学会・研究会抄録
第 361 回東京女子医科大学学会例会
日 時 2020 年 2 月 29 日(土)13:00~17:00 会 場 総合外来センター 5 階 大会議室 開会の辞 司会(幹事)清水京子 挨 拶 (会長)丸 義朗 令和元年度研究奨励賞授与式 13:02~13:15 選考経過報告 (学長)丸 義朗 山川寿子研究奨励賞(第 32 回) 1.膵管内乳頭粘液性腫瘍の予後不良因子の検討 (消化器外科学 助教)出雲 渉 佐竹高子研究奨励賞(第 28 回) 1.人工心肺使用の心臓手術におけるフィブリンネットワーク構造の変化と止血効果 (東医療センター麻酔科 講師)市川順子 中山恒明研究奨励賞(第 6 回) 1.人工知能 AI を用いた手術動画における手技解析の検討 (消化器外科学 准講師)番場嘉子 平成 30 年度受賞者研究発表 13:15~14:00 座長(幹事)清水京子 山川寿子研究奨励賞(第 31 回) 1. ステロイド依存性頻回再発型微小変化型ネフローゼ症候群における小児期発症と成人期発症によるリツキ シマブ治療効果の相違についての検討 (腎臓内科)中谷裕子 佐竹高子研究奨励賞(第 27 回) 1.RAGE2 遺伝子は 1 型糖尿病疾患感受性 HLA 遺伝子と関連する (1糖尿病センター内科,2膠原病リウマチ痛風センター,3東医療センター)三浦順之助1・ 川本 学2・川口鎮司2・保科早里1・山中 寿2・内潟安子1,3・馬場園哲也1 中山恒明研究奨励賞(第 5 回) 1.糖鎖分子マーカーを用いた胆道癌の高感度診断システムの開発 (1消化器外科,2筑波大学医学医療系医療科学)樋口亮太1・正田純一2・ 谷澤武久1・植村修一郎1・出雲 渉1・松永雄太郎1・山本雅一1 一般演題 14:00~14:10 座長(幹事)清水京子 1.医療法人社団 焔 やまと診療所での在宅研修で気づいたこと,学んだこと (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科)本間俊佑1・石川元直2・佐倉 宏2 <休 憩> 司会(幹事)小森万希子 第 14 回研修医症例報告会 14:20~17:00 〔発表 5 分,質疑応答 3 分/○発表者,◎指導医〕 開始の挨拶 (卒後臨床研修センター長)中村真一 東女医大誌 90(1): 38-47, 2020.2Block 1 内科系 1 14:25~15:05 座長(八千代医療センター糖尿病・内分泌代謝内科)大沼 裕・(東医療センター内科)久保 豊 1. 乳癌化学療法中にオランザピンおよびステロイド治療が誘因と思われる 糖尿病ケトアシドーシスを発症した 2 型糖尿病の 1 症例 (八千代医療センター1卒後臨床研修センター,2糖尿病・内分泌代謝内科,3消化器内科)○折本竜太1・ 吉本芽生2・平野紗智子2・石野瑛子2・須田博之2・ 米田千裕2・荻野 淳2・◎大沼 裕2・西野隆義3・橋本尚武2 2.両心室ペースメーカーのリード交換により慢性の左胸痛が改善した 1 例 (1卒後臨床研修センター,2循環器内科,3心臓血管外科,4先進電気的心臓制御研究部門)○鈴木美香子1・ ◎後藤雅之2・鈴木 敦2・齋藤 聡3・庄田守男2,4・萩原誠久2 3.関節エコーをあててみた―エコーを用いた筋骨格診察修得の経験― (八千代医療センター1卒後臨床研修センター,2リウマチ膠原病内科)○村松瑶紀1・◎瀬戸洋平2 4.高血圧を契機に診断された若年女性の傍糸球体細胞腫瘍の 1 例 (1東医療センター卒後臨床研修センター,2泌尿器科,3病理診断科,4病理学(病態神経科学分野)) ○小川瞭太郎1・高木敏男2・山本智子3,4・◎長嶋洋治3 5.進行腎癌に対してニボルマブ+イピリブマブ併用療法中に Stevens-Johnson 症候群様症状を発症した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2泌尿器科,3皮膚科)○市岡蒔子1・ 堀内俊秀2・橘 秀和2・土岐大介2・山下かおり2・ 梅垣知子3・巴ひかる2・田中 勝3・◎近藤恒徳2 Block 2 内科系 2 15:05~15:37 座長(八千代医療センターリウマチ膠原病内科)瀬戸洋平・(東医療センター内科)石川元直 6. monocytosis が病状進行の sign となった PMF の症例における monocytosis 前後での
骨髄病理学所見の比較検討 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科,3病理診断科)○本間俊佑1・ マーシャル祥子2・小笠原壽恵2・森 直樹2・◎増永敦子3 7.急性肝不全で発症した古典的ホジキンリンパ腫 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科)○岡田幸子1・ ◎マーシャル祥子2・木附亜紀2・小笠原壽恵2・石川元直2・佐倉 宏2 8.劇的な経過を辿った intestinal T-cell lymphoma,NOS の 1 例
(東医療センター1卒後臨床研修センター,2救急医療科)○福田 凌1・小島光暁2・庄古知久2 9.慢性骨髄性単球性白血病の経過中に粟粒結核を発症した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科)○藤﨑真由子1・ ◎マーシャル祥子2・木附亜紀2・小笠原壽恵2・石川元直2・佐倉 宏2 <休 憩> Block 3 小児・産婦 15:47~16:19 座長(小児科)平澤恭子・(東医療センター産婦人科)上野麻理子 10.先天性中枢性低換気症候群(CCHS)の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2小児科,3周産期新生児診療部)○鈴木宇博1・ ◎池野かおる2・山田洋輔3・東 範彦2・小谷 碧2・長谷川久弥3・杉原茂孝2 11.妊婦健康診査未受診妊婦に対し,多職種の連携により児の養育方針を決定した 1 例 (1卒後臨床研修センター,2産婦人科,3母子総合医療センター)○髙瀬瑠璃子1・ ◎水主川純2・田畑 務2・和田雅樹3
12.妊娠中期に呼吸不全を呈し原因の確定診断に苦慮した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2産婦人科,3内科,4泌尿器科)○田中利蓉子1・ ◎上野麻理子2・春日みさき2・岡本英恵2・赤澤宗俊2・森田吉洋2・一戸晶元2・ 長野浩明2・村岡光恵2・橋本和法2・中嶋 俊3・八反丸美和3・中岡隆志3・橘 秀和4 13.心因性非てんかん発作に血管迷走神経性失神を合併した女子例 (1卒後臨床研修センター,2循環器小児科,3小児科)○外山皓喜1・◎衛藤 薫3・浦上恭英1・ 南雲薫子3・西川愛子3・工藤恵道2・伊藤 進3・平澤恭子3・永田 智2 Block 4 外科系 16:19~16:51 座長(小児外科)山口隆介・(東医療センター救急医療科)庄古知久 14.THRIVE method を使用した中枢性無呼吸に対する酸素化補助経験 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2麻酔科)○岡﨑亮汰1・ ◎岡村圭子2・西山圭子2・市川順子2・小髙光晴2・小森万希子2 15.シャントが挿入されている頭蓋底髄膜腫に合併した慢性硬膜下血腫の 1 例 (1卒後臨床研修センター,2東医療センター脳神経外科)○西山佳恵1・ 広田健吾2・萩原信司2・谷 茂2・笹原 篤2・◎糟谷英俊2 16. 難治性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合併した上行結腸癌,胃癌,胆囊結石に対し 準緊急手術を施行した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2外科,3内科)○大山 優1・◎浅香晋一2・ 西口遼平2・島川 武2・勝部隆男2・◎塩澤俊一2・ 木附亜紀3・マーシャル祥子3・森 直樹3・佐倉 宏3 17.多量飲酒後の強い腹痛および下血に対して非閉塞性腸間膜虚血を疑い緊急手術を行った 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター,2救急医療科)○増山由華1・◎小島光暁2・庄古知久2 総 評 (血液内科)吉永健太郎 ベストプレゼンテーション賞表彰式 閉会の辞 司会(幹事)小森万希子 記念撮影 〔平成 30 年度山川寿子研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.ステロイド依存性頻回再発型微小変化型ネフロー ゼ症候群における小児期発症と成人期発症によるリツキ シマブ治療効果の相違についての検討 (腎臓内科) 中谷裕子 〔目的〕リツキシマブは,日本において難治性ネフロー ゼ症候群に効能効果が承認されたが,対象は小児期発症 に限られ,成人期発症患者には有効性および安全性は確 立していないとされている.そこで,成人期発症のネフ ローゼ症候群患者について,リツキシマブの有効性およ び副作用を検証することとした.〔方法〕リツキシマブ (375 mg/m2 BSA per dose)の点滴投与を 6 か月毎に計
4 回投与した小児期発症のステロイド依存性頻回再発型 微小変化型ネフローゼ症候群の患者 32 名(平均発症年齢 8.6 歳)と成人期発症の同患者 19 名(平均発症年齢 30.6 歳)について,再発回数や免疫抑制薬の内服量,副作用 などを比較した.〔結果〕小児期発症と成人期発症とも全 症例でリツキシマブにより寛解維持可能で,リツキシマ ブ開始後 24 か月間における再発回数は小児期発症が 0.3 ±0.7 回,成人期発症が 0.3±0.6 回と,リツキシマブ開始 前と比較しいずれも有意に改善を認めた(p<0.001).副 腎皮質ステロイドの内服は小児期で 81.3%(32 名中 26 名),成人期で 70.6%(17 名中 12 名)が中止でき,内服 量は小児期が 0.9±2.5 mg/日,成人期が 0.8±1.6 mg/日 と両群とも有意に減少が得られた(p<0.001).副作用に 関しては,infusion reaction をそれぞれ 21.1%,19.7%に 認めたが,発生頻度において両群に差は認めなかった(p =0.722).〔結語〕ネフローゼ症候群に対するリツキシマ ブ治療は,成人期発症例でも有意に治療効果を認め,副 作用も小児期と比較し増加なく,安全に使用できると考 えられた.
〔平成 30 年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.RAGE2 遺伝子は 1 型糖尿病疾患感受性 HLA 遺伝 子と関連する (1糖尿病センター内科,2膠原病リウマチ痛風セ ンター,3東医療センター) 三浦順之助1・ 川本 学2・川口鎮司2・保科早里1・ 山中 寿2・内潟安子1,3・馬場園哲也1 〔背景・目的〕血管障害や免疫反応に関与するパターン 認識受容体 receptor for advanced glycation endprod-ucts(RAGE)遺伝子変異と日本人 1 型糖尿病(T1D)発 症との関連を検討した.〔対象と方法〕対象は T1D817 名 (男性 37%),非糖尿病群(nDM)887 名(男性 59%). Taqman SNP assay により RAGE 遺伝子変異(SNPs) 〔82 G/A(RAGE1),-429T/C(RAGE2),-374T/A (RAGE3)〕を決定した.次に上記 3 つの SNPs と T1D 疾患感受性 HLA DRB1-DQB1 haplotype との連鎖解析 を行った.〔結果〕3 つの SNPs は両群とも Hardy-Wein-berg Equiblium を満たした.T1D の allele frequency (%)は,RAGE1 G/A:86.9/13.1,RAGE2 T/C:79.0/
21.0,RAGE3 A/T:76.6/23.4,nDM はそれぞれ G/A: 86.0/14.0,T/C:92.1/7.9,A/T:75.6/24.4 であり,両群 間 に RAGE2 の み 有 意 差 を 認 め た(p=8.1×10-26). RAGE2 は DRB1-DQB1 0405-0401 とのみ連鎖不平衡を認 めた.〔結論〕T1D の RAGE2 が DRB1-DQB1 0405-0401 と連鎖不平衡の状態にあり,日本人の T1D の発症に関与 する可能性が示唆された. 〔平成 30 年度中山恒明研究奨励賞受賞者研究発表〕 1.糖鎖分子マーカーを用いた胆道癌の高感度診断シ ステムの開発 (1消化器外科,2筑波大学医学医療系医療科学) 樋口亮太1・ 正田純一2・谷澤武久1・植村修一郎1・ 出雲 渉1・松永雄太郎1・山本雅一1 〔背景・目的〕胆道癌の治療成績向上には早期診断が重 要であるが,既存の腫瘍マーカーは併存する炎症の影響 を受け有用性に乏しい.そこで新しい糖鎖分子マーカー Mucin1-glycosylation isomer(MUC1-Gi)による胆道癌 の診断精度を検討した.〔対象・方法〕2012 年 8 月から 2015 年 3 月の胆道疾患連続 216 例[胆管癌 86 例(肝内 2, 肝門 38,遠位 46),胆管良性 26,胆囊癌 31 例,胆囊良性 73 例],年齢中央値 66(20-91)歳を対象とした.患者血清 にて簡易測定キットで MUC1-Gi を算出し,病変部位と 進行度を考慮し診断精度を検討した.東京女子医科大学 倫理委員会の承認後に行った.〔結果〕胆管病変の area under the curve(AUC)は MUC1-Gi が 0.74,CA19-9 が
0.79 であった.胆管癌 T/N 因子別の MUC1-Gi と CA19-9 による陽性率は,T1(57% vs. 0%),T2(67% vs. 50%), T3(64% vs. 57%),T4(63% vs. 81%),N0(56% vs. 44 %),N1(62 % vs. 48 %),N2(72 % vs. 83 %) で, MUC1-Gi の陽性率は CA19-9 より,Tis-T2 で 28%,N0 で 20%上昇した.CA19.9 陽性/陰性別では,MUC1 診断 感度 73/45%,特異度 100/74%,陽性的中率 100/74%, 陰性的中率 18/45%であった.胆囊病変の AUC は MUC1-Gi(0.72)が CA19-9(0.66)よりも高値を示したが,症 例数が十分でなく今後の再検討が必要と思われた.〔結 語〕MUC1-Gi は,胆管癌における早期病変の診断向上に 寄与し,CA19.9 とのコンビネーション診断が有用であ る.現在他施設共同による Validation study のための検 体集積中である. 〔一般演題〕 1.医療法人社団 焔 やまと診療所での在宅研修で 気づいたこと,学んだこと (東医療センター1卒後臨床研修センター,2内科) 本間俊佑1・石川元直2・佐倉 宏2 当院の研修プログラムでは,地域医療研修として医療 法人社団 焔 やまと診療所での研修が必修となってい る.やまと診療所は「自宅で自分らしく死ねる,そうい う世の中を作る.」を理念に掲げ,最期まで自分らしく過 ごせる自宅での在宅医療を提供している.やまと診療所 では,在宅医療を支える人材として在宅医療 PA(physi-cian assistant)を独自に育成している.PA は医師とと もに診療に同行し,患者や家族とのコミュニケーション を通じて,その人らしい生き方を一緒に考え,安心して 生活できる環境を作るために主体的に活動している.私 は医学部入学前に自宅への退院を希望するも叶わなかっ た終末期の患者と薬剤師として関わる機会があった.こ の時に自分が何もできなかった,もっと何かできたので はないかという無力感を感じ,医師を志した.しかし, 医師となってもその答えはわからないままであった.今 回,やまと診療所での診療に同行し,医師や PA の患者 との接し方を通して,特別な医療行為を行わなくても, 患者が不安を持っていることを意識して“ただそばにい ること”だけでも患者の安心につながることを学んだ. 今後医師として働く上での大切なことを学んだやまと診 療所での経験を,医学部入学前の経験と対比して報告す る.
〔第 14 回研修医症例報告会〕 1.乳癌化学療法中にオランザピンおよびステロイド 治療が誘因と思われる糖尿病ケトアシドーシスを発症し た 2 型糖尿病の 1 症例 (八千代医療センター1卒後臨床研修センター, 2糖尿病・内分泌代謝内科,3消化器内科) ○折本竜太1・ 吉本芽生2・平野紗智子2・石野瑛子2・ 須田博之2・米田千裕2・荻野 淳2・ ◎大沼 裕2・西野隆義3・橋本尚武2 〔症例〕53 歳女性.〔現病歴〕X-1 年より右乳癌の再 発に対してステロイドを含む化学療法,うつ病に対して オランザピンが開始された.化学療法副作用による食思 不振で,1 L 程度の清涼飲料水や菓子を大量摂取してい た.X 年 3 月より口渇多尿,全身倦怠感,体重減少があ り,清涼飲料水摂取量は 4 L へ増加した.X 年 4 月 11 日,意識障害に伴う交通外傷で緊急搬送され,糖尿病ケ トアシドーシス(DKA)と急性膵炎で緊急入院した. 〔既往歴〕うつ病,右乳癌.〔家族歴〕父と同胞 2 人が糖 尿病.〔経過〕絶食補液,持続インスリン点滴(CVII)と 蛋白分解酵素阻害薬で加療を行い,第 5 病日には膵炎急 性期を脱し,DKA も改善したため,第 8 病日目より食 事開始,インスリン皮下注射に切り替え,第 22 病日退院 した.精神症状も安定していたため,入院後にオランザ ピンを中止した.〔結語〕本症例はオランザピンが誘因と なり,その後のステロイド使用,清涼飲料水多飲により DKA,急性膵炎を引き起こしたと考えられ,文献的考察 を踏まえて報告する. 2.両心室ペースメーカーのリード交換により慢性の 左胸痛が改善した 1 例 (1卒後臨床研修センター,2循環器内科, 3心臓血管外科,4先進電気的心臓制御研究部門) ○鈴木美香子1・◎後藤雅之2・鈴木 敦2・ 齋藤 聡3・庄田守男2,4・萩原誠久2 症例は 78 歳男性.58 歳時に劇症型心筋症を発症し他 院で入院加療を行った.63 歳時に心房細動と心房粗動, 慢性心不全の急性増悪があり心機能も低下していたこと から植込み型除細動器付き両心室ペースメーカー移植術 を施行された.心機能は改善し治療経過は良好であった が,植込み後から慢性的な左胸痛を自覚するようになっ た.慢性疼痛の原因となる明らかな器質的疾患を示唆す る所見を指摘されず,76 歳時には軽度うつ病と診断され た.心療内科で処方された抗精神病薬や抗うつ薬等を内 服したが疼痛は改善しなかった.帯状疱疹も疑われ非ス テロイド性鎮痛薬・オピオイド鎮痛薬や神経因性疼痛 薬・補助疼痛薬も試されたがやはり改善に乏しく,ペイ ンクリニックでも疼痛のコントロールは困難であった. 最終的にリードによる慢性疼痛が疑われ,当科紹介受診 となり入院となった.入院後の CT では,右室リードの 先端が心外膜へ突出している所見も示唆された.第 10 病 日に心臓血管外科と共にリード交換術を行い,術直後か ら左胸痛は消失し鎮痛薬も減量可能となった. 植込み型デバイスのリードによる慢性疼痛は生活の質 を落とす重要な合併症の一つである.今回ペースメー カーのリードによると思われる慢性疼痛に対して,リー ド交換により疼痛が改善した症例を経験したため報告す る. 3.関節エコーをあててみた―エコーを用いた筋骨格 診察修得の経験― (八千代医療センター1卒後臨床研修センター, 2リウマチ膠原病内科) ○村松瑶紀1・ ◎瀬戸洋平2 急性期入院患者の 53%,慢性期入院患者の 94%にスク リーニング検査で何らかの筋骨格疾患の合併を認めると の報告があるが,他の内科的プロブレムと比較すると軽 視されがちであり診察評価技術を習得する機会は多くな い.エコーは日常診療の中で頻繁に実施され,研修医で も簡便に行うことのできる身近な検査手段である.今回, 臨床現場でエコーが筋骨格評価・診察の学習の際に有用 であった 3 症例を実際のエコー動画とともに供覧する. 症例 1:71 歳女性.生物学的製剤使用中の関節リウマチ 患者.診察により滑膜炎の残存を疑った.触診実施後に エコーで確認することにより,病変の有無を客観的に目 視し診察所見の正確性を確認することができた. 症例 2:78 歳女性.関節リウマチにて内服加療中.定期 受診 2 日前から右小指の腫脹・疼痛が出現.エコーで右 第 5 指基節骨骨折と診断し,X 線検査で微細な骨折線を 確認した.表在エコーは時として単純 X 線写真よりも詳 細に局所を観察することが可能であり,骨折診断のスク リーニングにもエコーが応用できることを認識できた. 症例 3:71 歳男性.急性の歩行困難で救急搬送,focus 不 明の発熱で入院.入院後の詳細な診察により,多関節の 発赤・腫脹・疼痛を認めた.エコー上全ての罹患部に炎 症所見と結晶沈着を認め,多発性痛風性関節炎と診断し た.エコーで炎症の主座・病因を明確にすることが,診 断の手がかりとなることを確認できた. 4.高血圧を契機に診断された若年女性の傍糸球体細 胞腫瘍の 1 例 (1東医療センター卒後臨床研修センター, 2泌尿器科,3病理診断科,4病理学(病態神経科学 分野)) ○小川瞭太郎1・ 高木敏男2・山本智子3,4・◎長嶋洋治3
〔はじめに〕傍糸球体細胞腫瘍(juxtaglomerular cell tumor:JGCT)は renin を産生し,二次性高血圧を呈す るまれな腎腫瘍である.今回,若年女性に発生した JGCT の 1 例を経験したので,文献的考察とともに報告する. 〔症例〕18 歳の女性.5 か月前に,ジムで血圧測定した際 に収縮期血圧 160 mmHg 程度あり前医を受診した.採血 上 renin 活性高値であり,画像検査で右腎腫瘍を指摘さ れた.外科的切除の方針となり,東京女子医科大学病院 泌尿器科で腎部分切除術を施行された.術後,高血圧症 状は改善した.今後は 6 か月に 1 回のフォローを予定し ている.〔病理学的所見〕部分摘除腎に,境界明瞭な 25 ×20×15 mm 大の白色調結節を認めた.組織学的には淡 好酸性の胞体を有する細胞が,充実性に増生していた. 免疫染色では renin,CD34 陽性,SMA 一部陽性,一部 Bcl-2 弱 陽 性,STAT6,c-kit,DOG-1,WT-1,CD31, desmin,CK,EMA,CD10,CA9 は陰性であった.臨 床情報,病理学的所見と併せて,JGCT と診断された. 〔考察〕JGCT は傍糸球体細胞に由来する renin 産生性疾 患である.若年女性に好発する.主症状は高血圧が最多 で,それに伴う頭痛,多尿などもみられる.大部分は良 性腫瘍であり,外科的切除により高血圧は改善する.本 症例は臨床病理学的に典型的であると考えられた.〔結 語〕JGCT の 1 例を経験した.若年女性の難治性高血圧 では JGCT を鑑別に入れて検索する必要がある.有名な 疾患だが頻度が低いため,報告した. 5.進行腎癌に対してニボルマブ+イピリブマブ併用 療法中に Stevens-Johnson 症候群様症状を発症した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2泌尿器科,3皮膚科) ○市岡蒔子1・ 堀内俊秀2・橘 秀和2・ 土岐大介2・山下かおり2・梅垣知子3・ 巴ひかる2・田中 勝3・◎近藤恒徳2 〔緒言〕進行または転移性腎細胞癌患者の薬物治療にお いてニボルマブ+イピリブマブ併用療法は第一選択の一 つである.一方で高頻度にみられる免疫関連有害事象 (irAE)の一つに皮膚障害があり,稀であるが Stevens-Johnson 症候群(SJS)のような重篤な皮膚障害を来すこ ともある.irAE として重症粘膜障害を発症した 1 例を経 験したため文献的考察を加えて報告する.〔症例〕69 歳 男性.X 年 7 月からニボルマブ+イピリブマブ併用療法 を開始した.治療開始早期から眼球結膜充血が出現して おり,2 コース目投与後に両眼瞼に水疱が出現したため 近医眼科にて点眼薬,外用にて加療していた.皮膚,眼 症状の改善はみられなかったが有害事象共通用語規準 (common terminology criteria for adverse events: CTCAE)grade2 に相当する皮膚障害であったためニボ ルマブ+イピリブマブ併用療法継続とした.9 月になり 症状がさらに増悪し,当院皮膚科を紹介受診した.irAE が疑われ同日緊急入院し,SJS の治療に準じてプレドニ ゾロン 1.0 mg/kg 投与を開始した.皮疹,眼症状とも改 善傾向であり,第 21 病日に退院とした.〔考察〕本症例 では SJS を疑っていたが診断基準は満たしていない.第 3 相国際共同試験では grade3 以上の皮膚障害はわずか 1%であり,実臨床での報告も少ない.本症例では腫瘍縮 小効果が非常に高いため今後の治療継続の是非について 複数科間で検討中である.〔結語〕進行腎癌に対してニボ ルマブ+イピリブマブ併用療法中に SJS 様症状を発症し た 1 例を経験した. 6.monocytosis が病状進行の sign となった PMF の症 例における monocytosis 前後での骨髄病理学所見の比較 検討 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2内科,3病理診断科) ○本間俊佑1・ マーシャル祥子2・ 小笠原壽恵2・森 直樹2・◎増永敦子3 〔背景〕原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis: PMF)は骨髄増殖性腫瘍の 1 つで,他の骨髄増殖性腫瘍 と比べて稀であり,また予後不良であることが知られて いる.PMF の 4.2~15.5%で経過中に単球増加症(mono-cytosis)を起こすことが知られており,そのような症例 は予後がさらに悪いことが報告されている.これらの症 例の骨髄では,慢性骨髄単球性白血病様の変化や,線維 化の進行などが認められ,monocytosis は PMF の病状の 進行を示唆するとされている.しかし,monocytosis を 起こす前後で病態生理学的にどのような変化が起こって いるかは明らかではない.今回,monocytosis を起こし, 病状が進行した PMF の症例において,monocytosis 前後 での骨髄病理所見を比較し,病理学的に検討した.〔症 例〕76 歳男性.近医にて高血圧症,前立腺肥大症でフォ ローされていたが,X 年 7 月白血球,血小板増多を認め 精査目的に当院紹介受診となった.末梢血で JAK2 V617F 変異陽性,骨髄生検では骨髄は過形成であり,顆 粒球系と異型巨核球の増加,MF2 の線維化を認め,これ らより PMF と診断した.ハイドロキシウレア投薬にて 血球数のコントロールを行い,小康状態となっていた. X+2 年 4 月に monocytosis を認め,再び骨髄生検を行っ た.骨髄は過形成で線維化も MF2 と変化なかったが, 単球系マーカーである CD68 陽性細胞が増殖しており, 臨床所見と併せて慢性骨髄単球性白血病と診断した.そ の後白血化するも小康状態が続いていたが,X+3 年 4 月 に腸閉塞により死亡した.
7.急性肝不全で発症した古典的ホジキンリンパ腫 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2内科) ○岡田幸子1・ ◎マーシャル祥子2・木附亜紀2・ 小笠原壽恵2・石川元直2・佐倉 宏2 〔症例〕77 歳男性.もともと肝機能異常は指摘されて いなかった.2019 年 9 月に体動困難のため近医へ救急搬 送された.意識レベルの低下と血小板減少を認めたため 精査加療目的に当院へ紹介された.来院時の血液検査で は Plt 39×103/μl と血小板低下に加え,AST 111 U/L,
ALT 114 U/L,ALP 1,488 U/L,T-Bil 6.2 mg/dL と肝胆 道系酵素の上昇を認め,PT-INR 延長を認めた.造影 CT にて肝脾腫,全身に多発するリンパ節腫大を認め悪性リ ンパ腫が疑われた.腋窩リンパ節より生検を行い,Ann Arbor stage IV の anaplastic large cell lymphoma を含 む T 細胞リンパ腫が疑われたが病理診断は難渋した. CHOP 療法(シクロホスファミド,ドキソルビシン,ビ ンクリスチン,プレドニゾロン)を 1 クール目施行し, 一旦は肝胆道系酵素の低下とリンパ節の縮小を認めた が,2 クール目施行前に再度 LDH 上昇やビリルビン上昇 を認め,病状コントロールは困難であった.追加の免疫 染色を行ったところ,病理の最終診断が classic Hodgkin lymphoma となった.ABVD 療法(ドキソルビシン,ブ レオマイシン,ビンブラスチン,ダカルバジン)への変 更を予定したが,肝不全が進行し施行前に死亡した.〔考 察〕悪性リンパ腫の肝浸潤は稀ではないが,急性肝不全 の経過をとった症例は,本邦では散見される程度である. 本邦においてホジキンリンパ腫の頻度は低く,急性肝不 全を主症状として発症し,ホジキンリンパ腫の診断に 至った本症例は貴重である.
8.劇的な経過を辿った intestinal T-cell lymphoma, NOS の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2救急医療科) ○福田 凌1・ 小島光暁2・庄古知久2 〔背景〕消化管原発悪性リンパ腫は緊急手術で初めて診 断されることも多く,緊急手術例の予後が極めて不良で あることが報告されている.〔症例〕80 歳男性.腹痛を 主訴に近医受診.上部消化管内視鏡検査で十二指腸潰瘍 およびびまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)疑 いとなり精査予定となっていた.近医受診から約 2 週間 後に腹痛の増悪あり前医搬送.精査にて消化管穿孔の診 断となり当院転送となった.前医 CT で free air と腫瘤 性病変を認め,悪性リンパ腫による小腸穿孔疑いで緊急 手術とした.Treitz 靭帯から約 190 cm の小腸と盲腸の 二か所で穿孔し,周囲に膿瘍を形成していた.穿孔部と 腫瘍を en bloc に切除し,小腸部分切除術および右半結腸 切除術を施行した.術後病理にて CD3+,CD5-,CD4-, 腸管壁主体にリンパ腫がみられることから intestinal T-cell lymphoma,NOS の診断となった.早期化学療法 導入を計画していたが,術後 11 日目に胃穿孔を発症し再 手術となった.胃穹隆部大弯側に穿孔があり,全周性に リンパ腫病変を認めたため噴門側胃切除術を施行した. 術後病理では腸管病変と同じ診断であった.術後 16 日目 に初回手術の小腸―結腸吻合部の縫合不全を認め,その後 徐々に全身状態が悪化し,術後 42 日目に死亡となった. 〔考察〕現在のところ消化管原発悪性リンパ腫に対する標 準的治療法はない.今回,短期間のうちに異所性に穿孔 を来した intestinal T-cell lymphoma,NOS の 1 例を経 験した.消化管穿孔を来す消化管原発悪性リンパ腫の治 療戦略について本症例を踏まえ,若干の文献的考察を加 えて報告する. 9.慢性骨髄性単球性白血病の経過中に粟粒結核を発 症した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2内科) ○藤﨑真由子1・ ◎マーシャル祥子2・木附亜紀2・ 小笠原壽恵2・石川元直2・佐倉 宏2 〔症例〕88 歳男性.〔主訴〕体動困難.〔現病歴〕2017 年 4 月にふらつき,体重減少を主訴に当院内科を受診し, 採血で WBC 13,200/μl,単核球 15.5%と増加がみられた. 腹部画像検査で軽度脾腫を認め,その後も WBC は増加 傾向であったため,2017 年 11 月に骨髄検査を施行し慢 性骨髄性単球性白血病の診断となった.高齢であり,積 極的治療を望まなかったため,ヒドロキシカルバミド 500 mg/日内服を開始した.内服治療にて WBC および 単核球は減少し効果がみられたが,倦怠感のため内服継 続困難となり,2018 年 1 月より内服中止で経過観察する 方針となった.その後 WBC 上昇,脾腫増大がみられ, 2019 年 7 月の採血で WBC 83,500/μl,単核球 38%であ り,肝機能障害も出現していた.2019 年 8 月にふらつき による転倒後,体動困難となり当院救急搬送,入院となっ た.〔入院後経過〕来院時 WBC 16×104/μl,単核球 21% であり,また CT にて肺野にびまん性小粒状影,回結腸 部を主体に多発腸間膜リンパ節腫大がみられた.画像所 見より粟粒結核が疑われたため,喀痰塗抹検査を施行し たところガフキー3号,LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法陽性となった.全身状態が悪く入院翌 日に死亡した.〔考察〕血液悪性腫瘍を含む易感染性宿主 は粟粒結核のリスクであるが,診断が困難なことが多い. 本例は入院時画像で粟粒結核に特徴的な所見を認め,初 回の喀痰塗抹検査で陽性であったため診断可能であっ た.しかし,喀痰塗抹陰性となることも多く,白血病を 含む血液悪性腫瘍を背景とする症例は,胸部異常陰影か
ら死亡までが短期間との報告もあり,早期に疑い対応す ることが重要である. 10.先天性中枢性低換気症候群(CCHS)の 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2小児科,3周産期新生児診療部) ○鈴木宇博1・ ◎池野かおる2・山田洋輔3・東 範彦2・ 小谷 碧2・長谷川久弥3・杉原茂孝2 〔はじめに〕先天性中枢性低換気症候群(CCHS)は延 髄に存在する呼吸中枢の異常により低換気を呈する疾患 であり,気管切開,呼吸器装着など厳密な呼吸管理を必 要とする.本邦の罹患率は 15 万出生に 1 人,遺伝子変異 により診断されている患者は約 130 人と稀な疾患であ る.当科では新生児科と協力し全国の患者の定期的な呼 吸機能評価を行っている.今回呼吸機能評価目的に入院 した CCHS の症例を経験したため報告する.〔症例〕佐 賀県在住の 2 歳 4 か月男児.在胎週数 41 週 1 日,3,514 g,正常経腟分娩にて出生.出生後よりチアノーゼ発作 を認め日齢 1 より挿管管理.遺伝子検査で PHOX2B 遺 伝子変異(27PARM)を認め CCHS と診断された.抜管 困難であり日齢 50 に気管切開術施行.睡眠時呼吸器管理 (APCV 18/5,RR 25),覚醒時人工鼻装着としている. 入院中の気管支鏡検査ではアデノイド肥大,気管軟化症, 気管切開チューブ上肉芽を認めたがいずれも軽度であっ た.炭酸ガス換気応答試験は CCHS 患者の平均と同等で あった.様々な状況で SpO2,経皮 pCO2持続モニタリン グにて換気状態を評価した.睡眠時呼吸器離脱状態では SpO2は中央値 91%,最大経皮 pCO2は 62.0 mmHg で重 症度は中等度と判断した.覚醒時にも軽度の低換気があ り,覚醒時も可能な限り呼吸器装着する方針とし,呼吸 器設定の調整を行い退院した.〔結語〕呼吸機能評価は未 治療の低換気を発見でき,呼吸状態の安定に有用である. 適切な呼吸管理は精神運動発達や心機能の予後を改善す るため重要である. 11.妊婦健康診査未受診妊婦に対し,多職種の連携に より児の養育方針を決定した 1 例 (1卒後臨床研修センター,2産婦人科, 3母子総合医療センター) ○髙瀬瑠璃子1・ ◎水主川純2・田畑 務2・和田雅樹3 〔緒言〕妊婦健康診査は母児の周産期異常の早期診断・ 治療のために全ての妊婦が妊娠初期から分娩までに 14 回程度受診することが推奨されている.妊婦健康診査未 受診妊婦の分娩では母児の周産期異常のリスクが高いだ けでなく,児童虐待との関連も報告されている.今回, 我々は医療機関と地域の関係機関が連携して対応した妊 婦健康診査未受診妊婦の 1 例を経験したため文献的考察 を加え,報告する.〔症例〕37 歳,3 妊 1 産,離婚後未 婚.妊娠を自覚していたが,経済的理由で妊婦健康診査 未受診であった.妊娠 40 週 4 日,陣痛発来し,子宮収縮 が増強したため救急要請し,当院へ搬送された.来院時 に排臨しており,速やかに自然分娩となった.児は男児, 2,248 g,Apgar score 1 分後 7 点,5 分後 8 点であり,低 出生体重児,呼吸障害のため NICU に入院となった.そ の後,母体は妊娠中も喫煙や飲酒を繰り返し,第 1 子に 対する不適切な養育が明らかになった.出生児に対する 養育意思は認められたが,母体の生活状況や養育歴から 自宅での養育は地域関係機関との連携が必要であると考 えられた.母体は産褥 2 日目に退院して福祉事務所来所 予定であったが,来所しなかった.児の養育方針につい て院内虐待対策委員会および児童相談所を含む地域関係 機関で協議し,自宅での養育は困難と判断された.児は 日齢 23 に乳児院へ入所となった.〔結論〕院内および院 外の多職種が連携して妊婦健康診査未受診妊婦の養育に 関する不安要因を協議し,児の安全確保を努めることが 重要であると考えられた. 12.妊娠中期に呼吸不全を呈し原因の確定診断に苦慮 した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2産婦人科,3内科,4泌尿器科) ○田中利蓉子1・ ◎上野麻理子2・春日みさき2・ 岡本英恵2・赤澤宗俊2・森田吉洋2・一戸晶元2・ 長野浩明2・村岡光恵2・橋本和法2・中嶋 俊3・ 八反丸美和3・中岡隆志3・橘 秀和4 〔緒言〕妊娠中に急性Ⅰ型呼吸不全を呈した妊婦を産婦 人科および循環器内科が連携し診断,加療し生児を得た 症例を報告すると共に他科連携について考察する.〔症 例〕38 歳女性,3 経 1 産.第 1 子は妊娠高血圧症候群の ため帝王切開にて分娩した.妊娠 8 週頃より労作時息切 れが出現し増悪傾向のため妊娠19週6日に産婦人科に入 院となった.低酸素血症,D ダイマーの軽度上昇,経胸 壁心臓エコーにて軽度右心負荷を認め,心電図所見から も肺塞栓症による呼吸不全の可能性が考えられ,循環器 内科へ転科した.腹部エコーで総腸骨静脈に血栓を疑う 所見を認めた.確定診断のために CT や肺血流シンチグ ラフィーなどが検討されたが,本人から積極的な検査を 希望されなかった.抗凝固療法を開始し,徐々に酸素化 および心電図所見の改善を認めた.ヘパリン Ca 皮下注 射を導入し妊娠 27 週 3 日に退院した.妊娠 35 週 3 日よ り血圧が上昇し産婦人科へ入院,妊娠 36 週 6 日に陣痛発 来しヘパリン Na 静注中止後 3 時間で全身麻酔下に緊急 帝王切開となった.術後ワーファリン K 内服への切り替 え中に腹腔内出血を認め緊急開腹止血術+血種除去術を 施行,その際膀胱損傷があり泌尿器科にて修復された. 産褥の胸部造影 CT にて明らかな血栓を認めず抗凝固療
法は再開せず術後 22 日目に退院した.〔結語〕妊娠中は 施行できる検査,治療に制限が生じ得る.よりよい医療 が提供できるよう他科と連携したチーム医療が肝要と考 えられた. 13.心因性非てんかん発作に血管迷走神経性失神を合 併した女子例 (1卒後臨床研修センター,2循環器小児科,3小児科) ○外山皓喜1・ ◎衛藤 薫3・浦上恭英1・南雲薫子3・西川愛子3・ 工藤恵道2・伊藤 進3・平澤恭子3・永田 智3 〔緒言〕心因性非てんかん発作(psychogenic non-epi-leptic seizure:PNES)は,心理的要因による突然の発 作性,かつ一過性の運動・感覚・認知・情動における機 能障害である.てんかんと鑑別を要するてんかん様症状 の中で本症の占める割合は失神発作と並び頻度が高い. 今回,PNES に血管迷走神経性失神を合併した女子例を 経験したので報告する.〔症例〕12 歳女子.2019 年 X 月 Y 日,運動中に気分不快感・四肢の痺れが先行し,意識 障害にて当院に救急搬送された.来院時の意識レベルは JCSIII-300,30 秒程度持続する浅~無呼吸を 20 分毎に繰 り返し,SpO2低下を伴うチアノーゼ,右手の振戦を認め た.頭部 MRI,心電図,脳波,血液・髄液検査に異常は なかった.約 4 時間で意識レベルは改善し,Y+5 日に退 院した.Y+10 日に同様の意識障害が出現し,頭部 CT・ 血液検査・ホルター心電図・心臓超音波検査に異常はな し.脳波記録中に痛み刺激への反応はなく,その際の背 景波は両側後頭部に持続する α 波で,その他てんかん性 異常や脳症を疑う徐波はなく PNES と診断したが,SpO2 低下等の原因は不明だった.トレッドミル検査では運動 直後に意識障害が出現し,心拍や血圧が急激に低下した が,徐脈・低血圧や心電図変化はなかった.血管迷走神 経性失神の合併を疑い,ミドドリンの内服を開始した. PNES に対しては心理的介入し,以後同症状は認めない. 〔考察〕PENS においてチアノーゼを認めることはなく, てんかん発作や思春期女子においては血管迷走神経性失 神の合併を念頭に置いた精査が重要である. 14.THRIVE method を使用した中枢性無呼吸に対す る酸素化補助経験 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2麻酔科) ○岡﨑亮汰1・ ◎岡村圭子2・西山圭子2・ 市川順子2・小髙光晴2・小森万希子2 〔緒言〕近年挿管困難などの無呼吸状態に対する酸素化 の方法として,Transnasal Humidified Rapid Insufflation Ventilatory Exchange(THRIVE)が報告されているが, 本邦での使用報告は少ない.これは,Fisher & Paykel 社
製 OptiFlow システムにより酸素濃度を設定,加温加湿 吸入気を経鼻アダプタを経由して 70~90 L/分の高流量 で投与し,一定時間酸素化が維持可能な手法である.今 回我々は気管チューブ抜去後に発生した中枢性無呼吸に 対し THRIVE によって酸素化低下を回避した症例を経 験したので報告する.〔臨床経過〕症例 1:43 歳男性.脳 梗塞で脳室ドレナージ,開頭減圧,既往歴に心不全あり, 拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy:DCM)が疑わ れている.症例 2:57 歳男性.フルニエ壊疽でデブリー ドマン,合併症は腎不全(透析中),糖尿病,高度肥満. 2 症例共に ICU で気管チューブ抜去後,SpO2最大 78% までの低下と 40 秒以上持続の中枢性無呼吸を発したた め,無呼吸時間帯のみネーザルハイフローの流量を 80~ 90 L/分まで増加させたところ,FiO2は 0.21 で増加させ ることなく,SpO2の低下が回避された.〔考察〕無呼吸 対 処 は 非 侵 襲 的 陽 圧 換 気 療 法(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)や気管挿管での管理が一 般的であるが侵襲性がある.また低酸素に対する FiO2増 加は酸素毒性が危惧される.THRIVE を参考にした本法 は侵襲性が少なく FiO2も増加させることなく管理でき た.〔結語〕中枢性無呼吸に対し THRIVE 手法を用いる ことで酸素化維持が可能であった. 15.シャントが挿入されている頭蓋底髄膜腫に合併し た慢性硬膜下血腫の 1 例 (1卒後臨床研修センター, 2東医療センター脳神経外科) ○西山佳恵1・ 広田健吾2・萩原信司2・ 谷 茂2・笹原 篤2・◎糟谷英俊2 〔症例〕67 歳女性.〔主訴〕頭重感.〔現病歴〕髄膜腫 摘出術後の定期フォローのため当科受診.頭部 MRI にて 右慢性硬膜下血腫を認め,緊急入院となった.4 か月前 に転倒歴あり.〔既往歴〕錐体斜台部髄膜腫(部分摘出後 放射線加療,最終手術後 1 年 3 か月,最終 γ ナイフ後 9 か月),水頭症(VP シャント後 4 年 1 か月 固定圧式), 脊柱管狭窄症.〔身体所見〕意識清明,明らかな麻痺な し.〔画像所見〕入院時 MRI:錐体斜台部髄膜腫(γ ナイ フ後)を認める.1 年前の MRI と比較し腫瘍容積は減少 し,第 4 脳室の圧排は改善している.右慢性硬膜下血腫 があり,左側へ軽度の shift を認める.硬膜は造影されて いない.右前角部から VP シャントが挿入されており, 1 年前と比較し脳室縮小を認める.〔入院後経過〕今後の 血腫増大が予想されたため,慢性硬膜下血腫に対し,穿 頭血腫洗浄術を施行した.術直後の頭部 CT では血腫の 縮小を認めたが,術翌日頭部 CT で血腫増大と脳室の縮 小を認め,再度血腫洗浄術およびシャント結紮術を施行 した.術後 2 日目,嘔吐,ふらつきおよび軽度意識障害 を認め,頭部 CT で脳室拡大を認めたため同日シャント
結紮解除を行った.術後 4 日目には,症状および頭部 CT 所見は改善した.今後は経過を見て,可変式シャントへ の変更も考慮している.〔考察〕入院時,低髄圧所見は認 めず,慢性硬膜下血腫は新規に生じたものと考えられた. しかし血腫の増大は,シャントにより頭蓋内圧が一定に 保たれていたことが関与している可能性が高かった.今 後は血腫再増大を防ぎ,かつ水頭症を生じさせないよう にシャント管理をしていくことが必要だと考える. 16.難治性の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を合 併した上行結腸癌,胃癌,胆囊結石に対し準緊急手術を 施行した 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2外科,3内科) ○大山 優1・ ◎浅香晋一2・西口遼平2・島川 武2・ 勝部隆男2・◎塩澤俊一2・木附亜紀3・ マーシャル祥子3・森 直樹3・佐倉 宏3 〔症例〕69 歳男性.左上眼瞼皮膚腫瘍に対し当院形成 外科に紹介初診.その際,血液検査で血小板減少(4.9× 104/μl)を指摘され,血液内科へコンサルトされた.精 査の結果,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断さ れ,以後経過観察していた.約 1 年後,腹痛,黒色便を 主訴に当院救急外来に受診.上部消化管内視鏡検査で胃 体中部大弯の早期胃癌が疑われた.プレドニゾロンの内 服を開始し血小板増加を待ち生検を行う方針としたが効 果はなく,さらなる増量,ステロイドパルス療法,ガン マグロブリン大量静注療法を行ったものの無効であっ た.また,治療中に施行した CT で上行結腸癌が疑われ 下部消化管内視鏡検査を施行したところ,同部に約 4/5 周性,易出血性の 2 型腫瘍を認めた.トロンボポエチン 受容体作動薬(ロミプレート皮下注)にて血小板数増加 を図り手術を行う方針としたが,治療開始翌日に大量下 血し出血性ショックとなり,IVR による止血術(TAE), 部分的脾動脈塞栓術(PSE)を施行した.一時的にバイ タルは安定したが,血小板数は増加することなく消化管 出血を繰り返したため,血小板 1.3×104/μl で準緊急手術 に踏み切った.結腸右半切除術,胃部分切除兼脾摘出術, 胆摘術を施行し,手術時間 416 分,出血量 849 mL であっ た.術後は出血性の合併症なく経過し,第 14 病日に血小 板は 10×104/μl 以上まで増加,第 24 病日目に軽快退院 した.現在,プレドニゾロンは 10 mg/日まで漸減し外来 で経過観察中である. 17.多量飲酒後の強い腹痛および下血に対して非閉塞 性腸間膜虚血を疑い緊急手術を行った 1 例 (東医療センター1卒後臨床研修センター, 2救急医療科) ○増山由華1・ ◎小島光暁2・庄古知久2 〔背景〕非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は,代謝性アシ ドーシスを呈することが多い.しかし,NOMI に対する 特異的な画像所見やバイオマーカーは存在せず,その診 断は容易でない.アルコール性ケトアシドーシス(AKA) や糖尿病性(DKA)では,腹痛,吐下血など多彩な消化 器症状を呈するだけでなく,実際に NOMI を合併するこ ともあり,手術適応の判断に難渋することが少なくない. 我々は,大酒家かつ高血糖の急性腹症で,腸管虚血の有 無の判断に難渋した症例を経験したので報告する.〔症 例〕63 歳男性.腹痛,下血を主訴に救急搬送された.来 院時血圧 88/50 mmHg,不穏,末梢冷感を伴っており ショック状態であった.暗赤色の下血があり,腹部全体 に反跳痛を認めた.pH 7.002,Lac 18.0 mmol/L,BE-23.4 と代謝性アシドーシスに加えて,造影 CT で,小腸の浮 腫状肥厚および造影不良を認めた.細胞外液の補液を行 うも,腹部所見,動脈血ガス所見ともに改善に乏しく, NOMI を疑って試験開腹を施行した.開腹すると,小腸 の一部に軽度の発赤や浮腫を認めたものの,明らかな虚 血は見られず,腹腔内審査のみで手術を終了した.脱水 の補正,電解質管理,血糖コントロール,腹部所見およ び代謝性アシドーシスは速やかに改善し,術後 8 日目に 独歩退院した.〔考察〕発症当日に多量飲酒していたこ と,血糖値が 400 mg/dl 以上かつ尿中ケトン体が陽性で あったことから,AKA および DKA も鑑別に挙げたが, 強い腹部所見から NOMI が否定できず緊急開腹手術を 行った.外注検査で β-ヒドロキシ酪酸優位のケトン体上 昇を認めたことから,AKA と診断した.〔結語〕高度の 代謝性アシドーシスと腹部症状をきたすアルコール性や 糖尿病性のアシドーシスでは,NOMI との鑑別が困難な 場合がある. *新型コロナウイルス感染症が拡大している状況を受け,参加者の健康・安全面を考慮し,中止いたしました.