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DSpace at My University: 英語教育リレー随想 79号(2016.8) これからの時代に求められる即答力

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大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター http://www.wilmina.ac.jp/ojc/edu/ttc/ 〈英語教育リレー随想〉第 79 号 1

 

 

 

 

 

  グローバル時代にどのような力が必要かと問われれば、「即答する力」をまず挙げた い。即答とは、「質問されて、その場ですぐ答えること」である。英語で言えば、 answer promptly、give an answer immediately、give a quick response to などと訳されよ う。なぜ即答する力が必要となるのか。それは、激しく変化する社会においては、優柔 不断な判断は手遅れにつながるからである。一定のスピードが求められる今の時代、社 会の変化や需要に対して自分はどう応えていくか、また応えていけるのかを常に考えて おく必要に迫られている。社会は、ポリバレント(polyvalent)な人材を求めている。 それは複数の役割(ポジション)をこなせる能力を持った人のことである。ポリバレント とは、化学において「多価」を意味する語である。2006 年から 2007 年にかけてサッ カー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシムが、「複数のポジションをこなすことの できる選手」という意味でポリバレントの語を用いた。その意味では、「ユーティリテ ィー・プレイヤー」の語とほぼ同義である。ユーティリティー・プレイヤー(Utility Player) とは、スポーツ、特に球技において、1 人でいくつものポジションをこなす選手を指す 言葉である。デフェンスやフォワードだけといったスペシャリストではないマルチ・プ レイヤーである。つまり、あらゆる状況に対応できる資質能力という即答力がこれから の時代に求められるのではと私は考える。 即答力が求められる理由はそのことだけに留まらないであろう。経験があると思わ れるが、即答は人に喜ばれることでもある。たとえば、道に迷っているとき明快にさっ と道順を教えてくれる人、就活で悩んでいるときにこういう道もあるよと言ってくれる 友人、わからないことをさっと簡単にわかりやすく教えてくれる先生、時間のかかりそ うな仕事をさっと片付けてしまう人、そういう人は即答・即応することで周りの人を喜 ばせる力を持っている。こうした即答力は相手の信頼と感謝を導き出す。さらに、信頼 を勝ち取るだけでなく、即答によってその人は常に自分のアイデアの可能性も拡げてい る。つまり、即答することで、自分の考えに敏捷性を持たせるだけでなく、相手の反応 引き出す言葉のキャッチボールを速やかに行おうとしている。人の考えは言葉にされて 相手に伝わる。要するにそれによって、相手や周りの人から多様な考えを引き出すこと になり、その多様な考えをもとにより深く考えることができるのである。 もちろん、闇雲な即断即答は望むべきものではない。十分な根拠がない判断は好まし 大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター

〈英語教育リレー随想〉  

2016 年 8 月  

これからの時代に求められる即答力  

中井  弘一  

第 79 号  

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大阪女学院大学・大阪女学院短期大学 教員養成センター http://www.wilmina.ac.jp/ojc/edu/ttc/ 〈英語教育リレー随想〉第 79 号 2 い結果を生み出すとは思えない。したがって、即考すること、反射的なリズム感、瞬発 力を磨くには、常に状況を判断しあらゆる仮説を立てておくことが必要となる。それに は深い思索や経験という入念な準備がなくてはならない。即答できるだけの教養が要り、 そして、その教養を基にした思考力が不可欠である。 先日の「英語の教え方教室」で単語プリントや予習プリントなどプリント学習のこと が話題に上った。文科省が設定する英語力の目標の高度化やテンポある授業のスピード 化に対応するため、つまりある種の即答・即応力を求めて予習プリントやワークシート を配付し、結果的には学びの展開をなぞらせるだけの学習になっているのではないかと 話し合った。そうした学習では、教員がプロセス(筋書き)をまとめたプリント課題・ 問題に対して求められる答えを埋め込むことが優先される。プリント教材を通して、考 える筋道を順に教え込む方が効果的な学びにつながるのかもしれない。しかし、そこに ジレンマがある。教員が寸暇を惜しんで補助プリントを作成しても、結果的には生徒自 らが自主的・主体的に考えたプロセスではないので、作業をこなすことに終始している だけで、生徒自身が考える力を身に付けることにつながらないことが多い。 グローバル社会をもたらした IT 機器は、便利であると同時に、瞬時に情報を与えた り、回答を要求したりする。現代の若者はそういう時代に生きている。ただ、機器の機 能がやたらと増えすぎて、人間が振り回されていることはないだろうか。機器の進歩、 技術の進歩は人間の生活を豊かにすると思い込んでいるだけで、本当にそうなのかと問 い直すことを忘れてしまっているのではないだろうか。即答することは必要であるが、 思考のプロセスをカットした即答は避けなければならない。 Easy come, easy go. である。即答力を身に付けるためには、ものごとに気づくこと、知ること、そして考え ることにゆっくりとしっかりと取り組ませることが本当は早道であることを、教育は忘 れてはいけないと思う。 ■参考書籍 松浦弥太郎(2016).『即答力』朝日新聞出版 (なかい・ひろかず 教授/教員養成センター長)

参照

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