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学業場面における誘惑対処方略の検討―自己制御の観点から― 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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観点から―

著者

小林 麻衣

学位授与大学

東洋大学

取得学位

博士

学位の分野

社会心理学

報告番号

32663甲第360号

学位授与年月日

2014-03-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00006732/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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氏   名( 本 籍 地 ) 小 林 麻 衣(神奈川県) 学 位 の 種 類 博士(社会心理学) 報 告・ 学 位 記 番 号 甲第360号(甲心第4号) 学 位 記 授 与 の 日 付 平成26年3月25日 学 位 記 授 与 の 要 件 本学学位規則第3条第1項該当 学 位 論 文 題 目 学業場面における誘惑対処方略の検討 -自己制御の観点から- 論 文 審 査 委 員 主査 教授 堀 毛 一 也 副査 教授 Ph.D. 黒 澤   香 副査 教授 文学博士 安 藤 清 志 副査 元本学教授/関西大学教授 博士(社会心理学) 北 村 英 哉 【論文審査】  社会心理学では、James 以来の「社会的自己」に関する長い研究の歴史がある。そうし た研究では、自己概念、自己評価、自己表現など多様な問題に関する研究が行われてきた が、最近の研究テーマとして、自己のもつ能動的・意志的な行動調整機能が、自己の「実 行機能」として、数多くの研究者の関心を集めている。「実行機能」とは、「数あるオプショ ンの中から特定の行動を選択し、無関連の情報をフィルターにかけ、反応を選択し、実行 にうつす過程(Baumeister & Vohs,2003)」と定義されている。こうした側面に研究の関 心が移行したのは、一定の社会集団に拘束されない流動性の高い現代社会では、個人の責 任で重要な選択や意志決定を行わねばならないことが影響しているものと考えられる。  実行機能の中心をなす過程は、「自己制御 (self regulation)」もしくは「自己統制 (self control)」と呼ばれる。これら2つの用語は、本論でも紹介されているように、多くの場 合区別せずに用いられるが、研究者によってはより広範な目標志向的過程を「自己制御」、 意 図 的 な 衝 動 制 御 過 程 を「 自 己 統 制 」 と し て 区 別 す る こ と も あ る (Vohs & Baumeister,2004)。  本論文は、表題にもあるとおり、特に学業場面に焦点をあわせ、「自己制御」という観 点から、目標達成と誘惑対処方略の検討を行ったもので、研究テーマそのものが、up-to-date な意義を有する。論文は3部から構成されており、第1部では、目標志向的過程や 自己制御研究に関する幅広いレビューが行われ、第2部では目標と誘惑の関連の検討から、 誘惑対処方略尺度の作成、方略の使用・有効性に関する検討、状況による方略の使い分け

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の検討など、8つにわたる実証的な研究が紹介されている。また、第3部では、総合考察 として、研究のまとめや意義に関する考察、そして研究の限界や今後の展望に関する論議 が行われている。  第1部は、目標研究の概観と考察、自己制御・自己統制研究の概観、本研究の目的と構 成という3章から成る。まず、第1章では、心理学における「目標」研究が、動機付け研 究から端を発し、ニュールック心理学を経て内発的動機付けを強調するに至った過程や、 顕在的な目標追求研究から潜在的な目標追求研究へと関心が移行してきたこと(第1節)、 またその過程で、目標の概念や目標の階層構造(第2節)、あるいは目標間の関連性を把 握する目標次元や(第3節)、目標に至る心理的プロセス(第4節)などが検討されてき たことが、最新の研究知見を踏まえ、的確に論じられている。さらに、第5節では、複数 の目標間の関連の様相が論じられ、目標同士が競合し、葛藤を引き起こす際に「自己制御」 が必要となることが論じられ、次節への橋渡しとなっている。  第2章では、まず、先述した自己制御と自己統制の定義等が紹介されたうえで(第1節)、 第2節では、自己制御・自己統制プロセスモデルの概観として、コントロール理論、認知 感情処理システム理論、制御焦点理論、衝動的-熟慮的モデル、自己統制の2段階モデル、 サイバネティック・プロセス・モデル、動機づけられた行動の4段階モデル、ヒューリス ティック・モデルという8つのモデルについて、詳細な説明が展開されている。それぞれ のモデルに関する解説は省略するが、注目すべきことは、これらのモデルについて、葛藤 対象、誘惑の定義、制御的反応という3つの視点を設け、比較対照が行われていることで ある ( 本文 p.32)。こうした試みは本論独自の工夫であり、これまでの自己制御・自己統 制研究ついてメタ的な視点から整理を行ったものとして高く評価できる。その中で、それ ぞれのモデルが扱う葛藤が、目標対誘惑の葛藤であること、ただし、そこで仮定される誘 惑の内容や、それを制御する心理的プロセスには、理論に応じた独自な視点がみられ、そ れを自己制御・自己統制方略として扱い得ることが示され、本研究の目的とのつながりが 明確に論じられている。第3節では、これらの説明を補完する意味で、自己制御の失敗が 取り上げられ、その要因や内容が詳細に検討されている。その上で、失敗を克服し自己制 御を成功させるためには、自己制御方略を巧みに使い分ける必要があるという発想のもと、 誘惑を予防する方略、誘惑を回避する方略、目標の重要性を考える方略、気晴らし方略と いう4つの方略に関する研究が詳細に紹介されている。本節も、これまでの研究成果を整 理し、自己制御方略として統合的に論じた、これまでにない試みとして高く評価できる部 分である。  引き続き第5節では、本研究の課題となる学業場面における自己制御・自己統制がどの ように研究されてきたか紹介がなされ、そのうえで、第3章として、本研究の目的が、1) 学業場面において使用されている自己統制葛藤や自己制御方略の把握、2)自己制御方略

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としての誘惑対処方略を把握する尺度の開発、3)誘惑対処方略の有効性の検討、4)状 況による方略使用の相違の検討、という4点にあることが論じられている。  第2部の「実証的検討」では、これらの目的に沿った実証的な研究内容が3章にわたっ て紹介されている。まず第4章では、研究1として、大学生が学業場面においてどのよう な自己統制葛藤を経験しているかに関する検討が行われている。これは大学生110名を対 象に自由記述形式で回答を求めた予備的な研究であり、結果として、誘惑が、娯楽、社会、 生理、心理、その他という5つの種類に分類されること、対処方略が、誘惑の予防と回避、 目標の重要性の確認、目標を強制的に実行、誘惑と目標の両立、という4つの方略にまと まることなどが成果として示されている。  引き続き第5章では、本論文の主眼となる、「誘惑対処方略尺度」の作成が論じられて いる。この章では、研究2:尺度の項目選定、研究3:再検査信頼性の検討、研究4:妥 当性の検討、という、尺度作成としてオーソドックスな手続きを踏んだ内容が紹介されて いる。このうち、研究2では、研究1を基盤に選定された40項目から、因子分析等の手 続きを経て、4因子20項目からなる「誘惑対処方略尺度」が構成されたことが報告され ている。4因子とは、目標意味確認方略、気分転換方略、誘惑回避方略、目標実行方略で あり、研究1のまとめと整合する内容になっている。また、研究3では、各下位尺度の内 的整合性が高いこと(α =.78~ .91)、再検査信頼性も r-=.60~ .79と充分な値を示すこと が示されている。さらに、研究4では、妥当性の指標として、自己調整学習方略尺度、学 業的満足遅延尺度、先延ばし意識特性尺度との関連が検討され、各下位尺度が、それぞれ と .10~ .47という弱いまたは中程度の相関をもつことから、オリジナルな有用性をもち つつ妥当性を有する尺度が構成されたとする結論が得られている。この尺度構成に関して は、「学業場面における誘惑対処方略尺度の作成」として「パーソナリティ研究」という 査読付き雑誌に掲載され、一定の評価を得ている。  第6章では、研究5・6として、第5章で作成された「誘惑対処方略尺度」で測定され る方略使用の有効性に関する検討が行われている。このうち研究5では、大学生215名を 対象に、学業目標や誘惑の誘因価(強度)、対処方略の使用頻度、目標関連行動の頻度を 尋ね、共分散構造分析により関連を検討した結果、目標強度から目標関連行動への直接の パスよりも、誘惑対処方略を媒介したパスのほうが説明力が高いことが示され、こうした 方略の使用によって、目標関連行動が規定されることが明らかにされている。また、研究 6では、大学生102名を対象とする2週間にわたるモバイル調査により対処方略と目標達 成 ( 試験で良い成績をとる)との関連が検討され、達成に近づくにつれて方略の使用頻度 が高まることが示されている。尺度構成を行っただけでなく、それを用いて現実場面での 有効性を検証したことに、これらの研究の意義を見いだすことができる。  第7章では、研究7・8として、状況や目標の質の違いによる方略の使い分けに関する

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検討が行われている。まず、研究7では、大学生207名を対象に、目標達成が容易な状況と、 困難な状況を想起させ、状況による方略使用の相違が検討されている。その結果、達成が 容易な状況の場合には意味確認方略が、困難な状況の場合には誘惑回避方略が自己制御の 成功に有効であることが示され、目標の困難さに応じて、自身に関する動機付けを高める か、ストイックな目標実行が優先されるかという対処方略の相違があることが明らかにさ れている。また、研究8では、大学生76名を対象とする1週間にわたる日誌法により、遂 行目標(他者より良い成績をとる)と習得目標(自分自身の知識を深める)という目標の 相違による方略使用の相違が検討され、遂行目標を意識させた場合には、主観的労力や成 績と方略の間に関連がみられること、習得目標を意識させた場合は、内発的動機付けと方 略のあいだに相関がみられることなどといった結果が示されている。これらの研究は、誘 惑対処方略の使用が、状況や目標の性質により異なることを示唆しているが、どのような 状況・目標変数がどのような方略使用の相違に結びつくかに関しては、統合的な知見が得 られているとは言い難く、本人も今後の課題として位置づけ、さまざまな研究を展開して ゆく必要があると述べている。これらの研究は、そうした発展にむけた基盤を構成する研 究として評価できよう。  第3部の総合考察では、これまでの研究を総合して明らかになった点がまとめられてい る。その中で、本論文の意義として、1)現実場面における自己統制葛藤状況を明らかに したこと、2)誘惑対処方略を測定できる尺度を開発したこと、3)その使用について縦 断的に検討したこと、4)実際の目的に対しての有効性を検証したこと、という4点があ げられている。いずれも本論文の特徴を示す内容を的確に表しており、これまでの研究に ない独自な観点として高く評価できる。また、課題として、異なる場面や年代への適応可 能性の検討や、その知見を生かした自己制御プロセスのさらなる検討など、適切な問題が 取り上げられていることも、今後の研究の継続やさらなる発展を期待させる。  全般に、文章も読みやすく、論旨も明確で、研究としての独創性も高い。研究史も幅広 く総合的にまとめられている。研究手法も多様であり、分析も着実に行われている。以上 より、本論文は社会学研究科(社会心理学専攻)の博士学位論文審査基準に照らし、妥当 な研究内容であると判断できる。所定の試験結果と論文評価に基づき、本審査委員会は全 員一致をもって、小林氏の博士学位請求論文を、本学博士学位を授与するのに相応しい内 容を有するものと判断した。

参照

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