C A N C E R 7 (1998), p .13- 15 13
伊勢湾湾口で採集されたイガグリガニ
塚田
修・若林郁夫・増田元保
イガグ リガニ P aralomis hyst門x (De H aan, 1844) は,日本の房総半島から土佐湾にかけてと,ニュ ージーランド
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中の水深18 0 - 6 0 0 mに生息するタラ バガニ科( エゾイバラガニ属) の 一種である. 本 種は ,遠州灘や熊野灘の水深2 0 0 - 5 0 0 m付 近 で 操 業される底曳き網漁l、によって多数混獲されるが市 場価値はあまりなく ,雑物として取り扱われる. 体が練で覆われ,体色が淡紅色と鮮やかなことか ら展示生物として全国の水族館でよく飼育されて いる . 伊勢湾所勾) 忍;
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これまでイガグ リガニの採集記録は ,浅くても 水 深10 0 m前 後 ま で で あ っ た が,1997年 2 - 4月 にかけて伊勢湾湾口の水深2 5 - 5 5 mの海底から相 次いで6個体が採集され,鳥羽水族館および碧南 海 浜水族館に持ちこまれたので報告する( 図1 ) , 今回 ,確認されたイガグ リガニは, 1997年2月 2 日に 三重県鳥羽市石鏡町沖の水深2 5 mに仕掛け られたカレイ刺し網に掛かった雄,雌各1個 体. 同年2月14日に鳥羽市答志島沖の伊勢湾内で操業し ていた底曳き網に入網した雌1個体( 水深55m), 図 1 伊勢湾湾口におけるイガクリガニの採集場所Osam u TSUKADA, Ikuo WAKAsAYASHI, and
Motoyasu MASUDA: Paralomis hystrix (De H aan,
14 伊勢湾的口で採集されたイガグリガ ニ 同年 2 月24 日に鳥羽市石鋭 11町沖の水深3 5 m に
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_lオ卦 けられたヒラメ刺し網に掛かった雌l個体.I
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年 3月19 日に鳥羽市神 島沖の水深2 5 m に仕掛けられ たヒラメ刺し網に掛かった雌11
間体. そして,愛 知県渥美半尚沖で、操業していた成曳き網に入網し た雌 1 個体( 水深3 5 m ) の合計 6 例体が採集され た. 採集f
間体は巾長 86 . 1 - 98 . 2mm. 1ド幅7 6 . 4 -85 .6mmの成体で、あった( 表 1 ) . 三重県鳥羽市で イガグリガニを採集した4人の漁flfn
は,いずれも 「今までに見たことのないカニで. 1仰が 1 本少な く,全身が赫で夜われたピンク色のカニが網に掛 かった .J と連絡しており,この海域では初めて の採集記録と思われる . 日本の太平洋沿岸を北上する黒潮は,例年であ れば四国から潮岬沿岸を北上し八丈島付近を通過 したのち ,北緯35度をこえてから千葉県九十九里 浜の沖合いを北東に進み,銚子の沖合いの北緯36 度付近を東へ流れているが. 1997年 1 月中旬頃か ら八丈島付近の 北緯33度で東へ流れていることが 海上保安庁の海流推測同 や三柔県水産技術センタ ーの漁illj:i兄速報によって報符され,この時期の伊 勢湾湾口及び渥美半島外海の水温が例年に比べ低 く,特に 2 月は 1. 3 - 2 .30 C低か ったことが愛知県 水産試験場の調査によって判明している. この低 水温は5月になっても伊勢湾湾口の沿岸域の底層 で例年より 1. 80 C低い 14 .80 Cであ った . イガグリガニのほかに,同年 4 月27 日に愛知県 幡豆郡吉良町の山崎海岸でオオグソクムシが潮干 帯の岩場で採集され (長井私信 ). 伊勢湾湾口や 伊勢湾内でもオオグソクムシが5月に3個体採集 され南知多ピーチランドに持ちこまれている( 杉 山私信) . ま た.I
日j年 4 月 8 日の産経新聞夕刊に 静岡県伊東市沖の水深 1 3 m でタナベシャチブリが 撮影された記事が写真とともに報じられるなど, 通常水深 15 0 - 2 0 0 m 以深に生息すると考えられて いる生物が浅海で記録されている. 今回,イガグ リガニが採集された伊勢湾湾口は,愛知県蒲郡市 形原 町やl陪豆郡一色町などを基地とし て熊野灘及 び遠州灘 の漸深海域で操業する底曳き網漁船の航 路にあたり,これらの漁船から投棄された疑いも あるが,漁師に聞き取り調査した限りでは, 「投 棄はしていない.J との事であった . 採集場所が 伊勢湾湾口の広い範開で 6 1同体採集されているこ と. 1997年 1 - 5 月の黒潮が八丈島付近で東進し ていたこと,また ,同 時期の海水温が本州中部沿 岸で例年に比べ低かったこと,オオグソクムシや タナベシャチブリが確認されている事などから , 今回の採集は自然分布と考えられた. なお,千葉県から九州沿岸での 『イガグリガニ の採集記録』 を研究機関及び、水族館にアンケート 調査をおこな った結果,千葉県の鴨川 シーワール ドで鴨川沖 (鹿 島 灘) 1. 2 マ イ ル の 水 深 2 0 m で 1997年 3 月12 日に. 31間体のイガグリガニがヒラ メ刺し網で採集されている. 本報をまとめるにあたり,オオグソクムシの情 報をいただいた 碧南海浜水族館の長井健生副館長 表 1 伊勢湾湾口におけるイガクリガニの採集記録 │渇l採集場所採集年月日 { 間体数 採集地点 水深表面水温 採集方法 時11主 I干1中日 性 1997 .02.02 2 石鋭i'l'
2.5マイル 2 5 m 司、I財 カレイ刺し網 ① 98.2mm 85 .6mmt
事11烏ill'
3.3マイル ② 98.0mm 82 .0mm ♀ 2 1997.02 .14 34035'3 J"N 5 5 m 8.3"C 成曳き網 96.9mm 80 .5mm 平 136058'84"E 3 1997.02.24 石鏡iqJ
2.2マイル 3 5 m 12. 0"C ヒラメ 刺し網 91. 4mm 76.4mm ♀ や11島沖 6.0マイル 4 1997.03. 19 コスカミ礁と神島 2 5 m 不明 ヒラメ車JIし網 93.6mm 84.5mm ♀ の中間 5 1997.04.02 3 5 m 13.0.C jま曳き網 86.1mm 82. 1mm ♀ (桜美半島)塚田 修・若林郁夫・増田元保 15 ならびに南知多ピーチランドの杉山重笑氏,浦郡 市形原町の漁師に聞き取り調査をしていただいた 蒲郡市竹烏水族館の安藤隆充主任,および 『イガ グリガニの採集記録』調査に快く協力いただいた 研究機関,水族館の方々に深く感謝いたします. 三宅貞祥, 1982. 原色日本甲殻類図鑑 (1 ). 261 pp., 保育社,大阪. 参考文献 愛知県水産試験場漁業生産研究所, 1997. 海洋速報, 平成 9 年 1 - 5月. 海上保安庁水路部, 1997. 海流推測図,平成9年1 -20号.
事務局からのお知らせ
パ ッ ク ナ ン バ ー 在 庫 一 掃 セ ー ル 三重県水産技術センター, 1997. 漁海況速報, 9 1 -20号. 酒井恒, 1976. 日本産蟹類 461 pp.,講談社,東京. 産経新聞 ,1997. 地震の巣から現る !っ. 4月8日付け 夕刊. 武田正倫, 1982.原色甲殻類検索図鑑. 284 pp.,北隆館, 東京. ( 塚田 修・若林郁夫: 鳥羽水族館 増田元保: 碧南海浜水族館)事 務 局 で は 甲 殻 類 の研 究No.1 -21お よ びCrustacean Research No.22-26をそれぞれ 1冊3,000円で,またCancer No.1-6は1冊2,000円 で 販 売 い た し て お り ま す . 雑 誌 に よっては数に限りがありますのでお早めにお申し込みください. 甲殻類の研究につき ましては, No.1-20ま で を ま と め て ご 購 入 い た だ き ま す と , 特 別 価 格 と 致 し ま し て
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