人文社会総論
ことばの科学
-日本語・フランス語・英語-(2012/05/16)阿部宏
(フランス文学専修)
文学部フランス文学専修
フランス語,フランス文化,フランス語圏,日仏交流 *フランス文化(文学,歴史,映画,音楽,メディア)* 原典を読み解きながら,考えていきます *フランス語(言語学,教授法)* フランス語の文法や会話を分析し,日本語や英語と比較します *フランス思想(歴史,社会,哲学,政治,経済)* フランス的考え方を学びます *留学(フランス,スイス,ベルギー,カナダ)* 単位互換が可能で,奨学金制度があります *大学院への進学* 研究を深めて,論文を書いたり学会発表を行います
フランス語圏
francophonie
ことばの科学
*イヌ[INU]と dog? *フランス語などの男性名詞と女性名詞 *60点 → 85点 = 「成績が上がった」? *「海は最高」?ことばの科学
*文法の学習ではなく,その背後にある仕組 みを発見する *日本語,英語,フランス語などを比較して, ことばの普遍的要素を抽出する *「ことば」と「こころ」との関係を探る発音の違い
犬(INU) dog chien 父(TITI) father père 水(MIZU) water eau 本(HON) book livre
家(IE) house maison
概念の共通性
• 物価が上がった.(日本語) • Prices rose.(英語)
• Les prix ont monte.(フランス語)
フランス語の名詞の性
すべての名詞には文法上の性があり,男性と女性に分けられる. 男性 女性 frère soeur hôtel église Japon France amour éléganceヨーロッパ語における性
英語 → なし フランス語 → 男性 女性 イタリア語 → 男性 女性 ドイツ語 → 男性 女性 中性 スペイン語 男性 女性 →ラテン語
フランス語 スペイン語 イタリア語 ルーマニア語MARE
mar
mer
mare
mare
サンスクリット語の発見
ウイリアム・ジョーンズ
(1786)
ギリシャ語,ラテン語,サンス クリット語は,非常によく似てい て,共通の源から発したものとし か考えられない.デーバナーガリ文字
(サンスクリット語)
比較文法
• インド=ヨーロッパ語の探求 • 音韻対応
• 青年文法学派(19世紀末,ライプチヒ大学) • ソシュール
インド=ヨーロッパ語
ラテン語 ギリシャ語 ゲルマン語 スラブ語 ヒッタイト語 サンスクリット語 現代ギリシャ語 → → 英語 ドイツ語 → ロシア語 ポーランド語 → 死滅 → ヒンディー語インド=ヨーロッパ語
有生 無生
ラテン語 男性 女性 中性
カテゴリー化
(動詞1)
think imagine consider believe 思う 英語 日本語カテゴリー化(動詞2)
英語 日本語 break こわす くずす わる くだく おるカテゴリー化(名詞)
仏語 日本語
カテゴリー化(前置詞)
a b c d e f g 英語 オランダ語 フィンランド語 ドイツ語 フランス語 in on in ann op om op aan op -ssa -lla in an auf日本語の助数詞
英語:He has three cars. 仏語:Il a trois voitures. 日本語:彼は車を3台もっている. 本 紐3本 木が3本 毛が3本 枚 紙3枚 海苔3枚 ?カレー1枚 匹 ネズミが3匹 ゴキブリが3匹 cf. ウサギ3羽 個 ケーキ3個 消しゴム3個 *針3個
Rivarol, Antoine (1753-1801)
Ce qui n’est pas clair, n’est pas français.
明晰でないものは,フランス語的ではない.
Discours sur l’universalite de la langue française (1784)
フランス語の数詞
1 un, une 11 onze 20 vingt
2 deux 12 douze 21 vingt et un(e)
3 trois 13 treize 22 vingt-deux 4 quatre 14 quatorze 23 vingt-trois 5 cinq 15 quinze …
6 six 16 seize …
7 sept 17 dix-sept 80 quatre-vingts
8 huit 18 dix-huit … 9 neuf 19 dix-neuf …
ソシュール
(
1857-1913)
Ferdinand de SAUSSURE Cours de linguistique générale
• Le signe linguistique est
arbitraire.
• 音と意味の関係は恣意的である. • 概念の体系も恣意的である.
恣意性
シニフィエ(意味「犬」) シニフィアン(音「INU」)
プラトン(前
427-前348)
• 『クラチュロス』 r = 「動き」 d, t = 「束縛」 g = 「粘っこさ」 n = 「内部性」 l = 「なめらかさ」 a = 「大きなもの」概念は恣意的ではない
Il est vrai que c’est une chose purement arbitraire, que de joindre une telle idee a un tel son plutot qu’a un autre; mais
les idees ne sont point des choses arbitraires.
Arnauld, A. et Pierre Nicole (1662) : La
メタファー(1)
• 夜中の風の吹いている構内を抜けて,外に出たとこ ろが,星のまばらな夜空が黒々と一ぱいに広がって, 変なところに半弦の月が浮いているので,不思議な 気持ちがした.(内田百閒『東京日記』) • 律子の言葉に頷き,長い髪をゆらしてお礼を言いな がら,結子は自分のなかに浮かんだ言葉をもう一度 反芻し,そして肯定した」(玄侑宗久,『朝顔の音』, 文春文庫,p. 131)死んだメタファーと生きたメタ
ファー
死んだメタファー 朝から何も食べていないので,電池が切れてし まった. 生きたメタファー 猫背 テーブルの脚「類似」は「近い」
日:「これら二つの色は
近い
」
英:
These colors are
close
.
仏:
Deux couleurs sont
voisines
.
「増加」は「上昇」
日:成績が
上がった
.
英:
Prices are
high
.
仏:
Les prix
grimpent
.
MORE is UP
MORE is UP.
具体 → 抽象
物価が上がった. 成績が上がった.
「愛情」は「暖かさ」
日:
温かく
迎える.
英:
They greeted me
warmly
.
仏:
Ils m’ont accueilli chaleureusement.「時間」は「空間」
・棒のさき さき(未来)のことを思う煩う さき(過去)の世界 大戦 ・車のあとをバイクが走っている あと(未来)は任せた あと(過去)を振り返らずに 未来のことを考えよう ・まえに大木がある まえ(未来)向きに生きる まえ(過去)にもお伝え しました意味変化の方向性
OBJECT SPACE TIME
あと(足跡) あと(後方) あと(足跡) あと(足跡) あと(今後) あと(後方) 例 : 「あと」の多義化プロセス
さきの世
• (宇津保・俊蔭)さきのよの罪おもひやられ 侍れば,天地のゆるされなき身に侍るめり」 • (読本・春雨物語)さきの世のいかなる所に か生まれて,荷かつぎ,夜は縄なひて,猶く るしき瀬にかかりたらん対照研究
日本語
英語
フランス語
イタリア語
ラテン語
ヒトからモノへ
• Ce telephone est mort.
• この電話は死んでいる.(故障している)
• arbre mort
• 死んだ木(枯れ木) • feuilles mortes • 死んだ葉(枯葉)
意味変化の方向性
◇ 具体 → 抽象 ◇ 物理 → 心理 ◇ 空間 → 時間 ◇ ヒト → モノ