「精密高分子技術」
事後評価報告書
平成20年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
平成20年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 村田 成二 殿
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会 委員長 西村 吉雄
NEDO技術委員・技術委員会等規程第32条の規定に基づき、別添のとおり
評価結果について報告します。
目 次
はじめに
1
分科会委員名簿
2
審議経過
3
評価概要
4
研究評価委員会におけるコメント
7
研究評価委員会委員名簿
8
第1章 評 価
1.プロジェクト全体に関する評価結果
1-1
1.1 総論
1.2 各論
2.個別テーマに関する評価結果
2.1 高分子材料の共通基盤技術開発
2.2 高機能高分子材料の実用化技術開発
(1) 九州大集中研
(1a) 接着性制御技術の開発
(1b) 超撥水・超撥油性材料の開発
(2) 山形大集中研
(2a) 自動車用構造材の開発
(2b) 可とう性電線被覆材の開発
(2c) 高性能ダイボンドの開発
(2d) 絶縁フィルムの開発
(3) 東工大集中研1
(3a) 水性塗料材料の開発
(3b) 低誘電損失材料の開発
(3c) 高耐熱光学材料の開発
(3d) ホログラム記録材料の開発
(3e) 反射防止膜材料の開発
(4) 東工大集中研2
高強度繊維の開発
(5) ポリマテック(株)
高磁場における高性能材料の開発
3.評点結果
第2章 評価対象プロジェクト
1.事業原簿
2-1
2.分科会における説明資料
2-2
参考資料1 評価の実施方法
参考資料
1-1
参考資料2 評価に係る被評価者意見
参考資料
2-1
1
はじめに
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構においては、被評価プロジェクト
毎に当該技術の外部の専門家、有識者等によって構成される研究評価分科会を研究評価
委員会によって設置し、同分科会にて被評価対象プロジェクトの研究評価を行い、評価
報告書案を策定の上、研究評価委員会において確定している。
本書は、「精密高分子技術」の事後評価報告書であり、第16回研究評価委員会にお
いて設置された「精密高分子技術」(事後評価)研究評価分科会において評価報告書案
を策定し、第18回研究評価委員会(平成20年9月24日)に諮り、確定されたもの
である。
平成20年9月
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究評価委員会
2
「精密高分子技術」
事後評価分科会委員名簿
(平成20年5月現在)
氏名
所属、肩書き
分科
会長
甲本
こうもと忠史
た だ し群馬大学 大学院工学研究科 生産システム工学専攻
専攻長
分科会長
代理
田代
た し ろ孝二
こ う じ豊田工業大学 大学院工学研究科 極限材料専攻
教授
新井
あ ら い保
たもつ(株)工業調査会 「プラスチックス」編集部 編集長
臼杵
う す き有光
ありみつ(株)豊田中央研究所 環境材料研究部 部長
木村
き む ら邦生
く に お岡山大学 大学院環境学研究科 資源循環学専攻
教授
反田
そ り た哲史
て つ じ三菱電機
(株) 先端技術総合研究所
マテリアル技術部 部長
委員
横澤
よこざわ勉
つとむ神奈川大学 工学部 物質生命化学科 教授
敬称略、五十音順
3
審議経過
z 第1回 分科会(平成20年5月15日)
公開セッション
1.開会、分科会の設置、資料の確認
2.分科会の公開について
3.評価の実施方法について
4.評価報告書の構成について
5.プロジェクトの概要説明
非公開セッション
6.プロジェクトの詳細説明
公開セッション
7.纏め、講評
8.今後の予定、その他、閉会
z 第18回 研究評価委員会(平成20年9月24日)
4
評価概要
1.総 論
1)総合評価
本プロジェクトは、世界的に高いレベルの高分子科学に基づいて実施され、数多くの
成果が得られている。その成果は、実用品あるいは実用化技術、そして基礎科学のため
の新しい概念として歩み始めることが期待される。また、中間評価に基づいた思い切っ
た開発テーマの取捨選択がなされ、継続テーマは概ね目標を達成しており、プロジェク
ト全体として大いに評価できる。さらに、基礎科学を訴求している大学・研究機関の精
密高分子技術を産業界でどのような方面にどのように実用化するかを明確にできたこ
とも
NEDO の事業として評価できる。
しかし、上記の取捨選択に併せて集中研への体制変更が行われたものの、すべての集
中研が互いに不可欠な関係であったとは言い難く、これほどまでに大きなプロジェクト
が必要であったか更に検討すべきであった。また、基礎科学のテーマは別として、材料
開発や技術開発に関するテーマの幾つかは、開発期間が長すぎ、市場との距離が不明確
である。
中間評価以降、各開発テーマの加速、推進あるいは中止がステージゲート方式によっ
て決定されたが、インパクトのある研究に対しての取り組みを忘れないように心掛ける
ことも重要である。また、中間評価にて中止したテーマについても成果が期待できるも
のについてはフォローすることが望まれる。
2)今後に対する提言
本プロジェクトにおいては、分子原子レベルのアプローチから始めるべき開発テーマ
も多く、今後もこのようなプロジェクトによりわが国の材料科学・ものづくりの基盤技
術を強化して欲しい。基盤技術を訴求している大学・研究機関からより多くの参画を意
識的に図ると、さらに高度かつ先進的な技術革新が期待できる。
プロジェクトの立案に当たっては、プロジェクト規模も慎重に検討すべきである。開
発テーマについてフォーカスを絞り、メンバー規模も小さくし、「少数精鋭」のプロジ
ェクトを揃えていくことも重要である。また、イノベーション的な発見や発明について
集約的に小さなプロジェクトを立ち上げ、独創性の高い日本独自の技術を開発すること
も考えられる。
開発した新素材や新技術は、早く世に出すこと、技術や材料を開発する過程を再考し
次のアイデアに繋げること、ならびに獲得した技術をノウハウとしてではなく、使いや
すい形態でオープンにすることを切望する。
2.各 論
1)事業の位置付け・必要性について
学術的な基礎研究から産業技術や新材料の開発へとつなげるハイリスクなプロジェ
5
クトであり、産学官の連携と共同体制の基で推進されたことは高く評価できる。最初は
基礎研究で開発テーマを公募し、中間評価段階で実用化重視の方針で開発テーマを絞り
込んだことはやや混乱はあったかもしれないが、結果としては国の重要技術戦略として
世界に発信できる成果に結びついている。
しかし、進捗が曖昧で製品化が見通せない開発テーマ、そして逆に実製品と密接に関
係して
NEDO で実施する必然性が認められない開発テーマ、が存在する。また、開発
テーマの多さを眺めたとき、果たして、打たれたヒット数が多かったのか、レベルが真
に高いものばかりであったのか、多少なりとも疑問は拭いきれない。さらに、市場及び
雇用創出効果が、全く新規な産業の創出であれば問題はないが、現状の産業を代替する
場合、計算通りの効果とは言えないであろう。
今後も、インパクトのある基礎研究に対しての取り組みを忘れないように心掛けるべ
きである。
2)研究開発マネジメントについて
中間評価以降のマネジメントは適切に行われたと評価される。特に、プロジェクトリ
ーダの貢献が大きかったと言え、これだけの大きなチームを高機能的に運営された点、
大いに評価したい。また、中間評価段階で開発テーマの絞込みを実施し、実効的な成果
が上げられている。全体としての方向付けも十分機能したと評価する。さらに、各テー
マの開発目標も具体的な数値で示されており、達成度の管理はできている。
しかし、最終的な成果を総合的に眺めたとき、「ものづくり」に偏りすぎ、構造制御
や構造解析など、基礎科学の面が弱かった印象は拭えない。また、開発テーマを絞り込
んだとは言え、ある程度広範な分野・材料に渡ったため、その統合化については十分と
言えないものが見られる。さらに、プロジェクト期間はより短期とした方が良かったで
あろう。
今後、中間評価にて中止したテーマについても成果が期待できるものについてはフォ
ローすることが望まれる。
3)研究開発成果について
成果はほぼ目標値を達成したと判断され、世界的に評価される成果が得られたと考え
られる。特に、高分子ナノコンポジットの新しい現象の検出や三次元イメージの構築は
優れた成果であると評価する。また、色々の面白い物性をもった材料が編み出された点、
市場開発もある程度スムーズに行くのではと期待される。さらに、共通基盤技術に関し
ての論文、特許は数多く、世界でもトップクラスであろう。
しかし、目標の設定は、あくまでも相対的なものである。従来の製品と比べて、どの
点が格段に優れているのか、客観的にクリアにしてもらいたい。また、一部の開発テー
マでは事業化にやや重きを置きすぎて、大学本来の基礎研究が軽視されている面も見受
けられる。
今後、関連の学会・展示会を通じ世の中に成果を大いにアピールし、啓蒙のスピード
6
アップを図って欲しい。
4)実用化、事業化の見通しについて
いずれの集中研も事業化のシナリオを明確にしており、幾つかの成果が事業化への見
通しに至ったことは意義深いと言える。中間評価に基づいて実用化可能な開発テーマに
絞り込み、集中的にプロジェクトを推進した結果、その芽が明確に見えてきたと考えら
れる。波及効果としては、目標達成の過程で若い研究者が育っており、成功体験をした
研究者の今後が十分期待できる。
しかし、プロジェクト全体としては精密高分子技術で包含できる成果であるが、個々
の成果が現状の産業技術に取って代わるには、新たな設備投資などが障害となる可能性
が否定できない技術も多いであろう。量産化検討、プロセス検討、安全性評価、コスト
試算などがまだ不十分な成果も多い。また、実用化が見えないテーマ、あるいは既に市
場で実用化されている材料に近いテーマを早期に軌道修正することが望まれる。
今後、獲得した技術を違う視点から再考することで波及効果が向上する。そのために
も、失敗事例も含めて可能な限り研究内容を公開することが望ましい。また、今回報告
された事業化のシナリオが5年以内にどれだけ達成されるかの追跡評価が重要である。
研究評価委員会におけるコメント
第18回研究評価委員会(平成20年9月24日開催)に諮り、了承された。研究評
価委員からのコメントは特になし。
8
研究評価委員会
委員名簿(敬称略、五十音順)
職 位
氏 名
所属、肩書き
委員長
西村 吉雄
国立大学法人東京工業大学 監事
委 員
伊東 弘一
早稲田大学 理工学術院総合研究所 客員教授(専任)
委 員
稲葉 陽二
日本大学 法学部 教授
委 員
大西 優
株式会社カネカ 顧問
委 員
尾形 仁士
三菱電機エンジニアリング株式会社 取締役社長
委 員
小林 直人
独立行政法人産業技術総合研究所 理事
委 員
小柳 光正
国立大学法人東北大学大学院
工学研究科バイオロボティクス専攻 教授
委 員
佐久間一郎
国立大学法人東京大学大学院
工学系研究科精密機械工学 精密機械工学専攻 教授
委 員
菅野 純夫
国立大学法人東京大学大学院 新領域創成科学研究科
メディカルゲノム専攻 教授
委 員
冨田 房男
放送大学 北海道学習センター 所長
委 員
架谷 昌信
愛知工業大学 工学部機械学科
教授・総合技術研究所所長
委 員
平澤 泠
東京大学名誉教授
委 員
吉原 一紘
アルバック・ファイ株式会社 技術開発部 理事
第1章
評価
この章では、分科会の総意である評価結果を枠内に掲載している。なお、枠の
下の○、●、
・が付された箇条書きは、評価委員のコメントを原文のまま、参考と
して掲載したものである。
1-1
1.プロジェクト全体に関する評価結果
1.1 総 論
1)総合評価
本プロジェクトは、世界的に高いレベルの高分子科学に基づいて実施され、
数多くの成果が得られている。その成果は、実用品あるいは実用化技術、そし
て基礎科学のための新しい概念として歩み始めることが期待される。また、中
間評価に基づいた思い切った開発テーマの取捨選択がなされ、継続テーマは概
ね目標を達成しており、プロジェクト全体として大いに評価できる。さらに、
基礎科学を訴求している大学・研究機関の精密高分子技術を産業界でどのよう
な方面にどのように実用化するかを明確にできたことも
NEDO の事業として
評価できる。
しかし、上記の取捨選択に併せて集中研への体制変更が行われたものの、す
べての集中研が互いに不可欠な関係であったとは言い難く、これほどまでに大
きなプロジェクトが必要であったか更に検討すべきであった。また、基礎科学
のテーマは別として、材料開発や技術開発に関するテーマの幾つかは、開発期
間が長すぎ、市場との距離が不明確である。
中間評価以降、各開発テーマの加速、推進あるいは中止がステージゲート方
式によって決定されたが、インパクトのある研究に対しての取り組みを忘れな
いように心掛けることも重要である。また、中間評価にて中止したテーマにつ
いても成果が期待できるものについてはフォローすることが望まれる。
<肯定的意見>
○ 世界的に高いレベルの高分子科学に基づいた精密高分子技術開発を完成さ
せたことは評価に値する。
○ 数多くの研究テーマと構成メンバーから成る大きなプロジェクトであった
が、数多くの優れた成果が得られている。実用品あるいは実用技術、そして
基礎科学のための新しい概念として歩み始めることを期待する。
○ 「選択と集中」というメリハリをつけての
R&D は大変有効だと思われる。
○ 産官学の三位一体はよりアクティブなシナジー効果を生むと期待される。
○ 実用化可能なテーマに絞り込んで集中的にプロジェクトを推進した結果、そ
の芽が明確に見えてきたと思う。
○ 中間評価に基づいた思い切ったテーマの取捨選択がなされ、継続テーマは概
ね目標を達成しており、プロジェクトとして大いに評価できる。
○ 総合的には、長期的・基礎的な視点から現実的な活用を図るプロジェクトと
捉えられ、NEDOプロとしての意義が認められる。市場投入に近い成果も
見られ、総体として一定の成功を収めていると考えられる。
○ 大学の学問的な精密高分子技術を産業界でどのような方面にどのように実
用化するかを広範な分野で明確にできたことは
NEDO の事業として評価で
1-2
きる。
<問題点・改善すべき点>
● 選択と集中によって、最終的には成果が得られたと言えるが、すべての集中
研が互いに不可欠な関係であったとは言えない。すなわち、これほどまでに
大きなプロジェクト研究でなくとも良かったのではないか。
● 高次構造の解析から制御技術へとシフトしてきたので、よりテクニカルな面
で、検査、・試験・分析評価機器群の探索をより進め、その際国内外の優れ
た試験機器メーカーからの情報収集も重要となると思われる。
● 「分子レベルの設計」と「ナノレベルの高次構造制御に関わる基礎技術の深
耕」
、
「その成果を活用しての実用化」
、
「有用な材料、技術」の創出。と謳わ
れていた。確かに
3 次元イメージの描出など優れた技術がいくつも出たと言
えるが、それでもって、必ずしも構造解析、構造制御の基礎が深く耕された、
とは思われない。範囲が限られてしまっている。また、それが、企業サイド
での実用化において「構造物性」相関解明の観点から如何に有効に生かされ
たのかが見えない。
● 当初の事業の必要性で、特に数値目標で出した目標は時代の進化と共に変更
があっても良いと思う。たとえば省エネルギー効果は更に緊急度、重要度が
増大していると思う。
● 学術かつ基礎的なテーマは別として、材料開発や技術開発に関するテーマに
ついては、研究期間が長すぎる。最近では社会情勢の変化が急であり、材料
や技術に対する要請も変化する。開発期間が余りに長いと、社会からの要請
の変化に対する柔軟性と機敏性の確保が難しい。環境負荷の側面から新材料
や技術を検証する必要がある。
● 全体目標は明確であるものの、多岐に渡る高分子材料をターゲットとしたた
め、具体的な目標が曖昧となり、市場との距離が不明確である個別テーマが
存在する。
● 目標達成と事業化を考慮するあまり、画期的な研究を事業化まで見通しをつ
けるようなものがあまり見られない。報告会は企業の開発研究報告を聞いて
いるような印象であり、国家プロジェクトとしてはテーマが散逸している。
<その他の意見>
y7 年は研究期間としては随分長い。数多くの成果の中で、必ずしも 7 年間を
必要とする研究ばかりであったかどうか、疑問な点も散在する。それは、す
なわち研究遂行の計画、全体としての流れのコントロールとも関わっている。
もっと強く推し進めても良かったとも思われる。
y基礎学問を訴求している大学・研究機関からより多くの参画を意識的に図る
と、さらに高度かつ先進的な技術革新が期待できるのではないか。
1-3
yステージゲート型の研究を推進した結果、大学の研究スタイルを大幅に変え
る場面もあったかと思われる。その中で大学に求められているインパクトの
ある研究に対しての取り組みを忘れないように心掛けていただきたい。
y中間評価にて中止したテーマについても成果が期待できるものについてはフ
ォローする必要がある。
1-4
2)今後に対する提言
本プロジェクトにおいては、分子原子レベルのアプローチから始めるべき開
発テーマも多く、今後もこのようなプロジェクトによりわが国の材料科学・も
のづくりの基盤技術を強化して欲しい。基盤技術を訴求している大学・研究機
関からより多くの参画を意識的に図ると、さらに高度かつ先進的な技術革新が
期待できる。
プロジェクトの立案に当たっては、プロジェクト規模も慎重に検討すべきで
ある。開発テーマについてフォーカスを絞り、メンバー規模も小さくし、
「少数
精鋭」のプロジェクトを揃えていくことも重要である。また、イノベーション
的な発見や発明について集約的に小さなプロジェクトを立ち上げ、独創性の高
い日本独自の技術を開発することも考えられる。
開発した新素材や新技術は、早く世に出すこと、技術や材料を開発する過程
を再考し次のアイデアに繋げること、ならびに獲得した技術をノウハウとして
ではなく、使いやすい形態でオープンにすることを切望する。
<今後に対する提言>
y全体として、高分子の精密なコントロールを目指した、NEDOプロジェク
トに適した課題設定がなされている。材料開発においては、分子原子レベル
のアプローチから始めるべき課題も多く、今後もこのようなプロジェクトに
よりわが国の材料科学・もの作りの基盤技術強化をお願いしたい。ただし、
個別テーマ進捗にバラつきが見られるように、今後は、重点テーマへの集中
度を増すべきと考える。
yあまり大きなプロジェクトにしないで、イノベーション的な発見や発明につ
いて集約的に小さなプロジェクトを立ち上げて事業化を目指したほうが独創
性の高い日本独自の技術を開発できると思われる。プロジェクトが大きいほ
ど達成しやすい目標を立てる傾向が強い。
yPL の献身的な尽力がなければ成し得なかった成果であり、今後は、採択に当
たって、可能であれば、プロジェクトの規模について、申請内容の修正を求
めるなど、慎重に審査がなされることが望ましい。
y(NEDOのプロジェクト推進に対する意見)これほどの大きなプロジェク
トになると、確かに統括、研究の制御が難しいのはやむを得ない。その点で、
リーダーを始めとして、全員が非常な努力をされたものと想像する。特にリ
ーダーに対して敬意を払いたい。ただ、印象としては、上記のように、必ず
しも
7 年の歳月を費やす必要があったのか、と疑念されるケースも少なくは
ない。これはNEDO(さらには日本の科学研究プロジェクト)全般につい
て言えるかもしれないが、もう少し、テーマについてフォーカスを絞り、メ
ンバー規模も小さくし、
「少数精鋭」のプロジェクトを揃えていくことが、今
後、NEDOとして大事ではないか。今回のがそうであるとは言わないが、
1-5
全般に「お祭り騒ぎ」的な大プロジェクトで、結局は、何も残らなかった(少
なくとも、教科書に紹介されるような優れた内容として、あるいは実用化技
術として残る「基本的概念」なり「本質的技術」が)と言うケースが多々見
受けられる。プロジェクトの中でも、研究を、全体の一つの大きな流れとし
て眺めたときの流れのスムーズさの見極めと、途中での計画変更が頻繁に行
われても良いし、
「生きた」研究成果を上げるには、時々の「新陳代謝」が必
要かもしれない。その点、今回のプロジェクトの前半における思い切った改
造は非常に効果があったと思われるし、その成果は大いに出たと考えられる。
yまた、各研究者について眺めた場合、必ずしも、大きなプロジェクトに参画
したからと言って、非常にハイレベルの成果を出したとは思われない。むし
ろ、NEDOとしては、常に学会発表や研究論文を注視し、
「陰に隠れた」あ
るいは「遠慮して出そうとしない」優れた研究をも探し出す姿勢が必要と思
われる。アグレッシブな意味には二つある。良い意味でのアグレッシブな、
しかし控えめな研究者は沢山いるはず。
y今回のテーマの中でキーワードと思われた「触媒系」の解明と新触媒との探
索を絡めての(精密)高分子技術高度化の推進を図る。また白金系の希土類
金属のわが国においての産出は、中国に比べて非常に少ないので、これらを
できるだけ少なく、かつ同等の反応効果が出せる手法を見出すことが重要で
ある。さらにこれに取組む企業へのサポートが必要と思われる。
yこの他、これまでの有機溶媒に代わる溶媒「イオン液体」を活用した重縮合
反応より、高分子量体創製を行う大学・企業をサポートし、
R&D と実用化の
促進を図ることが大切になってくるのではないか。
y本成果が特定の企業の利益だけに繋がらないように、広く汎用的な技術へさ
らに発展するように今後もウォッチングしていただきたい。
y高分子科学として非常に重要な命題に挑戦した重要なプロジェクトである。
開発した新素材や新技術を早く世に出すこと、技術や材料を開発する過程を
再考し次のアイデアに繋げること、ならびに獲得した技術をノウハウとして
ではなく、使いやすい形態でオープンにすることを切望する。
yプロジェクトの成果として、失敗事例からも多くの知見が得られる。今後の
研究プロジェクト提案のためにも、各テーマについての課題整理を願う。
1-6
1.2 各 論
1)事業の位置付け・必要性について
学術的な基礎研究から産業技術や新材料の開発へとつなげるハイリスクなプ
ロジェクトであり、産学官の連携と共同体制の基で推進されたことは高く評価
できる。最初は基礎研究で開発テーマを公募し、中間評価段階で実用化重視の
方針で開発テーマを絞り込んだことはやや混乱はあったかもしれないが、結果
としては国の重要技術戦略として世界に発信できる成果に結びついている。
しかし、進捗が曖昧で製品化が見通せない開発テーマ、そして逆に実製品と
密接に関係して
NEDO で実施する必然性が認められない開発テーマ、が存在
する。また、開発テーマの多さを眺めたとき、果たして、打たれたヒット数が
多かったのか、レベルが真に高いものばかりであったのか、多少なりとも疑問
は拭いきれない。さらに、市場及び雇用創出効果が、全く新規な産業の創出で
あれば問題はないが、現状の産業を代替する場合、計算通りの効果とは言えな
いであろう。
今後も、インパクトのある基礎研究に対しての取り組みを忘れないように心
掛けるべきである。
<肯定的意見>
○ 学術的な基礎研究から産業技術や新材料の開発へとつなげるハイリスクな
プロジェクトであり、産学官の連携と共同体制の基で推進されたことは高く
評価できる。
○ 事業の位置づけと必要性については、評価できる。ナノテクノロジープログ
ラム、燃料技術開発プログラムへの寄与も理解できる。
○ 大学を中心に研究してきた学問的な精密高分子技術を産業界でどのような
方面にどのように実用化するかを広範な分野で明確にできたことは
NEDO
の事業として評価できる。
○ 高度な高分子科学に基づく技術であるので、ナノテクノロジープログラムに
寄与している。
○ 特に、大学の基礎研究が民間の技術開発に大きく貢献したことから
NEDO
事業として妥当である。
○ いくつものナノテク成果が出されたものと思われる。
○ 国際的に眺めても、オリジナリティーに富んだ、ユニークな研究が存在し、
日本の底力とレベルの高さを垣間見た印象はある。アジア諸国、西洋諸国の
科学、技術レベルと比較しても相当に優れていることは確かに間違いない。
○ 精密高分子技術の
R&D では、通常の高分子合成以上に反応速度論的考察に
重要度が増すと思われる。温度・圧力・時間そして触媒との巧みな活用の仕
方で収率も大きく変わる。1 企業・1 研究所だけでなく NEDO の果たす役
割は大きいと思う。
1-7
○ 最初は基礎技術研究でプロジェクトテーマを公募し、期の途中段階で実用化
重視の方針でテーマを絞り込んだことはやや混乱はあったかもしれないが、
結果としては国の重要技術戦略として世界に発信できる成果に結びついた
と思われる。
<問題点・改善すべき点>
● 企業の
QC 的な研究テーマが一部に見られた。開発した技術の汎用性を広げ
る努力が必要である。
● 新市場の開発ではなく、市場シェアーの獲得にしか貢献しない技術もある。
技術や材料の新展開に期待する。
● 予算規模と開発期間からは物足りないテーマが見られる。既に上市される、
あるいは開発の最終段階にあるような先行した事例がもっとあってもよか
った。
● 世界市場への強い意識が感じられなかった。
● 進捗が曖昧で製品化が見通せないテーマ、そして逆に実製品と密接に関係し
てNEDOで実施する必然性が認められないテーマ、が存在する。これらの
目標との距離が適切でないテーマは今後(のプロジェクトでは)改善すべき
である。
● 精密高分子技術プロジェクトの重要性は認めるが、ナノテクノロジープログ
ラムとしてはごく一部のテーマしかあてはまらず、プロジェクト全体がこの
プログラムを推進する上で重要であるという説得力は感じられない。
● 燃料技術開発プログラムとしての成果が見えにくい。
● 「相対的には」国際競争力に打ち勝っているとの印象であるが、
「絶対的な」
学問成果、あるいは技術成果となると、研究テーマの数の多さを眺めたとき、
果たして、打たれたヒット数が多かったのか、レベルが真に高いものばかり
であったのか、多少なりとも疑問は拭いきれない。また、その研究が国家と
いう視点で眺めたときに真に必要であったのか、単なる思い付きに過ぎなか
ったのか、研究成果の全体としてのまとまりが弱い点、大いに気にはなる。
これはむしろ、プロジェクト発足時の内容判断の是非との関わりで今後検討
すべきことである。
● 3
D-TEM 他 3 次元 X 線顕微鏡、ナノ力学物性評価システムなどで大活躍し
た日本電子製の検査・測定装置類。今後はさらに国内外の測定機器メーカー
への打診および技術水準も調査・検討していくとよいのではないか。
<その他の意見>
y市場及び雇用創出効果が、全く新規な産業の創出であれば問題はないが、現
状の産業を代替する場合、計算通りの効果とは言えないのではないか。
y(
NEDO へのコメント)今や、井の中の蛙の時代ではない。国際競争力やオ
1-8
リジナリティーの高い研究成果が進められているのかどうかに十分な判定が
必要である。また審査委員の間でも、必ずしも、この点を最大の重点ポイン
トとしているかどうか、統一が取れていない印象である。
y
触媒系の
R&D では Ti,Zr 系の R&D だけであったようだが、周期律でみて、
Hf 系まで R&D はしておいた方がよいのでは(多少コストパフォーマンスが
悪くても)
。
y