「なぜ,地価が下落しているのに,土地の固定資産税が上昇するの !?」
現在の固定資産税は,バブル崩壊後さまざまな制度の改正により,非常にわかりづらい状況になってい
ます。特に,「地価が下落しているにもかかわらず土地の固定資産税が上昇する」という現象に戸惑うことと
思います。この原因について要約しますと,以下のようになります。
平成6年の評価替えにおいて「固定資産税の土地(宅地)の評価は,地価公示価格の7割程度とする」こ
ととなり,平成6年度の評価額は平成5年度に比べ,全国平均で約4倍と急激に上昇しました。この上昇を
そのまま税に反映しますと,「固定資産税が一度に約4倍になる」ということになります。このような急激な税
負担の増加をできる限り抑えるため,長期間をかけ少しずつこの差をうめていく調整措置が講じられました。
この結果,毎年の税の上昇は緩やかなものに抑えられましたが,十数年間固定資産税が上昇していくこ
とになり,いわゆる「地価が下落しても,土地の固定資産税が上昇する。」という現象が生じることとなったも
のです。
4倍
4 5 6 7 8 9 ・・・ 25 26 27 28 29 30 31
(令和元年)
まだ開きが・・・
この差がなく
なるまでは、
なだらかに
(全国平均)
(平成)
「なぜ,平成6年評価額が急激に上昇したの !?」
<公的土地評価相互の均衡と適正化>
・ 土地の価格には,公的土地評価といわれるものだけでも,
①地価公示価格(国土交通省)②地価調査価格(都道府県)
③相続税評価額(国税局) ④固定資産税評価額(市町村)
があり,1物4価と言われています。
・ バブルの影響によってこれらの価格差が大きくなり,
公的土地評価に対する国民の不信を招いていました。
・ そこで,平成元年に成立した「土地基本法」においては,
公的土地評価相互の均衡と適正化を図ることがはっきりと
定められました(土地基本法第16条)。
<地価公示価格の一定割合(7割)を目標>
・ 固定資産税の土地(宅地)の評価は,土地基本法の
趣旨を踏まえ,地価公示価格等の7割程度とすることに
なりました。
市
町
村
間
で
も
値
段
が
バ
ラ
バ
ラ
!
<評価額の上昇>
土地基本法に基づき,公的土地評価は,地価公示価格を基本に相続税評価額はその8割・固定資産
税評価額はその7割と,評価の均衡化・適正化が図られ,また地価公示価格・地価調査価格及び不動産
鑑定士による鑑定価格を活用することにより,地域及び市町村間の均衡・適正化が図られました。
この改正により,全国の固定資産評価水準が統一され公平さが保たれましたが,今までの評価が低い
水準であったため,平成6年度の評価額が急激に上昇することとなりました。
当市においては,特に勝田地区の評価水準が低く,平成6年度評価が平均7倍弱上昇しました。これ
は,全国平均の約4倍と比べても非常に高い上昇率であり,見方を変えると「平成5年以前の固定資産税
評価額が全国及び近隣市町村より著しく低い水準に抑えられていた」ということになります。
平成9年から地価下落に対応するため,3年に一度の「評価替え」以外の年でも,地価の下落している
地区について評価額を修正できることとなり,より適正な固定資産評価ができるようになりました。
A市
B市 B町 C市
地価公示価格の7割 地価公示価格の7割 地価公示価格の7割
どの市町村も同じ基準!
地価公示価格の7割
地
価
公
示
・
調
査
価
格
相
続
税
評
価
額
固
定
資
産
税
評
価
額
8割
7割
<公的評価の均衡>
「固定資産税・都市計画税の税額はどう計算するの !?」
<本則課税>
通常,税金は税額決定の算定基準である課税標準額に税率を乗じて税額を求めます。
固定資産税(都市計画税)では,原則として評価額が課税標準額となっており,これに税率(固定1.4/100,
都計0.3/100)を乗じて税額を算出します。(この算定方法を「本則課税」といいます。)
=
×
=
この算出法で計算しますと,平成6年度の税額は,同年の評価額と同じように上昇するため,急激な
税負担が強いられます。しかし,その後は,評価額と同様に推移するため税額は下落することになります。
4 5 6 7 8 9 ・・・ 25 26 27 28 29 30 31
(平成)
税 額
税率(固定1.4/100,都計0.3/100)
固定資産税評価額
課税標準額
評
価
額
税 額
(
当
市
最
大
)
課税標準額
7
(令和元年)
<負担調整による課税>
本則課税の場合,評価額が課税標準額となっておりますが,平成6年度以降,評価額が数倍になったこと
により,評価額をそのまま課税標準額にするのではなく,前年度の課税標準額から負担水準等(負担調整率)
を算出して,それにより翌年度の課税標準額を算出する調整措置がとられております。
≠
×
=
この算出法で計算しますと,平成6年度の税額は,同年の評価額と同じように上昇しないため,急激な
税負担はありません。しかし,その後評価額に追いつくまで長期間かけて税額が上昇することになります。
4 5 6 7 8 9 ・・・ 25 26 27 28 29 30 31
(令和元年)
税 額
税率(固定1.4/100,都計0.3/100)
固定資産税評価額
課税標準額
評
価
額
税 額
(
当
市
最
大
)
課税標準額
7
前年度の
課税標準額 計算式により算出 課税標準額
計算式は,評価替え時(3年ごと)
に若干変更となっております。
(平成)
<現在の計算方法と計算例>
平成30年度~令和2年度
1.まず,負担水準を求め,その負担水準に応じて,計算区分(据え置き等)が決定します。
○ 負担水準 = × 100 (%)
負担水準とは・・・個々の土地の課税標準額が評価額に対してどの程度まで達しているかを示すものです。
2.負担水準が一定の割合未満の場合,課税標準額が上昇することになります。
下記の計算式で算出した[A]の額が,新しい課税標準額となります。
※[A]が一定の割合を超えた場合,または一定の割合を下回った場合は除きます。
区分表の一例
商業地等の宅地の区分表
100
10
20
30
40
50
60
70
80
90
[A]が新評価額×20%を下回る場合は
新評価額×20%=新課税標準額
[A]が新評価額×60%を上回る場合は
新評価額×60%=新課税標準額
据え置き部分
引き下げ部分
地価公示×0.7
(新評価額)
負
担
水
準
%
前年度課税標準額
新評価額
[A] = 前年度課税標準額 + 新評価額 × 5%
引き上げ部分
(70%に引き下げ)
前年度課税標準額+新評価額×5%
=新課税標準額
<計算例①>
① 負担水準の計算
② 課税標準額の計算
③ 固定資産税額の計算
<計算例②>
① 負担水準の計算
② 課税標準額の計算
③ 固定資産税額の計算
負担水準が60%未満であるため,平成30年度課税標準額に令和元年度評価額の5%を加えると負担水準
62.5%となり,60%を上回るので課税標準額は60%相当額となる。
平成30年度 評価額 450 万円(課税標準額 200万円・税額 28,000円)の土地で,令和元年度 評価額が
400 万円になった。
負担水準が60%未満であるため,平成30年度課税標準額に令和元年度評価額の5%を加えて課税標準額
を算出する。(その額が評価額の55.0%となり,60%を下回るので,課税標準額となる。)
平成30年度 評価額 450 万円(課税標準額 230万円・税額 32,200円)の土地で,令和元年度評価額が
400 万円になった。
4,000,000円
(令和元年度評価額)
2,000,000円
(平成30年度課税標準額) 50.0%
2,000,000円
(平成30年度課税標準額)
200,000円
(令和元年度評価額×5%)
2,200,000円
(令和元年度課税標準額)
2,200,000円
(令和元年度課税標準額)
1.4/100
(税 率)
30,800 円
(令和元年度税額)
4,000,000円
(令和元年度評価額)
2,300,000円
(平成30年度課税標準額) 57.5%
2,300,000円
(平成30年度課税標準額)
200,000円
(令和元年度評価額×5%)
2,500,000円
(負担水準62.5%)
2,400,000円 1.4/100 33,600 円
2,400,000円
(令和元年度課税標準額)
4,000,000円 × 60% =
(令和元年度評価額)