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不快情動回避心性と想起特性,および抑うつの関連

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-39 374

-不快情動回避心性と想起特性,および抑うつの関連

○四方 陽裕1)、杉山 恵理子2)、森本 浩志2) 1 )明治学院大学大学院心理学研究科、 2 )明治学院大学心理学部心理学科 問題と目的 記憶想起における個人の主観的な感覚には一貫した 個 人 差 が 認 め ら れ, こ れ ま で, 想 起 特 性( 佐 藤, 2007)や記憶の主観的特性(関口,2011)などの概念 を用いて検討されてきた。藤本(2010)は,“自己の 経験に関連して意識的に行われる記憶の呼び戻し”を 想起,“想起にあたって認められる,ある程度習慣性・ 一貫性をもつ様相”を想起特性と定義し,想起特性と 自我同一性の感覚や抑うつとの関連を検討した。その 結果,強い否定的感情を伴い,詳細かつ鮮明に想起す る想起特性は,自我同一性の感覚の低さや抑うつの高 さと関連すること,記憶は詳細だが,否定的感情の随 伴が少ない想起特性は,自我同一性の感覚の高さや抑 うつの低さと関連することが明らかになった。これら の結果を踏まえると,主観的特性である想起特性に は,適応的な想起特性と不適応的な想起特性がある事 が考えられる。 しかし,適応的な想起特性と不適応的な想起特性に つながる要因については十分に明らかにされていな い。これまでの自伝的記憶研究では,回避方略が注目 されてきた。Williams(2006)は,大うつ病性障害や 心的外傷後ストレス障害を有する人において過度に一 般化された記憶が多くみられる現象である自伝的記憶 の概括化の要因の一つに,機能的回避 (Functional Avoidance)をあげている(レビューとして,松本・ 望月,2012 ; Williams et. al., 2007)。機能的回避 では,具体的なトラウマ記憶を検索する事による不快 な情動喚起を回避するために,概括的な部分までで記 憶の検索をやめる回避方略が般化した結果として,自 伝的記憶の概括化が生じるとされる。不適応的な想起 特性についても,こうした不快な情動喚起を避ける回 避方略としての想起である可能性が考えられる。 福森・小川(2005)は,“ある出来事によって喚起 される不快な情動(抑うつや不安),またそれに伴う 苦痛を実感し,自らのものとして受け止め向き合うこ との困難さ”を表す心理的特性を“不快情動回避心性” とした。不快情動回避心性は,回避や否認といった対 処行動そのものではなく,回避的な対処行動の前段階 として存在する,不快情動との直面の困難さを示す心 理的な特性である (福森・小川, 2006)。不適応的な 想起特性が,不快な情動を喚起しないための回避方略 であるとすれば,不適応的な想起特性の背景要因とし て不快情動回避心性が存在している可能性が考えられ る。 そこで本研究では,不快情動回避心性が不適応的な 想起特性を経由して,抑うつを高めるというモデルを 検討する。また,不快情動回避心性は,抑うつや不安 などの不快な情動を受け止め向き合うことの困難さを 測定する指標であるが,抑うつとの関連は検討されて いないため,これについてもあわせて検討する。 方法 調査対象者 大学生および社会人221名であった。 回答に不備のあった15名を除いた206名 (大学生・大 学院生・専門学校生186名,社会人20名,男性82名, 女性124名,平均年齢22.3±3.63歳)のデータを分析 対象とした。調査は質問紙調査(101名)とWEB調査 (105名)を併用して行ったが,双方の各下位尺度得点 に有意差が認められなかったため,双方のデータを合 わせて分析を行なった。 調査材料 ( 1 ) デモグラフィックデータ:性別, 年齢,職業について回答を得た。( 2 )不快情動回避 心性:不快情動回避心性尺度(福森・小川,2005)を 使用した。 1 因子10項目で構成される。( 3 )想起特 性:想起特性尺度(藤本,2010)を使用した。 4 因子 (否定的感情の随伴・記憶へのとらわれ,記憶の詳細 さ,現実性の混乱・検索困難,過去体験の鮮明性)23 項目で構成される。( 4 )抑うつ:日本版SDS自己評価 式抑うつ性尺度(福田・小林,1983)を使用した(株 式会社三京房許可済)。 1 因子20項目で構成される。 手続き 関東圏の私立大学にて講義時間外に食堂で 質問紙の配布を行った。また,縁故法によりWEB調査 のURLの配布を行った。WEB調査はGoogle Formにて作 成した。調査は無記名回答で行われ,質問紙はその 場,もしくは後日回収した。 倫理的配慮 質問紙とWEB調査の教示文にて,調査 への回答が任意であること,途中で回答を中止しても 良いこと,回答しないことによるいかなる不利益も生 じないことを教示した。 結果 相関分析および抑うつを従属変数とした重回帰分析 の結果, 4 つの想起特性のうち,抑うつと有意な関連 がみられたのは否定的感情の随伴・記憶へのとらわれ と現実性の混乱・検索困難の 2 つであった(表)。そ こで,これら 2 つの想起特性を仲介変数としたパス解

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-39 375 -析を行なった(図)。その結果,モデルの適合度は良 好であり,不快情動回避心性は否定的感情の随伴・記 憶へのとらわれと現実性の混乱・検索困難を高めるこ とを介して,抑うつを高めていた。 考察 本研究の目的は,不適応的な想起特性を招く要因と して不快情動回避心性を想定し,不快情動回避心性と 想起特性,抑うつの関連性について検討を行うことで あった。本研究の結果,藤本(2010)の結果と同様に, 否定的感情の随伴・記憶へのとらわれと現実性の混 乱・検索困難の 2 つの想起特性は抑うつを高める不適 応的な想起特性であることが示唆された。そして,不 快情動回避心性が高い者ほど,これら 2 つの想起特性 が高いことが示唆された。 不快情動回避心性と否定的感情の随伴・記憶へのと らわれとの関連から,不快な情動との直面を避けたい と思う人ほど,記憶想起において否定的な感情を伴う 記憶にとらわれやすいことが考えられる。越智・及川 (2008)は「思い出してはいけない」という想起抑制 意図が,侵入想起を増加させることを示しており,本 研究の結果もこれと同様のメカニズムが働いている可 能性が考えられる。また,現実性の混乱・検索困難と の関連から,不快な情動との直面を避けたいと思う人 は,記憶に現実感を持てなかったり,検索に困難を生 じやすいと考えられる。こうした想起のあり方の一部 は,機能的回避と同様のメカニズムにより生じている 可能性が考えられる。 しかしながら,本研究のパス解析では,誤差項間相 関を置かない場合は適合度が著しく低下した事から (GFI = .953,AGFI = .767,CFI = .863,RMSEA =

.214,AIC = 36.831),不適応的な想起特性を招く要 因については,不快情動回避心性以外にも検討する必 要がある。また,本研究はアナログ研究であるため, 本研究の結果が臨床群へ適用できるかは分からない。 本研究で得られた結果をもとに,想起特性について, 健常群,臨床群の両方を対象として,第三変数を考慮 した検討が必要である。

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