獣鳥肉類の鮮度に関する考察 : グリコーゲンの含有量と水和度との比較

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全文

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昭 和38年8月(1963) 一 一1一

研 究 報 文

獣 鳥 肉 類 の 鮮 度 に 関 す る 考 察

グ リコ ー ゲ ン の 含 有 量 と水 和 度 との比 較0

〔1〕 緒 言 従来 一般に 肉の保水性 が 肉の結 着性や 食 味に影響を 与 えてい ることが知 られ てい る。 また筋 肉中 の グ リコ C1) CZ) 一 ゲ ン 含 有 量 は,獣 鳥 肉類 の 種 類 や 部 位 等 に よ っ て 異 (3) な り,ま た 屠 殺 前 後 の種 々 の 条件 等 に よ って 変 動 す る と云 わ れ て い る。 馬 肉 は 他 の 肉 に 比 して 比 較 的 多 量 に グ リ コ ・一ゲ ンを 含 有 し,「 馬 肉 の 鑑 定 法 」 に 利 用 され て 来 た こ とは 周 知 の こと で あ る。 熟 成 中 に 肉中 の グ リ コ ー ゲ ンは 分 解 して 乳酸 を 生 成 し,肉 のpHは 低 下 す る。pHの 低 下 は 肉 の 品 質 及 び 貯 蔵 性 に 良 好 な 影 響 を C4) (5-11) 与 え る と云 わ れ て い る 。著 者 等 は 前 報 で 食 品 の鮮 度 検 定 法 に つ い て の 種 々 の考 察 を 行 ない,検 定 法 と して の 可 能 性 を 論 じ て来 た 。 本 報 で は 馬 肉 ・牛 肉 ・豚 肉 ・鶏 肉 を 試 料 と して,各 々肉 の グ リコ ー ゲ ン含 有 量 を 測 定 し,次 に 肉を 死 後OQCに 貯 蔵 して,肉 の 熟 成 中 に 起 こ る グ リ コー ゲ ン量 の 変化 及 び 水和 度 の 変 化 を 測 定 し, 両 者 を 比 較 検 討 す る こ とに よ って 自 己 消 化 率 の 高 い 時 期 の判 定,死 後 経 過 時 間 の 推 定,食 用 に 最 適 な 時期 の 判 定 等 を 行 な った 。 また 肉 の熟 成 中 の グ リコ ー ゲ ンの 量 的 変 化 を 測 定す る こと に よ って,肉 の 鮮 度 判 定 が 可 能 で あ る か 否 か を 研 究 す る 為,鮮 度 鑑 定 法 と して 一 般 に 行 なわ れ て い る 水 素 イ オ ン濃 度,ア ミノ態 窒 素,ア ンモ ニ ア態 窒 素 を 同 時 に 測 定 し比 較 検 討 した 。 〔皿 〕 実 験 の 部 (1)実 験 試 料 馬 肉 ・牛 肉 ・豚 肉(い つ れ も赤 肉,脂 肪 除 去)及 び (註) 鶏 肉(さ さ 身,脂 肪 除 去)の 新 鮮 物 を 使 用 し,2回 挽 肉 器(孔 の 口径5mm)を 通 して 供 試 料 と した 。 (2)実 験 方 法 (イ)水 和 度 の 測 定 (12) E.wierbicki等 の方 法 を 参 考 と した 。 即 わ ち試 料 109を 遠 沈 管 に と り,ゴ ム栓 を して 沸 騰 湯 浴 中 で30分 間 加 熱 後,水 で 冷 却 す る。 これ を 遠 心 分 離(400回 転/分)し た 後,加 熱 に よ る 熱 変 性 の為 遊 離 した 水 分 を 炉 別 し,こ の 液 を 重 量 既 知 の 受 器 に 集 め て 秤 量 し, そ の 量 をF%と す る 。 肉 の全 水 分 をW%(常 法 に よ り W-F ×100° oを 以 って 肉 の 水 和度 と 測 定す る)と し W した 。 (ロ)水 素 イ オ ン濃 度 の測 定} 試 料59を 遠 沈 管 に 取 り,蒸 留 水20ccを 加 え ガ ラス棒 で 撹 梓 後15分 間 静 置 し,遠 心 分 離(4000回 転/分)を 行 な い,そ の 上 澄 液 を ガ ラス 電 極 法 で 測 定 した 。 の ア ミノ態 窒 素 の 定 量 試 料5gを 乳 鉢 に 取 り, IOccの 蒸 留 水 を 加 え て15分 間 放 置 後,100ccの メ ス フ ラス コに 浸 出液 を 集 め て 炉 過 し,そ の20ccを ホ ル モル 法 に よ っ て 定 量 し た 。 Nmg°o=A×2.8×F×100を 以 って ア ミノ態 窒 素 の 量 と した 。 但 しA:滴 定 数cc, F:規 定 力 性 ソー ダ の 係 数 で あ る)。 (註) 鶏 肉 は 死 後 直 ち にOQCに 貯 蔵 し,馬 肉 ・牛 肉 ・豚 肉 は い つ れ も屠 殺 後 熟 成 中(死 後3∼4日 経 過) の もの を購 入 しOQCに 貯 蔵 し て,一 定 時 間 経 過 毎 に測 定 した 。 従 っ て第1回 の 測 定 は鶏 肉 は死 後1∼2時 間 後,牛 肉 ・豚 肉 ・馬 肉 は 死 後3∼4日 経 過 した時 行 な っ た もの で あ る 。

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2 一 ⇔ ア ン モ ニ ァ 態 窒 素 の 定 量 試 料5gを 乳 鉢 に 取 り10ccの 蒸 留 水 を 加 え て15分 間 後100ccの メ ス フ ラ ス コ 浸 出 液 を 集 め て 炉 過 し, こ の 液20ccを 蒸 留 法 に よ っ て 定 量 し,得 られ た ア ン モ ニ ア を 含 む 液 を 規 定 力 性 ソ ー ダ で 滴 定 し た 。xmg°o を 以 っ て ア ン モ ニ ア態 窒 素 量 と し た 。 xxng‐0.0014 x F(bd‐c)x100 x 1000 a:試 料 秤 取 量(9) b:硫 酸 量(cc) C:力 性 ソ ー ダ の 滴 定 数(CC) d:規 定 硫 酸1ccに 相 当 す る 規 定 力 性 ソ ー ダ(cc) F:規 定 力性 ソ ー ダ の 係 数 (註) ㈹ グ リコ ー ゲン の定 量 (13) 従 来 用 い られ て きた 滴 定 法 を 参 考 に し,常 法 に よっ て 測 定 した 。 試 料25gを500ccの ユ ル レ ン マ イヤ ー フ ラ ス コに取 り,40%KOH溶 液50ccを 加 え て 逆 流 冷 却 管 を つ け,振 と う しつ つ 沸 騰 湯 浴 中 で2時 間 加 熱 後,水 を 加 え て200ccと す る。 これ に95%ア ル コ ー ル を 等 量 加 えて 撹 伴 し,密 栓 して 放 置 しグ リ コ ー ゲ ン を 沈 澱 させ る。 次 に 之 を 遠 心 分 離(4000回 転/分)し て 上 澄 液 を 傾 斜 す る。 沈 澱 を66°oア ル コ ール で 洗 溝 し 再 び 水 を 加 え て 加 熱 溶 解 させ,更 に95°oア ル コ ー ル を 等 量 加 え て 再 び 沈 澱 させ,前 記 と 同様66,0ア ル コ ール で 洗 溝 す る 。 次 に グ リ コ ー ゲ ン の 沈 澱 を 温 水 に 溶 解 し 225ccと し,こ れ に(1:3)HC112.5ccを 加 え, 沸 騰 水浴 上 で3時 間 加 水 分 解 し,冷 却 後10°oHaOH で 中 和 し水 を 加 え て300cc定 容 とす る。 こ の 液 の 一 定 量 を と り還 元 塘 を 定 量 し,そ の 値 に0.9を 乗 じて グ リ コ ー ゲ ン量 と した 。 〔ID〕 実 験 結 果 及 び 考 察 馬 肉 ・牛 肉 ・豚 肉 ・鶏 肉 を 死 後OQCに 貯 蔵 し,肉 の 熟 成 中 の 水 和 度,グ リ コ ー ゲ ン量 の変 化 を 測 定 し た 。 同時 に鮮 度 判 定 法 と して 一 般 に 行 な わ れ て い る水 素 イ オ ン濃 度,ア ミノ 態 窒 素,ア ン モ ニ ア態 窒 素 の 測 定 を 行 な い,そ の 結 果 を 第1表 ∼ 第5表 に 示 した 。 第1表 水 和 度 の 変 化 肉の種類 熟 成 時 間(日) 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 馬 肉 (oa) 69.98 69.Q3 73.45 ?7.92 82.25 ・.. 75.73 76.28 78.64 83.58 豚 肉 C°o) :f :・ ・ 83.56 7?.59 $3.22 84.36 84.36 牛 肉 C°a> 79.22 ::11 85.99 83.71 85.32 82.97 85.39 鶏 肉 (00) 76.59 74.69 74.83 73.91 82.25 76.77 86.38 食物学 会誌 ・第14号 第2表 肉のPHの 変化 熟成 時 間(日)馬 肉 件 肉1豚 肉 嘩 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 5.4 5.0 5.2 4.9 ち.5 5.0 5.4 5.0 5.5 5.1 5.1 4.9 5.3 1 5.1 5.7 5.8 5.9 肉 4.9 5.4 5.2 5.3 5.05 5.4 5.05. 5.3 5.1 5.5 5.05 5.7 5.1 5.8 第3表 肉 の ア ミ ノ 態 窒 素rilg°o 熟 成 時 間(日)1馬 肉1牛 肉 豚 肉1.ニr,肉 0 1 2 3 4 5 6 ・'1 40.78 53.85 55.31 64.04 69.27 78.43 62.062」.2137.26 34.fi4 1 14.43 1 26.6a 53.40 1 47.91 ( 80.73 64 73:95224873:873993.49$2.94 40.776?.36 199.7852 .4678.631116,91 第4表 肉 の ア ン モ ニ ア態 窒 素mg% 熟 成 時 間(日) 0 1 2 3 4 5 6 馬 肉 牛 肉 隊 肉 騰 肉 1・9.・38.72.・4.55]25・79 123 .72..19.6427,26 23.65114.4321.09'41.26 24.01f19.1245.82,46,42 29.84・7.3326.i658.62 i 30.32 1 20.39 1 29.43 1 79.Sl l32・45116・653・ ・2・180.3・ 第5表 肉 の グ リ コ ー ゲ ン 量 の変 化mg%

塾麟 間(剛 馬 肉

Q 1 2 3 4 5 6 7 8 9 i2 ,20.4 5 2,195.6 1,639.1 1,542.Oi '1 ,456.11 1,323.4 876.2; 783.6 594.5; 506.3 ミ

,豚

674.5 432.0 488.5 378.9 430.9 ' 309.9 414.8 ' 248.9 406.1 163.5 380.5 123.1 262.7' 119.5, 鶏 肉 98.2 52.4 20.1 0 (註)東 大 農 化 編:実 験 農 芸 化 学,下 巻, 書 店) 624(朝 倉

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昭 和38年8月(1963) 3 ① 水 和 度 の変 化 肉 の熟 成 に 伴 な う水 和度 の 変化 を 第1図 に 示 した 。 肉 の 種 類 に よ っ て 水 和 度 及 び そ の変 化 速 度 が 異 な り, 豚 肉 ・牛 肉 は 熟 成0時 に 最 低 値 を,24時 間後 に 最 高 値 を 示 して い る 。 馬 肉は熟 成24時 間 に 最 低 値 を 示 し,以 後 増 加 して96時 間 で最 高 値 を 示 してい る。 鶏 肉 で は 熟 成0時 よ り漸 次 減 少 して72時 間に 最 低 値,96時 間 に 最 高 値 を 示 して い る。 一 般 に 肉 の最 大 硬 直 時 と 肉 の 酸 性 極 限 に達 す る 時 限 は ほ ぼ 一 致 す る と され て い る こ とか ら,pHが 最 低 値 を 示 した 時 と水 和 度 が 最 低 値 を 示 す 経 過 時 間,す な わ ち 牛 肉 ・豚 肉は 各 々熟 成0日,鶏 肉 は3日,馬 肉 は1日 が 肉 の 最 大 硬 直 時 と推 定 され る。 最 大 硬 直 後,肉 の 軟 化 と共 に 水 和 度 は 増 加 し,鶏 肉 ・ 豚 肉 ・牛 肉 で は 熟 成24時 間 後,馬 肉 は72時 間後 に 最 高 値 を 示 し,以 後 各 々一 時 減 少 す るが,時 数 経 過 と共 に 増 加 の傾 向 を 示 し てい る。 水 和度 の 変 化 は 第2表 に 示 す 結 果 よ り,pHと 関 係 が あ る もの と考 え られ,熟 成 (1a) の 変 化 に 影 響 され る ら しい と云 う藤 巻 等 の 研 究 と 一 致 して い る 。 次 に ア ミ ノ態 窒 素 の 変 化 は 第2図 に 示 す よ うに,四 種 の 肉 は い つ れ も熟 成0日 よ り24時 間後 の 第 1日 に 一 時減 少 し,以 後 時 数 経 過 と共 に 漸 次 増 加 の 傾 向 を 示 してい る 。 これ は グ リ コ ー ゲ ン 量 の 変 化,水 和 第2図 肉 の ア ミ ノ態 窒 素 の 変 化(0。C) 第1図 肉 の 水和 度 の変 化(OQC) 期 間 中 のpHが 酸 度 を 増 す 時 は 水 和度 が 低 く,pHが 中性 へ 変 化 す る時 は 水 和 度 も一般 に 高 い よ うで あ る。 しか し第2表 に 示 す 鶏 肉 の結 果に み られ る よ う に, pHが 酸 性 か ら中 性 に 向 って 変化 して も水 和 度 は 一 時 減 少 して い る こ と,及 び 牛 肉 のpHが 熟 成0日5.0∼ 1日4.9と な って い る に もか か わ らず 水 和 度 が 熟 成0 日 ∼1日 に か け て大 き く増 加 して い る こ と(牛 肉 の 場 合 は 第5表 よ り グ リ コ ー ゲ ン量 の急 激 な 減 少 に よ り pHが 酸 陸 に傾 い た の で あ り,同 時 に 硬 直 解 除 と共 に 水 和 度 が 増 加 した ので あ ろ うと考 え られ る 。)等 か ら 考 え て,必 ず し もpHの み の 影 響 に よ っ て 水和 度 が 変 化 して い な い と 思 わ れ る。 こ の こ とは 肉 の 熟 成 に よ る 水 和 度 の 変化 は,pHの 変 化 に影 響 され るがpHの 変 化 に よる だ け で な く,熟 成 中 に 生 ず る 肉 蛋 白 質 の反 応 度 の 変 化,pHの 変 化 等 よ り考 え て,肉 の 硬 直 時 に は ア ミノ態 窒 素 が 減 少 し,後,自 己 消化 が 進 行 す る と共 に ア ミノ態 窒 素 が 増 加 の 傾 向 を 示 す と 考 え られ る。 四 種 の 肉 の中 では 水 和 度,pHと 同様 に 鶏 肉 の ア ミ ノ態 窒 素 の 変 化 が 最 も著 し く,熟 成0日 ∼2日 及 び4 日以 後 の 変 化 が 大 で あ る。 水 和 度 が 肉 の 軟 化 と共 に 増 加 した 後 急激 に 減 少 す る時,pHが5.3∼5.5え と漸 次 中性 に 移 行 す る傾 向 を 示 しは じめ る時 は,い ずれ も熟 成4日 で あ り,ア ミノ態 窒 素 の変 化 傾 向 と も一 致 し, 熟 成5日 で ア ミノ態 窒 素が100mg%を こえ た こと 等 の 結 果 よ り考 え て,鶏 肉で は 熟 成4日 迄 に 自己 消化 を 完 了 し以 後 腐 敗 の 段 階 に入 った もの と考 え られ る 。 牛 肉 ・豚 肉 ・馬 肉 に つ い て はpH,ア ミノ態 窒 素 の 測 走 値 よ り考 え て熟 成6日 迄 は 腐 敗 して い な い も の と思 わ れ る 。 しか し肉 のpHが グ リコ ー ゲ ン の 分 解 や 緩 衝 作 用 等 に 影 響 され,必 ず しも鮮 度 と一 致 しな い 可 能性 の あ る こ と及 び ア ミノ態 窒 素 が 増 加 の 傾 向 を 示 してい る こ と,水 和 度 の変 化 傾 向 等 よ り 考 え て,豚 肉 ・牛 肉 は 00C保 存 に お い て熟 成6日 で,馬 肉 は8日 で 自己 消 化 期 間 が 殆 ん ど最 終 期 に 達 した もの と考 え る の が 妥 当 で あ ろ う。 尚 ア ン モ ニ ア態 窒 素 の測 定 を 行 な った が 第4 表 に 示 す よ うに 結 果 に考 察 上 困 難 な 点 が あ り鮮 度 判 定

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4 の 資料 と は な し得 なか った 。 ② グ リ コー ゲ ン量 の 変化 グ リ コ ー ゲ ン 量 の 変 化 は 第 3図 に 示 した 。 更 に 熟 成0日 を100と して グ リ コ ー ゲ ン減 少 の 割 合 を 図 示 す れ ば 第4図 の よ うに な る 。 第3図 肉 の グ リコ ー ゲ ン量 の 変 化(0。C) 第4図 肉 の グ リコ ー ゲ ン減 少 率 グ リ コ ー ゲ ン 加 水 分 解 液 調 製 の 際,蛋 白 質 の 反 応 を 呈 した の で 中性 酢 酸 鉛 飽 和 溶 液 で 除 蛋 白後 滴 定 した 結 果,第5表 に 示 す よ うに,馬 肉 は 四 種 の 肉 の 中 で 最 も多 量 の2290.4mg°o含 有 し,各 々馬 肉に 比 して そ の 含 有 量 は 牛 肉 で 約1・ 豚 肉 は1・ 鶏 肉 は124で あ り・ い つ れ も グ リ コ ー ゲ ン を 含 有 す るが そ の 量 及 び 減 少 速 度 に は 大 差 が み られ る。 これ は 肉 の 種 的 特 異 性 に よ る も の で あ ろ うと 考 え られ る 。 グ リ コ ー ゲン 減 少 速 度 は 馬 肉 が 最 も緩 慢 で 熟 成1日 で95.87°o残 存 し,2日 に は 71.56°oと 急 減 し以 後7日38.26%と 漸 次減 少 の 傾 向 を 示 す が,熟 成9日 に於 て も22.15%残 存 して い る 。 こ れ に 比 して 牛 肉 は 熟 成1日 で72.5%に 急 減 し,1∼5 日は 比 較 的 緩 慢で6日 に は38.95°oに 減 少 して い る 。 豚 肉 は熟 成1日 が87.71%で 以 後4日 まで ほ ぽ 同程 度 食 物 学 会 誌 ・第14号 の速 度 で減 少 し6日 は27.66°oと 減 少 し,牛 肉 よ り減 少 速 度 は 速 い 。 次 に 鶏 肉 は 四 者 中 で 最 も減 少 速 度 が 速 く,熟 成24時 間 で55.82°oと 半 減 し,死 後3日 で す で に 分 解 消 失 して い る こと を 示 し て い る 。 尚 豚 肉 ・牛 肉 ・馬 肉は 熟 成 第1回 の 測 定 迄 に す で に72∼96時 間 経 過 して い るか ら,こ れ を 加 え る と鶏 肉 の グ リコ ー ゲ ン減 少 速 度 は 他 の 肉 の 少 な く と も2∼3倍 以 上 速 い と考 え られ る。 ま た 牛 肉 ・豚 肉 の 場 合,死 後 初 期 の グ リ コ ー (1) ゲ ン量 の 減 少 が 著 しい と報 告 され て い る こ とか ら本 実 験 の 第1回 の 測 定値 よ り も,屠 殺 直 後 の 測 定 値 は 大 で あ る と推 定 され る。 グ リ コ ー ゲ ン の解 糖 に 伴 な う乳 酸 の 生 成 に よ っ て,肉 のpHが 影 響 され る こ とは 四 種 の 肉 に 於 て,い つ れ も グ リコ ー ゲ ン減 少 率 の 大 で あ っ た 熟 成0日 ∼1日 にpHも5.4∼5.2,5.0∼4.9,5.4∼ 5.3と 低 下 して い る こ とか ら 明 らか で あ る。 鶏 肉 の 場 合 は グ リコ ー ゲン が 完 全 に 消 失 し て し ま う熟 成3日 以 後,急 速 に ア ミノ態 窒 素 の測 定 値 が 増 加 し た こ と, pHが5.3∼5.8え 変化 した こ と,水 和 度 が 著 し く増 加 した こ と等 よ り,自 己 消 化 期 間 を 完 了 し腐 敗 傾 向 を 示 して い る もの と考 え られ る。 これ に 比 して 牛 肉 ・豚 肉 ・馬 肉 は 熟 成6日 迄 は グ リ コ ー ゲ ンが 残 存 し,pH値, ア ミノ態 窒 素 量 等 よ り考 え て腐 敗 に 達 して い ない も の と思 わ れ る 。 以 上 の 結 果 よ り,グ リコ ー ゲ ンが 筋 肉 中 に 残 存 して い る期 間 は 自己 消 化 が 進 行 中 で あ るが,グ リ コ ー ゲ ン の殆 ん ど消 失 と 同時 に 腐 敗 に 移 行 す る と考 え られ る。 (3)水 和 度 と グ リコ ー ゲ ン量 減 少 率 の 比 較 第5図 に 示 す よ うに,馬 肉 で は グ リ コ ー ゲ ン含量 の 最 も 多 い熟 成0日 ∼1日 に 水 和 度 は 最 低 を 示 し て い る。 これ は 最 大 硬 直 時 と考 え られ,そ の後 グ リ コ ー ゲ ン量 の 著 し く減 少す る熟 成1日 ∼5日 に 水 和 度 は 増 加 し てい る 。 即 わ ち グ リ コ ー ゲ ン含 量 の 多 い 時 に 水 和 度 は 最 低 値 を 示 す が,グ リコ ー ゲ ンの減 少 に 伴 な っ て 水 和 度 は,反 対 に 増 加 して い る 。 こ の こ とは グ リ コ ー ゲ ン の 分 解 に よ って 自 己 消 化 作 用 が 急 速 に 行 なわ れ,従 っ て硬 直 肉 は 軟 化 し,肉 蛋 白 質 の 保 水性 が 増 加 す る の で あ ろ うと考 え られ る 。 熟 成5日 以後,グ リ コ ー ゲ ン は 時 数 経 過 と共 に 漸 次減 少 す る。 これ に 対 して 水 和 度 は グ リコ ー ゲ ンが 減 少 して も一 定 以 上 に は 増 加せ ず 一 時 減 少 し,第2,3表 に 示 すpH値,ア ミノ態 窒 素 量 等 か ら考 え て 自己 消 化 が 終 期 に 達 した と判 定 され る熟 成8日 よ り再 び 増 加 の傾 向 を 示 して い る。 この 様 な 水 和 度 と グ リコ ー ゲ ン量 の 変 化 の 関 係 は 各 々 肉 の 種 類 に よ っ て変 化 速 度 に差 異 は あ るが,い つ れ も 同様 の 変 化 傾 向 を 示 して い る。

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昭 和38年8月(1963) 第5図 馬 肉 の 水 和 度 と グ リコ ー ゲ ン量 の 比 較 一5一 第7図 豚 肉 の 水 和 度 と グ リコ ー ゲ ン量 の 比 較 第6図 牛 肉 の 水 和 度 と グ リコ ー ゲ ン量 の 比 較 第8図 鶏 肉 の水 和 度 と グ リコ^yン 量 の比 較 従 っ て第5図 ∼8図 に 示 す 結 果 か ら考 え て,食 用 に 最 適 の期 間 は,グ リコ ー ゲ ンの急 減 後 に,水 和 度 が 最 高 値 を 示 す 時 限 と考 え られ,馬 肉 は 熟 成4日,豚 肉㌔ 牛 肉は 熟 成1日,鶏 肉 は 熟 成3∼4日 とな る 。 但 し豚 肉 ・牛 肉 ・馬 肉 は 通 算 す れ ば 屠 殺 後 熟 成4∼7日 とな る 。 グ リコ ー ゲ ン含 有 量 が 多 くまた 残 存 率 の 多 い 肉 ほ ど,自 己 消化 期 間 が 長 く,水 和 度 の比 較 的 高 い 期 間 も 長 く,従 っ て 食 用 に 好 適 な期 間 が 比 較 的 長 時 間 に わ た る と考 え られ る。 これ に 対 して グ リコ ー ゲ ン含 有 量 が 少 く,減 少速 度 の 速 い 肉 ほ ど自己 消 化 期 間 が 短 く,水 和 度 の高 い 期 間 も短 時 間 で あ る と云 う傾 向 を 示 してい る。 即 わ ち 鶏 肉 の 場 合 は 後 者 に相 当 し グ リコ ー ゲ ン の 存 在 してい る熟 成0∼3日 は 水和 度 が ほ ぼ最 低値 に あ り,グ リコ ー ゲ ン の消 失 して しま っ た 熟 成3日 ∼4日 に 著 し く水 和 度 が 増 加 して い る。 しか し水 和 度 の高 い の は熟 成4日 の 一 日で 以 後 第2,3表 に 示 すpH値 の 変 化,ア ミノ態 窒 素 量 の 著 しい増 加 等 よ り考 え て,直 ち に 腐 敗 へ 移 行 して 行 く傾 向 を 示 して い る と 思 わ れ る 。従 っ て鶏 肉 の様 に グ リ コ ー ゲ ンが 急 速 に減 少 す る 肉は 死 後 の熟 成 期 間 が 比 較 的 短 時 間 で あ る か ら,死 後 直 ち に 食 用 に 供 す る のが 美 味 で あ り妥 当 で あ る と考 え られ る。 筋 肉 中 に グ リコ ー ゲ ンを 多 量 に 含 有す る 程 熟 成 期 間 は 長 く馬 肉 ・牛 肉 で は 死 後 グ リコ ー ゲ ン残 存 率 が70∼50°oに 減 少 した 時,水 和 度 も増 加 し,食 用 に 最 適 の 時 期 で あ ろ う と思 わ れ る 。 肉 の グ リ コ ー ゲ ンが 乳 酸 え 変 化 す る こ とに よ りpHが 酸 性 を増 加 し,そ の こ とが 肉 の熟 成 に 好 条 件 とな る こ とか ら,食 味 に グ リ コ ー ゲ ン の 存 在 が 間 接 的 に 影 響 を 与 え る こ とは 考 え られ るが,し か し鶏 肉 の場 合,食 用 時 に は,す で に グ リ コ ー ゲ ンが 完 全 に 消失 し てい る こ とか ら グ リコ ー ゲ ンが 肉 の 食 味 に 直接 関 係 して い る とは 考 え られ な い 。

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一6 〔N〕 要

牛 肉 ・馬 肉 ・豚 肉 ・鶏 肉 の グ リ コ ー ゲ ン含 有 量 を 測 定 し,こ れ らの 肉 を死 後0。Cに 貯 蔵 して熟 成 中 の グ リ コ ー ゲ ン量 の 変 化,水 和 度 の変 化 を 測 定 し,両 者 を比 較 検 討 す る こ とに よ って 自 己 消 化 率 の最 大 時 期 の 判 定,死 後 経 過 時 間 の推 定,食 用 に 最 適 な 時 間 の判 定 等 を 行 な った 。 ま た,グ リ コ ー ゲ ン量 の変 化 を 測 定 す る こ とに よ って 肉 の 鮮 度 判 定 が 可 能 で あ るか 否 か を 研 究 す る為,水 素 イ オ ン濃 度,ア ミノ態 窒 素 を 同 時 に測 度 し,結 果 を 比 較 検 討 した 。 (1)肉 の 熟 成 期 間 中 の 水 和 度 の 変 化 に 於 て,熟 成 初 期 に 水 和度 は 最 低 値 を 示 した 。 これ は グ リ コ ー ゲ ン残 存 率 の 最 高 時,pH値 が 最 低 の時 と一 致 し,最 大 硬 直 時 と考 え られ る 。 ② 熟成 中 の 肉 の 水 和度 は,一 定 時 間 の グ リコ ー ゲ ン 減 少率 が 最 大 の 時 に最 高 値 を 示 した 。 これ は グ リ コー ゲ ンの分 解 に よ っ て 自己 消 化 が 著 し く進 行 し,肉 の 軟 化 に伴 な って 肉 の 蛋 白 質 の 保 水性 が 増 加 した 為 で あ ろ うと考 え られ る。 (3)肉 の グ リ コ ー ゲ ンを 定 量 した 結 果 馬 肉 は 四 種 の 肉 の 中 で最 も多 く2.290mg%,牛 肉674mg°o,豚 肉 432mg%,鶏 肉 は 最 も少 くgsmg ,%で あ った 。 (4)熟 成 期 間 中 の グ リコ ー ゲ ン減 少 速 度 は 鶏 肉 〉 豚 肉 〉 牛 肉〉 馬 肉 の順 に 速 く鶏 肉 は 熟 成3日 で グ リ コ ー ゲ ン残 存 率 が0%で あ り,こ れ に 比 して 熟 成6日 に於 て も馬 肉は40%,牛 肉 は38°o,豚 肉 は27°o残 存 して い た 。 (5>グ リ コ ー ゲ ン 含 有 量 が 多 く また熟 成 期 間 中 の残 存 率 の 高 い 肉 ほ ど 自 己 消 化 期 間,水 和 度 の比 較 的 高 い 期 間 が 長 く,従 っ て 食 用 に適 す る期 間 も グ リコ ー ゲ ン含 有 量 の 少 な い 肉 よ り比 較 的 長 時 間 で あ る と 考 え ら れ る 。 (6)死 後0。Cに 貯 蔵 した 場 合,食 用 に 最 適 の 時 期 は 水 和 度 が 最 高 値 を 示 す 時,又 グ リ コー ゲ ン残 存 率70∼50 %の 時 即 わ ち鶏 肉 は 熟 成3∼4日,牛 肉 ・豚 肉 ・馬 肉 は 熟 成4∼7日 頃 と推 定 され る。 (7) グ リ コ ー ゲ ンは 死 後 時 間 の 経 過 と共 に 漸 次 或 は 急 速 に減 少 し最 後 に は 消 失 す る もの と考 え られ る。 これ に 対 して 水 和 度 は,熟 成 初 期 に 最 低 値 を 示 し,後 グ リ コ ー ゲ ンの 分 解 に 伴 な っ で 一時 増 加 す るが ,自 己 消 化 期 間 が 完 了 す る と考 え られ る時 再 び 一 時 減 少 し以 後 増 加 の傾 向 を 示 す 。 (8)グ リ コー ゲ ン減 少 のi著しい 時,pH 5.0∼5.4の 寺 食 物 学 会誌 ・第14号 期 に 自己 消 化 は 最 も進 行 して い る もの と考 え られ る。 (9)肉 を0。Cで 熟 成 した 場 合 に,肉 のPH値,ア ミ ノ 態 窒 素 量,水 和 度 の 変 化 等 よ り考 え て,肉 中 の グ リ コ ー ゲ ンの 残 存 率 が25%以 上 の期 間 は 自己 消 化 が 進 行 中 で あ り,腐 敗 して い な い もの と推 定 され る 。 ⑩ 以 上 の 結 果 よ り肉 の グ リ コ ー ゲ ンの 変 化 を 測 定 す る こ とに よ って,肉 の鮮 度 を 判 定 す る こ とが あ る程 度 可 能 で あ る と考 え られ る。 しか し肉 の 種 類 に よっ て 特 異 性 個 体 差,の あ る こ とを 充 分 考 慮 に 入 れ る必 要 が あ る と思 わ れ る。

参 考 文 献

(1)佐 々 木,藤i巻:日 農 化,32,628(1958)。

(2) R,A. Lawrie:Biochem, Biopheys, Acta, 17, 282 (1955) .

(3)佐 々 木,藤 巻,古 城,田 中:日 農 化,2?,725 (1953).

(4)E.C. Bate-Smith:Adv, in Food Res,1, 1 (1948) . (5)足 立,田 中:京 都 女 大 食 物 誌,5,38(1958) (6)足 立,河 村:京 都 女 大 食 物 誌,6,24(1959) (7)足 立,下 村,亀 井:京 都 女 大 食 物 誌,7,43 {1959). (8)足 立,下 村,亀 井:京 都 女 大 食 物 誌,8,35 (1960). (9)足 立,下 村,小 田:京 都 女 大 食 物 誌,8,38 (1960). ⑩ 足 立,下 村,亀 井,霊 山:京 都 女 大 食 物 誌,11, 1 (1961) . ⑪ 足 立,北 村:京 都 女 大 食 物 誌,ix,23(1961) ⑫ E.Wierbicki et a1:Food Technol。,10,80 (1956).

⑬ C.S. Hanes :ibid.,23,99(1929). ⑭ 藤 巻,倉 林:日 農 化,32,775(1958).

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