解 説
国内の初中等教育におけるインターネ
ット利用の動向を調べるため、電子メー
ルによるアンケート調査を実施した。調
査対象は、大阪教育大学の「インターネ
ットと教育
に収録した1万 5083
校の学校ページ(メールアドレス記載率
66%)のうち、メールが到達した9913名
のウェブページ管理担当者である。
2002年3月にメールで調査表のURLを
指示し、1300名の有効回答(回答率
13%)を得た。回答のあった学校の接続
形態は、ダイヤルアップ接続29%、中低
速の常時接続29%、高速(1.5Mbps以
上)の常時接続38%であり、昨年(ダ
イヤルヤップが58%)と比べ、ブロード
バンド化が進んでいる。
インターネット上にホームページを公開
している学校数の年次推移と、公開率が
上位の都道府県を資料3-1-1と資料3-1-2
に示した。学校のインターネット接続率
は全国的にほぼ100%に近づいているが、
学校のホームページに関しては、上位と
下位の県で開設率に4倍以上の格差が存
在している。また学校のドメイン名に関
しては、資料3-1-3に示したようにedドメ
インの利用が主流となっている。
現時点における学校のインターネット
利用環境や設備面での問題点を尋ねた結
果を資料3-1-4に示す。「校内ネットワー
クが未整備で利用できる場所が限定」が
38%でトップであり、「ソフトウェアの種
類・ライセンス数・機能などが不十分」
が29%でこれに続いている。中学校・高
等学校では、保守維持費用や回線費用不
足の指摘も多く、環境整備の進行ととも
に、各地域や学校の実情により、要求が
多様化していることがうかがえる。
(越桐國雄 大阪教育大学教授)
Jump01
学校ホームページの展開とドメイン名
第
1
章 教 育
16,000
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
2002年1月
2001年9月
2001年3月
2000年9月
2000年3月
1999年9月
1999年3月
1998年9月
1998年3月
1997年9月
1997年3月
1996年9月
1996年3月
高
中
小
養
合計
15,083
14,352
12,188
10,402
8,343
7,074
5,486
4,001
2,912
2,206
1,520
685
320
資料3-1-1 学校ホームページの開設数の推移
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成 出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
41%
60%
61%
20 30 40 50 60 70 80%
0 10
福井
滋賀
長野
岡山
群馬
愛知
新潟
広島
茨城
佐賀
秋田
香川
富山
京都
岐阜
石川
48%
67%
68%
69%
46%
46%
65%
62%
42%
42%
43%
43%
53%
校内ネットワークが
未整備で、利用できる
場所が限定されている
38%
ソフトウェアの種類、
ライセンス数や機能
などが不十分である
29%
回線接続費用が不足し、
回線容量(アクセス速度)
が不十分である
28%
保守運営費用が不足し、
システムの維持
(障害・セキュリティー対応)
が十分できない
28%
インターネットに接続
できるコンピュータの
数が不足している
26%
インターネットに接続できる
コンピュータが古く
機能が不十分である
17%
サーバーが校内にないため、
ホームページ、メール、掲示板
などの運用が容易でない
10%
その他
12%
資料3-1-2 学校ホームページの都道府県別
開設率(上位16府県)
資料3-1-4 学校のインターネット環境(設備)の課題
ed.jp 35.0%
ne.jp 23.5%
or.jp 12.1%
ac.jp 6.0%
go.jp 1.6%
gr.jp 2.1%
co.jp 1.2%
ad.jp 0.1% *.jp 16.9%
jp以外 1.5%
資料3-1-3 学校ホームページのドメイン分布
社 会
第3
部
小中高
www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/
Jump01
(*.jpの内訳は地域ドメインが
95%であり,汎用jpドメイン
が5%)
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
(注)2項目選択合計200%で表示
インターネット白 書
2 0 0 2
157
解 説
インターネット上で不足している教
育・学習情報を2項目選択で尋ねた結果
を資料 3-1-5に示した。「学習素材(画
像・統計資料)」が52%で、昨年に続い
てトップになっている。これに「実践事
例報告・学習指導案」が37%で続いて
いる。この項目は中学校では首位であり、
総合的な学習の時間への対応が進む小学
校や、教科情報を中心とした取り組みが
準備されつつある高等学校と比べ、中学
校ではまだ活用の模索段階にあるのでは
ないかと思われる。
ところで、こうした教育・学習情報を
利用する場合に主に検索するサイトを尋
ねたところ、資料 3-1-6のようになった。
インターネット関連企業のポータルサイト
が74%で首位であり、次に自分で集めた
リンク集やブックマークが51%で続いて
いる。
さらに、こうした検索サイトで情報を
調べる際に困難に感じる点を尋ねたのが
資料3-1-7である。その結果、「必要な情
報が見つからないことが多い」が51%で、
これに「関係のない情報にまぎれて選択
に困る」(37%)、「関係のある情報が多
すぎて判断に困る」(35%)が続いてい
る。
一方、教育・学習情報に関するウェブ
ページの内容や表現に関する問題点を尋
ねた結果を資料3-1-8に示す。「情報の表
現が子どもむけでない」(50%)、「ページ
の内容が授業内容とうまくマッチしない」
(40%)などが上位に挙げられている。な
お、高等学校では、「情報の正確性や信
頼性に不安がある」がトップになってい
る。
(越桐國雄 大阪教育大学教授)
ウェブ教育コンテンツの検索と評価
資料3-1-5 不足している教育・学習情報
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-7 情報検索時の困難
学習素材
(画像・統計資料)
52%
実践事例報告
・学習指導案
37%
教育用ソフトウェア
34%
電子教科書・参考書
24%
国内・
国際交流先紹介
19%
共同学習企画・催物案内
14%
図書館・美術館・博物館情報
6% その他 6%
必要な情報が
見つからないことが多い
51%
関係のない情報に
まぎれて選択に困る
37%
関係のある情報が
多すぎて判断に困る
35%
リンク先に対する
紹介や説明が
不足している
20%
リンク先に対する
評価の情報が
不足している
18%
発見したリンクが
切れてたどれないことが多い
15%
リンク集における
情報の分類や選択が適切でない
13%
その他 3%
資料3-1-6 利用する検索ページ
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-8 コンテンツの表現と評価
インターネット関連企業
(ポータル、プロバイダー)
の検索ページ
74%
自分で集めたお気に入り
/ブックマークやリンク集
51%
自分の学校内で作成
した検索ページ
17%
地域の教育委員会や
教育センターの
検索ページ
16%
教育関連企業(出版、
教材など)の検索ページ
13%
教員による研究団体や
サークルなどの検索ページ 8%
国、公益法人、大学などの検索ページ
7%
その他 4%
利用したい情報の
表現が子どもむけでない
50%
ページの内容が授業内容
とうまくマッチしない
40%
情報の正確性や
信頼性に不安が
ある
28%
児童生徒が内容を
吟味せずに鵜呑みに
することがある
27%
画像や仕掛けが重すぎて
読み込み時間がかかる
24%
著作権の問題のために
編集や再利用が難しい
19%
利用したい情報が
外国語のため使いにくい 4% その他 2%
小中高
(注)2項目選択合計200%で表示 (注)2項目選択合計200%で表示
(注)2項目選択合計200%で表示
(注)2項目選択合計200%で表示
解 説
インターネットの特徴であるコミュニケ
ーションメディアとしての機能が、学校
教育の場でどう活かされているかを調査
した。
まず、交流・共同学習の経験を尋ねた
が、資料3-1-9で示されるように「経験な
し」が57%であり、毎年わずかずつ増加
の傾向にある。特に小学校が昨年の38%
から50%に増加していることが注目され
る。なお、高等学校においては、国際交
流が11%と他校種に比較して最も多い。
そこで、ウェブやメールなどによる交
流・共同学習を進める際に何が障害とな
るかを尋ねた結果を資料 3-1-10に示す。
最も多かったのが、「準備や相手との調整
などに手間がかかる」(61%)であり、学
習指導要領の改定にともなう学校教員へ
の負担の増加が、手間のかかる交流・共
同学習の減少につながっているのではな
いかとも考えられる。これに続いて、「交
流・共同学習の相手が見つからない」
(27%)があがっている。なお、中学校
や高等学校においては、「適切なテーマが
見つからない」や「教育効果がうまく評
価できない」との指摘が多い。
一方、インターネットの活用を進める
ための校内研修の問題点を資料3-1-11に
示す。最も多いのが、「校内研修を行う
時間的な余裕がない」(72%)であり、
これに「スキルや関心が多様で共通する
課題がない」(29%)が続いている。
ところで、これらの回答者の担当(ま
たは関心のある)教科を資料3-1-12に示
す。理数系の教師が小・中・高における
ウェブ管理担当教員の上位をしめている
(理科21%、数学 15%)ことに注意され
たい。
(越桐國雄 大阪教育大学教授)
コラボレーションと研修の課題
第
1
章 教 育
社 会
第3
部
小中高
資料3-1-9 交流・共同学習の経験
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-11 校内研修の問題点
経験なし 57%
国内(県外)のクラス
・学校と
14%
地域(同じ自治体)
のクラス・学校と
9%
海外の学校や人々と
8%
校内のクラス、学年間で
6%
国内の学校外の人々と 3% 地域の学校外の人々(社会人、学生など)と 2%
その他 1%
資料3-1-10 交流・共同学習の問題点
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-12 ウェブ管理者の担当教科
準備や相手との調整など
に手間がかかる
61%
交流・共同学習の
相手が
見つからない
27%
適切なテーマが
見つからない
23%
メールアカウント
が不足している
23%
教育効果が
うまく評価できない
23%
掲示板やチャットが
設定できない
10%
言語・習慣・時差などの
壁がある 9%
その他
8%
理科 21%
算数/数学 15%
社会
13%
情報系
11%
国語 6%
技術・家庭
6%
工業系 4%
保健体育 4%
商業系 4%
英語 3%
図画工作/美術 2%
音楽 2%
農林水産系 1% その他 6%
(注)2項目選択合計200%で表示
(注)2項目選択合計200%で表示
インターネット白 書
2 0 0 2
159
解 説
学校におけるセキュリティー対策につ
いて、特にウイルスや校内LANへの侵入
に関する対応を尋ねた結果(資料3-1-13)、
「校内端末にフィルター/ワクチンソフト
を導入している」(57%)が1位であっ
たが、その一方で「教育センター/プロ
バイダーなどの上流側の対応にまかせて
いる」(39%)という学校もまだ多い。
さらに、「児童生徒による不適切な情
報へのアクセスのコントロール」を尋ねた
ところ(資料3-1-14)、「フィルタリング
ソフトによるアクセス制限」(55%)、「約
束・きまりをつくって指導し、児童生徒
への信頼にまかせる」(49%)となり、
「なにもしていない」は9%であった。
これらを踏まえ、児童生徒による授業
時間外のインターネット利用について尋
ねたのが資料3-1-15である。「教師の立ち
会いのもと、必要に応じ授業時間外利用
を認める」がトップで33%であり、「授業
時間外に利用させることがない」は14%
にとどまっており、予想以上に児童生徒
の授業時間外利用が進んでいることがわ
かった。
最後に、運用上の問題点を尋ねたとこ
ろ、昨年までと同様に「運用・支援スタ
ッフやノウハウの不足」が79%と、依然
として極めて高い水準にあった(資料3-1-16)。インターネット環境の整備は急速
に進行しており、新しい学習指導要領の
スタートとともに、学校における情報環
境の活用がいっそう重要な課題になって
いる。しかしながら、これを支援するため
の「人」の問題は未解決のまま積み残さ
れており、今回の調査の端々からも過重
な仕事の中で時間に追われる管理者の姿
が浮かび上がっている。
(越桐國雄 大阪教育大学教授)
学校のセキュリティーと運用上の課題
小中高
資料3-1-13 セキュリティー対策への対応
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-15 児童生徒の授業時間外のインターネット利用
校内端末にフィルター
/ワクチンソフトウェア
を導入している
57%
教育センター/プロバイダー
などの上流側の対応に
まかせている 39%
校内サーバーに
フィルターソフトウェア
を導入している
39%
とくになにも
していない 10%
業者との保守契約にまかせており
内容は詳しく知らない 9%
その他 7%
教師の判断で必要に応じ
授業時間外利用を認める
(教師の立会いのもと)
33%
休み時間/放課後の
利用時間を設定している
(児童生徒だけでもよい)
22%
教師の判断で必要に応じ
授業時間外利用を認める
(児童生徒だけでもよい)
18%
児童生徒が授業時間外に
学校でインターネットを
利用することはない
14%
休み時間/放課後の利用時間を
設定している
(教師の立会いのもと)
10%
その他 3%
資料3-1-14 不適切な情報アクセスへの対応
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
出所 大阪教育大学「インターネットと教育」2002年3月の調査結果を元に作成
資料3-1-16 インターネット運用上の問題点
フィルタリングソフトによる
制限(サーバーまたは端末で)
55%
約束・きまりをつくって指導し、
児童生徒への信頼にまかせる
49%
教師・スタッフによる
モニタリング
(巡回指導/アクセス記録)
28%
とくになにもしていない
9%
校内/地域内イントラネットへの
アクセスだけを許可している
2%
その他 9%
運用・支援スタッフや
ノウハウの不足
79%
外部からのアタック
やウイルスの感染
29%
授業え利用する情報の
著作権の扱いの問題
29%
児童生徒の
プライバシーの
保護
22%
広告メールや不要な
メールが頻繁にくる
12%
児童生徒によるいたずらや
外部への不正行為 12%
外部の掲示板での学校への誹謗中傷や
内部情報の流出 2%
その他
8%
(注)任意項目選択、
回答者母数を100%で表示 回答者母数を100%で表示(注)任意項目選択、
(注)2項目選択合計200%で表示 (注)2項目選択合計200%で表示