• 検索結果がありません。

untitled

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "untitled"

Copied!
18
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

高齢化が進む日本社会の中で大きな問題となり、また老境にさしかかったものが誰しも気になるのは認 知症であろう。認知症は2つのタイプ、すなわち、脳卒中の後遺症とアルツハイマー病に大別されるとい う。いずれも脳の神経細胞が死滅して行くことが原因とされる。前者については、食生活や運動を心がけ ることにより脳卒中を招かないことが肝要と思われるが、後者については、効果の高い予防薬や治療薬の 開発が切望されるところである。 このアルツハイマー病を予防し、また症状を改善する働きを持つ「プラズマローゲン」が鯨(ミンクク ジラ)の脳に豊富に含まれているという研究成果が、平成21年12月5日の学会(日本食品科学工学会東北 支部会)で東北大学宮澤陽夫教授のグループによって発表された。これに用いたサンプルは、当研究所が 平成20年7月に提供した釧路沖沿岸調査によるミンククジラの脳である。 私はこの分野については全くの素人であるが、これに関わる中で学び、理解したことを紹介したい。

1.プラズマローゲンとは

聞き慣れない言葉であり、プラズマと言う言葉からは光を想像してしまうが、血漿(Blood plasma)と か、抗体産生細胞(Plasma cell)にプラズマという語があり、その方面からきた言葉のようである。この プラズマローゲンはリン脂質の1種であり、脳細胞/神経細胞に特異的に多いが、アルツハイマー病では

鯨 研 通 信

第446号 2010年6月 財団法人 日本鯨類研究所 〒104−0055 東京都中央区豊海町 4 番 5 号 豊海振興ビル5F

電話 03(3536)6521(代表) ファックス 03(3536)6522 E-mail:[email protected] HOMEPAGE http://www.icrwhale.org

ISSN 1340-9409 ◇ 目次 ◇ 鯨の脳に含まれるプラズマローゲンについて ………畑中 寛 1 プラスマローゲンとは? ……… 3 秋の釧路沖でミンククジラはどこに分布し、何を好んで食べているのか? ……渡邉 光 4 −ミンククジラと釧路沖海洋生態系との関わり− [シリーズ:鯨類の系群No.2]ヒゲクジラにおける半球間の遺伝的差異 …………後藤睦夫 13 日本鯨類研究所関連トピックス(2010年3月∼2010年5月)……… 16 日本鯨類研究所関連出版物等(2010年3月∼2010年5月)……… 17 京きな魚(編集後記)……… 18

鯨の脳に含まれるプラズマローゲンについて

畑 中   寛

(日本鯨類研究所・顧問)

(2)

健康な脳に比較し、含まれる量が20∼30%程度低い(宮澤,2009)。 プラズマローゲンは、宮澤(2009)によれば、脳内の神経細胞死(いわゆる、脳細胞が死滅、減少して アルツハイマー病の原因となる)の防止効果を持つ(マウスの培養細胞による実験)。そして、プラズマロ ーゲンの経口投与により空間認知力(長期記憶と短期記憶の両方において)の低下が抑制される(アルツ ハイマー病モデルラットによる実験)という。また、認知症の脳ではアミロイドベータ蛋白の凝集反応が 顕著であるが、プラズマローゲンはその凝集抑制とともに分解を促進する働きを持つ。さらに、このよう な認知症の予防/改善効果の他に、抗酸化/抗老化作用、抗動脈硬化作用を持つ(原、2010)。詳しくは附 記「プラズマローゲンとは?」を参照されたい。

2.いろいろな動物の含有量

プラズマローゲンについては未だ情報が十分ではなく、宮澤グループはパイオニア的存在であると考え られる。他に、北海道大学の原教授のグループも研究を進めている(原、2010)。宮澤グループは、幾つか の海産物について含有量を調べ、ホヤやウニの含有量が高いことを報告している。今回分析した鯨の脳に は、それら以上に豊富に含まれていた(湿重量中0.6∼2.7%)。また、鯨の脳は、最も効果が高いとされ、 かつヒト脳主要分子種であるDHA含有型プラズマローゲンが特に多いことが解った。結論として、鯨脳は、 プラズマローゲン供給源としての有効活用が期待できると報告している。

3.今後の方向

日常摂取できる食品からプラズマローゲンを取り込むことによる認知症予防が理想的である(宮澤、 2009)。宮澤グループは、ホヤから抽出したプラズマローゲンを健康食品・医薬品として活用することを目 指している(河北新報2006年7月20日記事)。他方、抽出物を使うのではなく、プラズマローゲンを高濃度 に含む素材を直接摂食することによっても効果が期待できるとのことで、料理法の開発(例えば鯨脳を使 った料理)やサプリメント化が考えられる。クジラ料理店「樽一」(在東京都新宿区)では、すでに鯨の脳 を使った料理を提供している。また、我々としては、鯨の脳以外の臓器・部位についてもプラズマローゲ ンの含有量を調べたいと思っている。

4.おわりに

クジラがため込む脂肪には、成人病予防効果や脳活性化効果のある(食品速報8078号)EPA、DHAなど の多価不飽和脂肪酸を多く含み、また、赤肉には疲労回復をはじめとする様々な効果を持つバレニンが大 量に含まれている(これについては本誌429号を参照されたい)。更に、赤肉は豚肉、牛肉などの畜肉に比 較して高タンパク低カロリーで、鉄分も多く含んでいる。今回はこれらに加えて、脳内に認知症に大きな 効果のあるプラズマローゲンが豊富に含まれることが報告された。クジラは調べれば調べるほど素晴らし い可能性を提供してくれることに驚きを禁じ得ない。これから是非調べるべきと思うのは、ホルモンに関 する機能である。以前にも触れたが、南極海の捕獲調査による成果で、ミンククジラは大人の雌の約90% が妊娠していることが確認された。すなわち、高齢/老齢のものも含めてほとんど皆が子供を産んでいる ことになる。このような驚異的な能力を解明して欲しいものである。他方、これらの優れた機能を実際に 利用できる形にする(商品化)ことも重要であリ、それに取り組む企業の実現を待ち望んでいる。 最後に、困難な分析を行って頂いた東北大学宮澤陽夫教授に心からお礼申し上げる。

(3)

引用文献 宮澤陽夫:ほや(海鞘)プラズマローゲンによる認知症予防への取り組み.日本水産学会誌.75(2): 309-311.2009. 原 博:脂質代謝改善作用を持つ機能性素材開発.2010/5.(http://www.bio-sss.jp/theme/p009.html) アルツハイマー病 ホヤに予防効果 宮澤東北大教授,河北新報.2006/7/20. プラスマローゲンとは? 健康志向の現代社会において多くの人にとってあぶらは厄介なイメージがある。健康診断の結果をもらった時や 医者の診察を受ける際「あぶら濃い食べ物を避けよう」とか「コレステロールが高いから減らす努力を」など、言 われたことがある人は少なくないだろう。しかし、人間は他の生き物と同様、5大栄養素の1つであるあぶら(脂 質)なしでは生きていけない。油(オイル)と脂(ファット)の違いとは常温で、前者は流動性(液状)のもの、 後者は流動性でない(固形)のものを指すのが一般常識だろう。 あぶらとは特に動物の組織や植物の種子中に含まれ、脂肪酸のグリセリン・エステルからなる物質の総称。正確 にいうと油も脂もトリアシルグリセロール(=トリグリセリド。モノグリセリドおよびジグリセリドと共に集合的 に「中性脂肪」と呼ばれる)という同一類の脂質であり、常温で液体であるか、あるいは固体であるかといった物 理化学的特性の差異は、グリセロールの分子を構成する3つの炭素のうち、それぞれに結合するアシル基の種類、 結合の種類、結合位置などによって支配される。 有機化学では脂質が「①単純脂質、②複合脂質および③誘導脂質」の3つのグループに大きく分類され、②の複 合脂質だけがさらに二つのグループ(「リン脂質」および「糖脂質」)に分けられている。大まかにこの脂質の分類 を別の形で説明すると①単純脂質は脂肪酸とアルコールのエステル化合物、②複合脂質(リン脂質および糖脂質) は脂肪酸とアルコールとその他物質との化合物、そして③誘導脂質は単純脂質、複合脂質の加水分解によって生じ る化合物(例えば脂肪酸など)を指す。 このように見ると実に脂質は様々な顔を持っていることが分かる。分子構造による物理化学的特性が様々であり、 体内におけるそれぞれの機能も様々である。体内では脂質は中性脂肪の形でエネルギー源および貯蔵や内臓の保護、 熱の発散を防止する役割を担い、複合脂質や誘導脂質の形で、細胞膜の構成成分やステロイドホルモンの前駆体 (生体内で生合成される前段階の状態)などとして機能する。中性脂肪は生体内で最も多く存在する脂質である一方、 複合脂質は生体膜(細胞膜など)を構成する成分として生体膜内に高濃度に存在する。 リン脂質とプラスマローゲン 複合脂質にはリン脂質と糖脂質の2種類があるが、プラスマローゲン(プラスマロゲン、プラスマロージェン) は前者に属する。一般的にリン脂質は細胞膜の二重層を形成したり、生体内での脂質運搬の役割を担うことは生物 学を学んだ者なら知っているはず。リン脂質とは脂肪酸とアルコールにリン酸やその他の物質が化合してできたも のだが、その分子構造を化合するアルコールの種類によってグリセロールと化合するものをグリセロリン脂質、ス フィンゴシンと化合するものをスフィンゴリン脂質などのように呼ばれる。「プラスマローゲン」はリン脂質群の一 員に適用し用いられることばで、より正確に言うとアルケニルエーテルリン脂質(alkenyl ether-containing phospholipid)ともいう。つまり不飽和アルコールのエーテル結合を持つグリセロリン脂質。 単純脂質やプラスマローゲン以外のその他のリン脂質は脂肪酸とアルコールのエステル化合物だったりするのに 対し、プラスマローゲンではグリセロールの第1位の炭素(C-1)に結合する基がエステル結合した脂肪酸のかわり にエーテル結合したアルコールである。つまり、プラスマローゲンがアシル型リン脂質と類似の構造を持つが、グ リセロール骨格の1位に脂肪鎖がアルケニルエーテル結合している点で異なる。結合される塩基の種類によって名 前も変わるが、エタノールアミンのものが最も多く(エタノールアミンプラスマローゲン)、コリン(コリンプラス マローゲン)、セリンのものも知られている。エタノールアミンを塩基に持つものは動物組織に広く存在しているが、 特に、脳、心臓、好中球、マクロファージ、血小板に多く存在し、一方、肝臓などの器官や組織では少ない。 「海産無脊椎動物に多い」だとか、プラスマローゲンの存在は昔から知られているが、その生物学的な意義につ いてはまだほとんど解明されていない。動物細胞におけるリン脂質の生理学的意義について細胞膜の構成、電子 (細胞内外情報)の伝達やエネルギーの貯蔵に関する役割などが上げられる。プラスマローゲンの特徴である「エー テル結合」の存在はこれら役割よりさらなる可能性を持っているのかも知れない。例えば、近年の細胞培養学的研 究では、プラスマローゲンの抗酸化機能(有害な活性化酸素に対する抗体の役割)は明らかになってきているし、 特定の組織(脳など)にその分布が多いことはそれら組織の生理学的機能や代謝過程における重要な役割を担って いるに違いない。最近、哺乳動物のプラスマローゲンやその他のリン脂質類に注目しヨーロッパ(フランスやスペ イン)では豚脳を元としたアルツハイマー治療方法の特許も公表されているほどで、プラスマローゲンはこれから も夢でいっぱいの研究の機会を与えてくれそうである。 (G. ゴメス記)

(4)

1.はじめに

現在、日本は釧路沖、三陸沖、沖合域(北緯35度以北、東経170度以西の海域)の3箇所で第二期北西太 平洋鯨類捕獲調査(The Second Phase of Japanese Whale Research Program under Special Permit in the Western North Pacific: JARPN II)を実施している。これは鯨類の捕獲調査、鯨類の分布調査、そして鯨類 分布域の内外における海洋環境、餌環境調査を伴う総合調査であり、調査の主要な目的には鯨類の生態系 における捕食者としての役割の解明や、環境変動が鯨類に与える影響評価等が含まれている。沖合域調査 は西部北太平洋の広大な海域に分布している鯨類を対象としている。近年の調査により、沖合域のミンク クジラ、イワシクジラ、ニタリクジラは黒潮によって運搬されるカタクチイワシ、サンマ、サバ属などの 表層性小型浮魚類を主に捕食しているという大きな傾向が見られること、しかし個々の個体の胃内容組成 は、体長や成熟度等の生物学的特性、そして生息域の水温等の海洋環境特性により、かなり大きく異なる ことが明らかになってきた(Konishiet al., 2009)。一方、沿岸域では沿岸漁業との関連で、より地域性の強 い調査研究が求められていることから、釧路沖と三陸沖において、高密度に分布しているミンククジラを 対象とした調査を行なっている。本稿では2002∼2007年の秋に実施した釧路沖鯨類捕獲調査の方法と結果 を概説し、釧路沖の海洋生態系とミンククジラの関わりについて論じてみたい。 北半球において、多くの鯨類は春∼夏に高緯度海域まで北上し、秋∼冬に低緯度海域に南下することが 知られている。北上回遊は北方海域の豊富な餌を捕食するため、そして南下回遊は温暖な海域で子供を産 み育てるための回遊と考えられている。鯨類の北上回遊期に相当する春∼夏には、亜熱帯水の勢力(西部 北太平洋では黒潮勢力)が強まることにより海洋表層の水温は上昇し、その結果、等水温線は北上する。 例えば海面水温15℃の海域は、冬場は房総以南に限られるが、夏場は北海道沖まで北上し、この季節の房 総以南の海域における海面水温は概ね25℃を上回る。このような海洋物理環境の季節変化に伴い、鯨類の 餌であるサンマ、イワシ類、サバ 類を含む多くの小型、大型浮魚類 も大きな南北回遊を行なってい る。例えばサンマは冬場、九州南 方海域に主に分布しているが、夏 場には遥か北方の北海道沖に分布 の中心が移動する。 更に、海洋物理環境の季節変化 は大きな年変化を伴っている。親 潮勢力が強く、黒潮勢力が弱い寒 冷年には春になっても海水温の上 昇が例年に比べて緩やかであり、 その結果、これらの魚種の北上時 期が遅れる。この事実は、我々の 食卓に初ガツオの届く時期が年に

秋の釧路沖でミンククジラはどこに分布し、何を好んで食べているのか?

−ミンククジラと釧路沖海洋生態系との関わり−

渡 邉   光

(遠洋水産研究所・外洋資源部) 図1.釧路近海の海底地形と秋季における海洋構造。図中の点線は200、1000、 3000mの等深線を示す。

(5)

よってひと月∼ひと月半ほど前後することから実感することが出来る。一方、鯨類の南下回遊期に相当す る秋∼冬には、上述した現象と概ね逆のことが生じている。これらの海洋環境、餌環境の季節変化、年変 化は鯨類の分布、回遊にどのような影響を与えているのだろうか。この疑問に答えていくためには、鯨の 分布と摂餌生態を環境要因との関連で把握する調査が必要であり、更に環境変動に対する各鯨種の生態学 的応答過程(分布、胃内容等の変動過程)をモニターすることが重要である。 釧路近海は海底地形が複雑であり、陸棚域(水深200m以浅)と沖合域(水深200m以深)が存在してい る(図1)。更に、この海域では黒潮勢力が弱まる秋∼冬に親潮が流れ込むが(図1)、その強さは経年的 に大きく変動することが知られている。これらの地形的、海洋物理学的に多様な環境は、ミンククジラの 餌である小型浮魚類(サンマ、イワシなど)、陸棚性底魚類(スケトウダラ)、オキアミ類(ツノナシオキ アミなど)の分布、豊度に大きな影響を与えている。従って、釧路沖はミンククジラの分布と回遊、摂餌 習性を環境要因と関連づけて把握するうえで、大変良いモデル海域と言える。

2.ミンククジラ

ミンククジラ(学名:Balaenoptera acutorostrata)はヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科に属する大型鯨類で あり、北太平洋に広く分布している。本種の成熟個体(親個体)の体長は雄で7m、雌で7.9mに達し、平 均体重は概ね7∼8トンの範囲内にある(笠松ら, 2009)。通常単独または2∼3頭で行動し、西部北太平 洋には42,000頭生息しているという推定値が、昨年のIWC科学委員会に提出されている(Hakamada et al., 2009)。本種は春∼夏に中緯度海域(亜熱帯域)から高緯度海域(亜寒帯域)に北上し、秋∼冬に温暖な中 緯度海域まで南下して越冬、繁殖すると考えられている。 現在までの調査研究により、北西太平洋沖合域に分布するミンククジラはカイアシ類、オキアミ類、ス ルメイカ、カタクチイワシ、サンマ、マサバ、シマガツオ、サケ属魚類、スケトウダラなど多様な餌を捕 食していることが明らかになっている(Tamura and Fujise, 2002; Konishi et al., 2009)。これらの餌の多くは

集群性が強い。これは、餌を海水とともに呑み込み、ひげ板を使って餌を濾しとって食べるという本種の 摂餌方法(笠松 et al., 2009)をよく反映している。つまりこの方法では、単体の餌をひとつひとつ食べる よりも、濃密に群れている餌を丸ごと一気に呑み込む方が効率的なのである。 沖合域に分布するミンククジラは、カタクチイワシを春に、サンマを夏∼秋に主に捕食している (Konishi et al., 2009)。サンマは春∼夏にカタクチイワシに先行して黒潮海域(亜熱帯域)から北上回遊し、 夏には親潮域(亜寒帯域)とその南に隣接する移行領域を中心に、カタクチイワシはそれより南方の移行 帯を中心に分布している(Pearcy et al., 1993)。従って沖合域に分布するミンククジラの主餌料が春∼夏に カタクチイワシからサンマに移行することは、ミンククジラが夏にカタクチイワシの主分布域を超えて北 上し、サンマの主分布域に至ることを示している。沖合域のミンククジラが秋にもサンマを主食している こと、そしてサンマは秋∼冬に親潮域から黒潮域へ産卵回遊を行なうことを考えれば、亜寒帯域まで北上 したミンククジラはサンマとともに南下回遊を開始し、釧路沖に出現することが予想される。

3.釧路で鯨を調べる−調査体制−

釧路沖鯨類捕獲調査では三陸沖、沖合域調査と同様に、鯨類捕獲調査、餌環境調査、広域目視調査の3 つの調査が同時に平行して行なわれている。このうち鯨類捕獲調査は、釧路を基点とする半径50海里内に おいて、4隻の小型捕鯨船により実施されている(図2)。小型捕鯨船は夜明けとともに釧路港を出港し、 ミンククジラを捕獲すると港に戻り、鯨体を陸上に揚げた後に再び出港する、という調査を繰り返し、日 没前後に帰港し、翌朝まで停泊待機する。各船には調査員が乗っており、ミンククジラの発見場所の海面 水温や、ミンククジラを含む主要な鯨種の分布密度を調べるためのデータを収集、記録している。しかし

(6)

秋の釧路海域は台風や前線の通過が相 次ぎ、天候が安定しない。また海は穏 やかでも濃霧がかかることもあり、こ れらの場合、調査は海況が回復するま で中断を強いられる。また陸上に揚げ られた鯨についてはトラックで鯨体調 査所に搬送後、胃内容物調査の他、各 種の生物学的な調査が行なわれてい る。 一方、餌環境調査と広域目視調査で は、500∼1000トン級の中型船を用い、 1ヶ月程度の調査航海を実施してお り、年によっては餌環境調査船が広域 目視調査も兼任している。これらの調 査は、ミンククジラの分布特性を把握 するため、捕獲調査海域を含む広範な 海域で行なわれている(図2)。先に述べたように、この海域は地形的にも環境的にも複雑であり、水温な どの年変動が大きい。従ってこれら3つの調査を長期的に継続して行なうことにより、ミンククジラの分 布・回遊パターン(場所の選択性、つまりどうしてそこにいるのか)、摂餌生態(特に餌に対する嗜好性、 つまり餌の好き嫌いはあるのか)を把握することが可能となる。

4.餌環境調査−釧路沖生態系の調べ方−

私が主に従事してきた餌環境調査は、鯨類が利用する多種多様な餌生物の分布と豊度を海洋環境と関連 づけて把握することを目的として行なっている。従って、餌生物の分布量を定量的に評価するための調査 とともに、海洋物理環境調査を行なうこともこの調査の重要な責務となっている。餌環境を定量的に把握 するためには計量魚探とともに、餌生物を確実に採集可能な曳網機器が必要である。当然、オキアミ類の ようなプランクトンをイワシ、サンマ、スルメイカなどの遊泳動物と同時に採集出来る漁具は無いことか ら、口径30mの大型トロール網とIKMTと呼ばれるプランクトンネットを併用した曳網調査を実施してい る(表1)。 餌環境調査では、先ず調査海域全体を万遍なく調査出来るようなライン(船が航走する道)を設定する。 このライン上を船速10ノット前後で航走することにより、魚探反応データを収集する。海中に生物がいる 場合、魚探のモニターには何かしらの反応が写る。その反応が見られた水深をトロールまたはプランクト ンネットを用いて曳網することにより、どの生物がどのような魚探反応を示すのかを確認することが出来 る。この曳網調査により、魚探反応構成種の体長組成も明らかになり、これらのデータを用いて調査海域 内に分布するミンククジラの餌生物の分布量を定量的に把握することが可能となる。但し、実は魚探では 分布を確認しにくい生物が存在する。魚探反応は、船底に設置された魚探ドーム(超音波の送受信器)か ら水中に放たれる超音波が、魚の浮袋や甲殻類の外骨格に反射して魚探ドームに戻って来ることによって 初めて識別される。従って、浮袋も外骨格も持たないイカ類を魚探で識別することは難しい。また、魚探 ドームは船底にあることから、海面と船底深度(約7m)との間のごく表層に生息しているサンマの分布 も、魚探調査で確認することは困難である。これらのことを考慮し、餌環境調査では魚探反応の有無に依 らず、概ね20海里ごとに定期的に表層トロールを曳網する調査も実施している。また海況変動が大きい調 査海域の海洋物理学的特徴をリアルタイムで把握するため、各曳網地点においてCTDと呼ばれる観測機器 図2.鯨類捕獲調査海域(点で示した釧路から半径50マイル内の海域) と餌環境・広域目視調査ライン(2007年)。調査ライン上の●、 *はそれぞれ表中層トロール、プランクトンネットを曳網した場 所を示す。

(7)

を用い、水深0∼500mの水温、塩分観測も行なっている(表1)。

5.海洋物理環境と餌環境−釧路沖生態系の変動の実態−

親潮域は、海洋物理学的な定義では100m層の水温が5℃、50∼200m層の塩分が33.6 PSU未満で指標され る海域であり、この定義に基づくと調査海域の大半は親潮域となる。しかし親潮域の南部では、親潮水の 上に南方から流れ込む黒潮系水が乗っており、それゆえ表層水温が高くなっている。表層性小型浮魚類が 分布しているのは水深30m以浅の場合が殆どなので、これらの魚種の動物地理学的な分布特性を把握する ためには、海面水温が有 効な指標となる。餌環境 調査で分布が確認された ミンククジラの餌生物と しては、浮魚類ではサン マとカタクチイワシが圧 倒 的 に 多 く 、 そ れ ぞ れ 16℃未満、15∼19℃の海 域を中心に分布していた (図3)。この事実はサン マが親潮勢力の強い海域 を中心に分布していたの に対し、カタクチイワシ はサンマの分布域に隣接 する暖水域を中心に分布 していたことを示してい る。しかし、釧路沖の海 洋物理環境は大きく変動 するため、これらの主要 な魚種が経年的に安定し て分布していた訳ではな かった。親潮勢力が弱く、 表1.釧路沖で行なった鯨類餌環境調査の概要(2002∼2007年) 図3.寒冷年(2005年)と温暖年(2006年)におけるサンマとカタクチイワシの分布パ ターンと海表面水温の分布。CPUEは表中層トロール1時間曳網当りの漁獲量を 示す。

(8)

海域全体の水温が高めであった2006年にサン マの分布が全く見られなかったことはその好 例である(図3)。調査海域全域における大 きな傾向としては、親潮勢力が強い年にはサ ンマが優占するが、黒潮系暖水の勢力が強い 年にはカタクチイワシが優占し、マイワシ、 サバ属などが少量分布していることが分っ た。従って「釧路近海」という限られた緯度、 経度で区分された海域を生態系の舞台として 捉えるならば、この海域の表層生態系(水深 0∼50m)には大きな年変動が存在していた と言うことが出来る。 一方、この海域の大陸棚周辺の150∼300m 層では、スケトウダラが普遍的に卓越して分 布していた(図4)。これまでの調査の結果、 スケトウダラの分布量はサンマ、カタクチイ ワシのそれに比べて経年的により安定してい たことが示されている。従って餌の安定供給 という観点からは、スケトウダラはサンマ、 カタクチイワシよりも信頼性の高い餌だと言 える。またオキアミ類は親潮の影響が強い陸 棚周辺海域の50∼150m層を中心に分布して おり、その分布量は親潮勢力の消長に伴い経 年的に大きく変動していた(図4)。これら の結果を纏めると、釧路近海の中層生態系 (水深50∼300m)は、スケトウダラとの関連 では比較的安定しており、オキアミ類との関連では不安定であったと言えよう。両者の分布量の年変動パ ターンの相違は、海洋物理環境の安定性の違いによって説明することが可能である。すなわちスケトウダ ラの分布中心が見られた深い水深は、オキアミ類の主分布域であった浅い水深よりも、海洋物理環境が経 年的により安定して推移していたのである。 以上に述べてきたことが、餌環境調査によって得られた結果の概要である。このような変動特性をもつ 釧路沖の生態系を、ミンククジラはどのように利用しているのだろうか。この疑問に解を与えるためには、 餌環境調査の結果、広域目視調査によって得られたミンククジラの分布に関する結果、そして鯨類捕獲調 査によって得られたこの鯨の捕食(胃内容物)に関する結果を有機的に結びつける必要がある。本稿最大 の目的は、3つの調査結果を総合して秋の釧路沖における生態系の構造と、その生態系を利用するミンク クジラの相互作用を浮き彫りにすることである。次節ではミンククジラの釧路への来遊と海洋物理環境と の関連性を検討してみたい。

6.海洋物理環境とミンククジラの分布の関連性−場所に対する嗜好性−

広域目視調査の結果によれば、秋の釧路沖において、ミンククジラは海面水温16℃未満の低水温域を中 心に分布していた。この調査で発見した本種の体長は概ね6∼7m以上と推定されている。ミンククジラ は体長6m前後で成熟することを考慮すれば、広域目視調査で発見した個体の多くは成熟個体であった可 図4.釧路海域におけるカタクチイワシ、スケトウダラ、オキ アミ類の典型的な魚探反応。

(9)

能性が極めて高い。親潮第一分枝は沿岸に 寄り添うように南下するため、この低水温 域は通常年には道東の沿岸∼陸棚周辺海域 に形成される(図3の15℃の等水温線分布 を参照)。しかし親潮勢力が強い寒冷年に は、低水温域の範囲が沿岸域から沖合域ま で拡大する。そしてミンククジラの地理分 布を海洋環境と関連づけて検討した結果、 その主分布域は親潮勢力が弱い年には沿 岸、陸棚周辺海域に限定されるが、親潮勢 力が強い年には沿岸域から沖合域まで大き く拡大することが明らかになった(図5)。 従来、鯨類は恒温動物であり遊泳能力に優 れるが故に、海洋環境を超越して回遊する イメージが強かった。しかし、釧路沖のミ ンククジラはランダムに分布してはいなか った。ここに示された結果は、秋の道東近 海に来遊するミンククジラ成熟個体の分布 域が、親潮勢力と密接に関連していたこと を示唆している。このことは、釧路沖でミ ンククジラ成熟個体が関わる捕食・被食の 過程が親潮勢力の範囲内で集中的に進行し ていることを意味する。 以上の結果を前節で述べた釧路海域の餌 環境との関連で考えると、次のような仮説 が提唱される。親潮勢力範囲が沿岸∼陸棚 周辺域に限定される温暖年には、ミンクク ジラ成熟個体は表層のサンマとともに、陸棚域の中層に豊富に分布しているスケトウダラも餌として利用 することが可能である。一方、親潮勢力の影響が沖合域まで及ぶ寒冷年には、成熟個体は敢えて陸棚域の スケトウダラにはこだわらず、親潮域に豊富に分布しているサンマを求めて沖合域まで分布を拡大する。 このことは、次節で述べるように成熟個体はサンマに対する嗜好性が極めて強いという結果とよく対応し ている。大型で餌の探索能力が高い成熟個体にとって、1尾当りのカロリー量がサンマの1/2∼1/3程度の スケトウダラはあまり魅力的な餌ではないのかも知れない。 一方、ミンククジラの未成熟個体に関しては、沖合域での発見は極めて稀であるが、釧路沿岸の鯨類捕 獲調査海域内では豊富に発見されている。また、沿岸定置網で混獲されるミンククジラの大半は未成熟個 体である(次節参照)。これらの事実と、親潮勢力が弱い温暖な年には沿岸域においても未成熟個体の発見 が少ないという捕獲調査の結果を考え合わせれば、未成熟個体は親潮の影響下にある陸棚周辺域に主に分 布していると推定される。この海域で未成熟個体は何を好んで捕食しているのだろうか。それは次節で述 べることにしよう。

7.ミンククジラが好む餌−餌に対する嗜好性−

2009年1月、横浜の中央水産研究所において国際捕鯨委員会専門家レビュー会合(IWC / JARPNII専門 図5.温暖年と寒冷年にミンククジラの分布が予測される海域(模 式図)。PS、JA、WPはそれぞれサンマ、カタクチイワシ、 スケトウダラが分布しうる海域範囲を示す。

(10)

家レビュー会合)が開かれた。この会合は6年に一度開かれ、北西太平洋鯨類捕獲調査の必要性、進捗状況、 研究成果等が日本を含む各国の専門家により科学的に吟味され、日本はこのレビューの結果を十分に考慮 して次期6年間の調査計画に役立てている。この会合の際、釧路沖鯨類捕獲調査団長を数期に渡って務めた 遠洋水産研究所鯨類管理研究室の木白俊哉室長が、ミンククジラの摂餌生態について驚くべき研究成果を 発表した(Kishiro et al., 2009)。一般的に考えると、未成熟個体は小型で体力が弱く索餌の経験も少ないた め、成熟個体よりも積極的に深く潜水して中層の餌を捕食するとは予想し難い。実際、成熟個体の方が捕 食のためにより大きな潜水を行なうことは、多様な海産哺乳類で実証されつつある(例えば Fowler et al., 2006)。しかし、釧路を基点とする半径50海里内で捕獲したミンククジラでは、成熟個体は表層(0∼30m 層)に分布するサンマまたはカタクチイワシを中心に捕食している年が多かったのに対し、未成熟個体は 中層(150∼300m層)に分布するスケトウダラを主に捕食している年が多かったのである。更に、成熟個 体でも年によってはスケトウダラが胃内容として優占し、未成熟個体でもカタクチイワシまたはオキアミ 類を主餌料としている年が見られたなど、成熟、未成熟個体とも、胃内容組成が経年的に大きく変動して いた事実も明らかになった。このことは、当該海域でのミンククジラの捕食者としての役割が経年的に異 なっていたことを示しており、この海域における生態系の年変動が如何に大きいかを如実に物語っている。 では、ミンククジラは一体どのような餌を好んで捕食していたのだろうか。ただ単に環境中の多い餌を 多く食べていたのであれば、特定の餌を好んで捕食していたことにはならない。逆に、環境中の少ない餌 を頻食していれば、その餌に対して強い選択性が働いていることになる。従ってこの疑問に答えるために は、ミンククジラが捕食していた餌の組成と、この鯨が分布していた海域の餌生物の組成とを年ごとに比 較する必要がある。この分析から、ミンククジラの成熟個体はサンマとカタクチイワシを、未成熟個体は スケトウダラとカタクチイワシを餌として好むことが分った。特に成熟個体では、海域全体の水温が高く サンマの分布が見られなかった2006年を除き、サンマに対して常に正の選択性が見られたこと、未成熟個 体では全ての年においてスケトウダラに対する正の選択性が示されたことが特徴的であった。また未成熟 個体の胃内容として優占した年があったオキアミ類については、いずれの年においても成熟、未成熟個体 ともに負の選択性が示された。オキアミ類はプランクトンなので、当然、魚よりも資源量が多い。しかし 資源量が多くても、ミンククジラにとっては小型浮魚類、陸棚性底魚類に比べて利用しにくい、または魅 力のない餌なのであろう。 成熟個体がサンマに対して強い嗜好性を示したことは、前節で述べた「成熟個体を中心とするミンクク ジラはサンマが豊富に分布する親潮の南下とともに釧路沖に来遊する」という仮説とよく対応している。 釧路沖鯨類捕獲調査海域には、親潮勢力の強い海域とそれに隣接する暖水域が含まれている。後者はカタ クチイワシの分布中心海域であり、両水塊の境界領域では当然、サンマとカタクチイワシが混在して分布 している。つまりこの境界領域まで南下してきたミンククジラは、当然カタクチイワシにも遭遇する訳で、 このことが鯨類捕獲調査海域内でミンククジラ成熟個体がカタクチイワシを比較的よく捕食していた要因 として挙げられる。 未成熟個体がスケトウダラを選択的に捕食していた要因としては、次のことが考えられる。先に述べた ように、スケトウダラは水深150∼300mの陸棚上にかなり普遍的かつ高密度に分布していることから(図 4)、潜水すれば確実に遭遇出来る餌であると推定される。一方、サンマ、カタクチイワシ等の表層性小型 浮魚類は、集群性が強いゆえに分布が偏在している(図4)。更に、これらの魚種はスケトウダラよりも筋 肉質であることから、その遊泳力はスケトウダラよりも大きく、とくに体長が20∼30㎝に及ぶサンマの遊 泳力は相当大きいと予想される。成熟個体に比べ、餌の探索能力がより低いと推定される未成熟個体にと って、スケトウダラは浮魚類よりも確実に捕食出来る餌であり、それゆえに餌としての重要性も高いのだ ろう。またスケトウダラは海洋物理環境が安定している中層(水温2∼5℃)に分布しているため、親潮 勢力の消長に代表される表層環境の急激な変動の際にも、未成熟個体はこの餌を確実に利用することが可 能なのだろう。近年、水産資源の持続的な利用を実現するため、活発な資源研究、生態系研究が行なわれ

(11)

ているが、スケトウダラ資源の持続的な利用を図ることは、ミンククジラ未成熟個体を育成するうえでも 重要なのである。 最も、表層性小型浮魚類の群れ、特に小型ゆえに遊泳力が比較的小さいと予想されるカタクチイワシの 群れがミンククジラ未成熟個体の生息域に頻出した場合には、未成熟個体はわざわざ中層に潜らず、海面 近くで活発に捕食することが可能である。未成熟個体が年によってはカタクチイワシに対しても嗜好性を 示したことは、当該年における未成熟個体とカタクチイワシの遭遇率が高かったためと考えられる。では 一体表層にどれ位の密度の小型浮魚が分布していれば、未成熟個体は潜水を行なわず主に表層で捕食活動 を行なうようになるのだろうか。この知見はミンククジラの捕食者としての役割を推定するうえで重要で あり、今後解明すべき課題のひとつである。 尚、国立科学博物館の海産哺乳類ストランディングデータベース(http://svrsh2.kahaku.go.jp/drift/)を 参照すると、沿岸域において定置網に混獲されるミンククジラの大半は未成熟個体であり、三陸∼北海道 沿岸の定置網ではほぼ周年を通じて混獲されていることが分る。この事実は、未成熟個体は陸棚周辺海域 との結びつきが強く、スケトウダラなど、陸棚域の豊富な生産力を周年にわたって利用している可能性を 示している。彼らの陸棚域の利用の仕方は、外洋域を中心に分布し、餌の探索能力がより高いと推定され る成熟個体のそれとは根本的に異なっているのかも知れない。

8.おわりに

本稿で述べてきたミンククジラの場所と餌の嗜好性に関する仮説を検証することは、海洋生態系におけ る本種の捕食者としての役割を解明するのみならず、将来的に沿岸商業捕鯨を再開した際に、本種の漁期、 漁場形成、漁獲の変動を予測し、効率的な配船計画を立てるうえでも大きな意味をもつ。これはミンクク ジラ版の魚海況予測を実現することに他ならない。更に、近年懸念されている地球規模の環境変化に伴う 海洋生態系の変動をモニターするうえでも、この調査の継続が望まれる。例えば北海道大学の帰山雅秀博 士らの研究によれば、地球温暖化が進むことにより親潮勢力が弱まり、サケ科魚類の北海道周辺海域への 来遊量が激減することが予測されている。親潮域を索餌場として好み、秋には親潮とともに南下すると予 想されるミンククジラの釧路への来遊も、地球温暖化の影響を受ける可能性が大いにある。 本稿で紹介してきた内容を2009年1月に行なわれたIWC / JARPNII専門家レビュー会合で発表したとこ ろ(Watanabe et al., 2009)、各国の専門家から「鯨類の生態を環境情報と密接に関連付けて論じた点が斬新 であり、結果も興味深い」との評価を得た。このレビューでは系群構造、資源量、生態など鯨類の様々な 面が論じられたが、三陸沖、沖合域調査を含め、鯨類の分布、生態に関する発表では海洋環境、餌環境と の関連性の分析に注目が集まったことが印象的であった。この種の調査研究の継続は、従来、国際的には 鯨を捕獲ばかりしている国と見られがちであった日本が、実際には海洋生態系を考慮した鯨類研究を推進 していることを示すうえで重要である。この調査研究を通じて、日本は海洋生態系を持続的に利用するた めの国際貢献をすることが出来る。近年、生態系の情報を取り入れた水産資源管理が注目されており、こ の関連で鯨類の水産資源に対する捕食圧や、各鯨種の分布パターン、資源量に関する精度の高い情報が求 められている。鯨類を海洋生態系の構成者として捉えるならば、その生態(分布、食性等)に関する知見 はプランクトン、小型浮魚類、大型浮魚類、サメ類、イカ類など他の魚種の生態や再生産、加入に関する 知見と共通の言語を用いて有機的に結びつけなくてはならない。この「共通の言語」とは海洋環境に他な らず、海洋環境とは多様な生物の分布や生物学的諸過程を統一的に記述するうえで重要なのである。今後、 環境に関する情報を十分に考慮した鯨類研究を展開することにより、生態系研究は大きく発展し、ひいて は海洋生態系における鯨類の重要性もクローズアップされていくものと思われる。こうした観点は、鯨類 の資源研究においても大きな力を発揮する可能性がある。従来の目視調査では、広範な海域をカバーし、 資源量の推定誤差を小さくするため、ひとつの鯨種の調査を行なうのに数年を要することが普通であった。

(12)

しかし、各鯨種の分布特性と海洋環境特性との関係を明らかにすることにより、鯨類の分布を環境特性値 から予測することが出来るはずである。その予測に基づいた仮説検定型の目視調査を行なうことにより、 鯨類資源量推定精度を向上させ、将来的には無駄な燃油を使わない地球にやさしい鯨類資源調査計画を立 てることが可能になるだろう。読者諸氏におかれては、鯨類が環境要因と密接に関連した分布、摂餌習性 をもっていること、そしてこの研究を進展させることの重要性を感じ取って頂けたなら、本稿の目的は十 分に達せられたと言える。21世紀の最初の10年間で、鯨類研究に新たな活路が見いだされつつあることに、 深い感慨をおぼえる。本稿を批判的に読んで頂いた遠洋水産研究所の岩崎俊秀博士、岡村 寛博士、吉田 英可博士、金治 佑氏、日本鯨類研究所の熊谷佐枝子氏、木和田広司氏、小西健志博士にお礼申し上げる。

9.引用文献

Fowler, S. L., Costa, D. P., Arnould, J. P. Y., Gales, N. J. and Kuhn, C. E. 2006. Ontogeny of diving behaviour in the Australian sea lion: trials of adolescence in a late bloomer. J. Animal Ecol. 75: 358-367.

Hakamada, T., Miyashita, T. and Hatanaka, H. 2009. Examination of the effects of planned takes by Japanese small-type coastal whaling on 'O' and 'J' stocks common minke whales in the western North Pacific. Paper SC/61/O15 presented to the IWC Scientific Committee, June 2009 (unpublished). 10pp.

笠松不二男, 宮下富夫, 吉岡 基. 2009. 新版 鯨とイルカのフィールドガイド(大隅清治監修).東京大学出 版会, 東京. 148pp.

Kishiro, T., Yoshida, H., Tamura, T., Konishi, K., Kanda, N., Okamoto, R. and Kato, H. 2009. Relationship between body size, maturity, and feeding habit of common minke whales off Kushiro in autumn season, from 2002-2007 whale sampling surveys under the JARPN II coastal components off Kushiro. Paper SC/J09/JR13 presented to the IWC/JARPNII review meeting, January 2009 (unpublished). 25pp.

Konishi, K., Tamura, T., Isoda, T., Okamoto, R., Matsuoka, K. and Hakamada, T. 2009. Feeding strategies and prey consumption of three baleen whale species within the Kuroshio-Current extension. J. Northw. Atl. Fish. Sci. 42: 27-40.

Pearcy, W.G, Fisher, J.P,, Anma, G. and Meguro, T. 1996. Species associations of epipelagic nekton of the North Pacific Ocean. Fish. Oceanogr 5: 1-20.

Tamura, T. and Fujise, Y. 2002. Geographical and seasonal changes of the prey species of minke whale in the Northwestern Pacific.ICES J. Mar. Sci 59: 516-528.

Watanabe, H., Yonezaki, S., Kiwada, H., Kumagai, S., Kishiro, T., Yoshida, H. and Kawahara, S. 2009. Distribution and abundance of prey species and prey preference of common minke whale

Balaenoptera acutorostrata in the coastal component of JARPN II off Kushiro from 2002 to 2007.

Paper SC/J09/JR11 presented to the IWC/JARPNII review meeting, January 2009 (unpublished). 37pp.

(13)

鯨類は陸生の原始的偶蹄類から次第に水生生活に適応放散して、現生の完全水生の鯨類にまで進化した。 進化の過程において鯨類は鯨目(Cetacea)に属する種の総称であり、現生種はヒゲクジラ亜目(Mysticeti) とハクジラ亜目(Odontoceti)の2つのグループに分けられる。ヒゲクジラ類は口腔内クジラヒゲと呼ば れる食物濾過板を有する鯨類の総称で、4科14種からなり、歯茎が特殊化したクジラヒゲの獲得により小 型甲殻類(オキアミ、コペポーダ等)や群集性小型魚類等の低次生物の利用に成功して、大量摂餌が可能 となり、一般的に大型化していることが特徴である。また、一般にヒゲクジラは、半球ごとに冬の間は暖 かい低緯度の繁殖海域に留まり、夏に向けて、餌の豊富な高緯度の摂餌海域へ移動するという季節回遊を 行う。したがって、通常夏と冬の時期が逆になる北半球と南半球に生息するヒゲクジラは混合することは ない。しかしながら、種によっては赤道を超えて南北移動するものもあり、生態が種ごとに異なり興味深 い。本報ではヒゲクジラにおける半球間の差異について著者の専門である遺伝的な立場から紹介したい。 セミクジラ科 ホッキョククジラ 北半球の寒冷域にのみ分布し、氷塊付近から離れることはめったにない。回遊は春に後退する氷塊の中 の水路や割れ目に沿って北に移動し、夏を摂餌域で過ごした後、秋に海が凍りつくにつれて南下する。北 上するときは、陸氷から数Km以内を回遊すると考えられている。 セミクジラ セミクジラの分類学的研究として、2000年に米国の研究者の報告(著者も共同研究者として参加)では セミクジラの分類学上の地位を明らかにするために世界規模のmtDNA研究を行い、南半球に分布している

Eubalaena australisと、それまでE. glacialisとされていた北半球の北大西洋産と北太平洋産の3つの海域全て

を代表するセミクジラ集団のmtDNA制御領域の塩基配列のデータベースを構築した。mtDNA塩基配列か ら構築された系統関係を見ると、セミクジラには遺伝的に異なる3集団に分岐することが示され、同じE. glacialisでありながら北太平洋産は、北大西洋産よりE. australisに遺伝的に近縁であることが示された。こ の分析結果から、すでに認知されている北半球と南半球の2種に加えて、北太平洋のセミクジラもE. japonicaとして第3の種となりうる可能性が示唆され、現在ではそれぞれ別種として認知されている。日本 の研究者により、北太平洋に生息するセミクジラに対し、南半球をミナミセミクジラ、北大西洋には新た にタイセイヨウセミクジラの和名が提言されている。 コセミクジラ科 コセミクジラ 南半球のみに生息。生態についてはあまりよく知られていない。 ナガスクジラ科 シロナガスクジラ シロナガスクジラは地球上に生息する最大の動物である。シロナガスクジラは3亜種に分類されると考

[シリーズ:鯨類の系群No.2]

ヒゲクジラにおける半球間の遺伝的差異

後 藤 睦 夫 ( 日 本 鯨 類 研 究 所 ・ 研 究 部 )

(14)

える研究者もいる。南半球に生息するものはBalaenoptera musculus subsp. intermedia、前者よりもわずかに

小さい亜種であるB. m. subsp. musculusは北半球に、また、さらに小さい亜種であるB. m. subsp. brevicauda

(ピグミーシロナガスクジラ)は主として南半球の亜熱帯海域に分布する(目視調査では南緯60度以南にも 摂餌回遊することがわかっている)。なお、遺伝学的研究では南半球のシロナガスクジラとピグミーシロナ ガスクジラを識別するには至っていない。

ナガスクジラ

これまで生物学的知見(例えば両半球間の体長の違い)から、北半球に生息するナガスクジラは、B. physalus physalus、南半球に生息する同種をB. p. quoyiとしてそれぞれ2つの亜種としてみなされる場合も

あった。しかしながら、著者によるmtDNA分析の結果では、北半球と南半球を亜種と考えるよりも、北大 西洋とその他 (北太平洋と南半球)をそれぞれ別亜種とみなすほうが良いことが示唆されている(鯨研通 信434号を参照)。 イワシクジラ これまで半球間の遺伝的研究はなされていない。当研究所による今後の解析に期待して頂きたい。なお、 当研究所の遺伝グループによる研究では、北太平洋に分布する同種は一系群の可能性が高いことが示され ている。 ニタリクジラ 2006年に当研究所の遺伝グループは北太平洋、南太平洋、インド洋の異なる海域から採集された標本群 間で遺伝的な違いがあるかを調べたところ、標本群間に遺伝子頻度に違いを見出した。遺伝的な違いの程 度が、海域間と、半球間でどちらが大きいかを比較したところ、異なる海域に生息するクジラ同士のほう が、異なる半球に生息しているクジラ同士よりも遺伝的な違いが大きいことがわかった。つまり、南半球 と北半球で別種と認定されているミンククジラやセミクジラとは異なり、同じ南半球にあるインド洋と南 太平洋のニタリクジラのほうが、北半球の北太平洋と南半球の南太平洋のニタリクジラ同士よりも違いが 大きかったことを明らかにしている。標識再捕記録によると赤道を跨いで回遊する個体が確認されている。 ツノシマクジラ 2003年に日本人研究者によって新種とされた。日本海から北太平洋、東部インド洋および南半球に属す るソロモン海域にかけて分布するが、詳しい生態は不明である。興味深い点は赤道を跨いで分布している ことである。今後の更なる解析に期待している。 ミンククジラ 当研究所の遺伝グループによって北太平洋と南極海の捕獲調査で得られた標本を基に、ミンククジラは 北太平洋、北大西洋および南半球に分布するもの(ここでは便宜的に南半球普通型と称する)及び同じく 南半球に分布する矮小型(南半球矮小型:ドワーフミンククジラ)と呼ばれるものの4つの標本群間の系 統関係を調べたところ、mtDNAの塩基配列を基に構築された系統樹は北太平洋、北大西洋、南半球普通型 および南半球矮小型がそれぞれ分化し、遺伝的に独立した集団であることが示唆された。また、南半球矮 小型は南半球普通型よりも北半球の2型に類似し、さらに、北太平洋よりも北大西洋により近縁な関係が 示された。南半球矮小型は、その分布が南半球普通型と一部オーバーラップしているにもかかわらず、遺 伝的に明らかに異なっていたのである。 以上の結果を受けて、他の形態学的な情報とも合わせて、北半球のミンククジラをB. acutorostrata、南半 球普通型のミンククジラをB. bonaerensisとして別種に区分し、北大西洋型をB. a. acutorostrata、北太平洋型

(15)

B. a. scammoni、矮小型をB. a. subsp.(現在、亜種名は提唱されていない)として亜種に区分することが 提唱され、これに基づきIWC科学委員会でも分類体系と学名の見直しが行われ、北半球と南半球の2種の 存在が認知された。これに伴い、日本の研究者により、北半球産をミンククジラ、南半球産をクロミンク クジラとすることを提唱し、現在ではほとんどこれらの和名が用いられるようになった。 ザトウクジラ 本種は系群構造が比較的解明されているクジラの一種である。この理由は主に尾鰭裏面の白黒の紋様と 尾鰭後縁の輪郭を手掛かりとして写真撮影による個体識別が行われているためであり、これらの外部形態 の特徴を利用して海域間の交流の有無および回遊コースの推定がこれまでなされてきた。1980年代に入り バイオプシー技術の進歩に伴い,遺伝学組織の採集努力がなされており、形態学と遺伝学の融合により系 群のより詳細な構造が明らかになりつつある。特に、当研究所が実施母体となっている南極海における鯨 類捕獲調査では、これまでで他国に類を見ない431個体からのバイオプシー採集が行われている。 北大西洋の本種個体は分離した数箇所の独立した索餌場で夏を過ごしたあと、冬季には西インド諸島を 中心とした共通の繁殖海域を持っていることが明らかになった。また、各索餌場間での遺伝的異質性を調 べるとmtDNAで遺伝的な違いが確認されたが,核DNA(マイクロサテライト)による比較では遺伝的な違 いを検出できなかった。 北太平洋における繁殖域は小笠原・沖縄を中心とした海域、ハワイ諸島およびメキシコ周辺にかけての 海域で北大西洋と同様に北緯20°付近にある。これらはそれぞれベーリング海、アラスカおよびカリフォ ルニアにかけて回遊し、独自の索餌域を持つことが知られている。 南半球では少なくとも西オーストラリア、東オーストラリア、トンガおよびコロンビアの繁殖域が知ら れており、遺伝的な違いにより、少なくとも3つの系群に分かれることが示唆されている。一方、高緯度の 索餌域では比較的棲み分けはしているものの、異なる系群が混合している可能性が示唆されている。なお、 本種も赤道を跨いで回遊する個体が確認されている。 コククジラ科 コククジラ 17−18世紀までは北大西洋にも生息していたが絶滅した。現在は北太平洋にのみ生息し、アジア系群と カリフォルニア系群の2つがある。沿岸性で、通常は大陸棚上の海域に分布し、回遊の際にはほとんどの 個体が岸近くを通る。なお、最近(2010年5月)のトピックとして地中海(イスラエルやスペイン沖)で 1個体のコククジラが確認された。これは、カリフォルニア系群に属する個体が北極海の氷塊をすり抜け て迷い込んだものと考えられている。 終わりに 以上、鯨種ごとに簡単な概要を述べた。一般にヒゲクジラはメスはオスに比べて体長がわずかに大きく (ハクジラはその逆)、南半球に生息するものは北半球のものよりも大型の傾向がある。回遊の様式から北 半球と南半球の個体は遺伝的交流が無いと考えられているが、上述のように、一部の種では赤道も跨いで 回遊する個体も確認されている。また、半球間の遺伝的研究がなされていない種もあるが、当研究所には 捕獲またはバイオプシー、さらには座礁・混獲鯨から収集された標本が存在することから、今後の研究の進 展に期待して頂きたい。

(16)

国際捕鯨委員会(IWC)の将来に関する中間会合 標記会合が3月4日及び5日にセントピーターズバーグ(米国フロリダ)で開催され、グリーンランド による先住民生存捕鯨の捕獲枠に関する議論が行われる予定だったが、出席国(35カ国)が定数(加盟88 カ国の過半数)に達しなかったため、4日に参加国のみで本件について報告及び意見交換等が行われた。 当研究所からはグッドマン嘱託、飯野情報・文化部長が出席した。 SOWER海幸丸帰港 昨年12月9日に塩釜港を出港したSOWER調査船海幸丸(新屋敷芳徳船長)が、3月11日、無事にその任 務を終えて、塩釜港に入港した。今回で32回目(前身のIDCRを含む)を迎えたIWC/SOWER調査は、12月 23日にインドネシア・バリ島沖合で4名の国際調査員(関口圭子調査団長ほか米国、ドイツ、日本から各 1名)ならびに調査機材を乗せて南極海に向かい、1月7日から2月7日までの間、南極海での調査にお いてクロミンククジラの目視データ収集、豪飛行機調査との共同調査、資源量推定値精度向上のための実 験、自然標識撮影及びバイオプシー採取などの実験を実施した。2月22日、再びインドネシア・バリ島沖 合で国際調査員ならびに調査機材を下ろし、今回の入港となった。 鯨の話と鯨料理を楽しむ会 標記会合が2010年3月12日に、麹町の料理店kurikuriにおいて開催された。当研究所の大隅顧問による 「クジラ性態学入門Ⅱ」と題した話題提供の後に、日本捕鯨協会の日高アドバイザーが献立した、種々の鯨 料理を味わった。 学位論文の取得 3月、調査部観測調査室の松岡耕二室長が東京海洋大学で博士号(海洋科学)を取得した。論文タイト ルは「南極海におけるザトウクジラの資源回復とその生態学的分析」である。調査部海洋観測調査室の村 瀬弘人主任研究員は北海道大学で博士号(環境科学)を取得した。論文タイトルは、「生態学的なデータを 統合的に用いたヒゲクジラ類の資源選択性に関する研究」である。 JARPAII調査船団の入港 2009/10年度JARPAⅡは、2010年4月12日、調査母船「日新丸」の東京都大井港入港を以って完了した。 南極海での97日間の調査期間中31日間に及ぶシーシェパードの悪質極まりない調査妨害を受けた。 2010年度三陸沖鯨類捕獲調査の実施 4月22日からJARPNIIの三陸沖鯨類捕獲調査が開始された。これまで当研究所が実施主体として実施し てきたが、今次調査から一般社団法人地域捕鯨推進協会(下道吉一代表幹事)が、これを引き継いで実施 することとなり、当研究所は、委託をうけて調査業務に専従することとなった。調査団は、昨年と同様に、 調査総括の委嘱をうけた加藤秀弘東京海洋大学教授を中心に、当研究所の安永玄太主任研究員(前半)及 び坂東武治主任研究員(後半)が調査団長をつとめ、総勢20名が参加して調査にあたった。また、宮城県 水産技術総合センターの拓洋丸が参加して、餌環境調査が実施された。 初日はあいにくの天候となり、公民館において協会主催の出港式が開催され、森高志水産庁遠洋課調査 官、北村悦朗石巻副市長、三軒一高捕鯨を守る全国自治体連絡協議会会長、三原勝利IWC捕鯨全面禁止絶

日本鯨類研究所関連トピックス(2010年3月∼2010年5月)

(17)

対反対太地町連絡協議会議長ほか、関係者が出席して調査の成功を祈願した。同調査は、4月下旬から6 月上旬まで続く予定である。 農林水産省消費者の部屋でのクジラ「特別展示」 5月17日から21日まで、農林水産省北別館1階の「消費者の部屋」で「クジラについて考える−クジラ の利用と捕鯨問題」というテーマの特別展示が開催された。このクジラ特別展示は水産庁捕鯨班が担当と なり、当研究所情報・文化部、副産物処理課、鯨食ラボ、日本捕鯨協会および共同船舶(株)の協力のも と、鯨類捕獲調査の実態や鯨と捕鯨を巡る現状に関する最新情報や過去から現在までのクジラの利用・現 代鯨料理についての情報やレシピの紹介等、様々な観点から一般消費者・官庁職員に鯨食文化および鯨類 資源の持続的利用への関心を高めようと企画されたイベントである。「消費者の部屋」でのクジラ特別展示 開催期間中の訪問者人数は1,011人となり、農林水産省北別館1階の食道「てしごとや 咲くら」でイワシ クジラの刺身や竜田揚げの鯨料理のメニューが登場し、人気を集めた。 [印刷物(研究報告)] 藤瀬良弘, 西脇茂利, 石川創:南極海鯨類捕獲調査(JARPA)の展開.水産海洋研究.74.43-44.2010. 石川 創:動物福祉とは何か. 日本野生動物医学会誌. 15(1). 日本野生動物医学会. 1-3. 2010. 石川 創:動物福祉とは何か. 日本野生動物医学会誌. 15(1). 日本野生動物医学会. 9-14. 2010. 國分亙彦, 安間洋樹, 村瀬弘人, 永延幹男:南極ロス海域での海鳥類の分布特性.水産海洋研究.74.42-43.2010. 松岡耕二, 木和田広司, 村瀬弘人. 西脇茂利:南極海ロス海域での鯨類の発見組成と分布特性.水産海洋研究.74.44-45. 2010. 村瀬弘人, 松岡耕二, 袴田高志, 西脇茂利, 永延幹男, 北門利英:南極ロス海域での環境要因を考慮した鯨類の空間分布推 定.水産海洋研究.74.47-48.2010. 永延幹男, 西脇茂利, 永井信之, 遠山大介:南極ロス海域での開洋丸/JARPAによる生態系フィールド共同調査.水産海 洋研究.74.34-35.2010. 永延幹男, 村瀬弘人:南極ロス海域での開洋丸/JARPA共同調査の考察.環境・餌生物・捕食者の相互関係.水産海洋 研究.74.48-49.2010. 田村 力, 小西健志,西脇茂利, 瀧 憲司, 林 倫成, 永延幹男:南極ロス海域でのクロミンククジラの摂餌生態.水産海洋研 究.74.47-48.2010. 矢吹 崇, 野入善史,村瀬弘人, 木和田広司, 松岡耕二, 永延幹男:南極ロス海域での開洋丸/JARPAによる海洋物理化学環 境調査.水産海洋研究.74.35-36.2010. [印刷物(雑誌新聞・ほか)]

Fujise, Y., Hatanaka, H., og Ohsumi, S.:Hva skejedde med vagehvalen i Antarktis?.Ottar 280.Populaervitenskapelig tidsskrift fra Tromso Museum.29-35.2010/2.

石川 創:なぜ南極海での暴力が放置されるのか?くり返される鯨類調査への妨害活動.水産界1503.大日本水産会. 28-30.2010/4.

石川 創:日本人はなぜ、鯨もマグロも食べられないのか.婦人公論1297.中央公論社.58-61.2010/4.

日本鯨類研究所関連出版物情報(2010年3月∼2010年5月)

参照

関連したドキュメント

This paper considers the relationship between the Statistical Society of Lon- don (from 1887 the Royal Statistical Society) and the Société de Statistique de Paris and, more

Research in mathematics education should address the relationship between language and mathematics learning from a theoretical perspective that combines current perspectives

We prove that the spread of shape operator is a conformal invariant for any submanifold in a Riemannian manifold.. Then, we prove that, for a compact submanifold of a

In this paper we develop a general decomposition theory (Section 5) for submonoids and subgroups of rings under ◦, in terms of semidirect, reverse semidirect and general

In Section 4 we present conditions upon the size of the uncertainties appearing in a flexible system of linear equations that guarantee that an admissible solution is produced

This paper develops a recursion formula for the conditional moments of the area under the absolute value of Brownian bridge given the local time at 0.. The method of power series

Related to this, we examine the modular theory for positive projections from a von Neumann algebra onto a Jordan image of another von Neumann alge- bra, and use such projections

[25] Nahas, J.; Ponce, G.; On the persistence properties of solutions of nonlinear dispersive equa- tions in weighted Sobolev spaces, Harmonic analysis and nonlinear