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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repositor Title 生体内でのアルドステロンによる上皮型 Na チャネル (ENaC) 活性化に対するセリンプロテアーゼの関与 Author(s) 内村, 幸平 Citation Issue date

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(1)

熊本大学学術リポジトリ

Kumamoto University Repository System

Title 生体内でのアルドステロンによる上皮型Naチャネル

(ENaC)活性化に対するセリンプロテアーゼの関与

Author(s) 内村, 幸平

Citation

Issue date 2012-03-23

Type Thesis or Dissertation

URL http://hdl.handle.net/2298/28547

(2)

1

学位論文

Doctoral Thesis

生体内でのアルドステロンによる上皮型Naチャネル(ENaC)活性化に対

するセリンプロテアーゼの関与

(In vivo contribution of serine proteases to the proteolytic activation of γENaC by aldosterone) 内村 幸平

Kohei Uchimura

熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻腎臓内科学

指導教員

冨田 公夫教授

熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻腎臓内科学

2012年3月

(3)

2

Doctoral Thesis

論文題名 : 生体内でのアルドステロンによる上皮型Naチャネル(ENaC)活性化に対する セリンプロテアーゼの関与 ( I n vi v o co n t ri b ut ion o f se r ine p r ot e as es t o th e pr o t eo l yt ic a c t iv a ti on o fγ EN a C by a ld o st ero n e ) 著 者 名 : 内 村 幸 平 Kohei Uchimura 指導教員名:熊本大学大学院医学教育部博士課程医学専攻腎臓内科学 冨 田 公 夫 教授 審査委員名 : 代謝内科学担当教授 荒 木 栄 一 循環器内科学担当教授 小 川 久 雄 生体機能薬理学担当教授 光 山 勝 慶 2012年3月

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3 目次 Ⅰ 要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 Ⅱ 学位論文の骨格となる参考論文・・・・・・・・・・・・・・・・・3 Ⅲ 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 Ⅳ 略語一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 Ⅴ 研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 Ⅵ 実験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 動物実験 Real time RT-PCR イムノブロッティング

Double Layer Fluorescent Zymography(DLFZ)

Ⅶ 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 血液および尿検査 腎臓における ENaC mRNA の発現 腎臓における ENaC 蛋白の発現 尿中におけるプロスタシン蛋白の発現 腎臓におけるプロスタシン蛋白の発現 腎臓におけるプロスタシンのプロテアーゼ活性 Ⅷ 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21 Ⅸ 結語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26 Ⅹ 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

(5)

4 Ⅰ.要旨 上皮型 Na チャネル(ENaC)は腎臓では主に皮質集合尿細管に存在し、Na の再吸収 を行うことで体液量と血圧の維持に重要な役割を果たしている。ENaC はα、β、γの 各サブユニットが 1α1β1γのヘテロ 3 量体を形成し Na 再吸収を行い、生体内では 主にアルドステロンにより発現増加と活性化の調節を受けている。 私たちはこれまでに GPI アンカー型のセリンプロテアーゼであるプロスタシンについ ての研究を行い、尿中のプロスタシンがアルドステロンにより増加することや、プロス タシンが ENaC を活性化することを報告している。 正常血圧の SD ラットにアルドステロンを皮下投与すると、ENaCαサブユニットの発

現増加を認め、さらにγサブユニットの 85kDa から 70kDa への molecular weight shift

を認める。近年、in vitro の実験系においてγサブユニットの細胞外ループの1か所を

セリンプロテアーゼのフューリンが、もう1か所をプロスタシンが切断することで

inhibitory peptide が切り出され、この molecular weight shift が起こることが報告された。

この切断は ENaC 活性化に極めて重要であると考えられ、ENaC 活性化へのセリンプ ロテアーゼの強い関与が示唆されている。しかし、これまでに生体において、γENaC の切断・活性化に対するセリンプロテアーゼの関与を蛋白レベルで検討した報告はな い。そこで、経口投与可能なセリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸カモスタットを 用いて、in vivo におけるγENaC の切断・活性化に対するセリンプロテアーゼの関与 を検討した。 8 週齢の雄性 SD ラットに 200μg/day のアルドステロンを皮下投与すると、これまで

の報告通り ENaCαサブユニットの発現増加とγサブユニットの 85kDa から 70kDa へ

の molecular weight shift、および ENaC 活性化のサロゲートマーカーである尿中 Na/K

比の低下が認められた。一方、アルドステロンと 12mg/day のメシル酸カモスタットを

(6)

5

γサブユニットの 85kDa から 70kDa への molecular weight shift が部分的に抑制され、

75kDa に新たなバンドが出現し、尿中 Na/K 比の低下も抑制されていた。このことは、 メシル酸カモスタットはプロスタシンによる切断のみを抑制し、ENaC の活性化を抑制 したと考えられた。 次にメシル酸カモスタット投与による尿中および腎臓組織内のプロスタシンの変化 を観察した。アルドステロン投与によって増加した尿中プロスタシンは、メシル酸カモ スタット投与によって著明に減少しており、さらにメシル酸カモスタットは腎臓組織にお いてプロスタシンの前駆体から活性型へのプロセシングを抑制していることがわかっ た。 これらの結果より、生体においてメシル酸カモスタットがプロスタシンの活性化を抑 制し、γENaC の切断・活性化を抑制したと考えられ、メシル酸カモスタットが新規降 圧利尿薬となる可能性が示唆された。

(7)

6 Ⅱ.学位論文の骨格となる参考論文

① 関連文献

Kohei Uchimura*, Yutaka Kakizoe*, Tomoaki Onoue, Manabu Hayata, Jun Morinaga,

Teruhiko Mizumoto, Masataka Adachi, Taku Miyoshi, Naoki Shiraishi, Yoshinori Sakai, Kimio Tomita, and Kenichiro Kitamura

In vivo contribution of serine proteases to the proteolytic activation of γENaC in aldosterone-infused rats

Am J Physiol-Renal Physiol. Oct. 303(7): F939-943, 2012.

* K.Uchimura and Y. Kakizoe contributed equally to this work.

②その他の文献

1. Ko T, Kakizoe Y, Wakida N, Hayata M, Uchimura K, Shiraishi N, Miyoshi T, Adachi M, Aritomi S, Konda T, Tomita K, Kitamura K.

Regulation of adrenal aldosterone production by serine protease prostasin.

J Biomed Biotechnol. 2010:793843.

2. Hayata M, Kakizoe Y, Uchimura K, Morinaga J, Yamazoe R, Mizumoto T, Onoue T, Ueda M, Shiraishi N, Adachi M, Miyoshi T, Sakai Y, Tomita K, Kitamura K.

Effect of a serine protease inhibitor on the progression of chronic renal failure.

(8)

7 Ⅲ.謝辞

本研究を遂行するにあたり、御指導、御支援頂きました当研究室の冨田 公夫教授、

北村 健一郎博士、柿添 豊博士ならびに腎臓内科学講座の皆様に厚く御礼申し上

(9)

8 Ⅳ.略語一覧

CAP-1 channel-activating protease -1

cDNA complementary deoxyribonucleic acid

DLF Double Layer Fluorescent

ENaC epithelial sodium channel

GAPDH glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase

GPI glycosylphosphatidylinositol

MCA 4-Methyl-Coumaryl-7-amide

PCR Polymerase chain reaction

RNA Ribonucleic acid

SD Sprague Dawley

SDS-PAGE Sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis

(10)

9 Ⅴ.研究の背景と目的 腎臓は生体内の水電解質バランスを調節する重要な機能を果たしており、その機 能異常は高血圧発症へとつながる。糸球体で濾過された Na は尿細管で 99%が再吸 収されるが、再吸収の機序として①近位尿細管における各物質との共輸送系、②ヘ ンレの太い上行脚における Na/K/2Cl 共輸送系、③遠位尿細管にける Na/Cl 共輸送 系、④集合尿細管における Na チャネルなどがある。このうち集合尿細管における Na 再吸収は全体の約 3%を占めるにすぎないが、生体内の Na バランスを最終的に調節 する重要な部位である。この部位で、尿細管管腔側の Na は上皮型 Na チャネル

(ENaC)により細胞内へ取り込まれ、さらに Na/K ATPase により血管側へ汲み出され

る。この際、尿細管管空側の電気的中性を保つため K が尿中へ排出される。この経

上皮 Na 輸送の律速段階は ENaC 活性であり、ENaC が Na 再吸収量を決定している

(11)

10 Figure 1 腎臓における Na 再吸収の模式図及び集合尿細管の拡大図 1:近位尿細管における各物質との共輸送系 2:ヘンレの太い上行脚における Na/K/2Cl 共輸送系 3:遠位尿細管における Na/Cl 共輸送系 4:集合尿細管における Na チャネル

(12)

11

ENaC は 1993 年から 1994 年にかけてラットの大腸からクローニングされ(1)、腎臓

皮質集合尿細管、下行結腸、肺気道上皮などに存在し Na 再吸収を調節しているイオ

ンチャネルである。生体においては腎臓での Na 再吸収による血圧調節、気道での粘

液産生の調節などの重要な役割を果たしている。遺伝性の食塩感受性高血圧である

Liddle 症候群が ENaC の gain of function mutation に起因することからも、このチャネ

ルの高血圧発症への重要性が伺える(2;3)。ENaC は α、β、γ の 3 つのサブユニット から構成され、各サブユニットは細胞質にある N 末端と C 末端、細胞外の大きなルー プ、2 つの短い疎水基といった 4 つの部分に分かれており、約 640~700 のアミノ酸残 基からなるそれぞれ 2 回膜貫通型の蛋白質である。各サブユニットがヘテロ 3 量体を 形成することで Na 再吸収を行い(Fig.2)、生体内では主にアルドステロンにより発現増 加と活性化を受けている(4-6)。 Figure 2 ENaC の構造

(13)

12 プロスタシンは 1994 年にヒトの精液より抽出された、分子量約 40kDa のセリンプロ テアーゼであり(7)、トリプシン様の酵素活性を持ち、合成基質を用いた検討ではアル ギニン残基の C 末端を選択的に切断することが判明している。酵素活性の至適 pH は 9.0 付近で、アプロチニン、ベンザミジン、アンチパイン、ロイペプシンなどのセリンプロ テアーゼインヒビターにより活性が阻害される。前立腺、腎臓、大腸、肺、胃、皮膚、 膵臓、肝臓、唾液腺、卵巣などに発現が認められ(8)、これは ENaC の発現部位とほ

ぼ一致している。1995 年にヒトプロスタシンの cDNA がクローニングされ、light chain

及び heavy chain から構成される GPI-anchored protein であることが判明した(8;9)。

1997 年にカエルの腎臓細胞である A6 細胞から ENaC を活性化するセリンプロテア

ーゼとして、CAP-1 (channel-activating protease -1 ) がクローニングされた(10)。私

たちは、その mammalian homologue のクローニングに着手し、セリンプロテアーゼの プロスタシンをラット腎臓 cDNA ライブラリーから単離した。そして、プロスタシンと ENaC をアフリカツメガエル卵母細胞に共発現させると、アミロライド感受性ナトリウム 電流が約 2~3 倍に増加することを証明した(11)。また、私たちは正常血圧の Sprague Dawley(SD)ラットにアルドステロンを皮下投与すると尿中のプロスタシン排泄が亢進 することや、原発性アルドステロン症患者の尿中プロスタシン排泄が亢進しており、副 腎摘出術により正常化することを報告している(12)。このことからプロスタシンはアル ドステロンが ENaC を活性化するうえで、重要な役割を果たしていると考えられる。 SD ラットにアルドステロンを皮下投与すると、ENaC α サブユニットの蛋白発現の

増加を認め、さらに γ サブユニットの 85kDa から 70kDa への molecular weight shift

を認めることが報告されている(13)。近年その機序が明らかとなり、γ サブユニットの

細胞外ループの一か所をセリンプロテアーゼのフューリンが、もう一か所をプロスタシ

ンが切断することで、間にある 43 アミノ酸からなる inhibitory peptides が切り出される

(14)

13 ENaC の活性化に極めて重要であると考えられている。 メシル酸カモスタットは分子量 494.52 の非ペプチド型合成セリンプロテアーゼ阻害 薬である。その阻害領域は、トリプシン、血漿カリクレイン、プラスミン、トロンビン、C1r、 C1 エラスターゼなどと広範囲である。経口投与可能な薬剤であり、日本では慢性膵 炎における急性症状の緩解と術後逆流性食道炎に対してすでに臨床使用されている。 以前、私たちはメシル酸カモスタットがプロスタシン活性阻害を介して ENaC 活性化を 抑制することを in vitro の実験系で証明した(15)。しかし、これまでに生体においてγ ENaC の切断・活性化に対するセリンプロテアーゼの関与やセリンプロテアーゼインヒ ビターによるプロスタシン活性阻害の詳細を蛋白レベルで検討した報告はない。 今回私たちは SD ラットにアルドステロンと同時にメシル酸カモスタットを投与し、in vivo においてメシル酸カモスタットがγENaC の切断・活性化とプロスタシン活性に及 ぼす影響を検討した。 Inhibitory peptide

非活性型ENaC

M1M2 N N PY PY C C

β

α

γ

C M2 M1 M1M2 N N PY PY C C

β

α

γ

C M2 M1

furin

prostasin

Na

2箇所で切断

活性型ENaC

Figure 3 セリンプロテアーゼによる ENaCの活性化

(15)

14 Ⅵ 実験方法

動物実験

8週齢の雄性 SD ラットをコントロール群(Control 群; n=6)、200μg/day アルドステロ

ン皮下投与群(Aldo 群; n=6)、200μg/day アルドステロン+12mg/day メシル酸カモスタ

ット皮下投与群(CM 群; n=6)の3群に分け、10日間飼育した。飼育7日目に代謝ケー ジを用いて24時間蓄尿を行い、各種尿検査(尿量、尿蛋白、電解質)を行った。飼育1 0日目にペントバルビタールナトリウム(50mg/kg bodyweight)を腹腔内投与し、麻酔下 で開腹し、下大静脈から採血後、腎臓を摘出した。腎臓はおよそ 3mm の厚さにスライ スし、皮質と髄質に分け、皮質を RNA later(Invitrogen)に保存するとともに、蛋白抽出 液(後述)でホモジナイズした。血液中のクレアチニン、電解質を測定した(SRL)。 Real time RT-PCR

RNAlater 中に 4 ˚C で一晩保存した腎皮質から RNeasy Micro Kit (Qiagen)を用いて

RNA を抽出した。1μg の RNA を QuantiTect Reverse Transcription kit(Qiagen)を用い

てオリゴランダムプライマーで逆転写し、得られた cDNA を鋳型として TaqMan プロー

ブ法で ENaC 各サブユニットの mRNA 発現を観察した。プライマーはすべて Applied

BioSystems 社より購入した。Real-time PCR は Applied BioSystems 社の ABI PRISM

7900 Sequence Detector System を用いて行った。データの処理は得られた各々の

Ct 値を GAPDH の Ct 値で補正した (Ctgene of interest-CtGAPDH )。各サンプルの発現量の変

化は GAPDH で補正した ΔCt の差(Ctsample-Ctcalibrator ) より補正した(ΔΔCt 法)。

イムノブロッティング

(16)

15

ペプチン+0.1mg/ml phenylmethylsulfonyl fluoride 溶液中でポリトロンによりホモジナイ

ズした。4 ˚C 、1000g、15 分で赤血球や未破砕細胞を除去し、17000g、15 分の遠心で

ミトコンドリア画分を除去した後 200000g、60 分の超遠心で得られたペレットを細胞膜

画分として回収した(13)。ペレットを溶解後、BCA 法により蛋白濃度を測定し、40μg

の蛋白を SDS-PAGE にアプライした。ニトロセルロース膜に転写し、5% skim milk でブ

ロッキングした後に抗 ENaC 抗体(16)、抗プロスタシン抗体(BD Biosciences)、抗 β ア

クチン抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)を用いてイムノブロッティングを行った。尿

サンプルは 24 時間尿量の 2000 分の 1 を SDS-PAGE にアプライし、抗プロスタシン

抗体を用いてイムノブロッティングを行った。

Double Layer Fluorescent Zymography(DLFZ)

腎皮質を氷冷した T-PER(Thermo scientific)溶液中でポリトロンによりホモジナイズし た。BCA 法により蛋白濃度を測定し、90μg の蛋白を還元反応せずに SDS-PAGE に アプライした。4℃下で電気泳動を行った後にゲルを 2.5% TritonX-100 で 30 分洗浄し、 50mM Tris-HCl (pH9.0) 中 に 温 置 し た 。 次 に 100mM Tris-HCl と 0.2mM Acetyl-Lys-His-Tyr-Arg-α-4-methylcoumary1-7-amide (Ac-KHYR-MCA)(17)を充 分に浸透させたアセテートセルロース膜とゲルを 37 度で 1 時間反応させ、UV トランス イルミネーターを用いて 365nm の波長で観察した(18)。

(17)

16 Ⅶ.実験結果 血液および尿検査 (Table 1) アルドステロン投与により血清 Na の上昇と血清 Cl、K の低下がみられたが、メシル 酸カモスタット投与によりその変化は抑制されていた。ENaC 活性のサロゲートマーカ ーである尿中 Na 濃度と尿中 K 濃度の比(19)はアルドステロン投与で低下し、メシル酸 カモスタット投与によってその低下は回復していた。これらの結果からアルドステロン によって誘導された ENaC 活性がメシル酸カモスタット投与によって抑制されたことが 示唆された。

(18)

17 Table 1 SDラットにアルドステロンおよびメシル酸カモスタットを投与し、飼育7日目の尿検査と飼 育10日目の血液検査 Control Aldo CM Cr (mg/dL) 0.21±0.02 0.23±0.04 0.21±0.03 Na (mEq/L) 144.2±0.4 148.7±0.8 † 147.3±0.5 †§ Cl (mEq/L) 105.8±1.9 94.8±0.8 † 100.2±0.4 †* K (mEq/L) 4.6±0.2 2.6±0.1 † 3.1±0.2 †* U-Na/K 0.49±0.02 0.43±0.05 † 0.50±0.03 § U-Prot 8.6±3.4 6.9±2.0 7.0±2.9 データはmean ± SD (n = 6)で表した。

#P < 0.05 vs. Control. P < 0.01 vs. Control. §P < 0.05 vs. Aldo. *P < 0.01 vs. Aldo.

Aldo : aldosterone-infused group, CM : aldosterone-infused and concomitant camostat treated

(19)

18 腎臓における ENaC mRNA の発現 (Figure 4)

αENaC の mRNA 発現はこれまでの報告通りアルドステロン投与で著明に増加し

たが(4-6)、メシル酸カモスタット投与による変化はみられなかった(Aldo 群;2.58±

0.21- and CM 群;2.61±0.33-fold increase over control group, respectively)。β と

γENaC の mRNA 発現は 3 群間に有意差はなかった。これらの結果から、メシル酸カ モスタットはミネラルコルチコイド受容体を介したアルドステロンのシグナル伝達には 影響を及ぼさないことが推測された。 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 Control Aldo CM ENaC ENaC ENaC (normal ized rati o) (fold) Figure 4 アルドステロン及びメシル酸カモスタット投与による腎臓の ENaC mRNA 発現の変化

real-time PCR による ENaC mRNA 発現の評価。各サンプルの発現量の変化は

GAPDH で補正した ΔCt の差より補正した(ΔΔCt 法)。データは mean ± SD (n = 6)

で 表 し た 。 Aldo : aldosterone infusion group, CM : aldosterone infusion and

(20)

19 腎臓における ENaC 蛋白の発現 (Figure 5)

これまでの報告のように、アルドステロン投与で腎臓の αENaC の蛋白発現は著

明に増加し、βENaC の蛋白発現は変化がみられなかった(6)。そして、メシル酸カモ

スタットはアルドステロンに誘発されるこのような変化に影響を及ぼさなかった。一方、

γENaC はアルドステロンによって 85kDa から 70kDa への molecular weight shift が引

き起こされたが、メシル酸カモスタット投与によってその shift が抑制され 75kDa に新た

なバンドが出現した。このことは、メシル酸カモスタットはプロスタシンによる切断を抑

(21)

20 ENaC Aldo CM ENaC Control C V 70 C V 85 75 -ActinENaC 100 75 100 75 2.5 2 1.5 1 0.5 Control Aldo CMENaCENaC (r el at iv e de nsi ty ) (fold) γENaC 85 75 70 85 75 70 85 75 70 (KDa) 0.5 1 1.5 Figure 5 イムノブロッティングによる ENaC 蛋白発現の評価(上)とデンシトメトリ―による定量化 (下)

デ ー タ はmean ± SD (n = 6) で 表 し た 。 Aldo : aldosterone infusion group, CM :

(22)

21 尿中におけるプロスタシン蛋白の発現 (Figure 6)

私たちがこれまで報告してきたようにアルドステロン投与によって尿中プロスタシン

は有意に増加した(12)。更に本実験では、メシル酸カモスタット投与によって尿中プロ

スタシンは著明に減少し、約 3kDa 上へ shift していることがわかった。プロスタシンは

マトリプターゼやヘプシンなどのセリンプロテアーゼに 3kDa の light chain(20)を切断さ

れることによって活性化されることが知られている(21;22)。すなわち、この 3kDa 上へ shift しているバンドはプロスタシン前駆体である可能性が示唆された。 腎臓におけるプロスタシン蛋白の発現 (Figure 7A) 私たちの予想に反して、アルドステロン投与によって腎臓のプロスタシン発現は増 加しなかった。一方、メシル酸カモスタット投与によって腎臓のプロスタシンは 3kDa 上 へ shift した前駆体として認められ、その発現は増加していた。このことは、メシル酸カ モスタットによって尿中へのプロスタシン排泄が抑制されたことによって腎臓でのプロ スタシン前駆体の発現が増加したものと考えられる。 腎臓におけるプロスタシンのプロテアーゼ活性(Figure 7B) コントロール群とアルドステロン投与群において約 33kDa の高さにプロテアーゼ活 性を認めた(矢印)。プロスタシンは KHYR-MCA 基質を好んで切断することが報告さ れており、この 33kDa にみられるプロテアーゼ活性は非還元型のプロスタシンによる ものであると考えられた。メシル酸カモスタット投与群においてそのプロテアーゼ活性 は消失しており、プロスタシン前駆体の活性化が抑制されていることが示唆された。 尚、矢頭のプロテアーゼ活性はメシル酸カモスタットで抑制されない未知のプロテア ーゼと判断した。

(23)

22

Aldo

CM

Control

0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 Control Aldo CM (rel ati v e densi ty ) (fold) #

*

37 Figure 6 イムノブロッティングによる尿中プロスタシン発現の評価(上)とデンシトメト リ―による定量化(下) データはmean ± SD (n = 6)で表した。

Aldo : aldosterone infusion group, CM : aldosterone infusion and concomitant CM

(24)

23

Aldo

CM

Control

Aldo

CM

Control

Control Aldo CM (rela tiv e density ) 0 0.5 1.0 1.5 2.0 (fold) # 37 37 25

A

B

Figure 7 イムノブロッティングによる腎臓プロスタシン発現の評価(A)とデンシトメトリ―による 定量化と DLF ザイモグラフィーによるプロテアーゼ活性の評価(B)

Aldo : aldosterone infusion group, CM : aldosterone infusion and concomitant CM

treatment group. Arrow indicates the activity of prostasin. Arrowhead indicates an

(25)

24 Ⅷ.考察 今回行った実験で以下の知見を得た。 ①メシル酸カモスタットはアルドステロンによる尿中Na/K比の低下、血清Naの上昇、 血清KおよびClの低下を抑制した。 ②メシル酸カモスタットはENaCのmRNA発現や、αβENaCの蛋白発現には影響を及 ぼさなかった。しかし、メシル酸カモスタット投与によって、アルドステロンにより誘導さ

れるγENaCの85kDaから70kDaへのmolecular weight shiftは部分的に抑制され、

75kDaに新たなバンドが出現した。 ③アルドステロンにより尿中プロスタシンの増加を認めたが、メシル酸カモスタットに よりプロスタシン排泄は著明に抑制された。メシル酸カモスタットは腎組織中において、 プロスタシン前駆体から活性体へのプロセシングを阻害していた。 以上の結果より、生体においてメシル酸カモスタットがプロスタシンの活性化を抑制 し、γENaCの切断・活性化を抑制したと考えられ、メシル酸カモスタットが新規降圧利 尿薬となる可能性が示唆された。 ENaCが活性型として機能するためにはγサブユニットの切断が重要であることがIn vitroにおいて示されている(23;24)。γサブユニットは細胞外ループの1か所をフューリ ンに、その後もう1か所をプロスタシンやプラスミンなどの他のセリンプロテアーゼに切 断され、約5kDaのinhibitory peptide除去されることで活性化する(14;25)。本実験にお いて、メシル酸カモスタットはENaCのmRNA発現や、αβENaCの蛋白発現には影響 を及ぼさなかったが、アルドステロンにより誘導されるγENaCの85kDaから70kDaへ

のmolecular weight shiftを部分的に抑制し、75kDaに新たなバンドを出現させた。メシ

(26)

25 フューリンのプロテアーゼ活性は阻害しない(27)。そのためメシル酸カモスタットはプ ロスタシンやプラスミンによる2回目の切断のみを阻害することにより、メシル酸カモス タット投与群のγENaCを5kDa上にシフトさせたと考えられる。またαサブユニットはフ ューリンによって細胞外ループを2か所切断され、γサブユニット同様にinhibitory peptideが除去されることで活性化する(28)。今回メシル酸カモスタットによるαサブユ ニット活性化への影響について検討できていないが、メシル酸カモスタットは上述した ようにフューリンのプロテアーゼ活性を阻害しないため、αサブユニットの活性化は抑 制していないと考えられる。 アルドステロンによってプロスタシンが誘導されるため(12;29)、本実験で用いたアル ドステロン負荷ラットにおけるENaC活性化ではプロスタシンが重要な役割を担ってい ると考えた。しかし、アルドステロンによって尿中プロスタシンが著明に増加している にも関わらず、予想に反して腎臓のプロスタシン発現は増加していなかった。その理 由として、アルドステロンによって誘導されたプロスタシンはγサブユニットを切断した 後、尿中へ排泄されるのではないかと考えられた。すなわち腎皮質にはアルドステロ ンで誘導されたプロスタシンでは切断しきれないほど多くのENaCが存在しており、プ ロスタシンはγサブユニットを切断後速やかに尿中へ排泄されるためにアルドステロ ン負荷によって尿中プロスタシンは著明に増加したが、腎臓プロスタシン発現の増加 はみられなかったのではないだろうか。さらにメシル酸カモスタット投与によって腎臓 プロスタシンは3kDa上昇し、尿中プロスタシン排泄は著明に減少した。プロスタシン前

駆体はheavy chainとlight chainの間で切断され活性体となる。プロスタシンのプロセシ

ングエンザイムの候補にマトリプターゼがあり(30)、メシル酸カモスタットはマトリプタ

ーゼのプロテアーゼ活性を阻害することから(31)、この3kDa上昇したプロスタシンはプ

(27)

26 側からのプロスタシン排泄・分泌を抑制している可能性も考えられる。以前、私たちは 同じく合成セリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸ナファモスタットがラット尿細管か らのプロスタシン排泄・分泌を抑制することを報告している(32)。プロスタシンは主に GPIアンカー型のセリンプロテアーゼとして存在するが(9)、GPI特異的ホスホリパーゼ D1やトリプシン様ペプチダーゼによって切断・分泌され可溶型としても存在する(33)。 メシル酸カモスタットはGPI特異的ホスホリパーゼD1を阻害しないため、未同定のトリ プシン様ペプチダーゼを介してプロスタシンの切断・分泌を阻害していると推察される。 ヒトの気道上皮細胞においてアプロチニンはプロスタシンのプロセシングを抑制する が、プロスタシンの切断・分泌には影響を及ぼさないことが報告されている(20)。すな わち、プロスタシンの切断・分泌を抑制する効果は、メシル酸カモスタットやメシル酸 ナファモスタットのように分子量が小さい合成セリンプロテアーゼに特異的な作用なの かもしれない。本実験で想定されるメシル酸カモスタットによるプロスタシン活性阻害 を介したγENaC切断抑制の機序をFig.8に示す。 今回私たちはアルドステロンによって誘導されるプロスタシンに着目したが、前述し たようにENaCγサブユニットの2度目の切断はプロスタシンの他にプラスミン、好中球 エラスターゼ、カリクレインなどのセリンプロテアーゼによっても行われることが知られ ている(34-37)。それゆえ、本実験のモデルであるアルドステロンによるENaC活性化 において、プロスタシン以外のセリンプロテアーゼが関与している可能性も考えられる。 また多く場合、セリンプロテアーゼの活性化には、その過程において他のセリンプロ テアーゼの活性化を要する。すなわち、今回用いたメシル酸カモスタットはγサブユ ニットを切断するセリンプロテアーゼを直接阻害したのではなく、セリンプロテアーゼ 活性に関与する上流のセリンプロテアーゼを阻害し、間接的にENaC活性を抑制した 可能性も考えられる。メシル酸カモスタットのプロテアーゼ阻害活性は非常に広範で

(28)

27 あるため、本実験で私たちはENaC活性化においてメシル酸カモスタットの標的となる セリンプロテアーゼを特定するには至っていない。今後プロスタシン特異的阻害薬の 開発やプロスタシンKOマウスの解析などが行われることで、アルドステロンによる ENaC活性化におけるプロスタシンの関与がさらに明確に証明されることを期待する。 今回行った実験で、In vivoにおいてメシル酸カモスタットがアルドステロンによって誘 導されるγサブユニットの切断を抑制すること、プロスタシン前駆体のプロセシングを 阻害し、プロスタシンの切断・分泌を抑制することが証明できた。メシル酸カモスタット は経口投与可能な薬剤で、わが国において既に臨床使用され、その安全性が確認さ れており、今後新しいクラスの降圧薬となりうることが期待できる。

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28 furin prostasin pro-prostasin furin prostasin pro-prostasin 85kDa 70kDa 85kDa 70kDa 75kDa

Camo

Camo

Aldo

Aldo+Camo

Double-cleavage Single-cleavage

serine protease (matriptase etc)

Inhibitory

peptide (43amino acid)

Secretion Secretion

Camo

Figure 8 メシル酸カモスタットによるγENaC切断抑制の機序 (上) ENaCγサブユニットは、フューリンによって1度目の切断を受けた後、43アミノ酸 C末端側をアルドステロンが誘導したプロスタシンによって2度目の切断を受ける。そ の結果、活性型ENaCが70kDaのバンドとして観察された。 (下)メシル酸カモスタットによってプロスタシンのプロセッシングや分泌が阻害されるこ とで、γサブユニットの2度目の切断が抑制される。その結果、フューリンによって1度 だけ切断されたγサブユニットが75kDaとして観察された。

(30)

29 Ⅸ.結語 今回、私たちはメシル酸カモスタットがプロスタシン前駆体からプロスタシン成熟型 へのプロセシングを阻害することで、アルドステロンによって誘導されるγサブユニッ トの切断を介したENaC活性化を抑制することをIn vivoにおいて証明した。メシル酸カ モスタットはわが国で既に臨床使用されている薬剤であり、現在使用されているCa拮 抗薬、ACE阻害薬、ARB、抗アルドステロン薬等の高血圧治療薬に加えて新しいクラ スの降圧薬となることが期待できる。 本実験で残された課題として、アルドステロンによって誘導されるプロスタシン以外 のENaC活性化因子を特定することが挙げられ、今後更に詳細な検討が必要である。

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30 Ⅹ.参考文献

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