• 検索結果がありません。

日本基礎心理学会第33回大会

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本基礎心理学会第33回大会"

Copied!
32
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

DOI: http://dx.doi.org/10.14947/psychono.33.31

日本基礎心理学会第33回大会

(2014年12月6・7日 首都大学東京南大沢キャンパス)

ワーキングメモリ要素に対するプレッシャーの効果 専修大学大学院 小林晃洋 専修大学 大久保街亜 プレッシャーによりパフォーマンスが低下するあがり 現象は,ワーキングメモリの働きがプレッシャーによっ て妨害されることで生じると考えられている。本研究で は,注意の焦点,直接アクセス領域,活性化された長期 記憶という複数のワーキングメモリ要素からなる Ober-auerのモデルを基に,プレッシャーが各要素に及ぼす効 果を検討した。参加者は低プレッシャー条件と高プレッ シャー条件で,3つのワーキングメモリ要素を独立に測 定する記憶更新課題(Oberauer, 2002)を行った。プレッ シャーは注意の焦点の切り替えを促進させた。一方,直 接アクセス領域の処理は妨害せず,活性化された長期記 憶の処理を妨害することが示された。ここからプレッ シャーは,ワーキングメモリに一様の影響を与えるので なく,ある領域には促進的な影響を及ぼし,またある領 域には抑制的な影響をもつことが明らかになった。 非線形最適化問題と最適化法によるパラメータの変動 東京女子大学 浅川伸一 非線形回帰を行うことは難しい問題である。入出力 データ関係を調べることは容易ではない。データの真の モデルは知らされず,未知の汎化テストで最適な成績を 求めることが要求されるからである。この時汎化データ に対して最も適合するパラメタを探す必要がある。非線 形近似の場合,パラメータに関するヘシアンHの計算量 からジャコビアンJ を代替する方法が提案されてきた。 ガウス・ニュートン法に対してマルカールトは単位行列 をJの対角要素で置き換える方法を提案した。しかしこ の方法は収束の状況によりの調整が必要である。加えて の大きさに依存して,推定すべき各パラメータの重みが 変化する。パラメータ変化の意味とベイズ流推論との関 係を議論することは可能であるが,オッカム因子の導入 と事前分布の仮定が必要となる。この OFも正則化法の 一つであり各種正則化法と同じと見做すことが出来る。 そこで,正則化法とその影響がパラメータの決定に及ぼ す意味について考察を加えた。 連続制御における課題のパフォーマンスが運動主体感に 与える影響 東京大学 温  文 東京大学 山下 淳 東京大学 淺間 一 運動主体感(sense of agency)とは,ある外部の事象 を変化させた主体は自分であるという主観的な感覚であ る。本研究では,連続的な操作において,課題のパ フォーマンスが運動主体感に与える影響を調べた。実験 参加者は左右の方向キーを押すことで,ディスプレイ内 で運動する物体の方向を制御し,可能な限り早く目的地 に到着させる課題を行った。各試行において,自分の制 御がどのぐらい効いたのかを答えた。実験課題におい て,すべての操作が実行される条件(統制条件)とコン ピューターが誤った操作を無視する条件(補助条件)が 設けられた。その結果,補助条件においては,実験参加 者のコントロールが弱まったものの,課題のパフォーマ ンスが向上し,統制条件よりも運動主体感が強かった結 果が見られた。人間が運動主体感を判断する際に,単に 自分の行動とフィードバックを照合するのではなく,望 みに基づいた感覚的な推論にも頼っていると考えられ る。 全盲の視覚障がい者におけるユニバーサルデザインの妥 当性に関する研究 山形大学 長崎郁夫 山形県立山形盲学校 佐藤千秋 今日障がい者及び高齢者,また健常者が共有しうる物 品の形状やデザインとして,ユニバーサルデザインが 様々な場面で見受けられる。その中で特に視覚障がいを 意識し作成されたデザインを見ることができるが,その 際,視覚障がい者特に弱視であるか全盲であるか,さら には先天的な全盲者であるか中途視覚障がいによる全盲 なのかにより,デザインの認知のしかたに差を生じてい ることがしばしば見られる。そこで本研究では,触覚に よる形状から知覚することを目的としたデザインについ て,全盲者のうち先天的全盲者と,中途視覚障がい者に ついて,その知覚による認知のあり方の差異の発生につ いて,実際のデザインとそれぞれの条件を有する視覚障 Copyright 2015. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved.

(2)

がい者により検証するものである。このことにより個々 のユニバーサルデザインが,より有効性をもつものとし て効果を高めることへつなげることができるものと考え る。 拡張した仮想身体の操作が身体性自己意識および身体表 現に与える影響 杏林大学 渋谷 賢 杏林大学 大木 紫 被験者の右手と連動する仮想の右手(12 cm前方)の 周期運動(4分間)により,錯覚を誘導した。誘導時の 仮想の手の配置(一致・不一致)と運動様式(能動・受 動運動)を操作した。1)右手の視覚性位置判断(VJ), 2)右手の到達運動(TR),3)閉眼両手位置合わせ(BM) が誘導前後で実施された。従来の報告通り,身体性自己 意識に関する質問紙評価は,身体所有感と運動主体感の 二重乖離を示した。BMの固有感覚ドリフト(PD)は, 運動様式に関わらず一致条件でのみ認められた。VJと TRのPDは不一致条件よりも一致条件の方が,また受動 運動よりも能動運動の方が有意に大きかった。重回帰分 析の結果,BMのみが身体性自己意識と有意な相関を示 し,特に身体所有感と関連していた。以上の結果は,拡 張した仮想身体の操作が複数の身体表現を異なる形で変 えうること,これらの身体表現の変化の一部分が身体所 有感と連関していることを示唆する。 文章の読みやすさを決める漢字の量的要因 東京女子大学大学院 杉山美智子 東京女子大学 土田 優 東京女子大学 小田浩一 目的: 国や役所の公文書の文章は難解で日本語母語話 者でも読みにくいことがある(庵,功雄,岩田,森 2011)。本研究では読みやすい文章の特徴を検討するた め,読書実験から,漢字含有量・漢字連続量・難単語の 有無の3つの量的要因が読みやすさをどれくらい説明す るか調べた。方法: 公文書から100文字程度の文章を60 種類抜粋し,「やさしい日本語」ルールで書き換え,計 120 種類の刺激文を作成した。暗室にて PC 画面に刺激 文を 1つずつ提示し,出来るだけ速く正確に音読させ, 読み速度を計測した。実験参加者は正常視力を有する日 本語母語話者 18名であった。結果と考察: 読み時間と 正読字数から 1分当たりの読速度を求め,漢字含有率・ 漢字連続率・難単語の有無で重回帰分析を行った結果, 3 つの要因は全て有意になり,全体で読速度の分散の 56%を説明した。これは文章中の漢字を量的に減らせば 公文書は相当に読みやすくなることを示唆している。 「映画の逆回し」と事物の知覚的恒常 慶應義塾大学 鷲見成正 吐いたタバコの煙りが口の中に吸い込まれていく,食 べた物が口から吐き出される; 映画では「覆水盆に返 る」の現実を目の当たりにすることができる。大きさの 恒常を「視物 ID」と奥行きへの視覚刺激の知覚的分岐 効果と考えるならば,変化する事物の恒常は「事象ID」 と時間経過への刺激の分岐効果とみすことができる(鷲 見,心理学評論,1991)。「トリ ID」と若さへの分岐は ヒナ鳥に愛らしさを感じさせ,「友人ID」と歳月への分 岐は深く刻まれた旧友の皺顔にその過去をみる。しかし 老人に扮した少年に年月を経た「人 ID」を認めるのは 難しい。時間方向に関する類同要因の‘まとまり’や分 岐効果を妨げるシンメトリー要因の働きなどから事物の たんなる継起的な配列だけでは「事象 ID」への分岐は 認められないことを示したSumi (5th ICEPA, 1989)によ り,「映画の逆回し」現象が知覚的分岐効果と密接な関 係にあることを知り得た。 自然な物体における視覚,聴覚,触覚の感覚間協応  ―木の質感知覚を例として― 産業技術総合研究所 金谷翔子 お茶の水女子大学 時田みどり 住友林業株式会社 苅谷健司 産業技術総合研究所 藤崎和香 感覚間協応とは音高と図形の大きさのように直接関係 のない二つの感覚属性の間に,何らかの対応関係が感じ られる現象であり,外界における物理特徴の共起関係を 反映したものではないかと議論されている。しかし先行 研究では単純かつ人工的な刺激が用いられており,現実 世界に存在する自然な物体において感覚間協応が見られ るかは未解明である。そこで本発表では,自然な物体 (木)について視,聴,触覚で独立に質感評価を行った 藤崎・時田・苅谷 (2013, 視覚学会)の実験データの一 部を,感覚間協応の問題に焦点を当てて再分析した結果 を報告する。具体的には,表面の明るさ(視),音の鋭 さ(聴),ざらざら感(触)について,実際の知覚評価 と,他のモダリティから想像した知覚評価との比較を 行った。分析の結果いずれの評価項目においても視触 覚,聴触覚の評定の間に有意な正の相関がみられた。一 方で視聴覚の間には有意な正の相関は見られなかった。

(3)

キーが近いことによる分けにくさは,学習により解消さ れる

愛知淑徳大学 渡辺友里菜 愛知淑徳大学 吉崎一人 近年,身体の動きと認知的活動の関係を探る Embod-ied Cognitionの研究が行われている。Lakens et al. (2011) は,反応キーの近接性が,空間が関与しないストループ 効果(干渉)を増大させることを示した。この効果は実 験初期試行のみでみられることが示されているが,生起 要因は明確ではない。本研究は,反応キーの近接性によ る干渉量の変化が,刺激と反応の連合学習過程であるか を検討した。参加者は,反応手とターゲットとの対応 (例: 右手が白色,左手が黒色)が共通した 2 課題(サ イモン/ストループ課題)を,反応キー間が近い場合と 遠い場合で行った。反応キーの近接性による干渉量の増 大が,刺激と反応の連合学習量によるものなら,前半課 題(例: サイモン課題)でみられ,後半課題(例: スト ループ課題)ではみられないと予想した。結果はこれを 支持した。この結果は,反応キーの近接性による干渉量 の増加は,刺激と反応の連合学習の初期段階で生じるこ とを示唆した。 図地の成立におけるテクスチャの効果 いわき明星大学 高島 翠 獨協大学 篠原幸喜 敬愛大学 藤井輝男 筑波大学 椎名 健 これまでどのような領域が図になりやすいのかに注目 した研究が多くなされてきた。たとえばOyama (1960)で は,図になりやすい要因として方位や面積,明度が挙げ られている。また,盛永(1960)は,図の背後で地の領 域がつながって見えることを重視している。本研究では どのようなテクスチャが図になりやすいのかについて, 運動情報の有無とアモーダル知覚との関係から検討する。 6等分した円の隣り合わない3つの領域を中灰,残りの領 域を黒と白のテクスチャとした。テクスチャは正円およ び楕円による同心円を作成し,中灰の領域とテクスチャ の領域のどちらが図になりやすいのか検討する。 視覚性ワーキングメモリにおける選択的注意の効果 ―色と空間に基づく選択の比較― 京都大学 李  琦 京都大学 齋木 潤 In the present study, we investigated the effects of feature-

and location-based selection on visual working memory (VWM) encoding and maintenance by manipulating cue type (color, location) and cue timing (precue, retro-cue) in a change detection task. In two experiments using different stimuli, results consistently showed a significantly greater ef-fect for color precues than for color retro-cues, but no differ-ence between location pre- and retro-cues. This indicates that the attentional modulation via color is more effective during VWM encoding than during maintenance, whereas the modu-lation via location is similar in the two cases. More surprising-ly, the color precue effect was significantly greater than the lo-cation precue effect, suggesting that color information influences VWM encoding more than does location informa-tion. The third experiment using a perceptual task (visual search) showed a greater location than color precue effect, in-dicating that the color precue advantage in the VWM task is related to the modulation of memory encoding rather than of sensation and perception. Our findings reveal new aspects of the interaction between attention and VWM.

ドレミファソラシは虹の七色: 色聴におけるピッチクラ スと色の対応 新潟大学脳研究所 伊藤浩介 新潟大学脳研究所 中田 力 音や音楽を聴くと色を感じるタイプの共感覚を色聴と いう。色聴では,どのピッチクラス(ドレミファソラ シ)に対して何色を感じるかは個人差が大きく,その対 応関係に普遍性はないとされている。この定説がどの程 度正しいか,32 名の色聴保持者で検討した。各ピッチ クラスに感じる色をコンピュータ上で選ばせたところ, 既報通り,かなりの個人差が認められた。しかし,得ら れた色の RGB 値を被験者間で平均すると,ドの赤から シの紫まで,7つのピッチクラスが可視光スペクトルに 順序良く対応する隠れた関係が現れた。さらに,色聴の ない被験者 16名に色を強制的に選ばせたところ,その 平均値にも同様の虹色のパターンが認められた。つま り,色聴保持者におけるピッチクラスと色の連合は,ヒ トに普遍的に潜在的に備わる視聴覚連合が何らかの要因 で顕在化したものと推測される。しかし,なぜ7つの階 名が光スペクトルに順序良く対応するのか,その機序は 不明である。

(4)

顔の視覚的な気づきに右紡錘状回顔領域は重要である: 脳磁場反応解析 九州大学 久米迪子 九州大学 前川敏彦 九州大学 浦川智和 九州大学 緒方勝也 九州大学 廣永成人 九州大学 執行真旗 九州大学 飛松省三 顔や物体を呈示したとき,紡錘状回顔領域(FFA)か ら生じる脳磁場反応(N170 m)は,右優位で顔に対し てより速く大きく反応することが知られている。FFAの 顔認知に関連する脳活動が,刺激特性の入力だけで出現 するのか,あるいは視覚的な気づきが生じて出現するの かを,擬視野闘争(PSE)と両眼視野闘争(BR)条件下 で検討した。PSE では,N170 m は右優位かつ顔に対し てN170 mが出現した。BRでは,顔の刺激が視覚的に抑 制された時は,ほぼ N170 mが誘発されなかった。しか し, 顔 に 対 し て 視 覚 的 な 気 づ き が 生 じ た と き に は N170 mが誘発された。このN170 m潜時は受動的に顔の 知覚が生じた時(PSE)と変わらなかった。視覚的な気 づきに伴う N170 mの振幅は右優位に大きかった。以上 より,顔認知に関連する N170 mの誘発には視覚的な気 づきが不可欠であり,右FFAがより重要な役割を担って いることが示唆された。 課題非関連特徴が価値駆動的に注意を捕捉する 京都大学大学院 峯 知里 京都大学大学院 齋木 潤 報酬学習によって報酬と結びついた刺激特徴は,注意 を捕捉することが知られている。しかし,報酬学習が成 立するための必要条件については明らかにされていな い。本研究では,フランカー課題を用いた2つの実験に よって,報酬が課題遂行とは無関連な刺激特徴と結びつ き,注意を捕捉するかどうかを検討した。実験1の学習 フェイズでは,標的が位置で定義されるフランカー課題 において課題非関連な特徴である文字の色と報酬を結び つけた。さらに,実験2ではフランカー課題の周囲に提 示された枠の色と報酬を結びつけた。報酬学習の影響 は,学習フェイズ終了後の視覚探索課題によって検討し た。その結果,視覚探索課題において,高報酬条件は低 報酬条件や統制条件に比べて反応時間が有意に遅延し た。このことから,報酬が課題非関連な刺激特徴と結び ついた場合においても,高報酬と結びついた刺激は注意 を捕捉することが示唆された。 高解像度ディスプレイとロービジョンの関係(2) 東京女子大学大学院 大西まどか 東京女子大学大学院 小田浩一 大西・小田(2014)は,文字を構成するピクセル数を 変えることで解像度を変化させてコントラスト閾を比較 し,高解像度の表示では文字の認識に必要な基本周波数 の成分が多く,閾値が低くなると報告した。しかし,解 像度の変化と刺激同士の類似性が共変していたため,本 研究では解像度による類似性の変化が少ない刺激を使 い,解像度の違いが文字のコントラスト閾に与える影響 を再検討した。 文字に似たモノクロ画像(視角18.9分,解像度による 刺激の類似性の変化は2%以下)を刺激に用い,6, 8, 12, 16, 24, 32, 48 pixel /文字の解像度を設定して,それぞれ 上下法でコントラスト閾の測定を行った。 コントラスト閾に対する分散分析の結果,解像度の主 効果が有意となり,先行研究と同様の結果が得られた。 類似性の影響を最小限にしたので,基本空間周波数の成 分の変化によって高解像度表示における視認性が向上し た可能性が強まった。 個人間で共通する芸術作品に対する感性の定量評価の試み 大阪大学 若林正浩 芸術作品に対する「感性」では,作品鑑賞能力だけで なく,他者との円滑なコニュニケーションを可能とする 能力として個人間で共通する「感性」の重要性が指摘さ れている。しかしながら,これまでの感性心理学研究に おいて,感性が個人間でどの程度共通性を持つのか,と いう点についてはほとんど検討されてこなかった。本研 究では,画像印象評定課題として 77名の被験者に30枚 の画像(風景画 15枚,風景写真15枚)を提示し,23形 容詞対による SD法と因子分析を実施した。画像毎に算 出される因子得点について,被験者間で最も相関の高い 因子を対象として再度因子分析を行った。その結果,第 1 因子については,被験者間で共通した 1 つの潜在因子 で説明され,個人の印象評定の約 30%を説明すること が明らかとなった。この因子成分による出力を利用する ことで,ヒトは他者が芸術作品についてどのような印象 をもつのかを推測している可能性が考えられる。

(5)

幼児における虚記憶の発生メカニズムと自己制御機能の 関係 専修大学大学院 堀越 歩 名古屋大学・日本学術振興会 小林正法 東京大学大学院 真田原行 専修大学 榎本玲子 専修大学 山上精次 6 歳,8 歳,10 歳の児童を対象に虚記憶と実行機能の 関 係 性 を 検 討 し た Ruffman, Rustin, Garnham, & Parkin (2001)はそれらに負の関連を見出した。本研究では就 学前の幼児を対象に虚記憶と実行機能の関連を検討し た。31名の幼児(M=5歳7 ヵ月,SD=7 ヵ月)に対し, 実行機能と近い概念である自己制御機能を保育士評定に て測定した後,聴覚提示による DRM 手続きを行った。 実 験 の 結 果, 自 己 制 御 機 能 が 正 再 生 数 に 正 の 影 響 (β=.43, p=.01)を与え,正再生数が虚再生数に正の影 響(β=.41, p=.02) を 与 え て い た(CFI=1.00, RMSEA =.00)。自己制御機能の高い幼児は聴覚課題に固執しす ぎず記銘に注意を分配できるため正再生数が増加する が,意味的処理が導かれ虚再生数が増加したと推測され る。 ニオイの選好判断に及ぼす接触順序の影響 筑波大学大学院 中野詩織 筑波大学 綾部早穂 複数のニオイの中から最も好きなものを選ぶ際,最初 に嗅いだニオイへ選好が偏る傾向がある(中野・綾部, 2011)。本研究では,接触順序による選好への影響につ いて,選択肢間の比較難易度(弁別性)を要因として調 べた。弁別性低セットとしてジャスミンティー 4種類, 弁別性高セットとしてフレーバーティー 4種類の2セッ トを用いた。各ニオイへの接触順序とセット順序は参加 者間でカウンターバランスをとった。実験の結果,弁別 性高セットでは接触順序間で選好に偏りは無かったが (χ(3)=1.81, n.s.),弁別性低セットでは1番目に嗅いだ2 ニオイを選好した参加者が他の順序よりも有意に多かっ た(χ(3)=34.38, p<.01)。一週間後に,一日目とは接触2 順序を変えて再度各セットの選好判断を求めた場合でも 同様の傾向がみられた。これより,選択肢が互いに似 通っている場合には,どの順番で接触したかが選好に重 要である可能性が示唆された。 運動視の同化・対比と脳内の神経伝達物質との関係 日本女子大学 吉本早苗 日本女子大学 竹内龍人 ATR-Promotions 島田育廣 ATR-Promotions 河内山隆紀 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 近藤洋史 運動方向が曖昧なテスト刺激は,先行する運動刺激の 持続時間が短いとそれと同方向に見え(同化),持続時 間が長いと反対方向に見える(対比)。同化から対比に 切り替わる先行刺激の持続時間には大きな個人差がある が,その理由は明らかではない。そこで本研究では,脳 内の神経伝達物質の濃度と運動視の時間的な同化・対比 の個人差との関係を検討した。MRスペクトロスコピー により,神経細胞の抑制を担うγ-アミノ酪酸(GABA) および興奮を担うグルタミン–グルタミン酸(Glx)濃度 を計測した。合わせて,同化から対比へ切り替わるとき の先行刺激の持続時間を心理物理学的に推定した。その 結果,Glx濃度に関しては持続時間と前部帯状皮質,お よび前頭前野との間に正の相関が認められた。一方で, 持続時間とGABA濃度との間には相関が認められなかっ た。運動視の同化と対比における個人差は,興奮を担う グルタミン酸の濃度差を基盤とした同化の機能の違いに 基づいている可能性が示唆される。 黒子が男に見えるとき  ―自己の身体能力に基づいた他者判断― 九州大学大学院人間環境学府 岸本励季 九州大学大学院人間環境学府 佐々木恭志郎 九州大学大学院人間環境学府 郷原皓彦 九州大学大学院人間環境学府 小代裕子 九州大学大学院人間環境学府 南 智然 九州大学大学院人間環境学研究院 三浦佳世 九州大学基幹教育院 山田祐樹 人のシルエットや声について社会的カテゴリ判断を行 うと,男性や外集団のメンバーなどの自己に危害を及ぼ す可能性の高いものの方向に判断が偏る。このような判 断バイアスは,たとえエラーを伴うおそれがあったとし ても,脅威となりうる他者を効率的に検出し,排除する ために生じていると考えられている。本研究では,この 判断バイアスが身体的負荷や体力によって影響を受ける 可能性について検討した。参加者は,錘の入ったリュッ ク(大負荷条件)あるいは錘の入っていないリュック (小負荷条件)を背負いながら,男性らしさと女性らし さを21 段階で変化させたシルエット刺激の性別判断を

(6)

行った。結果として,負荷条件間で判断成績に差はない 一方で,女性参加者でのみ BMI と血中酸素飽和度が低 いほど性別判断が男性方向へ偏ることが明らかになっ た。本研究の結果は,女性が一時的な身体的負荷よりも 自身の身体能力を基に社会的判断を行いやすいことを示 唆する。 無意味図形に対する直感的選好と脳領域間の位相同期 (独)産業技術総合研究所 武田裕司 (独)産業技術総合研究所 木村元洋 これまでの研究において,物品の写真画像に対する直 感的選好判断課題では,ポジティブな選好判断を行って いる場合に刺激提示後 150∼350 ミリ秒付近における低 ガンマ帯域(30∼40 Hz)の脳領域間位相同期性が高い ことが示されている。このことは,単位時間あたりの脳 領域間の情報伝達量(情報処理量)が多い場合に「好 き」と答えやすいことを示している。本研究では無意味 図形に対する選好と脳領域間位相同期性の関係を検討し た。その結果,物品の写真画像に対する判断時とは逆 に,ポジティブな選好判断を行っている場合に低ガンマ 帯域(ピークは刺激提示から292ミリ秒後)の脳領域間 位相同期性が低下することが示された。このことは,刺 激への情報処理量が多い場合に「好き」と答えやすいの か,逆に情報処理量が少ない場合に「好き」と答えやす いのかが,判断対象となる刺激の種類によって異なるこ とを示している。 洞察問題解決における認知資源と拡散的処理モードの影響 立命館大学 西田勇樹 立命館大学 織田 涼 立命館大学 服部雅史 近年の洞察問題解決研究では,二重課題法による認知 負荷が気づきを伴わない潜在ヒントの利用を促進すると いう研究結果が報告されている(服部・織田,2013)。 しかし,その促進効果は,認知負荷が認知資源の分散を もたらしたことによる効果なのか,収束的思考を抑制し たことによるものなのかが明らかではない。そこで,本 研究では,洞察問題開始前に収束的処理に誘導する計算 課題,または拡散的処理に誘導するアイデア生成課題を 行うことで,認知負荷がもたらす潜在ヒント利用促進効 果について検討した。実験の結果,アイデア生成課題を 実施した認知負荷なし条件において,洞察問題開始後 95 秒時点で正答率の上昇がみられた。また,認知負荷 による促進効果自体は見られなかったが,アイデアを多 く生成した参加者は認知負荷によってむしろ解決が抑制 された。以上の結果から,処理モード操作とアイデア生 成数が後続の洞察問題解決に与える影響について考察し た。 表情変化の速度が知覚される感情に与える影響 東京女子大学大学院 乙訓輝実 目的: 人は他人の表情から複雑な感情を知覚するが, 表情変化の速度によって複雑感情の知覚に影響がみられ る(Kamachi et al., 2001)。本研究では表情変化速度を変 えたときの,感情の知覚の仕方について検討する。方 法: 表情は4種類(喜び,驚き,怒り,悲しみ)である。 表情変化刺激は真顔から始まり 4表情のうちの1表情で 終わる動画である。表情変化速度は100∼3200 msの6種 類。視力条件は正常視力−0.1の4条件とし,刺激サイズ は視角1.44度である。感情評価は自慢,楽観,夢中,安 ,憤慨,嫉妬,苦痛,失望,恥ずかしい,無視,同 情,驚きの12感情に対し知覚強度を5件法で評価をさせ た。結果と考察: 各表情から知覚した複雑感情は主に表 情と同じ感情カテゴリの下位に属し,表情変化の速度に よって各感情の知覚強度に違いがあった。複雑感情によ り知覚速度が異なるため,表情からの知覚感情に差異が 起こると考えた。 実験環境が情動刺激処理に及ぼす影響: 木質空間と非木 質空間の比較 産業技術総合研究所 木村元洋 住友林業株式会社 苅谷健司 愛知淑徳大学 永井聖剛 心理学や神経科学実験では,複数の条件を同一の実験 室で行うのが一般的である。しかし我々を取り巻く環境 の多様性を考えると,環境自体が人間の認知機能に与え る影響の理解もまた重要な研究課題といえる。本研究で は,情動刺激処理に対する実験環境の影響を調べた。木 質および非木質空間において不快・快・中性画像を呈示 し,被験者(成人 48 名)には,普段と同じように画像 を観察するよう求めた。画像に対する事象関連脳電位 (ERPs)を測定した結果,中心-頭頂部を優位とする後期 陽性電位(LPP)が,画像呈示後約 600∼1500 ms にわ たって観察された。非木質空間に比べ木質空間でのLPP は,画像の種類を問わず,1000∼1500 ms 区間で減衰し た。LPPは情動刺激に対する自動的・持続的な注意を反 映していると考えられている。本研究結果は,木質空間 では情動刺激へ向いた注意が拡散しやすくなる可能性を 示唆している。

(7)

処理の流暢性が刺激の美的評価に及ぼす影響 東京女子大学 森田磨里絵 東京女子大学 田中章浩 人はどのようなものを見ると,美しさや好ましさを感 じるのだろうか。同一の視覚刺激に複数回曝露されると 当該刺激に対する知覚情報処理は流暢になり,知覚情報 処理の流暢性が高まるほど美的評価も高まることが知ら れている。しかし,刺激に関する情報処理は,知覚レベ ルよりも高次のレベル(概念レベルなど)でも行われ る。本研究では,画像に対する知覚レベルおよび概念レ ベルの情報処理の流暢性が美的評価に及ぼす影響につい て検討した。実験では,New画像およびOld画像に対し て,Remember/Know 判断および美的評価(美しさ,好 ましさ)を求めた。画像に対する Know判断は知覚レベ ルの流暢性,Remember判断は概念レベルも含めた流暢 性を反映していると仮定する。実験の結果,Old画像の うち,Know 判断された画像と比べて Remember 判断さ れた画像に対する美的評価が有意に高く,概念レベルも 含めた流暢性が美的評価を高める可能性が示唆された。 無意味刺激に有意味さを知覚する現象(パレイドリア) の個人差 東京家政学院大学 加地雄一 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 北村美穂 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 北川智利 無意味刺激に有意味さを知覚する現象をパレイドリア という。本研究ではパレイドリアの個人差(性別,性 格,感情)を検討した。参加者は大学生166名であった。 性格は TIPI-J (外向性,協調性,勤勉性,神経症傾向, 開放性の5因子),感情は日本語版PANAS (陽性,陰性の 2因子)で測定した。無意味刺激(ランダムドット)を 呈示し,何か形が見えたらペンでその形をふち取り(何 も見えない場合はその旨を報告)するよう求めた。結 果,パレイドリアは128名に生じ,38名には生じなかっ た。パレイドリアの有無を従属変数とし,性別,性格 5 因子,感情2因子を独立変数とするロジスティック回帰 分析を行ったところ,パレイドリアは女性ほど,神経症 傾向が高いほど,陽性感情が高いほど,陰性感情が低い ほど生じやすいという結果が得られた。パレイドリアの 物理特性の個人差を検討したところ,開放性が高いほど 面積が大きかった。 香りの二者択一課題におけるサンプリングバイアス 立命館大学 満田 隆 眼前に提示された 2枚の画像から好きな画像1枚を選 択するとき,選択直前に視線は選択側の画像に向く傾向 がある。視線が向けられた画像は,単純接触効果によっ て他方の画像に比べて好意度が増す可能性があることか ら,これまで多くの研究者によって視線バイアスと選好 判断の関係が研究されてきた。しかし,視覚以外の選好 判断においても同様のバイアスが生じるかどうかは,こ れまでほとんど検証されていない。そこで本研究では, アロマオイルの選択課題中の嗅動作を計測した。実験の 結果,好きな香りの選択課題では選択直前に選択側を嗅 ぐ傾向が強いのに対して,嫌いな香りの選択課題ではそ の傾向が弱かった。しかし,より男性的な香り,または 女性的な香りの選択課題においても,選択直前に選択側 の香りを嗅ぐ傾向が見られた。この結果は,香りの選択 課題における嗅動作のバイアスが,選好に限定されない 一般的な性質であることを示している。 ギャップ前後での時間マーカーの空間周波数変化による 時間分解能の低下 九州大学 廣瀬信之 九州大学 山本美和 九州大学 奥田 譲 九州大学 森 周司 聴覚では,無音前後の音の周波数が同一である周波数 内無音検出と比べ,周波数が異なる周波数間無音検出に おいて時間分解能が低下する。これは無音を挟む先行 マーカーと後続マーカーが異なる周波数チャンネルで処 理され,無音(時間ギャップ)の検出にチャンネルをま たいだ時間処理が必要であるためと考えられている。視 覚系には特定の周波数帯域に選択的に応答する複数の空 間周波数チャンネルが存在することが知られている。本 研 究 で は,Gabor パッチを時間マーカーとした時間 ギャップ検出課題を用い,視覚における時間分解能を測 定した。ギャップ前後のマーカーの方位が同じ場合(実 験1)も両者の間に15度の方位差を設けた場合(実験2) も,一部の条件を除き,周波数間条件では周波数内条件 と比べてギャップ検出感度の有意な低下が認められた。 したがって,空間周波数次元におけるチャンネル間処理 によって時間分解能が低下する可能性が示された。

(8)

多段階抽選ゲームでの反応時間に対する結果パターンの 効果5 慶應義塾大学 大森貴秀 同志社大学 原田隆史 慶應義塾大学 坂上貴之 3段階の抽選を経てアタリが確定するスロットマシン 型ゲームにおいて,各段階の通過確率配分と結果パター ンが反応潜時に及ぼす効果が検討されてきた。スロット マシン実機筐体を用いたシミュレータでの先行研究で, アタリとニアミス(1, 2番目の停止図柄がアタリ図柄で あるハズレ)が次試行の開始ボタンの反応潜時を増大さ せる効果が確かめられ,その効果がアタリの生起頻度と 報酬を変化させることで変化し,ゲーム全体の反応潜時 と面白さの評価にも影響する可能性が示された。本研究 では,2種類のアタリ図柄間でアタリの頻度を等しくし 報酬のみを大きく変える条件を導入した。結果,アタリ 後の反応潜時に図柄間で差異が生じた一方で,ニアミス 後の反応潜時の図柄間での差異は小さくなった。このこ とから,反応潜時へのニアミス効果は単純に報酬量のみ で説明できるものではなく,アタリ生起頻度も含めた検 討が必要であることが示唆された。 衣食住におけるストレスを軽減する配色に関する研究 北海道大学 袁  東 北海道大学 川端康弘 近年,色彩セラピーや色彩心理のように,色と人々の 感情の関係に注目が集まっている。また,人々は色にさ まざまなイメージを持っており,その時の感情でインテ リアや服の色を選ぶことがあると言われている。たとえ ば,興奮しているときは赤系の色,悲しいときは青系の 色などが挙げられる。あるヨーロッパの出来事で,うつ 病の患者の部屋の色を青色から赤色に変えたところ,う つ病が改善したという事例がある。また,現代はストレ ス社会と言われるように,多くの人がストレスを抱えて いるようである。学生の私たちにも少なからずストレス を感じる場面があり,そのストレスを少しでも軽減する 方法はないかと考えた。本研究では,衣食住における色 とストレスの関係について調査し,ストレス原因に適し た癒しの色彩の提案に寄与することを目的としていて, 及び異文化においての選定メカニズムについて調査す る。 視覚野におけるGABA濃度と運動視における周辺抑制 日本女子大学 竹内龍人 日本女子大学 吉本早苗 ATR-Promotions 島田育廣 ATR-Promotions 河内山隆紀 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 近藤洋史 運動するパターンの方向弁別は,その大きさが増加す るにつれて困難になる。この現象は,中心における運動 検出に対して周辺から抑制がかかることにより生じてい ると考えられている。周辺からの抑制の強さには個人差 があるが,その神経基盤については明らかでない。もし 周辺抑制が抑制性の神経細胞の働きによるのであれば, 抑制を担う脳内 GABA (γ-アミノ酪酸)濃度と周辺抑制 の強度との間には相関がみられる可能性がある。そこ で,MRスペクトロスコピーにより各部位における神経 伝達物質の濃度を計測した。その結果,周辺抑制の強度 とV1 (第一次視覚野)におけるGABA濃度との間に正の 相関がみられた。一方で,MT野や前部帯状皮質,前頭 前野といった部位での相関はみられなかった。また,興 奮を担う脳内グルタミン酸濃度との相関はどの部位にお いてもみられなかった。以上の結果は,周辺抑制の個人 差は,視覚の低次レベルにおける抑制作用に依存する可 能性を示唆している。 継起音の 等時隔 の知覚に及ぼす併存音群の効果 明星大学 境 敦史 継起する音が“等間隔”であると述べる場合,「時間」 や「間隔」の規模を知覚・比較しているのではなく,後 続音が先行音群を基準として「早すぎず遅すぎない」と 知覚し,「間隔」という空間概念を借りて表現している と考えられる。1000 Hz 純音による 5 ms のクリックを 3 回反復呈示する際,第 1 音と第 2 音との SOA よりも第 2 音と第 3音とのSOAを短く設定して,第1音と第2音と のSOA に 500 Hz 純音のクリックを反復的に併存させる と,第 3 のクリックの出現は早過ぎも遅過ぎもせず “ちょうどいい”と知覚される条件があることを見出し た。恒常法によって,2条件のSOA (480 ms, 720 ms)の もとで0, 2, 4, 7音を等間隔に配置した他,各SOAに相当 する持続音を併存させる条件でも測定して,この現象の 生起条件を検討した。併存音数が2或いは4個の条件で, “分割時程”の過大評価が見られたが,併存音数が 7あ るいは持続音呈示条件では,その過小評価傾向が得られ た。

(9)

ベクションにおける奥行き手がかりの効果 立命館大 瀬谷安弘 立命館大学 篠田博之 ベクションは様々な要因の影響を受けることが知られ ているが,そのような要因の1つとして,両眼視差や視 覚物体の大きさの変化といった奥行き手がかりが挙げら れている。本研究では奥行き手がかりのベクションへの 効果の更なる理解を目的とし,奥行き手がかりを操作 し,それらのベクションへの効果を詳細に検討した。実 験では,観察者が前進または後退運動時に生じる視覚パ ターンの運動を模したオプティカルフローを被験者に提 示した。ドットの大きさや両眼視差が観察者からの距離 に応じて変化する大きさ手がかりや両眼視差手がかりの 有無を操作した。結果は,大きさ変化または両眼視差の いずれかまたは両者が付加された場合に,いずれの手が かりも付加されていない場合よりもベクションが大きく なった。この結果は奥行き手がかりによってベクション が向上することを示唆する。 乳児における運動情報による対象表面の素材質感の知覚 新潟国際情報大学 伊村知子 新潟大学 白井 述 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 増田知尋 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 和田有史 成人では,貫入運動における貫入前後の速度差および 加速度変化が,物体表面の材質の知覚に影響を及ぼす (Masuda et al., 2011)。本研究では,発達初期における貫 入運動による材質知覚について,生後9∼12カ月の乳児 を対象に馴化–脱馴化法を用いて検討した。成人には固 い表面が知覚される刺激として,貫入後に速度,加速度 の増加する動画を2種類と,柔らかい表面が知覚される 刺激として速度,加速度の減少する動画を2種類用いた。 馴化試行ではいずれかの質感を生じさせる動画1種類に 馴化させた後,テスト試行では馴化試行と同じ質感の動 画もう 1 種類と,異なる質感の動画 1 種類を提示した。 その結果,いずれの質感動画に馴化させた場合でも,テ スト試行において新奇な固さの表面の方を有意に長く注 視する傾向が見られた。このことから,生後9カ月以降 に,貫入前後の速度及び加速度の変化から対象表面の固 さを区別できる可能性が示唆された。 ヒト幼児におけるパターン優位性効果と探索非対称性 相模女子大学 後藤和宏 京都大学 飯島真応 京都大学 板倉昭二 ヒト成人が線分方向の弁別をする場合,線分だけが呈 示されるよりも線分にL字の文脈が付加されることで弁 別が容易になる(パターン優位性効果)。これは,線分 と文脈のまとまりによるゲシュタルトが創発するからで あると考えられる。本研究では,4歳児においてパター ン優位性効果を検討した。実験は四肢選択課題であり, 標的刺激だけが3つの妨害刺激とは異なっていた。標的 刺激と妨害刺激は,それだけが呈示される場合と,弁別 とは直接関係ない視覚的文脈上に呈示される場合があっ た。実験で用いたすべての刺激に関して,幼児は刺激単 独呈示よりも,それらが冗長な文脈上に呈示された場合 に反応時間が短いというパターン優位性効果が示され た。さらに,幼児は成人では見られなかった探索非対称 性が示された。この結果は,創発性は成人同様,幼児に も知覚されるが,形の知覚が一様の速度で成熟するわけ ではないことを示唆している。 袋文字の読みにくさと線頻度の関係 東京女子大学 高橋あおい 東京女子大学 小田浩一 【目的】袋文字は広く使われている書体であるがその 視認性は低い。Arditiら(1997)はアルファベットの袋 文字の視認性の低さを示したが,本研究では漢字の袋文 字の視認性を線頻度(Majaj ら,2002)と認知閾の関係 性から検討する。また,観察者の最小分離角と線頻度か ら認知閾を説明できるかについても検討する。【方法】 刺激は3種類の線頻度グループを設定し,各10文字ずつ 漢字を選び,袋文字と非袋字で表記した。刺激は恒常法 で提示し,50%の確率で読み取れる認知閾サイズを推定 した。被験者は正常視力を有する男女12名。【結果と考 察】線頻度グループと書体を要因とする二要因分散分析 より,袋文字は非袋文字よりも視認性が低いことが分 かった。線頻度と認知閾の関係を示す回帰式から,袋文 字は非袋文字よりも線頻度が高くなるために視認性が低 下すると読み取れた。また,認知閾は最小分離角×線頻 度で予測できることがわかった。

(10)

交差・反発事象への音の効果は視聴覚の主観的同時性に 依存する NTTコミュニケーション科学基礎研究所 北川智利 NTTコミュニケーション科学基礎研究所 北村美穂 視聴覚情報の統合(視聴覚錯覚の生起)が,視覚事象 と聴覚事象の物理的同期と主観的同時性のどちらに依存 するのかを,交差・反発事象を用いて検討した。左右に すれ違う二つの円盤は,中心で交差するようにも反発す るようにも見えるが,交差する時点に短い音を提示する と,反発知覚が優位になる。円盤の交差に対して様々な 時間差で音が呈示され,参加者は「交差/反発のどちら に見えるか」,「円盤が重なった瞬間と音が同時/非同時 のどちらだったか」を答える二重課題を行った。交差・ 反発知覚を,主観的に同時と感じられた試行と非同時と 感じられた試行に分けて分析すると,反発知覚の割合は 物理的な時間差によらずほぼ一定であった。一方,主観 的に同時と答えた試行で反発知覚が優位に生じた。交 差・反発事象への音の効果が主観的同時性に依存してい て,物理的同期からは独立であるという結果は,視聴覚 統合が主観的な同時性に基づいて生じることを示唆す る。 経験は文字認知にいかなる影響を及ぼすのか? ―帰国児童の「ひらがな」認知特性をめぐって― 東京大学大学院学際情報学府 佐藤智子 小学校入学前後の時期を複数言語環境で過ごした子供 たちは,日本で教育を受けた子供たちと比べ日本語を使 用する機会が少ない。このような日本語経験の多寡は, 彼らの日本語文字の知覚・認知にどのような影響を与え ているのだろうか。人間の知覚や認知のもつ多重同時制 約性は,刺激が不完全であるほど重要度を増し,もとの 刺激を補おうとする。この傾向を利用した,「ひらがな」 版の文字完成テスト(以下LCT)を改変した「マス」あ り・「マス」なし・中心点版を用い,日本語学習で使用 される「マス」や文字の中心に打った点(中心点)が文 字認知の際の制約となっているかを検討した。具体的に は,帰国児童(小学校 3年生∼6年生)を対象に三つの 版を使って実験を行い,佐藤(2011, 2014)の実験によ る小学生や留学生の結果と比較,分析した。結果とし て,帰国後半年以上日本語を学習した帰国児童でも,日 本の小学生より留学生に似た傾向を示すことが明らかに なった。 日本人の色の好みは何で決まるか?: 色から連想され る物体と抽象的イメージの影響 立教大学 浅野倫子 東京大学 金沢菜々実 Brown University Schloss Karen University of California, Berkeley Palmer Stephen 東京大学 横澤一彦 色彩の嗜好度(好悪の度合い)が決まる仕組みについ てPalmer & Schloss (2010)は,色から連想される物体の 好ましさが色の好ましさを決定づけるという生態学的誘 発理論を提唱した。本研究では,色から連想される具象 的な物体だけではなく,抽象的なイメージも日本人の色 彩嗜好に影響している可能性について検討した。実験で はそれぞれ別群の日本人被験者に(1)様々な色相,色 調の 32 色の嗜好度,(2)各色から連想される抽象的イ メージ,(3)(2)の抽象的イメージの嗜好度の回答を求 めた。その結果,(1)の色彩嗜好度と(3)の各色から 連想された抽象的イメージの嗜好度の間には中程度の正 の相関がみられた。この相関の強さは,同様の手続きで 得られた日本人の色彩嗜好度と色から連想された物体の 嗜好度の相関の強さにほぼ匹敵するものであった。さら に重回帰分析により,色から連想された抽象的イメージ と物体の両方の嗜好度が日本人の色彩嗜好に影響してい ることが明らかになった。 同時に呈示された複数の物体に対する魅力の判断 ―刺激固有性の検討― 中京大学  水秀和 水・河原(2014)は,複数人の顔の魅力をグループ 全体として知覚できることを,2グループの魅力度の弁 別課題により明らかにした。しかし,この知覚現象が顔 固有であるか,同時に呈示された複数の物体の魅力を評 価する時に共通する現象であるかは明らかではない。本 研究では,全体としての魅力の判断の研究を顔以外の物 体(靴画像)に拡張した。魅力の高い靴と魅力の低い靴 が同じ数含まれる比較グループと,魅力の高い靴が高比 率で含まれる高魅力グループを2フレームに分けて呈示 した。被験者は2グループのうち,全体として魅力の高 いと思う方を答えた。加えて,課題に対する被験者の方 略を推測するための統制実験を実施した。結果は顔と異 なり,複数の靴の全体としての魅力の判断は難しいこと を示した。統制実験から,一対比較ならば靴どうしの魅 力を比較でき,同時に複数呈示した場合もおよそ 1足ず つしか魅力を評価していないことが示唆された。

(11)

顔の肥痩判断と錯視: 顔の布置情報の変化に対する過小 評価 名古屋大学 河野直子 神戸女学院大学 矢野円郁 名古屋大学 大川佳純 名古屋大学 田中 聡 名古屋大学 飯高哲也 名古屋大学 西岡和郎 名古屋大学 尾崎紀夫 顔の知覚では布置情報全体の処理が重要とされる。本 研究では顔の部分特徴間の距離が顔全体の知覚に与える 影響を,広狭判断と肥痩判断の課題条件間で比較した。 倫理委員会承認に則り,女性 27名が参加し,回答に欠 損があった 2名を除く25名のデータを解析対象とした。 参加者に,顔幅に対して両眼間の距離が 43%, 46%, 47%, 52%の割合になるよう調整した同性の新奇顔写真 を一対比較させ,広狭および肥痩の判断を求めた。その 結果,顔の幅に対する両目間の距離の比率が高いほど顔 の横幅が広く見えると回答された一方,太く見える度合 は条件間に有意な差が認められなかった。即ち部分特徴 間の距離が顔の形状知覚に影響する錯視を追認した一 方,肥痩判断の条件では影響がないか過小評価されてい ることを確認した。同じ顔に対する観察であっても,感 性的印象を問う条件では,顔全体の知覚に与える布置情 報の影響は矮小化されている可能性がある。 デンショバトにおける微細な「速さ」(反応間距離/ 反応間時間: IRD/IRT)反応次元の継時弁別訓練効果 明星大学 茅野一穂 明星大学 小美野 喬 ハトを被験体とし,半径 120 mmの反応領域を持つ実 験箱により,連続する2反応間で規定される反応の速さ を設定値とし,3本の平行線分で構成される2種の角度 刺激(0°と90°)間による継時弁別訓練を行った。弁別 訓練は,2訓練刺激の一方で速い速さ(mm/msec: 速反 応)を,他方で遅い速さ(遅反応)を強化した。30セッ ション以上の弁別訓練を行い,弁別訓練指標で,速さの 間に分化が生じたとき,弁別訓練を終了した。その後, 消去手続きにより線分刺激の角度次元で般化テストを 行った。その結果,速さの頂点は遅反応訓練刺激の方向 に移動し,遅反応訓練刺激において最も遅いという速さ 次元の般化勾配が得られた。速さ次元をIRDとIRTに分 解して分析したところ,IRDの般化勾配は速さ次元の般 化勾配に類似し,IRTの般化勾配は比較的平坦であった。 したがって,微細な速さ反応次元は,IRDにより強く規 定されることが示唆された。 乳児の側頭領域における顔の人種効果の検討 自然科学研究機構生理学研究所/日本学術振興会  小林 恵 University of Toronto Kang Lee 日本女子大学 金沢 創 中央大学 山口真美 自然科学研究機構生理学研究所 柿木隆介 成人では自人種顔に比べ他人種顔の認識が困難である という人種効果(Other-Race Effect)という現象が報告 さ れ て お り(Feingold, 1914; Meissner & Brigham, 2001), これは生後9カ月頃に生起するといわれている(Maurer & Werker, 2014)。本研究では物体(野菜)画像提示中の 活動をベースラインとし,自人種顔と他人種顔に対する 生後 5カ月児と9カ月児の脳血流反応を,近赤外分光法 (NIRS)を用いて計測した。生後 3 カ月頃は自人種顔・ 他人種顔ともに弁別可能な一方,生後9カ月児は他人種 の顔 の 弁 別 が 困 難 に な る こ と か ら(Kelly et al., 2007, 2009; Heron-Delaney et al., 2011),生後 9 カ月児では自人 種顔と他人種顔で異なる応答がみられると予測される。 データについては当日報告する。 注意が目覚める間に確立される知覚的構え 神戸親和女子大学 犬飼朋恵 中京大学 下村智斉 中京大学 河原純一郎 高速逐次提示される非標的に紛れた標的の同定成績 は,標的が刺激提示後すぐに出現する場合に比べてしば らくしてから出現するときの方が高い。この注意の目覚 めは,時間的探索課題での注意の適切な分配がしばらく の時間を要することを示している。本研究では,注意の 目覚めの程度に応じて刺激系列の周辺に出現する妨害刺 激に注意が捕捉されるか否かを検討した。このとき知覚 的構えの効果を調べるために,様々な色の非標的のなか に赤色の標的を紛れさせることによって,観察者に特徴 探索様式を採用させた。実験の結果,妨害刺激が出現し なかったときの標的の同定成績は,標的が刺激系列の後 ろの方に出現するほど高くなり,注意の目覚めが認めら れた。一方妨害刺激が出現したときには,標的の刺激系 列位置に関係なく注意の捕捉が認められた。これらは, 特徴探索様式に基づいた知覚的構えが注意の目覚めの程 度に関係なく確立されることを示している。

(12)

エビングハウス錯視の左右配置が錯視量に及ぼす影響に ついて 帝京大学 実吉綾子 エビングハウスの錯視は中心の円を小さな円が囲んだ ものと大きな円が囲んだものが左右水平に配置されるこ とが多い。実験1では小さな円に囲まれたエビングハウ ス錯視と比較円を左右水平に配置すると,錯視図形を右 に配置した条件の方が,錯視図形を左に配置した条件よ りも錯視量が多くなることが示された。実験2では,こ の錯視量の変化が,左に配置された図形の錯視量が減少 しているためなのか,右に配置された図形の錯視量が増 加しているためなのかについて検討を行った。錯視図形 を上下,左右に配置した条件の主観的等価点を測定し, 錯視量を算出して比較した。その結果,錯視図形を右に 配置した条件は上下中央,左に配置した条件と比較して 錯視量が有意に増加した。左配置における減少は認めら れなかった。この結果から,高空間周波数に対する左半 球–右視野の処理優位性により,相対的に高い周波数帯 域で表現される周囲の円の処理が右配置の時に優先され 錯視量が増加した可能性について考察した。 情報端末でマンガコンテンツを読む場合の読み特性 筑波大学大学院 濱田 宰 筑波大学大学院 三原鉄也 筑波大学 森田ひろみ スマートフォンなどの普及により情報端末でマンガを 読む機会が増えつつあることから,今後小さな画面でマ ンガを読む場合の読み特性を調べ,マンガの表現や提供 形態に反映させる必要があるだろう。そこで本研究は, 画面の大きさによるマンガの読み特性の違いを調べるこ とを目的とし,実験を行った。実験では同一のタッチパ ネルディスプレイを用い,スマートフォン,タブレット 端末,ノートパソコンの 3種類の画面サイズでマンガを 表示する条件と印刷物の合計4条件でマンガを読んだ時 の読み時間,読みやすさを比較した。実験の結果,ス マートフォン条件はその他の条件に比べ,読了時間が長 く,読みやすさの評価が低かった。また,どの条件でも 見開きの文字数と読み時間が線形関係にあり,文字数に 対する読み時間の傾きがスマートフォン条件において最 も大きいことがわかった。このことが,読了時間の長さ や読みにくさに関係すると考えられる。 拡大錯視の測定と生起条件の検討 東京大学 近藤あき 立正大学 高尾沙希 立正大学 有賀敦紀 東京大学 高橋康介 東京大学 渡邊克巳 本研究では主観的輪郭の内側にある文字が外側にある 文字に比べて大きく見えるという拡大錯視の生起条件を 検討した。実験 1では画面の左右に呈示された2つの刺 激(複数の円)の大きさを比較する課題を行った。一方 の刺激に対して主観的輪郭で囲む,実輪郭で囲む,また は円のみで呈示する,という操作を加えた結果,実輪郭 条件では円のみ条件に比べて有意に円が大きく知覚さ れ,主観的輪郭でも弱いが同じ傾向が観察された。刺激 内の円を1つに減らすと拡大錯視は生じなかった(実験 2)。実験3では複数の線分からなる刺激の長さを比較す る課題を行い実験1と同様の結果を得た。従って拡大錯 視は(1)主観的輪郭よりも実輪郭の方が安定して生じ る,(2)輪郭内に複数の刺激要素(テクスチャ様刺激) が必要である,(3)長さの知覚についても生じる,とい うことが示された。 広視野3D運動ドットが注意の瞬きに与える影響 鹿児島大学 髙川慎哉 鹿児島大学 木原 健 鹿児島大学 大塚作一 人間の視覚的注意機能を反映する現象に注意の瞬き (Attentional Blink: AB)がある。これは,高速逐次視覚 呈示される刺激群の中から二つの標的を報告する課題に おいて,第一標的から 200∼500 ミリ秒後に呈示された 第二標的の知覚が困難になる現象である。先行研究よ り,限られた視野に 2D呈示される運動ドットによって AB が減少することが報告されている。しかし,広視野 に運動ドットが2D呈示された場合のABへの影響は不明 である。そこで本研究では,様々な方向(拡散・収束・ 上下・左右・ランダム)に運動するドットを広視野に 2D呈示し,視野中心に呈示されるAB課題に与える影響 を検討した。その結果,ドットの運動方向に関わらず AB は変化しなかった。次に,運動ドットの影響を強化 するため,ドットを広視野に3D呈示して実験を行った。 その結果,特定の運動方向条件で ABが減少した。以上 から,立体呈示される背景の運動により,視野中心の注 意課題が影響を受けることが示唆された。

(13)

影を手がかりとした形状知覚の発達 中央大学大学院/日本学術振興会 佐藤夏月 日本女子大学 金沢 創 中央大学 山口真美 乳児は影を手がかりとした形状の知覚(shape-from-shadow)ができるかを調べる実験を行った。実験1では attached shadowからボール,cast shadowからディスクを 知覚できる図形を,5∼8 カ月児が弁別できるか検討し た。影は背景より明るい時に影として知覚されないこと が示されていることから(Cavanagh & Leclerc, 1989; Ken-nedy & Bai, 2000),実験 1 の図形を弁別できた 7∼8 カ月 児を対象に,実験 2 では図形を白黒反転させたコント ロール実験を行った。実験 1 の結果,7∼8 カ月児は at-tached shadow 図形と cast shadow 図形を弁別できること が示された。白黒反転した図形を用いた実験 2の結果, 7∼8 カ月児は図形を弁別しないことが示された。さら に実験を追加し,7∼8カ月児は2種の影から異なる形状 を知覚する可能性が示唆された。 反応競合文脈の獲得・持続に及ぼす観察者の移動効果 愛知淑徳大学大学院 蔵冨 恵 中京大学大学院 河原純一郎 本研究は環境文脈に及ぼす観察者の空間移動の効果を 調べた。フランカ干渉効果は不一致試行が頻発する空間 に比べて,低頻度で起こる空間では増大する(頻度効 果)。本研究では,学習期に水平においた画面の左右視 野間で不一致試行頻度が異なる事態を経験した後,テス ト期にその頻度が左右で同等の事態を設け,干渉効果を 測定した。このとき参加者は学習期と同じ場所(同一条 件)もしくは,画面の反対側に移動した(移動条件)。 その結果,同一条件では,学習期と同様の頻度効果が生 じた。一方,移動条件ではそのような頻度効果は生起し なかった。これは,反応競合文脈の獲得は観察者の自己 中心座標に基づくことが示唆された。 不確実状況における顔向きの知覚 UNSW Australia 大塚由美子 Queen Mary University of London, The University of Sydney 

Isabelle Mareschal UNSW Australia Colin Clifford 直視視線プライアを報告した先行研究(Mareschal et al., 2013)に基づき,不確実状況下では他者の顔が自分 の方へ向いていると想定される可能性を検討した。実験 1では,顔向き分類課題を用い,様々な強度のノイズを 付加した画像からの顔向きの知覚を検討した。実験2で は顔向き再生課題を用い,ノイズ画像とノイズ無画像か ら知覚される顔向きを検討した。実験3では顔向き識別 課題を用い,ノイズ画像とノイズ無画像それぞれにおけ る顔向きの識別閾と偏りを検討すると共に,2種類の画 像条件間で顔向きを比較する際の識別閾と偏りを検討し た。実験1ではノイズ強度の増加に伴い“正面”方向の 判断が増加した。実験2ではノイズ画像において顔向き がより正面方向に偏って知覚されたが,偏りの方向は全 刺激の平均の顔向きと一致して変化した。実験3ではノ イズ画像では顔向きがより下方向に偏って知覚されるこ とが示された。 注意の捕捉効果と視覚的印付け効果の加算性 東京大学 大杉尚之 東京大学 林 大輔 東京大学 村上郁也 視覚探索において,標的が突然新規に出現するとき (後続項目),すでに提示された項目(先行項目)よりも 先に探索される。この効果は,後続項目の自動的な注意 の捕捉と,先行項目の能動的な抑制(視覚的印づけ)に より生起すると考えられてきた。本研究では,注意の捕 捉効果と視覚的印づけ効果が加算的に探索に影響するか を検討した。先行項目の1つが標的になる確率が50%の 条件(注意の捕捉条件)と0%の条件(視覚的印づけ条 件)において,後続項目として標的が出現した試行の探 索時間を比較した。実験の結果,注意の捕捉効果が十分 に大きい事態では,注意の捕捉条件と視覚的印づけ条件 で探索効率に違いがなかった。一方,注意の捕捉効果が 小さい事態では,視覚的印づけ条件が注意の捕捉条件よ りも探索効率が良かった。このことから注意の捕捉効果 が小さい事態では,注意の捕捉効果と視覚的印づけ効果 が加算的に探索に影響することが示唆された。 上から見た物体はなぜわかりにくい? 東京大学 新美亮輔 東京大学 江原 玲 東京大学 横澤一彦 日常物体の視覚的認知では,上から見下ろす視点で成 績が下がりやすい。つまり,上から見た物体像は偶然的 見え(accidental view)になりやすい。日常物体をさま ざまな角度(俯角)で見下ろした刺激を用いて物体認知 課題を行ったところ,俯角が大きいと実際に成績が低下 した(実験1)。実験2では,刺激物体を市松模様のつい た台の上に置くことで絵画的奥行き手がかりを与え,俯

(14)

角がわかりやすくなるようにした。台は物体像に 1.0秒 先行して提示された。その結果,俯角による成績低下は ほぼ消失した。このことから,上から見た物体の認識が 難しいのは適切な奥行き手がかりの不足のためと考えら れる。ただし,大きくて現実には見下ろすことが少ない と考えられる物体(家,バスなど)に限ると,俯角によ る成績低下が残っていた。親近性の低さも上から見た物 体の認識の要因である(見下ろした経験が少ないために 認識が難しい)ことが示唆された。 非意識性情報の記憶保持特性に関する検討 首都大学東京 中野 俊 首都大学東京 石原正規 意識的経験を伴わない非意識性情報に対してもヒトは 選択的な応答が可能であることがTMSや逆向性マスキン グを用いた研究によって示されている。これまでに逆向 性マスキングの刺激特性やその成立メカニズムに関する 研究は盛んに行われてきたが,非意識性情報の記憶特性 に関してはいまだ十分な研究は行われていない。本研究 では逆行性マスキングパラダイムを利用し,視空間刺激 呈示から回答までのISIを操作することで,非意識性情報 の記憶保持特性を検討した。課題は刺激の見え方をPAS に基づいて答えさせる刺激評価課題と,呈示位置を答え させる空間定位課題の2種類を実施した。刺激評価課題 より,保持時間を延長しても逆向性マスクの効果は持続 することが示された。また空間定位課題において,保持 時間の延長による正答率の著しい低下は見られなかっ た。以上の結果から,非意識性情報に対しても,ヒトは 一定時間の記憶保持が可能であることが示唆された。 Implied motion知覚の初期発達 新潟大学 白井 述 新潟国際情報大学 伊村知子 ヒトは少なくとも生後5 ヵ月以降,静止画中の形態情 報による運動印象(implied motion: 以下 IM)を知覚す る(Shirai & Imura, 2014)。本研究ではIM知覚の発現時 期を特定するため,生後4, 5 ヵ月児それぞれ16名を対象 に実験を実施した。各試行の開始とともに,呈示画面中 央に左右いずれかへ向かって走っている(run条件),あ るいは直立している(stand条件)成人男性の写真刺激 が600 ms呈示され,写真刺激の消失と同時に2つの円図 形が呈示画面の左右に出現した。乳児がどちらの円を先 に注視したかを記録し(run, stand条件ともに20試行ず つ),写真刺激の定位方向と乳児の初発眼球運動の方向 の一致率を条件ごとに算出した。その結果,5 ヵ月児の run条件でのみ,写真刺激-眼球運動間の一致率がチャン スレベルを有意に上回った。これらの結果は IM知覚が 生後4∼5 ヵ月間で発現する可能性を示す。 Point-Light Walker の性別を特徴づける肩と腰の動きの 周波数分析 ネットワークアシストたかおか 麻野井千尋 東京女子大学 小田浩一 【目的】歩行者の関節の位置を表す光点の動き(Point-Light Walker: PLW)の性別判断には肩や腰の動きが注目 されているが,複雑な肩と腰の動きの何が性別判断に寄 与しているかは明らかでない。本研究では肩と腰の動き を高速フーリエ変換(FFT)により分析し,男女の違い を検討した。【方法】男性9名,女性10名のPLWの光点 軌跡から,肩と腰の動きの周波数成分を FFT で抽出し た。【結果と考察】肩と腰の動きは男女とも歩行周期と 同じ周波数成分(第 1成分),その2倍(第2成分)およ び3 倍(第 3 成分)の周波数成分から構成されていた。 女性の肩と腰の第1成分のパワーは男性より有意に大き かった。女性の腰の第2成分のパワーは男性より有意に 大きかったが,肩のパワーには差がなかった。女性では 歩行周期に一致した肩と腰の動きは男性より大きいだけ でなく,歩行周期の2倍に相当する速くて大きい腰のリ ズムが特徴的である。 乳幼児の顔認知における人物処理と表情処理の独立性 中央大学・日本学術振興会 市川寛子 日本女子大学 金沢 創 中央大学 山口真美 顔認知において,人物処理と表情処理が独立か,主に 成人を対象として検討されてきた。静止画を用いた研究 では,表情処理は人物処理に干渉され,その逆は生じに くいという非対称的な干渉が見られる。動画を用いた研 究は少ないが,その干渉が小さいことが報告されている (Stoesz & Jakobson, 2013)。本研究では,生後7∼8カ月児 および5歳児を対象とし,人物処理と表情処理の独立性 を,人物と表情が同時に変化するモーフィング動画を用 いて検討した。乳児では,単一の動画に馴化させた後, 新奇人物または表情に脱馴化するかを調べた。幼児で は,複数の動画を提示し,動画に含まれた人物または表 情を同定させる課題を行わせ,正答率を算出した。その 結果,乳児では人物の学習のみが成立した。これに対し 幼児では,人物同定課題の正答率は表情同定課題のそれ よりも低かった。人物処理と表情処理の独立性は,乳児 期から幼児期にかけて変化することが示唆された。

参照

関連したドキュメント

Taking as the connected component of the subgraph in the Baby Monster graph induced on the set of vertices fixed by an element of order 3 and in view of (1.5)(iv) one gets the

[r]

• Where 3 or more fungicide applications are made, use Orondis Ultra (or any other FRAC 49-containing product) in no more than 33% of the applications, or a maximum of 4

• When 3 or more fungicide applications are made, use Orondis Opti (or other oxathiapiprolin-containing products) for no more than 33% of the total foliar fungicide applications, or

• When 3 or more applications are made, use Orondis Gold 200 (or other oxathiapiprolin-containing product) in no more than 33% of the soil fungicide applications, or a maximum of