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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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main : 2013/4/8(10:24)

はじめに

地球化学という研究分野は地質学,岩石学,鉱物学など 固体の地球科学と物 質の構造,性質,反応を研究する化学との境界領域として発展してきた .地球 化学の父といわれる Goldschmidt( 1888∼1947 年;スイス生まれのユダヤ系ド イツ人)は岩石学者として出発し ,ヨーロッパにおいて結晶物質の中での元素 の分配を理解する研究に進んだ .20 世紀前半の彼による有名な地球化学の定義 は「鉱物,岩石,土壌,水および大気中の化学元素の分布と量,さらに元素とイ オンの性質に基づいて天然における元素の循環を研究する」とされている.ロ シアにおいて地球化学の礎を築いた Vernadsky( 1863∼1945 年;サンクトペテ ルブルグ生まれのロシア系ウクライナ人)によると ,地球化学は「地球における 化学元素の時間的,空間的分布を研究する」と定義される.一方,米国における 地球化学は ,20 世紀初頭の Clarke( 1847∼1931 年;ボストン生まれのアメリカ 人)による岩石・鉱物の化学データの収集とコンパイルを出発点とする.彼の狙 いは地殻の平均的化学組成と元素の相対存在度を求めることにあり ,より静的 な世界となり元素の循環という動的・時間的分布には大きく踏み込んでいない. ともかく,欧米における地球化学の出発点は一言で表すと,主として高温のマグ マが関与する固体地球の化学的理解にあったといえる.現在でもこの考え方は 残っており,たとえば ,米国地球物理連合の秋季大会の分類では ,Geochemistry は Volcanology および Petrology と一緒のセクションに入っている. 現代の地球化学は ,先に述べたマントル物質やマグマ,そして地殻の岩石が 関与する比較的高温の現象を扱う high-temperature geochemistry から 1 気圧 で H2Oが液体の水として存在する環境下での大気,水圏や生物圏を扱う low-temperature geochemistryを含むかたちに進化しつつある.これは ,学問的な 発展の相対的な速度が 21 世紀初頭では「熱い地球化学」より「冷たい地球化学」 で大きいことを意味するだけでなく,現在の地球温暖化や海洋の酸性化など 地 球環境問題が人類の持続的生存と強く関わり,社会的な要請に応えるためでも ある. v

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main : 2013/4/8(10:24) 本書の第 1∼6 章と第 9 章は ,このような地球化学の主題の変遷,古い言葉で あるが「パラダ イムシフト 」の中で ,放射化学,核化学,分析化学から学び始め て熱い地球化学の研究を行ってきた執筆者( 佐野)が冷たい地球の研究に取り 組み始めた状態をある程度反映していることを理解いただきたい.一方で ,核 化学 ,放射化学のバックグラウンド を活かして ,宇宙の始まりであるビッグ・ バンにおける元素創成と恒星内での核融合による重い元素の合成や隕石の化学 組成と年代学に関連して宇宙化学にも力を注いだ内容となっている. また本書の第 7,8 章と第 10 章は ,やはり放射化学,核化学,分析化学から 学び始め ,溶液化学,水圏環境問題,分光法などを背景にして冷たい地球の研 究を行ってきた執筆者( 高橋)が ,前半を引き継ぐかたちで大気水圏の進化と 環境問題に関して執筆した.とくに第 8 章と第 10 章は ,これまでの地球化学の 教科書にはあまり見られない物理化学的な色彩を前面に打ち出した内容になっ ている. 本書は理学部の地球惑星科学科や化学科,工学部の地球システム工学科や資 源工学科,地球環境学部の自然環境学科の 3 年,4 年生を対象として書かれて いるが ,大学院で地球惑星科学を専攻する学生が容易に宇宙地球化学の全容を つかめるように配慮されている.基礎的な知識として高等学校で「化学 I」を履 修していることを前提としている.また ,「物理 I」を履修していることが望ま し い.一方で ,「生物 I」と「地学 I」を学んでいない場合でも問題なく理解で きるように配慮してある.とくに ,最後の第 9 章と第 10 章を第 2 部として ,地 球化学の基礎知識を解説しており,初学者は無味乾燥で味気なく感ずるかもし れないが ,この 2 つの章をはじめに読み,続いて第 1 章に戻ることを勧める. なお,第 1∼6 章と第 9 章は ,執筆者( 佐野)が東京大学教養学部において , 理科系の各類の 1 年生および 2 年生を対象とした総合科目「惑星地球科学 II」 の講義で教えている内容を基本にして書いたものである.また ,第 7,8 章と第 10章は ,執筆者( 高橋)が広島大学理学部の 1 年生および 3 年生を対象とした 「水圏地球化学」および「環境地球化学」の講義で教えている内容を基本にして 執筆したものである. vi

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