「遺伝外来」開設のお知らせ
~遺伝診療とは~
和歌山県立医科大学附属病院
総合周産期母子医療センター 准教授
南 佐和子
遺伝医学
ヒトには個体差・多様性が観られます。それを
決定しているのが遺伝子です。
遺伝医学
発症に遺伝子がかかわっている疾患を総称して
遺伝性疾患と呼び、表のように分類されます。
遺伝性疾患の分類
単一遺伝子疾患
ミトコンドリア遺伝病
多因子疾患
染色体疾患
体細胞遺伝病
遺伝医学
遺伝性疾患の分類
単一遺伝子病疾患
ミトコンドリア遺伝病
多因子疾患
染色体疾患
体細胞遺伝病
遺伝性疾患の原因解明や診断・治療・
予防などを研究するのが遺伝医学です。
遺伝外来では
医療情報を基にして、現在罹患している
疾患が遺伝性疾患であるかどうかの検討
を行います。
遺伝性疾患が疑わしい場合には診断のた
めに遺伝学的検査を行うかどうかを検討
します。
その結果を基に、クライエントに対して
遺伝カウンセリングを行います。
遺伝カウンセリングとは
家族のニーズに対応する遺伝学的および
すべての関連情報を提供すること
家族や個人がそのニーズ・価値・予想など
を理解した上で意思決定ができるように補
助すること
Werts DC. Guildlines on Ethical Issues in Medical Genetics and the Provision of Genetic Services. WHO, 1995.
当院の遺伝外来での対象疾患
遺伝性疾患の分類
単一遺伝子疾患
ミトコンドリア遺伝病
多因子疾患
染色体疾患
体細胞遺伝病
当院の遺伝外来での対象疾患
染色体疾患の出生前診断
遺伝性乳がん・卵巣がん
胎児異常の要因
染色体疾 患 25% 単一遺伝 子疾患 20% 多因子遺 伝 50% 環境・催 奇形因子 5% 21トリソミー 53% 18トリソミー 13% 13トリソミー 5% 性染色体数的 異常 13% その他の染色体 異常 16%染色体疾患の出生前診断
出生前診断
1)非確定的遺伝学検査
超音波検査
母体血清マーカー
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
2)確定的遺伝学検査
羊水検査
絨毛検査
染色体疾患の出生前診断
検査施行前のカウンセリング
該当疾患に対する情報提供
胎児が罹患している可能性
検査をすることでどこまで正確な診断が
可能か
診断ができた場合の結果の意義
児が罹患している場合の妊娠中の胎児の
健康状態
出生した後に要する医療、ケアー
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
母体血中の胎盤由来の胎児cell-free DNAが含まれている 約10%は胎児由来 次世代シークエンサーで網羅的に塩基配列を決定して計算する 胎児の染色体の数的異常(異数性)を診断する遺伝学的非確定 検査である (現在対象となっているのは13,18, 21番染色体である) 妊娠10~14週で行われるNIPTの実施要件
母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針 H25年3月 日本産科婦人科学会
NIPTの結果判定
陰性適中率の高い検査である
検査を受ける年齢で陽性適中率は変化する
胎児のDNAが少ないと保留となる
NIPTの結果判定
検査を受ける 時の妊婦さん の年齢 その時点でダウンの赤 ちゃんを妊娠している 一般頻度 陽性適中率 PPV(%) 陰性適中率 NPV(%) 30 1/470 67.8 99.99 35 1/185 84.3 99.99 40 1/50 95.3 99.98 44 1/15 98.6 99.9421トリソミー
検査を受ける 時の妊婦さん の年齢 その時点で18トリソミーの 赤ちゃんを妊娠してい る一般頻度* 陽性適中率 PPV(%) 陰性適中率 NPV(%) 30 1/2100 10.6 99.99 35 1/840 22.9 99.99 40 1/230 52.2 99.99
NIPTの結果判定
18トリソミー
検査を受ける 時の妊婦さん の年齢 その時点で13トリソミー の赤ちゃんを妊娠して いる一般頻度* 陽性適中率 PPV(%) 陰性適中率 NPV(%) 30 1/6500 4.5 99.99 35 1/2600 10.5 99.99 40 1/700 30.4 99.99
NIPTの結果判定
13トリソミー
陽性であれば遺伝カウンセリングを行い
確定検査を行う
NIPTの結果判定
遺伝カウンセリングとは遺伝性疾患の患者、あるいは その可能性を持つ者、家族に対してその後の選択を自 らの意思で決定し、行動できるように臨床遺伝学的診 断、医学的判断に基づき適切な情報を提供し、支援す る診療行為である。 遺伝カウンセリングにあたって、遺伝子の変化に基づ く疾患・病態や遺伝型を人の多様性として理解し、そ の多様性と独自性を尊重する姿勢で臨む。染色体疾患の出生前診断
出生前診断
1)非確定的遺伝学検査
超音波検査
母体血清マーカー
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)
2)確定的遺伝学検査
羊水検査
絨毛検査
羊水検査
遺伝学的
確定検査
胎児の細胞を培養し染色体を調べる
G-band:異数性(数)
転座、欠失、重複
FISH:異数性
1/300で流産のリスク
1.夫婦のいずれかが、染色体異常の保因者である場合 2.染色体異常症に罹患した児を妊娠、分娩した既往を有する場合 3.高齢妊娠の場合 4.妊婦が新生児期もしくは小児期に発症する重篤なX連鎖遺伝病のヘテロ 接合体の場合 5.夫婦の両者が新生児期もしくは小児期に発症する重篤な常染色体劣性遺 伝病のヘテロ接合体の場合 6.夫婦の一方もしくは両者が、新生児期もしくは小児期に発症する重篤な 常染色体優性遺伝病のヘテロ接合体の場合 7.その他、胎児が重篤な疾患に罹患する可能性がある場合
羊水検査の実施要件
出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解 H25年6月 日本産科婦人科学会結果について説明を行う
診断ができた場合の結果の意義
児が罹患している場合の妊娠中の
胎児の健康状態
出生した後に要する医療、ケアー
妊婦さんおよびそのご家族が結果を
理解し、その後の判断に対して支援し、
適切なカウンセリングを行う。
遺伝外来でカウンセリングを行う
遺伝性乳がん・卵巣がん HBOC
乳がん
遺伝性乳がん
細胞の癌化に関係する因子
がん遺伝子
車のアクセルに例えられる。異常が起こ ると細胞増殖のアクセルを踏みっぱなし の状態になり、細胞が癌化する癌抑制遺伝子
車のブレーキに例えられる。異常が起こ ると細胞の増殖のブレーキが利かなくな り、細胞が癌化するDNA修復関連
遺伝子
異常がおこると様々な遺伝子に生じた変 異が修復されずに細胞が癌化する家族性腫瘍
症候群名 原因遺伝子 主な腫瘍・症状 家族性大腸ポリポーシス APC MYH(AR) 大腸癌、十二指腸乳頭癌、 デスモイド腫瘍 Lynch症候群 遺伝性非ポリポーシス大腸癌 MLH1, MSH2 MLH6, PMS2 大腸癌、子宮体癌、 卵巣癌 遺伝性乳がん・卵巣がん BRCA1, BRCA2 乳がん、卵巣癌、すい臓癌 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1) MEN1 副甲状腺腫瘍、膵頭細胞腫、 脳下垂体腫瘍 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN2) RET 甲状腺髄様癌、副腎褐色細胞腫 網膜芽細胞腫 RB1 網膜芽細胞腫、骨肉腫 Li-Fraumeni病 TP53 骨肉腫、乳癌、脳腫瘍、 副腎皮質癌 Von-Heppel-Lindau病 VHL 網膜や中枢神経の血管芽腫、 腎癌 Cowden病 PTEN 乳癌、甲状腺腫、多発性毛鞘腫 Peutz-Jeghers症候群 STK11 小腸過誤腫、乳癌、大腸癌、 口唇色素沈着遺伝性乳がん・卵巣がん HBOC
DNA修復関連遺伝子のひとつのBRCA1あるいは BRCA2の変異が原因とされる乳がん 家系内発生の乳がんのうち約10% 遺伝性乳がんのうちの50~80% [分類名] [分類名] [分類名] [分類名] [分類名] [分類名]一般 (日本人) 乳がんの家族歴の ある方 遺伝性乳がん卵巣がん (遺伝子変異あり) 乳がん 8% (1/12人) 15~30% 41~90% 1倍 2~4倍 (一般集団と比較して) 6~12倍 卵巣がん 1.1% (1/82人) 3~11% 8~62% 1倍 3~10倍 8~60倍
遺伝性乳がん・卵巣がんHBOC
Q:BRCA1 / 2 遺伝子に変異があるとき 生涯でどのくらい癌になりやすいか?遺伝性乳がん・卵巣がんHBOC
Q:BRCA1 遺伝子に変異があるとき 生涯でどのくらい癌になりやすいか(累積) 0 20 40 60 80 100 20 30 40 50 60 70 乳がん 卵巣がん 年齢 %遺伝性乳がん卵巣癌症候群HBOC
Q:BRCA2 遺伝子に変異があるとき 生涯でどのくらい癌になりやすいか(累積) 0 20 40 60 80 100 20 30 40 50 60 70 乳がん 卵巣がん 年齢 %遺伝性乳がん卵巣癌症候群HBOC
Q:乳房温存手術後の同側乳がんにかかる可能性 0 10 20 30 40 50 BRCA1/2変異あり BRCA1/2変異なし %遺伝性乳がん・卵巣がんHBOC
Q:乳がん手術後に対側乳がんにかかる可能性 0 10 20 30 40 50 BRCA1/2変異あり BRCA1/2変異なし %HBOCの特徴
BRCA1、BRCA2に変異を認める 若年発症(50歳未満でしばしば発症) 家系内集積 トリプルネガティブ (ER、PR、HER2いずれも発現なし) 両方の乳房に癌が発症する 片側の乳房に複数回癌を発症する 乳がんと卵巣がんの両方を発症する 漿液性腺癌>類内膜腺癌>明細胞腺癌 保因者の20~40% 男性で乳癌の発生と前立腺がんの発症がある 膵臓がんのリスクも高い