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教員としてのキャリア形成について考えてみましょう

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Academic year: 2021

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第6章 OJT の評価

第 1 節 OJT を効果的に進めるために

1. OJT を始めるにあたって ここでは、OJT を進めるための流れについて整理してみましょう。OJT を有効に機能させ、成果 を挙げるためには、個々の教員が、今、自分にとってこの OJT が確かに必要であると自覚すること が最も重要です。そして、教える側・教えられる側の双方が、OJT に関わることで共に自身の力量 や職能の向上が図れるということを共通に認識することが、その成果を左右するということを忘れて はなりません。 まずは今の自分を振り返り、将来のあるべき姿をイメージしてみます。それを基に、OJT について の自身の目標と計画を立てていきます。<資料1>は、そのための計画表の一例です。教員とし てのあゆみを振り返るとともに、これからの教員生活に向けた目標を自分なりにできるだけ具体化 していきます。この作業によって、今の自分が、より明確にとらえられるようになり、今後、自分が取 り組むべき課題についての優先順位を明らかにすることができます。また、<資料2>のようなシー トを活用して、自身の課題をより客観的・具体的に把握するのも良い方法です。年度末にも再度、 このシートを用いて自己評価を行い、OJT の成果を測る資料として活用します。 <資料1>ライフプランと自己の研修計画の例 年代 初任 0 中堅 15 ベテラン 30 活動の状況 児童とたくさんふれあ う 学校行事やクラブに 取り組む 専門分野の力をつけ る 後輩教員の育成を支 援する 希望する主な分掌など 学級担任 学年世話係(総務) 学習指導部長 指 導 力 に 関 す る 視 点 1 授業づくり 教材研究を通して授 業技術を学ぶ 少 人 数 指 導 の 効 果 的な指導法の工夫 ICT機器を活用した 授業実践の工夫 軽度発達障害等のあ る児童の学習指導の 工夫 児童自ら学び、互い に学び合える授業 専門教科の指導力の 向上 2 人間性・ 社会性の育成 児童の行動や様子を 見取る力 発達段階に応じた基 本的なルールやマナ ーの指導 人間的な良さや生き 方について児童と分 かち合える指導 3 学級・学校 づくり 児童の実態把握と集 団の中における個へ の支援 集団のモラルと個々 の役割の組織化 集団活動を通した自 己成長・自己指導能 力の育成 4 協働・連携 積極的に会話を交わ し、連絡帳などで理 解を深める 学級通信による家庭 との連携、情報の発 信 地域人材の積極的な 活用 5 向上心 教 育 書 や 先 輩 教 員 の実践に学ぶ 教育界の動向につい て学び、実践する

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<資料2> 【教師力】自己評価表 (4:とても思う 3:やや思う 2:あまり思わない 1:まったく思わない) 実践 力の 視点 項 目 自己評価 年度当初 年度末 ① 授 業 づ く り 1 教科の専門性 教材研究を深め、教科の専門性を高める取組を普段から行っている 2 教育課程 目指す児童生徒の姿や「学校教育目標」、各教科の題材構成をふまえ て教育課程を編成している 3 授業の組立て 児童生徒の実態や教材の系統性をふまえて授業を組み立てている 4 指導の工夫 普段から板書や発問、ノート指導などを工夫している 5 内容の定着 児童生徒に学習内容の定着を図るために、教材の工夫や家庭学習の 習慣化などの工夫をしている 6 学習過程 児童生徒に学習の必要性・目的を理解させながら、学習意欲が継続す るように学習過程を工夫している ② 児 童 生 徒 の 人 間 性 ・社 会 性 の 育 成 7 基本的生活習慣 様々な機会をとらえて、児童生徒に基本的生活習慣の確立を図るため の取組をしている 8 生活状況 普段から児童生徒の生活環境や交友関係など、学校外での生活状況 の把握に努めている 9 特別支援 LD・ADHA・不登校児童生徒などの理解に努め、状況に応じた支援をし ている 10 道徳的な実践力 授業や学校生活全般を通じて、児童生徒の道徳的な実践力の育成に 努めている 11 キャリア教育 学級活動やホームルームの時間などを活用して、児童生徒のキャリア 形成に積極的に努めている 12 生徒指導 予防的対応とともに、児童生徒に問題行動が見られたときには、機会 を逃さずその場における指導を心がけ、早期の問題解決に努めている ③ 学 級 ・学 校 づ く り 13 個人目標の設定 校長の「学校経営・運営ビジョン」をふまえたうえで、それに沿った個人 目標を設定し授業づくりや学級・学年づくりに取り組んでいる 14 学級集団 望ましい学級集団となるよう、ふだんから児童生徒に仲間意識の育成 やリーダーづくりなどの働きかけをしている 15 児童生徒把握 個々の児童生徒の人間関係や興味・関心等を考慮し、どの子にも責任 を持たせ活躍の場を持たせるよう努めている 16 PDCA サイクル 分掌や各種行事などにおいて、計画・実践・評価・改善の PDCA サイク ルをふまえて取り組んでいる 17 リーダーシップ 各種行事や校務分掌の運営において、担当の事項についてはリーダ ーシップを発揮し、責任を果たすよう取り組んでいる ④ 協 働 ・連 携 18 同僚との関係 同僚へのあいさつや言葉かけにより、望ましい人間関係づくりに努めて いる 19 同僚との会話 休み時間や放課後などの機会を見つけて、同僚と学校の課題や実践・ 取組などについて話し合っている 20 協働性 分掌や行事において、同僚の個性を生かしたり、補ったりするなど互い に協力して取り組んでいる 21 PTA PTA各種委員会や学級の保護者会など、PTA組織の活動において、 関係者と連携・協力しながら取り組んでいる 22 保護者 児童生徒の学校生活について、保護者へのこまめな連絡を心がけ、連 携して指導するようにしている 23 地域・関係機関 授業や学校行事などの目的に応じて、保護者や地域住民、関係機関と 連携して教育活動にあたるようにしている ⑤ 向 上 心 24 ふりかえり ふだんから日々の実践を振り返り、自身のよさや課題を適切に把握 し、具体的な取組における工夫改善に努めている 25 研修 自身のライフプランに基づいて、計画的に学校内外の研修に取り組ん でいる 26 社会変化への対応 社会の教育に対する期待や教育界の動向を常に意識し、学習指導や 生徒指導の改善に生かしている 27 同僚性 主任や同僚へ常に相談するよう心がけ、支援や助言を受けながら授業 や学級づくりなど様々な力量の向上に努めている 28 業務の効率化 担当する分掌事務の効率化のために、工夫改善を心がけて取り組ん でいる

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2. OJT の計画を立てる

これらのシートによる自己分析の結果をもとに、OJT に関する計画を立ててみましょう。

<資料3>OJT による研修計画書の例

OJT 研修計画書

OJT 実践者 A 小学校 教員名 「 」

OJT 1 OJT 2 OJT 3

O J T の 実 施 概 要 実践力の視点 1 授業づくり 4 協働・連携 5 向上心 内 容 ・教科の専門性を高める教材 研究 ・保護者との連携 ・実践の振り返り 目 標 明確なねらいのもとでの授業 実践に取組、児童に考える力 を育てる 児童の学校生活について、的 確に実態を把握し、保護者と連 携して児童の指導にあたること ができる 自己の実践を振り返り、常に創 意工夫を生かし改善に努める ことができる 手立て ・学習課題を明確にし、児童の 学習実態を的確に把握し、授 業の組立てを工夫する ・児童の思考を助ける板書の 工夫をする ・学習に有効な教材・教具を提 供できるようにする ・児童の頑張りを記録し、積極 的に保護者に知らせるように する ・課題のある児童の保護者と連 絡帳などで、密に連絡を取り 合い、児童の指導に生かせる ようにする ・学期単位で実践を振り返る場 を設定する ・他者(支援者・管理職・児童) からの自己実践に対する評 価を取り入れる ・研修計画の点検と修正を行 う O J T 支 援 計 画 OJT 支援者 研修係 生徒指導係 学年世話係 OJT の方法 ・単元構想の共同作成と助言 ・事例や参考図書の紹介と助 言 ・授業の参観と協議 ・日々の事例報告と助言 ・生徒指導委員会 ・家庭訪問 ・OJT 計画の共同作成 ・毎学期の評価や反省 関連の組織 校内若手教員勉強会 校内研修(授業研究会) 生徒指導委員会 学年会 管理職の指導・助言 評 価 ・ 改 善 (年 度 末 ) 自 己 評 価 成果 課題 OJT 担当者 (支援者)の評価 管理職の評価 次年度OJT への改善事項

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<資料3>は OJT による指導を受ける側の教員が、自身の課題をふまえて立てた計画書の例 です。この例では、<資料2:「自己評価表」>の「実践力の視点」5つの中から、3つをテーマに選 び、OJT に取り組むよう計画しています。あまり欲張らず、ある程度内容を絞って取り組むことが大 切です。計画の立案にあたっては、目標(目指す教員像)を明確に設定し、その達成のための手 立て(取組や実践)をできるだけ具体的に示すようにします。なぜなら、この具体化の内容がOJT での指導内容でもあるため、場当たり的な指導となることを回避することができ、指導の時期や場 面についての計画が立てやすくなるからです。 (資料は、福島県教育委員会開発「OJT ツール」を参考に一部改定)

第 2 節 組織で取り組む OJT へ

私たちが、学び続ける教員であり続けるためにも、学校は OJT を意図的・計画的・継続的に進め ることのできるシステムを整える必要があります。一人ひとりの教員は、経験や年齢とともに学校に おける立場や求められる役割も変わっていくことになります。場合によっては、これまでだれも経験 したことのない課題や全く新しいプロジェクトを担当しなければならないといった状況に遭遇するこ ともあるでしょうが、ほとんどの職務は、これまでに先輩教員が体得した専門知識やノウハウを学ぶ ことで対応できるものです。つまり、個々の教員の職能開発に効果を挙げた OJT のプログラムを、 学校組織全体の財産として有効に活用するシステムを築き、全員が共有できるようにすることで、 今後の OJT をより効果的に機能させることができるのです。個々の教員が主体的に自身の職能開 発に取り組むことは、結果として学校組織の活性化と機能の充実につながります。更に、そうした 組織に身を置くことは、個々の教員にとっても、必要に応じて教員としての力量を高めるための機 会と手段を保障された、恵まれた環境を与えられることになるのです。 1. OJT のための体制づくり (1) 指導者(メンター)の選定 OJT を始めるにあたって大切なことは、だれがだれを指導するのかを 明確にすることです。OJT の良さは、日常的な業務を通じて学ぶことに あるので、特別な場を設定することなく、適宜会話が交わせるように、同 じ学年や同じ分掌、同じ教科の教員どうしのように、できるだけ身近な関 係にあるペアやチームで進めることが望ましいと思われます。ただし、自 主性を尊重するあまり、独りよがりの OJT に陥らぬよう、客観的・専門的 に評価・指導できる指導者(メンター)に付いてもらうことが必要です。

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(2) 校長との目標の共有 そのためにも、自身の OJT 実施計画については、必ず校長との相談・協議の機会をもつよう にして、指導者の人選や依頼にも協力が得られるようにしなければなりません。また、これまで 経験していない行事や校務分掌などの業務を担当し、経験や幅を広げたいと思う場合も、そう した希望や意向を、まずは校長に伝え理解してもらうことが必要です。すでに、多くの学校では、 評価・育成システムにおいて、個々の教員と校長との面談が行われています。この機会を OJT の視点でとらえ、より積極的に活用することが効率的だと言えます。 (3) OJT 担当者・OJT 責任者

OJT において、指導する立場の教員が OJT 担当者です。OJT をより組織的に進めるために は、OJT 担当者の相談に乗ったり、OJT の進捗状況や課題について教頭や校長に報告や相談 を行ったりする立場の者を置くのが効果的です。OJT 責任者などと呼ばれ、教員には主任が、 主任には主幹教諭等が、主幹教諭には教頭がその立場にあたるのが一般的です。そして、校 長は、OJT の全体責任者であり、教頭は OJT の実施を総括する推進責任者にあたります。 (4) OJT 成功の土壌 OJT は、指導する側の教員にとっても成長のための絶好の機会です。OJT 担当者となる中堅 教員や経験豊かな教員が、「自分は認められている」と感じ、「一肌脱ごう」と意気に感じて意欲 的に OJT に関われるような雰囲気づくりが大切です。また、例えば授業力に関わる OJT では、 直接の OJT 担当者だけでなく、他の教員の授業を参観したりアドバイスを受けたりする機会も当 然考えられるため、学校全体で取り組もうという意識が教員全員に共有されることが必要です。 2. 報告・連絡・相談 授業は言うまでもなく、日々、たくさんの仕事に追われる教員にとって、限られた時間のなか でOJTを効率的・効果的に進めるために、報告・連絡・相談を欠かさないようにすることが大切 です。関係者への協力依頼や時間の調整、研修内容の修正・再検討など、OJT を進める中で 必ず生じる様々な課題は、その都度 OJT 責任者を通じて管理職にも報告・連絡・相談がなされ、 適切な助言や協力が得られる体制を整えておく必要があります。そのために、関係者で組織す る「OJT 推進委員会」等を設置し、進捗状況などについての情報交換や協議を目的とした定期 的な協議の場をもつようにします。できれば、OJT 責任者どうしの連絡会等も随時、開催できる ようにしたいものです。 また、だれもが自分も OJT の当事者であるという自覚を持ち、学校全体で取り組んでいるとい う意識を醸成するために、授業参観や行事・校務分掌の会議や打合せなど、OJT に関するちょ っとした情報もできるだけ全教員に知らせるようにすることが大切です。

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第 3 節 今後に生かす OJT 評価

1. OJT を振り返る

1年を通じて取り組む OJT はもちろん、行事など短期で終わる OJT に関しても、OJT の成果 や課題についてしっかりと振り返り、次年度に生かすようにします。本章第1節での OJT 研修計 画表(資料3)立案の際に行った自己評価表(資料2)を用いて、OJT 実施後の自分の姿を客観 的に再評価してみましょう。この自己評価を基に、改善された点、より専門性や長所を伸ばすこ とができた点、努力が成果として十分に結果に現れなかった点、新たに課題として認識された 点などを具体的に整理しながら、年度当初の研修計画表を作成します。このように、OJT に取り 組んだ教員自身が振り返りをすることで、自身の OJT に対する意識や理解が深まり、その後の OJT の成果へとつながっていくことになります。 また、指導を行った OJT 担当者や管理職は各教員が行った自己評価について、必ず話合い の場をもち、次年度も意欲的に OJT に取り組めるようアドバイスを行うことが必要です。そのため には、目標に対する結果の評価だけでなく、OJT の過程における教員のやる気や創意工夫、 周囲の教員の理解や支援の態勢なども評価の観点にすると良いでしょう。 2. 今後の OJT に生かすために 個々の教員の OJT への取組を学校全体のシステムとして定着させるためには、個々の OJT 評価の結果を学校全体で共有し、次年度の OJT 計画に生かせるようにすることが必要です。そ のためには、結果の良し悪しに関わらず、結果をもたらした原因を分析することが必要です。 OJT の目標や実施時期・方法等は適切だったか、途中経過も含め、何が良い結果に結びつい たのか、どこに改善の必要性があるのか、などを明らかにしていきます。そして、改善や変更の 必要性があるものについては、具体的にどう手立てを行っていくのかを決めていきます。これら を、教えられる側、教える側双方の視点から行うことで、組織として取り組む OJT の内実を実りあ るものとしていくことができるのです。 <表4> OJT 評価における分析の視点 OJT を受ける側の分析の観点 OJT を行う側の分析の観点 ○ OJT の目標の設定レベルは、自分にとって適切だったか ○ OJT を自分に必要な課題として取り組めたか ○ OJT の方法は自分にとって適切だったか □ OJT の目標と方法は、OJT を行う側と受ける側で共通理 解がなされていたか □ 指導や助言は適切なタイミングで行えたか □ OJT の実施状況について十分に把握し、必要な評価・改 善に努めていたか

参照

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