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西川 隼人

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Academic year: 2022

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(1)

平均S波速度と木造家屋応答の関係

西川 隼人

1

・加登 文学

2

・高谷 富也

3

・宮島 昌克

4

1正会員 舞鶴工業高等専門学校(〒625-8511 京都府舞鶴市白屋234番地)

E-mail:nisikawa@g.maizuru-ct.ac.jp

2正会員 舞鶴工業高等専門学校 建設システム工学科(〒625-8511 京都府舞鶴市白屋234番地)

E-mail: kato@maizuru-ct.ac.jp

3正会員 舞鶴工業高等専門学校 建設システム工学科(〒625-8511 京都府舞鶴市白屋234番地)

E-mail: takatani@maizuru-ct.ac.jp

4正会員 金沢大学 理工研究域環境デザイン学類(〒920-1192 石川県金沢市角間町)

E-mail:miyajima@se.kanazawa-u.ac.jp

本研究では地震動による木造家屋被害の推定に表層地盤情報を活用することを目的として,表層30mの 平均S波速度(AVS30)と木造家屋応答の関係を調べた.検討は京都府舞鶴市を対象とし,市内のボーリ ング地点におけるS波速度構造の評価や等価線形化法による地盤応答解析を実施した.各対象地点におい て地盤応答解析で得られた地表波の加速度応答スペクトと木造家屋の最大応答変形角Rの関係を評価した ところ,降伏せん断力係数Cyが大きくなるほど,短周期の加速度応答スペクトルがRに影響を及ぼすこと が分かった.最後にAVS30とRの関係を調べたところ,Cy=0.1,0.3の木造家屋のRはAVS30と相関があるこ とが明らかになった.

Key Words : AVS30, seismic response of wooden house, equivalent linear method, Maizuru City

1. はじめに

近年,地震動予測において重要な役割を果たす表層地 盤構造に関する情報,例えば表層30mの平均S波速度

(AVS30)1)やボーリング柱状図のデータが全国規模で整 備されており,Web上で公開されている例えば2),3)AVS30 は木造家屋の大きな被害に影響を及ぼす周期帯の増幅ス ペクトルと相関が高い4)ことから,木造家屋被害を推定 する上で有効な指標であると考えられる.しかし,これ までの研究ではAVS30を地盤増幅特性の評価に利用して いるものの,木造家屋被害の推定に用いた例はほとんど 見られない.全国を対象に整備されたAVS30によって木 造家屋被害の推定が可能となれば,想定地震に対する広 域被害予測の上で非常に有益であると考えられる.

本研究では,表層地盤情報を広域的な木造家屋被害推 定に活用する際の基礎的な知見を得るために,京都府舞 鶴市を例に挙げ,AVS30と強震時の木造家屋応答の関係 を調べた.舞鶴市は全国の主要活断層の一つである上林 川断層帯を対象とした強震動予測において最大震度6強 の揺れが推定されている5)ことから,この地震の被害予 測を行う上でも本研究は有用であると考えられる.検討 において,まず,舞鶴市内のボーリングデータを収集,

整理して地盤応答解析に適したものを抽出し,それに基 づき対象地点のS波速度構造を求めた.

続いて,求めた速度構造からAVS30を計算するととも に,地盤応答解析によって各対象地点の地表面の地震動 を評価した.対象地点のAVS30はJ-SHISで公開されてい るが,より精度が高いと考えられるボーリングデータよ り計算したAVS30を解析に用いた.また,表層地盤によ る地震動の違いを知る必要があるので,基盤への入力地 震動は全ての対象地点で同じと仮定した.基盤と地表面 の地震波から求めた応答スペクトルの比をとることによ り,地盤の増幅スペクトルを評価した.また,構造物被 害には地震動の周期特性が大きく影響を及ぼすことから,

AVS30と増幅スペクトルの1次固有周期の関係を調べた.

最後に,地表面の加速度応答スペクトルと性能等価加 速度応答スペクトル6)によって,各対象地点の木造家屋 の最大応答変形角を求め,AVS30との相関関係を調べた.

2. 地盤データ (1) ボーリングデータ

本研究では,舞鶴市内のボーリングデータのうち,舞

(2)

鶴市が収集したもの,およびジオ・ステーション3)で公 開されているデータを用いた.ボーリングデータは,N 値50以上の岩(砂岩,泥岩など)まで到達しているもの を解析対象とした結果,今回,対象とするデータは131 個となった.

図-1に舞鶴市内のボーリング位置の分布を示す.ボー リング情報はN値や土質区分,打撃回数,深度などから 成っている.この情報に基づき,以下の経験式7)によっ てボーリング地点の深さ方向のS波速度分布を求めた.

(1)

ここで,VsはS波速度(m/s),NはN値,Hは深度(m),

Fは土質区分に関する係数であり,砂の場合は1.073,粘 性土は1,礫は1.199である.最下層の基盤のS波速度は 舞鶴市周辺の14のK-NET,KiK-net観測点の岩のS波速度 平均値(665m/s)を参考に,一律で600m/sとした.

(2) 平均S波速度

地盤特性を表す指標として地表から深さ30mまでの平 均S波速度(AVS30)が広く用いられていることから,

本研究でもAVS 30を検討に用いた.

AVS3030/

d/VS (2) ここで,dは各層の層厚(m)である.図-2にAVS30の分 布図を示す.ボーリング地点は内山,翠川8)の研究を参 考に表-1の5つのグループに分類した.分布図を見ると,

舞鶴市中央部でAVS30の小さい地点が多い傾向にある.

3. 地盤応答解析

(1) 地表面の地震動評価

2章でまとめた各ボーリング地点の地盤構造を用い,

等価線形化法に基づく地盤応答解析手法9)によって地表 面の地震動を評価した.応答解析の際に対象地点各層の 密度が必要となるので,Vsと以下の式10)によって密度ρ

(t/m3)を求めた.

(3)

また,地盤材料の非線形特性(ひずみと減衰定数,せん 断剛性比の関係)は各層の土質区分(砂,粘性土,礫)

に応じて,今津・福武11)の研究結果を用いた.

地盤応答解析の際に必要となる基盤への入力地震動と

して平成12年建設省告示第1461号12)で定められた地震波

(以降,告示波)を用いた.告示波は式(4)で表される 応答スペクトル(図-3)を目標にして,ランダム位相を

持つ模擬波に図-4に示すJenningsの包絡曲線13)を掛けて作 成した.

包絡曲線は式(5)で与えられる.なお,告示波と本研 究では基盤のS波速度が異なるので,インピーダンス比 による増幅度の補正係数 (ρ1V1)/(ρ2V2)を告示波のスペ クトル(告示スペクトル)に乗じた.ここでρ1とV1は告 示波における基盤での密度とS波速度,ρ2V2は本研究 で定義した基盤での密度とS波速度であり,V1,V2はそ れぞれ400m/s,600m/s,ρ1ρ2V1V2を式(3)に代入して 得られる値,1.82t/m3と1.92 t/m3である.





T T

T T T T

Sa

64 . 512 0

64 . 0 16 . 0 800

16 . 0 )

3000 320 ( )

( (4)

-1 ボーリング地点の分布

図-2 AVS30分布

表-1 AVS30による地盤分類

分類 AVS30(m/s) データ数

C1 460<AVS30≦760 13

C2 360<AVS30≦460 30

D1 250<AVS30≦360 46

D2 180<AVS30≦250 30

E AVS30≦180 12

F H N

VS 62.48 0.2180.228

4 . 1 1000 / 67 .

0 

VS

舞鶴市

綾部市

福井県 宮津市

福知山市

久田美

成生

(3)





 

) (

)) ( exp(

) (

1

) (

)) /(

) ((

) 0

( 0

) (

2

d c c

c b

b a a

b a

a

t t t t

t B

t t t

t t t t

t t t

t t t

E

(5)

式(4)のSa(T)は減衰定数5%の加速度応答スペクトル

(cm/s2),Tは固有周期(秒)である.また,式(5)のE(t) は包絡曲線,tは時間(秒)である.tbは包絡曲線の主要 動部までの時刻,tc-tbは主要動継続時間,tdは地震波の継 続時間,Bはln(0.1)/(tdtc)である.tc-taとtd-tcは気象庁 マグニチュードMJMAと震源距離Xをパラメータとする経 験式14)によって求めた.

(6)

本研究では,主要動の継続時間(tc-tb)は(tb-ta)の3倍とし,

MJMA=7, X=10kmとした.

図-5に図-3の告示スペクトルをターゲットに作成した 模擬地震波を示す.最大加速度は300cm/s2を超える大き な値となっている.また,図-3の模擬波によるスペクト ルを見ると,ターゲットである告示スペクトルとよく対 応していることが分かる.

図-5の告示波を基盤への入力地震動として用い等価線 形化法によって求めた地表面地震波の加速度応答スペク

トルの一例を図-6に示す.例とした挙げた地点の位置は 図-2のとおりである.入力地震動は同じであるが,

AVS30によって地表面の応答スペクトルが大きく異なる

ことが分かる.

(2) 増幅スペクトル

各対象地点について基盤から地表にかけて,どの周期 がどれほど増幅したかを見るために,基盤と地表面の地 震波から計算した加速度応答スペクトルの比(以降,増 幅スペクトルG(T))を求めた.増幅スペクトルの計算の 際には入力地震波の大きさによる地盤応答の違いを見る ために,告示波の振幅を1/1000に調整した地震波を基盤 への入力として応答解析を行った場合についても計算を 行った.

図-7に図-6で示した観測点を対象に求めた増幅スペク トルを示す.地盤分類EとD2の場合は振幅1倍の増幅ス ペクトルが1/1000倍のスペクトルに比べて全体的に長周 期側にシフトしており,大きな入力に起因する地盤の非 線形化の影響が現れているものと考えられる.1次固有 周期を見ると地盤分類Eは0.5から1.78秒,D2は0.2から 0.44秒に伸びている.一方,地盤分類C2の増幅スペクト ルは振幅による違いは小さく,1次固有周期もほとんど 変わらない.

このように図-6,7で例として示した地点ではAVS30に よる地盤分類と1次固有周期に対応が見られることが分 -3 告示スペクトル 図-4 包絡曲線 -5 告示波(模擬地震波)

図-6 基盤(告示スペクトル)と地表の加速度応答スペクトル

0 200 400 600 800 1000

0.01 0.1 1 10

告示スペクトル 模擬波

加速(cm/s2)

固有周期(s)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 15 30 45 60

時間(s)

E(t)

tb tc

-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400

0 5 10 15 20

時間(s) 加速(cm/s2)

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類E AVS30=176m/s 舞鶴市浜 地表

基盤(告示波)

加速(cm/s2)

固有周期(s)

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類D2 AVS30=314m/s 舞鶴市久田美 地表

基盤(告示波)

加速(cm/s2)

固有周期(s)

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類C2 AVS30=534m/s 舞鶴市成生 地表

基盤(告示波)

固有周期(s) 加速(cm/s2)

071 . 1 log 161 . 0 212

. 0 ) (

log10 tctaMJMA10X 312 . 0 log 319 . 0 040

. 0 ) (

log10 tdtcMJMA10X

(4)

かる.これらの地点を含む全対象地点についてAVS30と 1次固有周期の対応をまとめると図-8のようになった.

同図を見ると,AVS30=400m/s付近を境に1次固有周期と の対応が変化しており,AVS30が400m/sよりも小さいと,

AVS30と1次固有周期の対応にややばらつきが見られる.

しかし,全体を見ればAVS30と1次固有周期に相関が見 られ,AVS30が小さいほど増幅スペクトルの1次固有周 期が構造物被害と相関が高いとされる周期1~2秒15)に近 づくことが分かる.

次にAVS30と増幅スペクトルの周期1~2秒の増幅度平 均値の対応を見ると,図-9のようにAVS30が小さくなる につれて増幅度が大きくなっており,AVS30が被害に大 きな影響を及ぼす周期の増幅スペクトルと相関が高いこ とが分かる.

4. 木造家屋応答の評価とAVS30との対応

(1) 木造家屋の最大応答変形角の評価

木造家屋の最大応答変形角Rは,更谷ら6)やHayashi

et.al16)が提案している性能等価加速度応答スペクトルに

よって評価した.対象とする木造家屋は2階建てを想定 して質量の等しい1次固有モードが直線である場合を仮 定し,図-10に示す等価高さHe,等価質量Meの1質点系に 縮約した6).性能等価応答スペクトルとは建築物の有す る耐震性能を等価な応答スペクトルに換算したものであ

り,次の式で与えられる.

h e e

ae πH R T F

S (2 / )2/ (7)

ここでSaeは性能等価加速度応答スペクトル(cm/s2),He は2階建て木造家屋を1質点系に縮約した際の等価高さ

(m),Rは最大応答変形角,Teは等価周期(秒),Fhは 加速度応答スペクトルの逓減率である.木造家屋モデル の復元力特性は図-10に示すバイリニア型であり,降伏 時の応答変形角Ry(=1/100)に対して降伏せん断力は MegCyで与えられる.TeはRの値に応じて,以下で与えら れる.

Te2 RHe/Cyg (R>Ry

R R

R H C g

Te 2 (19( / y)0.7)/10  y e/ y (R≤Ry)

(8)

μは等価質量と質量の比,Cyは降伏せん断力係数である.

また,Fhと減衰定数hは以下の式で与えられる.

(9) (10)

μとHeは更谷らの研究6)に基づき,それぞれ0.9と4.5mとし た.Cyは0.1,0.3,0.5とし,それぞれのCyに対するSaeを 計算した.なお,本研究では地震被害予測の上で耐力の

図-7 増幅スペクトル

-8 AVS30と1次固有周期 -9 AVS30と増幅度平均値の対応 -10 木造家屋モデルと復元力特性16)

(固有周期T=1~2秒)

0.1 1 10

0.01 0.1 1 10

地盤分類E AVS30=176m/s 舞鶴市浜 振幅1/1000倍

振幅1倍

増幅

固有周期(s)

0.1 1 10

0.01 0.1 1 10

地盤分類D2 AVS30=314m/s 舞鶴市久田美 振幅1/1000倍

振幅1倍

増幅

固有周期(s)

0.1 1 10

0.01 0.1 1 10

地盤分類C2 AVS30=534m/s 舞鶴市成生 振幅1/1000倍

振幅1倍

増幅

固有周期(s)

0 0.5 1 1.5 2 2.5

0 100 200 300 400 500 600

AVS30(m/s)

1次固有周期(s)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

0 100 200 300 400 500 600

AVS30(m/s)

増幅

)) 1

( 1 2 0 05

0. . / R/Ry

h  (  ) 10 1 /(

5 .

1 h

Fh  

(5)

低い木造家屋の応答を調べることがより重要と考え,Cy の値を低く設定した.

図-11に図-6の地表の加速度応答スペクトルSa(T)とSae の対応を示す.Sa(T)とSaeの交点がその地震波に対する最 大応答変形角Rとなる.SaeはCy=0.1,0.3,0.5,R=1/30に 対する値である.R=1/30は現代的な構法の建物の倒壊基 準とされる応答変形角である17).Saeを見るとCyが大きく なるほど,値が大きくなるとともに短周期側にシフトし ている.また,Cy=0.1の場合のRはいずれも建物の倒壊 基準のR(1/30)を上回っている.図-11を比較すると

Cy=0.1の場合はRに大きな差はないが,Cy=0.3では固有周

期1~2秒の加速度が大きい地盤分類EのRが他よりも明 らかに大きい.Cy=0.5の場合はSaeがさらに短周期側に移 動するので,地盤分類D2のRが最も大きくなっており,

CyによってRに影響を及ぼすSa(T)の固有周期が変化して いることが分かる.このように,CyによってRに影響を 及ぼす応答スペクトルの周期特性が変化することから,

Rに影響する増幅スペクトルの特性も異なるものと考え られる.

そこでCyごとに全対象地点の増幅スペクトルの1次固 有周期とRの対応を見ると(図-12),Cy=0.1の場合,1次 固有周期が長くなるほどRも大きくなっている.Cy=0.3 の場合も全体的にCy=0.1と同じ傾向であるが,周期1~2 秒でRが小さいものも見られる.Cy=0.5の場合は周期0.9 秒でRが最も大きく,それより周期が長いとRが小さく なっている.ちなみにCy=0.1の場合,ほとんどのRが建 物の倒壊基準のR(1/30)以上となっているが,Cy=0.3で はRが1/30以上のものは1/3程度,Cy=0.5では1割以下であ

った.以上からCyが大きくなるほどRに影響を及ぼす増 幅スペクトルの1次固有周期が短くなることが分かった.

(2) AVS30と最大応答変形角の関係

続いて,AVS30と木造家屋の最大応答変形角Rの関係 を調べた.図-13にAVS30とRの対応と建物の倒壊基準と したR(1/30)を示す.同図にはAVS30Rの相関を調べ るために求めた式(11)による予測値を合わせて示した.

2 10

1

10 log 30

log Rc AVSc (11) 図-13を見るとCy=0.1の場合,AVS30が200m/s以下ではR の変化が緩やかであるが,200m/sよりも小さくなるとR が急激に大きくなっている.Cy=0.3の場合はAVS30が 400m/sよりも小さくなるとRが大きくなり,200m/s未満 では0.1を超えるものも見られる.Cy=0.5の場合,Cy=0.3 と同様にAVS30=400m/sを境にAVS30とRの対応が異なって いる.ただし,AVS30が400m/sよりも小さい場合の状況 は異なり,Rのばらつきが大きく,AVS30とRにほとんど 相関が見られない.

図-13のCyによるAVS30Rの関係の違いを調べるため に,図-14に増幅スペクトルの1次固有周期とR,AVS30の 逆数の対応を示した.図-14から明らかなように1/AVS30 とCy=0.1,0.3のRは1次固有周期が長くなるほど大きくな っており,同じ傾向を示している.一方,Cy=0.5の場合 は1次固有周期が0.9秒を境にRが小さくなっており,

1/AVS30とは逆の傾向になっていることから,全体的に

見てAVS30とRの相関が小さくなったものと考えられる.

Cy=0.5Rが1次固有周期が0.9秒を境に小さくなった要因

図-11 加速度応答スペクトルSa(T)と性能等価加速度応答スペクトルSae -12 1次固有周期とRの対応

-13 AVS30とRの関係 -14 1次固有周期とR,

1/AVS30の対応

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類E AVS30=176m/s 舞鶴市浜 地表Sa(T)

Sae(Cy=0.1) Sae(Cy=0.3) Sae(Cy=0.5) R=1/30

R=0.2 0.050.1

0.02 0.01 0.005 加速(cm/s2)

固有周期(s)

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類D2 AVS30=314m/s 舞鶴市久田美 地表Sa(T)

Sae(Cy=0.1) Sae(Cy=0.3) Sae(Cy=0.5) R=1/30

R=0.2 0.050.1

0.02 0.01 0.005 加速(cm/s2)

固有周期(s)

0 500 1000 1500 2000

0.01 0.1 1 10

地盤分類C2 AVS30=534m/s 舞鶴市成生 地表Sa(T)

Sae(Cy=0.1) Sae(Cy=0.3) Sae(Cy=0.5) R=1/30

加速(cm/s2)

固有周期(s) R=0.2 0.050.1

0.02 0.01 0.005

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0.01 0.1 1 10

Cy=0.1 Cy=0.3 Cy=0.5 R=1/30

R

1次固有周期(s)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 100 200 300 400 500 600

相関係数=0.706 標準偏差=0.044 計算値

式(11) (c1=-0.297,c2=-0.683) R=1/30

AVS30(m/s)

R

Cy=0.1

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 100 200 300 400 500 600

相関係数=0.693 標準偏差=0.137 計算値

式(11) (c1=-0.888,c2=0.613) R=1/30

AVS30(m/s)

R

Cy=0.3

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

0 100 200 300 400 500 600

相関係数=0.323 標準偏差=0.174 計算値

式(11) (c1=-0.400,c2=-0.738) R=1/30

AVS30(m/s)

R

Cy=0.5

0 0.002 0.004 0.006 0.008

0 0.03 0.06 0.09 0.12

0.01 0.1 1 10

1/AVS30 Cy=0.1 Cy=0.3 Cy=0.5

1/AVS30(s/m) R

1次固有周期(s)

(6)

として次のことが考えられる.本研究で対象とした AVS30の小さい地盤(1次固有周期の長い)では強震時 の地盤材料の非線形化による減衰の影響のため,Cy=0.5 のRが大きくなる周期0.9秒の地震動がそれほど増幅され なかった.その結果,AVS30の小さい地盤を対象とした 場合のCy=0.5Rは小さくなり,全体的に見てAVS30Cy=0.5のRの相関が小さくなったものと推測される.

以上の検討結果より,Cy=0.1,0.3の場合,AVS30Rに 相関が見られることから,これらの耐力を有する木造家 屋の被害予測においてAVS30が有効な指標になると期待 される.

5. まとめ

本研究では,表層地盤情報を広域的な木造家屋被害の 推定に活用する際の基礎的な知見を得るために,Web上 で容易に情報を入手できるAVS30と強震時の木造家屋応 答の関係を京都府舞鶴市を対象に調べた.

検討において,まず,舞鶴市内のボーリングデータを 収集して解析に適したものを抽出し,それに基づいて対 象地点のS波速度構造を求め,AVS30を評価した.次に,

地盤応答解析によって各対象地点の地表面の地震動を評 価するとともに,基盤波と地表波の応答スペクトルの比

(増幅スペクトル)を求め,AVS30と増幅スペクトルの 1次固有周期の対応を調べた.その結果,AVS30が小さ くなるほど1次固有周期が大きくなることが明らかにな った.

続いて,全対象地点について地表面の加速度応答スペ クトルSa(T)と性能等価加速度応答スペクトルSaeから木造 家屋モデルの最大応答変形角Rを評価した.その結果,

降伏せん断力係数Cyが大きくなるほど,Saeは短周期側 にシフトし,Sa(T)の短周期成分がRに影響を及ぼすこと が明らかになった.また,Cyが大きくなるほど,Rが最 大となる増幅スペクトルの1次固有周期が短かくなるこ とが明らかになった.

最後に,全地点のAVS30とRの相関関係を評価し,

AVS30が木造家屋の被害推定に利用できるかどうかにつ

いて調べた.解析の結果,Cy=0.1,0.3の場合,AVS30とR に相関が見られたが,Cy=0.5の場合は両者の相関が低い ことが明らかになった.これはCy=0.5の場合,Rが最大 となる増幅スペクトルの1次固有周期が短周期側にシフ トすることに起因する.

J-SHISのホームページでは250mメッシュ単位でAVS30

の情報を得ることができるが,空間分解能が十分でない ため,本研究の成果を適用する際にはジオ・ステーショ ンなどで公開されているボーリングデータから計算した

AVS30を用いることが望ましい.また,本研究では舞鶴

市のみを検討対象としたが,今後は他の地域のボーリン グデータを用いて解析を行うとともに,告示波以外の地 震波を入力地震動として用いた場合についても検討を行 う予定である.

謝辞:本研究では舞鶴市から提供して頂いたボーリング データ,およびジオ・ステーションで公開されている地 盤データを利用させて頂きました.また,防災科学技術 研究所のK-NET,KiK-net観測点のPS検層データを用いま した.ここに記してお礼申し上げます.

参考文献

1) 翠川三郎,松岡昌志,作川孝一:1987年千葉県東方沖地

震の最大加速度・最大速度にみられる地盤特性の評価,

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(2012. 11. 16 受付,2013. 2. 9修正,2013. 2. 23受理)

RELATIONSHIP BETWEEN AVERAGE SHEAR WAVE VELOCITY AND SEISMIC RESPONSE OF WOODEN HOUSE

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参照

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