Palliative Care Research 2015; 10(3): 00–00
緒 言
がん終末期における短期予後予測や中期的な予後予 測モデル1∼4),入院後早期死亡における予測因子に関 する報告5)やこれらの予測モデルの有用性や簡便性を 比較した報告6)がある.本邦ではこれらの予測モデル が緩和ケア病棟における入院の基準判定に有用である との報告もある7). 近年緩和ケア病棟における平均在院日数が徐々に短 くなる傾向にあり,61 日以上入院の患者比率は減少傾 向となっている.この要因としては症状コントロール 目的の短期入院や生存退院の増加と,看取りが近い時 期に入院した死亡退院の増加が考えられる8).さらに は 2012 年の厚生労働省の診療報酬改定9)で在院日数別 包括払いとなり,入院長期化による費用算定の減額に よる影響が大きいと考えられる.2018 年の診療報酬改 定10)によりこの傾向はさらに顕著になる可能性があ り,長期生存を入院時に予想することはますます重要 となっている.しかし現時点でこの問題に対応しうる 予測モデルや予測因子などは報告されていない. 緩和ケアの終末期治療の実践においては患者や家 族,医療スタッフのゴールや優先事項を決めておくた めに終末期における情報分析とその知見が重要である が長期入院患者における終末期の症状や治療について は報告がない.加えて,長期入院の患者において終末 期症状・治療が異なるかどうかについて知見がない. 本研究は長期入院患者における予測因子を解析すると ともにその終末期症状,治療についても比較すること を目的とした.方 法
単一施設における後方視的研究である.2011 年 8 月 から 2016 年 8 月において当院の腫瘍内科・緩和ケア内 科において死亡した進行がん患者を対象とした.複数 回入院がある場合は最終入院時のデータを用いた. 入院から 31 日以上あるいは 61 日以上経過し死亡し た患者群を長期入院群,31 日未満あるいは 61 日未満 で死亡した患者群を非長期入院群と定義し分類した. 主要評価項目は 31 日以上長期入院であり,主たる解析 として 31 日以上長期入院の予測因子の探索解析を実 施した.予後予測因子としては年齢,性別,原発部位, 臨床病期,転移臓器数,合併症個数,最終レジメンに おける殺細胞性抗がん剤数,抗がん剤治療ライン数,原 著
Palliat Care Res 2018; 13(4): 335–40終末期進行がん患者における長期入院の
予測因子と終末期症状・治療との関連
菊地 綾子
1),平本 秀二
1),堀 哲雄
1,2),吉岡 亮
1),長島 健悟
3) 1)三菱京都病院 腫瘍内科・緩和ケア内科,2)三菱京都病院 呼吸器外科, 3)大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 統計数理研究所 緩和ケア開始後の早期死亡に関する予測因子研究はあるが,入院時に長期の生存期間を予測するモデルや予測因子に 関する報告はない.31 日以上あるいは 61 日以上の長期入院に関連する予測因子解析を探索的に行った.また終末 期症状(がん性疼痛,せん妄,悪心・嘔吐,劵怠感,呼吸困難感)と終末期治療(平均輸液量,持続的鎮静,平均オピ オイド使用量)について長期入院群と非長期入院群とで比較した.31 日以上長期入院群においては性別(オッズ比 0.502),意識レベル(オッズ比 0.258),補正カルシウム値(オッズ比 0.559)が統計学的に有意であった.61 日以 上長期入院に対する予測因子解析では血清 CRP 値(オッズ比 0.254)において統計学的な有意差を認めた.終末期症 状・治療において 31 日以上長期入院の有無では劵怠感と平均輸液量が統計学的に有意に少なかった.61 日以上長 期入院の有無では差はみられなかった.Palliat Care Res 2018; 13(4): 335-40
Key words: 終末期がん患者,予後予測,緩和ケア,長期入院 受付日 2018 年 6 月 7 日/改訂日 2018 年 8 月 13 日/受理日 2018年 9 月 6 日 Corresponding Author:平本秀二 三菱京都病院 腫瘍内科・緩和ケア内科 〒 615-8087 京都府京都市西京区桂御所町 1 番地 TEL 075-381-2111 FAX 075-392-7592 E-mail: [email protected]
入院時の Eastern Corporative Oncology Group Performance Status(以下 ECOG-PS),意識レベル,血清 C-reactive
protein(以下 CRP)値,血清アルブミン値,補正カルシ ウム値とした.年齢は中央値をカットオフ値とした. 胃食道,胆道膵がんで他と比較すると終末期予後が悪 く11),対象とした.合併症数は Charlson comorbidity indexを用いて各項目に該当するものの合計とした. 侵襲性の高い抗がん剤数や ECOG-PS のカットオフ値 は固形癌の診療ガイドライン12)に準じた.入院時意識
レベルは Japan Coma Scale(以下 JCS)を用いた.補正カ ルシウム値は異常値をカットオフ値とし,血清 CRP 値,血清アルブミン値は予後予測スケールである Glas-gow Prognostic Scale13)に準じた.ロジスティック回帰 モデルを用い,これらのリスク因子について長期入院 をイベントとしたオッズ比を求めた.最初に単変量解 析を行い,のちにすべての因子を用いて多変量解析を 行った.すべての因子解析に用いた項目は単変量解 析,多変量解析前に設定していた. 副次的評価項目として 61 日以上長期入院の予後因 子の探索解析と 31 日以上の長期入院群あるいは 61 日 以上の長期入院群と非長期入院群における終末期症状 と終末期治療介入についての比較を実施した. 終末期症状は死亡日から って 3 日以内に 1 度でも 認めた場合を「症状あり」とし,5 つの症状(がん性疼 痛,せん妄,悪心・嘔吐, 怠感,呼吸困難感)をカル テベースで検索し有症率を解析した.評価スケールは Numerical Rating Scale(以下 NRS),あるいは Support Team Assessment Schedule 日本語版(以下 STAS-J)を使 用した.NRS については一般病棟あるいは緩和ケア病 棟の看護師が評価しているもので 1 日の最悪値を採用 し,STAS-J は週に 2 回程度病棟カンファレンスで評価 しており NRS の欠損を補完した.死亡日から って 3 日以内の症状において NRS 4 以上あるいは STAS-J2 以 上を症状ありと判定した.意識レベル低下や治療によ る影響で症状がなくなれば症状なしとした.終末期治 療は同様にカルテベースで検索し死亡日から って 3 日以内の平均輸液量(L/日),苦痛緩和のための持続的 鎮静の有無,平均オピオイド使用量(経口モルヒネ換 算 mg/日)についてそれぞれ検証した.当院における終 末期患者に対する治療は当該診療科医師(4 名)が行っ ており,毎日のディスカッションにより治療・ケアの 方針の統一を図っている.終末期症状と終末期治療そ れぞれの項目について,連続変数については t 検定, 離散変数についてはカイ二乗検定を用いて比較した. 統計ソフトは SAS version 9.4 を使用した.
結 果
対象となる患者は 510 症例あり,61 日以上長期入院 群は 25 症例(4.9%),31 日以上長期入院群は 111 症例 (21.8%)であった.当院における平均在院日数は 10.0 日であった.全体で胃食道がんが 114 例(22.4%),胆 道膵がん 98 例(19.2%),大腸がん 82 例(16.1%),肺が ん 84 例(16.5%),乳がん 25 例(4.9%),泌尿器婦人科 がん 36 例(7.1%),肝細胞がん 20 例(3.9%),その他 (頭頸部がん,血液腫瘍など)51 例(10.0%)であった. 性別は男性が 306 例(60.0%),女性が 204 例(40.0%)で あった.年齢中央値は 73 歳,臨床病期は II-III 期 39 例 (7.6%),IV 期 299 例(58.6%),再発が 166 例(32.5%) であった.病理組織は腺癌が 228 例(44.7%)と最も多 かった.最終ラインの抗がん剤レジメンで 2 種以上の 殺細胞性抗がん剤を使用した症例は 88 例(17.3%)で抗 が ん 剤 の 治 療 ラ イ ン 数 が 2 以 上 の も の は 190 例 (37.3%)であった.ECOG-PS は 0∼3 が 309(60.6%)例, 4が 201 例(39.4%)であった.また入院時の平均血清 CRP値は 8.6 mg/dl,平均血清アルブミン値 2.6 g/dl,平 均補正カルシウム値 10.2 mg/dl であった(表 1). 長期入院群における予測因子解析を多変量解析で 行ったところ,31 日以上長期入院については性別 (オッズ比 0.502,95%信頼区間[0.296,0.851],P 値 0.011),意識レベル(オッズ比 0.258,95%信頼区間 [0.101,0.661],P 値 0.005),補正カルシウム値(オッ ズ比 0.559,95%信頼区間[0.316,0.990],P 値 0.046)が 統計学的に有意な予後因子として抽出された(表 2). また 61 日以上長期入院については血清 CRP 値(オッズ 比 0.254,95%信頼区間[0.091,0.713],P 値 0.009)が統 計学的に有意であり,また補正カルシウム値(オッズ 比 0.376,95%信頼区間[0.122,1.159],P 値 0.089)は統 計学的な傾向を認めた(表 3). 終末期症状と終末期治療において 31 日以上長期入 院群では 怠感が非長期入院群(37.4%)より長期入院 群(26.1%)が少なかった(P 値 0.027).平均輸液量も非 長期入院群(0.25 L/日)より長期入院群(0.14 L/日)が少 なかった(P 値 0.003)(表 4).61 日以上長期入院群(表 5)ではすべての項目において有意差を認めなかった.考 察
本研究は単一施設による後方視的研究である.31 日 未満入院は 399 人(78.2%)であり 2014 年の緩和ケア病 棟の全国平均(44%)と比較すると多いが,61 日以上入 院は 25 症例(4.9%)と比較すると全国平均(4%)同等と 考えられる14).61 日以上入院は 2000 年では全国平均表 1 患者背景 全患者 N=510 31日以上 長期入院 N=111 P 値 61日以上 長期入院 N=25 P 値 原発部位 0.190 0.780 胃食道がん 114 26 7 胆道膵がん 98 18 3 大腸がん 82 15 5 肺がん 84 5 5 乳がん 25 7 0 泌尿器婦人科がん 36 2 2 肝細胞がん 20 4 0 他 51 15 3 年齢中央値(平均) 73(72.2) 74(72.2) 0.752 76(73.6) 0.426 性別 0.209 男 306 53 12 女 204 58 13 臨床病期(UICC-7) 0.003 0.058 II-III 39 9 5 IV 299 64 12 再発 166 38 8 組織 0.665 0.978 腺がん 228 47 10 平上皮がん 60 12 3 未分化がん 43 11 3 小細胞がん, 神経内分泌がん 26 3 1 他 37 11 3 不明 116 27 5 抗がん剤 殺細胞性抗がん剤 ( 最 終 レ ジ メ ン ) ≥2 88 20 0.829 4 0.808 抗がん剤治療ライ ン数≥2 190 40 0.576 8 0.397 全患者 N=510 31日以上 長期入院 N=111 P 値 61日以上 長期入院 N=25 P 値 ECOG-PS 0.055 0.039 0-3 309 89 22 4 201 22 3 転移部位 肝 161 37 0.651 6 0.404 肺 80 23 0.099 2 0.279 骨 79 24 0.044 5 0.523 腹膜 140 31 0.899 9 0.326 中枢神経 52 10 0.640 3 0.760 他 141 26 0.261 2 0.024 転移臓器数≥2 174 40 0.630 5 0.127 合併症 心臓 60 10 0.308 0 0.061 腎臓 12 2 0.665 0 0.426 脳神経 43 8 0.600 1 0.414 呼吸器 34 7 0.863 2 0.784 代謝 81 18 0.913 3 0.586 精神 47 18 0.004 3 0.622 他 24 2 0.102 1 0.864 合併症個数≥2 64 15 0.973 1 0.131 入院時血液検査 平 均 血 清 CRP 値(mg/dl) 8.6 6.8 0.006 4.6 0.008 平均血清アルブ ミン値(g/dl) 2.6 2.7 0.078 3.0 0.004 平均補正カルシ ウム値(mg/dl) 10.2 10.1 0.085 9.7 0.121 表 2 長期入院(31 日以上)における予測因子解析 単変量解析 多変量解析 オッズ 比 95%信頼区間 P値 オッズ比 95%信頼区間 P値 年齢 ≥71(vs <71) 1.175 0.699 1.977 0.543 1.361 0.748 2.478 0.313 性別 男性(vs 女性) 0.561 0.339 0.926 0.024 0.502 0.296 0.851 0.011 原発部位 胃食道,胆道膵(vs 他) 1.212 0.733 2.008 0.454 1.393 0.801 2.398 0.232 臨床病期 II-VI(vs 再発) 0.820 0.486 1.382 0.456 0.803 0.462 1.397 0.438 転移臓器個数 ≥2(vs 0-1) 1.041 0.614 1.766 0.882 1.058 0.610 1.833 0.842 合併症個数 ≥2(vs 0-1) 1.150 0.587 2.255 0.684 1.078 0.514 2.261 0.842 殺細胞性抗がん剤(最終レジメン) ≥2(vs 0-1) 1.025 0.536 1.960 0.940 1.145 0.580 2.258 0.697 抗がん剤治療ライン数 ≥2(vs 0-1) 0.958 0.575 1.596 0.869 1.027 0.585 1.803 0.925 Performance Status(ECOG) 2-4(vs 0-1) 0.344 0.076 1.566 0.168 0.515 0.107 2.480 0.408 意識レベル(JCS) 10-300(vs 1-3) 0.312 0.124 0.784 0.013 0.258 0.101 0.661 0.005 血清 CRP 値(mg/dl) >1.0(vs ≤1.0) 0.467 0.245 0.890 0.021 0.645 0.309 1.347 0.243 血清アルブミン値(g/dl) <3.5(vs ≥3.5) 1.637 0.751 3.571 0.215 1.366 0.557 3.353 0.496 補正カルシウム 値(mg/dl) >10.3(vs ≤10.3) 0.555 0.327 0.943 0.030 0.559 0.316 0.990 0.046
の影響を受けていることが挙げられる. 本研究では 31 日以上入院における多変量解析にお いて予測因子としては補正カルシウム値,性別,意識 レベルが抽出された.61 日以上入院における多変量解 析において予測因子としては血清 CRP 値が抽出され, 補正カルシウム値は傾向を認めた. 血清カルシウム値は腎がん15),前立腺がんなどのが ん患者の予後因子として知られている.血清カルシウ ム値が正常上限を超えている場合は高カルシウム血症 と呼ぶが,悪性腫瘍に伴ってみられる状態を悪性腫瘍 随伴性高カルシウム血症と呼ばれ,これらが認められ ると約半数が 30 日以内に死亡すると報告されてい る16).女性の予後の影響は機序不明であるが卵巣がん や乳がんなど女性特有のがん種を含むことが影響して となったのは先行研究に矛盾しない5).全身状態の指 標である ECOG-PS は既存の予後予測モデルにおいて 予測因子となることが多いが,本研究では有意な予後 因子としては抽出されなかった. がん終末期における予後予測モデルとしては Pallia-tive Prognostic Score(以下 PPI)3)が簡便かつ正確性も高
いと報告6)され,入院時判定基準として採用7)してい る施設もあり当院でも採用している. PPI はがん終末 期患者の予後予測を 3 週間から 6 週間を層別化するの に適しているとされ頻用されている.本研究で抽出さ れた長期入院における予測因子は入院判定時に補助的 に役割を担える可能性がある.時代の変遷もあるが終 末期がん患者における長期的予測モデルは確立されて おらず,今後のさらなる開発が望まれる. 表 3 長期入院(61 日以上)における予測因子解析 単変量解析 多変量解析 オッズ 比 95%信頼区間 P値 オッズ比 95%信頼区間 P値 年齢 ≥71(vs <71) 0.991 0.389 2.521 0.985 1.218 0.459 3.227 0.692 性別 男性(vs 女性) 0.834 0.334 2.083 0.698 0.877 0.358 2.147 0.774 原発部位 胃食道,胆道膵(vs 他) 1.081 0.434 2.695 0.866 1.698 0.681 4.237 0.256 臨床病期 II-VI(vs 再発) 1.265 0.461 3.475 0.648 1.406 0.521 3.795 0.501 転移臓器個数 ≥2(vs 0-1) 0.425 0.131 1.382 0.155 0.494 0.167 1.467 0.204 合併症個数 ≥2(vs 0-1) 0.430 0.078 2.361 0.332 0.324 0.063 1.679 0.179 殺細胞性抗がん剤(最終レジメン) ≥2(vs 0-1) 0.976 0.296 3.218 0.968 1.121 0.346 3.629 0.849 抗がん剤治療ライン数 ≥2(vs 0-1) 0.938 0.369 2.386 0.894 0.996 0.388 2.559 0.993 Performance Status(ECOG) 2-4(vs 0-1) 0.853 0.039 18.822 0.920 1.351 0.057 32.237 0.852 意識レベル(JCS) 10-300(vs 1-3) 0.712 0.182 2.787 0.625 0.732 0.198 2.702 0.639 血清 CRP 値(mg/dl) >1.0(vs ≤1.0) 0.187 0.072 0.483 0.001 0.254 0.091 0.713 0.009 血清アルブミン値(g/dl) <3.5(vs ≥3.5) 3.041 0.986 9.381 0.053 1.060 0.299 3.766 0.928 補正カルシウム 値(mg/dl) >10.3(vs ≤10.3) 0.285 0.088 0.923 0.036 0.376 0.122 1.159 0.089 表 4 長期入院(31 日以上)と終末期症状,終末期治療との関連 がん性 疼痛 せん妄 悪心・嘔吐 怠感 困難感呼吸 平均輸液量(L/ 日) 持続的鎮静 平均オピオイド * 投与量(mg/日) 長期入院群(n=111) 32.4% 31.5% 4.5% 26.1% 17.1% 0.14 28.8% 42.9 非長期入院群(n=399) 26.6% 29.6% 6.0% 37.4% 24.1% 0.25 23.1% 36.9 P値 0.288 0.702 0.504 0.027 0.119 0.003 0.215 0.352 *経口モルヒネ換算 表 5 長期入院(61 日以上)と終末期症状,終末期治療との関連 がん性 疼痛 せん妄 悪心・嘔吐 怠感 困難感呼吸 平均輸液量(L/ 日) 持続的鎮静 平均オピオイド * 投与量(mg/日) 長期入院群(n=25) 40.0% 44.0% 0% 20.0% 24.0% 0.13 24.0% 34.3 非長期入院群(n=485) 27.3% 29.3% 6.0% 35.7% 22.5% 0.23 24.4% 38.4 P値 0.166 0.119 0.208 0.107 0.863 0.269 0.966 0.653 *経口モルヒネ換算
いが,輸液においては緩和専門施設では終末期患者に 対して漫然と投与することが少なくなっており,入院 後徐々に減量している可能性が推察される17). 怠感 に関しては積極的な前治療などの影響が当初あり入院 後に徐々に軽減している可能性が推察される.終末期 症状や治療介入については 61 日以上長期入院群で差 がなかったが,これは入院後長期になると症状や治療 に差がなくなる可能性が推察される. がん終末期患者の長期入院における予測因子や終末 期症状・治療に差があることが認められた.これらの 情報は患者やその家族に入院中に予後の見込みや,症 状を説明するうえでも有用であり,臨床家にとっても 治療介入を予測できる点で有用である.しかし本研究 には以下の限界がある.第 1 に単一施設でのカルテ ベース検索による後方視的研究であることである.ま た緩和専門施設であるということから一般の病棟など に当てはめることは難しい.第 2 に PPI3)などに含まれ るせん妄や呼吸困難,食欲低下などの症状など週単位 の予後を規定する因子が含まれていないことが挙げら れる.第 3 に終末期症状においては客観的評価であり 意識が低下している症例などは「終末期症状なし」と なってしまうことが挙げられる.第 4 に 61 日以上の入 院は症例数が少なく十分な統計学的検出力がない,探 索的な研究であり α エラーを十分制御できていない可 能性がある.
結 論
がん終末期患者の長期入院における予測因子として 補正カルシウム値,性別,意識レベルにおいて統計学 的な有意差を認めた.終末期症状・治療は 怠感と平 均輸液量が長期入院群で少なかった.これらの情報は 患者やその家族に入院中に予後の見込みや,症状を説 明するうえでも有用であり,臨床家にとっても治療介 入を予測できる点で有用である. 著者の申告すべき利益相反なし 菊地は研究データの収集,分析,研究データの解釈お よび原稿の起草に貢献;平本は研究の構想もしくはデ ザインおよび原稿の重要な知的内容に関わる批判的な 推敲に貢献;堀および吉岡は研究データの解釈および 原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献; 長島は研究データの収集,研究データの解釈および原 稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献し た.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終 承認および研究の説明責任に同意した. 文 献1) Pirovano M, Maltoni M, Nannni O, et al. A new palliative prognostic score: a first step for the staging of terminally ill cancer patients. Italian Multicenter and Study Group on Palli-ative care. J Pain Symptom Manage 1999; 17: 231-9. 2) Scarpi E, Maltoni M, Miceli R, et al. Survival prediction for
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1,2)Akira Yoshioka,
1)and Kengo Nagashima
3)1) Department of Clinical Oncology and Palliative Medicine, Mitsubishi Kyoto Hospital, 2) Department of Respiratory Surgery, Mitsubishi Kyoto Hospital,
3) The Institute of Statistical Mathematics
There were no reports about long survival predictors in palliative care settings. We divided categories into more
than 31 days of hospitalization (short period hospitalization) and more than 61 days of hospitalization) (long
hospitalization) and analyzed prognostic factors in multivariate methods. We measured the association between
the long hospitalization and short period hospitalization groups with regard to terminal symptoms (cancer pain,
delirium, nausea and vomiting, fatigue, and dyspnea) and treatment (hydration, continuous sedation, and
opi-oids). In the more than 31 days of hospitalization group, sex (Odds Ratio 0.502), consciousness (Odds Ratio
0.258), and calcium levels (Odds Ratio 0.559) were statistically significant. In the more than 61 days of
hospi-talization group, the serum CRP level (Odds Ratio 0.254) was statistically significant and serum calcium level
(Odds Ratio 0.376) exhibited a trend. The prevalence of fatigue and amount of hydration were significantly low
in the more than 31 days of hospitalization group. There were no differences in terminal symptoms and
treat-ment in the more than 61 days of hospitalization group.
Palliat Care Res 2018; 13(4): 335-40