The /aPanese Journal o リ「Psy‘honomic Science
]984
,
Vol.
3,
No.
1,
41−
5ユ表 面
の
見
え
の
明
る さ と
照
明
知
覚
古
崎
愛
子
東京女 子 大 学 短期大 学部
Perceived
Surface
−
lightness
andPerceived
Illumination
Aiko
KoZA
.
KIToleyo叩 0嬲 σガS Christian ひitiversめ
・
,
770舟y‘,In the present paper several theories which might
be
applicab !e to the proble 皿 of light−
ness constancy were briefly reviewed.
First,
it was argued whether perceived lightness couldbe
adequately explained by the luminance ratio principle which suggests that the sti皿 ulus correlate of perceived lightness of an achromatic surface is tobe
found
in its ratios to the surroundingin
Iuminance.
It
wasdiscussed
that perceivedlightness
could notbe conlpletely explained
by
luminance
ratio at the retjロal ]evel.
In
the second place,
theprol)lem of 正ightness constancy was discussed from the view
−
point of the relationship1
コet−
ween perceived Iightness and perceived illu皿 ination
.
Then, it was suggested that perceived
lightness is intirnately rerat
,
ed to perceivedillu
皿ination
,
but
the causal relationsbetween
these perceptual properties which are suggested b5
・
the takjng・
into−
account theory could notbe
found.
And,
after all,
these percept−
percept re !ationship has important implication forperceptual theQry of lightness
.
Key words :
lightness
constancy,
achro 皿 atic color constancy,
lightness−
illurllination relation・
ship
,
lightness−
」]].
umination invariant relation,
taking−
into・
account theory,
luminance ratio.
日常 経 験か ら 明 らか な よ うに
,
外 界の対 象は夫々の反 剔’
率に応じてあるもの は白く, 他の 対 象は灰色に,
あ る い は黒に見える.
ま た, 照 明強 度は時 間の推 移に よ り, ある い は場 所の移 動に伴なっ て様々なレベ ル に 変 化す る,一
つ の部 屋でも 窓 際の照明強 度は強 く,
窓か ら離れ た場 所の照 明は弱い し, 時には物が窓か らの光を遮り陰 影 を作り出 す.
部屋の四方の壁が同一
反 射率で ある場 合 を想定し た時,
網 膜に与 え られ る 近 刺 激 (proximal sti−
mulUS )とし て の輝 度(LUIIlinance)は太陽光 線が入っ て くる窓と壁の位 置 関 係に規 定さ れ る照 度 (llluminance) に 依存し,
か な りの範 囲で変 化することに な る.
し か し ながら,
表 面の明るさ (白 さ)の/
FEi
.
常 性 (lightness or whiteness constancy )とし て知ら れ て い る よ うに,
知 覚匿界で は輝 度の か か る変 化ほ どに は壁の明るさ (白さ の程度)は変っ て見えず,
ほぼ一
定の 明る さに知 覚さ れ る.
よ り厳 密に現 象を記述 す る な ら ぽ,
窓 に 近 い 壁 は “ 明るい 白” , 物影の 壁は “ 暗い白” あるいは ’影 の 中の 白ll とい っ た知 覚 がな される.
つ ま り,
照 度の変 化に よ り生 じ た輝 度の変 化は対 象の表 面の見えの明るさに は殆 ん ど影 響を及ぼ さず,
照 明 印 象の変 化 として知覚さ れる 場 合が多い.
か か る知 覚 経 験の記 述か ら 明 らか なこ と は,
われわれは対 象の表面の 明るさ を 知覚す る と共に,
その表 面を照ら して い る照明 を も知覚し てい る とい う事 実である.
ところ で,
近刺激 と し ての輝 度 (L
)は対 象の爽 而の物 理 的 特 性である反 射 率 (R)とその表 而 を 照 らし てい る照 明の強さ, つ ま り照度 (1
)の変 数に よ り規 定されるもの の (L= R×1),
R その もの,
1 その ものを特 定 する も のは近 刺 激 とし て は何 も与 えられるこ とは ない.
この事 実こそ表 面 色 (9.
urface color)の明る さ知 覚の 問題の 出 発 点で あ り, 表 面の 明るさの stimulus correlates が 問わ れ る ゆ え んであ る.
本稿で は 表面の 明る さの stimulus correlates の問 題 をめぐっ て近年いかなる論 議 が なされてい る か,
その 動 向を展 望し, か つ 問 題 点を明確に し たい.
42 基 礎 心 理 学 研 究 第 3巻 第 1号 〔1〕 表面の明る さと輝 度 比 (1) ratio principle Helmholtz や Hering に代 表される古 典 的 学 説とゲ シ タル ト学 説の いわ ば橋 渡し酌 役割を果し たのは
Gelb
の一
連の研 究であっ た.
特にGelb
効 果と し て知ら れ て い る事実は,
視 野の分節構 造 及び視 野内の諸領域 問の相 互 関 係の重 要 性を明ら かに し,
その後の研 究に多大な影 響を 及ぼしたこ とは周知の ことである.
対 象の表 面の 明 る さ知覚を規 定す る 重要な要囚 とし て, 視 野の分 節 状 態 な ど その全体 的 構 造 特 性が注 目さ れ るに及ん で, 明る さ の恒常性の問題は 照 明印 象と表 面の明 る さ との関 係より も,
当該表 面が視野の他の表面と どの よ う な空 間 関 係に ある か, 特に隣接せ る表 面 問の明る さの相互関 係へ と関 心 は 移行し てい っ た (こ の間の歴 史 的変遷につ い て は筆 者は既に概観し て い る の で,
本稿で は詳述は避ける (占 崎,1969
)).
当 該 表 面の輝 度と隣接せ る 表 面の輝度の関係,
つ ま り 輝 度勾配 (輝度比)が表而の 見えの 明る さの stimulus c。rrelates である とい う仮説 を提唱 し たの は Wallach (1948)であっ た.Wanach
はGelb
の対 象の明るさ と 視 空 間の 構造 的 関 係に関 する実 験を再 吟 昧し,
更に展 開 さ せ るこ とに より,Gelb
や Koffka の理 論 を 総 括 する が, 彼 等とは異なっ た理 論,
“ 輝 度勾配仮説 「1 を提示し た.
こ の仮 説は,
表 面 色が現わ れ る条 件は強 度を異にす る二 つ 以 上の輝 度 が 網 膜上に相接し て同時に与え ら れ る 場 合 で あるこ と,
ま た その際知覚さ れ る表 面色の 明る さ は,
当該 表 面の輝度のみ に よっ て規定さ れ るの では な く,
隣接 表 面の輝 度との 相 対 的 関 係,
つ ま り,
輝 度比 (luminance
ratio)に よ っ て規 定 される こ と を 示 唆 し た実 験 結 果を根拠に し てい る.
今, 白い テー
ブル 上に置 か れた灰 色の 紙を薄 暗い室内で見る時と,
1000倍の強 度 の 太陽 光 線が入っ て い る明る い室内で見る場合を例 と し て記 述 する ならば,
テー
ブル 上の灰 色の紙は物理的には 薄 暮時の1000
倍の反 射 光 量 を 目に 送り込む わけで,
輝 度には著しい 変 化が生じ る,
しか し, 照 明が局 所 的でな く広 く視 野 全 体にわ たっ ている条件で は, 輝 度の変 化は 灰色の紙の みな らず,
その背 景と なっ てい る 白い テー
ブ ル にも 生 ずる,
つ ま り, 両対 象の輝 度 比は,
照 度の変 化 とは独 立に常に等しい.
こ の輝度比の不変性の法 則に よ り明る さの恒 常 性は説 明できる とい うの が,
“ 輝 度 勾 配 仮 説Jt であ る,
強 度 を 異にする 二種 以 上の 輝 度 が網 膜に入 力された時 生 ずる相互作用 は
,
ゲ シタル ト的 観 点に立つ な らば,
視 覚 系の どの レ ベ ル で起る に せ よ,
刺激の特定のパ ター
ン に依 存し て生 ずる視 覚 系の過 程がそ れ 自身の力 学 的 法 則 に従っ て体 制 化され,
その所 産 として特 定の表 面の現 象 的 明るさ が成立する と考え ら れ よ う.
そ うであ る と す れ ば, 表面色の見えの 明 る さ の一
般 的 stimulus corre−
lates
とし て,
様々な刺激パ ター
ン に共 通 する 不変 項で ある 「輝 度比 」を 考える ことは論理的に は整 合 憔があろ う.
し か し,
いか な る 理論であれ,
現象的事実に十 分 耐え う る もので な け れ ば な ら ない ことは云うまで もない.
こ の点におい て 「輝 度 勾 配 仮 説」に問 題 が あること は諸研 究に よ りこれまで に指 摘されて い る (Hochberg & Beck,
1954;古 崎,
1959;Kozaki,
1963;古 崎,
1970;Jameson
&Hurvich,1961,1964
).
輝 度 比の仮 説に関 する その 後の問 題点と して指摘し て おきたい こ と は,この仮説はその本質におい てはKoffka
(1932>の ゲシタル ト的 体 制 論に基づ く 理論と同一
視点 に立つ もの である と理解すべ き と筆者は 考え る が,
こ の 点は しばしば 見 落さ れ てきて お り,
これ が ひい ては, こ の仮 説が Cornsweet (1970)に代 表さ れ る よ うな網 膜に お ける側 抑 制に よ る生 理学 説 とし て位 置 づ け ら れ る 原 因 と なっ て いるこ とである,
確か に神 経 生 理 学的 知 見は, 視 覚系内の側 抑 制に よっ て明る さの 同時 対 比 現 象を基 本 的に説 明できる 可能僥を 示 唆してい る (1−lartline
&Ratliff
,1957
;Rath
任 &Hartline,1959
).
,一
方,
側抑制の メカニ ズムは相 接 する 二領 域 問の contour enhancement を 説 明はするが,
い わゆる明るさの同 時 対 比は説 明で きない とす る反 証も ある (DeValois & Pease,
1971).
隣 接す る 異 なっ た輝 度 間に何ん らか の神 経 生 理 学 的 相 互 作 用 が 生じ るこ とは 確か であろ う し,
輝 度 比,
ない し は 輝 度 差 その もの に反 応 するメカ a ズ ム を想定 するこ と も 町能か もし れ な い(
Semmelroth ,1970
;Marimont ,1962
).
また,
Hering
の古 典 的 生理学 説にた ち か え る までも な く, 瞳孔 収 縮 作 用,
順応,
対 比 等の生 理 的メカニ ズムが 明る さの恒 常 性 を規 定 する要囚の一
つ であ るこ とは云 うまで もない.
し か し “ 輝度勾配 仮説fl が提唱さ れ るに至っ た歴 史 的背 景,
特に Koffka の理論との関 連 性を考え る ならば,
Wallach
の理論を 生 理学説と して 位 置づけることは 問 題であろ う.
な か んつ く Wallach 自身,
隣 接 する領 域 の各 輝 度に よっ て生 ず る網 膜 レ ベ ル で の“
ratio re−
sponse mechanism
”
を なんら特 定して いない (Wal’
1ach
,1948
).
た だ,
相対的 輝 度 比と絶 対 輝 度 とは夫々異 なっ た知覚効果をもつ こと,
つ ま り,
前 者は丶
丶 白一
黒’
y の 明る さの印象を規定し,
後 者は ’ 輝 い ている一
暗い” の輝 きの印 象を規 定 する可 能 性 を 示 唆 する にと ど めてい る (WTallach,1963
).
古 崎 ;表 面の見えの明るさ と照 明 知覚 43 1963年の論 文に お げる
Wallach
の こ の記 述が,
表 面 色の明るさの知 覚をめ ぐる重 要な 問題の一
つ である,
明 る さの知 覚 変 数の多 次 元 性に関 する 近年の論議と,
いみ じ く も一
致し て い る こ と に留意すべ きで あろ う,
表 面 色 の 明 る さの見 え方は黒一
白の次 元のみ で は記述で きず,
多次ノ己的現 象記述を必 要 とする こ と は Hering (1874 ).
Katz (1935)に よ り指摘 さ れてい た もの の,
パ ラ メ ト リ ヅ クな研 究は近 年よ うや く着 手さ れ.
るに至 っ た.
諸 研 究 間に一
致 がみ ら れ る第二 の 次 元は,
例 え ば,
“ 白” と し て 知 覚さ れ るエ つ の表 面も,一
方は “ 明る く輝い て強い 印 象の白” であり, 他方は “ 暗 く弱い 印象の 白t
/ と し て 見 え る と記 述さ れ る 場 合の“
明るく輝やい て い る印 象一
暗 い 印 象” の次 元で あ る (Beck,
1974;Evans,
1964,
1974;Flock,
1974; Heggelund,1974
a,b
;Kozaki
,1963
;古 崎
,
1979;Lie,
1969,1971a,
b
;Rock.
1977),
更に,
表面 色が 成 立 する刺 激 喜 態では照 明 印 象が同時に生ずる (照 明印 象と上 記の第2の知覚変数との関 係は
,
な お未解 決の 問 題であり論 点の一
つ になっ ている(占 崎,1979
)).
そ れ ゆ えに,
表 面 色の 明る さ, 特に照 娟強度が変化する 条件 下の 明るさ知 覚の stimulus correlates を論 じ る 場 合,
後述す る ように照 明知 覚の問題を含め て考え る 必 要がある.
こ の 点に お い て も “ 輝 度 勾 配 仮 説” は不 十 分 である と 云 わ ざる を得ない.
とこ ろで,
表 面色の 明る さ知覚の聞題に限 らず,
知覚 に対 応す る刺 激を再 定 義 する ことが知覚理論の構築に と っ ては基本的な閥題で ある (Gibson,
1950、
1966,
1979;Johanson,1974
;Ilochberg,
1974).
刺激の高次の変数(higher order stimulus )が注 日さ れる }こ至っ た ゆ え ん で あ る
.Wallach
の輝 度 比の仮 説はその意 味におい て,
一
つ の刺激変数 (照 度〉が 変 化して も, な お不変性 (in−
variance )を 保つ よ り高次の刺 激 変 数の存 在を 示唆した 点におい て意義はあっ た と思われる.
し か しな が ら,
そ の後諸 研 究から 明 らか に された事実はWallach
流の 単 純な高次の刺 激 変 数に基づ く理論の不十 分 さ で あ る (Epstein, 1977;Rock,
1983).
表面 色の明る さ知 覚に おい て こ の文 脈で近 年,
論議の中心 と なっ た の が 「CO・
plana rato principle」で ある
.
(2) ceplana rato principle
これは時には
‘
‘
皿 odified ratio principle”
と もロ乎ばれる よ うに
,
上記のWa11ach
の “輝 度 勾 配仮説“ を基
本 的に は認め る もの の, 現象 的事実に よ り適 合 する視 点 を導入し発展させた 理 論である
.
その 修正の ポ イ ン ト はluminance
ratio を retinal ratio と phenomenalratio に区 別し
,
表 面色の現象 的 明るさ を規 定 する の は,
retinal ratio で は な く phenomenal ratio である とする 点 で あ る
.
こ の仮説 が 提II昌 さ れるに至 っ た背景に は 2つ の事実 が ある
.
第 1は, 既に述べ た “ 輝 度 勾 配 仮 説” の もつ 聞 題 点.
第 2は,
明る さ知 覚に及 ぼす空 間 的 要 囚に対 する関 心 である.
前者につい て は既に触れ たの’
e,
こ こ で は後 者につ い て簡 単に概 観し て お く.
現 象的明るさ と空 間 的 要 因 (こ こで問 題 と なるのは,
当該表 面の視 空 間 内で の 三次 元 的 位 置の要因 で あ る〉の 関 係を 閥 題に して い る研 究は,
大 別する と 次の 3種に分 類で ぎる.
(1
)当 該 表 面が光 源}こ対し て どの よ うな方向 に位 置づ け られ て知覚されて い る か,
つ まり, 照明 と当 該 表面の現 象 的 位 置 関係 が 明るさ知 覚に及 ぼす 効 果を検 討して い る もの (Hochberg & Beck,
1954; Epstein,
1961
;Beck,
1965;Flock
&Freedberk
, 1970)、
(2)明るさの同時 対 比に おけ る TF (検 査 領 域 )と IF (誘 導 領 域 )の三次 元的位置関 係 を 剰 激 変 数 とするこ に よ り, 同
時 対 比の視 覚 系での 生起レ ベ ル の 検 討と関連し て いるも
の (Levelt
,
1965;Gibbs &Lawson ,1974
).
(3)明るさの 同時 対 比に お け る TF と
IF
の三次元的 位 聞 (奥 行 ) 関 係に関 する条 件分 析 的 研 究(Goge1
&Mershon ,1969
;Lie,1969
,
1971a,
b}Mershon & Gogel,
1970;Mer−
shon,
1972).
こ の うち (1
)の グルー
プの研 究は,
明る さの恒常 性に お ける い わ ゆ る “経 験 論 的,
認 知 論 的 立 場 ” の仮 説の検討との 関 連で 空 問 的 要 因 を 問 題に して い る の で, 次節で言 及 するこ とに し, ここ では (2
)と (3)に つ い て概観し て お く.
同時 対 比 やマ ッハ ・
パ ン ドの よ う な対比現 象は上 述の }lartline や Ratliff 等のネ11
経 生 理学的 研 究に よ り,
網 膜の ganglion ce1 】 の受容 野の特 性に よっ て説 明で きる ので はないか とこれまで考えられてきた,
し か し,
近 年 の電気生理学的研究は,
これ らの現 象の基 礎 と な る 過 程 が網膜レ ベ ルで は な く外 側 膝 状 体レ ベ ル で生 起してい る 可能性を 示唆し た (Maffei
& Fiorentini,
1972).
か か る電 気生 理学 的 研究か ら提 起された 問 題を 心 理物理学的 ア ブ卩一
チ に よ り検討し たのが,
上 記 (2)の グルー
プの 研 究である.
これ等の研 究はいずれも stereoscopic vi・
sion の下で, 同一
平面 上のTF
と IF (ある い は背 景 ) が 三次兀 的に見え る様に提示 し,
TF と IF の奥 行 的 分 離が TF の明る さ に効 果をもつ か否かを 調べてい る.
そ の結果は TF とIF の奥 行 的分離は対比 効果に影響を与 え ない こ と,
つ まりTF と IF が2
次元的に同平 面に提 示 さ れ た条 件の TF の 現 象 的 明るさ と有 意 差が ない こと を 示し た.
一
方,
(3)の諸 研 究は,
従 来,
同時対 比に おける空 間 的 要 囚に関し て は,
TF と IF の 2次 元 上での 隣接,
分44
基 礎 心 理 学 研 究 第 3巻 第1
号↑
、 ,
i
図
1Gogel
& Mershon (1969
)の実 験 条 件離の要 因のみが 検討さ れ (
Fry
& Alperl1,
1953
;Leibo−
witz et al.1953
;Stewart,
1959;古 崎,
1958;Dunn
& Leibowitz,1961
;Stevens
&Diamond ,1965
),
3次 元 的 分 離
,
奥行の要 因が未 検 討である点に着 目し,
こ の 要 因が対 比 効 果に及ぼ す影響を調べ て い る.Gogel
とMershon
等の研 究は,
いずれ もいわ ゆる Gelb タ イプ の 刺 激布置 を用い (図1参 照 ),TF
とし て の A1 と IF と して のA2
との間の奥 行を変 化さ せ た.
その結 果,
両 眼 視におい て TF とIF
の見えの奥行が大き くなる につ れて,
TF に及 ぼす IF の影響は 弱 く なっ た.
以 上のよ うに TF の 明 る さに対し TF とIF (あるい は背 景 )の 奥 行 変 数 が 規 定因 と なる か否か につ い て は,
諸研 究 間に必ずしも一
致はみ ら れ ない.Gilchrist
は こ の不一
致が何に由 来 する か を明ら かにする ため の一
連のA
C
TA職OUSW BB WB
τARG 蛋7 MED8AN O35ERΨ匸鮭 MA 了⊂H MONQCUL ム 只 BINO ‘ULA 霞 UPPER τAB …ii
鼕
i
靉
鼕
・ 。「
しOW 匿腱 τA8 ・乃[ ]
諏 。i
靉
i
鑵
i
爨
図2Gilchrist,
A .
L.
(1980)の実 験A
:刺激布置 (W は White,
B は Black ) B :A を単 眼で観察し た場 合の網 膜 的パ ター
ン と 輝 度 (ft−
L ) C :結 果 (両 眼 視 と 単眼視両条件の マ ヅ チ ン グ の 結 果,
平均 値をV ン セ ル・
パ リ=
。
・
一
一
で表示) 実 験 を 行 なっ た (Gilchrist
,1977,
1980).
図2はGilch−
rist の用い た刺 激 布 置と結果の一
部である が,
こ の刺激 布 置に対し観 察を 両眼 視,
単 眼 視の 2条 件で行なっ て い る.
光 源はA
図の上方に置かれ,
水 平に提示 された領域 へ の 照明強度は 垂 直 方 向の領 域の30
倍に なる よ うに設 定さ れ た.
これは図の A の Target−
W (T−
W )の輝 度 と Target−
B (T−
B)の輝 度 が 等しい 条件を作る た め で ある.
表C の値の比 較か ら 明 らか なよ うに,
輝 度の等し い 二 つの Target の見えの 明 る さは観察条 件に依存し て 著し く異なっ た.
その見 え方の 変 化は実に ドラマ テ ィ ヅ ク である・
こ の著しい変化につ い て,Gilchrist
は観 察 条 件に依 存し て各ター
ゲ ッ トの知 覚さ れ る空 間的 位 置 関 係に変 化 が 生じ た こ と に よ ると考 えた.
つ ま り,
両 眼で 観察し よ う と 単 眼で観 察し よう と,
こ の 刺 激 布 置の 四領 域の網膜的 輝 度比ぽ変わ っ てい ない.
しか し,
両ター
ゲ ッ ト と周 辺 領 域 との 空 間 的 位 置関係の変化に より,
図2
の C に示さ れ た ように, 夫々 の ター
ゲ ッ トの見k
の 明る さに著しい変 化が起っ たわ けで,
ター
ゲ ヅ トと同一
平 面 に知 覚さ れる領域と の間に成 立 す る輝 度 比,
つ ま り, 「coplana ratio 」の概念に よ り現 象は よ り的 確に説明で ぎると主 張し た,
上述の奥行変数の 規 定性 をめ ぐる 諸 研究 間の不一
致 もこ の観点か ら説 明 可 能であり, 結 局, 当 該 領 域 とその周辺領域の現 象 的 位 置 関係の変化に よっ て, そこ に新た な 「輝度関 係」 が成 立 する場 合には, 空 間 的奥行 変 数は当 該 領 域の見えの明るさに効果を及ぼす こ とが 明ら か に なっ た.
Gilchrist の研 究が示 し た 「coplaua ratio 」の事 実に
よっ て提起さ れ た問題は
,
表 面 の 明る さ の stirnulus cerrelates は網 膜レ ベ ル での輝 度比で は なく,
同一
平 而 と して知 覚される領 域 間に成立する輝 度 比であるとい う こ とに と ど まらず,
むし ろ よ り重 要なの は領 域間の空 間 的 位 置関係の知 覚と明るさ知 覚の 間に何ん らか の関 係が 存在す る事 実ではなかろうか.
〔2〕 表面 の明るさと照 明 知 覚の関 係(1) take
−
into・
account theory の検 討Hel皿
holtz
に代 表される 明る さの 恒 常 性に関 する認 知 論 的,
経 験 論 的 立 場に よ れば, 照明印 象の “ 無 意 識 的 推 論” を基 盤とし て 明るさの恒 常 性は説 明さ れ るこ とに なる,
前 節で論 じた ratio princjPleは認知論的立場に 対 するア ンチ・
テー
ゼ とし て提 唱された.
し か し, 既に 指 摘し た よ うに 明 る さの恒常 性を 輝 度 比の み で説 明する こと の限界が 明 ら か と な り, 照明印象が果 す 役 割 を 考 慮 する必 要 性が再び認 識される に至っ た.
こ う し た事情か ら Ilelmholtz (1925)をは じめ とし て, Kardos (1928
>,
古 崎 :表面の見えの 明る さ と照 明知 覚 45 Katz (1935)
,
Gelb
(1929
)等の研 究に代 表さ れ る表 面 色の 明るさ と照 明 印 象の関 係につ い て は従 来の現 象 的 記述
に とどまらず
,
更に両者の関 係に 関するパ ラメ ト リッ クな検 討が要 請さ れ るこ と に なっ た
.
照 明知 覚を 重:視 する理論 (take
・
into・
account theory,
あ るいは albedo
−
hypothesis と呼ば れて い る)に よれ ば,
反 射 率 と照 度の 関 数とし て成立する輝 度が情 報とし て与えられる と,
無 意 識 的であ れ 意 識 的であ れ,
先 ず 照 明強 度の“
registration”
がな され、
,
その登 録された照 明強 度を考慮して当 該表面の 明るさ が知 覚される ことに な る.
真昼の 太 陽 光 線 下 (照 度 8,
000 lx と 仮 定 する) の黒い布 (反 射率 5% とする)と 日陰 (照 度5001x
)の 白い花 (反射率 80%)が 眼に送 り込 む輝 度は 等し く400 である が, 黒い 布は黒 く,
臼い花は白 く見え る.
日常経 験に 即 して記 述 す れば,
前 者は 明 るい 光の中の黒い布と して,
後 者は陰の中の白い 花と して知覚さ れ る.
こ の ような知覚が成立 する ため に は take
−
into−
account theory に よ れば, 夫々 の照 明強 度が知 覚 さ れ,
考慮さ れ るこ と が前提と なる.
そし て か か る前 提は 以 下の作業仮説 を導 く.“
照度の 変 化に対 応して照明 が 正確に知覚さ れ る時,
表面の 明 る さの恒 常 性は大 き くなるであろ う”.
Beck (1959,
1961)は照 明知 覚を規 定 する刺 激 変 数を 明らかにするこ とを 目的 として行 なっ た一
連の実験に お い て,
当 該表面に対する照 明 印 象を条 件 分 析 的に測 走 す る と共に,
表 面の 明 る さの測 定を行い照 明知 覚 との関 係 を 検 討し た.
その結 果,
こ の作 業仮 説 は 支 持 さ れず,
照 明知 覚は 必ずし も表面の見えの明 る さの規定斷 こはなら ない こ と,
ま た,
照 明知 覚と表 面の明 る さ知覚は 別々の 独 立した stimulus correlates を もつ こ と が 示唆さ れ た.Beck
の実験 条 件と は全 く異 なる条 件で な されたOyama
(1968
)の結 果も, 測定された照 明 印 象のlr
占:と照 度の 閭には 5.
8〜
88%の反 射率の範 囲の刺 激の いずれにおい ても
log−
legfunction
に お い て正の勾 配 (ほぼ1
に近い)をもつ
一
次 関 数が得 られた の に対し,
照 度の変 化に伴 う 明 る さ知 覚に関し て は先の作業 仮 説か ら予 測され る値と は異な る結果が得られた
.
照 明印 象と表 面の見 えの明る さの関係を検討せ る筆者と野冂の一
連の実 験 結 果 も 同 様に,
この作業仮 説を支 持 する もので は な かっ た(Kozaki &
Noguchi ,1976
;Noguchi
&Kozaki,
inpress;Kozaki &
Noguchi ,
1984),
これらの実 験で は背景ない し共在刺激の反射 率をパ ラ S
一
ター
とし て当 該 表面の 見えの 明る さと視野の照 明印象を rating method に より測 定し た.
照 明 判 断 (1’
) と照 度 (log l),
及 び表 面の明るさ判 断 (A’ )と log I の夫々 の間に一
次 関数 が 得ら れたが,
いずれの実験に お い て もILIog
工function
の勾 配bL
の値は A’−
loglfunction のb2
の 値よ り大 き く,
か つ , 前 者に関し て は条 件 間で有意差はみ ら れ な かっ た.
これに対し ALlog l 関 数の b, に関し て は背 景 明度ない しは共 在 刺 激 明 度に依 存して値は異なっ た.
つ ま り,
当該 表 面の明るさの恒常性の度合い と照 明 印 象 が照 度の変化に対 応し て変 化する割 合との間には 上述の 仮説か ら予 測される関 係,
つ まり,b
,が 大 きい ほ どb
,は 小さくなる関 係は見 出されなか っ た.
これ らの諸 研 究が 示唆し て い る の は,
表 面の明るさ知 覚と照明知 覚の間には take−
into−
account theory か ら 予 測される ような 因 果 関 係は成 立しない こ とである,
と ころ で,
こ の 二つ の 知覚 変 数問に因 果関 係が な い こ と は,
上述の 諸研 究とは全 く異なっ た方 法を用い て両 知 覚 変 数の関 係を検討し たOyama
(1977
)の研 究に よ っ て も 示 さ れ た,Oyama
は大きさ,
形,
明るさの 3種の恒 常性に 関し, 夫々 に, 対 象の大 き さ と距 離,
形 と方 向,
明る さ と照明の 各知覚間の因果 関 係を偏 相関を用い て推 定し た.
明 る さ と 照 明 知 覚に関して は,Oyama
自身の 1966 年のデー
タ と K。zaki &Noguchi
の 1976 年の デー
タにつ い て検討が な さ れ た、
解 析は10gR
(反射 率),log
E (照 度),
log R厂
(見えの R)と log E’
(見えの E)の 4変 数 間の関 係につ い てなされたが
,
結 果は両デー
タ ともに褒 面の見 えの 明るさ と照 明 知 覚の変 数 間に は因 果 関 係が存在する と は 云 え ない こ と を 明 らか に し た.
こ の他,
照 明 知 覚と表 而の明る さ知 覚の関 係を,
光 源 に対す る当 該 表 面の見えの位 置をパ ラ メー
ター
とし て検 討して い る Beck (1965)の研 究は 示唆 的である.
こ の 研 究は,
当該 表 面が視 空間内で光源に対しどの よ うな位 置関係に知覚さ れ るか が, 照 明 印 象に関 する 1つ の有 力 な手が か りと なり, 同時に当 該 表 面の明るさ知 覚 を も規 定す る事実 (Ilochberg
& Beck,1954
)に某つ いて計 画さ れ たもの で ある.
こ の実 験か ら も,
当 該 表 面が照 明 方 向に対しい か なる位 置にあると知 覚 さ れ る か に よ っ て,
その明るさの見え方が規 定さ れ るこ と は 再確認 さ れ た.
しか し な が ら, こ の事 実は照 明に 対 する当該 表 面の 見えの位 置が,
また そ れと関 連し て成 立 する照 明 印 象が 当該表 面の明るさの見え方を決 定 する た め の根 拠 として 用い られるこ と を, 必 ずし も意 味し て は いない.
むし ろ 実 験 結 果が示 唆し て い る の は以 下の よ う な知 覚 的 体 制 化 の過 程である,
つ ま り,
当 該 表 而 が 照 明 を直かに受 けて い ると知 覚 されるか,
間 接 的に照 明 さ れて いると知 覚さ れる か どうか,
ま た その表 而が照 明に対し どの よ うな 位 蘆に見 えてい る か,
その他 当 該表面の輝度 分布の状 態等 の 刺 激 情 報を統・
合し,
そ れ らの情 報の 間に整 合 性 が得ら れ る よ うな体 制 化のプV セ ス が働 き,
その結 果,
当 該 表46 墓 礎 心 理 学 研 究 第3巻 第 1号 面の輝 度の分 布 (こ の実 験で は
一.
赦 の紙を半分に折っ て 垂 直に呈 示し,
その左 半分の輝 度と右 半分の輝 度が異な る)が照明強 度の 差に よ る と して知 覚さ れる か,
表 面の 反 射 率の差に よ る と し て知覚さ れ る か が決 定さ れ た と考 え ら れる.
結 局,
照 明印 象の変化が単 純に表 面の 明 る さ を規 定 する の で はな く,
表 面の現 象的 位 置の変 化が 刺 激 事 態に新しい 体 制 を 作 り出 す 時 (例え ば, 間接照明一
影 の 中に あ る一
と知 覚されて い た のが,
表 面の見えの位 置 の変 化に伴っ て,
直接に照 明されてい る ように見えて く る よ う な場 合)にのみ規 定 因となる と云 えよ う,
但し,
Beck は影 あ るいは ス ポヅ ト ライ トの よ う な 照 明に関 する“ 手がか り’i が存在し, ” 特 殊な照明印象「t を 作 り出 す 時に は,
その 丶’ 手がか り” が 表 面の 明る さに効 果 を 及 ぼ し うる と考えて い る (Beck,
1971,
1974).
つ ま り,
照 明につ い て特 別の手がか り がな く,
視 野が一
様に 照 明 さ れて いると知 覚される時には,
輝 度の変 化は表 面 の 明 る さの差 異と して知覚さ れる が,
特別な手が か りに よ り一
様 な照 明 印 象が成 立しない時に は, 例え ば輝 度の 減 少は照 明強 度の減 少とし て知 覚され,
その結 果,
表 而 の明るさは変わ らずに 知 覚さ れる と考 える.
Beck は表 面の明る さ知 覚に とっ て照 明 を知覚 することは必 ずしも 必要 条 件で は ない と卞張しな がら,一
方で は視 覚 系の.
1
青 報 処 理の プロ セ スを 多 段 階 的 な もの と仮 定し, 空 聞 的 手 が か り,
肌 理の手が か り,
照 明の手が か り等が有効に利 用で きる場 合に は,
そ れ らの手がか りが表 面の 明る さの 見 え 方 を 規 定 する口∫能性 を 認める立 場 を とっ て い る,
(2) 「見え の明る さ一
照 明 印 象」 の invsriant 関 係 の存 在 筆 者と 野口 は本 稿の冒 頭 で 指摘し た 問題,
つ まb ,
反 射率と照 度の関 数と し て決まっ て く る輝 度が近刺激と し て与えられる時,
褒 面色が 成 立 する条件で あ れば,
知覚 レ ベル で 「明るさ 」 と 「照 明 印 象」に分 岐し て知 覚さ れ る問 題か ら出 発し,
こ の知 覚に おける分岐の成 立の条件 分 析 的検討を通して表面の明 る さ と照 明知覚の 関係,
並 びに明るさ知 覚の stimulus correlates を 明 らか にす るこ とを試み,
以 下の よ うな 知 見を得 た (Kozaki & Noguchi,
1976).
反 射 率 と照 度 を夫々 独 立に操 作 することに よ り,
表 1 に刀くし た よ うに,
10
レ ベ ル の等 輝 度 条 件を設 定し た.
これ らの 等 輝 度 条 件に 関し当該表 面の 「見えの 明る さ=A ’
」 と「照 明印es
=1’
]を 各々独立に測定するこ とに よ り.
物 理的に は等し い輝度か ら,
知覚レ ベ ル でA ’
と1’
が どのよ うに分 岐し,
A厂
とItの間にい か なる関 係が成 立 するか,
ま た分 岐を規 定 する要 因を検 討し た.
用い た 刺 激 布 置 は,一
辺 が視 角1°
の正方 形 (検 査 領 域 )が視角 6°
4e’
の〔
〉 こ の 匚 ω Q 」 剃 = 」}
一
〇 〉 ω 」 qρ O 匸 聞 ⊆一
e 匸 コ = H 表 l Kozaki & Noguchi (1976
)の実験.
等輝 度条件 (ft−
L)を示す2
.
1
丁F
A
八unsellVaiue
23456789
15 .
90293
△55
76 ,
70
◇ o △ 口 ◇4
.
2
△72
口 △ 口 ◇2 .
50
ム 口 Q △ 口 o,
55
●.
93
▲155
薗 o △ 口 ● ▲ ■ o ● ▲ 薗 Φ 直径の円 形の背 景上に 同心的に配されたパ ター
ン で あ る.
A,
と1’
の測 定は rating 皿 ethod を 用い て独立に 行 なっ た.
結 果は, 近 刺 激と し て は等価で あっ て も当 該 輝度レ ベ ル を与える遠刺 激の条 件,
つ ま り反 射 率とその 時の照度に対応し て適 合 的 (veridical )な知 覚が成 立し,
A
厂 と1’
は 現 象的に独立 し て知 覚されるこ とを示し た.
更に A’
と1’
の関 係を 倹討し た ところ,
下記の よ うに invariant な関 係が存 在 するこ とが見 出さ れた,
すな わ ち, 各等輝 度条 件に おける A’
十1’
とlogA 十logl の関 係を検 討 するため に,
各 logA +log lに対しA ’
+1’
を プ 卩 ッ トし た ところ,
両 者の間に は一
次 関 数が 成 立し た.
し かも,
両 者の相 関は非 常に高 く,
白背 景では0.
89,
灰 色 背 景 O,
91,
黒 背 景は 0,
97であっ た.
換 言 す れ ば,
等し い輝 度の条 件 間で は表 面の 見 え の 明 る さ (A ’
)が “ 黒か ら灰 色’
/ に変わ る時に は,
照 明 印象 (1
’ )は “ 明る い か ら暗い” に変 化する,
これ は等輝 度条 件 下で は,
見 えの 明 る さ と照明印象の間にinvariant
関 係 が 存 在 す るこ と を明 示し て い る,
等輝 度 条 件 問で は表 面の見えの明る さ と照明知覚の 間 にかか る関 係が成 立 する可 能 性にっ い て は
,
既にKoffka
(1935)に ょっ て示 唆されていた が,
パ ラメ トリッ クな研 究結果と して実 証さ れた の は初め て である.
し か もこ の 「見えの 明る さ一
照 明 印 象」の invariant 関 係が筆 者 らの実験条 件に限 定さ れ たもの でな く,
よ り普 遍 的 な も の と して認め うる’
F1∫能・
「生を最近の Gilchrist 等 (1983> の研 究は示 し て いる.
Gi
里christ 等は 輝度差を作り出す 可能性は二 つ あるこ と,
つ ま り,
(1) 反 射率の変 化に よ る場合, (2)照明強 度の変 化に よ る場 合, であるが, 物 理 的 原 因におい ては 異 なる こ の 二 種の輝 度 差が刺激とし て与え ら れ た時,
ど古崎 :表面の見えの明るさ と照 明知覚 47 の ような知覚が対 応 する かを問 題と し検討を試み た
.
彼 等の問 題 意 識は上述の Kozaki & Noguchi (1976)の実 験の出 発 点 となっ た視 点と同じである と 云 え よ う.
Gilchrist等の実験は,
背景上に検 査 領 域 (TF
)・
正方 形 が 同心的に提示 さ れ るパ ター
ン を基 本的 刺激布置と し て用い,
上 記の 実験目的の た め に,
刺激パ ター
ン の輝度 差が反 射 率の差のみに よ り与えられる場 合(条件A
)と, 照 明強 度の差の みに よ り作り 出 さ れ る 場合 (条 件 B )を 設 定し た,
両条件の 各背景 及び TF の 輝 度は云 う まで も な く等しい.
これ等の輝度 条件 を作り出すため に, 条件A
で は強 度の等しい一
様な照 明条 件 下で, 反 射 率が異な る背 景上に等しい反射 率の TF が 提 示 さ れ た,一
一
方,
条 件B
では背 景の左 右の反 剔 率は等しく, ま た 両TF の反 剔 率 も等しい が,
刺 激布 置の左半 分は プロ ジェ ク ター
に よ り直 接 照明 さ れ たの に対し,
右 半 分は黒い衝立に よ り 影が投影さ れ た,
A ,
B 両 条 件1こ関し, 夫々 の TF の見 えの明る さ と照 明 印 象が測 定さ れ た.
結 果で注日 すべ ぎ こ とは,
(1)A
,B
両条件において, 各TF と背 景の輝 度 関 係 及び左 右の背 景 間の輝 度 関 係は等しい にも拘らず,
マ ッ チ ン グさ れ た 明 る さは顕 著に異なっ たこ と.
(2) 条 件A
で は左 右の刺 激は等しい強 度の照 明 を 受 けて い ると 知覚さ れ, かつ 夫々 の背景の 明る さの見え方は物 理 的 刺 激 条 件に ほぼ対 応し た.
つ ま り,
背 景 間の輝 度 差は反 射 率の差 とし て知 覚され,
かつ 各TF の明る さ は夫 々の背 景との輝 度 差に規定さ れてい た.
(3)一
方,
条件 B では 左 右のTF
の輝 度は等 しい に も掬 らず,
左は黒, 右は 白 とし て知 覚さ れ,
照 明 印 象につ い て は左は強い照 明,
右 は弱い照 明 として知 覚された.
つ ま り,
左 省の物理的 照 度 関 係に対 応し た照 明知 覚が成 立し た.
図3
はA ,B
各条件におい て明 る さ と照 明印象の両 次 元に関し成立 し た現象的 関係を実測値に基づい て図式化 した もの である.
こ の図で大 変 興 味 深い の は,
そ れぞれ 対 数 値で表 わ さ れた 明るさに 関 する各刺 激 領域 間の現象 的 関 係 と照 明に関 する現 象 的 関 係の和と し て示さ れ たパ ター
ンが,
物理的 刺 激パ ター
ン,
っ ま り輝度パ ター
ン に ほ ぼ 完 全に対 応し てい る事 実であ る (条 件A で は一
様な 照 明印 象が知 覚された の で, 各 領 域 間の相 対 的 関 係は変 わ ら ない こ とか ら,
Gilchrist 等は照 明知覚の 結 果を 図 示 し ていないが,
輝 度パ ター
ン との対 応 関 係は もちろん 条 件 B の場 合 と 同 じである).
こ こ に示された両 者の対 応 関 係こそ,
Kozaki &Noguchi
(1976
>が 指 摘し た 「見えの 明 る さ一
照明印 象 」の invariant 関 係に他なら ない.
とこ ろ で
,
take−into・
accoullt theory に関連 して先に言 及し た Beck (1965)の実 験 結 果の中}こも 「見 えの明る さ
一
照 明 印象」の invariant 関 係 を 示 唆して い るデー
タ があるこ と を指摘して お く (爽2
参照).
既 述の ごと く, こ の実験で は光 源に対 する当 該表面の現象的位 置を変え 響耄
齣誓
己
Perception (条 件 B)Physical
Luminance Perception (条 件A
) 十 石 ち 芝 鬘 芍 混 E 書 切2
胃 ゆ 謁 0’
5 匸’
9←
晨 』 E8 切2
50 5 0 1.
L.
。 と 匪 蠶3
評凵
ゼ
95量
1・
°籌
・
53
° SPATIAL POSITION 図3Gilchrist,
A .
L.
等 (1983)の結 果 明るさ と照 明 印 象の 関 係を実測 値に基づい て図式化 (下 段の図の縦軸は輝 度・
ft−
L を示す 〉48 某
i
礎 心 理 学 研 究 第3
巻 第1
号 衷2Beck
(1965
)の実 験 結 果 左側の麺障
側 曚 面 両 眼視 単 眼視 照 明 印 象 見えの 明 る さ 照 明 印 象i
見えの 明る さ.
直接 照 明の 印象8.
5M.
V .
間 接 照明・
影の 印象 8M.
V.
直接 照 明の印象直 接 照 明の印 象8.
5M.
V .
6.
75M.
V.
るた め に,
観 察 を 両 眼 視の 場 傷 単 眼 視の 蜴 合で 行 な い,
両 眼視 条 件では当 該 表 面, つ ま り一
枚の紙を半 分に 折っ た カー
ドが 机に対し垂直に置か れ てい る よ うに 見 え,
その左ペー
ジ は , 照 明 を直接 受けて い る と知 覚さ れ た,
右ペー
ジ は これに対し間 接 照 明,
影の 中に鴛か れ て い る ように知 覚 さ れた.一
方,
単限 視の 場 合に は完全に 開かれた カ・
・
ドが 左 右 両 面とも観 察 者に 対し垂 直方向に 提示 さ れ てい る よ うに見え,
かつ 照明 に関し て は左 右 両 面ともに等し い強さの照明 を受けてい る ように知 覚され た.
表2が 示し てい るこ とは,
物理 的に は 同一
輝 度 分 布 (輝度差 )が, 両眼視条件で は 照 明の強さの差と して, 単 眼 視条 件で は反射率の差 (マ ッ チ ン グの値は8.
5M.
V ,
と 6.
75M,
V.
〉とし て知覚さ れ,
し か も前者の 場 合に は 見 えの明る さの差は非 常に小さく,
後 者で は一
様 な照 明 印 象が成立し て い るこ とである.
つ ま り,
照 明印象 と明 るさ知 覚の 間1,
:invari
ant 関係が 成 立 してい るこ と を示 唆し ていると云 え よ う.
以 上の ごと く,
「見えの 明るさ一
照 明 印 象 」の invar−
iant 関 係が筆 者と野口 の研 究の み ならず,
他の 研 究 者 のデー
タ か ら も支 持 さ れた と云 えよ う.
しか も筆者等の 実 験が照 明に関 する “ 特 別の 手が か り” (例えば,
陰 影 やハ イ ラ イ ト等〉が存在して い ない条件で な さ れ,
Gil・
christ 等の実験で は 照 明 手 が か り が積 極 的に 導入 さ れ た条 件で あっ たに も拘らず,
見えの 明 る さ と 照 明知 覚の 関 係に 関し同一
結 果が得ら れ た こ とは, 特に注目すべ き ポ イソ ト である と考え る.
つ ま り,
等しい輝 度条件間 で 「見えの 明るさ と照 明 印象の問に invariant な 関 係」が 成立する とい うこ とは, 照 明に 関 す る “ 特 別な手が か り” の有無と は独 立 で あ り,
こ の事実から もこ の 二 つ の知覚変数 間の関係は
,
take−lnto−
account theory か ら推 論さ れ る因果 関 係で はなく, 紺 応 関 係であ るこ と が明ら か に さ れた か らで ある.
結 語
以上
,
表面の明る さの sti皿 ulus correlates に関 連し た諸 研 究を概観し,
研 究動 向を展 望して きた が,
その結 果,
問 題 点は かな り し ぼ ら れて きた ように 思わ れる.
(1) 表 面の 明 る さ (無 彩色)の現 象 的 記 述が “ 黒か ら 白t/ の 次元のみ で は 不 十 分であり, “ 明るく輝い て い るか ら暗 い” の次元 も含めた多次 元的記 述を 必要とする事実に か かわ る論 議は, 網 膜 レ ベ ル で の ratio PrinciPleに関し て従 来指摘さ れ てきた閙 題 点に加えて,
こ の ratio prin−
ciple 仮説の弱点を一・
層は っ き りと露呈し た と云 えよ う.
この意 味において はcoplana ratio principleも問 題はあ るこ とに なる.
むし ろ,
こ の修正 さ れ た ratio PrinciP艮e か ら示唆さ れ た 空 間 的 要 因,
つ ま り領 域 間の現 象 的 位 置 関係が明るさの知 覚に効 果をもつ事 実に留 意 すべ きで あ ろ う.
空 間 的 要 因は以 下に述べ る問 題と関連し て重 要で ある.
(2
)一
定の輝度 差 (輝度 分布)が,
ある時に は表 面の明る さの 差 (反射率の差)と して知覚され,
ある時 に は照 明強 度の差と して知 覚さ れる が,
これ を規 定 する 要 因は一
様 な 照 明 印 象の成 立 の 有 無で あ っ た.
Beck (1965
)の実験で は観 察条件を変える ことに よ り,
当 該二 領 域の照 明 方 向1・
C対 する現 象 的 位 置 関 係に変 化が生じ, そ れ と同 時に 照 明 条 件に関する知 覚が変 わ り, 「二領 域 が一一
様に直 接照 明 を受 けて い る と い う印 象一
二領 域の明 る さの 差」,
「二領 域 が 異なっ た照 明を受 けて い るとい う 印象一
ほぼ等し い明るさ知覚」が 夫 々に対 応した,Gil−
christ 等 (1983)の場 合にも二 領 域に対し一
様な照 明 印 象が成 立 するか否か に依存した が,
こ の実 験では照 明条 件を物理 的に変 化させ,
陰 影を導入するこ とに よっ て照 明 印 象は変え られた,
これ らの事 実か ら,
「照 明 印 象」 並びに 「当 該 表 面が どの よ うに視 空 間 内で体 制 化さ れて 知 覚さ れる か」,
こ の 両要因 が 表面の 明 る さ知 覚と密 接 に関 係し てい るこ と が 明確に なっ た,
(3)し か しな が ら,
照明印象と表面の 明 る さ との関 係 は, 経 験 論 的 認 知 論の立 場か ら従 来 考え ら れ てきた よう な もの で は な い.
つ ま り,
take−into・
account theory から予測 さ れ る関 係は否定さ れ た
.一
方,
等しい輝度条件 間には 「見 えの明る さ一
照 明 印 象」の invariant 関 係が 成 立するこ と が明らか になっ た.
ただし,
こ の場 合の 明 る さ知覚と照 明知覚の関係は因 果 関 係で は ない.
事 物の あ る特 性に関 する知 覚と別の特性に関 する知覚の問に,
何ん らか の関 係が存在す る知覚事象は非常に多い.
例 え ぽ, い わ ゆ る奥行 反 転が生じ る “ ネ ヅ カー
の立方Hi
’t に おい て,
a 面が後方に,
b
面 が前方に突 出し て見え る時 に は,b
面は a 面よ り小 さい 正 方形に見 え る.
奥 行が反 転し逆に a 面 が 前 方に見 え,b
面が奥に後 退して見え る と,
a面の正方 形の方 が,
b面よ り小 さ く見 える.
この 場合の 遠 近 知覚と大きさの知覚の関係.
ま た,
“ 透 明 視” にお け る重な り(同時的前後)の知 覚と透 明性の知 覚の関 係等も,
これ らの知覚間の関 係は因 果 的 関 係で はな く,
古崎 ;表 面の見えの明る さ と 照 明 知覚 49 緊 密な対 応 関 係と考え るこ と がで きる で あろ う
.
照明知 覚 と表 面の 明るさ知覚の関 係 も, これ ら諸例 と同 じ く対 妃;関 係と考え られよ う.
なお空 間 的 体 制 化の要 因に関し て は, こ の要 因が独立 に表 而の明るさと対 応 関 係 を もつ のか, あるいは 照 明印 象 (当該表 面 が一
.
轍 に照 明さ れて い ると見え る か 否か 等)を介し て表面の明る さ知 覚を規 定するこ とになるの か は,
今の ところ明確で はない.
これは今 後 検 討を必 要 と す る 問 題であ る.
い ずれに せ よ,
「照 明 印 象」,
「空 間 的 体 制 化」, 「表面の見えの明る さ 」 は相 互に関 係しなが ら,
し か も 同時に成立し てい ると考 え られる,
これ らの 現 象 的 諸 相を 明 確に と ら え, そ れ ら 知覚間の 相互 関 係を 条 件 分 析 的に明 らか にするこ と が当面の課題で は な か ろ うか、
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