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1 (H26 年度研究報告) テ ー マ 名: 健全な心身を持続できる福祉社会を目指して 個 別 事 業 名 : 健康診査に基づく腎機能判定ならびに慢性腎臓病の経年変化に寄 与する要因と医療・保健・福祉への活用 鳥取大学医学部地域医療学講座 特任准教授 浜田紀宏 平成26年度事業内容 背景と目的 以前から,慢性腎臓病(CKD)患者の多くは無症状のままで心血管疾患発症および 死亡のリスクとなることが広く知られるようになった(文献1).その一方で,メタボ リックシンドロームの早期発見を目的とした特定健康診査が改訂され,必須項目から 血清クレアチニン(Cr)が外されていた.そこで,鳥取県江府町では,江府町国民健 康保険が行ってきた特定健康診査(40 歳~74 歳対象)において血清 Cr による腎機能 検査を継続実施し,後期高齢者にも平成22 年度から腎機能検査が復活してほぼ同等の 健診を提供されてきた.また,生活習慣病,CKD,心血管疾患,などと広く関連する 血清尿酸(UA)の意義も重視し,ほぼ全ての受診者に対して測定を継続してきた. 昨年度の本事業では,平成24 年度の健診における腎障害患者数とその内訳ならびに 規定因子,さらには経年的腎機能低下に関する規定因子に関して検討した.その結果, 貧血が腎障害ならびに腎機能経年悪化の一因であることが示唆されたが,全体の半数 近くを占める後期高齢者において腎機能経年悪化を検討するには年数,測定回数が不 十分であり,受診者が保有する疾患,心電図異常などを考慮した因子分析も十分にな されていなかった.また,毎年腎機能と血清UA を測定したことがリスクの高い住民 を検出するために有意義であることの傍証となる知見を得る必要がある.特に,受診 者の過半数を占める高齢者は,すでに生活習慣病と臓器障害を有し多病であることか ら高尿酸血症を合併しやすいと考えられるが,高齢者における高尿酸血症の頻度と特 徴に関して十分に知られていない. そこで,本事業では, 1)平成25 年度の健診データに基づく CKD 保有率ならびに経年的腎機能変化の把握 を行い,それぞれにおいて受診者の背景ならびに血清 UA をはじめとする健診データと の関連を明らかにする. 2)高尿酸血症患者の年齢層別の頻度を明らかにし,各年齢層における血清尿酸値の 規定要因を検討する.

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2 3)こうして,同一住民に対して繰り返し施行された健診データの経年変化を各住民の健 康維持に活かす方策に関して提案を試みる. 4)要指導・要医療とされた健診結果の医療現場における活用現況に関して検討を行 う. 実施内容 1)平成 20 年~25 年度に健康診査を受けた 40 歳以上の江府町住民(1 年につき 500~600 人)を匿名でコード化して,各々の性別,年齢,身長,体重,body mass index (BMI),最高血圧,最低血圧,心電図異常ならびに各種疾患の有無,検体検査結果, 等を登録した. 血清クレアチニン(Cr)濃度を測定された住民について,年齢,性別から eGFR を 算出し,日本腎臓学会の診断基準(文献1)に準じてCKD の有無を判定した. eGFR [mL/min/1.73m^2] = 194 × 血 清 Cr[mg/dL]^(-1.094) × 年 齢 [歳]^(-0.287) (女性は×0.739) 平成25 年度の健診受診者の中で平成 20~24 年度の間合計 3 回以上受診した住民に 対して,eGFR の経年変化度を最小二乗法で求めた傾きとして算出した. 解析に用いた検体検査項目は以下のとおりである: eGFR,eGFR の経年変化度, 血清UA,血糖,HbA1c,脂質(総コレステロール(TC),HDL コレステロール(HDLC), 中性脂肪(TG)),ヘモグロビン(Hb). 各種疾患に関しては,高血圧,脂質異常,糖尿病,メタボリックシンドローム,高 尿酸血症,貧血を解析対象とし,いずれも健診結果から当該診断基準に合致ないしは 治療中の受診者を「あり」と分類した. 受診者の年齢による分類は各種健診の対象年齢と医療制度に準じて,壮年者(40~ 64 歳),前期高齢者(65~74 歳),後期高齢者(75 歳以上)の 3 群とした. 2)CKD の年齢・性別の保有率と規定因子 平成25 年度の健診データから CKD と判断された受診者の各年齢・性別の割合を算 出した.また,eGFR と,血清 UA,Hb,脂質などの検体検査項目,BMI などを含む 数値データとの関連に関して,相関分析を男女別に行った.さらに,CKD ありを従属 変数,心電図異常ならびに各種疾患の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析 を,男女別に行った. 3)腎機能の経年変化度とその規定因子 eGFR の経年変化度(負の値は腎機能低下傾向を示唆)と,数値データとの関連を, 相 関 分 析 を 用 い て 検 討 し た . ま た ,GFR の 経 年 変 化 度 が 中 央 値 ( - 1.39mL/min/1.73m^2 以下)の群を「腎機能経年悪化あり」と定義し,心電図異常な

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3 らびに各種疾患の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を,男女別に行った. 4)高尿酸血症の頻度と血清尿酸値の規定要因 各年齢層における高尿酸血症(血清UA>7mg/dL ないしは治療中)の保有率を男女 に分け検討した.次に,血清尿酸値を従属変数として各健診パラメータを説明変数と した回帰分析を男女別に行った.また,高尿酸血症と,CKD,心電図異常ならびに各種 疾患の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った. 5)統計解析 統計ソフトはSPSS Ver. 21 を使用した.数値指標は平均値±標準偏差で示した. 数値指標の分布に関してShapiro-Wilk 検定にて判定後,正規性を認めた上記指標に関 して単相関を算出した.いずれの検定においても,P<0.05 をもって有意差ありと判断 した. 結果 1)平成25 年度の健診におけるCKD患者 平成24 年度の受診者の中で血清 Cr 等のデータ登録のあったのは 606 人で,うち男 性は268 人(年齢 40~94 歳;うち壮年者 47 人,前期高齢者 92 人,後期高齢者 129 人),女性は338 人(年齢 41~94 歳;うち壮年者 45 人,前期高齢者 107 人,後期高 齢者186 人)であった. CKD と判断された受診者は全体の 26%,全男性の 25%,全女性の 27%であった. 各年齢・性別の割合は表1 の通りであった. 表1 江府町健診受診者においてCKD と判断された割合 性別 壮年者 前期高齢者 後期高齢者 男性 17% 22% 32% 女性 9% 15% 38% eGFR を従属変数,各パラメータを説明変数とした単回帰分析を行った結果,男性 において,Hb,HDLC,最低血圧と正の相関,血清 UA,BMI と負の相関を認め,重 回帰分析ではHb,HDLC と正の相関,血清 UA と負の相関を認めた.女性において eGFR は,Hb,HDLC,最低血圧と正の相関,血清 UA と負の相関を認め,重回帰分 析ではHb と正の相関,血清 UA と負の相関を認めた. CKD ありを従属変数,心電図異常ならびに各種疾患の有無を説明変数としたロジス ティック回帰分析を行った結果,高血圧,貧血,心電図異常,高尿酸血症が有意に関 連した.

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4 2)腎機能の経年変化度とその規定因子 eGFR の経年変化度を従属変数, 各パラメータを説明変数とした単回 帰分析を行った結果,男性において, eGFR,HDLC と正の相関を認め, いずれも重回帰分析でも正の相関を 認めた.女性においてeGFR の経年 変化度は,eGFR,Hb と正の相関を 認め,血清UA と負の相関を認めた. 重回帰分析では Hb と正の相関,血 清UA と負の相関を認めた(図). eGFR の経年変化ありを従属変数, 心電図異常ならびに各種疾患の有無を説明変数としたロジスティック回帰分析を行っ た結果,CKD あり,高尿酸血症が有意に関連した. 3)高尿酸血症の頻度と血清尿酸値の規定要因 高尿酸血症と判断された受診者は全体の10%,全男性の 18%,全女性の 3%であっ た. 高尿酸血症の各年齢・性別の割合は表 2 の通りであった.男女とも,世代間に有意 な差異は認められなかった. 表2 江府町健診受診者において高尿酸血症と判断された割合 性別 壮年者 前期高齢者 後期高齢者 男性 17% 15% 20% 女性 0% 3% 8% 血清UA を従属変数,各パラメータを説明変数とした単回帰分析を行った結果,血 清UA は男性において,Hb,TG,TC,BMI と正の相関,eGFR と負の相関を認め, 重回帰分析ではeGFR と負の相関を認めた.女性において血清 UA は,Hb,TG,BMI と正の相関,eGFR と負の相関を認め,重回帰分析では TG,BMI と正の相関,eGFR と負の相関を認めた. このようにBMI,TG と血清 UA との関連がみられたため,BMI<18.5 の受診者と BMI>25 の受診者において血清 UA を分散分析にて比較したところ,前者(4.4± 1.2mg/dL)が後者(5.2±1.3mg/dL)よりも有意に低値であった. 高尿酸血症と心電図異常ならびに各種疾患の有無を説明変数としたロジスティック 回帰分析では,CKD あり,尿蛋白陽性,心電図異常との関連を認めた.

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5 4)要指導・要医療とされた健診結果の医療現場における活用現況に関しては,3 月末 を目標に検討を行う予定である. まとめ  江府町健診受診者における検討から,男女とも腎機能(eGFR)低下は,貧血傾向 (Hb 低値),血清 UA 高値と関連すること,肥満(BMI 高値,HDLC 低値)と関 連することが示唆された.  受診者が高血圧ならびに心電図異常(治療中を含む)であればより高率に CKD で ある可能性も示された.  eGFR の経年低下は腎機能低下ならびに血清 UA 高値と関連することが示唆され た.さらに,男性ではHDLC 低下,女性では Hb 低下と関連する可能性も示され た.  40 歳以上の男性における高尿酸血症の罹患率は各年齢層において相違はなかった. 女性は加齢によって若干上昇する傾向はあったが,男性の罹患率よりは大幅に小 さかった.  高尿酸血症は CKD ならびに心電図異常と関連する可能性が示唆された.また,女 性において血清 UA は肥満(TG 高値,HDLC 低値)によって高値になり痩せに よって低値をとる可能性も示された. 今後の課題 江府町では,健康診査の質を保つために血清による腎機能検査ならびに血清尿酸値測定 を継続実施してきた.今回の検討では,それらが生活習慣病,心電図異常をはじめとする 健診項目と強い相関があり,種々の臓器障害を合併しやすい住民を検出するのに有用であ ることが示唆された.また,Hb の低下は低栄養を反映し,難治性疾患のみならず虚弱と も関連することから,腎機能の経年低下とその関連項目の異常は種々の支援を今後要する 可能性のある住民を検出することにもつながる可能性がある. 本事業結果は,各年の健診データを特に腎機能の変化ならびに住民の栄養状態の変化 (体重,貧血,脂質など)の視点で縦覧することが住民の健康維持に重要性である可能性 を示唆するものと考えている.経年的に観察する項目としては,今回検討を行ったeGFR 以外に,Hb,体重が重要であり,職員などが長く接している受診者からうける印象(痩 せてきた,緩慢,活気がない,等)も有意義であると考えられる.今後は本事業結果 を医療・保健・福祉に携わる各職種と詳細に検討し,健診結果を住民の健康維持に活用で きるよう尽力していきたい. なお,本事業結果の一部を 2015 年 2 月に開催される第 28 回日本痛風・核酸代謝学会

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6 をはじめとする集会にて発表し(文献2),学術雑誌等に投稿する予定である. 文献 1. 日本腎臓学会編: CKD 診療ガイド 2012. 東京医学社(東京),2012. 2. 浜田紀宏,他: 高齢者における高尿酸血症の頻度と血清尿酸値の規定要因に関 する検討. 第 28 回日本痛風・核酸代謝学会抄録集,2015 年 2 月.

参照

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