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加速度センサ内蔵型首掛け社員証に基づく歩数推定の実証実験

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Academic year: 2021

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(1)情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-MBL-77 No.1 Vol.2015-ITS-63 No.1 2015/12/2. 加速度センサ内蔵型首掛け社員証に基づく 歩数推定の実証実験 磯村奎介†1 伊藤信行†2 小林幸彦†2 梶克彦†1 内藤克浩†1 中條直也†1 水野忠則†1 概要:近年問題となっているオフィスワーカーの運動不足を解決するために,日常的運動量の1つの指標となる歩数 を計測する手法を開発している.歩数を推定するためにオフィスワーカーが身に着けている社員証に着目し,加速度 センサ内蔵型の首掛け社員証を作成し,センサを首から掛ける,胸ポケットに入れる,手持ちカバンに収納するとい った 3 種類のセンシング環境で正確に歩数を計測することが出来るか実験した.結果としてセンサを首に掛けた場合 は誤差 1.8%,胸ポケットに入れた場合は誤差 2.0%,カバンに収納した場合には誤差 4.6%以内におさまり,歩数計の基 準である誤差 3%に近い結果となった. キーワード: 歩数推定,オフィスワーカー,社員証 . 1. は じ め に. されるのかアルゴリズムを作成し実験を行った.また通勤 . 時は社員証を首ではなくカバンに入れていることも想定さ. 近年デスクワークを主とする業務が多くなり,オフィス. れる.よってカバンに入れた状態においても歩数を推定で. ワーカーの運動不足が問題とされている.また平成 9 年か. きるか実験を行った.. ら平成 21 年の間に 15 歳以上の日本人全体で運動と生活活 動を合わせた身体活動の目安である歩数が 1 日あたり約. 2. 関 連 研 究. 1000 歩減少している[1].. 本研究は歩行者の屋内位置推定を行う研究に類似してい. オフィスワーカーの健康状態は本人にとって重要な問題. る点がある.位置推定には歩数や歩幅,歩行方向などとい. である事はもちろんのこと,労働生産性の低下や医療費の. ったデータが必要である.またそのようなデータを推定す. 負担など雇い主からしても重要な課題である.これを解決. るために加速度や角速度といったデータが必要であるが,. するためにセンサ内蔵型の首掛け社員証を開発し,日常的. 従来法の多くはセンサを人体のある決まった部位に固定さ. にどれだけ意識して歩行を行っているかを推定する.. せることが必要である[3].しかし本研究ではセンサを首に. 2014 年にインターネットを用いて全国のオフィスワー. 掛け,身体に固定させることをせずデータ収集を行う.こ. カー約 4500 名に業務時間の何割を自席でのデスクワーク. のような環境下でも歩数を推定することが可能なのかを実. に費やしているか,というアンケートを行ったところ,半. 験することが本研究の焦点である.. 数近くの人が 8 割以上自席で過ごしているという回答をし. 人間行動を観測するという意味合いでは,ビジネス顕微. た[1].また自席以外に落ち着ける場所がないので消去的に. 鏡[4]というシステムに似通った点がある.このシステムは. 自席を最も好む場所としている,というアンケート結果も. 赤外線ビーコンという据え置きの赤外線発信機を随所に配. ある[2].. 置し,社員証型センサデバイスで赤外線ビーコンの信号を. 歩数を計ることができれば業務中に意識して自席から立. 受信することで装着者の在室場所,通過場所を検出するこ. ち上がり,運動をしているかということを推定することが. とができる.しかしこの手法ではビーコンの設置場所であ. できる.業務中に意識的に行う歩行というのは例えばフロ. るオフィス内のみでしか運動量を測定することができない.. ア移動する際には階段を利用する,オフィス内の連絡はメ. 本研究では自律した加速度センサを使用するので外出時や. ールや電話ではなく直接赴いて会話をする,休憩は立ち上. 通勤時にも運動量を測定することが可能である.. がりオフィス内を歩行する,などである.他には通勤時に 車ではなく公共交通機関を利用する,一駅間徒歩で通勤す. 3. 首 掛 け 社 員 証 に 基 づ く 歩 数 推 定. るなど通勤時にも意識的に体を動かすといったことが必要. 3.1 社 員 証 型 セ ン サ. である.. 社員証に取り付けるセンサとして,ATR-Promotions 社の. オフィスワーカーは社内にいるときはほぼ常に首から社. 小型無線多機能センサ「TSND121」を使用している[5].こ. 員証を下げている.この事から社員証にセンサを取り付け. れは加速度,角速度,地磁気,気圧を計測することができ,. れば日常的な歩数を推定できるのではないかと考えこのよ. また 22g と軽量のセンサであり,対象者に負担をかけず,. うなセンサを作成した.. 歩いた際の社員証の揺れに近い動きのままセンシングを行. 本稿では首掛け社員証センサを用いて歩数が正確に推定. うことが可能である.そしてセンサを紐のついた社員証型 ケースに取り付けて社員証型センサを作成した.. †1 愛知工業大学 情報科学部 †2 三菱電機エンジニアリング(株). ⓒ2015 Information Processing Society of Japan. 1.

(2) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 図 1. Vol.2015-MBL-77 No.1 Vol.2015-ITS-63 No.1 2015/12/2. 軽量多機能センサ「TSND121」. 図 5 カバンに収納した場合 3.2 セ ン シ ン グ デ ー タ 3.2 節でセンサの装着位置について述べ,そしてそれぞ れの装着位置におけるセンシングデータを比較したが,ど の装着位置においても安定した正弦波を表し,社員証型セ ンサはスマートフォン等をセンサとし腰に固定させた場合 よりも揺れが多く,不安定な環境下におかれていることか 図 2 社員証型センサ. ら波形は歪むと想定していたがこのような結果となった.. 社員証は身分の証明だけではなく扉を開閉する際のカー ドキーの役割を担っていることが多い.よってオフィス内 にいる間は他人にみせるため, またはすぐにカードキーと して使えるようにするため図 3 のように首からさげている 図 6 首掛けセンサのセンシングデータ. ことが多い.しかし昼食等の理由で一時的に外出する際は, 身分を公に晒さない為図 4 のように胸ポケットに入れるこ とも想定される.他にも通勤時には首に掛けることはせず, 図 5 のようにカバンの中に収納されることも想定した. 以上の理由から本研究では(1)首に掛ける(2)胸ポ ケットにいれる(3)カバンにいれる,といった 3 つのセ. 図 7 胸ポケットに入れたセンシングデータ. ンシング環境を用意し実験を行った.. 図 8 カバンに収納したセンシングデータ 上記のデータの縦軸は加速度を表し,サンプリング周波 数は 100[Hz]に設定した.またノルムとローパスフィルタ を適用させている.ノルムをかけることによりセンサの傾 図 3 首に掛けた場合. きを考慮せずセンシングを行える[6]事や,データを一本化 することによって処理しやすくなるという利点がある.ま たデータのノイズを除去するためにローパスフィルタを適 用させておりサンプル数は 64, 遮断周波数は 2[Hz]に設定 した. 3.3 歩 数 推 定 ア ル ゴ リ ズ ム 3.3 節で述べたように加速度は安定した波形を表してい ることから,極大値と極小値を検出することで容易に歩数. 図 4 胸ポケットに入れた場合. を検出できる.しかしただ極値を検出するだけでは歩行以 外の動きをした際の細かな動きを歩数として検出してしま. ⓒ2015 Information Processing Society of Japan. 2.

(3) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2015-MBL-77 No.1 Vol.2015-ITS-63 No.1 2015/12/2. う.そこで閾値を設定し,加速度の極大値と極小値の間に 一定以上の差があった場合のみ歩数を検出するようにアル. 表2 階段における歩数推定誤差 (%). ゴリズムを作成した.閾値は実験的に適切な値を調査し, 0.2[G]に設定した時が最も正確に歩数を推定することが出. 実験環境 被験者. 階段. 来たのでこの値を閾値として使用する.. 上り. また本研究では極値を検出して歩数推定するアルゴリズ. 下り. 首. 胸. 首. 胸. 1. 1.4. 1.4. 4.2. 1.4. 2. 0.0. 1.4. 3.0. 0.0. ウントする,というアルゴリズムを用いられることが多い. 3. 1.6. 1.6. 1.6. 0.0. [7].だが今回取得したデータは安定した波形を表し,一歩. 4. 0.0. 1.4. 1.5. 4.4. 間の極値は極小値と極大値が1つずつしか存在しないため,. 5. 3.0. 4.4. 3.0. 4.4. 6. 1.4. 1.4. 4.7. 5.8. 7. 1.4. 1.4. 4.3. 1.5. 8. 1.4. 3.0. 3.3. 0.0. 9. 0.0. 2.9. 1.6. 1.6. 10. 0.0. 4.4. 5.8. 1.5. ムを使用しているが,従来では閾値を上下に2つ設定し, 値が上の閾値を超えた後に下の閾値を超えた場合歩数をカ. 極値を検出し歩数をカウントするアルゴリズムを使用して いる.. 4. 歩 数 推 定 の 実 証 実 験 4.1 実 験 環 境 歩行時における加速度のデータを収集し,歩数推定にお ける精度の評価を行った.人は平地だけではなく階段やス ロープといった箇所を歩行するため,廊下,階段,坂の 3 箇所でデータ収集を行った.被験者は男女 10 人,自然な動. 表3 坂における歩数推定誤差 (%) 実験環境. 作のデータを収集するため被験者に特に歩き方の指示はし ない.また収集したデータから歩数推定するために HascTo. 被験者. 坂 上り. ol[8]を使用した. 4.2 実 験 結 果. 下り. 首. 胸. 首. 胸. 結果として首に掛けた場合は誤差 1.8%,胸ポケットに入. 1. 4.1. 5.1. 3.6. 5.9. れた場合は誤差 2.0%,カバンに収納した場合は誤差 4.6%. 2. 0.0. 3.4. 1.1. 2.2. という結果になった.またカバンにセンサを収納した際に,. 3. 0.0. 1.1. 1.2. 0.0. 体の横で静止させて歩いた場合,前後に揺らして歩いた場. 4. 0.9. 0.0. 8.6. 1.1. 合ではデータに相違点があることがわかった.以下に歩数. 5. 0.0. 8.6. 0.0. 2.4. 推定結果を表す.. 6. 3.0. 0.9. 1.0. 3.2. . 7. 1.0. 0.0. 1.1. 1.1. 表 1 平地における歩数推定誤差 (%) 被験者. 8. 0.0. 1.0. 8.7. 0.0. 実験環境. 9. 1.0. 3.2. 1.1. 0.0. 平地. 10. 5.1. 2.1. 1.1. 2.2. 首. 胸. カバン. 1. 0.0. 0.0. 2.9. 2. 2.6. 0.0. 2.7. 3. 0.0. 2.3. 4.7. 4. 2.5. 2.5. 7.6. 5. 0.0. 0.0. 2.4. 6. 0.0. 0.0. 4.7. 表の「首」は首にかけた場合, 「胸」は胸ポケットに入れ. 7. 0.0. 2.5. 4.3. た場合, 「カバン」はカバンに収納した場合のセンシング環. 8. 0.0. 0.0. 4.8. 境を表す.. 9. 0.0. 6.9. 6.5. 以上のように誤差はほぼ 5%以内に収まり,また誤差 0%. 10. 0.0. 4.4. 5.8. という結果も見受けられる.歩数計の企画である JIS-S7200. 表4 各装着位置における平均誤差 (%) 実験環境 誤差. 首. 胸. カバン. 1.8. 2.0. 4.6. では誤差が 3%以内であることを基準としており[9],本研 究ではカバンによるセンシングでは基準に達さなかったが ⓒ2015 Information Processing Society of Japan. 3.

(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report 首,胸ポケットの場合においてはこの基準に達することが 出来た. また 3.3 節で述べたセンサをカバンに収納したセンシン グデータはカバンを体の横に静止させて歩いた場合のデー. Vol.2015-MBL-77 No.1 Vol.2015-ITS-63 No.1 2015/12/2. と考えられる.. 5. お わ り に 今回はオフィスワーカーの運動量推定のために社員証型. タであり,カバンを体の横で前後に振りながら歩いた場合. センサを作成し,首に掛ける,胸ポケットに入れる,カバ. は図 9 のように各極値の大きさは様々であり安定しておら. ンに収納する,という 3 つの状態で装着した結果,センサ. ず不安定なデータとなり正確に歩数を推定することはでき. を首に掛けた場合は誤差 1.8%,胸ポケットに入れた場合は. ないと考えていた.. 誤差 2.0%,カバンに収納した場合には誤差 4.6%以内に収 まった.実験当初は正確に歩数をカウントすることは難し いと想定していたが,カバンによるセンシング以外では歩 数計の基準である誤差 3%以内に収まった. また今回は歩いていることを前提に歩数推定を行った. オフィスワーカーはもちろん座ってデスクワークを行う. つまり現在のアルゴリズムではデスクワーク時体の動きを 歩行として捉えてしまう可能性がある.よって歩行時か静 止時か判断できるアルゴリズムを作成することができれば より汎用性の高い手法になると考えている. . 図 9 カバンを前後に揺らして歩いた際の加速度データ. 参考文献 1)八木佳子,加藤洋介,高原良:オフィスワーカーの働き方と健. しかし結果をみるとわかるように大幅な誤差はなく歩数. 康に関するアンケート調査結果について,人間工学,Vol.50,pp.318-. を推定することが出来た.そこでカバンに入れたセンサの. 319,2014. 動きと体の動きを比較するため,胸ポケットにセンサを入. 2)一般社団法人 ニューオフィス推進協会:ワーカーとオフィス内. れ,かつセンサを収納したカバンを持ち同時にセンシング. における好む場所. を行い,2つのデータを比較した.. (http://www.nopa.or.jp/pub/info/library/r-104_result.html) 3)興梠正克,蔵田武志:慣性センサ群とウェアラブルカメラを用 いた歩行動作解析に基づくパーソナルポジショニング手法,信学 技報,PRMU2003-260,pp.25–30,2004 4)早川幹,大久保教夫,脇坂義博:ビジネス顕微鏡:実用的人間行 動計測システムの開発,電子情報通信学会論文誌.Vol.J96-D, pp.2365-2370,2004 5)小型無線多機能センサ「TSND121」 (http://www.atr-p.com/products/TSND121.html) 6)沓名康成,小栗宏次:センサの位置を考慮しない 3 軸加速度計 からの運動量推定,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.108, pp.117-120,2009. 2 つの加速度データを重ねたグラフ. 7) 村田雄哉,梶克彦,廣井慧,河口信夫:歩行者自立即位におけ. (緑:カバンを前後に揺らした際のデータ. る行動センシング知識の利用.マルチメディア分散協調とモバイ. 図 10. 紫:胸ポケットに装着したセンサのデータ). ルシンポジウム 2014 論文集,pp.1614-1619,2014 8)Nobuo Kawaguchi,Nobuhiro Ogawa,Yohei Iwasaki,Katsuhiko Kaji:D. 胸ポケットにいれたセンサデータと比較してみるとデー. istributed Human Activity Data Processing using HASC Tool,in Procee. タの極値の場所が一致していることがわかる.よって歩行. dings of 13th ACM International Conference on Ubiquitous Computing,. 時の体の動きにより発生する極値を検出し歩数を推定でき. pp.603-604,2011. たと考えられる.波形が安定した形にならない原因として,. 9)日本工業規格,JIS S 7200,1993. 足の振りの周期と手の振りの周期が一致しないことからカ バンが前後した際に発生する加速度と体が前進する際に発 生する加速度が打ち消しあう,または助長しあったことだ ⓒ2015 Information Processing Society of Japan. 4.

(5)

図   1    軽量多機能センサ「 TSND121 」 図  2   社員証型センサ     社員証は身分の証明だけではなく扉を開閉する際のカー ドキーの役割を担っていることが多い.よってオフィス内 にいる間は他人にみせるため, またはすぐにカードキーと して使えるようにするため図 3 のように首からさげている ことが多い.しかし昼食等の理由で一時的に外出する際は, 身分を公に晒さない為図 4 のように胸ポケットに入れるこ とも想定される.他にも通勤時には首に掛けることはせず, 図 5 のようにカバンの中

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