 第8図 (001)研磨腐食面のバタフライ組織を含む小領域における元素マップ(Na・ K・Ca)と二次電子線像 (SL).

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リプトパーサイトからマイクロパーサイトへの 変化)が熱水反応がないと生じないことの証拠 として、顕微鏡下での汚濁の要因としてマイク ロポアの存在がある (Walker, 1990; Walker et al., 1995; Worden et al., 1990)。すなわち、熱 水反応を免れた顕微鏡的に均質かつ清澄な部分 (クリプトパーサイト)にはマイクロポアがほ とんど存在しない一方、汚濁したマイクロパー サイト部分には多数のマイクロポアが存在す る。マイクロポアは、溶解・再結晶してできる マイクロパーサイト構成2相の体積がもとの長 石相に比べて減少するため、adularia(氷長石) 晶相に対応した多角形の形状を有している。  チリ・バルマセーダ閃長岩中アルカリ長石に ついての今回の観察は、熱水反応の記録者とし てのマイクロポアの形状と分布パターンを具体 的に明らかにしたものである。特に、今回の観 察は電子顕微鏡観察と異なり非常に広領域を対 象としたものであるので、マイクロポアの分布 パターンをこれまでより明確にしている。一 方、観察したその形状はもともとのものではな く、ポア自体を含む各種欠陥から腐食によって 第9図 (001)研磨腐食面のマイクロパーサイト小領域における元素マップ(Na・K・ Ca)と二次電子線像 (SL).

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新しく作られたものであるという注意が必要で ある。たとえば、顕微鏡的に清澄な部分のバタ フライ組織の中心は、もともと界面部に存在し たマイクロポアではなく、蛍石が溶けてできた レンズ状のマイクロポアとして観察されている (第7図・第8図)。また、均質清澄部分のマイ クロポアの線状配列(第6図)では、これまで の報告と同じように,界面部の転移等の欠陥が 拡大されているものと考えられる。さらに、マ イクロパーサイト部分の凹凸パターン(たとえ ば、第9図)は、もともと存在したマイクロポ アが単純に拡大されたものではなく、マイクロ ポアがより複雑なパターンとなっていると考え られる。もとの形状からのこのような変化を追 跡するためのより詳細な解析により,これまで その中間段階がほとんど明らかになっていない マイクロパーサイトの粗大化過程について、よ り具体的な解明ができる可能性があることに、 最後に言及しておきたい。 謝辞  本研究を含めたバルマセーダ閃長岩アルカリ 長石についての一連の研究は、国際協力事業団 (JICA) プロジェクト中における、東北大学・コ ンセプション大学名誉教授・苣木浅彦先生のご 教示が発端である。JICA のコンセプシオン大 学における鉱床学研究プロジェクトに携わった 日本とチリの多くの関係者の方々に、滞在中の みならず帰国後を含めて大変お世話になった。 また、新潟大学・赤井純治氏、京都大学・下林 典正氏、岡山理科大学・西戸裕嗣氏、信州大学・ 牧野州明氏をはじめとする多くの方々に、本長 石微細組織についての一連の研究への貴重な協 力をいただいた。以上の方々に心から謝意を表 する。 引用文献 秋月瑞彦 (1993) 山の結晶—水晶の鉱物学—.裳華房, 148pp.

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