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(1)

海と地球の情報誌

Japan Marine Science and Technology

Center

2001

11・12

月号

JAMSTECは今年創立30周年を迎えました

特集1

深海巡航探査機「うらし集」

深3,518mの潜航試験に成功

特集2

の世界

センター探検

潜水訓練プール

OUR SHIPS

支援母船

「なつしま」

(2)

深海画像データベースより

FROM http://w3.jamstec.go.jp/dsidb/

「今、深海は…」

マヌス海盆 パックマヌス海域

(水深1,715m、 「しんかい2000」 NT96-14DIVENo.0912マヌス海盆 パックマヌス海域2:6) インターネットで海底へ、深海画像データベースとは? 海洋科学技術センターでは、有人潜水調査船「しんかい2000」や「しんかい 6500」、無人探査機「ドルフィン−3K」、「かいこう」などにより、深海底の映像資料を 収集してきました。この膨大な画像をデータベース化し、各種条件による検索を効 率的におこなうことを目的に開発したのが「深海画像データベース」です。登録 画像数は平成13年8月時点で約24万枚(このうち公開は約20万枚)となってお り、現在も引き続き登録作業を進めています。 当センターでは、これら深海の画像をインターネットを介して自由に検索でき るようWebインタフェースを開発し、広く世界中に向けて公開しています。 ※本データベースで一般に公開している画像は、取得後2年を経過したものに限 られています。

Blue Earth

11・12月号/2001

CONTENTS

2

特集1

深海巡航探査機 「

うらしま」

水深3 ,5 18 m の潜航試験に成功

12

J A M S T E C

R EP O R T

激減するニホンウナギの産卵生態を

解明する調査が本格的にスタート

16

M em o rab le

S hot

大規模な金属鉱床

18

海洋科学技術センター探検

潜水訓練プール

2 0

O U R

S H IP S 船長によるJAM STEC船の紹介

支援母船「

なつしま」

2 4

特集2

水圧の世界を考える

圧力の驚異と深海への挑戦」

3 4

lN T ER V IEW  研究者に聞く

地球フロンティア●對馬洋子

3 8

FA C E  スタッフの横顔

総務部総務課●廣瀬重之

4 0

N ew s

4 5

Info rm atio n

4 6

B E

R O O M

4 8

PR ESENT & 当選者発表

4 9

賛助会(寄付)会員名簿

B lue

Earth

M U S E U M

V o l.4

ユメナマコ」

表紙:刺胞動物(ヤギ)の仲間 「しんかい6500」YK94−03 潜航番号:0234 東太平洋海膨 本誌は、隔月年6回の発行です。

(3)

特集1

深海巡航探査機「うらしま」,

水深3,518mの研航試験に成功

20 0 1(平成 1 3 )年8 塩

3日、奄美大島の東方沖

深海巡航探査機「

は新世代の自律型無人盟査

機としT 世界で初めて水深

300 0 m を超す   

m の

潜航試験に成功.

の深度か ら水中テレビカ

撮影 した海底付近の力

映像

超音波 で海 上

の支援母船 「よこすか」に

伝送することにも成功して

います。

海洋科学技術

は、この成果を北極圏での

二酸化炭素の調査研究など

に活用できる大深度・長距

離潜航が可能な

2 号機以降の深海巡航探査

の 開 発につなげていく計

取材協力 海洋科 学 海洋技術研究部 研究主幹 青木太郎

(4)

深海巡航探査機「うらしま」の特徴

リングレーザージャイロと

燃料電池が正確な巡航と

長距離航行を可能にする

試験潜航を終えて揚収中の深海巡航探査機「うらしま」 「う ら し ま」 に搭 載 され て い る観 測 機 器 類 の 配 置 イ ラ ス ト。 海 中 で の 自 律 航 行 を 可 能 と す る リ ン グ レ ー ザ ー ジ ャ イ 口 な どの 慣 性 航 法 装 置 、 前 方 障 害 物 回 避 ソ ー ナ ー 、 音 響 ホ ー ミ ン グ 装 置 な ど が 搭 載 さ れ て い る

深海巡航探査機「うらしま」水深3,518mの潜航試験に成功

船 体 の ほ ぼ中 央 に 配置 され てい る制御 用 耐 圧 容器 。 外 皮 を取 り外 して み る と 、 き れ い なメ タル カ ラー を して い る 無駄なく構造設計された「うらしま」の船体図 宇 宙 ロ ケ ッ トに は 「J G − 2 7 」 シ リ ー ズ と 呼 ば れ る シ ス テ ム が 搭 載 さ れ て い る が 、 「う ら し ま 」 に は こ の モ デ ル を 改 良 し た リ ン グ レ ー サ ー ジ ャ イ ロ が 採 用 さ れ て い る 。 誤 差 が 1 時 間 当 た り 0 .0 2 5 度 程 度 と 安 定 し た 精 度 を 持 っ て い る 。 3 通 り の モ ー ドが あ り 、 航 行 時 点 で 最 も 精 度 の 高 い モ ー ドが 自 動 的 に 選 択 さ れ る 試 験 中 の 燃 料 電 池 。 固 体 高 分 子 型 (P E F C )と 呼 ば れ る モ デ ル で 出 力 密 度 が 高 く 、 作 動 温 度 が 8 0 ℃ 程 度 と 比 較 的 低 い と い っ た 利 点 が あ る 。 現 在 、 搭 載 し て い る リ チ ウ ム イ オ ン 電 池 は 航 続 距 離 が 1 0 0 k m 程 度 な の に 比 べ て 、 水 素 と酸 素 を 反 応 さ せ て 発 電 す る 燃 料 電 池 を 搭 載 す る と 3 0 0 k m 程 度 ま で 伸 ば す こ と が 可 能 に な る 。 航 続 時 間 も お よ そ 5 5 時 間 (現 在 は 2 0 時 間 )ま で 伸 ば せ る チタン合金製の耐水圧容 器に収納された燃料電池 深 海 巡 航 探 査 機 「う ら しま 」D A T A ■全 長  約 9 .7 m 全 幅  約 1 .3 m 高 さ  約 1 .5 m ■ 空 中 重量  的 7 .5 トン ■最 大 使 用深 度  3 .5 0 0 m ■水 中速 力  巡 航 ・約3 .0 ノ ッ ト/ 最 大 ・約 4 .0 ノ ッ ト ■電 力 源  燃 料電 池 (20 0 2 年度 よ り搭載 )+ リチ ウム イオ ン 2 次電 池 ■観 測 装 置 な ど (各 1 台搭 載 ) 音 響 画像 伝 送 装 置 、 スナ ップ シ ョッ トデ ジ タル カ メ ラ 、ス トロ ボ 、サ イ ドスキ ャン ソ ーナ ー 、 多点 採 水 装置 、 C T D O セ ンサ ー、 カ ラ ー T V カ メ ラ 、水 中 ラ イ トほ か 第 3 世代 A U V の代表 として 2 0 0 0 (平 成 1 2 )年 3 月 に完成 した 深海 巡航 探 査機 「う ら しま」 は .海 洋 科学 技術 セ ンター初 の A U V であ り、各 国も開 発 している A U V の 中で も トップ レベルの 航 行性能 と観測機 器を備え てい ます。 A U V とは、A u t o n o m o u s  U n d e r w a t e r  V − e h ic le :自律型無人 潜水機の 略称で す。 初 期 の A U V は 性 能 の 良 い 動 力 源 (電 池 )が 無 か っ た こ と か ら 行 動 範 囲 が 狭 く 、 開発の 主 眼 はも っぱ ら深度 の向上 に置かれ ていま した。 8 0 年 代半 ば には航 続距 離 10 0 k m 程 度 、使 用深度 が 1 ,0 0 0 m 級 なが ら慣 性航 法装 置を搭 載 した A U V が登 場 します。 イギ リスや 日本 のほ か、ア メ リカ 、カナ ダの 海 洋研 究所や大 学が A U V 開発 に携わ り、おも に石 油開発 、 軍 事に使われ てい ま した。 これ が A U V 第2 世代 です 。 A U V の 発展 型 と位 置 づけ られる のが 、深海 巡航探 査 機 「う らしま」を含 む第3 世 代で す。深度 3 ,0 0 0 m 級の 探 査機が ノル ウ ェー 、イギ リスな どで実用 ・市販 を 目的 に開発さ れてい ます。 高性能 コンピ ュー タと リング レーザー ジ ャイ ロを用 い た高精度 慣性航 法装 置、 ドップ ラー速度計 な どを搭載 し て、位置精 度の高 い航走 を します。 地 球温暖化 の原因 調査 、海 底調査 を目的 と した A U V 今 回達 成 した 最 大潜 航 深 度 とカ ラ ー画 像伝 送 の 成功 で 、深 海巡 航探 査機 「う らしま」は第 3 世 代 を代表 す る ばか りでな く、地 球温暖化 の原 因調査 や海底調査 とい っ た科 学調 査 を目的 とす る A U V と して 注 目を集め る こと にな りま した 。 高性 能の リング レーザ ー ジャイ ロと、実用化 のめ どが た った燃料 電池の 採用 が正確 な巡航 と長距離 航行 を可 能 に し、 「気 象 ・海 洋上 、重 要 であ るに もか かわ らず観 測 が 困難 な北極 海氷板 下 を航行 で きる A U V 」 を開発 する とい う海 洋科学技 術 センター が掲 げた目標の 実現 に一歩 近 づいた か らです。

(5)

深海巡航探査機「うらしま」からの海中・海底映像

6秒∼8秒ごとに送られてくる

鮮明な静止画像

高解像度音響画像伝送装置を

搭載したのは「うらしま」が

世界で初めて

「うら しま」 の 頭 の部 分 に、 海 底 を見 つめ る よ うな か た ち で装 備 され て い る前 方 障 害 物 回避 ソ ーナ ー 。 措 航 コ ー スの 前 方 約 1 0 0 m に あ る障 害 物 に 向 け て4 0 0 、5 0 0 、6 0 0 K H z と周 波 数 の 異 な る超 音 波 を発 し、その 反射 を 大 き なア ク リル 製 の 凹 面音 響 レ ンズ で集 め て2 次 元 画像 をつ くる仕 組 み にな って い る 前 方 に あ る 障 害 物 か ら反射 して きた 音 を集 め 、 画 像 デ ー タ と して 受 け止 め る画 素 数 12 8 × 12 8 のア レ イ。 この ア レ イで 受 け止 め た デ ー タ を、 受信 処 理 用 の L S Iを用 い て映 像 化 す る

深海巡航探査機「うらしま」水深3,518mの潜航試験に成功

2 0 0 0 年 1 0 月の 措 航 試験 に お い て 、「うら しま」か ら送 られ た画 像 デ ー タ (音 響 信号 )を海面 の 母船 上 で受 信 した画像 (水 深7 6 2 m )。解 像 度 は5 1 2 ドッ ト× 2 2 4 ラ イ ン の 静止 画 像 。 この 解 像 度 に設 定 す る と、約 8 秒 ご とに 1 枚 の画 像 デ ー タ を送 る こ とが で き る 今回の調航試験で伝送されてきた海底付近の音響画像。 日付に並んで,水深を示す「3518M」の数字が見える 深海巡航探査機「うらしま」には、従来からの前方障害物探査ソー ナーを発展させた音響画像装置が搭載されている 海底調査 で威力 を発 揮す る音響画像 伝送装置 サ イ ドス キ ャンソーナ ー、 T V カ メラな どの 画像 をデ ジタル化、圧 縮 したのち に音響信 号 と して支援 母船 に伝 送 する音響 画像 伝送装 置の存 在も 「う らしま」 が最 先端 の深 海巡航探査 機で ある ことを裏 付ける ものです 。 約 8 秒 ごとに 1 枚送 られて くる静止画像 (5 1 2 ドッ ト ×2 2 4 ライン)の場合 、母船 上の モニター で海底の 様子 を確認 しな が ら「うら しま」へ指 示 を出 す こ とがで き ま す。解像 度 は数 種類 の設定 が可能 で、調査 対象の よ り鮮 明な画像 が欲 しいときな どに役 に立 ちます。 こう した高性 能の 機能 を持つ 音響画像 伝送装 置を搭載 して い るの は、現 時点 で 自律 型無 人探 査機 で は「うら し ま」だ け です。 さま ざま な 目的の海 底調 査で 威力 を発 揮 する ものと期待 されて います。

(6)

深海巡航探査機「うらしま」の潜航試験構想

数千キロに及ぶ航続距離の

実現に向けて

一歩ずつ一歩ずつ

さま ざまな潜航 試験 を重 ねて、「うら しま」は より自律 したロボ ッ トA U V へ と進化 してい く。 この海域試験構想 層描 かれ た試験 でいい成果 を 得 ることが、進化の スピー ドを速めること層つ なが る 横須賀本部 層は、 自律シナ リオ を作成 し、シ ミ ュレー ションするためのコンテナハ ウスがある。 舶用 コンテナの内部にい くつもの コンピュータ、 モニ ターなどが設置 され、「うらしま」 と一緒 層 支援船層搭載す る

深海巡航探査機「うらしま」水深3,518mの潜航試験に成功

「う ら しま 」は 、 通 信 衛 星 や G P S 衛 星 の 助 け を借 りな が ら潜 航 ∼ 調 査 ・撮影 ∼ デ ー タ伝 送 ∼ 浮上 とい った動 き をす る こ と もで きる 。 この 図 層描 かれ て い る のは 巡 中 で の動 き (図 ・上 )と ・それ を上 か ら 見 た と きの もの (図 ・下 ) 沖 縄 東 方 、お よ そ2 0 0 k m の巡 域 で 1 0 月 に お こ なわ れ る予 定 の 航行 試 験 を図 式化 したも の 。 A 地 点 か らス ター トし、 ゴ ール の D 地 点 ま で 握 2 つ の 中継 点 を 設 け る 。 中継 点 の 半径 1 0 k m 以 内 に 「う ら しま 」が 近 づ く と音 響 ホ ー ミン グ 装 置 が 音 響 ピ ンガ ー か ら の信 号 を 受信 して航 路 を 訂 正 して い く。 中継 点 まで の 距 離 の 誤 差 が小 さ く なれ ば 、 目的 地 まで 早 く、 短 い距 離 で 航 行 で き るよ うに な る 2 0 時間 ・10 0 k m に及 ぶ実海域試験 を経 て 「う ら しま」は2 0 0 0 (平 成 12 )年 度 に相模 湾、駿 河 湾 で4 回 の実 海 域試 験 を 実施 して き ま した 。支 援 母船 「よこすか」との着水 場収 (船 の 甲板 か ら海面 に降 ろ した り、浮上 後 に甲板 につ り揚 げる作 業)訓 練を お こな った の をは じめ 、お もに光 ファイバー遠 隔制 御を用 いての船 体運 動 、制 御機器 、観測機 器、通信 機器 な どの 信頼性 を テ ス トしていま す。これ に続い て、音響 遠隔制 御 による 船体 運動 、音響画像 伝送装 置の確 認 、自律航行 によ る針 路 ・深度保持 テス トを実 施 して きま した。 自律 して航行 し、設定 された 海底 での作業 がで きる□ ボ ッ トA U V へ の進化 の過 程 にあ る 「うら しま」で すが 、 この 10 月 、沖縄本 島の東 方お よそ2 0 0 k m の海域 で実 施す る2 0 時間 ・10 0 k m の 航行 トライアル が次の 大き なス テ ップ にな りそ うです。 数千 キ ロの航 続距離 実現へ の挑戦 。それ は、地 球温暖 化の メカニ ズムを解 き明か すい くつもの テーマ がある北 極海 ・氷海下 での航行 に向 けた一歩 とな ります。

(7)

深海巡航探査機「うらしま」の将来ビジョン

「うらしま」実用機が

北極海という過酷な自然環境で

地球規模の気候変動をとらえる

調査研究に活躍する日

「う ら しま 」に 搭 載 され る 多点 採 水 装 置 。高 さは 約1 m ほ どは あ る。 2 5 0 c c の海 水 サ ンプ ル を採 水 で きる 容 器 が 2 0 0 本 娼 り付 け られ て い る 採術された海水を質量分析計にかけるために前処理を施す装置(む つ研究所 前処理された資料をプレスして 一定の大きさに固形化する (むつ研究所)

深海巡航探査機「うらしま」水深3,518mの潜航試験に成功

さまざまな研究テーマにそってより自律した深海巡航探査機として活躍する「うらしま」の姿をみるのは、遠くないかもしれない・・・ 前処理装置で固形化されま海水サンプルは加速度型質量分析器に かけられ 同位性元素C14を介して海水中の二酸化炭素濃度を割 り出していく(写真提供・日本原子力研究所) 人 に代 わ っ て人 の 近 づ け な い 海 域 で の 調 査 を 担 う A U V は 、 IT な どの 技 術 開 発 に よ る よ り高 機 能 化 ・小 型 化 が 進 み 、 そ の 運 用 も シ ン プ ル な も の に な って い く高 機 能 な 海 洋 機 器 で す 。 開 発 に 弾 み が つ い て 量 産 化 な ど に よ る 低 価 格 が 実 現 す れ ば 、 海 洋 デ ー タ の 収 集 、 海 底 探 査 な ど A U V の 利 用 範 囲 は 大 き く広 が って い く で し ょ う。 と く に 科 学 の 分 野 で は 、 広 い 海 域 か ら海 水 の サ ン プ ル や さ ま ざ ま な デ ー タ を 自動 的 に 収 集 で き 、 北 極 、 海 底 火 山 とい っ た 人 が 近 づ け な い 海 域 で 、 人 に代 わ っ て 調 査 を す る 頼 も しい 機 器 に な る 可 能性 を 秘 め て い ます 。 目標 に も 掲 げ て い る 北 極 海 、 氷 海 下 で の 潜 航 調 査 に は 少 な く と も 深 度 6 ,0 0 0 m 、 航 続 距 離 5 ,0 0 0 k m とい っ た 性 能 を 持 た な け れ ば な り ま せ ん 。 米 国 や 欧 州 各 国 も 、 北 極 海 で の 潜 航 調 査 を 目 的 と して 次 世 代 の A U V 開 発 に 取 り組 ん で い ます 。 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー で は 、 深 海 巡 航 探 査 機 「う ら しま 」2 号 機 へ の ス テ ッ プで ま ず この 数 字 を ク リア し、 A U V の 夢 を 広 げ て い き ま す 。

(8)

JAPISTEC

REPORT

激減するニホンウナギの産卵生態を

解明する調査が本格的にスタート

「土 用 の 丑 (う し)の 日」な ど、 特 別 な 日 を も う け る ほ ど私 た ち 日本 人 が こ よ な く愛

す る 「ウ ナ ギ 」。 日本 各 地 に 養 殖 池 が あ り 、 ま た 中 国 や 東 南 ア ジ ア か ら の 輸 入 も激 増

して い る馴 染 み の 深 い 魚 で す が 、 じつ は 二 ホ ン ウ ナ ギ の 生 態 の ほ と ん ど は 謎 に 包 ま

れ た ま ま で 、 も ち ろ ん 卵 か らの 養 殖 に も成 功 して い ませ ん 。

そ こ でJ A M S T E C と東 京 大 学 海 洋 研 究 所 で は 、2 0 0 0 年 度 よ り3 カ 年 計 画 で 「二 ホ ン ウ

ナ ギ の 産 卵 生 態 に 関 す る 調 査 研 究 」と い う共 同 研 究 を ス タ ー トし、 2 0 0 1 年 8 月 に は 本

格 的 な海 洋 調 査 機 器 を使 い 、

マ リ ア ナ 海 域 で 二 ホ ン ウ ナ ギ の 産 卵 生 態 を調 査 し ま した 。

海 洋 生 態 ・環 境 研 究 部 藤 倉 克 則 博 士 (水 産 学 ) 東 京 水 産 大 学 卒 業 後 、 1 9 8 8 年 に 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー へ 。 深 海 の 底 生 生 物 の 研 究 を お こ な い 、 化 学 合 成 生 物 群 集 の 生 態 研 究 に た ず さ わ る 。 2 0 0 0 年 に 、 ニ ホ ン ウ ナ ギ の 産 卵 生 態 研 究 に ス タ ー ト時 よ り参 加

深海生物研究のノウハウを

本格的に導入

中国や東南アジアからの輸入ウナギは、本来の「蒲焼

き」に用いられる「二ホンウナギ」ではなく、「ヨーロ

ッパウナギ」と呼ばれるものがほとんどで、日本各地で

捕れる「二ホンウナギ」が急速に姿を消しつつあります。

古くから日本人に愛されてきた二ホンウナギを使った本

物の蒲焼きを未来に残していくために、また、回遊魚の

生態を知るという科学的見地から、今回のプロジェクト

は大きな意義を持っています。

ウナギの研究の歴史は古く、多くの生物学的データが

蓄積されてきていますが、深海で産卵すると考えられて いるウナギ研究に深海生物研究のノウハウが本格的に導 入されるのは世界的に見ても画期的なことです。ウナギ 研究の権威である東京大学海洋研究所と、最先端の深海 探査技術を持つJAMSTECが共同で研究を開始したこ とで、今後大きな成果が期待されます。

マリアナ海域

ウナギの産卵生態を調査

東大海洋研究所のこれまでの調査で、ウナギの産卵は

グアム島からマリアナ諸島にかけての海域でおこなわ

れ、また、海底にそびえる山(海山)沿いにウナギは南

下していくのではないかという仮説をたてました。

そこで、2001年8月12∼28日にかけて、

JAMSTECの調査船「よこすか」を用いてマリアナ海域

の調査をスタートしたのです。今回の調査では、調査地

域をマリアナ海域のパスファインダー海山、アラカネ海

山、スルガ海山に集中させました。また、調査内容につ

いても、「海底地形の調査観測(詳細な海底地形図作成)」

「魚群探知機による魚群の探索」「ディープ・トウ(曳航

式深海調査システム)を使ったカメラによる産卵魚群の

探索」「IKMTプランクトンネット等による浮遊卵や仔魚

の採集」の4項目に絞り込み、調査をおこないました。

さらに、二ホンウナギに関するこれまでの研究で、産

卵時期は5∼9月の間で、新月の2∼3日前に産卵し、新

月の日に孵化する可能性が高いことがわかっています。

そこで、8月の新月にあたる19日以前を魚群探知機に

よる魚群の探索とディープ・トウのカメラによる産卵魚

群の探索、19日以降を浮遊卵や仔魚(レプトケファル

ス)の採集をおこなう計画をたてました。しかし台風

11号の影響を受けて現場海域での待機状態が続き、調

査の開始は19日になってしまいました。

今回の調査で作成されたマリアナ海域の海底地形図。約2,000mの海底から一気に海面近くま でそびえている3つの海山周辺を重点的に調査した 曳航式深海調査システム ディープ・トウ

ディープ・トウのカメ

ウナギ目魚類の観察に成功

アラカネ海山では、シービームによって海底地形図を

完成させたあと、水深300m付近を中心に魚群探査を

おこないました。ちなみに、ウナギ目に属する魚たちは、

産卵行動の際に何十匹も団子状に固まるという習性を持

(9)

っている種がいます。このことから、二ホンウナギも同

じような産卵行動をとることが推測され、1匹では見つ

けにくいウナギも産卵期には魚群探知機での探査が可能

になると期待されました。この海域で魚群の反応を探査

することができ、早速カメラが搭載されたディープ・ト

ウを300mの海底に送り込み、産卵魚群の探索をおこ

なった結果、ウナギ目魚類は観察できました。さらに深

部での探索をおこなったところ、1,850m付近でもウ

ナギ目魚類を見つけることができました。

スルガ海山でも、水深300m付近と水深800∼

1,800mにかけてウナギ目魚類を見つけ、撮影するこ

とができました。パスファインダー海山ではプランクト

ンネットで、人工的に孵化させたウナギの卵に類似した

ウナギ目の魚卵を採集することができました。これらは

今後、遺伝子解析によって、どのような種類のウナギで

あるのかを解明していくことになります。

デ ィ ー プ ・ トウ (曳 航 式 深 海 調 査 シ ス テ ム ) に よ っ て 撮 影 さ れ た ウ ナ ギ 目 の 映 像 。 中 心 に 見 え る 縦 の 線 は デ ィ ー プ ・ ト ウ か ら 海 底 に 吊 さ れ た 鎖 プ ラ ン ク ト ン ネ ッ ト に よ っ て 採 集 さ れ た レ プ トケ フ ァ ル ス と 呼 ば れ る ウ ナ ギ 目 の 仔 魚 。 今 回 の 調 査 で は ウ ナ ギ 目 に 属 す る さ ま ざ ま な 種 類 の レ プ トケ フ ァ ル ス が 採 集 さ れ た

今回の調査が持つ意義と

今後の研究について

これまで「養殖ウナギ」といえば、日本や中国、東南

アジアなどの河口付近に集まった「シラスウナギ」と呼

ばれる稚魚をとらえて飼育していたのですが、産卵場所

が解明されれば孵化環境や幼生たちの食性などがわか

り、産卵・孵化・飼育を全て人間の手でおこなう完全養

殖のウナギを誕生させることも可能です。また、「海洋

生物がおこなう回遊の謎」という科学的な見地からも、

この調査は大きな意義を持っています。

今回の調査では、カメラにおさめられたウナギ目の種

類を断定するには至りませんでしたが、「二ホンウナギ

の産卵」の謎を解き明かす大きな第一歩になりました。

今後は有人潜水調査船などを使ってさらに調査を進め、

「完全養殖ウナギ」実現への道を探っていきます。

プランクトンネットによって採集されたウナギ日の卵 深海にすむアナゴや他の魚類の可能性も高いが、現在遺伝子解析を進め ている マリアナ海域で採取されたレプトケファルス(ウナギ目の仔魚)。ウナギだけでなくアナゴやウツボも「ウナギ目」の魚で、 魚種によって仔魚のサイズや容姿が大きく異なっていることがわかる

JAMSTEC

REPORT

(10)

Memorable

shot

伊豆・小笠原弧 多金属硫化物鉱床

JA M ST E C で は1 997 年 6 月か ら19 98 年5 月に かけ て、 10 回 にお よぶ伊豆 ・小 笠 原周 辺海 域 での 有人 潜水 調査 船 「しん か い2 0 00 」 に よ る潜 航 調 査 を お こな い ま した。 この とき発見 され たの が 、大規 模 かつ 活動 的 に成長 し てい る金属 鉱床 で す。

伊豆・小笠原で発見された大規模な金属鉱床

この写 真 が 撮 影 さ れた 海 域 は 3明 神 海 丘 」 と 呼 ば れ る海 底 火 火山の一 つ で 、 写 真 中 央 上 部 に は 、 熱 水 の 噴 出 が 見 られ ま す この 金 属 鉱 探 は 火 山 活 動 に 関 連 し た も の と し て は か な り 大 規 模 銅や 鉛 .亜 鉛 が 豊 富 に含 ま れ ま で の 調 査 は 表 面 付 近 の 試 料 採 取 の み お こ な わ れ 、 内 部 構 造 明 で す が 、 こ の 金 属 鉱 探 に は 総 重 量 約 9 百 万 トン と い う莫 大 な 量 の 鉱 物 が 眠 っ て い る と推 定 さ れ ま す 。黒 鉱 (熱 水 活 動 で 形 成 さ れ た 多 金 属 塊 状 硫 化 物 鉱 深 の こ と ) タ イ プ の 鉱 探 陸 上 に お け る 黒 鉱 鉱 床 の 上 位 2 0 % 内 に 含 ま れ る ほ ど 大 型 の鉱 床です。 取 材 協 力 仲  二 郎 (固 体 地 球 統 合 フ ロ ン テ ィア 研 究 シ ステム 地 球 内 部 物 質 循 環 研 究 領 域 上 級 技 術 研 究 員

(11)

海洋科学技術センター探検●潜水訓練プール

職業ダイバーの養成

訓練に適した設備が充実

「潜水訓 練 プー ル」施設 の入 口 ドアを入 る と、す

ぐに水族館 さな が らの観 察窓が あ り、水槽 内を見 る

こ とがで きます 。 しか し、中で泳 ぐの は潜 水器具 を

背負 ったダイバーたちです ・・・。

この プール は潜 水技術者 を養成 ・訓練 するた めの

全 国でも珍 しい施設で、一辺の長 さが2 1 m もあるは

ぼ正方形の大型 プール内の水深 は 1 .

3 m と3 m の2 段

にな ってい ます 。周囲 には水面下 を観察 するた めの

窓が設 け られ、 プールサイ ドにはボ ンベ 1 0 本 を一度

に充填 でき る装 置や 、岸 壁か らの潜水 を想定 した飛

び込み台も備え ています。J A M S T E C ではこのプー

ルを使 った潜水研 修を おこな っていて、年 間約4 0 0

人 に及 ぶ研修生 を受 け入 れて います。全 国の警察 機

動隊 や消 防 レスキ ュー 隊員 、水 族館職員 な どが 潜水

技術 を学 ぶ ために ここを訪れ ます。宇 宙飛行士 の毛

利 さん や角野 さんも 、無 重力訓 練の ため にこの プー

ルで研 修を受講 しま した。

取材協力 :

大嶋真司  総務部  普及・広報課  課長代理

プ ー ル 全 景

年間を通 して利用可能な温水プールになっています。潜水

訓練以外に、潜水 ・水中機器の性能試験もおこなわれます。

空 気 充 填 装 置

一度に 10 本のボン

ベ に高圧 空気 を充填

できる装 置が プール

サ イ ドに設置 されて

います。

潜 水 器 材 室

5 0 種類に及ぶヘルメッ ト潜水器

などが格納されている部屋です。さ

まざまなタイプの潜水器の特徴や使

い方を学ぶことができます。

救 急 再 圧 訓 練 装 置

5 0 m の水圧環境 を作ることができる装置

で、内部には一度に3 人が入れます。高気圧

障害発生時の救急再圧をおこなうための施

設ですが、高圧環境体験や水中機器の開発

や性能試験などもここでおこなうことがで

きます。

飛 び 込 み 台

高所からボンベを背負ったまま飛び込む訓

練に使われます。岸壁からエン トリーする必

要のある職業ダイバーを養成する、この施設

な らではの設備です。

オ ー プ ン タ ン ク

プール脇にあるこの円筒水槽は、主

に水を汚す恐れのある装置の実験 ・試

験に使われます。

研 修 風 景

プール内の深度は2 段階

に分かれています。水中ス

ピーカーを通して指導員の

声が聞こえ、プールサイ ド

の指導員は水中カメラを通

して研修生の動作を観察す

ることができます。

(12)

OUR

SHIPS

第4回

船長によるJAMSTEC船の紹介

自慢です

支援母船

船 長

谷川

C apta in

KIYO S H I

冷 凍 船 や 鉱 石 船 、 タ ン カー な ど に乗 り込 み 5 0 カ国 、2 5 0 近 い 潜 に立 ち 寄 って い

る長 谷 川船 長 。外 国 航路 で の キ ャ リア が 3 0 年 とい うベ テラ ンだ 。海 洋 科 学 技 術 セ ン

夕ー で は支 援 母 船 「な つ しま」 に始 ま り、海 洋 調 査船 「か い よ う」、深 海 調 査 研 究船

「か い れ い」 と支 援母 船 「よ こす か」 に乗 って 再 び 、 自分 に と って も原 点 の 船 と位 置

づ ける 「な つ しま」 に戻 って き た 。「な つ しま」 は有 人 潜 水調 査 船 「しん か い2 0 0 0 」

潜 航 調 査 の た め に小 笠 原 海 域 の 明 神 海 丘 、水 曜 海 山 に向 け て 9 月 下 旬 に出 港 。 い っ

たん 帰港 して 1 1 月 に相 模 湾 、駿 河湾 での 「しん か い2 0 0 0 」 潜 航調 査 を支 援 した の

ち、船 体 整 備 の た め に ドック に入 り、 リフ レ ッシ ュす る。

1 9 8 0 年 8 月 、 神 戸 で 進 水 。 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー 初 の 潜 水 調 査 船 支 援 母 船 と し て 活 動 に 入 る 。 母 港 は 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー 本 部 の 横 須 賀 。 「し ん か い 2 0 0 0 」、 「ドル フ ィ ン −3 K 」 に よ る 潜 航 調 査 の ほ か 、 各 地 で の 一 般 公 開 で 多 く の 人 々 を船 内 に 迎 え て い る 。 ■ 全 長  6 7 .4 m ■ 幅 1 3 .0 m ■ 深 さ  6 .3 m ■ 喫 水  3 .6 m ■ 国 際 総 トン 数 1 ,7 3 8 トン  ■ 航 海 速 力  約 1 2 ノ ッ ト  ■ 航 続 距 離 約 1 万 8 0 0 マ イ ル 研 究 者 な ど 1 1 名 ) デ ィ ー ゼ ル 機 関 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー の 発 足 は 昭 和 4 6 (1 9 7 1 )年 。 そ の 1 0 年 後 に 進 水 した 支 援 母 船 「な つ し ま 」 は 、 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー 初 の 所 有 船 舶 と して デ ビ ュ ー しま し た 。 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー の 原 点 の 船 舶 と も 位 置 づ け ら れ る 「な つ し ま」 に乗 り込 む こ と は 、 長 谷 川 船 長 に と っ て 特 別 の 想 い が あ った に ち が い あ りま せ ん 。 「外 国 航 路 の 経 験 の 長 い 自分 に と っ て 、 海 洋 調 査 の 船 に 乗 る の は 初 め て の こ と で す 。 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー を 代 表 す る 『な つ しま 』 に 乗 る こ と が で き 、 い い ス タ ー ト を 切 った と 思 って い ま す 」

見えない部分にも研究を支援する工夫

母船 と して 、見 えない部分 にさ まざまな 工夫が なされ てい る点 を長谷川船 長は強調 します。 まずエ ンジン。海 中の 「しんか い2 0 0 0 」、 「ドル フィ ン−3 K 」 か ら 「なつ しま」 へ伝送 され て くる水 中画像信 号な どの音波 を妨 げない よう、船体 か らエン ジン全体 を ゴム 製の防振 材で浮 かせた構 造 に して 、雑 音が海 中 に出 な いよ うに してい ます。船底 に取 り付 け られたハ イ ドロ フ ォン (水 中マ イ ク)、水 中通話 機 、深度 ソー ナ ーや精 密測 深機 がエ ンジンの振動 の影響 を受 けない よう にとの 配慮 です 。船 体 を覆 う外壁 の内側 にも 防音材 が施 され て います。 これ らの 防振 ・防音技術 が次 の 「よ こすか」 等 に生 かされて います。 そ して 、船体の重 心の低 さ。2 4 トン近 い重さ の 「しん か い2 0 0 0 」を海面 に降 ろ した り、 海中 か ら引き揚 げ る 際 に、船体 が安定 していな けれ ばな らな いか らです。後 部 甲板 は、左 側片方 を少 しはみ 出 した形 に して 「ドル フ ィン−3 K 」 を搭載 、限 られた スペース の有効利 用を 図っ てい ます。 「乗 組 員 、研 究者 な ど5 5 名の 定 員 を迎 え るた め に、 居住 区の配置 や設備 、研究 者の ための実験 室な ど にも工 夫 が見 られ ます 。 『か いれ い 』 『よ こす か 』 『かい よ う』 に装備 されて いる A フ レー ム ク レー ンは 、『なつ しま』 平 成 12 (2 00 0) 年 度 に実 施 した「なつ しま」の行 動 実績 海 域 を示 す 図 。0 0 は2 00 0年 度 の 略 称 で 、 これ に 続 く数 字 が そ の年 度 の航 海 順 を示 す。 N T O O−12 は 、 この 年 度の 12 回 目の航 海 とそ の海 域

(13)

船長によるJAMSTEC船の紹介

後 部甲板 にあ る 「しんかい 20 0 0 」搭載用の台座。が っ しりと した造 りで重 さは約7 トン。 この上 に空中 重量 が 24 トン近い 「しんかい2 000 」 が載 る。格納 庫 か ら台座 を 引き出す ワイヤも太い 後部操舵室から眺めたA フレームクレーン。操舵室 の内部には着水揚収作業、「ドル フィン3 K 」 が最初に搭載 し、そのオペ レーションで得 られた経験が その後の母船などのクレーンの改良に生かされています」

さまざまなテーマの研究を目の当たり

にする面白さ

水産 生物の 実態調査 に北 海道の釧 路 、襟 裳岬 沖を航行 したの は今年 の7 月 か ら8 月 にか けて 。 「漁業の 盛んな水 域での 調査 で したの で漁業 組合 、漁船 との連絡 を密 に し ま した。事前 連絡 は調 査 をスム ーズ に運 ぶため の大切 な コ ミュニケム シ ョンです」 と長谷川 船長。 8 月 か ら9 月 に か け て は小 笠 原 諸 島 、 父 島 沖 北 西 約 1 2 0 マイ ルの 海域 ま で 向か い、 海 山の 熱水 噴 出孔 か ら のブ ラ ックスモ ーカー を観察 した りして物理 的 ・時間的 な熱水循環 の変動 を観 測 して います。 「物理 、化学 、生物 、地質 な どの 分野 の研究者 を迎え て航海 するの が支援船 です 。研究者 が取 り組んで いる研 究の 内容 が理解 でき る基本 的な知識 は、乗 組員 と して身 につ けて おかな けれ ばな りません。 『な つ しま』の乗組 員 はそ の点 で 自慢 でき ます。運航 チー ムのス タ ッフも研 究者 と調査 を遂行 するた め何度 も 打ち 合わ せ をお こない ます 。 『しんか い2 0 0 0 』 や 『ド ル フィン−3 K 』 が計画通 りに潜航 調査 できる のは、運航 チー ム とそ れ を支 援 す る スタ ッフの 力 が あれ ば こそ で す」 乗組員 に全幅の信 頼を寄せ る長谷川船 長です 。

続行か中止か、あるいは帰港か

船長としての判断の難しさ

調査 研 究 の対 象 とな る 海域 に向 か って 出 港 した あ と に、台風な どの悪天 候 に見 舞われ る こともあ ります 。前 回の航海 では、台風 避難 を して いた東京 湾で 瞬間最大 風 速 4 3 m とい う風 に遭遇 してい ます 。波頭 が 砕 け散 って 海面 は真 っ白です。波が 白い泡 とな って空中を舞 います 。 まるで 吹雪の ような 自然 の猛威 に抗 しきれず 、航海 を中 止 して帰港 した ときの話 です。 続行 か中止か 、そ して いつ帰 港の判 断をす るか 。気象 衛星 か らのデー タを もと に天候 の変化 の予測 が容 易にな った とはい って も、予期 せぬ 状況 は起 こ ります。 そ うい うときこそ船長の判 断が重要 にな りま す。 「航 海中 の 『しんかい2 0 0 0 』、『ドル フ ィン−3 K 』の 潜航 調査の 予定 は予め すべて順 番が決 ま ってい ます 。荒 天 などで潜 航が 中止 になれ ば、その 日のた めに準備 して き た研究者 は諦 めざる を得 ません 。研 究者 の気持 ちが手 に取る よ うにわ かるだ け に、潜航調査 の中止 、 あるい は 帰 港 とい う判 断 を下 す と き には 心 が痛 む こ とも あ りま す」 船長 と して の務 め を果 たす 。それ も冷 静 に、迅 速 に。 航 海 は無 事 に終 わ るこ とが 何よ り。 しか し、万 が一、 卜 ラブル やア クシデ ン トに直 面 した とき にこそ、船 長の手 腕 が発揮 されるの で しょう。

共同利用運航で大学の研究者、

学生を迎える

ここ数年 、実地研 修の かたち で大学 の研究室 か ら学 生 を迎 えて 航海 に出 る ことが増 えま した。今 年の 5 月 か ら 8 月 にか けて は筑波大 学 、九州 大学 、千葉 大学 、石巻 専 修大 学、 富山大学 、慶応 大学 、広島大 学、京都 大学 や北 海 道大学 の学生 が乗 り込みま した。学 生を迎 える ことで 海 洋科学技 術セ ンター の取 り組 む研究 を知 っても らうこ とにもつな が って います。 取 材協力 :研 究業務 部海務課  野村  陽 総 合指 令 室 にあ る 「しんか い2 000 」 潜航 調 査 の た め の管 制 表示 部 。 コ ン ピ ュ ー タの 機 能 向 上 と小 型 化 な ど で 、就 航 時 に比 べ る とず い ぶ ん ス リム に な っ た。 その 分 、 こ こ に は多 くの研 究 者 や ス タ ッフ が入 る こと が で きる よ うに な っ た 海 底 の模 様 を伝 えて くる 音 波 を も とに 、 プ ロ ッ ター が 自動 的 に 航 跡 図 や海 底 地 形図 な ど を描 き出す 後 部 甲板 に 収納 され てい る 「ドル フ ィ ン−3K 」 船上 に設置 され た無人探査機 「ドル フィン−3 K 」 の操作 室内部 。頑丈 な コ ンテナ を使 用 してお り、ここにパ イロ ッ トとオペ レー ター、研 究者 が 乗 り込 んで海 中の 「ドルフ ィン−3 K 」の操縦 をおこ なう

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特集

2

水底の世昇を考える

「圧力の驚異 深海への挑戦」

海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー (J A M S T E C ) で は 、 これ ま E 海 洋 に つ い て の

研 究 をお こな い 、 ま た 画 期 的 な調 査 技 術 の 開 発 をお こ な って き ま した 。 特

に深 海 域 にお け る 調 査 E は 、 卓 越 した 先 進 技 術 の 開 発 と 意 義 あ る 発 見 を数 多

残 して き ま した が 、 そ の 業 績 の 影 に は 常 に圧 力 と の 戦 い が あ り ます 。 水 深 数 百

m の ダイ バ ー にか か る圧 力 や 、 水 深 数 千 ∼ 1 万 m て の 水 中 機 器 や潜 水船 に か か る

力 。 この 圧 力 は 、 1 気 圧 の 世 界 に生 きる 私 た ち の 想 像 を 遥 か に 超 え

力 を持 っ て い ます 。 そ の 驚 異 の パ ワー と 、 J A M S T E C が お

力 に対 す る 挑 戦 の 歴 史 を紹 介 します 。

毛 利 元 彦

医学博 士

人体 が 潜 柑に よ って 受 け

る さま ざまな 影響 を・ 生

理学 的 見地 か ら研 究 す る

長 根 浩 義

研究 業務 部

施設 ・設備課

水探 300 m の深 海 潜 水実

験 体 験 者 . 水 圧 が人 体

に 及ぼ す 影 響 な ど 豊富

な知 識 を持つ

発 泡 ス チ ロ ー ル で 作 ら れ た 模 型 は 、 水 深 が 増 す ご と に 小 さ く な り水 圧 の 影 響 を 受 け る 。 右 下 の 模 型 は 水 深 約 5 ,5 0 0 m 相 当 の 水 圧 を 受 け て 縮 ん で し ま っ た も の 。 水 深 約 5 ,5 0 0 m で は 、 1 c㎡ あ た り 5 7 0 k g (海 水 の 場 合 ) も の 力 が 作 用 す る 。 ほ ぼ 切 手 の 大 き さ に 約 5 7 0 k g の 重 り が 乗 っ て い る 状 況 を 想 像 す れ ば 圧 力 の パ ワ ー も わ か り や す い の で は な い だ ろ う か

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持集

2

水圧

驚異のパワーを秘めた圧力

私 たち が水 の中 に潜ろ うとす ると 、潜 る につれて耳 が 痛 くな って きます 。 これ は、水圧 に よって鼓膜 が圧 迫 さ れる こ とによ って起 こる現象で す。 この よ うに水 深数 m でも 人体 に影 響 を及 ぼす 水圧 は、非常 に大き な力を 持 っ てい ます。 水 中 では 、大 気圧 に加 えて水 圧 が作 用 し、水 深 10 m で は2 気圧 、水深 1 ,0 0 0 m で は 10 1気 圧 というよ うに 。 水 深 が 深 く な る につ れ て 気 圧 も 高 くな り ます 。 こ の 1 0 1 気圧 とい う圧力 は 、 1 cm2あた り 1 0 4 kg の力 が作 用 する ことを指 しま す。 これは、手 のひ らに車 を乗せた ほ ど大き な力です 。 水中 に挑 も うとする とき、 この 水圧 は大き な障壁 とな って私 た ちの前 に立 ちふ さが ります 。J A M S T E C で は、 数十気 圧の潜 水実験 や 、数 百気圧 に耐 える潜水 機器の 開 発 をお こな ってき ま した 。 水 深5 ,0 00 m 前 後 の 高圧 下 で は 、鉄 や ア ル ミ製 の 小 型 ボ ンベ も簡 単 に潰 れ て しま う 。 また 、写 真 中 の発 砲 ス チ ロ ール 製 カ ップ ヌ ー ドル 容 器 は元 々 同 じ大 き さの もの だ が 、水 深 数 千 m 相 当 の 圧 力 をか け る こ とに よ り、 数 分 の 1の 大 き さに な っ て しま う 有 人 潜 水 調 査船 「しん か い6 50 0」 の乗 員 室 に使 わ れ た耐 圧 殻 の 強 度 試 験 の ため に 作 ら れ た内 径 7 0c m (実 物 は2 m ) の チ タ ン合 金 製 の 球 も 、圧 力 の パ ワ ー に よ っ て写 真 の よ うに押 しつ ぶ され て しま う。 圧 壊 試 験 で は、 水 深 13 ,2 00 m 相 当 の 圧 力 を か けた と きに 壊 れ た

圧力と気体の容積

圧力増加に反比例する気体の容積

圧力 が増加す る と、そ れ に反 比例 して気体 の容積 は小 さ くな り示す 。例え ば風 船や ビーチ ボール など は、水深 3 0 m (4 気圧 ) で 1/4 まで 縮ん で しま い ます 。 よ り深 い所で は、 さ らに大 きな力 がかか り、 ドラム缶 や魔法瓶 な ども簡 単 に潰 されて しま います。 水 深 が深 くな る ほ ど、 気体 の 容 積 は小 さ く な る。 深 海 な ど の高 圧 下 で は 、空 気 の 入 っ た密 閉 容器 は簡 単 に潰 れ て しま う。 潜 水 調 査 船 に頑 丈 な乗 員室 が必 要 な の は この た め。 た だ し、容 器 の 中 に水 や 油 が 入 っ て い る場 合 は潰 れ る こ とは な い JA M S T E C に は 、深 海 用 機 器 や材 料 の耐 圧 試 験 をお こ な うた め の さ ま ざ ま な装 置 が あ る。 写 真 上 ・左 下 は 、水 深 15 ,60 0 m 相 当 の圧 力環 境 を再 現 で き る 「高圧 実 験水 槽 」 で 、 「しん か い 65 0 0 」 に使 用 す る耐 圧 殻 の 破 壊 実 験 は こ の 装 置 で お こ な っ た 。 写 真 下 中 央 は水 深 15,0 00 m 相 当 の 圧 力 環境 を再 現 で きる 「中 型 高圧 実 験水 槽 」、写 真下 右 は水 深 4 ,000 m 相 当 の圧 力 環 境 を再 現 で きる 「小 型 高圧 実 験 水槽 」

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特集

2

潜水の方法

環境圧潜水とそれによって生じる問題

人間が水中 に潜る方 法 には、潜水 船 に乗船 した時のよ うに普段 の生活 と同 じ気圧環 境の まま潜る 「大気圧潜水 』 素潜りや スク−バ 潜水 などの よ うに、身 体が水 圧の 影 響 を受 けて 潜る 「環 境 圧 潜水 」 の2 パ タ ー ンが あ ります 。 「環 境圧 潜 水 」 で は 、 水 深 が 1 0 m 増 す ごと に 1 気圧 ずつ水 圧 が全 身 に か か ります。気体 (呼 吸 ガス) は圧力 に反比例 して 圧縮さ れるの で、そ の圧力 に 均 衡 になるよ うに均圧 操作 をお こなわな けれ ば重 大な圧 力 障害 を起 こすこ とにな ります。潜 水を職 業 にするアマ (海 女 ・海士 ) は、長 年 にわ たる 潜水 作業 に よ り、鼓膜 の 肥厚 、慢 性 中耳 炎 、内耳 障害な どによる 聴力 障害 を起 こす人 が非 常 に多 く見 られ ますが 、これも 圧力 障害 の一 種 といえ ます。 また 、正 しい潜 水法 をお こなわな か った場 合 、鼓 膜が 圧迫 され る 「ス クイズ」 や 、水 圧の減 少 によ って肺 の容 積 が膨 れ上 がる こ とに よる 「肺破 裂」、圧縮 空気 を 呼吸 ガ スとす るス クー バ潜水 やヘル メ ッ ト潜水 などで は圧縮 空 気中 に含 まれ る窒 素 による 麻酔 作用 「窒 素酔 い」、急 激な減 圧 によ って生 じる 「減圧 症」な ど、 さまざ まな障 害 が発生 します。 また 、数 年前 に 「減圧 性骨壊 死」 の存 在 が明 らか にな り、その研 究が進め られて います。 では 「環 境圧潜水 」で 、人は何 m まで 潜る ことがで き る ので しょうか 。酸 素 とヘ リウムや水素 を混合 させた潜 水 呼吸 ガスを用 い、また 「飽和潜水 」 とい う特 殊な潜水 方 法に よって、 よ り深 い水 中への 潜水 が可能 にな りま し た 。 J A M S T E C で は、3 0 0 m 深 度の 実験 をお こな い ま し た 。 また フラ ン スで は7 0 1 m の実 海域 実 験 に成功 して い ます 。 今 後 、 さ ま ざ まな 問題 を ク リア す る こ と で 、 1 ,0 0 0 m までの潜 水が可能 だと考え られて います。 日本 人 と潜 水 の 関 わ りは 古 く、 ア マ (海 女 ・海 士 )の 活 動 は 『魏 倭 人伝 」 「古 事 記 」 に 記 され て い る ほ どだ 。 10 m ほ どの 素 潜 り で も人 体 は水 圧 に よ る大 き な影 響 を受 け る (写 真 上 )。 ス ク ーバ 潜 水 は 、気 軽 に水 中 を体 験 で き る ため 、職 業 潜 水 の み な ら ず 、 レ ジ ャ ー と して も 大 人 気 。 しか し、 誤 っ た潜 水 は 、人 体 に 大 き な障 害 を与 え る た め 、 入 念 な 潜 水方 法 の 習 得 が不 可 欠 だ (写 真 右 ・右 上 。J A M S T EC の 潜 水 プ ー ル での 訓 練風 景 ) 19 85 年 か ら開 始 した 「ニ ュ ー シー トピア 計 画 」 で は、 30 0 m の 深 海 潜 水 実験 をお こな っ た。 3 1気 圧 、水 温 6 ℃ とい う過 酷 な環 境 へ の 潜 水 をお こ な う た め に は 、写 真 の よ うな重 装 備 が必 要 。 潜 るだ け でな く減 圧 作 業 も た いへ ん で 、12 日間 も か か る 「しん か い2 00 0 」 は 19 8 1年 に完 成 した 日本 初 の 本 格 的 な有 人 潜 水 調 査 船 で、 水 深 2 ,0 00 m まで 潜 る こ とが で きる (写 真 上 )。 198 9年 の 完 成 以 来 、世 界 最 先 端 の 水 深6 ,5 00 m 級 潜 水 調 査 船 と して数 々の 業 績 を残 して きた の が 「しん か い65 00 」。 これ ま で の65 0 回 を超 え る潜航 で 、高 い安全 性 が実 証 され て い る

潜水船による大気圧潜水

人 間が普段 生活 して いる大気 圧の環 境の まま、水 中 に 潜水 する こと を 「大気圧 潜水」 と いい、潜水 調査船 や潜 水艦 には、 この潜水方 法が用 い られて います。 「大気圧 潜水」 は、人 体へ の負担 が大幅 に減少 される 反面 、乗員 室 となる耐圧 殻 は非 常 に頑 丈 に造 る必要 があ りま す。 現在 J A M S T E C が保 有 して い る潜水 調 査船 は 「しんか い2 0 0 0 」 と 「しん かい 6 5 0 0 」 で 、どち らも 非 常 に強 固な耐圧 殻 を持 って います 。両潜水 調査船 と も に、横長 のス タイルで すが 、耐圧殻部 分 は完 全な球 形 を していま す。 これは過酷 な水 圧 に対 して 、球 体が も っと も強 い形 状 であ るか らです 。特 に3 名の 乗員 を収容 す る 「しんか い6 5 0 0 」 の耐 圧殻 は安 全性 ・信 頼性 を確 保 し つ つ徹底 的な軽 量化 をはか るため 、材 料 や設 計 、工作の 分野 で、最新 の技術 を駆使 して開発 されま した 。

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特集

2

JAMSTECの挑戦

飽和潜水で300mの環境圧潜水に挑む

JA M S T E C では、 1 9 7 2 年スタ− ト駿 「シー トピ ア 計画」, 1 9 8 5 年スタートの 「ニューシート ピア計 画』 など、海中居住に関する計画を通 じて、ダイバーによる 数々加潜水実験をおこなってきま した。特に 「ニュー シ ート ピア計画」では、6 0 m の実海域実験からスタート し、 1 9 8 8 年に3 0 0 m の潜水実験に成功、 1 9 9 0 年の 最終潜水実験までに飽和潜水技術加開発と、水深 3 0 0 m という厳 しい条件下での海中作業技術 ・潜 水システム を確立 し、「環境圧潜水」 というジャンルに大きな貢献 ました。 ここで 「飽和潜水」という、人間がより深 く潜水する ため に無 くてはならない技術 について解説 しておきま す。レジャーダイビングなど、通常のスクーバ潜水では ボンベ内に圧縮 した空気を用 い、この潜水では5 0 m が 限度であるとされています。一方の飽和潜水では、多く の場合空気の代わりにヘリウムと酸素の混合ガスを使用 します。不活性ガスであるヘ リウムは、高圧環境の圧力 に応 じて血液や各組織に溶解 していきますが、ある溶解 量以上では溶解 しなくなり、飽和点に達 します。一度飽 和されるとその水深で何時問でも滞在でき、滞在時間の 長短に関わ らず減圧時間は一定であるという利点がある のです。

潜水によって起こる生体反応

人間 が何 m まで潜れ るのか とい う環 境圧潜 水の限 界へ のチ ャ レン ジと並行 して、潜水 が人体 に及 ぼす生体 反応 についての研 究も進 め られて きま した。 潜水 に伴 って 起 こる生 体反応 には、潜水 除脈 (顔 を水 につ ける と脈拍 数 が下 がる 反応 )、不整 脈 、高尿 酸 血現 象 (ス クーバ 潜水 で誘 起さ れる現 象 )、高圧 潜水 後 の貧 脈な どが知 られてい ます。 これ らの 生体反応 をふ まえた 上で 、運動負荷 と潜水 除脈の 関係や 、高尿 酸血現象 の抑 制法な どさまざ まな研究が おこなわれ ています 。

「潜水」に関する計画

J A M S T E C で は 、資 源 の 豊 富 な 大 陸 棚 の 開 発 を 目的 と した 海 中 居 住 計 画 「シ ー トピ ア 計 画 」 (1 9 7 2 年 ) を 皮 切 り に、 さ ま ざ ま な 計 画 を 実 施 し、 環 境 圧 潜 水 の 研 究 を 積 み 重 ね て き ま した 。 1 9 7 6 年 に は 潜 水 シ ミ ュ レー シ ョ ン 実 験 「シ ー ドラ ゴ ン 計 画 」 を お こ な い 、 1 9 8 5 年 に は 潜 水 実 験 の 集 大 成 と も い え る 「二 ュ ー シ ー トピ ア 計 画 」 を ス タ ー ト しま した 。 実 際 に ダ イ バ ー を海 底 に送 る こ の 計 画 は 1 9 9 0 年 ま で 続 き 、 最 終 潜 水 実 験 で は 3 0 0 m の 潜 水 に成 功 し、 新 た な 潜 水 技 術 の 確 立 に 貢 献 しま した 。 上 の 写 真 は 、 毛 利 元 彦 さ ん が お こ な っ た ア マ (海 士 ) を 被 験 者 と し た 潜 水 と生 体 反 応 の 実 験 風 景 「ニ ュ ー シ ー トピ ア 計 画 」 で の 潜 水 実 験 イ メ ー ジ 。 こ の 計 画 で は 、 タ カ ア シ ガ ニ が 生 息 す る 水 深 3 0 0 m の 潜 水 に 成 功 した

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特集

2

潜水機器で高圧の世界に挑む

J A M S T E C が お こな って きた深 海域 の研究 には 、数 多 くお潜 水機 器が 投入 され 、 さま ざ まな実績 を上げてい ます。 潜水 機器 に は、 大き く分 け ると無 人探 査機 有人 潜 水船 駿 2 種 頬 があ り、右 図 内の 「し ん かい 2 0 0 0 」 と 「しんかい 6 5 0 0 」以 外は 全 て無 人探 査機 で す。 こ和 無人 探査 機 は. 曳 航 式 (デ ィー プ ・トウ) と、 自航式 に大 別で き ま す。 自航式 無人 探査 機 は支 援母 船船 上 か ら和操 作で い ろい ろな 調査 を おこな うこ と加 で きる 無人 ロ ボ ッ トで 、深 海底 のサ ン プル を 採 取す る アー ム (マ二 ピ ュ レー 夕) や 、撮影 機 材な どが積 まれ てます 。 1 9 9 4 年 に は 「か い こ う」が 、地 球上 和最 深 部 にあた るマ リア ナ海 溝チ ャ レンジ ャー海淵 (水深 10 ,9 1 1m ) で 北調査 に成 功 し、これ によ り、J A M S T E C は 、地 球上 に存 在 する あ らゆ る深 さ にお け る 探査 をお こなうこ とが可 能 にな りま した 。

生物

深海に生きる生物たち

私 たち 、大気 圧 (1気圧 )加 世界 に住 む人 内にと って 、 水深 数千 m とい う深 海域 は、常 に高圧 にさ らされ る極 限 環境 という ことができ ます。 しか し、これ までの調査 に よ って 、高圧を好 む生物 の存在 や、熱 水が 噴出す る深 海 底 を好む生 き物の存在 も確認 されてい ます。 19 8 4 年には 、相模 湾初島沖 において 「シロ ウリガイ』 を優 占種 とす る深海生物 群集 が発見 され ま した。 この 生 物 群集 はメタ ンや硫化水 素な どの冷湧 出水 を利用 する化 学合成細 菌 を基 幹 とす る特異 な生態 系を構成 しているこ とが わか って います 。 また、水 深4 3 0 ∼ 1,4 0 0 m の熱 水噴出孔 「海 底温 泉)周 辺にの み生息す る 『ユ ノハ ナガ 二」 や、細 長 いホー スの ような形 を し、世 界中の 化学合 成生 態系 に生息 する 「ハオ リム シ」 の存在 も確認 され て います 。 この ハオ リム シ類 に はさ まざ まな種 類 があ り、 8 2 m とい う浅 い水 深か ら3 ,2 7 0 m の 深海 まで 、幅広 く 生 息 して いる生き物 です。 “極限 環境 ”と いう表現 は、人 間か らの一方 的な視点 であ り、特異 な生態系 に生きる深 海生物 たち にとっては、 私 たち が生 きて いる 1 気圧 の世界 の方 が、極 限環 境な の かも知れ ません。 世 界 最 深 部 で発 見 され た 「カ イ コ ウ オ オ ソ コ エ ビ」。 1 ,0 0 0 気 圧 を超 え る 世 界 に も生 物 が 存在 してい る。 写 真 左 下 は 、ハ オ リム シ類 の 中 で 最 も浅 い 海 に 生 息 す る 「サ ツマ ハ オ リム シ」。 写 真 右 下 は 「ユ ノハ ナ ガニ 」。 白 色 で眼 が 退 化 して い るの が特 徴 . JA M S T E C で は 7年 間 の 飼 育 に 成 功

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研究者に聞く地球温暖化予測研究領域 對馬洋子

宇宙(そら)から地球∼大気系の変動を丸ごとつかむ

地球規模の諸現象を

観測・予測するフロジェクト

地球 上 では 、大 洪水 や干 ばつ 、大 気汚 染 、生態系 の 破壊 、 そ して地球 温 暖化 な どのさ まざ まな 現象 が 発生 し、私 たちの 生活 に大きな 影響 を与 え ています 。 私 た ちの生 命 と 自然の生 態 系 を守る た め には、 これ らの現 象の 発生 メ カニ ズム を知 り、 観測 し、予測 す ることが必 要です 。 地 球 フロ ンテ ィア研 究 シス テム は 、宇宙 開発 事業 団 (N A S D A ) と 海 洋 科 学 技 術 セ ン タ ー (J A M S T E C ) との共 同プ ロジ ェク トと して平 成9 年 1 0 月 に発足 し、地球変 動予測 の実現 をめざ した研究 活動 を展 開中で す。 對 馬洋 子 さん の所 属す る 「地球 温 暖化予 測研 究領 域」 で は、地 球全 体 の長 期観測 に基 づいて モ デル を 検証 し、温 暖化 予測 の不 確 かさ を減 らす研 究 を して います。

さまざまな要素が働く温暖化予測の難しさ

1 9 9 0 年 に 気 候 変 動 に 関 す る 政 府 間 パ ネ ル IP C C

(Inte rg ov e rn m e nta l P a n e l o n C lim ate C h a n g e )に よる第 1 次 評価 報告 が公表 さ れ、温 室効 果 ガス の増加 に よる地球 温 暖化が指 摘 されて以 来 、地球温 暖化 が大 きな 社 会問題 にな って いま す。京都 会議 で は、二酸 化炭素 排 出量 の 削減 を巡 る 各 国の 紛 糾 が 記憶 に新 しい と ころ で す 。 1 0 年後 、 1 0 0 年後 の気 温上 昇 とそれ に伴 って発 生 す る海水 面の 上昇 な どの 大災害 な どの諸現 象 を正確 に予 測 する こ とができ れば 、削減量 の批 准等 もスム ーズ に進 ん だはずで すが、そ の予測 は容易な もの ではあ りません 。 「地球 温 暖化は二 酸化 炭素 の排 出量 か らだ けでは把 握 地 球 温 暖 化 は冷 夏 や 暖 冬 、 豪 雨 や 干 ばつ な ど 、地 球 上 の あ ら ゆ る地 域 に大 き な異 常 気 象 を発 生 させ る 引 き金 に 地 球 は太陽 エ ネル ギ ー を吸 収 す る 一方 で 、同 等 の 熱 エ ネル ギ ー を放射 す る こ とで平 衡 を保 っ て い る (地 球 の放 射 収 支 )。 雲 を始 め 、 水 蒸 気 や地 表 面 な ど地 球 ∼ 大 気 系 を構 成 す る 要 素 が 、 気 温 上 昇 に対 して どの よ うに応 答 し、 工 ネル ギ ー収 支 に どの よ うな影 響 を与 え るか を調 べ るの が對 馬 さん た ちの研 究 だ

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對  馬 

洋  子

Y OK O

TSU SH IM A

●地球フロンティア研究システム

  地球温暖化予測研

究領域  研究員

東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻博士

課程中退後、19 9 8 年4 月より地球フロンティア研究

システムに参加

で き ませ ん 。 そ れ は、 地球 ∼ 大気 系 は 水蒸 気 や雲 、 地 表面 な どさ まざ まな要 素 か ら構 成 され て いて 、こ れ らの要 素 が温 暖化 した時 にさ ま ざま な変 化 を し、 地球 の エネ ルギ ー収 支 に大 きな影 響 を与 える か らで す 。私 たち は コン ピ ュー タ上 でバ ー チ ャル な地 球 を 再現 す るモ デル を作 って 温暖 化予 測 をお こな って い ま す。 もち ろん 、地 球∼ 大気 系 を完 璧 に再 現す るモ デル は存 在 しま せん が、 その 精度 を上 げて い くため の研究 のひ とつ が私たちの 仕事です」 と對馬 さん。 衛 星 を 使 っ た 観 測 で 雲 の 特 性 を解 明 「2 0 0 1年 に出された IP C C 第3 次報告 書 によ ると、 2 1 0 0 年 で の地 表面 気温 の上 昇予測 は、全 地球平 均 でモデ ル によ って 1.4 ℃ か ら5 .8 ℃ までの ば らつ きが あ ります 。温 暖化 予測 の難 しさを端 的 に表 した数 字 です が、 この4 ℃ の差 を生 じさせ る大 きな 要因 の一 つがモ デル にお ける雲 の フ ィー ドバ ックの ば らつ き で す。 地球 ∼大気 系の 諸要 素 は温暖 化 に伴 ってさ まざ ま な応 答 を します が、 この応 答が 逆 に温暖化 に影 響を 及 ぼすのです 。例え ば、何か事件 が起 こった とき に、 冷静 に対 処 して事 を収 める人 も いれ ば、動 転 してま す ます事 を大 き く して しま う人 もい ます。前 者 のよ うな状 況を 事件 に対す るネ ガ テ ィブ (負 の )・フ ィー ドバ ック、後 者 をポ ジテ ィブ (正 の)・フ ィー ドバ ッ ク といい ます 。地球 ∼大 気系 の諸要 素 の うち、水 蒸 気や 雪面 、海氷 面 はポ ジテ ィブ ・フ ィー ドバ ックの 性質 を持 って いて、 温暖 化を増 幅 させ ると い うこと がわ か ってい ますが 、雲 につ いて は どの よ うな性質 を持 つかわ か ってい ませ ん。 この こ とが 温暖化 予測 にば らつ きを生 じさせ ているの です」 どの予測 が最も現実 に近 いかは将来温 暖化す れば分る ことです が、それで は困 ります 。そ こで對 馬さん は、今 自然 に起 きている温 暖化 において雲が どのよ うなフ ィー ドバ ックを してい るの かを探 り、モデル と比較 すれば検 証する ことができ るのでは 、と考えま した。そ のよ うな 自然の温 暖化 と して、年変動 に着 目 しま した。 さ らに、観 測デ さ夕 と して人 工衛星 データを全 球分 ま る ごと用 いる ことで、地球全体 のエネル ギー収支 の変動 に着 目す る ことを思 いつき ま した。 実際 に解析を おこない、全球 規模の気 候変動 の研究 に は人工衛 星に よる全 球観測 が、非常 に有効であ ると いう ことがわか りま した。 對馬 さんの衛星 を使 った雲 の観測 によ って 、全球で平 均 して見 る と雲の 反射率や 高度は気温 の年変動 では変化 がな い とい うことが世 界 で初め て明 らか にな りま した。 全体 と して、年変 動にお いては雲の フ ィー ドバ ック はポ ジテ イブでもネ ガテ ィブで もない とい うことがわか った ので す。 「これまで ほとん ど特性 のわか らな か った雲 のフ ィー ドバ ックを解 明する大きな ステ ップを踏み 出す ことがで き ま した。 でも 、私 た ちの研 究 は ここ か らが 重要 です 。 年変 動 における雲 の フィー ドバ ックがモ デル に おいて再 現 されて いない 原因 を調 べ 、どの よ うに改良 を加 えるか を考 える必 要が あ ります。実 は今 、この こと にとても頭 を悩 ませて います」 社 会 貢 献 に直 結 した 研 究 に大 き な 意 義 と や りが い 温 暖化 による 気温上昇 は 、南 極の 氷が溶 ける こと によ る数 十 m 単 位の水 面上昇 や 、病 原菌 の北 限上昇 による新 た な病気の 発生 、穀倉 地帯の干 ばつ によ る大飢饉 な どを 引 き起 こす可能 性が あ ります 。 「これ ら、人 類全体 に とって深刻 な問題 であ る温暖化 を研 究 し、問題 解決 の一翼 を担 っている現 在の仕事 に大 きな意義 とや りがい を感 じてい ます。今後 も衛星 デー 夕 とモデルを用 いて更 に研究 を進 め、地球全 体はも とよ り、 自分 が住 んで いる ところで はど うな るの かまで正 確 に予 測 で き る よ うな世 界 で 1 番 の モ デル を作 る こ とが夢 で す。た くさんの 人達 とい っ しょにそ のよ うなモ デルを作 り上 げて温 暖化 予測 を し、得 られ た知見 を社会 に提言す る日を楽 しみに して います」。 と語 って くれ ま した。 本 来 雲 に は 日射 を遮 る こ と によ っ て地 球 を冷 や す効 果 と、地 球 が射 出 す る熱 工 ネル ギー を減 らす こ とに よ っ て地球 を暖 め る効果 が あ る。現 在 の と ころ 、20 m / ㎡ ほ ど冷 や す効 果 が優 っ て いる が 、温 暖化 に よ っ てそ のバ ラ ンス が変 わ って しま うも か しれ な い

左 上 図 :衛 星 デ ー タ (E R B E :E arth R a diatio n B ud get E xp erim e nt) か ら得 られ た地表 面 温 度 の 年 変 動 に伴 う雲 の 反 射 率 の指 標 と な る数値 の変 動 (い ず れ も全球 平 均 )。 各 ドッ ト横 の数 字 は何 日 の デ ー タで あ る か を示 す 。

他 の三 図 :モデ ル の結 果 (C C S R :C e nte r fo r C lim a te S ystem R esea rch/N a tion al Institute for E nvirom e nta l S tudy , M P I:M ax P lan k Institute for M eteo rolog y, U K M O :U nited K ingd om M eteorolog ica l O ffice ),衛 星 デ ー タ で は、 ドッ トが地 表 面温 度 (横 軸 ) の増 加 に伴 って全 く変 わ

っ てお らず 、雲 の反 射 率 が 気温 の変 化 に よ らない こ とを示 してい る。 一方 、 モ デル で は 、 ドッ トが地 表 面 温 度 (横 軸 ) の増 加 に伴 って 縦 軸 のマ イ ナ スの 方 向 に変 化 して お り、雲 の反 射 率 が 気 温 の増 加 に伴 っ て強 ま って い る こ と を示 して い る

参照

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