RCD Report 15
広域連合のガバナンス
―その課題と方向性
分権型政策制度研究センター
分権型政策制度研究センター
分権型政策制度研究センター
分権型政策制度研究センター
地方政府体系と
地方政府体系と
地方政府体系と
地方政府体系と資源配分ルール
資源配分ルール
資源配分ルール
資源配分ルールのあり方に関する研究会
のあり方に関する研究会
のあり方に関する研究会
のあり方に関する研究会
2013年3月
はじめに
分権型政策制度研究センターは、2012 年度の研究計画にもとづき「地方政府体系と資源 配分ルールのあり方に関する研究」を実施した。この研究を企画した当時、国の地方出先 機関(国土交通省地方整備局、経済産業省地方経済産業局、環境省地方環境事務所)の地 方移管が政治の課題とされ、関西広域連合をはじめとして各ブロックの知事会でもその受 け皿議論がおきていた。そこで当センターとしても、受け皿としての広域連合のガバナン スについて研究することにした。 民主党政権は、その末期に「国の特定地方行政機関の事務等の移譲に関する法律」を閣 議決定したが、国会に上程されなかった。2012 年 12 月の総選挙の結果、自民党・公明党 の連立による第二次安倍晋三政権が誕生した。安倍政権が地方出先機関の地方移管にどの ように取り組むのかは、現時点において、もうひとつ判然としない。 しかし、広域連合という「地方政府」は、もともと国の機関の移譲に際しての「受け皿」 として制度化されたわけではない。将来的には、国からの権限移譲や構成自治体からの持 ち寄り事務の拡大により、広域連合の必要性が高まると思える。こうした観点から、より 広く広域連合のガバナンスについて議論し、今後の広域連合の課題やあり方をまとめたの が本報告書である。 研究会を構成したのは、当センターの学識者、センターに参加している 8 府県市から派 遣された職員、ジャーナリストである。 この報告書における提案は、もとより当センターに参加している知事・市長の意見では ない。先の研究会参加者の議論を最大公約数的にまとめたものである。とはいえ、広域的 行政課題への対応や連携の方法が議論されるなかで、本報告書が参考とされるならば幸い である。 分権型政策制度研究センター センター長 新藤 宗幸1 研究会設置の目的と本報告書
1)本研究会の設置が企画された 2012 年 3 月段階においては、中央政府の地方出先機関(地 方整備局、地方経済産業局、地方環境事務所)の地方移管が、地域主権改革のアジェンダと されていた。なかでも、自治体側からみて重要なのは地方整備局の移管であった。 2)これに呼応する形で関西広域連合はその受け皿としての体制を整備し移管を促進するよ う動いた。九州地方知事会は九州広域行政機構(仮称)の設立を目指し、中国地方知事会な ども、広域連合の設置による移管の検討を始めた。 3)民主党政権では、移管へのさまざまな反応に影響を受け、対応が二転三転するが、特定 広域連合を設けた地域に地方出先機関を移管するとして、政権末期に「国の特定地方行政機 関の事務等の移譲に関する法律」を閣議決定した。しかし、それは国会に上程されずに終わ った。 4)2012 年 12 月 16 日の衆議院総選挙の結果、政権の座に返り咲いた自民・公明党政権(安 倍政権)は、地方出先機関の地方移管にどのように取り組むのか、判然としない。この意味 で、現時点では地方分権改革推進委員会が提起した一級河川水系の管理権限等の移管はもと より、地方整備局などの地方出先機関の移管問題は、ほぼ停滞した状況にあるといってよい だろう。 5)本研究会は、地方出先機関の地方移管がおこなわれることを基本的前提として、その「受 け皿」としての広域連合のあり方を研究することを目的としてスタートした。いまや、地方 出先機関の移管は停滞しているが、広域連合のガバナンスに関する研究は、意義を失ったと はいえないであろう。将来的には、国からの権限移譲や構成自治体からの持ち寄り事務の拡 大により、広域連合の必要性が増大すると思える。したがって、本研究会は、出先機関移管 問題への対応ではなく、広域連合の権能拡大を見据えた制度的諸課題を検討することとした。 6)広域連合という「地方政府」は、府県や市町村が一定の自治権を留保しつつ、広域的行 政課題を解決していくことを目的とした政府システムである。しかし、地方自治法における 広域連合は、「構成団体間の事務の管理・執行に関する連絡調整や、事務の一部を行う」ことの関係性、構成団体間の利害調整など、広域連合のガバナンスに関する諸課題の検討を避け ることができない。また国との関係においては、大規模災害時の対応、国との権限・事務の 切り分け、予算の配分、計画の整合性などをいかなるシステムでおこなうのかが、検討され ねばなるまい。 7)以下、本報告書においては、分権型社会における政府システムの有力な形態となると思 える広域連合のガバナンスに伴う制度的諸課題について、研究会の論点を報告することにす る。
2 政治的代表性と政治的正当性について
1)現行の地方自治法における広域連合制度は、連合長と連合議会議員の選任について間接・ 直接選挙のいずれも採用できるように規定されている。ただし、広域連合に独自の課税権を 認めていない。現に存在する広域連合は、そのすべてにおいて間接選挙を採用している。日 本で唯一府県を主たる構成団体とする関西広域連合についても、連合長は首長らで構成する 連合委員会で選出されている。また連合議会議員は、構成団体の議会による間接選挙である。 なお、関西広域連合の概要や運営状況等については、別添資料1のとおりである。 2)広域連合の設置目的はそれぞれ多様である。県と市町村による職員研修所の設置、市町 村による介護保険の保険者統合、介護認定審査、公立大学の設置、後期高齢者医療制度の運 営を目的としたものもある(各地の広域連合については別添資料2)。したがって、連合長や 連合議会議員の選出制度を一律に規定すべきではなく、目的に応じた選出制度が選択されて よいであろう。ただし、広域的社会基盤整備を担うような広域連合を想定した場合、構成府 県から広域的処理をする方が望ましいと思える事務・事業を持ち寄り広域連合にゆだねるの であり、広域連合の政治的代表性と政治的正当性をどのように確保するかは、かなり重要な 問題として考えねばならないであろう。 3)もっともシンプルな解決方法は、連合長、連合議会議員の双方を、広域連合の住民によ る直接選挙とすることである。ただし、構成府県の地域的条件や人口構成は多様であり、大 きく広域連合の設置目的では一致しても、具体的な事務・事業の実施ともなれば、「大都市利 益への偏重」といった直接選挙へ異論が提示される可能性は大きい。 4)連合長については、広域連合が制度的安定をみるまでの間、構成自治体の長による間接 選挙とすることが望ましいのではないか。そして、連合長のもとに首長からなる連合委員会 を設け、連合長が統轄する連合委員会を執行機関とする。連合委員会委員は、広域連合の権 能に応じてそれぞれ責任領域を分担する。ただし、連合委員会の意思決定にかかる採決は全 会一致を原則とする。連合委員会の議事は、徹底した情報公開のもとにおく。連合議会は、 連合長から提出された予算、条例案等の議案の議決、条例案の提出と議決はもとよりとして、 連合委員会に審議すべき事項に関する意見を提出することができる。連合議会は行政監査権 能をもち、連合議会はその結果に応じた是正の勧告を行う。ただし、連合長、連合委員会委性を増す。広域連合全体での直接選挙は、経費の問題のみならず地域的特性、有権者からみ た選挙区としての一体性を考えるならば、現実的とはいえないのではないか。ひとつの方策 として、議員定数(これをどう設定するかは別途考察を必要とするが)の一定数を、構成府 県の人口に関係なく同数の議員定数を構成府県議会に割り当て、議会において選出する。残 る議員定数を一票の価値の平等にもとづき構成府県に割り当て、選挙区を全府県一区として、 府県議会議員選挙と同時に執行する。こうした選挙制度による執行機関のチェック機能の強 化を図ることを考える必要があろう。 6)連合長・連合委員会のもとに広域連合の事務・事業を一体的に処理する常設の事務局機 構を設置する必要性があろう。関西広域連合においても本部事務局が設けられているが、府 県が持ち寄った事務の執行案などについては、それぞれの分担した府県が事務局を果たして いる。広域連合が権能を拡大した場合、この体制では時間的・経費的コストがかかりすぎよ う。事務局機構の職員は構成自治体からの派遣とし、連合委員会での議を経て連合長が事務 局長を任命する。これに加えて、とくに専門・技術的観点から必要となるばあい、広域連合 が独自に任期付職員を採用することがあってよい。同時にまた、広域連合職員の「絶対数」 は限られざるをえないから、個別の事案ごとに広域連合職員と構成自治体職員によるワーキ ング・グループ等をつくり検討してもよい。いずれにしても、職員機構は連合長の補助・補 佐機構であるから、ここでまとめられた事案は連合長・連合委員会において熟議し、決定さ れることになる。
3 説明責任を果たしうる資源配分ルール・システムをどのようにつくるか
1)特定広域連合への地方出先機関とりわけ地方整備局の移管については、全国市長会・全 国町村会などから多くの異論が提出された。理由は多様であろうが、府県中心の広域連合が 広域的社会資本整備を行うとすれば、域内市町村の意思の反映システムのあり方が問われる のは、無理からぬことである。 2)これらの懸念や不安を軽減するには、域内市町村の意見を充分に聞く機会がもうけられ、 目指す将来像を共有することこそが重要となる。特に広域連合が社会資本整備を担う場合に は、執行部並びに連合議会の責任において域内全体を見渡したグランドデザインを作成する。 それをもとに長期計画を作成し、さらに長期計画にもとづく中期実施計画(5 年程度か)を 作成する必要がある。これらは、市町村の意思を反映できる仕組みのなかで作成し、かつ市 町村の計画等との整合性も図りながら、事業計画を作成する。 3)こうした手続きを経ても事業実施の地点を含めた「選択と集中」は避けられない。した がって、広域連合は域内の社会資本整備の状況が一目瞭然でわかるように工夫したマップを 作成し、一定期間ごとに更新する必要があろう(武蔵野市の地域生活環境指標など)、それを ベースとして域内市町村住民へ事業の合理性に関する説明責任を果たさねばなるまい。もち ろん、これに加えて連合長・連合委員会は、事業計画に関する双方向のコミュニケーション 回路を、市町村ならびに域内住民との間に創設する必要がある。 4)現行の広域連合は地方債を発行できるものの、課税権がないとされている。したがって、 隠岐広域連合(島根:1県3町1村)や宇城広域連合(熊本:3市1町)にみるように構成 団体の分賦金(義務的経費)を担保とするのが一般的である。しかし、広域連合の役割が単 なる構成団体からの事務の持ち寄りを超えるほど拡大する際には、域内住民の受益と負担を 踏えながら、独自の課税権にもとづく自主財源の確保や課税権に担保された起債のあり方に ついて検討する必要がある。また、広域連合が大きくは域内に共通したニーズではあっても、 人口や所得が構成団体間で異なる事業を行うばあいの財政調整の仕組みについて検討される べきである。おわりに
分権型社会における政府システムは、基本的に補完性の原理にもとづいた上昇型のシステ ムとして設計されるべきである。 広域的行政課題が増大し、行政サービスには高度の専門性がもとめられているが、自治体 が単独で対応することは、財政的にも人的資源からも次第に難しくなっている。しかし、広 域行政課題への対応は、自治体が自立性を維持し、地域のアイデンティティーを保ちつつ試 みられることが肝要である。 この意味において、すでに実績をもつ広域連合の権能の拡充と活用を追求することは、地 方分権改革に欠くことのできない課題である。以上に述べた広域連合の将来に関する概念設 計の具体化を進める必要があろう。分権型政策制度研究センターとは・・・ 分権型政策制度研究センターとは・・・分権型政策制度研究センターとは・・・ 分権型政策制度研究センターとは・・・ 2005 年 7 月発足。第 2 次分権改革に向けて志を同じくする首長、研究者、ジャーナリストによって設立され、 政策・制度設計の研究とそれにもとづく提言活動等を通じて、分権型社会の構築に資することを目的としている。 提言、声明の発表の他、センター参加府県の職員・研究者・ジャーナリストによる研究会を毎月1回開催。 2012 年 4 月からは「再生可能エネルギーの普及と自治体の役割に関する研究会」、「地方政府体系と資源配分ル ールのあり方に関する研究会」を行い、分権型社会にふさわしい姿を追究してきた。 ◆分権型政策制度研究センター構成員 ◆分権型政策制度研究センター構成員◆分権型政策制度研究センター構成員 ◆分権型政策制度研究センター構成員 達増 拓也 (岩手県知事) 新藤 宗幸 (センター長:(公財)後藤・安田記念東京都市研究所 石井 隆一 (富山県知事) 研究担当常務理事) 嘉田由紀子 (滋賀県知事) 浅野 史郎 (慶應義塾大学教授) 山田 啓二 (京都府知事) 池上 岳彦 (立教大学教授) 平井 伸治 (鳥取県知事) 尾形 宣夫 (ジャーナリスト) 伊原木隆太 (岡山県知事) 佐藤 滋 (早稲田大学教授) 湯﨑 英彦 (広島県知事) 神野 直彦 (東京大学名誉教授) 古川 康 (佐賀県知事) 高橋 滋 (一橋大学教授) 森 民夫 (長岡市長) 西尾 勝 ((公財)後藤・安田記念東京都市研究所理事長) 松本 克夫 (ジャーナリスト) 山口 二郎 (北海道大学教授) (2013.3.31 現在) ◆これまでの主な活動 ◆これまでの主な活動◆これまでの主な活動 ◆これまでの主な活動 声明 声明声明 声明・提言・提言・提言 ・提言 『三位一体改革』に関する緊急提言(2005/10/20)、『三位一体改革』に関する政府・与党合意に対する緊 急声明(2005/12/1)、『骨太の方針・2006』に関する声明(2006/6/1)、地方分権改革推進委員会と安倍政 権への緊急提言・『地方分権改革の着実な進展を求める』(2007/4/27)、地方分権改革推進委員会「第 1 次 勧告」を受けた声明・『地方分権改革の確実な一歩を』(2008/6/6)、地方分権改革推進委員会「第 2 次勧 告」に関する声明(2008/12/11) シンポジウム シンポジウムシンポジウム シンポジウム 『新政権に注文する!第2次地方分権改革』(2006/11/11) 『新政権のもとで分権改革をいかに進めるか』(2007/11/16) 『2011 年度予算と地方分権改革』(2010/12/9) 『府県と大都市制度』(2011/12/13) 研究会報告書 研究会報告書研究会報告書 研究会報告書 「地方分権型の教育行政制度に向けて」、「分権型の生活保護行政に向けて~選別型サービスからユニバー サルサービスへ」(2006.8)、「分権型社会へ向けた国・地方権限配分構想」、「地方分権と施設整備基準の あり方」(2007.8)「分権型社会へ向けた財政調整システムの改革」、「分権型社会へ向けた府県と市町村間 の権限配分のあり方」(2008.8)、「分権型社会の自治体公務員制度」、「分権型社会の土地利用政策」 (2009.8)、「自治体における行政委員会制度のあり方」「地方分権型社会における公共事業のあり方」 (2010.8)、「子どもの安定した生活と成長を願って」(2011.3)、「地域交通体系のあり方に関する提案」、
RCD Report 15 広域連合のガバナンス―その課題と方向性 2013 年 3 月 31 日発行 分権型政策制度研究センター 地方政府体系と資源配分ルールのあり方に関する研究会 〒100-0012 東京都千代田区日比谷公園 1-3 市政会館 TEL 03-3591-0566 FAX 03-3591-0567