QMG スコアと修正Borg scale を指標として運動療法を行った重症筋無力症クリーゼの経験
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(2) 230. 理学療法学 第 48 巻第 2 号. 図 1 ①頸部屈曲保持・下肢挙上保持時間の経過 ②理学療法内容 ③治療経過を示す.. myasthenia gravis score(以下,QMG スコア)の改善や ,. 免疫ブログリン(Intravenous immunoglobulin:以下,. 筋力改善に伴い離床を開始したことで,症状の増悪なく. IVIg)療法施行,術後 4 ∼ 6 日目でステロイドパルス. 運動療法が実施できたと報告している。若杉ら. 10). は,. 療法 1 g/ 日施行,術後 7 日目からステロイド 35 mg/. クリーゼを呈した重症例の MG 患者に対する離床後の. 日が開始された。術後 4 日目より理学療法を開始した。. 運動療法について報告している。しかし,クリーゼを呈. 術後 10 日目 P/F 比が 300 台まで改善したため抜管を試. した MG 症例に対する overwork weakness に着目した. みたが,二酸化炭素の貯留を認めたため再挿管となっ. 運動療法を報告した論文は少ない。. た。術後 10 日目の時点では,クリーゼの離脱に至って. そこで今回我々は,誤嚥性肺炎を機にクリーゼを呈し. いなかったと判断され,再度 IVIg 療法を行う方針と. た症例に対し,日々の病態を評価し理学療法を実施する. なった。術後 15 日目に気管切開を行い,術後 22 ∼ 26. ことで,overwork weakness を生じることなく,自宅. 日目で 2 回目の IVIg 療法が施行された。治療経過につ. 退院の転帰に至った症例を経験したので知り得た知見に. いては図 1- ③に示した。. ついて報告する。 症 例 75 歳女性。身長 144 cm,体重 44 kg,Body Mass Index. 理学療法経過(図 1- ②) 1.呼吸理学療法介入時(術後 4 ∼ 26 日目). (BMI)21.3。X 年 Y-4 月に眼瞼下垂や口渇,頸部や上. 術後 4 日目,人工呼吸器の管理下で Glasgow Coma. 肢近位筋の筋力低下,倦怠感,嚥下障害を認めた。X 年. Scale(GCS)E3V5M6。徒手筋力検査(Manual Muscle. Y-4 月に眼瞼下垂に対し両眼瞼挙上術を施行。症状の改. Testing:以下,MMT)は,頸部屈曲 2,体幹 2,股関. 善を認めず X 年 Y-2 月に精査のため当院に入院し,MG. 節屈曲 2/2,膝関節伸展 2/2,足関節背屈 3/3。両瞼に. と診断され,加えて胸腺腫を指摘された。ステロイド. 眼瞼下垂を認め,頸部屈曲や肩関節屈曲,下肢挙上を試. 20 mg 内服にて一度自宅退院した。X 年 Y 月胸腺腫摘. みたが筋出力は困難であった。ヘッドアップ 45°を実施. 出術のために再度入院した。術後 2 日目に問題なく抜管. したが頸部疲労感を訴えたため,10 分程度で終了となっ. したが,術後 3 日目に誤嚥性肺炎を認め,P/F 比が 130. た。ヘッドアップで疲労感を認めたため,病棟では完全. 台まで低下したため再挿管となった。術後 3 ∼ 7 日目で. 側臥位での体交中心に実施し,理学療法にて徐々にヘッ.
(3) 病態評価を行い運動療法を実施した重症筋無力症クリーゼの経験. 231. 図 2 病態評価方法 a)頸部挙上:仰向けで寝た状態で頭を 45°あげ,保持できる時間. b)下肢挙上:仰向けで寝た状態で下肢を 45° あげ,保持できる時間.. ドアップの時間の延長を試みた。術後 9 日目,ヘッド. 2.理学療法初期評価(術後 27 日目). アップ 45°では疲労感を訴えることなく可能となった。. ステロイド 35 mg/日。抗アセチルコリンレセプター. 下肢挙上は,左右ともに 10°程度可能となったが,持続. 抗 体( 抗 AChR 抗 体 )13 nmol/L( 基 準 値 0.3 nmol/L. 困難で他の筋出力も困難であった。術後 10 日目,抜管. 以下) 。血液生化学検査所見:CK 14 U/L,eGFR 75 ml/. 後に介入を行った。呼吸数は 30 回 /min で努力性呼吸. min,CRE 0.58 mg/dl,HGB 11.1 g/dl,ALB 2.7 g/dl,. を呈し,疲労感も強く痰の貯留を認めたため排痰介助を. TP 6.2 g/dl。意識は GCS:E4V5M6 であった。呼吸管. 行った。咳嗽を認めるが自己喀出は困難であり吸引を必. 理は大気圧下で,気管切開部に人工鼻を装着し呼吸数は. 要とした。術後 11 日目,再挿管後に主治医と協議を行. 22 回 /min,動脈血酸素飽和度(SPO2)は 98% であった。. い,呼吸器離脱に向けて徐々に weaning を行う方針と. 安静時疲労感は修正 Borg Scale で頸部の疲労感 3, 下肢. なり,理学療法でも倦怠感の生じない範囲で実施するこ. の疲労感 5 ∼ 6。QMG スコアにて頭部挙上 45° 保持 2s,. ととなった。術後 11 ∼ 18 日目は再挿管に対する苦痛も. 上肢挙上 90° 保持(R/L)135s/102s,下肢挙上 45° 保持(R/. 伴い希死念慮が出現し,離床も拒否的であり理学療法は. L)26s/28s。握力(R/L)10 kg/11 kg。MMT は,頸部. ヘッドアップまでにとどまった。ヘッドアップでの疲労. 屈曲 2,体幹 3,股関節屈曲 3+/3,膝関節伸展 4/3+,. 感は減弱しつつあり,病棟でも 1 時間程度までヘッド. 足関節背屈 3/3。基本動作は,端座位は修正自立(手す. アップで過ごせるようになった。術後 19 日目には,徐々. りを必要とする)。起立は修正自立(手すりを必要とす. に笑顔を認めるようになった。呼吸管理は酸素 3ℓで,. る)。立位は軽介助(離殿に介助を必要とする)であっ. 気管切開部に人工鼻装着。頭部挙上 45°保持 2s,上肢挙. た。ADL は, 機 能 的 自 立 度 評 価 法(Functional Inde-. 上 90 °保 持(R/L)2s/1s, 下 肢 挙 上 45 °保 持(R/L). pendence Measure:以下,FIM)で 57 点(減点項目:. 1s/1s であった。本人の同意のもと端座位を行った。端. 清拭,更衣,移乗,移動,社会的交流〈抗精神病薬内服〉,. 座位は頸部や体幹の保持は可能だが,後方重心を認め重. 問題解決〈複雑な問題解決困難・日常的な問題解決可. 度介助を必要とした。開始 5 分程度で,脈拍は 80 回 /. 能〉)であった。. min から 110 回 /min となり全身の疲労感が著明となっ たため終了となった。術後 19 日目の評価も踏まえ,積. 3.病態評価方法(図 2). 極的な離床は 2 回目の IVIg 療法後とした。. 離床を行うにあたり,overwork に伴う MG の増悪が 懸念された。そこで,日々の病態を評価し運動強度を考.
(4) 232. 理学療法学 第 48 巻第 2 号. 慮 し た。 病 態 評 価 を 行 う た め に QMG ス コ ア と 修 正. (R/L)は,8.7 kgf/7.6 kgf であった。6 分間歩行(以下,. Borg scale を用いた。QMG スコアは,すべての項目を. 6MD)は独歩で 80 m(下肢の著明な疲労感出現) 。ADL. 検査するには時間を要し,患者に疲労感を与える。そこ. は FIM で 107 点(減点項目:更衣,トイレ動作,移乗,. で,QMG スコアを実施した中で易疲労性を示した頸部. 歩行,階段)であった。. 屈曲保持時間,下肢挙上保持時間を毎日の介入前に評価 することとした。また,本症例は頸部の重だるい感じや. 5.離床から退院までの経過と結果(術後 43 ∼ 71 日目). 下肢の疲労感を訴えることが多かった。よって修正. 術後 43 日目より持久力の増強と下肢筋力の増強を目. Borg scale を用いて頸部・下肢の身体的な疲労感を毎日. 的にストレングスエルゴメーターを開始した。運動負荷. の介入前後に評価した。頸部屈曲保持時間,下肢挙上保. 量は,若杉ら. 持時間(左右どちらか一方でも悪化している場合は増悪. 240(三菱電機エンジニアリング社,BK-ERG-003)を用. と判断)が前日より 10 秒以上の短縮,または grade の. いて脚伸展の最大仕事量(watt)を算出し,その 20%. 低下を増悪として定義した。①頸部屈曲および下肢挙上. 負荷の運動をペダル回転数 60 回 / 分で 15 ∼ 20 分間実. の保持時間が 2 日連続で増悪,②頸部屈曲,下肢挙上,. 施した。術後 48 日目には,6MD が独歩で 200 m に改. 自覚症状のすべてが増悪,という 2 つの基準を設け,該. 善したため,病棟での移動形態を独歩に変更した。. 当する場合にはその日の介入は関節可動域練習のみで経. 術後 68 病日の最終評価では,ステロイド 30 mg/日。抗. 過観察することとした。また,3 項目のうち 1 項目でも. AChR 抗体 9 nmol/L。血液生化学検査所見:CK 10 U/L,. 増悪を認める場合には,介入中の頸部および下肢の身体. eGFR 59 ml/min,CRE 0.73 mg/dl,HGB 11.3 g/dl,ALB. 的疲労感の確認頻度を増やし修正 Borg scale 5 以下の. 3.4 g/dl,TP 6.2 g/dl。安静時の疲労感は修正 Borg Scale. 範囲で,前日と同様の内容を行うのか,負荷を増やすの. で頸部の疲労感 0.5,下肢の疲労感 1。QMG スコアで頭. か決定し実施した。. 部挙上 45° 保持 21s,上肢挙上 90° 保持(R/L)135s/102s,. 11). の方法を引用し,ストレングスエルゴ. 下肢挙上 45°保持(R/L)54s/61s。MMT(R/L)は,頸 4.離床期の経過と結果(術後 27 ∼ 42 日目). 部屈曲 3,体幹 4,股関節屈曲 4/4,膝関節伸展 4/4,足. 理学療法は,5 回 / 週,午前 9 時より 20 ∼ 40 分間実. 関節背屈 4/4。握力(R/L)は 10 kg/11 kg。徒手筋力. 施した。術後 27 日目に端座位の練習を開始したが,開. 計により測定した膝伸展筋力 HHD(R/L)は,8.1 kgf/. 始前は修正 Borg scale 3 であった頸部の疲労感が 5 分. 9.1 kgf であった。6MD は独歩で 360 m。ADL は FIM. 経過した時点で修正 Borg scale 8 に至ったため中止し. で 112 点(減点項目:更衣,移乗,階段)であった。そ. た。離床時間の延長を図るため,術後 28 日目より背も. して,術後 72 日目に自宅退院した。. たれのある車椅子座位の練習に変更し,頸部の疲労感が. 退院時指導としては,頸部・下肢ともに疲労感が修正. 修正 Borg scale 5 以下で座位時間の延長を図った。術. Borg scale 5 以下での活動を推奨した。退院後も症状の. 後 32 日目には疲労感なく車椅子座位を 30 分間保つこと. 憎悪なく日常生活を送ることができている。. ができたため,車椅子座位で食事を開始した。同日に歩 行器歩行の練習を開始した。膝折れが生じることなく軽. 6.病態評価の結果. 介助で遂行できたが,15 m 時点で下肢の疲労感が修正. 日々の病態評価を行った結果を図 1- ①,図 3 に示し. Borg scale 4→ 6 に増大したため中止した。術後 36 日. た。増悪と定義した数値には至らず,関節可動域練習に. 目には,歩行器歩行を下肢の疲労感が修正 Borg scale 5. 留める日は存在しなかった。介入前後の修正 Borg scale. 以下で連続 100 m 実施できるようになったため,病棟. を利用した身体的疲労感も徐々に低下傾向を示した。歩. ではトイレまでの歩行器歩行(連続 20 m)を開始し,. 行練習を開始後の翌日に,下肢挙上保持時間の増悪や下. 同日に独歩の練習と運動療法室での理学療法を開始し. 肢の疲労感の増悪を認めたが,頸部保持時間や頸部の疲. た。独歩の練習を開始した当初は,下肢 MMT 3 レベル. 労感には増悪を認めなかったため,介入中の自覚症状を. であり特に右下肢で跛行を認めた。. 確認する頻度を増やし通常通りの介入を実施した。その. 術後 41 日目の中間評価では,ステロイド 30 mg/日。血. ほかにも,前日の活動にかかわらず 1 項目のみの低下は. 液生化学検査所見:CK 5 U/L,eGFR 62 ml/min,CRE. 度々認められたため,修正 Borg scale 5 以下の範囲で. 0.69 mg/dl,HGB 10.5 g/dl,ALB 2.8 g/dl,TP 5.7 g/dl。. 実施した。. 安静時の疲労感は修正 Borg Scale で頸部の疲労感 0,下 肢の疲労感 2。QMG スコアで頭部挙上 45°保持 15s,下. 考 察. 肢挙上 45°保持(R/L)42s/45s。MMT(R/L)は,頸部. MG クリーゼ後の運動療法に関する報告は少なく,運. 屈曲 3,体幹 3,股関節屈曲 3/3,膝関節伸展 4/4,足関. 動療法の開始時期. 節背屈 4/4。徒手筋力計により測定した膝伸展筋力 HHD. weakness が生じて症状が増悪する可能性がある。そこ. 9). や負荷量によっては,overwork.
(5) 病態評価を行い運動療法を実施した重症筋無力症クリーゼの経験. 233. 図 3 修正 Borg scale の介入前後での変化と経過. で本症例では,クリーゼを呈した重症例の MG 患者に. 社会的交流は抗うつ薬内服で 6 点,問題解決は複雑な課. 対し,日々の病態評価を行いながら overwork weakness. 題は困難なため 6 点(日常的な問題は解決可能)であり,. へ配慮し離床と運動療法を実施した。その結果,症状が. 理解や表出に減点はなく会話に問題は生じていなかった. 増悪することなく自宅退院に導くことができた。. ため,また抗うつ薬の内服にて精神状態も安定している. 術後 4 ∼ 27 日目は,呼吸理学療法を実施した。理学. と判断し,修正 Borg scale のような簡単な課題の遂行は. 療法では,無気肺予防を目的とした早期離床の介入が必. 可能であると考えた。一般的に,心疾患や呼吸器疾患患. 要となる. 12). 。しかし,本症例は呼吸器の抜管を試みた. 者に対しては,低∼中等度の運動負荷量が推奨されてい 15). 。本症例も長期臥床に伴う廃用性の心肺機能の低. が再挿管となったこと,ヘッドアップや離床時の頸部お. る. よび全身の疲労感が著明であったことより overwork. 下や筋萎縮が懸念され,また原疾患に対する overwork. weakness が懸念され,早期には呼吸器の離脱を優先し. に注意が必要であるため,中等度以下の負荷量での離床. 理学療法では排痰介助とポジショニングを行った。萬木. が必要であると考え,修正 Borg scale 5 以下の範囲内で. ら. 9). は,改変 QMG スコアの低下が病勢の安定化に関. 実施した。また QMG スコアを用いる際には他の客観的 13). 。しかし本症. 与していたのではないかと述べており,本症例も 2 回目. な指標を用いることが推奨されている. の IVIg 療法が終了したこと,自覚症状改善や QMG ス. 例は疲労感が著明であったため評価項目を最小限にする. コアの低下を認めたことより病勢が安定してきたと考. 必要があった。そこで,運動の反復や持続に伴い骨格筋. え,術後 27 日目より離床を開始した。. の筋力低下を生じることが MG の特徴であることを考慮. クリーゼを呈した重症例の MG に関する離床時や運動. し,握力やハンドヘルドなどの客観的指標よりも下肢挙. 療法時の病態の評価方法や運動強度については,未だに. 上と頸部保持時間を選択し実施した。QMG スコアと修. 明確に定められていない。そこで,本症例では重症例の. 正 Borg scale を指標として日々の病態評価を行いながら. MG 患者に対し介入前の病態評価にて overwork weakness. 離床を行うことで overwork weakness を生じることな. に考慮しながら離床・運動療法を実施した。Davidson. く離床を行うことができたと考える。. ら. 8). は,MG 患者の運動処方を行うにあたり易疲労筋と. クリーゼを呈した MG 患者に対する離床後の運動療 10). は karvonen 法 40%の運動負荷. 自覚症状に焦点をあてている。本症例も日々の病態評価. 法において,若杉ら. として易疲労筋と,疲労感の訴えが著明であった自覚症. を設定し,回転数 60 回 / 分,25 ∼ 30 w で 15 分間の自. 状に焦点をあてることとした。易疲労筋を検出するため. 転車エルゴメーターを用いた持久力訓練を 75 日間実施. に QMG スコアを用いた。QMG スコアは,重症度を評. することで握力や膝伸展筋力,6MD の改善に至ったと. 価する指標であり,一見正常な筋力を持つ筋でも易疲労. 報告している。本症例では,膝伸展の最大仕事量(watt). 性を捉えることが可能であるなど,易疲労筋の検出感度. の 20%負荷で回転数 60 回 / 分,15 ∼ 20 分間のストレ. が高いとされている. 13). 。一方で,QMG スコアでは自覚. 症状が点数の変化に反映され難いとされる. 14). 。そこで,. ングスエルゴメーターを用いた持久力訓練を 28 日間実 施した。. 主観的疲労感の指標として修正 Borg scale を用いた。本. これらの介入の結果を表 1 に示した。頸部,下肢の疲. 症例は,初期評価の FIM で認知項目に減点があるが,. 労感,全身持久力,膝伸展筋力の 4 項目の初期評価から.
(6) 234. 理学療法学 第 48 巻第 2 号. 表 1 介入時期と各種理学療法の評価結果 初期評価時 中間評価時 最終評価時 (第 27 病日) (第 41 病日) (第 68 病日) 安静時疲労感 (修正 Borg Scale) QMG スコア. 筋力. 全身持久力. 頸部疲労感. 3. 0. 0.5. 下肢疲労感. 5‒6. 2. 1. 2. 15. 21. 頭部挙上 45 度保持(秒 : R/L) 下肢挙上 45 度保持(秒 : R/L). 26/28. 42/45. 54/61. 握力(kg: R/L). 10/11. 未実施. 10/11. 膝伸展 HHD(kgf: R/L). 未実施. 8.7/7.6. 8.1/9.1. MMT(R/L). 頸部屈曲. 2. 3. 3. 体幹. 3. 3. 4. 股関節屈曲. 3+/3. 3+/3. 4/4. 膝関節伸展. 4/3+. 4/4. 4/4. 足関節背屈. 3/3. 4/4. 4/4. 不可. 80. 360. 57. 107. 112. 6 分間歩行(m). FIM(点). の変化は,頸部疲労感は修正 Borg scale 3 → 0.5,下肢. 抗体が依然高値であったこと,疲労感の残存により筋力. の疲労感は修正 Borg scale 5-6 → 1,全身持久力は座位. 増強までの負荷量で実施できなかったことが筋力の改善. 保持 5 分間→ 6MD 360 m と改善を認めた。しかしなが. につながらなかった要因ではないかと考える。一方,若. ら,膝伸展筋力(R/L)は中間評価(初期評価時は評価. 杉ら. 不能)からの変化は 8.7 → 8.1 kgf/7.6 → 9.1 kgf と明ら. ステロイド投与量が漸減中であったことも要因であった. かな改善は認められなかった。疲労感や全身持久力低下. 可能性が考えられる。. の要因は,長期人工呼吸器挿管に伴う呼吸筋筋力低下,. 今回の報告では,病態評価にて頸部屈曲保持時間・下. クリーゼの病態に伴う筋力低下,長期臥床に伴う廃用症. 肢挙上保持時間の 10 秒以上の短縮を増悪と設定した。. 候群,その他にも貧血や低栄養などが考えられた。呼吸. QMG スコアは毎日の病態変化を追うものでなく,重症. 筋筋力低下に関しては,初回離床時には呼吸数の増大も. 度を決定するための評価,薬効の効果判定を行うための. 認められたため関与していると考えたが,離床を実施し. 評価であり,今回のように日々の変動を追うためには,. ていく中で呼吸数の増大は減少し,また呼吸苦の自覚症. grade の変化では時間の差が大きすぎると考えたため,. 状も出現しなくなったことより大きな要因ではなかった. 臨床的判断で 10 秒以上の短縮を増悪と設定した。よっ. と考える。クリーゼの病態に伴う筋力低下に関しては,. て,検査の妥当性は担保できない可能性がある。また,. ステロイドや IVIg 療法が終了後,QMG スコアも改善. QMG スコアを使用する際には,他の客観的な評価指標. し疲労感も徐々に軽減したため,薬剤の著効が影響して. も併用して行うことが推奨されており,握力やハンドヘ. いたと考える。長期臥床に伴う廃用症候群に関しては,. ルドなどの併用も検査項目として考慮する必要がある。. 離床を進める中で疲労感の軽減や持久力の改善を認めた. 本報告は,症状をもとに頸部屈曲と下肢挙上時間という. ため影響していたと考える。貧血に伴う影響は,HGB. 客観的指標と修正 Borg Scale という主観的指標を相互. 11.1 g/dl(術後 27 日目) → HGB 10.5 g/dl(術後 41 日目). 補完的に使用し,頻回にモニタリングを行ったことが. → HGB 11.3 g/dl(術後 68 日目)の結果を見る限りあ. overwork weakness を回避しながら運動療法を実施で. まり影響していなかったと考える。栄養状態に伴う影響. きた要因であると考える。しかし,他の症例に対し同じ. は,ALB 2.7 g/dl,TP 6.2 g/dl(術後 27 日目)→ ALB. 検査項目や基準が適応できない可能性があり,今後は同. 2.8 g/dl,TP 5.7 g/dl(術後 41 日目)→ ALB 3.4 g/dl,. 様の複数の症例に対する運動療法時の検査項目や基準は. TP 6.2 g/dl(術後 68 日目)の結果より術後 27 日目は. 十分な検証が必要であると考える。. 低栄養の状態であったが,徐々に ALB の数値の改善を 認めていることより影響していたと考える。 筋力改善に至らなかった要因として,若杉ら. 11). は,. 11). の報告と比較し,介入日数が少なかったこと,. 結 語 クリーゼを呈した重症例の MG 患者に対して,QMG. 抗 AChR 抗体が高値の場合,筋力の改善が緩慢である. スコアと自覚症状を指標として病態評価を行いながら運. と報告しており,本症例も退院時検査において抗 AChR. 動療法を実施したことで,overwork weakness を生じ.
(7) 病態評価を行い運動療法を実施した重症筋無力症クリーゼの経験. ることなく自宅退院に導くことができた。 倫理的配慮 本症例に対して本報告の趣旨を十分に説明し,理学療 法評価および経過について記載することについて同意を 得た。 利益相反 症例報告に開示すべき COI はない。 謝辞:本報告に際し,ご協力いただいた患者様,ご家族 様には心より感謝いたします。またご指導・ご鞭撻いた だきました兵庫医科大学病院リハビリテーション部ス タッフの皆様に深く感謝いたします。 文 献 1)平山恵造:臨床神経内科学.廣瀬源二郎(編) ,南山堂, 東京,2009,pp. 526‒535. 2)日本神経治療学会,日本神経免疫学会(編):重症筋無力 症(Myasthenia gravis: MG)の治療ガイドライン 2004, p. 5.hppts://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/meneki_2.pdf (2020 年 11 月 29 日引用) 3)Murai H, Yamashita N, et al.: Characteristics of myasthenia gravis according to onset-age: Japanese nationwide survey. J Neurol Sci. 2011; 305: 97‒102. 4)Scheer BV, Valero-Burgos E, et al.: Myasthenia gravis and endurance exercise. Am Phys Med Rehabil. 2012; 91: 725‒727.. 235. 5)小野寺宏:重症筋無力症の治療とリハビリテーション.J Clin Rehabil.2005; 14: 628‒635. 6)Lohi EL, Lindberg C, et al.: Physical training effects in myasthenia gravis. Arch Phys Med Rehabil. 1993; 74: 1178‒1180. 7)Wong SH, Nitz JC, et al.: Effects of balance strategy training in myasthenia gravis: A case study series. Muscle Nerve. 2014; 49: 654‒660. 8)Davidson L, Hale L, et al.: Exercise prescription in the physiotherapeutic management of myasthenia gravis: A case report. J Physiother. 2005; 33: 13‒17. 9)萬木真理子,高須 修,他:重症筋無力症クリーゼのリ ハビリ開始を目的とした病勢評価.日集中医誌.2019; 26: 265‒266. 10)若杉樹史,髻谷 満,他:重症筋無力症クリーゼ症例の筋 力改善の経過に着目した 1 症例.臨床理学療法研究.2012; 29: 61‒63. 11)若杉樹史,山内真哉,他:筋疾患に対する治療と理学療法. PTジャーナル.2013; 47: 1079‒1086. 12)Schweickert WD, Kress JP, et al.: Implementing early mobilization interventions in mechanically ventilated patients in the ICU. Chest. 2011; 140: 1612‒1617. 13)Jaretzki A 3 rd, Barohn RJ, et al.: Myasthenia gravis: recommendations for clinical research standards. Task force of the medical scientific advisory board of the myasthenia gravis foundation of america (MGFA). Neurology. 2000; 70: 327‒334. 14)日本神経学会(監修) ,「重症筋無力症診療ガイドライン」 作成委員会(編):重症筋無力症ガイドライン 2014.南江 堂,東京,2014,pp. 1‒111. 15)谷口興一,伊藤春樹,他:心配運動負荷テストと運動療法. 南江堂,東京,2004,pp. 253‒255..
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