日時:2014 年 10 月 23 日(木) 19:00-21:00 場所:ホテルパールシティ神戸 パールルーム 進行:大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 河田則文 病理:倉敷中央病院 病理診断科 能登原憲司
<プログラム>
<症例検討>
症例1 原因不明の黄疸の一例
【出 題】大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 打田 佐和子 【司 会】駿河台日本大学病院 消化器肝臓内科 田中 直英 【討論者】市立池田病院 消化器内科 今井 康陽 岡山県精神科医療センター 内科 浮田 實症例2 原因不明の慢性肝障害の1例
【出 題】駿河台日本大学病院 消化器肝臓内科 竜崎 仁美 【司 会】愛媛県立中央病院 消化器病センター 道堯浩二郎 【討論者】和泉市立病院 肝臓病センター 坂口 浩樹 箕面市立病院 消化器内科 田村 信司
症例3 骨髄移植後に出現した門脈圧亢進症の1例
【出 題】東京都保健医療公社大久保病院 林 星舟 【司 会】大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 河田 則文 【討論者】自治医科大学 消化器・肝臓内科 森本 直樹 笹生病院 肝臓内科 西内 明子 *会終了後に立食による情報交換会を予定しております。 ※参加費1,000円を徴収させて頂きます。 ※「肝疾患の集い」のホームページ URL:http://netconf.eisai.co.jp/liverconference/共催:肝疾患の集い/エーザイ株式会社 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 打田佐和子、上野綾子、小田桐直志、寺西優雅、小塚立蔵、元山宏行、川村悦史 萩原淳司、岩井秀司、森川浩安、榎本大、村上善基、田守昭博、河田則文 【症例】40 歳、男性 【入院時主訴】黄疸、全身掻痒感 【現病歴】20 歳代から肝機能異常、脂肪肝を指摘されていた。X年 8 月末より心窩部痛、9 月末 より掻痒感、黄疸を自覚したため、10 月 4 日に近医を受診。総ビリルビン 8 mg/dl と高値を認 めたため、同日入院となった。ウルソデオキシコール酸 150mg/day を開始されるも、総ビリル ビン 10 mg/dl とさらに上昇したため、10 月 7 日に肝生検を施行。自己免疫性の胆管障害を疑わ れ、10 月 8 日よりウルソデオキシコール酸を中止してプレドニゾロン 40 mg /day を開始される も、ビリルビン値は上昇。10 月 16 日、精査加療目的に当科へ転院となった。 【生活歴】飲酒歴なし、 【既往歴】特記すべきことなし。 【入院時現症】意識清明。身長 176.5 cm、体重 82.85 kg、BMI 26.5。血圧 132/64 mmHg、脈 拍 66 回/min 整、体温 36.0 度。皮膚黄染著明。眼球・眼瞼結膜:貧血なし、黄染著明。呼吸音: 清。心音:整、雑音・過剰心音なし。腹部:平坦、軟、圧痛なし。下肢:浮腫なし。 【入院後経過】プレドニゾロンの効果は乏しく、また、肝生検組織上も自己免疫性疾患の関与を 積極的に示唆する所見は乏しいと判断したため、プレドニゾロンは漸減・中止とした。黄疸の 原因は不明であったが、10 月 17 日よりウルソデオキシコール酸 300~900 mg/day、10 月 30 日 よりベザフィブラート 400 mg/day を開始したところ、ビリルビン値は緩やかに低下し、掻痒感 も徐々に消失した。現在は無投薬で経過観察中である。胆汁酸・アミノ酸代謝異常も疑い精査 したが、原因ははっきりしない。
症例1 原因不明の黄疸の一例
- 2 - ■血液検査
WBC 10900 /mm3 BUN 20 mg/dl LDH 351 IU/L Baso 0 % Cre 1.01 mg/dl BS 71 mg/dl Eosino 0 % UA 2.3 mg/dl HbA1c 5.4 % Stab 0 % T-Bil 30.6 mg/dl IgG 1295 mg/dl Seg 91.0 % D-Bil 25.0 mg/dl IgM 87 mg/dl Lympho 8.0 % AST 40 IU/L ANA (-)
Mono 1.0 % ALT 44 IU/L AMA (-)
RBC 468 ×104/μl ALP 432 IU/L AFP 3.0 ng/ml
Hb 14.5 g/dl γ-GT 96 IU/L PIVKA-II 65 mAU/ml Ht 38.9 % Na 135 mEq/L sIL-2R 327 U/ml Plt 34.9 ×104/μl K 4.6 mEq/L HBs 抗原 (-)
PT% 111 % Cl 98 mEq/L HCV 抗体 (-) PT-INR 0.88 AMY 51 IU/L HIV 抗体 (-) CRP 0.16 mg/dl T-Cho 178 mg/dl TP 6.7 g/dl TG 407 mg/dl Alb 4.1 g/dl CK 150 IU/L ■腹部エコー:Fatty liver ■腹部 CT:びまん性に脂肪肝を認める。 ■MRCP:総胆管、肝内胆管、主膵管に拡張・口径不整は認めない。胆嚢腫大・壁肥厚や胆石も 認めない。肝内にも腫瘍や腫大は指摘できない。腹水なし。大動脈周囲リンパ節腫大なし。脾腫 なし。 ■PET:肝のびまん性集積亢進、皮膚面に沿った集積あり。 ■Ga シンチ:両側腎、肝、骨に淡い RI 集積を認める。 ■病理組織(肝生検):供覧 症例1 原因不明の黄疸の一例
1)日本大学医学部 内科学系消化器肝臓内科学分野 2)日本大学医学部 病態病理学系病理学分野 1) 竜崎仁美、山本敏樹、高安賢太郎、三浦隆夫、高橋利美 小林駿、中河原浩史、大城周、小川眞広、田中直英、森山光彦 2)絹川典子、杉谷雅彦 【症例】68 歳女性 【主訴】なし 【現病歴】60 歳ごろから 2 型糖尿病と肝機能障害のため近医で通院加療を受けていた。61 歳の時 に当院を紹介され以後当院で加療を開始(アマリール 3mg/日、肝機能は経過観察)。初診時の 血液検査は WBC 2500/μl、Plt 12.0 万/μl、AST 38U/l、ALT 34U/l、γ-GTP 82U/l、HbA1c(JDA) 6.9%であった。腹部超音波検査と CT では、肝左葉は腫大し右葉の萎縮がみられ、肝表面は軽度 の凹凸不整、肝縁の鈍化を認めた。脾腫は著明ではなく、腹部リンパ節の腫大も認めなかった が、超音波検査では内部エコーは不均質で、わずかに脂肪沈着を認めた。また上部消化管内視 鏡検査ではわずかに食道静脈瘤がみられた。各種肝炎ウイルスマーカー、自己抗体は陰性、血 清 IgG 値も正常範囲内で、明らかな肝機能障害の原因は指摘されず、その後の血液検査所見も 大きな変動はなく安定した状態であったが、精査目的で 1 年後に腹腔鏡検査が行われた。 CT、超音波、上部消化管内視鏡所見:当日供覧 腹腔鏡所見(6 年前に施行):供覧 その後も外来通院し(アマリール 3mg の他、メバロチン 5mg、パリエット 10mg、ウルソ 600mg、 ビタミン D、カルシウム製剤が経過で追加された)経過観察されていたが、平成 26 年 7 月に再 度、組織学的所見の確認のため超音波下肝生検をうけた。 表は、超音波下肝生検時の血液・尿検査所見を提示 経過表は PT、ALT、γ-GTP、Plt、HbA1c(JDC)の推移 【既往歴】45 歳時に下肢静脈瘤の治療。他特記すべきことなし。輸血歴なし。 【家族歴】肝疾患なし、その他にも特記すべきことなし 【嗜好歴】喫煙歴なし、飲酒歴なし、健康食品等の摂取歴なし 【理学的所見】初診時:身長 154cm、体重 60.0kg、BMI 25.3kg/m2 眼球結膜黄染なし、瞼結膜貧血なし、リンパ節腫大なし、胸腹部異常所見なし、肝脾触知せず、 神経学的所見、その他特記すべきことなし。
症例2 原因不明の慢性肝障害の 1 例
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WBC 6.8×103 /mm3 T.P 7.5 g/dl IgG 1968
■血液検査
■経過表
共催:肝疾患の集い/エーザイ株式会社 1)東京都保健医療公社大久保病院 2)がん・感染症センター都立駒込病院 肝臓内科 林 星舟1)、今村 潤2)、木村公則2) 【症例】49 歳男性 【家族歴】特記事項なし 【既往歴】39 歳時に十二指腸潰瘍で手術歴あり、輸血歴なし 【生活歴】喫煙:50 本/日×36 年 飲酒:焼酎 3 杯/日 【現病歴】1997 年 8 月に慢性骨髄性白血病を発症し当院血液内科受診。1998 年 1 月、受診時に白 血球が 62700/μl と増加したため、ヒドロキシカルバミド投与開始。また、3 月より IFN-α投 与開始した。しかし、奏効しなかったため、1998 年 9 月に血縁者間骨髄移植を施行。しかし、 細胞遺伝学的完全寛解が得られず、 2000 年 5 月に血液学的再発を来たした。同年 11 月より ドナーリンパ球輸注療法を施行していたが、血小板上昇のため 2001 年 10 月に非血縁者間骨 髄移植を施行した。移植 1 週間前までヒドロキシカルバミドの投与を行い、移植前後で免疫抑 制剤としてサイクロスポリン A、メトトレキセートを使用した。この時点での腹部 CT では肝 臓の変形や萎縮は認めなかった。骨髄移植施行後、生着を確認し、急性 GVHD の出現なく良好 に経過していたが、移植約 6 ヶ月後より ALT 95 IU/l、γ-GTP 459 IU/l と肝胆道系酵素上昇 が出現、その後 4 年以上にわたり徐々に低下するものの異常値が持続し、血小板数も前値まで 回復せず徐々に減少し、10 万前後で推移した。この期間中には皮膚症状や消化器症状など、 慢性 GVHD を想定させる臨床的徴候は観察されず、また、その後も慢性骨髄性白血病は再発な く経過していた。しかし、2007 年 3 月の上部消化管内視鏡検査で Li、F₁、Cb、RC(-)の食道静 脈瘤と Lg-f、F₃、Cb、RC(-)の胃静脈瘤を初めて指摘され、当科を紹介受診。腹部 CT(2007 年 4 月、図 3)では肝右葉の著しい萎縮と左葉の変形を認め、造影剤使用後の後期相では肝辺縁部 を主体とした肝実質の濃染像を認め、胃静脈瘤や下横隔静脈を主体とした遠肝性側副血行路が 著明に発達し、また脾腫大も観察されたが、門脈や肝静脈には血栓形成は認めなかった。肝臓 および静脈瘤に対する精査・加療のため、2007 年 6 月に当科入院となった。 【入院時現症】:意識清明、血圧 100/51mmHg、脈拍 64 回/分、結膜に貧血や黄染なし、口腔内に 発赤・腫脹なし、胸部聴診異常なし、手掌紅斑なし、クモ状血管腫なし、全身皮膚に明らかな 皮疹なし、腹部の理学所見上、異常は認めなかった。
症例3 骨髄移植後に出現した門脈圧亢進症の 1 例
- 6 - ■臨床経過 ■入院時検査所見(2007 年 6 月) ■上部消化管内視鏡検査:供覧 ■腹部血管造影検査供覧 ■経過:胃静脈瘤の主たる排血路は左横隔静脈であったが、横隔膜への排血路が太く B-RTO 困難 と判断し、2007 年 6 月下旬に胃上部血行郭清術を施行した。術中に肝楔状生検を施行した。胃 上部血行郭清術により胃静脈瘤は完全に消失していたが、術後 8 ヶ月後の上部消化管内視鏡検 査では Lm、F₂、Cw、RC₂(RWM)の食道静脈瘤増悪を認め、2008 年 4 月に内視鏡的硬化療法・結紮 術を施行した。2010 年 7 月時点で白血病および食道静脈瘤の再発は認めていないが、血液検査 では血小板数は 6.5x104/μl と少し減少傾向にある。 ■問題点:この病態は何か、今後の予後はどう予測されるのか。 症例3 骨髄移植後に出現した門脈圧亢進症の 1 例
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