著者
小椋 康宏
著者別名
Ogura Yasuhiro
雑誌名
経営論集
巻
6
ページ
139-156
発行年
1977-03-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005885/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja意 思 決 定 論 的 財 務 論 に お け る配 当 政 策 論
小 椋 康 宏 139 I 序 最近におけ る経営財務研究ぱ,その領域として,かな り広い 範囲を意味す ると同時に,それ自体,多 くの内容において変化してい るといえる。経営財 務研究におけ るそのような状況は,従来から展開されてきてい る制度的題材 を記述する財務論以上に大 きな勢力 となっているし,それを新 しい一つの学 派を構成するものであ るともいえ よう。筆者は,この新しい学派を「意思決 定論的財務論」とい う言葉で呼んできたのである。また,筆者は,この意思 決定論的財務論を明らかにする場合に,いわゆる「資本調達論」としての具 体的研究から行な うことを意図してきた。すでにこのような研究の一環としD て,筆者は,一つの論稿を発表してきた。そこで展開した論稿の中心点は, 意思決定論的 財務論において,資本調達論がどのように 理論展開されている かの基礎構造い うなれば,そ の枠組を明らかにすることであった。そして, 資本調達論の具体的 内容としては,いわゆる最適資本構成(OptimumCapitalStructure )の問題に関し,若干の考察を行なったのであ る。 意思決定論的財務論におげ る資本調達論といって 乱 その内容には多くの ものかおる。本稿では,も う一つの中心的課題である配当政策の問題をとり あげ検討してみることにしたい。配当政策の研究は√経営財務研究の当初か ら行なわれできたものであ り,この配当政策論の展開に よって,意思決定論 的財務論の基 礎構造も自ら明らかにされてくるものであると考えることがで き よう。 さて,ここで使用している「意思決定論的財務論」 は,「企業 金融論的財 務論ふ「管理論的財務論」 との比較で考えているものであ り,かなり幅広い 範囲を示している。したがって,本稿では,配当政策論を 展開するにあたっ て,最初に,意思決定論的財務論の範囲について若干の検討を行な う。続いて,配当政策の制度論,最後に,最適配当政策論の順序で展開することに し たい。 1) 小 椋康 宏「 意 思決定 論的 財務 論に おけ る 資本 調 達論」(『 経営 論集 』第2 号,東 洋大 学経営研 究 所,1975 年 ),33∼45ペ ージ。 なお ,「資 本調 達論」 の 経営学 的 考察 とし て 次 の拙稿を あ わ せ参 照 されたい 。 小椋 康 宏「 資 本調 達論- そ の経 営学 的 考 察一 」(『経営 論 集』 第5 号く 東 洋大学 経営学 部 創立lO周年 記念 特集 号> ,東 洋大 学経営 学 部,1976 年),3 ∼23ペ ージ。 n 意思決定論的財務論の範囲 意 思決定 論的 財 務論 の範 囲を 考 えて み る場 合, ます 意 思決定 論的 財務 論が ど の ように 生成 し, 展開 して きた かに つい て若 干 の考 察 から始 め てみ よう。 意思 決定 論的 財務 論の生成 の萌芽 はに1950 年 代に おけ る マ ネジ リアル・エ コ ノ ミ ックスの研 究に 求め るこ とが で きる。そ れは ,い わ ゆる近 代 経済学で 開 発さ れ てきた 分析 概 念の企業 体 へ の適用 の成 果に み る ことが で きる。 経営 財 務に 関 連のあ る領域に 限定 し てみ れば , デ ィーン (J.Dean ) や ル ッダ 夫 妻2 ) (F.Lutz&V.Lutz) の諸 研 究がそ の代 表を な してい る とい史 よ う ○ ‥。 さ て, 以上 の研 究を 一つ の土 台と しなが ら, 経営 財 務研 究は一 つ の展開を み るこ とに な った。 この うち 意 思 決定 論的 財 務論 と して特に 注 目し なげ れば なら ない 学者 と して, ウ ェス トン(J.F.Weston ),お よび ソロモン(E.Solo-3 )mon )をあげ ることが でき よう 。 ここであ げ た両 教 授は,‥ 有 名でもサレ 彼ら の個 々の論説 に 関してい くっ か の 評価が 与 え られてい る ことについ ては 周知 の通 りであ る。 したが って, こ こでは , 彼 ら の展開 す る 経営 財務研 究が ここ でい う意思 決定 論的財 務論 のか な り の部分を さす も のであ る ことを 示 す のみ に して お こ う。意 思決定 論的 財務 論 は, も う一方 で は, 資 本 コス ト論に おい て よく見 られる のであ るが, い わ ゆる モジ リア ーニ, ミラ ー(F.Modigliani4 )andM.H.Miller ) の一 連 の 諸研 究 も大 きな部 分を 占め てい る ので ある。 モ ジ リ アー ニ, ミラツの研究 は, こ の よ うな 経営財 務研 究 の中 の一 つ の有力 な 派 とし てみ るこ ともで き よう。 犬 上こ の ように し て,こ の意思 決定 論的 財 務論に は , 二つ の大 きな分 派かお る こ とを 示 して お こ う。 この二つ の分 派は ,一 般に は, 伝 統 派とM.M. 派と に分け て考え る場 合が多い 。 しか し なが ら, こ こで は, 筆 者は, 意思 決定 論 的 財務 論を , この二つ の分 派を 含 めて考 え てい る ので 柘る。
意思決定論的財務論における配当政策論141 と こ ろ で , こ の よ うに 考 え て き た 意 思 決 定 論 的 財 務 論 は , 具 体 的 に は ど の よ うな 範 囲を 示 し てい る の で あ ろ うか 。 こ の 点 に つ い て , ウ ェ ス ト ン では 次 の よ うな 考 え 方 を と っ て き た 。「 要 約 す れ ば, 財 務 職 能 の 中 心 的 職 務 は , 資 金 の流 れ と フ ァイ ナ ソ シ ソ ダ ・ ミ ッ ク スに 関 連 し て い る 。 こ れ ら の 職 能を 遂 行 す る場 合 に , 財 務 管 理 者 は , 企 業 体 の 価 値 に 影 響 を 与 え るす べ て の 決 定 と 活 動を 評 価 す る こ と と 関 連 し た 重 要 な 職 務 を も っ てい る の で あ る 。 こ の よ うに し て , 財 務 管 理 者 は ,資 本 予 算 (capitalbudgeting )の 分 析 と 資 金 調 達 の 総 額 とそ の 種 別 の 決 定 に 関 連 し た プ ロ グ ラ ム( フ ァイナソシ ソダ・ タックスの決定 ) とを 一 致 さ せ る 垂 要 な 職 務 を も っ て い る の で あ る 。 加 え て , 財 務 管 理 者 は , 情 報 の 流 れ(informationflows ) の 確 立 に お い て 重 要 な 役 割を 遂 行 し て い る の であ る 。 そ れ は , また ポ ー ト フ ォ リ オ の 決 定 (portfoliodecisions) に 関 連 し た分 析 を 含 ん 七 い る 。 最 後 に , 財 務 は , 企 業 体 に お け る 全 般 計 画 や 統 制 活 動 に対 し て 重 要 な 関 連 お よび 重 要 な 職 務 を も っ てい る 。 とい う の は , そ れ ら5) は , 資 金 割 当 て や 資 源 配 分 に と っ て決 定 的 に 重 要 で あ る か ら であ る 。レ また , ウ ェ ス ト ンは , 財 務 職 能 の 重 要 性 に 鑑 み , そ れを 次 の よ うに も考え6 ) る。 (1) 企業 体 の 諸 資 源 の 効 率 的 利 用 に 関 す る た め の 情 報 の 流 れ (afiow-of-information ) の シ ス テ ムを 組 織 化 す る こ と。 (2) 資 金 の 流 れ の 効 果 的 管 理 。(3 ) 企業 体 に おけ る 重 要 な 計 画 設 定 お よび 統 制 過 程 へ の 参 加 。(4 ) 企 業 体 の 各 部 門 や グ ル ー プ の 部 分 最 適 化 の 決定 に 参 加 し , そ れ らを 企 業 体 全 体 の 最 適 化 に 結 びっ け る こ と。 (5卜 企業 体 の 記 録 の 保 管 と 分 析 活 動 に お い て は , デ ー タ の 流 れ の 物 的 側 面 と コン ピ ュー タ ー と い っ た よ うな 新 しい 用 具 の利 用に つ い て の 職 務。 以上 の 点 を 考 慮 し な が ら , ウ ェ ス ト ン 等 は , 次 の よ うな 経 営 財 務 に 関 す る 中 心的 課 題 を 考 え る こ と に な る 。 す な わ ち ,「 財 務 の 主 要 点 は , 企 業 体 の 価 値 に 影 響を 与 え る す べ て の 決 定 と 活 動 に 関 す る も の で あ る。 また , 経営 財 務 (ManagerialFinance )の 中 心 的 課 題 は , 企 業 体 の 評価 であ り , し か も わ れ わ れの 強 調点 は , 企業 体 の 財 務 管 理 者 が い か に し て こ の 価 値 を 極 大 化 す る こ7 ) と に 役 立 ち う るか とい う こ と に 関 す る も の で あ る 。」 結 局 ,「 財 務 的 意 思 決 定 は , 企業 体に お け る 収 益 の 流 れ の大 き さ す な わ ち 収 益 性(profitability) と 企
業 体 の危険 度(riskiness) とに 影 響を与 え る。 これ らの 関係 は, 図1 の よう
に 図示 され る。 政策決 定(policydecisions)は, 危険(risk)と収 益性 べprofi-tability
)とに 影 響 し, これ らの二つ の要 素は,共 に 企業 体 の価 値を 決定す る8 ) のであ る。」 ・’ ト 図1 財務職能の中心点としての評価 1. 2. 3. 4. 5. 政 策 決 定 業 種 企業 体 の規 模 使用 され る 設備 の型 債務 の利 用 流動 性 の状 態
三 廠 益利
| | 企 業 体の 価 値1 ↑ 一 方, 最近 著 の一 つ で ,意 思決定 論的 財務論 の範 躊に 属す ると 思わ れる ボ ル テソ(S.E.Bolten )の 財務 論で は どの ように 考え られ てい るであろ うか。 ボル テンは, 財 務管理 者の職 務 の中 で,そ の職 能を 次 の ように 考え てい る。 「 財務管理 者 は, 何に 投 資し た ら よい かを決定 した り, そ れ らの 投資 の資金 調達方 法を 決定 す る義 務を 負ってお り,会 社の 目標や 目的を 最大化 す るた め に , こ の二つ の 職能を 結 びつけ る方 法を 決定 す る義務を 負 ってい る の で あ9) る。」 また , ボル テンは ,そ の職 務 の範囲を 考え るこ とに な る。 「 財 務職 能は, そ れが ,企業 体に おけ るすべ ての 部門 から主 要 な業 務 執行管 理 者に よっ て受 け 入れ られた イ ンプ ット の調整者 とし て 役立つ 点 まで 発展し てきた 。あ る 部門 が魅 力的 であ る と思わ れるプ ロジ ェ クトを 提 案す るときは いつ で 乱 財務 部門 は ,一つ の部門に対 す るのでは な く, 全 体 として 企業 体 に とって 最善 であ るこ とを 発見 するた めに ,そ の プ1=1ジ ェ クト と他 の部門に よって 提 案され たプ ロジ ェ クトとを 比 較し なけ れば なら ない 。 そ の とき,財 務部門 は, そ れら の資 金 調達を 通じて, すべ ての 選択さ れ た プ ロジ ェ クトを 調整 しなけ れば なら ない 。 明ら かに , 財務 管理者は ,そ の提 案のた め になす 他の部 門 の要求を 評価 し,企業 体 の全体 の繁 栄に とトくに 必 要 な決定 的 評価を なし うる ために ,そ の要求 の 基盤を 理 解す る準備を しなげ れ ばな らない。 し かし なが ら, 財務 部門 は, 企業 体の投 資お よび資 金調 達 のイ ソ タ ーデ ィシプ10 ) リナ リーな調 整者 とは 必ず し もみな されな かった のであ る。」 ま た, ボル テ ンは , 現代的 見解 とし て次 の ようにい う。意思決定論的財務論における配当政策論 」43 「 現代 的 見 解 と し て は , 財 務 職 能 に も っ と活 動 的 な 役 割を 与 え , 企 業 体 の 投 資 と資 金 調 達 (investmentsandfinancing ) を 調 整 す る 職 能を 考 え てい る 。 こ め変 化 は , 他 の 企業 体 お よび 国 家 と9 競 争 の 増 大 に 見 合 うた め に , 企業 体 の 一 層 の 資 源 配 分 の 必 要 性 の 増 大 の た め に お そ ら く生 じ て き た も の で あ ろ う。」 こ の よ うに , ボル テ ソ に お い て も, 財 務 を 広 い 枠 組0 中 で 定 義 づ げ よ うと し て き て い る ので あ る。 また , ラ ー ナ- (E.M.Lerner ) に お い て は , シ ス テ ム ズ ・ ア プ フ ―チ の 概 念を 使 い な が ら , 財 務 を 企 業 全 体 の シ ス テ ムの うち に 含 め て 考 え るこ とに12 ) な る。 そ し て , 現代 企業 に お け る財 務 管 理 者 の 職 務 は , そ の シ ス テ ム の設 計 と 統 制 に 中 心 が お か れ る の で あ る 。 意 思 決 定 論 的 財 務 論 に おい ては , 財 務 の 枠 組 を か な り 広範 囲 な も の と し て 考 え て い る の が 一 般 的 と な っ てい る。 と くに 投 資 の 問 題 が 「 経 営 財 務 」 の主 要 領 域 と し て 考 え る 立 場 に あ っ て は な お さ ら そ うで あ る 。 こ の よ う な 傾 向 が ,果 し て 経 営 学 の 展 開 に と っ て 適 切 な も の で あ る と は 必 ず し も い い え な い の であ る が , 現実 に は , そ の よ うな 展 開 が 多 い こ とを 指 摘 せ ざ るを 得な い 。 2) デ ィ ーンお よび ル ッツ夫妻 の文 献は 次の も のであ る 。J.Dean,CapitalBudgeting,NewYork,ColumbiaUniversity ,1951.F.LutzandV.Lutz ,TheTheoryofInvestmentoftheFirm,London,PrincetonUniversity ,1951.3 ) ウェスト ン お よび ソ ロモン の文 献は次 の ものであ る 。J.F.Weston ,ManagerialFinance,NewYork.Holt.RinehartandWinston,1962.E.Solomon,TheTheoryofFinancialManagement,NewYork,ColumbiaUniversityPress,1963.4 ) モジ リ ア ーニ, ミラ ーの初期 の研究 は次 のものに代 表 され る。 そ の後 のい くっ か の論文は 割 愛する 。Modigliani,F.andM.H.Miller ,"TheCostofCapital,CorporationFinance,andtheTheoryofInvestment."AmericanEconomicReview,XLV Ⅲ,June1958,pp.261 ∼297.Modigliani.F.andM.H.Miller ,"TheCostofCapital,CorporationFinance,andtheTheoryofInvestment:Reply,''AmericanEconomicReview,YL,September1958,pp.655 ∼669.5 )J.F.Weston,TheScopeandMethodologyofFinance,NewJerseyPrentice-Hall,1966,p.89.6 )Ibid・,p.95・7 )Weston,J.F.andE.F.Brigham,ManagerialFinance,4thed.,NewYork,Holt,RinehartandWinston,1972 ,p.4.8 )Ibid.,p.4.9 )S.E.Bolten,ManagerialFinance,Boston,HoughtonMifflinCompany,1976,p.21.
10)Ibid.,pp.23 ∼24.11 )Ibid・,p.24.12 ) ラ ーナ ーに 関す るシ ス テ ム的 とりあげ 方 は 次 の文 献を 参 照さ れた い 。E.M.Lerner,ManagerialFinance:asystemsapproach,HarcourtBraceTovano-vich,1971,pp.3 ∼14,pp.523 ∼526.Moag,J.S.,Carleton,W.T.andE.M.Lerner,"DefiningtheFinanceFunction:AModelSystemsApproach,"JournalofFinance, χχII,no.1,1967,pp.543 ∼557. Ⅲ 配当政策の制度論 意 思決定 論的 財務 論に おけ る配 当 政 策論を 論ず る うえ で, まず 従 来か らの 財 務論(いわゆる筆者がいうところの 「企業金融論的財務論」 および 「管理論的財 務論」をさす) で とくに と りあ げ ら れて きた もの の うち のい くつ か を , そ の 制 度的 側面 の理 論を 重 視しな が ら と りあげ て おきたい 。 つ ま り, 本 節は, 次 節で 展 開する配当 政 策論 の位 置づけ を一 層 は っき りさせ るものであ ると考 え ら れる。 配当 政策は, 経営 財 務上, 資 本 調達 との 係わ りの中で 重要 な 位置を 占 めて きた とい え る。 配 当政 策が 制 度的 意 味あい に おい て重要 であ る と い う こ と は,そ れ が企業 体 と株主 と の関 係の中 で直 接的に 遭 遇す る問 題であ ったか ら に ほかな らない。 す なわ ち企業 体に 資本を 提 供した 株主 が企業 体 の 経営活 動 の成 果 の一 部 として配 当を 受け と るとい うことは, 配当 政策 が利 潤分配 の一 環 と しての意 味を も ってい た からで あ る。 た とえ ば, ガス マソ と ド ゥゴ ール (H.G.Guthmann&H.E.Dougall ) で13 ) は, 配当 政策に 関 し次 の よ うな 展開を した。 (1) 配 当分配 の手 続 配当を 決定す る力 は取 締 役 会に おい て与 え られ てい る。会 社 の付 則は ほ と んどこ の点につい て, 取締 役に一 般的 力を 与 え てい る の であ る。 (2) 配 当政策に 関す る 取 締 役の統 制 適法 の問 題が 含 まれてい な け れば, 配 当 の支払い とか 抑 制は ,取 締 役が完 全な 管 轄権を も ってい る 経営政 策 の問題 であ るととにな る。 株主 は, 取 締 役 の行 為 が十分, 忠実 であ り,不 正が 含 まれない 限り, 取 締役 の決定 に よって 拘 束され る のであ る。(3 ) 配 当に関 す る法的 制 限 合 法性 の問題 は, 異な った 州の法 律が一 定 してい ない 理 由で 非常に 複雑で あ る。 一 般に, 法的 な配 当 制 限は , 株主に よって与 えら れた 債務 以上 の 会社
意思決定論的財務論における配当政策論ここ145 資 産 の 剰 余 の 減 耗 に 対 し て , 債 権 者 を 保 護 し て い る の であ る。 こ の よ うな ガ ス マ ン等 の展 開 は , 一 面 で は 配 当 政 策 の 法 律的 側面 の記 述 が 重点 を 占 め る こ とに な フ てい る とい え よ う。 こ の 点 は , ハ ズ バ ン ドと ド ッ ケ14 ) レ ー(Husband,w.H.andJ.c.Dockeray ) の 場 合 も同 様 で あ る 。 また , ハ ズバ ン ドと ド ッ ケ レ ーに よ れ ば , 配 当 の 種 別 化 の 説 明 が 次 の よう に な さ れ る の であ る 。 (1) 現 金 配 当 (CashDividends ) 現金 配 当 は , 会 社 の 資 産 の 減 少 と, 株 主 の 資 産 の 増 大 を あ ら わ し て い る。 抽 象的 意 味 に お い て , 株 主 の 資 産 の 増 大 は 純 粋 な も0 と し て みな す こ と は で き ない 。 な ぜ な ら 株 主 が 明 ら か に 富 を ふ や す 範 囲 ま で , こ の 会 社 に お け る 自 己 資本 の 価 値 は 減 少 し て い る か ら で あ る 。 一 方 , 現 金 配 当 の 支 払 い は , 株 主 が 以 前 に ふ れ るこ と が で き な か った 資 産 を 株 主 に 利 用 で き る よ う に し て い る 。 ど の よ うな 場 合 で も, 二 , 三 の 例 外 を 除 い て , 現 金 は 配 当 支 払 の主 要 形 態 とい う こ とに な る の で あ る。 (2) 株 式 配 当 (StockDividends ) あ る 会 社 に よ る 株 式 配 当 の 支 払 い は , 資 本 金 勘 定 を 増 加 さ せ , そ の 同 額 だ け 留 保 利 益 を 減 少 さ せ る こ と に な る 。 実 際 に は , こ の 会 社 は , 剰 余 金 勘定 の 総 額ま で 株 式 配 当 を 支 払 う こ と が で き る 。 現 金 と そ の 他 の 資 産 項 目 は 影 響 な くそ の ま まに さ れ , 十 分 に , 経 営 活 動 の 目 的 に 利 用 さ れ る で あ ろ う。 株 式 に よ る規 則 的 な 配 当 支 払 は ,(1)実 際 に 活 動 し てい る 会 社 の 現 金 の 保 全 ,(2)会 社 の 資 本 を 調 達 す る 手 段, (3)配 当 の安 定 性 くとい うのは 株式 の支払いは会 社の直 接的な流出を構成 するも のでは ないから), を 達 成 し て い る。 一方 ,/ド ナ ル ド ソ ン と プ フ ォ ール(E.F.DonaldsonandJ.K.Pfahl ) に よ15 ) れ ば , 配 当 に 関 し , 以上 の も の と 同 様 な 展 開を し て い る 。 つ ま り, 配 当 の 種 別 化 に つ い て は 次 の よ うな も の に 分 け て 展 開 し て い る。 (1) 現 金 配 当 (Cashdividends ) (2) 現 物 配 当 (Propertydividends ) (3レ ス ク リ ップ ・ デ ィ ビ デ ソ ド(Scripdividends ) (4) 社 債 配 当 (Bonddividends ) ㈲ 株 式 配 当 (Stockdividends ) 以 上 に おけ る 学 者 の研 究 の 中 で は , 配 当 そ の も の の記 述 を し てい る のに す
ぎない 。つ ま り,配 当(Dividends)の 制度的特質 を示 し てい るに す ぎない と 考え られ る。 さX, わが 国 の配当 政策 の研 究 の中で は, 細井卓 教授 の 「配 当 政策」を こ16 ) こで とりあ げ る こ とが で き るで あろ う。 細井 教授 の配 当政 策 論は , 次の説 明 か ら,そ の一 端を 知 るこ とがで き よう。 「 こ の経営政 策的 な配 当問 題 の処理 は, 結局 ,一種 の 『財務政 策 』(financialpolicy )の問 題 であ り, 一 層 はっ き り云 えば, こ れこそ『配 当 政策 』(dividendpolicy )の問題 であ る。 経営 者にと っ ては, この配当 政 策上 の 諸問 題 の 経営17 ) 学的 究 明が, 他 のすべ て の究 明に まさ って, 有用 とな るであ ろ う。」 と ころ で, 配 当政 策は, 成 果配 分 の一 環 として みる見 方 は , こ の「 企業 金 融 論的 財務 論」 にあ っては, 一つ の妥当 性を もち うる見解 であ ったこ とはい うに 及ば ない であ ろ う。 細井 教授 も また, この配 当政 策を 経営成 果分 配の一 環 とし て考 え 展開 した点 につい ては意 味 のあ るところ であ る と思 わ れる。 これ らの点 は, 山 城章 教授 の「対 境理 論」に よる分配 論 の中に もみ ること18 ) がで きる。 つ まり,配 当 は, 株主 集団 への公益 配分 として 考 察さ れる のであ る。配 当政策 が 分配 論 として も重 要な 意 味を もっ て きた ことにつ い て は,い わ ゆる「資 本 と経営 の分 離上 とい う現象を 前提 とす るな らば, 理解 のできる ところ であ る。 証券 市場を は じめとす る資 本市場 の発 達 から「資 本 の証券化」 に 伴い ,配 当 政策 もそ の制 度論 とし ては一 層 の充 実を 図 らなけ れば ならない であ ろ う。 また, 配当 政策 が 資本 調達政 策の一 環 と七 て考え るな らば,そ こ で もそ の制 度論 とし て,あ らた め て配当 の性 格を 規定す る必要 かお るよ うに19 ) 思わ れる。 次 節では , この ような 配当 政策 の制 度的特 質を 中心 とす る研究に 加えて, 意思 決定論 的 財務 論が ど の ように 配 当政策 の理 論を 展 開す るのであ ろ うかを み てみ るこ とに す る。
13)Guthmann,H .G.andH.E.Dougall,CorporateFinancialPolicy,4thed ・,NewJersey,Prentice-Hall,1962,pp.527 ∼550. ,14
)Husband,W.H.andJ.C.Dockeray ,ModernCorporationFinance,7thed ・,IllinoisIrwin,1972,pp.354 ∼371.15
)Donaldson,E.F.andJ.K.Pfahl,CorporateFinance,2nded. ,NewYork,TheRonaldPress,1963,pp.615 ∼638.10
j/' ^ /' \700enIII 意思 決定 論的 財 務論 に おけ る配当 政 策論147 細井。 前 掲書,13 ペ ージ 。 山城章 『 経営原 論 』< 経営 学全 書1 > ,丸 善, 昭和45年,159 ∼163 ペ ージ。 た とえ ば「 配当 の利 子化」 という 概念が よく使わ れ てきた。 は たし て, 現 在ニ そ の意味 が 十分 , 妥当 性を もち うる であ ろ うか。 これ ら の具体的 課題 につ い て は別 の機 会に 譲 るこ とに す る 。 Ⅳ 最適配当政策論 さ て , 意 思 決 定 論 的 財 務 論 に お い ては , 配 当 政 策 論 は ど の よ うに 展 開 さ れ る のであ ろ うか 。 こ こ に おけ る 配 当 政 策 論 は , そ の 理 論 が 強 調 さ れ る こ とに な るよ 配 当 政 策 論 は , 投 資 決 定 論 , 資 本 調 達 論 , 資 本 コ ス ト論 と も 密 接 な 関 ■ ■ ■ ■IIFLI ゝ 連 を も っ て 展 開 さ れ る こ とに な る 。 ニ \ 配当 政 策 は , 税 引 後 の 純 利 益 の う ち , ど れ だ け を 配 当 と し て 支 払 い , ど れ だ けを 内 部 留 保 とす るか とい った 点 に 関 す る 経営 財 務 政 策 を 意 味 す るよ 意 思 決 定 論 的 財 務 論 に あ っ て は , 配 当 政 策 は , 企 業 体 に と っ て ( 厳密にいえば 株主 に とって)最 も 有 利 な も の であ り , 最 も 適 切 な も の で な け れ ば な ら な い 。 す な わ ち丿 適 切 な 配 当 政 策 は ,「企 業 価 値 を 高 め る」, あ る い は 「 株 価 を 極大 に す る」 と い う 目 標 の 達 成 に つ な が る も の と な る ので あ る 。 で は , 意 思 決 定 論 的 財務 論 の 範 躊 に 属 す る と 思 わ れ る 論 者 は そ れ に つ い て ど の よ うに 説 明 す る の であ ろ うか 。20 )21) こ こ で は , ゴ ー ド ン教 授 (M.J.Gordon ) の見 解 を み て み よ う。 ゴー ド ン に よ れ ば , 配 当 政 策 の理 論 は ,「 企 業 価 値 極 大 化 丁 あ るい は 「 株 価 極大 化 」 の も と で 具 体 的 に 関 連 を も っ た も の と考 え る の で あ る。 つ ま り , あ る 株 価 方 程 式 を 導 き , 企 業 価 値 と 配 当 と の 関 連 性 を 明 ら か に す る 。 そ の 場22 ) 合,ゴ ー ドンは, モジ リケ ーニ, ミラ ーの仮説 も考 慮 し なが ら, 自説を 展開 す るレ ー ダ (臣 ゴードンは , まず,「 株価は 配当 と無 関係 であ る」 と い うモジ リア ー ニ, ミラー (以下MM という) の基 本命題 の検証 か ら始め て み よう とす る。MM は,^ =0 に おけ る株式 の価 値を ,(1)最初 の期末に 支払 われ る配 当,皿 に , (2)その 期末に おけ る配 当落 ち の株価 ,Pi を 加えた も の の 現在 価 値と して次 の ように定 義した。 Po = -11 [瓦 十Px] (1) 十 た
それからMM は,もし会社が, 配当が増大す ることによって失われた資金 を 相殺す るために必要な追加株式総数を 売ることに よって一定した 期間,配 当だけでなく投資を 維持するために資金調達するならばどんなことが生ず る のかとい うことを提起した。MM は,その期末におげ る配当落ちの株価は, その配当の増大と同じ額だけ下落するであろ うこと を 証明七だ。D 丿R の 合計は同じままでい るので,Fo は,配当 の変動に よっては変動はない。 ゴーギンに よれば,不確実性の下では,MM は。二つの理由に よ っ て。23) その結論を 確証づけられなかった と思われるとい う。 第1 に不確実性の下で は ,投資家は,配当と株価り 値上 りとの間に,一 期間 の株式に対する利得の 配分に関して無差別であることを 必要としない。 株価の値上りが非常に不確 定な ので,投資家は配当額O で,55 ドルの株価 よりも5 ドルの配当と50ドル の株価の期待を 好むかもしれない。第2 に,t=l において株式発行 の 予想 は,^=0 における株価に対し下落の影響を もっ か 屯しれない。MM がなし たことは,配当の変化 と発行される新株式数の変化 の両者であった。 ゴード ンは,これらの二つの事象が起ったとき,株価は変化 しないであろうかを確 かめることができ るかどうかを考え ることになるのである。 川 次に, ゴードンは,ゴードンが表わした論文におけ る配当率に関するMM t=0 期末に おい てFo を 稼得 し, そ れを す べ て配 当に 支払 ってい る会 社 を 考え て みる。 さ らに ,こ の会 社は , 全利益を 配当 に 支払い 続け ,外 部から の資 金調 達は ない と予 想さ れる と仮定 して み る。 これ ら の仮説 の もとで は, こ の会社 は, 未来の各 期に おい てYo を 稼 得し ,Fo を 配当 支払 い とな る と 予 想さ れ る。 もし , 投資家 がそ の株式 に 必要 とす る投 資利 益 率(therateofreturnoninvestment )が ルであ るな らば , 株式 価値を 次 のよ うに 表わす こ と がで き る。 戸o= Fo (1 十が)1 ^0 (1 十剔)2 Fo (1 十ゐ)3+ … … + `J0(l十 紅)゜+ (2)
われわれは,また たが,永久に続くFo の配当期待を株価 几 に等しい割
引率であるということができる。
次に,会社が^ =1 期中にFi =Fo を留保し投資する, またその 会社が
意 思 決定 論的 財務論 におけ る 配当政 策論149 投 資に 対 し た= 匹 の利 益 率 を 稼 得 す る のを 期 待 す る 場 合 の , ?o ^=0 の会 社 を 取り出してみよう。続いておこる各期において,会社は利益すべてを配当 に支払 うことになる。すると株価は 次のように表わすことができる。 ?o = 0 (1 十即 Fo 十んYo(1 十ん丿 Fo 十力Yo(1 十k) + … … + Yo 十ゐYo(1 十ん丿 + … … (3) 右 側 に あ る 最 初 の 項 の 分 子 がO で あ る こ と に 注 目 し て み よ 。 そ れ が 配 当 で あ り , こ の 期 間 に は 利 益 が な い の で あ る 。 な ぜ な ら 投 資 家 は 正 確 に は,Po に 到 達 す る と き に 配 当 期 待 を 利 用 す る も の と し て 表 わ さ れ て い る か ら で あ る 。 も し , 投 資 家 が 利 益 の 期 待 を み る も の と し て 表 わ さ れ る な ら ば , そ の と き ボ ■ ■ ■ ■ ■ ㎜ ㎜㎜■㎜-・ −デソ ホ ーソ(D.Bodenhorn) が示 し た ように,ニ投 資家 は, 最 初の 期間の利 益を 二重に 計算す るこ とに なる であろ う。 会社 の意 思決定 の結 果 として, 投資 家がt =l 期末 におい てFo を 引き 渡 し,その場に おい て, 永久に みYo を 受け 取 るこ とは 明ら かであ る。また 永久に ゐで割 引か れた ゐYo が正確 にFo に 等しい こ とは 明ら か であ る。 した がって 几 が変 化 し ない ならば ,全 期間を 通 じ て配当 の分 配に おけ る 変化 は, 株 価 に 影響を 与え ないであ ろ う。一 般に , 会 社は , 投 資利 益 率r 娯k に 等しい 限り,株価 が結果 とし て変化 す るこ とな しに, 各 期に おけ る所 得の一 部を留保 し,投資す るこ とが 期待され うるのであ る。 もし各 投資 に対 しr > たならば,Po は増大す るであ ろ う。 しか し, そ の理 由は 投資 の収 益 性(theprofitabilityofinvestment) であ り,配 当 の分 配時 期に おげ る変 化で はない のであ る。 今,こ の会 社が,方 程 式(2)に よって与 え ら れた ものか ら ,方 程式(3)に よっ て 与えら れた ものへ と配当 期待 を 変化 さ せ る発 表を な す とき, 投資家 は んか ら が へ と割引 率を 上 昇させ ると仮定 して み よ う。 この 瞬間 , 割 引率が んか ら が へ と上 昇す る のか,す なわ ち, 投 資家 が 株式に対 し必要 とす る 利益 率 が 配当 期待におけ る上 記 の変化 の結果 として上 昇 する こ とを 疑 うこ とはない であろ う。 こ のこ とが起 るなら ば ,方 程式(3)は 次 の よ うに な る。 Po' = 0 (1 十が)1 Fo 十 ゐYo--(1 十・が)2 Fo 十kYo(1 十が)3 + ‥‥‥,・十 k'>k の ときP ♂<Po で あ るこ とは 明ら かであ る。 Fo 十 力Yo-(1 十k'Y + ‥‥ ‥ (3a)
何 か 起 っ た の か を 再 検 討 し て み よ う 。 配 当 政 策 が 変 化 し た の で あ る 。 す な わ ち 最 近 の 配 当 が 減 少 し た 。 し た が っ て 将 来 の 配 当 が 上 昇 し た 。 こ の こ と は 割 引 率 の 上 昇 を 生 じ た 。 そ の 結 果 , 株 価 の 下 落 が 生 じ た 。 し た が っ て , ゴ ー ド ン は , 配 当 政 策 の 変 化 が 株 価 を 変 化 さ せ た と い う の で あ る 。 こ の 議 論 に 対 し ,MM は , ゴ ー ド ン が 投 資 政 策 と 配 当 政 策 と の 典 型 的 な 混 同 に 陥 っ て い る と 述 べ た 。 ゴ ー ド ン は こ の 理 由 を 理 解 で き な か っ た と い う 。 投 資 利 益 率 が 割 引 率 に 等 し く 設 定 さ れ る と き , 投 資 水 準 の 変 化 は 株 価 に 影 響 を 与 え な い 。 こ の 意 味 に よ っ て , ゴ ー ド ン は 投 資 の 収 益 性 を 無 効 に し た 。 ゴ ー ド ン は 投 資 政 策 と 配 当 政 策 と を 混 同 し な か っ た こ と は 全 く 明 ら か に26) 思 わ れ る と い う 。 す な わ ち ゴ ー ド ン は 割 引 率 を 変 化 さ せ た と い う 。 上 述 の 例 ・K 。 ・・・-II ・ ・I ㎜ ■ ■ で は , 割 引 率 が 変 化 七 万 の 懲 √ 株 価 が 配 当 率 に ょ っ て 変 化 し た よ し 犬 か っ て , こ の 論 点 は , 不 確 実 性 下 の も と で は , 投 資 家 り 行 動 は , 株 価 と 配 当 期 待 に 等 し い 割 引 率 が 配 当 率 の 関 数 で あ る フモ デ ル に よ っ て 正 確 に 表 わ さ れ て い る か ど う か と い う こ と で あ る 。 ゴ ー ド ン は ,k が 配 当 す な わ ち 配 当 率 に お げ る 成 長 率 の 関 数 で あ る と い う27) こ と を 無 条 件 に 述 べ る こ と は で き な か っ た と い う 。 し か し , ゴ ー ド ン は , モ28) の 命 題 を 支 持 し た 理 論 的 考 察 と 経 験 的 検 証 を 表 わ す こ と が で き る と い う 。 す な わ ち(1) 投 資 家 は リ ス ク と 不 確 実 性 に 対 七 回 避 し た い も の と し て い る 。ま た ,(2) 会 社 の 危 険 度 が 与 え ら れ る と , 支 払 い が 期 待 さ れ る 配 当 の 不 確 実 性 が 将 来 の 配 当 の 時 点 に お い て 増 大 す る 。 こ れ ら の 二 つ の 前 提 に ょ っ て , 投 資 家 は ,Z と 関 連 し た 恥 に よ っ て,kt の 率 に お い てZ 期 間 に 期 待 さ れ る 配 当 を 割 引 く も の と し て 表 わ さ れ る こ と が 導 か れ る 。 さ ら に , も し リ ス ク に 対 す る 嫌 悪 が 非 常 に 大 き い な ら , あ る い は リ ス ク が 時 問 と と も に 非 常 に 急 速 に 上 昇 す る な ら ば ,kt は き と と も に 増 大 す る 。 ・・ ♂--し た が っ て , 確 実 で は な い と ♂--し て 乱 投 資 家 の 行 動 が , 配 当 期 待 の 価 値 へ の 到 達 に お い て , 彼 ら が そ れ を 恥 の 率 , た だ し ,t 〒1,2, ■…., 。。 力 。ε> 恥-l で 割 引 く と い う 論 述 に よ っ て 正 確 に 近 づ け ら れ る こ と は 可 能 性 の あ る こ と で あ る 。 こ の 事 象 に お い て は , ゴ ー ド ン が 株 式 評 価 モ デ ル で 使 う 割 引 率 は , 配 当 の 成 長 率 の 増 加 関 数 で あ る 。 要 す る に , 配 当 政 策 は 株 価 に 影 響 す る 。 こ れ 仙 ゴ ー ド ン の 主 張 と な る 。 こ の 結 論 の 説 明 の た め に , ゴ ー ド ン は(2) 式 を 次 の よ う に 書 き 改 め る 。 丿 … …
Po = Fo (1 十れ' Yo (1 十 ん^) 意 思決定 論的 財務 論に おけ る 配当政 策 論151 + … ‥ (4) ゴードンは, もし全部の配当 期待が単一の率で割引かれるならば,それは同 じ株価を生ぜしめるとい う理由で, 方程式(2)の んを方程式(4)の れ の平均 と してみなすことになる。この割引率 ゐは,各項目に加重に割り当 て ら れたFo とともに,kt の平均である。
もう一度,この会社がFi =Fo を留保し, 永久に一 期間につきkYo を 稼 得するために投資す ることにしてみよう。割引率 恥 を利用して, 同じよ う に,方程式(4)を表わせば,新しい配当 期待の評価は次のようになる。 ? ♂= 0 (l 十 力^) Fo 十kYoYo 十kYo(1 十万,) 十(1 半酸)^ + … … + Fo 十ゐYo(1 十島ン + … … ダ (5) 株主はFo を 引き渡 し, 永久 に たYo を 得 る。 しかし後 者は, 現在, れ た だ
し,t =2 →CO, で 割 引か れ, ゐYo がそ れ だけYo よりも少ない とい うご と が
示 され る。 した が って ?o'<Po な らば, 配当政 策は 株価に 影 響す る。 ま た, 鳥 と同 じ新 しい 平 均であ る が が ゐ よりも大 きい とい うことが示 され る。 一般に, 最近 の配 当 の 減少 と将 来 の配当 の上 昇 (配当率を低くする) は,kt の加重を 変化 し, そ の平 均を上 昇 させ るのであ る。 \ ㈲ ゴー ドンの議論 の理 論的 部分を 要 約すれ ば, ゴ ード ンは , 二つ の仮 説バ1 ) リス クの 回避,(2)未来 の時点 に おけ る受 取 りの不 確実 性の増大 , から 出発 し29 ) たとい う。 これ ら の仮 説か ら, ゴー ドンは, 投資家が 株式 の配当 期 待 を 評 価する のに 使用 され る も のと して表 わ され る単一 の割 引率は , 配当に おけ る 成長率 の増 加関数 であ る とい う前 提か ら 演拝的 議論に よって 進め た の で あ る。 この命題 の結 果は ,配 当 政策 は, 本 来, 株式の価 値に 影 響を与 え るとい うことであ る。 この 仮説 は, 直 観的 な利 点を 十 分 もっ てい るし, ゴ ードンは , この命題が実 際に おい て も真実 であろ うとい うことを 信 じてい る のである。 実 証的 検証を 進 め る前に , ゴ ードンは ,MM が ゴード ンの議 論に 向 け た ぞ30 ) の 他の二つ の批 判に 関 し,主 に 注 釈を 加え たい とい う。 第1 に ,MM は, ゴ ードソのい う「純 粋に は ,主 観的 な 割 引率 と客観的な 市場 利 子率」 との間 の31 ) 区別を し, 次 のよ うに 述べた 。「 これ ら の純 粋には主 観 的要 因か ら評価 公 式
を 引き 出す 試 みは , もちろ ん,誤 りを 含 んでい る。」 ゴ ー ドン の仮 説 と 実証 的 結果 は 疑い のあ るものか もしれない が , どこが 誤 りで あろ うか。 こ の命題 は 仮説 か ら後 づけ ることは できない であ ろ うか。MM が示 した よ う に , 投 資家 が, 不 確実 性 のも とで, 未来 の配 当を 評価 した り, 適当 な利 率でそ の流 列を 割 引 くご とに よって, 株式 の評価 に到 達す るこ とは 論理的 に不 可 能であ ろ うか。 ゴ ー ドン の議 論に 対す るMM の次 の よ うな批 判に つ い て, ゴ ー ド ン は32) もっ と混 乱があ るこ とを 見つけ る。MM は 次 の ように い う。「実 際問 題とし て> もし 投資 家 が ゴー ドン の アプ ロ ―チに 従っ て 株式 を 評価 し, より高い 支 払い 比 率 と して のプ レ ミア ムを 支払 った なら ば ,そ の と き低い 支払 比率の 株 式 の 保有 者 は, 現実に は, ど んな状 態の時点 に おい て もそ れ 以上 の高い 投 資 利 益 率を 矛盾 な く実 現す るであろ う。」 こ うい った 理 由 の も と で, 二つ の株 式 は ,そ れ らが リス クにおい て どの ぐらい 異な っ てい る かを 無 視して 異なっ た利 廻 りで 売 る ことは で きない。 な ぜなら よ=り高い 利 廻 りの 株式 の 保 有 者 が,「 現実 に は, ど んな状 態の時点に おい てもそ れ 以上 の 高い 利益 率を 矛 盾 な く実 現す るであ ろ う」 か らであ る。MM は, 投資 家 が リス クに対 す る 回 避を もつ こ とを 否定す るのであろ うか。 こ の命 題を 実 証的に 検証す るた めに , ゴード ンは ,次 の よ うに 進 める こと に した。 株式 の評価は 次 のよ うに 表わす のであ る。Po ミ0 バ6)0 ただ し, 瓦 はZ 期に 期待 され る配当であ り,k は ,そ れを 投 資家に対 す る 現在 価 値に よって 割 引く 瓦 の 係数 であ る。方 程 式(6)は , 問題に な らな い 完 全に一 般的 な 説 明であ る。 しかし ながら, 実 証的 作業 に お い て方 程式を利 用 す る ために , 投 資家が 観察 でき うる変 数 から £)けこい かに して到 達す るかを 特 定化 しなけ れば ならない。 こ のために , ゴー ドンは, 会社 が,(1)各 未来の 時 期に おけ る利 益 の うち &部 分を留 保 し,(2)各 未 来 の時 期に おけ る 自己資 本 利 益 率r を 稼得 し,(3)現在 の負 債比率を 維 持 し,そ し て(4)新 規の 外部から の 自己 資 本に よる調達を しない , とい うこ とを 投 資家 が 期待 してい ると仮定 して みた。 上 述 の仮定 の もとで, 現在 の配 当は ,z)o=( −&)Fo であ り,そ の成 長 率 は 加 であ る。 さらに, 完全 な配 当 期待 は, こ れ ら の二つ の 変数に
意思 決定 論的 財 務論 にお け る配当 政 策論153 よ っ て 表 わ さ れ 丿 方 程 式(6) は 次 の も の に 等 し く な る 。 Po = (l −的Fo 力一br (7) 上 述の四 つ の仮説 は, 現実をあ まりに も単純 化 しす ぎ てい ると して 批判さ れ るか もしれ ない 。多 くの実証的 結果 ぱ ,会 社が すべ て の利益 を 配当 に 支 払 い,外 部か らの 資金 調達に よら ない ことを 期待 す るも のと して投 資家を 表わ してい る。そ れ ゆえ,それ らは, 株価に対 す る投資 の収 益 性 の影響を 無視 し ている。 こ のモ デルは, 会社 の投 資と 各未 来 の時 期に おけ る投 資利益 率の予 測をい っ し ょに し てい る。t 期に おけ る 期待投 資は ,そ の期の利 益 の み部分 に この会社 の 現在 の負債比 率を維 持 する留 保 部分 の レ バレジを 加え た もので あ る。 さらに , 期待配当 に関 し て, この留 保 部分 と借 入れ の影 響は この モデ ル の中 に 含 まれ るのであ る。 犬 この モデルに つい て興 味あ る事 は, そ れ がMM の前 提と 矛盾し ない こ と であ り, 異議を た てない とい うこ とであ る。 これを みれ ば √k かb と独立 してい る仮説を と り, 投資 の収益 性を 消す ため に,/ ん に してみ よう。 こ の モデルにおい て,配当 政 策は, 留 保率 みに よって表 わ さ れる。 そ の結果, もし,わ れわ れが 糾こ関 して,Po の導関 数を とる なら ば, 株価 と配当 率 と の間の関 係を確 立す るであろ う。 われ われは ∂P/ ∂b =0 を 発見す る。 ゴ ー ドンは, 株式 の価 値は, 正 確に はMM が 議 論し てい る配当 率 とは 無関 係で あ るとす るのであ る。 一般に は,k がbr と無関 係であ る とい う仮 説 のもと では , 実証的 作業に おいては, こ のモ デルを 使 うのであ る。 ゴー ドンは,k がbr の増 加関数 で あ るとい うこ‥とを 信ず るに十 分 な理 論的 根拠を 見つ け た ので, こ の仮説を 検33) 証するこ とは合 理的 であ る と思われ るであ ろ うとい う。 もし 灸が & の増加 関 数であ るな らば ,方程 式(7)を 次 の ように 書 くこ とが で きる。 几 ―Aa[( 一友)Yo][1 十& や(8) こ の表 現におい て は,。Aoは, 現在の配 当( −&)Yo お よび成 長 率 加 以 外
のすべて の変数 の影響を 表 わし てい る。b=0 の とき,Po はAo にYo を 掛
け たものであ る。 加 が 増大 す るにっ れ て, 配当( −的Yo は , 低下し,br
が上昇す るにっ れ て, 前者は 株価 が低 くな り, 後者 は株 価 が 上 昇 す る。Po が 似こつ れ て上 昇 した り下 落す るか ど うかは, 投資 の収 益 性r と α2に 依存
す る。 αzは, 投 資家 が どれ だけ 成 長 のために 償お うとしてい る かとい うも の として みなす こ とが で きる。そ の価 値は 恥 が どの ぐらい の 速 さ でZ と と もに 上 昇す るか ,す なわ ち, どの ぐらい の 速さで不 確実 性が 時 間 とと もに 増 大す る か とい うこ と,お よび リス クに対 す る投資家 の回 避の 度合に 依存して くる。 ゴー ドンは, ㈲の方程 式 は単 な る株式 評価 モデル では ない こ とに 注 目しな34) け ればな らない とい う。 株式 に対 す る投 資家 の評価)-Tin とat が与 えら れ, 投 資の 収益性r が与え ら れ ると, この モ デル は, 株式 の価値を 極大 化す る留 保 率( ゴードンの仮説のもとでは投資比率に等しい)を 見つ け るた めに 使 わ れ る のであ る。 州 \ ゴー ドンは, 経営 財 務 の理論に 関 して 現わ れてき てい る二つ の主要 な ダル35 ) − プに つい て 重要 な コ メン トに 応 じたい とい う。 両 グル ープ におい て, 最適 政策 は ,会 社の価 値を 極大 化す る政策 として とられ る。 た とえ 会社 が,心 の 中 では ,こ の目 標だけ で 投資や 資 金調 達決定を しない とし て 乱 経営 者は, そ の会 社 の証 券 が売 ら れ る価 格に 対 して, 必ず し も無 関 心で は ない の で あ る。 したが って , 提出さ れた こ の政策 の問 題は,実 践的 な重 要性を もってい る のである。 一つ の グル ープ では(MM をさすン 会 社の 資 本 コス トが一定 し てお り,す な わち, 資 金 調達 の方 法と 水準 とは無 関 係であ る とい うこ とが 議 論 され てい る。 最適な 政 策 とは ,投 資 の限 界利 益を 資本 コス トに 等 しくす る 投 資であ る。 避け る こ とので きない 結論 は,資 金 調達政 策 が問 題 ではない と い うことであ る。 こ の反 対的 立場 は, 会社 の資本 コス トが資 金 調達 の方法 と 水 準とに よっ て変動 す る とい うこ とであ る。 ゴー ドンは ,理 論的 ・実証的 検 証か ら, この 立場を 好 ましい もの とした のであ る。 これら の 二つ の グル ープの 論争は ,そ の後 も展 開さ れ ることに な る。本 節 では,MM に 対 す る 評価につ い ては , ゴー ドンの主 張を 援 用す るに と ど ま った 。MM の主 張に対 す る具体的 な, かつ 内在 的 評価に つい ては, 別の 機 会に 論ず る ことに したい 。 なお ,本 節で は, 意 思決定 論的 財務 論におけ る配当 政 策論 が ど のよ うな 形 で 構築 され てい る かを みた のであ る。 こ の点を 強 調して お きたい 。
意思 決定 論的 財務 論 におけ る配当 政 策論15520 ) この テ ーマに関 す る ゴ ードン の研究 とし ては 次 のも のをあげ て お くこ とにし たい 。M.J.Gordon,TheInvestment,FinancingandValuationoftheCorporation,Homewood,III.:R.D.Irwin,1962.M.J.Gordon,"Dividends,EarningsandStockPrices,"ReviewofEconomicsandStatistics,vol.XLI,May1959,pp.99 ∼105.M.J.Gordon,"TheSavingsInvestmentandValuationofaCorporation,"ReviewofEconomicsandStatistics,February1962,pp.37 ∼51.21 ) 前記文 献 と ともに ,本 節 では, 次 の論 文を中 心に 検討 を加え た 。M.J.Gordon, “OptimalInvestmentandFinancingPolicy,"TheJournalofFinance,Vol.XVIII.No2.May1963,pp.264 ∼72. な 執 ここ では 前 掲論文 を 次 の論文 集に よっ た。Archer,S.H.andc.A.D'Ambroshio,TheTheoryofBusinessFinance,ABookofReadings,2nded.,Macmillan,1976,pp.628 ∼635.( 本文 で の引用 ペ ージはこ れに よる)22 ) ゴ ードン が対 象 とす るモ ジリ ア ーニ* ミラ ーの論 文は 次 のもの であ る 。Modigliani,F.andM.Miller,"DividendPolicy,GrowthandtheValuationofShares,"JournalofBusiness,XXXIV, 上October1961,pp.411 ∼33.. ヅ ⊇し23 )Archer,S.H.andC.A.D ’Ambroshio,op.cit.,p. ,629. ‥‥‥ ‥ ‥‥‥ ‥‥24 )・Ibid.,p.630. ニ 丿 ニ ・25。 )D.Bodenhorn, ・OntheProblemofCapitalBudgeting,"JournalofFinance,December1959,pp.473 ∼492.26 )Archer,S.H.andC.A.D'Ambroshio,op.cit.,p.630.27 )Ibid.,p.630.28 )Ibid.,p.630 ・29 )Ibidp.632 ・30 )Ibidp.632 ・31 )Modigliani,F.andM.Miller, “DividendPolicy,GrowthandtheValuationofShares,"JournalofBusiness, χχχIV,October1961,p.424. / \ / " " > 。 / \ / \ │ ^ c l r o -^ l o r o M C O C O Ibid.,p.425.Archer,S.H.andc.A.D'Ambroshio ,op.cit.,p.633.Ibid.,p.634.Ibid.,p.634. V 結 び 以上にわたり,意思決定 論的財務論におけ る配当政策 論として,その新た な アプp 一千に よる理論的展開を みてきた。意思決定論的財務論が財務論の 領域におい て新しい方向を模索しており,またいくっか の点において新しい 概念を提起しつっあ る。そ うい った点につい ては,われわれも十分に理解し, それらの理論的枠組に対し,何らかの批判を 加え,それを 吸収しなけ ればな らない。 本稿では,伝統的 な「企業金融論的財務論」の中で とりあげられてきた内 容の論点を具体的に主張し,展開を試みてきたので,「意思決定論的財務論」 の中でとりあげられる配当政策論が,それとの比較で,一層,明確にされた
こと と思わ れ る。 配 当 政策 論は , 経営学 的に は , 株主 集 団 とい った ような環 境主体 との関 連 の中 で問題 と されなけ れば な らない。 また, 財 務論 の領 域に 限定 すれ ば,配 当政 策は 資本 調達論 の一 環 として考 え られ なけ れば なら ない ので あ る。 配当 政 策 論が 重要視 される理 由は, そ れが まさに こ の資 本調 達論 と係わ りを もっ てい るからに ほかな らない と考 え る。 意 思 決定 論的 財務論に おい ては ,配 当政 策に 関 して もそ の とりあげ 方が 異 な ってい た。つ まり配当政 策 の理論 が 強調 され たの であ る。そ して , ここに おい て 乱 「 企業 の 現在価 値の 極大化 」あ るい は 「 株価 極大 化 上 の もとで, 最 適な 配当政 策 の理論が 示さ れた のであ る。 この ような 最適配 当政 策 の理論 は 。 経営におけ る財務的 意思 決定 の強力 な用 具 となり う るであ ろ う。今後,1 こ うい った 側面 で の一 層, 精緻化 した 理論 の出 現が 期待 され るり であ る。二 一 方 ,意 思決 定論的 財務 論で みてき た ような配 当政 策 論の みで は,いわ ゆ る経 営学的 研 究と しては不 十分 な もの となろ う。 な んとな れば ,そ の理 由の 一 つ と して,モ こで はい わ ゆ る企業 金融 論的 財務 論で み てきた ような 制度的 側面 の考 察 の不 十 分さにあ ると考 え るか らであ る。 今 日 の 経営 体は以 前と は 異 な った 新 しい 制 度的 特質(たとえば企業の多国籍化に伴 う財務間題等) を有 す る ように な って きてい る。 また, それに 対 応す るか の よ うに, 経営 体 と関 係 を 七つ 環 境主体に も大 きな変 質 が生 じてい る。 した がっ て, 経営 財務に おい て 乱 そ れら の事 態を 考 慮した 原理 が うちた て られ なけ れば な らない のであ る。