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要旨:化学構造の異なるポリカルボン酸系分散剤(以下、PC)の炭酸カルシウム(以下、CC)への吸着 挙動を CC 表面のカチオンサイト(>CO3Ca+サイトおよび>CaOH2+サイト)密度に着目して調べた。 Ca(NO3)2の添加によりカチオンサイト密度を変えた CC の懸濁液を用いて PC の吸着量 の変化を測 定した。一方、CC の表面錯体反応を考慮することで、実験に用いた溶媒条件におけるカチオンサイト密 度を理論的に計算した。 の測定値とカチオンサイト密度の計算値との比較を行った結果、PC の飽和 吸着時において PC1 分子が占有する面積内に存在するカチオンサイト数 はカチオンサイト密度に因ら ず一定と推定された。また と PC の分子構造には相関が見られ、 は PC の主鎖長に比例する結果と なった。

分散剤の化学構造と炭酸カルシウム粒子表面の吸着サイトが

分散剤の吸着挙動に及ぼす影響

森田大志

*1

 後藤卓

*1

 名和豊春

*2 *1 北海道大学 大学院工学院環境循環システム専攻(〒060-8628 北海道札幌市北区北 13 条西 8 丁目) *2 北海道大学 大学院工学研究院環境循環システム部門(〒060-8628 北海道札幌市北区北 13 条西 8 丁目) キーワード:ポリカルボン酸系分散剤、吸着、カルシウムイオン、PHREEQC、表面錯体モデル

1. はじめに

 セメント・コンクリートにおいて、凝集粒子を分散さ せ、流動性を改善する目的でポリカルボン酸系分散剤(以 下 PC)が用いられている。PC は分子構造中に主鎖部分 と側鎖部分を持つグラフト共重合体であり、主鎖中のカ ルボキシル基でセメント粒子表面に吸着し、側鎖の立体 反発力によってセメント粒子を高度に分散させると考え られている。  Nawa1)は立体反発力理論に de Gennes2)による末端 吸着高分子層厚さの変化理論を適用し、PC の側鎖部分 により形成される吸着層厚さは PC の吸着密度により変 化することを粒子間ポテンシャルの計算により示した。 このことは、長い側鎖を持つ PC であっても、懸濁粒子 への PC 吸着密度を十分に高められなければ側鎖を有効 に展開することが出来ないことを示唆している。すなわ ち、吸着能力が低い PC では意図した大きな立体反発力 を得られないと考えられる。このため、PC による分散 能力を考える上で PC の吸着能力の評価が重要である。  PC の化学構造が PC の吸着に及ぼす影響についてこ れまでにも数多くの研究がなされている。しかし、使用 する PC に関して、①詳細な化学構造が明らかでない、 ②複数の種類の PC が混入している、③分子量分布が広 い等の問題があり、実験で確認された PC の吸着部位 をその化学構造中の特定部位へ帰属させることは困難で あった。  また、セメントを構成する各鉱物単体を対象として PC 吸着挙動の研究が行われているが、水和反応による 鉱物表面および液相イオン濃度変化の影響もあり、PC が吸着する鉱物表面上のサイトや、吸着に必要なサイト 数に関する検討例は少ない。  山田ら3)は、PC の吸着が分子動力学を用いたコン ピュータシミュレーションにより PC 中のカルボキシル 基等のアニオン性官能基と、固相表面の Ca 等のカチオ ンサイトとの相互作用により生じることを示した。しか し、定量的な PC の吸着シミュレーションには対象とす る懸濁粒子の詳細な表面構造情報が必要である。このた め、水和反応性が高く表面が複雑に変化するセメント鉱 物を懸濁粒子に用いて PC の化学構造による吸着挙動変 化のメカニズムを検討するのは困難である。  そこで本研究では、①表面錯体モデルを導入した既往 の研究により、表面構造が明確にされており、②水和反 応を生じないことから PC の効果発現機構の研究での利 用例が多い4, 5)、炭酸カルシウム(以下、CC)をモデル懸 濁粒子として用いることで、PC の化学構造と懸濁粒子 の表面構造が PC の吸着挙動に及ぼす影響を検討した。  すなわち表面構造が明確で吸着サイト、およびその表 面密度を特定化できる CC 表面に PC を吸着させ、PC 構造中の吸着基であるカルボキシル基の数と配置を変え た時の CC 表面の吸着サイトとの結合状態を調べ、PC の吸着メカニズムの解明を試みた。  このため、主鎖中のカルボキシル基間隔を均一とした 条件で、①側鎖長を一定として主鎖長さのみを変化させ

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3. 実験概要

3. 1 使用材料  本研究では CC として重質炭酸カルシウム(備北粉化 工業株式会社製)を用いた。N2BET 法により求めた比 表面積は 13.0m2/g、レーザー回折・散乱法により得ら れた 50 %体積平均粒径は 1.1μm である。  PC としては、メトキシポリエチレングリコールメタ クリル酸エステル(PGM)とメタクリル酸(MAA)との共 重合体のナトリウム塩を用いた。  1 分子中の SMAA、PGM モノマー数 p、q に関して、 p/(p+q) 0.8 と固定、すなわち主鎖上の側鎖(PGM モノマー)間隔を一定とする条件をすべての PC に設定 した。この条件に加え、さらに、PGM モノマーの酸化 エチレン付加モル数 n を 23 に固定すなわち側鎖長を 固定し、主鎖方向のモノマー繰り返し数(p+q)を変化 させた 3 種類の PC を用いた。以下、主鎖長の長い PC から順に PC(1-2.5)、PC(1-1)、PC(1-0.5)とする。  また、これとは別の観点で構造を変化させたシリーズ も用いた。これは、主鎖長を PC(1-1)と同水準に固定し、 PGM 鎖長を変化させている。PC(1-1)の側鎖長を基準 とし、側鎖長が約半分の PC(0.5-1)、約 2 倍の PC(2-1) である。本論文中の全ての PC の表記は PC(1-1)に対 する(側鎖長比−主鎖長比)となっている。  田所ら8)による EO 付加モル数 n=7 のポリエチレン グリコールの長さ 1.93nm をもとに計算すると、伸長 した条件での側鎖長は、PC(0.5-1)、PC(1-1)、PC(2-1) それぞれ 2.5nm、6.3nm、12.4nm となる。また、最大 伸長時の三つの炭素 C-C-C 結合間距離 2.51Å の文献 値8)より換算すると PC(1-2.5)、PC(1-1)、PC(1-0.5) の幾何学的最大主鎖長はそれぞれ、49.2nm、19.6nm、 11.3nm となる。  本研究で用いた PC の化学構造を Fig. 1 に、モノマー 組成比、GPC 法による重量平均分子量を Table 2 に示す。 3. 2 懸濁液の作製  懸濁液中で CC の各種表面サイト密度は液相の pH やイオン強度、イオンの特異吸着等により変化すると 考えられるが、PC は一般に固相表面の Ca 等のカチ オンサイトとの相互作用により吸着していると考えら れている3)。このため、本研究においては意図的に PC 吸着サイト密度を変化させる実験条件として、溶媒の Ca 濃度に着目した。Ca サイト密度を変化させるため、 Ca(NO3)2 の添加により、Ca 仕込み濃度を 0∼30mM と変化させた溶媒条件を設定した。Na+、NO 3−イオン たシリーズと、②主鎖長を一定として側鎖長のみを変化 させたシリーズの PC を用いて吸着挙動を調べた。

2. カルサイト上での表面錯体モデル

 各種イオン濃度や pH などの溶媒条件により懸濁液中 の鉱物表面の電荷密度は様々に変化することが知られて いる。これは、鉱物 - 溶媒界面における表面錯体反応 により、正、負もしくは中性の荷電を持つ表面化学種の 密度分布が変化するためと考えられている。  PC の吸着挙動には、懸濁液中での粒子の表面電荷や 表面電位が強く影響することが多くの研究により報告さ れている7)。このため、鉱物表面上の PC 吸着サイトの 評価方法として、ζ電位の測定が広く行われている。し かし、セメント細孔溶液のようにイオン強度の高い系に おいては、一般にζ電位の絶対値は小さくなることが知 られており、ζ電位の測定のみでは鉱物の表面サイトの 分布を定量的に考慮することは困難である6)  任意の溶媒条件における鉱物の表面サイトの密度分布 を求めることが可能である表面錯体反応を考慮すること は、PC 吸着場の評価に非常に有効と考えられる。  本研究では、PC 吸着実験に用いた各種溶媒条件にお ける CC 表面のカチオンサイト密度を求めるため、Van Cappellen7)らが提案したカルサイトの表面錯体モデル を用いた。  Van Cappellen らによればカルサイト水溶液界面にお いて、電荷の均衡が満たされない結晶端面へ水分子が吸 着し、これが分解することで、水酸化物と結合した表面 カルシウムサイト「>CaOH0」と、プロトンと結合した 表面炭酸サイト「>CO3H0」という二つの水和反応基を 生じる。この 2 つの表面反応基に基づき、6 つの表面 錯体反応が生じるとしている。各表面錯体反応と対応す る平衡定数 logK 値を Table 1 に示す。  これらの表面錯体反応に加え、液相中のイオン間の化 学反応および、固相と液相との相平衡反応を考慮し、実 験に供した懸濁液条件における CC 表面のカチオンサ イト密度の計算を行った。計算に際しては熱力学的平衡 論に基づく地球科学コード(PHREEQC)を用いた。 Table 1  Surface complexation reactions of CaCO3 and

values of the intrinsic surface stability constans of the surface reactions

Surface complexation reaction logK >CO3H0 ⇔ >CO3− + H+ -4.9

>CO3H0 + Ca2+ ⇔ >CO3Ca+ + H+ -2.8

>CaOH2+ ⇔ >CaOH0 + H+ -12.2 >CaOH0 ⇔ >CaO + H-17 >CaOH0 + CO 2 ⇔ >CaHCO30 6.0 >CaOH0 + CO 2 ⇔ >CaCO3− + H+ -2.6

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ら、測定した PC 吸着データの Langmuire 型吸着への 回帰を行った。PC 吸着量の表記方法としては CC 表面 100nm2あたりに吸着した PC の分子数 (PCs/100nm2 とした。  Fig. 3 に Ca(NO3)2 無添加条件における CC への各 PC の吸着等温線を示す。図中のプロットは実測値を示 している。Fig. 3 中に併記した曲線が Langmuire 型吸 着線である。さらに、このとき PC の飽和吸着量を回帰 式[1]式における の値により評価した。 = [1] ここに、[ ]:液相平衡 PC 濃度(μmol/l) :吸着反応平衡定数 :PC 飽和吸着量(PCs/100nm2  同様にして他の Ca(NO3)2添加条件においても PC 飽 和吸着量を求めた。求めた PC 飽和吸着量を Fig. 4 に 示す。溶媒への Ca(NO3)2の添加量の増加とともに、検 討したすべての PC の飽和吸着量が増加する結果となっ た。 4. 2 モデルによる CC 表面サイト密度の計算結果  PC 吸着実験に用いた各懸濁液条件およびカルサイ ・・[ ] 1+ ・[ ] は CC 表面にほとんど吸着しないことから、NaNO3の 添加により液相のイオン強度を 0.35mol/l に調整し、 NaOH により懸濁液の pH を 12 に調整した。CC に対 する溶媒の重量比 W/CC は 1.1 とし、注水開始から 4 分間ハンドミキサーで撹拌することで CC 懸濁液を作 製した。  Fig. 2 に 今 回 検 討 し た 懸 濁 液 条 件 に お け る Na+ NO3−、Ca2+イオンの仕込み量に対する CC への吸着量 の割合を注水開始から経時的に測定した結果の一例を示 す。他の溶媒条件と同様に Na+、NO 3−については有意 な変化が見られず、CC 表面に吸着しないことが確認さ れた。他方 Ca2+に関しては、注水開始直後から急速に 吸着が進行し、10 分程でほぼ平衡に達することが確認 された。これらの結果を踏まえ、以下では注水から 30 分経過時点での実験結果に対して化学平衡論的アプロー チで解析することとした。 3. 3 PC 吸着量測定  TOC(全有機炭素濃度測定装置)を用いて、上記 CC 懸濁液の液相中の有機炭素濃度を測定することで、CC 表面と平衡後の PC の液相平衡濃度を求めた。また、得 られた PC 液相平衡濃度と CC 粒子添加前の溶媒の PC 濃度との差分として CC 表面への PC 吸着量を評価し、 吸着等温線を作製した。  CC 懸濁液の液相部分抽出の手順としては、作成した CC 懸濁液を注水から 30 分経過時点より 5C フィルター を用いてブフナー漏斗による吸引濾過を行い、採取した 濾液をすみやかに孔径 0.45μm のメンブランフィルター で再度吸引濾過を行った。取得した濾液を蒸留水で希釈 した試料を TOC に供した。なお、前述の液相イオン濃 度の経時的測定も同様の手法により所定材齢を経た懸濁 液から液相を抽出し、Na+、Ca2+は誘導結合プラズマ 発光分析装置、NO3−は陰イオンクロマトグラフにより 測定した。全ての操作は 25 ℃条件のもとで行った。

4. 結果及び考察

4. 1 PC 吸着量測定結果  CC への PC の吸着挙動は単層吸着である Langmuire 型を示すことが報告されており5)、本研究においても 測定値と Langumuire 型吸着において推測される吸着 等温線との相関が 0.99 以上の高い値を示したことか

Fig. 2  Influence of time from mixing on the ratio of adsorbed molecules from solvent on CC Table 2 Properties of PC

PC Polyethyleneoxide chain

n(mol) p q

Side chain length L(nm)

Backbone length

D(nm) molecular weightWeight-average

PC(0.5-1) 9 67.3 16.9 2.8 21.0 15700

PC(1-2.5) 23 155.4 41.0 6.3 49.2 62500

PC(1-1) 23 62.8 15.7 6.3 19.6 24300

PC(1-0.5) 23 36.8 8.9 6.3 11.3 13900

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フの横軸に>CO3Ca+サイト密度を取り、縦軸に各 PC の飽和吸着量を取り整理した結果を Fig. 6 に示す。全 ての PC に関して、測定値のプロットの最小二乗法に よる線形近似曲線の切片から>CO3Ca+サイト密度が 0(sites/nm2)における PC 飽和吸着量を見積もったとこ ろ、CC 表面に吸着サイトが存在しない状態においても、 CC 表面 100nm2 あたり 0.2 個以上の PC が吸着する結 果となった。  Fig. 5 より、>CO3Ca+サイトの方が PC 吸着への寄 与が大きいことが示されており、一方の>CaOH2+サイ トは>CO3Ca+サイトに比べ PC 吸着への寄与は小さい と考えられる。しかし、Fig. 6 において>CO3Ca+サイ ト密度 0 個/nm2においても CC への PC の吸着が認め られることは、>CaOH2+サイトもある割合で PC 吸着 サイトとして機能していることを示唆している。 4. 3 有効な PC 吸着サイト密度[Adsite]の評価  前項において、>CaOH2+サイトが PC 吸着サイト として機能していることが示唆されたが、>CaOH2+サ トの表面錯体反応、反応平衡定数を地球科学コード PHREEQC に入力することで、CC 表面上に存在する カチオンサイト(すなわち、>CO3Ca+サイトおよび >CaOH2+サイト)密度を求めた。溶媒への Ca(NO3)2 仕込み濃度による CC 表面のカチオンサイト密度の変 化を Fig. 5 に示す。  >CO3Ca+サ イ ト 密 度 は、Ca(NO3)2の 添 加 量 と と も に 一 様 に 増 加 し た。 一 方、>CaOH2+サ イ ト は Ca(NO3)2無添加条件から Ca(NO3)2 30mM/l 添加条件 まで一様に減少した。その結果、両サイト合計の総カチ オンサイト密度は、Ca(NO3)2添加により減少する結果 となった。  このとき、Fig. 4 より PC 吸着量は Ca(NO3)2添加 量の増加とともに一様に増加していることから、CC 表 面上における主要な PC 吸着サイトは>CO3Ca+サイト と推定された。このため、まず>CO3Ca+サイトのみを PC 吸着サイトと仮定したときの CC 表面上の PC サ イト密度に対する PC 吸着量の変化を検討した。グラ Fig. 3  Langmuir isotherms for the adsorption of PCs from Ca(NO3)2 not added solution onto CaCO3

Fig. 4  Influence of initial Ca(NO3)2 concentration in solvent on saturated adsorption of PCs

Fig. 5  Predicted cationic site density on CC by surface complexation model for calcite

Fig. 6  Relation between >CO3Ca+ sitedensity on CaCO3 and saturated adsorbed numberof PC per unit area

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用できると考えられる。

 各 PC について決定した 、および[2]式、[3]式を 用いることで各溶媒条件における CC 表面の有効な PC 吸着サイト密度[Adsite]を求めることができる。

 Fig. 7 に[Adsite]による PC 飽和吸着量の変化を示す。 各 PC が吸着に利用可能な全ての CC 表面サイトを考 慮した場合においても PC の種類により吸着サイト密度 に対する吸着挙動は異なることがわかる。  この結果を解釈するため、次節では PC の化学構造と PC の吸着能力の関係について検討し、PC 吸着挙動の モデル化を試みた。

5. 吸着ポテンシャルからの PC 吸着挙動の考察

5. 1 PC の正味の吸着ポテンシャル9, 10)  液相中の PC の吸着は、PC と CC との相互作用以外に、 PC と溶媒である水との相互作用や水-CC 間の相互作用 も考慮しなければならない9, 10)。ここでは、PC、CC 及 び水それぞれの間の相互作用に基づく親和エネルギー を考慮して PC の正味の吸着エネルギーを考え、PC の 吸着条件について検討する。PC の吸着過程は、すでに CC に吸着していた水分子を CC 表面および隣接する水 分子から脱離させる過程と、PC と溶媒(水)間の相互作 用を断ち切って、PC-CC 表面間に相互作用を生じ吸着 させる過程とに分けられる。  ここで、PC と CC 表面の親和エネルギーを - 、 PC と溶媒(水)との親和エネルギーを - 、水分子と CC 表面の親和エネルギーを - と表す。この時正 味の吸着エネルギー は次式で与えられる。 = - − - − - [4]  ここで、 - − - を PC の吸着エネルギー 、 - を脱離エネルギー とすると以下のように表現 できる。 = − [5]  吸着平衡は正味の吸着ポテンシャル が 0 となる 条件、すなわち = の条件で与えられる。 5. 2 吸着エネルギー A  PC の CC 表面への吸着エネルギー は、「PC 構造 中のカルボキシル基」と「CC 表面上のカチオンサイト」 との相互作用に由来すると考えられる。多くの高分子に ついて、界面への吸着時にアンカーとなるセグメントあ たりの吸着エネルギーが 1∼5kT の程度であることか ら11)、いま PC 構造中のカルボキシル基と CC 表面上 イト数は>CO3Ca+に比べ 10 倍程度も多い。したがっ て、>CaOH2+サイトを PC 吸着サイトとして評価す るためには、>CO3Ca+サイトと等価な吸着力を持つ見 掛けのサイト密度を算定する必要がある。>CaOH2+ サイト密度を>CO3Ca+と等価なサイト密度に換算し、 [>CaOH2+eff]と表すこととする。  [>CaOH2+eff]は、各 PC に固有な比例係数 を設け、 [2]式で与えられる。なお、 の値が大きい PC 程、吸 着力の弱い>CaOH2+サイトを吸着サイトとして有効に 利用できることを意味する。 [> 2+ ]= ・[> 2+] [2]  [2]式 に よ り 求 め た[>CaOH2+eff]を 次 式 の 通 り >CO3Ca+サイト密度[>CO3Ca+]に加算することで、 CO3Ca+サイトに換算した CC 表面上の有効な全 PC 吸 着サイト密度[Adsite]を求めることができる。 [ ]=[> 3 +]+[> 2+ ] [3]  [2]式に示した の値は PC の種類によって異なり、 Fig. 6 における各 PC に関するプロットの線形近似直 線による縦軸切片の値がほぼ 0 となるように決定した。 各 PC について求めた を Table 3 に示す。  Table 3 より、 の値と PC 分子構造の間には相関 が見られた。すなわち PC の主鎖が長い、もしくは側鎖 が短い程多くの>CaOH2+サイトを>CO3Ca+サイト同 様の PC 吸着サイトとして利用できる結果となった。 の最も高い PC(0.5-1)を例にとると、 は 0.2 であり、 全>CaOH2+サイトの 20 %を PC 吸着サイトとして利 Table 3 Values of W PC PC(0.5-1) PC(1-2.5) PC(1-1) PC(1-0.5) PC(2-1) W 0.2 0.18 0.14 0.1 0.1

Fig. 7  Relation between effective cationic site density on CaCO3 and Saturated adsorbed number of PC per unit area

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 [10]式より、吸着平衡において有効カチオンサイト数 も PC の分子構造により定まると考えられる。  次節では、PC 飽和吸着量の測定値と CC 表面有効カ チオンサイト密度の計算値より を求め、今回検討し た PC 吸着モデルの検証を行った。 5. 5 PC1 分子の占有面積 Q の推定   を計算するためには PC1 分子が飽和吸着時に占有 している CC 表面積 を次式により求めた。 = [11]  Fig. 8 に各 PC に関して求めた有効カチオンサイト密 度[Adsite]による の変化を示す。[Adsite]の増加によ り、PC1 分子あたりの占有面積 は減少し、より密な 吸着となっていくことがわかる。 5. 6  PC1 分子あたりの有効カチオンサイト数 N の推定  PC 飽和吸着量の測定値と表面錯体モデルと式[3]か ら求めた[Adsite]を用いて式[7]により、各溶媒条件に おいて飽和吸着時の PC1 分子が占有する面積内に存在 する有効なカチオンサイト数 を算出した。 に対す る の計算結果を Fig. 9 に示す。 は検討した全ての 溶媒条件で PC 種に固有な一定値となった。 は、PC1 分子が占有する面積中に存在するカチオンサイト数であ るため、直接的に PC-CC 間の相互作用点数 を示す わけではない。しかし、 は に比例すると考えられ るため、 が溶媒条件によらず定まることは、吸着平 衡時の相互作用点数 が一定値となることを示してい る。  このことから、吸着サイト密度[Adsite]とともに PC 吸着量が増加する現象は、[Adsite]が増加することで吸 着に必要な相互作用点数 を得るために必要な CC 上 の面積が減少し、表面上でより密な吸着が可能となるた めと考察した。  提案した吸着モデルの検証のため、得られた と PC の化学構造との関係性について、Fig. 10 に PC 主鎖 長 D と の 関 係 を、Fig. 11 に PC 側 鎖 長 L と の 関係を示す。  Fig. 10 より、 は[10]式から予測される通り、PC の主鎖長 D にほぼ比例する結果となった。この結果は、 本研究において提案した、PC 吸着モデルの妥当性を示 すものと考えられる。なお、Fig. 11 より、側鎖長 L と に関しては、今回[10]式に示した単純な比例関係と はならなかったが、側鎖長の増加により脱離ポテンシャ ル が増加することで、 が増加したと解釈できる。 側鎖長が に及ぼす影響に関してはさらなる検討が必 要と考えられる。

6. まとめ

 表面の PC 吸着サイト密度を変化させた炭酸カルシウ ム(CC)への PC の吸着挙動を調べることで、CC 上の 100 の有効なカチオンサイト間の相互作用点 1 点あたりの 吸着エネルギーも同程度のk 程度と仮定すると、PC1 分子の吸着エネルギー は相互作用点数 に比例する。 = ・k [6]   は、PC1 分子が占有する CC 表面積内に存在する 有効カチオンサイト数 に比例するはずである。 は 次式で示すように、CC 表面の有効なカチオンサイト密 度[Adsite]、と PC1 分子の占有面積 Q の積で表わされる。 = ・[ ]= ・[ ] [7] ここに、 :PC1 分子による CC 占有面積(nm2/PC) :PC 飽和吸着量(PC/nm2  X は比例定数 b を用いて次式のように表わされる。 = ・ = ・・[ ] [8] ここに、b:比例定数 5. 3 脱離エネルギー B  PC の側鎖である PGM 鎖は、構造中に親水性の EO 基を多数持ち、これに起因する水との高い親和エネル ギーを持つ。このため本研究においては、PC 分子には たらく脱離エネルギー は側鎖部分と溶媒である水と の親和エネルギーに由来すると仮定した。このとき が PC 分子構造中の EO 基の総数に比例、すなわち PC 構造中の側鎖数 q および側鎖長 L に比例すると仮定す ると、単位側鎖長あたりにはたらく脱離エネルギーを αk 、単位主鎖長さあたりの側鎖数をγ とすると、 を次式により表現できる。 =γ・ ・ ・α・k [9] ここに、γ・ =  [9]式は、本検討に基づくならば脱離エネルギー B は PC 構造ごとに特定の値に定まるものであることを表わ している。 5. 4 吸着平衡条件  PC の吸着平衡において、吸着エネルギー と脱離 エネルギー の間には、 / =1 の関係が成り立つこ とから、 は PC の化学構造を用いて次式のように表 わすことができる。 = [10] 100 100 γ・ ・ ・α

(7)

謝辞:

 本研究において使用した PC は株式会社日本触媒か ら御提供頂きました。この場をお借りして謝意を表しま す。

参考文献:

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響を検討した。

 PC 吸着実験の結果より、PC1 分子が占有する CC 上 の面積 を求め、CC の表面錯体反応の計算により CC 表面上の有効な PC 吸着サイト密度[Adsite]を求めた。 得られた と[Adsite]の積より、各 Ca(NO3)2添加条 件において PC1 分子が占有する面積内の有効カチオン サイト数 の推定を行った。この結果、 は[Adsite] に依らず、PC 種に固有な値となることが判明した。 と PC の化学構造には相関が見られ、 は PC の主鎖 長に比例する結果となった。また、明確な比例関係は認 められなかったが、PC 側鎖長も 値に影響を与える 結果となった。本研究アプローチにより、ある液相条件 について を求めることで、他の条件における PC 飽 和吸着量を予測できる可能性が示唆された。

Fig. 10  Relation between backbone length of PC and number of effective cationic site on CC occupied by a PC molecule

Fig. 11  Relation between side chain length of PC and number of effective cationic site on CC occupied by a PC molecule

Fig. 9  Relation between effective cationic site density which is converted total cationic site density into >CO3Ca+ site density on CaCO3 and number of effective cationic sites on CC occupied by a PC molecule

Fig. 8  Relation between effective cationic site density which is estimated by converting total cationic site density into >CO3Ca+ site density on CaCO3 and surface area of CaCO3 occupied by an adsorbed PC molecule

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et Cosmochimica Acta, Vol. 57, pp. 3503-3518 (1993)

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Tomoyuki MORITA

*1

, Suguru GOTOH

*1

and Toyoharu NAWA

*1

*1 HOKKAIDO UNIVERSITY, Graduate School of Engineering(Kita13jo Nishi 8choume, Kita-ku,

Sapporo-shi, Hokkaido 060-8628, Japan)

ABSTRACT:

Adsorption behavior of polycarboxylate-based dispersant(hereinafter, PC)which

has different chemical structure on calcium carbonate(hereinafter, CC)surface was investigated

focusing on the cationic surface site density on CC(hereinafter, [A

d

site]). We measured the amount

of PC adsorption(hereinafter, A

d

)under the conditions that water solutions which have different

concentration of Ca(NO

3

2

was used as solvent of sample CC suspension in order to change the

[A

d

site]intentionally. On the other hand, we calculated[A

d

site]theoretically by considering the

reactions of surface complexes on CC surface under the solvent conditions used in the adsorption

experiments. By comparing measured value of the A

d

and the calculated value of[A

d

site], we

examined the effect of the value of[A

d

site]on the adsorption behavior of PC on CC surface. As a

result of the analysis, under adsorption equilibrium, the number of cationic surface sites required

for one molecule of PC to adsorb on CC surface(hereinafter, )was calculated to be constant value

for identical PC, regardless of the[A

d

site]. From this result, it was suggested that the adsorption

density of PC under saturated adsorption shall be determined so that surface area occupied by a

PC molecule is equal to the product of by[A

d

site].

KEY WORDS:

Polycarboxylate-based dispersant, Adsorption, Ca ion, PHREEQC, Surface complexation

model

THE EFFECT OF SURFACE SITE DENSITY OF PARTICLES ON

ADSORPTION BEHAVIOR OF DISPERSANT

Table 1  Surface complexation reactions of CaCO 3  and  values of the intrinsic surface stability constans  of the surface reactions
Fig. 2  Influence of time from mixing on the ratio of  adsorbed molecules from solvent on CCTable 2 Properties of PCPCPolyethyleneoxide chainn(mol)pqSide chainlengthL(nm)Backbone lengthD(nm) Weight‑average molecular weightPC(0.5‑1)967.316.92.821.015700PC(1
Fig. 5  Predicted cationic site density on CC by surface  complexation model for calcite
Fig. 7  Relation between effective cationic site density  on CaCO 3  and Saturated adsorbed number of  PC per unit area
+2

参照

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